溶断開先加工機
【課題】直角、曲線、直線等が入組んだ複雑な形状のワークの開先溶断で連続して切断ノズルの方向を切断部に直交して自動開先溶断面取を行う。
【解決手段】回転駆動されるワーク7と、回転自在に保持された軸体4と、それに設けられた2個のガイド8をワークの方向に加勢、押圧し、ワークに接触する事で2個のガイドが共にワークに接するように回転揺動駆動され、ワーク側の接線方向に支点を有するアームと、その支点を中心にスイングし2個のガイドの隙間を通ってワークに接する接触子18と、接触子と同じ動きをする溶断開先手段よりなり、ワークが回転する事で切断手段がワークの外周に直交して開先溶断をする。
【解決手段】回転駆動されるワーク7と、回転自在に保持された軸体4と、それに設けられた2個のガイド8をワークの方向に加勢、押圧し、ワークに接触する事で2個のガイドが共にワークに接するように回転揺動駆動され、ワーク側の接線方向に支点を有するアームと、その支点を中心にスイングし2個のガイドの隙間を通ってワークに接する接触子18と、接触子と同じ動きをする溶断開先手段よりなり、ワークが回転する事で切断手段がワークの外周に直交して開先溶断をする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機械フレーム等に使用する鋼板の周囲形状の溶断開先加工機に関する。一般に機械等の構造は鋼板の溶接による事が多いが、溶接強度を上げるため溶接部の一部を溶断切断で開先面取し、その部分に溶接肉盛して溶接強度をあげている。
【背景技術】
【0002】
溶断による開先加工は切断噴射手段の噴射方向を常にワークの切断部の稜線に対し90°(直交)近くに維持する事が望ましい。直角(角)、曲線、直線等が入組んだ複雑な形状のワークでは連続して切断噴射手段の噴射方向をワーク稜線に直交近くに維持することが難しいため、従来市販されている自動溶断開先加工機はワークの直線部分だけを段取を変えながら数度にわたって溶断開先加工している。また、自由曲線で構成されるワークの自動溶断開先加工機は市販されていない。この他ロボット制御による高額(数千万円程度)な溶断開先加工機による方法か、フライス盤(工作機械)による方法があるが、これらは高コストで、データ―入力が必要で、手間と時間が掛かり、高価で、専門技術も必要で一般的には普及していない。
【0003】
また、自由曲線のワークの自動溶断開先加工機の特許(特許文献1)が出願されているが市販はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30078
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の溶断開先加工機ではワークと同じ形状をしたモデル(テンプレート)を固定し、その外周を一対のスタイラスローラー(ガイドローラー)と規制ローラーで倣い、その動きで切断トーチをコントロールし、ワークの溶断開先加工をしている。しかし、この場合テンプレートの重心の真下にワークの重心が来る必要があり、更にテンプレートの回転方向の位相とワークのそれが一致しなければ正確な溶断開先加工は出来ない。ワークを取替える度毎に自由曲線で構成されるワークの重心を求め、それをモデルの重心の真下にセットし、更に両者の回転方向の位相を合わせる作業が必要となり、大きな労力と時間が必要となる問題点があった。
【0006】
また、自由曲線で構成されるワークに角(90°のケースが多い。)がある場合には切断ノズルの噴射方向が角の部分を通過するとき、通過前の方向から急激に方向転換(ワークが矩形の場合90°。)する必要がある。従来の溶断開先加工機ではこの機構を具備しておらず、従ってワークの角の部分の正確な溶断開先加工は出来ないのが現状である。角の部分の溶断開先加工の必要度は大きく、この加工が出来ない事は問題である。
【0007】
また、直線、自由曲線、角等で構成されるワークの一部だけの溶断開先加工の必要性も大きく(例えば矩形の場合の1辺のみ。)、従来の溶断開先加工機ではこの機能を具備しておらず、不自由が感じられてきた。
【0008】
また、従来の溶断開先加工機では駆動サーボの配線、規制ローラーに設けられているトーチアーム、溶断ガス配管等が360°回転する必要があるが、それらが機械フレーム(例えば特許文献1の第1アーム、第2アーム。)と干渉して360°迄回転出来ない問題があった。
【0009】
更に、従来の溶断開先加工機従来の溶断開先加工機では、1対のスタイラスローラーをモデルに圧接して倣う為に、スタイラスローラーを磁石製にし、それを回転駆動する為にサーボモーターを使用しており、装置が複雑で高価になる問題があった。
【0010】
また、従来の溶断開先加工機ではモデルの製作が必要で、溶断開先加工が終了しても、最後にモデル1個が無駄になる問題があった。
【0011】
本発明は以上に示した欠陥を除き、モデルが不必要でワークの取付が簡単で、精度良く溶断開先加工が出来、角、自由曲線、直線などが混在するワークでも1回の段取りで全周溶断開先加工が出来、また全周の一部だけの溶断開先加工も出来、構造も簡単で低コストの全周自動溶断開先加工機を提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の課題解決手段は請求項1に示す様にモデルを使用せず、直接ワークを2個のガイド、及び接触子で倣う方式を取っており、ワークを回転し、回転自在に保持され、ワークの方向に移動、押圧手段をもつ2個のガイドと、2個のガイドの間を経てワークに接し押圧する手段を持つ接触子と、接触子と同じ動きをする噴射切断手段により溶断開先加工をする様にした事である。
【0013】
また、第2の課題解決手段は請求項3に示す様に2個のガイドの間の隙間にワークの角が入ることにより、ワークが回転する事で、接触子と噴射切断手段が急激に回転し、ワークの角の両面で噴射切断手段の噴射方向がワークの外周に直交する事を可能にし、ワークの角の部分の溶断開先加工を可能にした事である。
【0014】
また、第3の課題解決手段はワークを回転する事で、それに接圧して動く2個のガイド、接触子、その他エヤー配管、電気配線等が小さい角度の範囲のスイングだけで済み加工機のフレームとの干渉がなく全周(360°)の溶断開先加工を可能にした事である。
【0015】
この他溶断開先手段の噴射方向をワークの外周に直交する様にするため、2個のガイドのワーク側接線方向にアームを設け、それに支点を設け、接触子がそれを中心にスイングし、接触子が2個のガイドの間を経てワークに接し倣う接触子と、それと一体となって動く溶断開先手段を設け、噴射ノズルの噴射方向が常にワークの外周に直交する様にした。
【0016】
また、2個のガイドがワークの外周に2個共に接圧される様にするため、軸受で回転自在に保持した軸に2個のガイドを取付け、それをワークの方向に圧接するようにした。
【0017】
また、溶断開先加工を行うワークの1部だけ(例えば矩形の2辺だけの溶断開先。)の溶断開先加工を行うためにワークに着脱可能なブロックを取付け、それにガイドの一方が乗ることにより溶断開先のスタート位置を調整し、ワークに着脱可能なブロックを取り付け、それにガイドの一方が乗ることにより溶断開先の終了位置を調整する事でワークの一部だけの溶断開先加工を可能にした。
【0018】
また、ワークを固定し2個のガイド及び接触子がその周りを倣って行う溶断開先加工を行なう為、固定されたワークと、交差する軸駆動により移動板を移動駆動し、それに設けられた回転自在な軸と、それに設けられたスイング可能に設けられたアームに設けられ、ワークの方向に押圧手段を持つ2個のガイドと、2個のガイドの間を経てワークに押圧する手段を持ち、ワークの外周に直交して動く接触子と、接触子と同じ動きをする溶断開先手段により溶断開先加工を行う様にした。
【0019】
最後に固定したワークの周りを2個のガイドが共にワークに接して倣う事を可能にするため2軸駆動(縦軸、横軸)のモーターに回転速度が印加電圧に比例して回転するモーター(サーボモーターはこの機能を有している。)を使用し、2個のガイドのワーク側の接線方向と横軸(X軸)との間の交差角a°(ロータリーエンコーダーにより測定)と、2個のガイドが設けられているアームと回転自在軸の中心線の間の交差角b°を利用して、2個のガイドが共にワークに接して倣う様にした。
【発明の効果】
【0020】
本発明は請求項1ないし請求項11に記載したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0021】
請求項1、2の発明のように接触子、2個のガイドが直接ワークに接して倣う為、モデルを必要とせず、ワークのセットに従来必要であった重心の位置合わせ、回転方向の位相合わせが不要になり、作業が能率的になる。
【0022】
また、接触子、2個のガイドが直接ワークに接して倣うので、倣いに誤差が発生せず正確な溶断開先加工ができる。
【0023】
請求項3、4の発明のように従来不可能であったワークの角の部分(90°)の溶断開先加工が可能になり、直線、自由曲線、角等で構成されるワークの全周の溶断開先加工が一回の段取りで可能になる。
【0024】
請求項5の発明の様に接触子が自動的にワークの外周に直交して動き、それと一体になっている溶断開先加工ノズルの噴射方向も自動的にワークの外周に直交して溶断開先加工を行なう事が可能になった。
【0025】
請求項6、7の発明の様に2個のガイドをワークの方向に押圧するだけで、2個のガイドが共にワークの外周に接する事が可能になった。
【0026】
請求項8のブロック、請求項9のブロックを使用することでワークの1部だけの溶断開先加工が可能になった。
【0027】
請求項10の発明で簡単なハンドル操作でワークの着脱が可能になった。
【0028】
請求項11の発明のようにモデルが不要で、従来データー入力が必要でコンピューターの制御に頼っていた固定したワークの溶断開先加工が、データー入力が不要で、シーケンサーの制御だけで自動溶断開先加工が可能になった。
【0029】
上述したように本発明の溶断開先加工機は直線、角、曲線等よりなるワークの開先溶断を、一回の作業で全周、自動で行える事が出来、簡単な作業で、低コストで能率的な自働溶断開先加工が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】自動溶断開先加工機の平面図である
【図2】自動溶断開先加工機の側面図である
【図3】ワーク回転駆動機構の側面図である
【図4】回転自由に保持される軸体とガイドの関係図
【図5】回転自由に保持される軸体と接触子、ガイド、ワーク関係図
【図6】一般的なワークの場合のガイド、接触子、溶断手段の位置関係を示す図
【図7】2個のガイドの間にワークの角が入った状態を示す図
【図8】2個のガイドの間にワークの角が入る前の状態を示す図
【図9】ワークの角の部分で接触子、ガイド、溶断手段の回転移動図
【図10】ワークの1部分の溶断面取で、溶断スタート治具の使用方法を示す図
【図11】ワークの1部分の溶断面取で、溶断終了治具の使用方法を示す図
【図12】ワーク回転の場合の溶断手段組立図
【図13】ワーク固定の場合の溶断手段組立図
【図14】ワークが固定の場合のX−Y駆動図
【図15】ワークが固定の場合のガイド関連正面図
【図16】ワークが固定の場合のガイド関連側面図
【図17】ワーク固定の場合、b°が0°の場合のガイドとワークの接触状態図
【図18】ワーク固定の場合、b°が負の場合のガイドとワークの接触状態図
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施例1でワークを回転駆動し、それに2個のガイドを押圧し、2個のガイドが共にワークに接触する状態で2個のガイドのワーク側接線に直交する方向を溶断手段の噴射方向とし、ワークの外周の認知を接触子で行い、噴射方向と外周の認知の両者の組合により溶断開先加工をおこない、更に2個のガイドの間の隙間にワークの角が入ることにより接触子と溶断手段が高速に回転駆動され、従来不可能であったワークの角(かど)の両面で溶断手段の噴射方向がワーク外周に直交して面取出来る様にした。更に、ワーク外周の1部だけの自動溶断開先加工を可能にした。
【0032】
実施例2では、ワークを固定しその周りを2個のガイドと、接触子と、溶断手段が廻りながらワークの外周を溶断開先するケースを述べるが、2個のガイドと、接触子と、溶断手段の関係は実施例1のケースと変わらないので、ここでは2個のガイドがワークの外周を自動で追従して倣う機構を説明する。
【実施例1】
【0033】
ワークを回転して開先溶断を行なう場合を実施例1で説明する。実際の加工装置を図1〜図3で説明する。図1は装置の平面図、図2は装置の側面図、図3はワーク押圧部の側面図を示している。これらの図で1は装置の架台でその上に減速モーター2、垂直ブラケット3、ワーク押えブラケット14が設けられている。
【0034】
減速モーター2はその出力軸5を経て摩擦板6の上に置かれたワーク7を摩擦回転駆動している。
【0035】
垂直ブラケット3は2個の軸受28によりを回転自在に保たれた垂直軸9を持ち、それにつなぎ板10が設けられ、それにスライド部11を経て板12が設けられている。スライド部11はハンドル13を回す事で板12を上下に駆動出来る様になっており、これでガイド8、接触子18の上下位置を調整している。
【0036】
図4に軸体4の断面図を示す。軸体4は板12に設けられたハウジング14に内臓された2個の軸受15により回転自在に保持されている。軸体4にはブラケット16が取付られ、それに図5に示す様に2個のガイド8が設けられている。図6で2個のガイド8の間には接触子18が動ける隙間が設けられ、支点30を中心にスイングして動けるようになっている。図1で2個のガイド8は図1のエヤ-シリンダー35によりワーク7の方向に加勢され、軸体4が回転自在に保持されるため、回転して2個のガイド8が2個共ワーク7に接触するようになる。図4にガイド8がワーク7に接する側面図を示している。
【0037】
図5で軸体4の下にはレバー19が固定されており、その端に支点30が設けられ、これに回転自在に設けられたアーム20が設けられ、その端に接触子18が取り付けられ、2個のガイド8の間をスイングして動く様になっている。図6で支点30は2個のガイド8のワーク側の接線上にある。また図6ではワーク7、ガイド8、接触子18の配置関係を示しており、図5でレバー19とアーム20はスプリング21で結ばれ接触子18がワーク7に接触する方向に加勢されている。
【0038】
図3でワーク7は摩擦板6に乗せられ、上から回転自在に保持されたスラスト軸受33で押えられている。スラスト軸受33はハンドル31により上下に調整出来、溶断加工の場合は下方に調整してワーク7を押え、ワーク7の交換の場合は上方に調整する。上下調整はねじ32をハンドル31を回すことで行う。
【0039】
第12図に示すように接触子18が取り付けられたアーム20には溶断用噴射ノズル40が取り付けられ、その噴射方向、上下位置は調整調整可能になっており、溶断量は調整ねじ41で噴射ノズル40の上下位置を変える事で、溶断方向はクランプデバイス23で噴射ノズル40の方向(角度)を変える事で行う。
【0040】
本発明は以上に述べた構成をしているが、肝心な事は複雑な連続形状をしているワーク7の溶断部稜線に対し溶断噴射手段の噴射方向が連続して、自動的に直交に近い角度を保つ事である。
【0041】
一般的な形状の場合を図6で説明する。この図で接触子18がスイングする回転中心は支点30で、それは2個のガイド8のワーク側の接線上にあり、この接線と接触子18が描く円周は直交する。接触子18と一体になっている切断ノズル40も接触子18と同じ動きをする。この事は2個のガイド8に接する接線と2個のガイド8がワークに接する部分を結ぶ線が殆ど重なり合う事から図6に示すように切断手段のゼット噴射方向はワーク7に接する部分の稜線に大体直交して動き、角、直線、自由曲線等で形成されるワークの溶断面取がワーク7の外周に直交方向に行なわれる。
【0042】
ワーク7の形状に90°近い角がある特殊なケースの溶断面取りを説明する。図7に示すように2個のガイド8の間に隙間(5〜6mm)があり、それに90°近い角(かど)が入ることにより、ワークの角の部分が少し移動(回転移動)するだけで接触子と溶断ノズルが90°近く回転する。図9に接触子(噴射ノズルも同じ動き。)が連続して90°近く旋廻する状態を示している。この様にする事で角の前の直線部分から次の直線部分に速やかに接触子及び溶断ノズルが回転移行して溶断面取を行なう。図8は角が隙間に入る直前の状態を示している。
【0043】
また、ワーク7の全周の溶断面取については前述の通りであるが、ワーク7の1部だけ溶断面取が必要とされるケースも多いい。図10に示す様に着脱可能なブロック45(マグネット又はねじでワークに固定。)をワーク7に取付け、2個のガイド8のうち、1個はブロック45に乗り、片方の一個はワーク7に乗る状態で溶断を開始すれば、ワーク7の50で示す面の左端から溶断はスタートする。
【0044】
次に図11に示す様に着脱可能なブロック46(マグネット又はねじでワークに固定。)をワーク7に取付け、2個のガイド8のうち、1個はブロック46に乗り、片方の一個はワーク7に乗る状態で溶断が終われば、ワーク7の50で示す面だけが溶断される。このよう様にしてワーク7の一部だけの溶断面取りが可能になる。ブロック45、ブロック46は取外し、繰り返し使用できる。
【0045】
以上説明したように直線、曲線、角等で形成されるワークを回転しながら溶断開先加工をする場合について述べたが、この場合溶断ノズルの噴射方向はワークの外周に大体直交して溶断面取が出来る。
【実施例2】
【0046】
次に、ワーク71を固定し接触子及び開先溶断ノズルがワーク71の外周をトレースしながら面取りする場合について述べる。図14はこの装置の平面図でX軸、Y軸駆動によりX−Y面上を駆動される移動体42を示している。
【0047】
図15は移動体42に回転自在に維持された軸体400、軸体400にスイング可能に設けられたアーム41、それに設けられ、ばね59によりワーク71に接圧される2個のガイド81と、アーム41の下部に設けられたアーム191に回転自在に設けられたアーム201と、それに設けられ、ばねによりワーク71に接して動く接触子181と、接触子181と一体に設けられた、開先溶断ノズル401を示している。
【0048】
図16は図15の側面図である。
【0049】
図13で接触子181は、2個のガイド81が設けられているアーム41の下部に設けられたアーム191に回転自在に設けられた支点にスイング自在に設けられ、接触子181はバネによりワーク71に圧接され、溶断ノズル401は接触子181と一体になっており同じ動きをする。
【0050】
アーム41が垂直に維持され、2個のガイド81が共にワーク71に接し、倣って動き、接触子181は2個のガイド81の隙間を通ってワーク71に接して動き、溶断ノズル401も同じ動きをする。従ってアーム41が垂直に維持され、2個のガイド81が共にワーク71に接して倣う事が肝要になる。従って2個のガイド81が固定されたアーム41を垂直に保ち、且つ2個のガイド81が共にワーク71の外周に接して倣う方法を説明する。
【0051】
ワーク71と2個のガイド81との位置関係を図17に示す。この図でVは速度設定電圧で、モーターのドライバーに印加してモーター速度をコントロールする。これを大きくすれば2個のガイド81は高速でワーク71を倣って動き、小さくすれば低速でワーク71を倣って動き、この電圧を手動で調整して溶断開先加工速度をきめる。
【0052】
図17でa°は2個のガイド81とワーク71が接する部分のワーク71の接線方向の角度で、図15のロータリーエンコーダー50のデーター(左回転が+)から算出できる。
【0053】
図18でK×b°のb°は図15の軸体400の中心線と、アーム41の間の交差角で図16のロータリーエンコーダー55のデーター(左回転が+)から算出できる。
【0054】
Kはプラスの係数(ゲイン)であり、シーケンサーのソフトに書き込む。これを調整する事でアーム41を垂直に維持する作用効果をコントロールする。これを大きくする事でアーム41はより速く垂直になる。
【0055】
図14で移動板42は直交する2本のボールネジ45,46により駆動され、LMガイド47、48により水平に支持されて動く。図15で2個のガイド81は移動体42に回転自在に取り付けられた軸体400にスイング可能に取り付けられたアーム41にブラケット57を経由して取り付けられている。
【0056】
移動体42はサーボによるX軸(横軸)−Y軸(縦軸)により縦横駆動され、それに回転自在に設けられている軸体400は上部にロータリーエンコーダー50が連結されており、そのカウントデーターから、2個のガイド81のワーク71側の接線の方向を算出する事が出来る。その方向と横軸(X軸)との交差角をa°(左回転が+)とする。
【0057】
回転自在に保持された軸体400とアーム41はピン58でスイング可能に結ばれ、アーム41自体はばね59により2個のガイド81がワーク71に接する方向に加勢されている。アーム41のスイング角度は図14のロータリーエンコーダー55のカウントデーターから算出出来る。軸体400の中心線とアーム41との間の交差角は前述のようにb°(左回転が+)である。
【0058】
アーム41は垂直な状態を維持しながら、それに設けられた2個のガイド81がワーク71の外周に沿って動く事が望ましい。この場合b°は0°になるが、通常アーム41は垂直な状態から少し傾いてくる。そのためこのb°を利用する事で常にアーム41を垂直になる方向に制御する必要がある。
【0059】
縦軸のドライバー、及び横軸のドライバーに印加する電圧をVY、VXとし
VY=V×sin(a°― K×b°)ボルト
VX=V×cos(a°― K×b°)ボルト
(但しVはガイドの倣い速度設定電圧
K はゲインでソフトに入力する。)
とし、これらの電圧をシーケンサーにより算出し、それぞれのサーボドライバーに印加すれば、2個のガイドの進行方向はX軸に対し(a°― K×b°)になる。このK×b°はアーム41と軸体400の交差角が0度になるように働き、Kを大きくすればより急速に両者の間の交差角は小さくなる。この事は2個のガイド81はワーク71の外周に沿って動きながらアーム41(ガイド、接触子、溶断手段が取り付けてある。)が常に垂直になる方向に働く。この作用の効果で2個のガイド81はワーク71の外周に沿いながら、且つアーム41を垂直に保ちながらワークの外周に沿って動き、接触子181はワーク71の外周をなぞり、切断手段の噴射方向はワーク71の外周に直交して動き面取りする。
【0060】
図17に交差角b°が0°の場合のVY、VXを示し、図18にb°がマイナスの場合のVY、VXを示している。
【0061】
以上に示す方法でワーク71を固定し、その外周を2個のガイド71が倣いながら自動で動く事が可能になる。接触子と溶断手段は実施例1で示した同じ原理でワークの外周をなぞり、溶断手段はワークの外周に直交しながら溶断面取りを行う。
【0062】
以上のようにして請求項1〜請求項11の発明を実施すればワーク回転、ワーク固定、のいずれの場合でもワーク全周の溶断面取りが一回の段取りで自動的に行われ、かつ安価なコストで溶断面取りが行なわれ効率的、経済的である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
ガス等によるこの発明による開先切断はアセチレン、プロパン、レーザー、プラズマ等に広く応用でき、又被切断材も鉄、ステンレス、アルミ等が切断可能で広く産業会に貢献出来るものと考えられる。
【符号の説明】
【0064】
1 架台
2 減速モーター
3 垂直ブラケット
4 軸
5 減速モーター出力軸
6 ワーク駆動板
7 ワーク
8 ガイド
14 ワーク押えブラケット
18 接触子
20 スイングバー
40 噴射ノズル
41 調整ねじ
42 角度調整デバイス
【技術分野】
【0001】
本発明は機械フレーム等に使用する鋼板の周囲形状の溶断開先加工機に関する。一般に機械等の構造は鋼板の溶接による事が多いが、溶接強度を上げるため溶接部の一部を溶断切断で開先面取し、その部分に溶接肉盛して溶接強度をあげている。
【背景技術】
【0002】
溶断による開先加工は切断噴射手段の噴射方向を常にワークの切断部の稜線に対し90°(直交)近くに維持する事が望ましい。直角(角)、曲線、直線等が入組んだ複雑な形状のワークでは連続して切断噴射手段の噴射方向をワーク稜線に直交近くに維持することが難しいため、従来市販されている自動溶断開先加工機はワークの直線部分だけを段取を変えながら数度にわたって溶断開先加工している。また、自由曲線で構成されるワークの自動溶断開先加工機は市販されていない。この他ロボット制御による高額(数千万円程度)な溶断開先加工機による方法か、フライス盤(工作機械)による方法があるが、これらは高コストで、データ―入力が必要で、手間と時間が掛かり、高価で、専門技術も必要で一般的には普及していない。
【0003】
また、自由曲線のワークの自動溶断開先加工機の特許(特許文献1)が出願されているが市販はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30078
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の溶断開先加工機ではワークと同じ形状をしたモデル(テンプレート)を固定し、その外周を一対のスタイラスローラー(ガイドローラー)と規制ローラーで倣い、その動きで切断トーチをコントロールし、ワークの溶断開先加工をしている。しかし、この場合テンプレートの重心の真下にワークの重心が来る必要があり、更にテンプレートの回転方向の位相とワークのそれが一致しなければ正確な溶断開先加工は出来ない。ワークを取替える度毎に自由曲線で構成されるワークの重心を求め、それをモデルの重心の真下にセットし、更に両者の回転方向の位相を合わせる作業が必要となり、大きな労力と時間が必要となる問題点があった。
【0006】
また、自由曲線で構成されるワークに角(90°のケースが多い。)がある場合には切断ノズルの噴射方向が角の部分を通過するとき、通過前の方向から急激に方向転換(ワークが矩形の場合90°。)する必要がある。従来の溶断開先加工機ではこの機構を具備しておらず、従ってワークの角の部分の正確な溶断開先加工は出来ないのが現状である。角の部分の溶断開先加工の必要度は大きく、この加工が出来ない事は問題である。
【0007】
また、直線、自由曲線、角等で構成されるワークの一部だけの溶断開先加工の必要性も大きく(例えば矩形の場合の1辺のみ。)、従来の溶断開先加工機ではこの機能を具備しておらず、不自由が感じられてきた。
【0008】
また、従来の溶断開先加工機では駆動サーボの配線、規制ローラーに設けられているトーチアーム、溶断ガス配管等が360°回転する必要があるが、それらが機械フレーム(例えば特許文献1の第1アーム、第2アーム。)と干渉して360°迄回転出来ない問題があった。
【0009】
更に、従来の溶断開先加工機従来の溶断開先加工機では、1対のスタイラスローラーをモデルに圧接して倣う為に、スタイラスローラーを磁石製にし、それを回転駆動する為にサーボモーターを使用しており、装置が複雑で高価になる問題があった。
【0010】
また、従来の溶断開先加工機ではモデルの製作が必要で、溶断開先加工が終了しても、最後にモデル1個が無駄になる問題があった。
【0011】
本発明は以上に示した欠陥を除き、モデルが不必要でワークの取付が簡単で、精度良く溶断開先加工が出来、角、自由曲線、直線などが混在するワークでも1回の段取りで全周溶断開先加工が出来、また全周の一部だけの溶断開先加工も出来、構造も簡単で低コストの全周自動溶断開先加工機を提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の課題解決手段は請求項1に示す様にモデルを使用せず、直接ワークを2個のガイド、及び接触子で倣う方式を取っており、ワークを回転し、回転自在に保持され、ワークの方向に移動、押圧手段をもつ2個のガイドと、2個のガイドの間を経てワークに接し押圧する手段を持つ接触子と、接触子と同じ動きをする噴射切断手段により溶断開先加工をする様にした事である。
【0013】
また、第2の課題解決手段は請求項3に示す様に2個のガイドの間の隙間にワークの角が入ることにより、ワークが回転する事で、接触子と噴射切断手段が急激に回転し、ワークの角の両面で噴射切断手段の噴射方向がワークの外周に直交する事を可能にし、ワークの角の部分の溶断開先加工を可能にした事である。
【0014】
また、第3の課題解決手段はワークを回転する事で、それに接圧して動く2個のガイド、接触子、その他エヤー配管、電気配線等が小さい角度の範囲のスイングだけで済み加工機のフレームとの干渉がなく全周(360°)の溶断開先加工を可能にした事である。
【0015】
この他溶断開先手段の噴射方向をワークの外周に直交する様にするため、2個のガイドのワーク側接線方向にアームを設け、それに支点を設け、接触子がそれを中心にスイングし、接触子が2個のガイドの間を経てワークに接し倣う接触子と、それと一体となって動く溶断開先手段を設け、噴射ノズルの噴射方向が常にワークの外周に直交する様にした。
【0016】
また、2個のガイドがワークの外周に2個共に接圧される様にするため、軸受で回転自在に保持した軸に2個のガイドを取付け、それをワークの方向に圧接するようにした。
【0017】
また、溶断開先加工を行うワークの1部だけ(例えば矩形の2辺だけの溶断開先。)の溶断開先加工を行うためにワークに着脱可能なブロックを取付け、それにガイドの一方が乗ることにより溶断開先のスタート位置を調整し、ワークに着脱可能なブロックを取り付け、それにガイドの一方が乗ることにより溶断開先の終了位置を調整する事でワークの一部だけの溶断開先加工を可能にした。
【0018】
また、ワークを固定し2個のガイド及び接触子がその周りを倣って行う溶断開先加工を行なう為、固定されたワークと、交差する軸駆動により移動板を移動駆動し、それに設けられた回転自在な軸と、それに設けられたスイング可能に設けられたアームに設けられ、ワークの方向に押圧手段を持つ2個のガイドと、2個のガイドの間を経てワークに押圧する手段を持ち、ワークの外周に直交して動く接触子と、接触子と同じ動きをする溶断開先手段により溶断開先加工を行う様にした。
【0019】
最後に固定したワークの周りを2個のガイドが共にワークに接して倣う事を可能にするため2軸駆動(縦軸、横軸)のモーターに回転速度が印加電圧に比例して回転するモーター(サーボモーターはこの機能を有している。)を使用し、2個のガイドのワーク側の接線方向と横軸(X軸)との間の交差角a°(ロータリーエンコーダーにより測定)と、2個のガイドが設けられているアームと回転自在軸の中心線の間の交差角b°を利用して、2個のガイドが共にワークに接して倣う様にした。
【発明の効果】
【0020】
本発明は請求項1ないし請求項11に記載したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0021】
請求項1、2の発明のように接触子、2個のガイドが直接ワークに接して倣う為、モデルを必要とせず、ワークのセットに従来必要であった重心の位置合わせ、回転方向の位相合わせが不要になり、作業が能率的になる。
【0022】
また、接触子、2個のガイドが直接ワークに接して倣うので、倣いに誤差が発生せず正確な溶断開先加工ができる。
【0023】
請求項3、4の発明のように従来不可能であったワークの角の部分(90°)の溶断開先加工が可能になり、直線、自由曲線、角等で構成されるワークの全周の溶断開先加工が一回の段取りで可能になる。
【0024】
請求項5の発明の様に接触子が自動的にワークの外周に直交して動き、それと一体になっている溶断開先加工ノズルの噴射方向も自動的にワークの外周に直交して溶断開先加工を行なう事が可能になった。
【0025】
請求項6、7の発明の様に2個のガイドをワークの方向に押圧するだけで、2個のガイドが共にワークの外周に接する事が可能になった。
【0026】
請求項8のブロック、請求項9のブロックを使用することでワークの1部だけの溶断開先加工が可能になった。
【0027】
請求項10の発明で簡単なハンドル操作でワークの着脱が可能になった。
【0028】
請求項11の発明のようにモデルが不要で、従来データー入力が必要でコンピューターの制御に頼っていた固定したワークの溶断開先加工が、データー入力が不要で、シーケンサーの制御だけで自動溶断開先加工が可能になった。
【0029】
上述したように本発明の溶断開先加工機は直線、角、曲線等よりなるワークの開先溶断を、一回の作業で全周、自動で行える事が出来、簡単な作業で、低コストで能率的な自働溶断開先加工が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】自動溶断開先加工機の平面図である
【図2】自動溶断開先加工機の側面図である
【図3】ワーク回転駆動機構の側面図である
【図4】回転自由に保持される軸体とガイドの関係図
【図5】回転自由に保持される軸体と接触子、ガイド、ワーク関係図
【図6】一般的なワークの場合のガイド、接触子、溶断手段の位置関係を示す図
【図7】2個のガイドの間にワークの角が入った状態を示す図
【図8】2個のガイドの間にワークの角が入る前の状態を示す図
【図9】ワークの角の部分で接触子、ガイド、溶断手段の回転移動図
【図10】ワークの1部分の溶断面取で、溶断スタート治具の使用方法を示す図
【図11】ワークの1部分の溶断面取で、溶断終了治具の使用方法を示す図
【図12】ワーク回転の場合の溶断手段組立図
【図13】ワーク固定の場合の溶断手段組立図
【図14】ワークが固定の場合のX−Y駆動図
【図15】ワークが固定の場合のガイド関連正面図
【図16】ワークが固定の場合のガイド関連側面図
【図17】ワーク固定の場合、b°が0°の場合のガイドとワークの接触状態図
【図18】ワーク固定の場合、b°が負の場合のガイドとワークの接触状態図
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施例1でワークを回転駆動し、それに2個のガイドを押圧し、2個のガイドが共にワークに接触する状態で2個のガイドのワーク側接線に直交する方向を溶断手段の噴射方向とし、ワークの外周の認知を接触子で行い、噴射方向と外周の認知の両者の組合により溶断開先加工をおこない、更に2個のガイドの間の隙間にワークの角が入ることにより接触子と溶断手段が高速に回転駆動され、従来不可能であったワークの角(かど)の両面で溶断手段の噴射方向がワーク外周に直交して面取出来る様にした。更に、ワーク外周の1部だけの自動溶断開先加工を可能にした。
【0032】
実施例2では、ワークを固定しその周りを2個のガイドと、接触子と、溶断手段が廻りながらワークの外周を溶断開先するケースを述べるが、2個のガイドと、接触子と、溶断手段の関係は実施例1のケースと変わらないので、ここでは2個のガイドがワークの外周を自動で追従して倣う機構を説明する。
【実施例1】
【0033】
ワークを回転して開先溶断を行なう場合を実施例1で説明する。実際の加工装置を図1〜図3で説明する。図1は装置の平面図、図2は装置の側面図、図3はワーク押圧部の側面図を示している。これらの図で1は装置の架台でその上に減速モーター2、垂直ブラケット3、ワーク押えブラケット14が設けられている。
【0034】
減速モーター2はその出力軸5を経て摩擦板6の上に置かれたワーク7を摩擦回転駆動している。
【0035】
垂直ブラケット3は2個の軸受28によりを回転自在に保たれた垂直軸9を持ち、それにつなぎ板10が設けられ、それにスライド部11を経て板12が設けられている。スライド部11はハンドル13を回す事で板12を上下に駆動出来る様になっており、これでガイド8、接触子18の上下位置を調整している。
【0036】
図4に軸体4の断面図を示す。軸体4は板12に設けられたハウジング14に内臓された2個の軸受15により回転自在に保持されている。軸体4にはブラケット16が取付られ、それに図5に示す様に2個のガイド8が設けられている。図6で2個のガイド8の間には接触子18が動ける隙間が設けられ、支点30を中心にスイングして動けるようになっている。図1で2個のガイド8は図1のエヤ-シリンダー35によりワーク7の方向に加勢され、軸体4が回転自在に保持されるため、回転して2個のガイド8が2個共ワーク7に接触するようになる。図4にガイド8がワーク7に接する側面図を示している。
【0037】
図5で軸体4の下にはレバー19が固定されており、その端に支点30が設けられ、これに回転自在に設けられたアーム20が設けられ、その端に接触子18が取り付けられ、2個のガイド8の間をスイングして動く様になっている。図6で支点30は2個のガイド8のワーク側の接線上にある。また図6ではワーク7、ガイド8、接触子18の配置関係を示しており、図5でレバー19とアーム20はスプリング21で結ばれ接触子18がワーク7に接触する方向に加勢されている。
【0038】
図3でワーク7は摩擦板6に乗せられ、上から回転自在に保持されたスラスト軸受33で押えられている。スラスト軸受33はハンドル31により上下に調整出来、溶断加工の場合は下方に調整してワーク7を押え、ワーク7の交換の場合は上方に調整する。上下調整はねじ32をハンドル31を回すことで行う。
【0039】
第12図に示すように接触子18が取り付けられたアーム20には溶断用噴射ノズル40が取り付けられ、その噴射方向、上下位置は調整調整可能になっており、溶断量は調整ねじ41で噴射ノズル40の上下位置を変える事で、溶断方向はクランプデバイス23で噴射ノズル40の方向(角度)を変える事で行う。
【0040】
本発明は以上に述べた構成をしているが、肝心な事は複雑な連続形状をしているワーク7の溶断部稜線に対し溶断噴射手段の噴射方向が連続して、自動的に直交に近い角度を保つ事である。
【0041】
一般的な形状の場合を図6で説明する。この図で接触子18がスイングする回転中心は支点30で、それは2個のガイド8のワーク側の接線上にあり、この接線と接触子18が描く円周は直交する。接触子18と一体になっている切断ノズル40も接触子18と同じ動きをする。この事は2個のガイド8に接する接線と2個のガイド8がワークに接する部分を結ぶ線が殆ど重なり合う事から図6に示すように切断手段のゼット噴射方向はワーク7に接する部分の稜線に大体直交して動き、角、直線、自由曲線等で形成されるワークの溶断面取がワーク7の外周に直交方向に行なわれる。
【0042】
ワーク7の形状に90°近い角がある特殊なケースの溶断面取りを説明する。図7に示すように2個のガイド8の間に隙間(5〜6mm)があり、それに90°近い角(かど)が入ることにより、ワークの角の部分が少し移動(回転移動)するだけで接触子と溶断ノズルが90°近く回転する。図9に接触子(噴射ノズルも同じ動き。)が連続して90°近く旋廻する状態を示している。この様にする事で角の前の直線部分から次の直線部分に速やかに接触子及び溶断ノズルが回転移行して溶断面取を行なう。図8は角が隙間に入る直前の状態を示している。
【0043】
また、ワーク7の全周の溶断面取については前述の通りであるが、ワーク7の1部だけ溶断面取が必要とされるケースも多いい。図10に示す様に着脱可能なブロック45(マグネット又はねじでワークに固定。)をワーク7に取付け、2個のガイド8のうち、1個はブロック45に乗り、片方の一個はワーク7に乗る状態で溶断を開始すれば、ワーク7の50で示す面の左端から溶断はスタートする。
【0044】
次に図11に示す様に着脱可能なブロック46(マグネット又はねじでワークに固定。)をワーク7に取付け、2個のガイド8のうち、1個はブロック46に乗り、片方の一個はワーク7に乗る状態で溶断が終われば、ワーク7の50で示す面だけが溶断される。このよう様にしてワーク7の一部だけの溶断面取りが可能になる。ブロック45、ブロック46は取外し、繰り返し使用できる。
【0045】
以上説明したように直線、曲線、角等で形成されるワークを回転しながら溶断開先加工をする場合について述べたが、この場合溶断ノズルの噴射方向はワークの外周に大体直交して溶断面取が出来る。
【実施例2】
【0046】
次に、ワーク71を固定し接触子及び開先溶断ノズルがワーク71の外周をトレースしながら面取りする場合について述べる。図14はこの装置の平面図でX軸、Y軸駆動によりX−Y面上を駆動される移動体42を示している。
【0047】
図15は移動体42に回転自在に維持された軸体400、軸体400にスイング可能に設けられたアーム41、それに設けられ、ばね59によりワーク71に接圧される2個のガイド81と、アーム41の下部に設けられたアーム191に回転自在に設けられたアーム201と、それに設けられ、ばねによりワーク71に接して動く接触子181と、接触子181と一体に設けられた、開先溶断ノズル401を示している。
【0048】
図16は図15の側面図である。
【0049】
図13で接触子181は、2個のガイド81が設けられているアーム41の下部に設けられたアーム191に回転自在に設けられた支点にスイング自在に設けられ、接触子181はバネによりワーク71に圧接され、溶断ノズル401は接触子181と一体になっており同じ動きをする。
【0050】
アーム41が垂直に維持され、2個のガイド81が共にワーク71に接し、倣って動き、接触子181は2個のガイド81の隙間を通ってワーク71に接して動き、溶断ノズル401も同じ動きをする。従ってアーム41が垂直に維持され、2個のガイド81が共にワーク71に接して倣う事が肝要になる。従って2個のガイド81が固定されたアーム41を垂直に保ち、且つ2個のガイド81が共にワーク71の外周に接して倣う方法を説明する。
【0051】
ワーク71と2個のガイド81との位置関係を図17に示す。この図でVは速度設定電圧で、モーターのドライバーに印加してモーター速度をコントロールする。これを大きくすれば2個のガイド81は高速でワーク71を倣って動き、小さくすれば低速でワーク71を倣って動き、この電圧を手動で調整して溶断開先加工速度をきめる。
【0052】
図17でa°は2個のガイド81とワーク71が接する部分のワーク71の接線方向の角度で、図15のロータリーエンコーダー50のデーター(左回転が+)から算出できる。
【0053】
図18でK×b°のb°は図15の軸体400の中心線と、アーム41の間の交差角で図16のロータリーエンコーダー55のデーター(左回転が+)から算出できる。
【0054】
Kはプラスの係数(ゲイン)であり、シーケンサーのソフトに書き込む。これを調整する事でアーム41を垂直に維持する作用効果をコントロールする。これを大きくする事でアーム41はより速く垂直になる。
【0055】
図14で移動板42は直交する2本のボールネジ45,46により駆動され、LMガイド47、48により水平に支持されて動く。図15で2個のガイド81は移動体42に回転自在に取り付けられた軸体400にスイング可能に取り付けられたアーム41にブラケット57を経由して取り付けられている。
【0056】
移動体42はサーボによるX軸(横軸)−Y軸(縦軸)により縦横駆動され、それに回転自在に設けられている軸体400は上部にロータリーエンコーダー50が連結されており、そのカウントデーターから、2個のガイド81のワーク71側の接線の方向を算出する事が出来る。その方向と横軸(X軸)との交差角をa°(左回転が+)とする。
【0057】
回転自在に保持された軸体400とアーム41はピン58でスイング可能に結ばれ、アーム41自体はばね59により2個のガイド81がワーク71に接する方向に加勢されている。アーム41のスイング角度は図14のロータリーエンコーダー55のカウントデーターから算出出来る。軸体400の中心線とアーム41との間の交差角は前述のようにb°(左回転が+)である。
【0058】
アーム41は垂直な状態を維持しながら、それに設けられた2個のガイド81がワーク71の外周に沿って動く事が望ましい。この場合b°は0°になるが、通常アーム41は垂直な状態から少し傾いてくる。そのためこのb°を利用する事で常にアーム41を垂直になる方向に制御する必要がある。
【0059】
縦軸のドライバー、及び横軸のドライバーに印加する電圧をVY、VXとし
VY=V×sin(a°― K×b°)ボルト
VX=V×cos(a°― K×b°)ボルト
(但しVはガイドの倣い速度設定電圧
K はゲインでソフトに入力する。)
とし、これらの電圧をシーケンサーにより算出し、それぞれのサーボドライバーに印加すれば、2個のガイドの進行方向はX軸に対し(a°― K×b°)になる。このK×b°はアーム41と軸体400の交差角が0度になるように働き、Kを大きくすればより急速に両者の間の交差角は小さくなる。この事は2個のガイド81はワーク71の外周に沿って動きながらアーム41(ガイド、接触子、溶断手段が取り付けてある。)が常に垂直になる方向に働く。この作用の効果で2個のガイド81はワーク71の外周に沿いながら、且つアーム41を垂直に保ちながらワークの外周に沿って動き、接触子181はワーク71の外周をなぞり、切断手段の噴射方向はワーク71の外周に直交して動き面取りする。
【0060】
図17に交差角b°が0°の場合のVY、VXを示し、図18にb°がマイナスの場合のVY、VXを示している。
【0061】
以上に示す方法でワーク71を固定し、その外周を2個のガイド71が倣いながら自動で動く事が可能になる。接触子と溶断手段は実施例1で示した同じ原理でワークの外周をなぞり、溶断手段はワークの外周に直交しながら溶断面取りを行う。
【0062】
以上のようにして請求項1〜請求項11の発明を実施すればワーク回転、ワーク固定、のいずれの場合でもワーク全周の溶断面取りが一回の段取りで自動的に行われ、かつ安価なコストで溶断面取りが行なわれ効率的、経済的である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
ガス等によるこの発明による開先切断はアセチレン、プロパン、レーザー、プラズマ等に広く応用でき、又被切断材も鉄、ステンレス、アルミ等が切断可能で広く産業会に貢献出来るものと考えられる。
【符号の説明】
【0064】
1 架台
2 減速モーター
3 垂直ブラケット
4 軸
5 減速モーター出力軸
6 ワーク駆動板
7 ワーク
8 ガイド
14 ワーク押えブラケット
18 接触子
20 スイングバー
40 噴射ノズル
41 調整ねじ
42 角度調整デバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(7)回転手段と、回転自在に保持され、ワーク(7)の方向に移動、押圧手段をもつ2個のガイド(8)と、2個のガイド(8)の間を経てワーク(7)に接し押圧する手段をもつ接触子(18)と、接触子(18)と同じ動きをする溶断開先手段(40)よりなる溶断開先加工機。
【請求項2】
ワーク(71)を固定し、交差する2軸駆動(45,46)により移動板(42)を移動駆動し、それに設けられた回転自在な軸体(400)と、それに設けられスイング可能に設けられたアーム(41)に設けられ、ワーク(71)の方向に押圧手段を持つ2個のガイド(81)と、アーム(41)に設けられ2個のガイド(81)の間を経てワーク(71)に接し、押圧する手段を持つ接触子(181)と、接触子(181)と同じ動きをする溶断開先手段(401)よりなる溶断開先加工機。
【請求項3】
請求項1の発明でワーク(7)の角が2個のガイド(8)の間の隙間に入り移動する事で、接触子(18)、及び溶断手段(40)が回転駆動される駆動機構。
【請求項4】
請求項2の発明で2個のガイド(81)が移動し、その間の隙間にワーク(71)の角が入り、2個のガイド(81)が移動する事で接触子(181)、及び溶断手段(401)が回転駆動される駆動機構。
【請求項5】
請求項1、2の発明で2個のガイドのワーク側の接線方向に支点を設け、接触子がそれを中心にスイングし、2個のガイドの間を経てワークに接し、倣う接触子倣い機構。
【請求項6】
請求項1の発明で2個のガイドを回転自在に保持される軸体に設けるガイド回転自在機構。
【請求項7】
請求項2の発明で回転自在に設けられた軸体(400)にスイング可能に設けられたアーム(41)に2個のガイド(81)を設けるガイド回転自在機構。
【請求項8】
請求項1、2の発明でワークに着脱可能なブロックを取付け、それにガイドが乗る事で、開先溶断のスタート位置を調節する方法。
【請求項9】
請求項1、2の発明でワークに着脱可能なブロックを取付け、それにガイドが乗る事で、開先溶断の終了位置を調節する方法。
【請求項10】
請求項1の発明で回転駆動される受板(6)の上にワーク(7)を載せ、スラスト軸受(33)を経てワーク(7)を押圧し、押圧による摩擦力でワーク(7)を回転駆動するワーク回転駆動機構。
【請求項11】
請求項2の発明で2個の駆動軸(45,46)のモーター(47,48)に回転速度が印加電圧に比例して回転するモーター(サーボモーターはこの機能を有している。)を使用し、2個のガイド(81)のワーク(71)側の接線方向と横軸(X軸)との間の交差角a°と、2個のガイド(81)が設けられているアーム(41)と、回転自在軸(400)の中心線との間の交差角b°を利用して2個のガイド(81)が自動でワーク(71)の外周を倣って動く外周倣い機構。
【請求項1】
ワーク(7)回転手段と、回転自在に保持され、ワーク(7)の方向に移動、押圧手段をもつ2個のガイド(8)と、2個のガイド(8)の間を経てワーク(7)に接し押圧する手段をもつ接触子(18)と、接触子(18)と同じ動きをする溶断開先手段(40)よりなる溶断開先加工機。
【請求項2】
ワーク(71)を固定し、交差する2軸駆動(45,46)により移動板(42)を移動駆動し、それに設けられた回転自在な軸体(400)と、それに設けられスイング可能に設けられたアーム(41)に設けられ、ワーク(71)の方向に押圧手段を持つ2個のガイド(81)と、アーム(41)に設けられ2個のガイド(81)の間を経てワーク(71)に接し、押圧する手段を持つ接触子(181)と、接触子(181)と同じ動きをする溶断開先手段(401)よりなる溶断開先加工機。
【請求項3】
請求項1の発明でワーク(7)の角が2個のガイド(8)の間の隙間に入り移動する事で、接触子(18)、及び溶断手段(40)が回転駆動される駆動機構。
【請求項4】
請求項2の発明で2個のガイド(81)が移動し、その間の隙間にワーク(71)の角が入り、2個のガイド(81)が移動する事で接触子(181)、及び溶断手段(401)が回転駆動される駆動機構。
【請求項5】
請求項1、2の発明で2個のガイドのワーク側の接線方向に支点を設け、接触子がそれを中心にスイングし、2個のガイドの間を経てワークに接し、倣う接触子倣い機構。
【請求項6】
請求項1の発明で2個のガイドを回転自在に保持される軸体に設けるガイド回転自在機構。
【請求項7】
請求項2の発明で回転自在に設けられた軸体(400)にスイング可能に設けられたアーム(41)に2個のガイド(81)を設けるガイド回転自在機構。
【請求項8】
請求項1、2の発明でワークに着脱可能なブロックを取付け、それにガイドが乗る事で、開先溶断のスタート位置を調節する方法。
【請求項9】
請求項1、2の発明でワークに着脱可能なブロックを取付け、それにガイドが乗る事で、開先溶断の終了位置を調節する方法。
【請求項10】
請求項1の発明で回転駆動される受板(6)の上にワーク(7)を載せ、スラスト軸受(33)を経てワーク(7)を押圧し、押圧による摩擦力でワーク(7)を回転駆動するワーク回転駆動機構。
【請求項11】
請求項2の発明で2個の駆動軸(45,46)のモーター(47,48)に回転速度が印加電圧に比例して回転するモーター(サーボモーターはこの機能を有している。)を使用し、2個のガイド(81)のワーク(71)側の接線方向と横軸(X軸)との間の交差角a°と、2個のガイド(81)が設けられているアーム(41)と、回転自在軸(400)の中心線との間の交差角b°を利用して2個のガイド(81)が自動でワーク(71)の外周を倣って動く外周倣い機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−5548(P2011−5548A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118027(P2010−118027)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(505234144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(505234144)
【Fターム(参考)】
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