説明

溶液の安定化方法

【課題】亜鉛類と非イオン性界面活性剤とを含有する溶液中でこれらの成分の相互作用による白濁の発生を抑制し、安定な溶液を得る方法、ならびに、本方法を用いることで長期にわたり安定性が高く品質の優れた眼科用液剤を提供する。
【解決手段】亜鉛類及び非イオン性界面活性剤を含有する溶液に、亜鉛類1重量部に対し、エデト酸塩類を0.02〜1重量部の割合で配合し、さらにpHを4〜6.5とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛類と非イオン性界面活性剤とを同時に配合した溶液の安定性を高める方法、及びそのようにして得られる眼科用液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
硫酸亜鉛、乳酸亜鉛等の亜鉛類は、抗炎症作用を示すため薬効成分として、点眼薬や洗眼薬等の眼科用組成物をはじめ、医薬品、医薬部外品等に広く用いられている。
また一方で、通常、点眼薬や洗眼薬には、配合成分の安定性や溶解性を高めたり、使用感(官能性)を高めるために、添加物として界面活性剤が配合されている。
【0003】
しかしながら、亜鉛類は非イオン性界面活性剤と共存すると、経時的に白濁を生じ安定性が低下するとの問題がある。特に不溶性異物を含まないことが要求されている点眼薬、洗眼薬等の眼科用液剤においては、溶液の白濁はたとえ僅かなものであっても、品質へ及ぼす影響は無視できない。従って、白濁を形成せずに溶液を長期間安定に保存する方法が望まれていた。
【0004】
ところで、フラビン・アデニン・ジヌクレオチドとパラオキシ安息香酸エステル類を含む点眼剤に、金属性収斂剤を配合する際に生じる沈殿の生成を防止するために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはこれらのナトリウム塩類等を加え、安定な点眼剤を得る方法(特許文献1)が知られているが、ここでは金属性収斂剤を配合した際に生じる沈殿を防止するために必要となるEDTAの量は同モル以上と記載されている。しかしながら非イオン性界面活性剤との配合による沈殿に関しては何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−112010号公報(段落番号0004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、亜鉛類と非イオン性界面活性剤とを含有する溶液中において白濁の発生を抑制し、安定な眼科用液剤を得る方法を提供するものである。またさらには、長期にわたり安定性が高く品質の優れた眼科用液剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、亜鉛類と非イオン性界面活性剤とを含有する溶液の白濁化を抑制し、長期にわたり組成物の安定性を維持する方法を確立するために鋭意検討した結果、エデト酸塩類を組成物中に加えることによって白濁化が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記(1)〜(3)に掲げる方法である。
・ 亜鉛類及び非イオン性界面活性剤を含有する溶液に、エデト酸塩類を添加することを特徴とする、溶液の安定化方法。
・ 亜鉛類及び非イオン性界面活性剤を含有する溶液に、亜鉛類1重量部に対し、エデト酸塩類を0.02〜1重量部の割合で配合することを特徴とする(1)に記載の安定化方法。
・ さらにpHを4〜6.5の範囲とすることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の安定化方法。
また、本発明は、下記(4)〜(5)に掲げる眼科用液剤である。
(4)安定化剤としてエデト酸塩類を含むことを特徴とする亜鉛類及び非イオン性界面活性剤を含有する眼科用液剤。
(5)亜鉛類および非イオン性界面活性剤を含有する溶液に対し、エデト酸塩類を亜鉛類の量に対し0.02〜1重量部の割合で配合することを特徴とする請求項4記載の眼科用液剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の安定化方法では、亜鉛類および非イオン性界面活性剤を含有する液剤にエデト酸塩類を配合することにより、経時的に白濁等の外観の変化を生じることなく、品質が安定した、安全で有効な眼科用液剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中、特に言及しない限り、%はw/v%を意味するものとする。また、コンタクトレンズ(CL)という語句は、特記しない限り、ハード、酸素透過性ハード、ソフト等あらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する意味で用いる。また、本明細書において、眼科用液剤を単に「製剤」という場合がある。
【0010】
本発明の眼科用液剤に用いることができる亜鉛類としては薬理学的または生理学的に許容されるものであることを条件として特に限定されないが、例えば硫酸亜鉛、乳酸亜鉛が挙げられる。
【0011】
亜鉛類の眼科用液剤中の濃度は、例えば点眼薬の場合、通常0.01〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.3重量%の範囲、洗眼薬の場合、通常0.001〜0.1重量%、好ましくは0.005〜0.03重量%の範囲である。
【0012】
本発明の眼科用液剤の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と呼称)−ポリオキシプロピレン(以下、「POP」と呼称)ブロックコポリマー(ポロクサマー類)または、エチレンジアミンのPOE−POPブロックコポリマー付加物(ポロキサミン類)、またはPOEソルビタン脂肪酸エステル類(ポリソルベート類)、POE(60)硬化ヒマシ油等のPOE硬化ヒマシ油類、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類、POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類があげられる。なかでも好ましくはポロクサマー類、ポリソルベート類、POE硬化ヒマシ油類であり、特に好ましくはポロクサマー407、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60である。(なお、括弧内の数字は付加モル数を表す)。
これらの非イオン性界面活性剤は単独で配合されていてもよく、又は二種以上組み合わせて配合されていてもよい。
【0013】
本発明の眼科用液剤における非イオン性界面活性剤の眼科用組成物中の濃度は、用途や用いる界面活性剤の種類等により異なるが、例えば点眼薬の場合、通常0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%の範囲である。
【0014】
本発明の眼科用液剤に用いるエデト酸塩類としては、エデト酸またはその薬理学的にまたは生理学的に許容される塩を使用できる。薬理学的または生理学的に許容できる塩としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム(エデト酸ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸バリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エチレンジアミン四酢酸コバルトエチレンジアミン四酢酸銅、エチレンジアミン四酢酸ニアンモニウム、エチレンジアミン四酢酸ニリチウム、エチレンジアミン四酢酸ニカリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄、エチレンジアミン四酢酸ランタン、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム、エチレンジアミン四酢酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸ニッケル、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸亜鉛などが例示できる。なかでもエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ニカリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウムなどが好ましく、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムが特に好ましい。
【0015】
本発明の眼科用液剤におけるエデト酸塩類の配合量は、0.0005〜0.5%の範囲とすることが適当であり、好ましくは0.001〜0.1%の範囲である。0.0005%未満では、本発明における安定化効果が得られにくく、0.5%を超えると眼刺激が生じる可能性があり、好ましくない。
【0016】
また、本発明におけるエデト酸塩類の使用量は、亜鉛類1重量部に対して0.02〜1重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部とする。これは、亜鉛類に対してモル比0.01〜0.8、好ましくは0.01〜0.4に相当する。なお、この範囲を著しく外れると、本発明により得られる効果は低減する傾向にある。
【0017】
また、本発明における眼科用液剤のpHは、配合成分の安定性を考慮すると弱酸性から中性付近にすることが好ましく、特に4〜6.5付近とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明における安定化方法は、亜鉛類と非イオン性界面活性剤を含有する溶液にエデト酸塩類を配合して得られた組成物を原料として用いて、安定性が向上された組成物を製造する方法とも規定することができる。一方で本発明における安定化方法は亜鉛類と非イオン性界面活性剤を含有する溶液で経時的に生じる白濁の発生を抑制し、溶液の保存安定性が向上することから、溶液の白濁抑制方法とも言え、また白濁を抑制するために配合されるエデト酸塩類は、白濁抑制剤とも規定できる。
【0019】
本発明の眼科用液剤は、本発明の目的に反しない限り、亜鉛類、非イオン性界面活性剤以外の種々の成分を組み合わせて含有することができる。組み合わせることのできる成分としては、例えば、充血除去成分、他の抗炎症薬成分、他の抗ヒスタミン薬成分、殺菌薬成分、抗腫瘍薬成分、ホルモン類、タンパク質又はペプチド類、ビタミン類、アミノ酸類等が使用できる。本発明液剤に配合し得る成分としては、例えば、次のような成分が例示できる。
【0020】
充血除去成分:エピネフリン、エフェドリン、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン、メチルエフェドリン及びそれらの塩等。
【0021】
眼筋調節薬成分:アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、メチル硫酸ネオスチグミン等の第4級アンモニウム化合物及びそれらの塩等。
【0022】
抗炎症薬成分:セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、インドメタシン、ジクロフェナク、プラノプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム(meloxicam)、イプシロン−アミノカプロン酸、ベルベリン、アズレンスルホン酸、リゾチーム、サリチル酸メチル、グリチルリチン酸類、アラントイン及び薬理学的に許容される塩(例えば、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、ジクロフェナクナトリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、塩化リゾチーム等)等。
【0023】
抗ヒスタミン薬成分:例えば、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、イプロヘプチン、ケトチフェン、エメダスチン、クレマスチン、アゼラスチン、レボカバスチン、オロパタジン、クロモグリク酸、アンレキサノクス、メキタジン、ロラタジン(loratadine)、フェキソフェナジン(fexofenadine)、セチリジン(cetirizine)、イブジラスト、スプラタスト、ペミロラスト、及び薬理学的に許容される塩(例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イプロヘプチン、フマル酸ケトチフェン、フマル酸エメダスチン、フマル酸クレマスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸レボカバスチン、塩酸オロパタジン、クロモグリク酸ナトリウム等)等。
【0024】
殺菌薬成分:例えば、スルホンアミド類(例えば、スルファメトキサゾール、スルフィソキサゾール、スルフィソミジン及び薬理学的に許容される塩(スルファメトキサゾールナトリウム、スルフィソミジンナトリウム等)、アクリノール、第4級アンモニウム化合物(例えば、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、セチルピリジニウム及び薬理学的に許容される塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム等)、アルキルポリアミノエチルグリシン、ニューキノロン剤(ロメフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン等)等。
【0025】
ビタミン類:例えば、ビタミンA類(例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン及びその薬理学的に許容される塩類(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等))等、ビタミンB類(例えば、チアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、ピリドキサール、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、メチルコバラミン、デオキシアデノコバラミン、葉酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール、パントテン酸、パンテノール、ビオチン、コリン、イノシトール及びその薬理学的に許容されるこれらの塩類(例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサールカルシウム、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等))等、ビタミンC類(アスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸及びその誘導体及びその薬理学的に許容される塩類(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム等)等、ビタミンD類(例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロール及びその薬理学的に許容される塩類等)等、ビタミンE類(例えば、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン誘導体及びその薬理学的に許容される塩類(酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム等))等、その他のビタミン類(例えば、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン及びその薬理学的に許容される塩類(塩化カルニチン等)等。
【0026】
アミノ酸類:例えば、ロイシン、イソイロイシン、バリン、メチオニン、トレオニン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、チロシン、システイン、ヒスチジン、オルニチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリシルグリシン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)及びその薬理学的に許容される塩類(例えばアスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、塩酸システイン等)等。
【0027】
糖類:単糖類(例えば、グルコース等)、二糖類(例えば、トレハロース、ラクトース、フルクトース等)、オリゴ糖類(例えば、ラクツロース、ラフィノース、プルラン等)、セルロース又はその誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース等)、高分子糖類(例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸)およびその薬理学的に許容される塩類(例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等))、糖アルコール類(例えば、マンニトール、キシリトール、ソルビトール等)、鎮痒成分(クロタミトン、イクタモール、モクタモールまたはチモール酸等)等。
【0028】
その他の成分:ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン等。
これらの成分の含有量は、製剤の種類、活性成分の種類等に応じて選択でき、例えば、製剤全体に対して0.0001〜30%、好ましくは、0.001〜10%程度の範囲から選択できる。
【0029】
より具体的には,本発明の眼科用液剤において、各成分の好ましい含有量は、例えば、以下の通りである。
眼筋調節薬成分:例えば、0.0001〜0.5%、好ましくは0.0002〜0.1%。
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:例えば、0.001〜10%、好ましくは0.002〜3%。
抗ヒスタミン薬成分:例えば、0.0001〜10%、好ましくは0.001〜5%。
殺菌薬成分:例えば、0.001〜10%、好ましくは、0.01〜5%
ビタミン類:例えば、0.0001〜1%、好ましくは、0.001〜0.3%。
アミノ酸類:例えば、0.0001〜10%、好ましくは0.001〜3%。
【0030】
本発明の眼科用液剤は、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品等に使用される様々な成分や添加物を任意に選択、併用して製剤化することが可能である。以下に具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
糖類:例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、リブロース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、マルトース、トレハロース、スクロース、セロビオース、ラクトース、プルラン、ラクツロース、ラフィノース、マルチトール等、及びその薬理学的に許容される塩類等が挙げられる。
【0031】
増粘剤:例えば、多糖類またはその誘導体(アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、キャロブガム、グアーガム、グアヤク脂、クインスシード、ダルマンガム、トラガント、ベンゾインゴム、ローカストビーンガム、カゼイン、寒天、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリガラクツロン酸、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、エラスチン、ヘパリン、ヘパリノイド、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)、セラミド、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セルロースなど)、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン、リボ核酸、デオキシリボ核酸等、及びその薬理学的に許容される塩類等が挙げられる。
【0032】
界面活性剤:例えばアルキルジアミノエチルグリシン等のグリシン型、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型、イミダゾリン型等の両性界面活性剤、POE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等のPOEアルキルエーテルリン酸及びその塩、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のN−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−ココイルメチルタウリンナトリウム等のN−アシルタウリン塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のPOEアルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤等が挙げられる。POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレンの略である。また、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0033】
防腐・抗菌・殺菌剤:例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、アクリノール、塩化メチルロザニリン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、アルキルポリアミノエチルグリシン、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、クロロブタノール、イソプロパノール、エタノール、フェノキシエタノール、リン酸ジルコニウムの銀等の担持体、チメロサール、デヒドロ酢酸、クロルキシレノール、クロロフェン、レゾルシン、チモール、ヒノキチオール、スルファミン、リゾチーム、ラクトフェリン、トリクロサン、8−ヒドロキシキノリン、ウンデシレン酸、カプリル酸、プロピオン酸、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸またはその塩(ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸トリクロカルバン等)、ハロカルバン、チアベンダゾール、ポリミキシンB、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ポリリジン、過酸化水素、第四級アンモニウムポリマー(塩化ポリドロニウム(ポリクォーテリウム−1)、Glokill(商品名、ローディア社製)、ユニセンスCP(商品名、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、センカ社製)、WSCP(商品名、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン−(ジメチルイミニオ)エトレンジクロリド]を約60重量%含有、バックマン・ラボラトリーズ社製))、ビグアニド化合物(コスモシルCQ(商品名、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩を約20重量%含有、アビシア社製))等、及びその薬理学的に許容される塩類等が挙げられる。
【0034】
pH調整剤:例えば、塩酸、硫酸、乳酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、プロピオン酸、酢酸、アスパラギン酸、イプシロンアミノカプロン酸、グルタミン酸、アミノエチルスルホン酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、リジン、ホウ砂等、及びその薬理学的に許容される塩類等が挙げられる。
【0035】
等張化剤:例えば、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、ブトウ糖,マンニトール,ソルビトール等の糖類等が挙げられる。
【0036】
水溶性高分子物質:例えば、ゼラチン、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイド、アラビアゴム、キサンタンガム、トラガントガム等が挙げられる。
【0037】
無機塩類:例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、チオ硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
さらに、必要に応じて香料又は清涼化剤(例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール、メントン等が挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよいが、清涼感や香りなどの官能面や安全性の面から、l−メントール、d−メントール、dl−メントール、d−カンフル、dl−カンフル、d−ボルネオール及びdl−ボルネオール、ゲラニオールが好ましい。また、l−メントール、d−カンフル及びd−ボルネオールが特に好ましい。また、前記モノテルペンは、精油に含有した状態で使用することもでき、好ましい精油は、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ハッカ油、ケイヒ油、ローズ油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油等、これらのモノテルペンを1種類または2種類以上組み合わせて用いることもできる。)、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸オキシブプロカイン等)等を加えることができる。
【0039】
また、本発明は亜鉛類、非イオン性界面活性剤を含有する溶液に関して、これらの成分の相互作用による白濁の発生を抑制し、安定な溶液が得られる方法である。本発明の安定化方法は、亜鉛類、非イオン性界面活性剤を含有する溶液に、前述するエデト酸塩類を配合することによって達成することができる。なお、本発明の安定化方法に使用する亜鉛類、非イオン性界面活性剤、エデト酸塩類等の種類、配合割合、及び配合方法などは、本明細書にある眼科用組成物に関する記載に従って行うことができる。
【0040】
本発明によれば、眼科用液剤が長期にわたり白濁等の物性変化を生じることなく、安定に維持されるので、製品の品質管理が容易である。従って、本発明は、医薬品、医薬部外品等の広範な分野の眼科用液剤に適用することができる。本発明の眼科用液剤は、好ましくは点眼薬、洗眼薬、CL用剤である。とりわけ点眼薬、洗眼薬であることが好ましい。ここで、「CL用剤」とはコンタクトレンズを保存、洗浄、消毒するための組成物のみならず、コンタクトレンズ装着液をも含むコンタクトレンズを処理するのに用いられる組成物を包含するものである。本発明の組成物は必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧に調節される。許容される浸透圧は、100〜1200mOsm、好ましくは100〜600、特に好ましくは150〜400程度であり、生理食塩液に対する浸透圧比は、通常、0.3〜4.1、好ましくは0.3〜2.1、特に好ましくは0.5〜1.6程度である。浸透圧の調節は、既述の等張化剤、塩類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。
【0041】
本発明の眼科用液剤は、公知の方法により製造できる。例えば、蒸留水又は精製水、及び添加物を用いて亜鉛類及び非イオン性界面活性剤、及びエデト酸塩類を、本明細書における濃度範囲で混合して、所定の浸透圧及びpHに調整し、無菌環境下、ろ過滅菌処理し、洗浄滅菌済みの容器に無菌充填することにより製造できる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0043】
以下の表1に記載の処方に従い試験製剤(実施例1、2)、表2の処方に従い眼科用剤(点眼薬、洗眼薬)(実施例3〜10)を調製した。同様にして、比較例1〜2を調製し、60℃での安定性試験を行った。
安定性試験は詳細には以下の方法に従って行った。
なお、実施例及び比較例の製剤については、各成分を精製水に溶解し、浸透圧ならびにpHを調整後。全量を100mLとし、ろ過滅菌して褐色ガラス製アンプル管に封入し、60℃で7日間保管した。
所定の期間が経過したサンプルに対して、目視により白濁の有無を観察した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
比較例1と比較例2から、非イオン性界面活性剤が存在すると経時的に製剤に白濁が生じることが分かる。これに対してエデト酸ナトリウムが添加された実施例1〜10では、白濁が抑制され、保存安定性が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛類及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を含有する溶液に、亜鉛類1重量部に対し、エデト酸塩類を0.02〜1重量部の割合で配合することを特徴とする、コンタクトレンズ用剤の白濁抑制方法。
【請求項2】
さらにpHを4〜6.5の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の白濁抑制方法。
【請求項3】
亜鉛類及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を含有する溶液に、亜鉛類1重量部に対し、エデト酸塩類を0.02〜1重量部の割合で配合することを特徴とする、コンタクトレンズ用剤。
【請求項4】
さらにpHが4〜6.5の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載のコンタクトレンズ用剤。


【公開番号】特開2010−83895(P2010−83895A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294195(P2009−294195)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2003−135521(P2003−135521)の分割
【原出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】