説明

溶液供給装置および給液システム

【課題】揮発性の溶液などを供給するのに適した装置を提供する。
【解決手段】容器10の上壁を貫通するように設置される中空のピストン軸2と、ピストン軸2により支持されピストン軸と連動して容器に対して上下に動く受け皿3と、容器10内に設置されるシリンダ20と、ピストン軸2と繋がりピストン軸と連動してシリンダ20内を上下に動くピストン25と、シリンダ20の内部においてピストン25に対し上方の力を与えるバネ30とを有する溶液供給装置50を提供する。シリンダ20の下方に設けられた連通口の溝23の開口面積S2は中空のピストン軸2の開口面積S1よりも小さく、受け皿3を下へ押すと、シリンダ20の内部の溶液9が中空のピストン軸2を介して受け皿3へ吐出され、受け皿3を下へ押す力を開放すると、ピストン25がバネ30に押されて上方へ戻り、受け皿3に残った溶液9が中空のピストン軸2を介して回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部の受け皿に溶液を吐出するタイプの溶液供給装置およびそれを用いた給液システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、洗剤容器に装着されたバネ復帰式押し下げポンプを備え、最上部の押し下げ部の上面に受皿及び吐出口を設けたポンプ式洗剤塗り付け器具が開示されている。この器具では、バネ復帰式押し下げポンプの押し下げ部の上面の受皿の上に、洗剤を塗り付けるスポンジを押し当て、受皿を1〜2回押し下げる。洗剤はポンプによって吸い上げられ、受皿の中央部の吐出口より吐出して、受皿に押し当てられているスポンジに塗り付けられる。洗剤は、受皿によって、周囲に飛散したり漏れ出すこと無く、有効にスポンジに塗り付けられ、また泡などが残っても受皿の中央部に集まり、外側に流れ出すことも無い。
【特許文献1】実開平04−1163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ペンキ・インク汚れ、油汚れなどを拭き取るための溶液(有機溶剤、洗浄液など)の一部は、揮発性、嫌気性、毒性などの要因により、使用時に大気に露出した状態で放置することが環境、安全、健康などの面で好ましくないものがある。しかしながら、従来のバネ復帰式押し下げポンプは、吐出した溶液は受け皿に溜まり容器には戻らない。
【0004】
そこで、容器内の溶液を上部の皿部に吐出し、その液を布やスポンジなどにしみ込ませて、ペンキや油汚れを容易に拭くことができるようにするタイプの供給装置においても、使用残液は皿部に残るのではなく、できるだけ元の容器に戻ることが好ましい。すなわち、簡単な操作で、使用するだけの液量を受け皿に吐出させ、受け皿に残った溶液は容器に戻る溶液供給装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、溶液を保持可能なほぼ密閉型の容器の上壁を貫通するように設置される中空のピストン軸と、中空のピストン軸により容器の上部に支持される受け皿であって、中空のピストン軸と連動して容器に対して上下に動く受け皿と、容器内に設置されるシリンダと、中空のピストン軸と繋がり中空のピストン軸と連動してシリンダ内を上下に動くピストンと、シリンダの内部においてピストンに対し上方の力を与えるバネとを有する溶液供給装置である。この溶液供給装置においては、シリンダは、シリンダの下方に設けられた連通口であって、容器に対して中空のピストン軸の開口面積よりも小さな開口面積で連通する連通口を含む。この溶液供給装置では、受け皿を下へ押すと、シリンダの内部の溶液が中空のピストン軸を介して受け皿へ吐出され、受け皿を下へ押す力を開放すると、ピストンがバネに押されて上方へ戻り、受け皿に残った溶液の少なくとも一部が中空のピストン軸を介して回収される。
【0006】
従来のバネ復帰式押し下げポンプでは、ポンプの吸込口にボール弁が設けられており、ピストンが上昇するとボール弁が押し上げられて洗剤がポンプの内部に満たされる。ピストンが下降するとボール弁は下方に押し付けられて閉じるので、ポンプ内の洗剤は中空のピストン軸の内部を上昇して、吐出口より受け皿上に吐出される。したがって、ポンプ内部には常に容器側から洗剤が満たされ、ボール弁で逆流しないようにしているので、受け皿に残った液体の回収は困難である。
【0007】
これに対し、本発明の一態様の溶液供給装置においては、中空のピストン軸の開口面積よりも小さな開口面積の連通口を設けている。この溶液供給装置では、受け皿が押されてピストンが押し下げられるとシリンダ内が加圧され、そのときに発生する連通口の差圧よりも中空のピストン軸内部の連通管の差圧を小さくすることができる。したがって、ボール弁などの逆止弁を用いずに、受け皿を下へ押してピストンを上下させることによりシリンダ内部の溶液を受け皿に吐出できる。
【0008】
この溶液供給装置において、受け皿を下へ押す力を解放すると、シリンダ内のピストンがバネに押されてシリンダ内が負圧になる。この場合も、そのときに発生する連通口の差圧よりも中空のピストン軸内部の連通管の差圧を小さくすることができる。このため、受け皿に残った溶液をシリンダへ回収できる。さらに、ピストンが動いた後は、連通口を介してシリンダ内は容器と繋がっているので、消費された分はシリンダ内に容器から充填される。また、連通口を介してシリンダ内は容器と繋がって均圧になるので、ピストンが動かなくても受け皿に残った溶液は回収でき、受け皿やピストン軸の吐出口近傍に溶液が溜まった状態になることを抑制できる。
【0009】
ピストンを押し上げるバネは、円錐状のコイルバネであることが望ましい。この溶液供給装置は、ボール弁などの逆止弁を用いておらず、ピストンを上下するストロークを繰り返しても効果的に溶液を受け皿へ吐出できるとは限らない。したがって、ピストンが一回で動くストロークを大きくすることが望ましい。円錐状のコイルバネを採用することにより、バネが圧縮されたときのバネ(コイル)の重なりを抑制でき、ピストンの降下量の減少を防ぎ、シリンダの長さに対して大きなストロークを確保できる。
【0010】
シリンダは、上部が開放されていることが望ましい。受け皿に吐出できる量、受け皿に残った溶液を強制的に(吸引)回収できる量は、ピストンが上下に動く速度に依存する。シリンダの上部を開放することにより、ピストンの反対側に溶液が流入する面積を確保できるので、ピストンを上下に動かす際の負荷を軽減でき、ピストンの上下動がスムーズになる。
【0011】
シリンダは、さらに、底が開放されていることが望ましい。この溶液供給装置は、ボール弁などの逆止弁は不要なので、シリンダの底が開放されていても良く、受け皿を下に押すことにより、シリンダの端は容器の底に押し付けられてシリンダと容器との間に適度な連通口を形成できる。シリンダの底を開放することにより、シリンダの構成を簡易にできる。連通口を確実に確保するために、シリンダの下端に小さな注入溝を設けておいてもよい。
【0012】
受け皿と中空のピストン軸との接続部分を覆うように受け皿の内部に設けられた液受け網をさらに有することが望ましい。受け皿と中空のピストン軸との接続部分は、溶液の吐出口となる。したがって、液受け網で覆うことにより、吐出口が布やスポンジで塞がれることを防止でき、十分な量の溶液を受け皿に供給でき、それとともに液受け網の下に残った溶液を中空のピストン軸を介して回収できる。
【0013】
受け皿と中空のピストン軸との接続部分の開口面積を制御可能な吐出量調整ネジをさらに有することが望ましい。受け皿と中空のピストン軸との接続部分は吐出口となるので、開口面積を制御することにより吐出量を調整でき、必要十分に近い溶液を受け皿に供給できる。
【0014】
本発明の異なる態様は、上記に記載の溶液供給装置と、容器とを有し、中空のピストン軸が容器の上壁を貫通して設置されている給液システムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、実施形態に係る溶液供給装置および給液システムの概要を斜視図により示している。図2に、溶液供給装置および給液システムの概略構成を断面図により示している。この給液システム1は、溶液9を保持可能なほぼ密閉型で円筒状の容器10と、その容器10に設置された溶液供給装置50とを備えている。溶液供給装置50は、容器10の上壁11を貫通する中空のピストン軸2と、中空のピストン軸2により容器の上部に支持された受け皿3とを含む。受け皿3は、中空のピストン軸2と連動して容器10に対して上下に動く。溶液供給装置50は、さらに、容器10の内部に設置された円筒状のシリンダ20と、中空のピストン軸2と繋がり中空のピストン軸2に連動してシリンダ20の内部を上下に動くピストン25と、シリンダ20の内部においてピストン25に対し上方の力を与えるバネ30とを有する。シリンダ20は、上部(上面)21および下部(底)22が開放されており、下端に連通口となる液注入溝23が設けられている。シリンダ20は、この溝(連通口)23を介して容器10と連通しており、シリンダ20に溶液9が満たされる。この溝23の開口面積S2は、中空のピストン軸2の開口面積、すなわち、中空のピストン軸2により形成された(ピストン軸2を通る)連通管2aの開口面積(断面積)S1よりも小さい。
【0016】
さらに、中空のピストン軸2には、その下端から補助パイプ60が挿入されている。補助パイプ60の下端61は斜めにカットされている。補助パイプ60はピストン軸2の内側を上下にスライド(摺動)し、ピストン25が上下に動いたときに、補助パイプ60の下端61が常に容器10の底15に付く構造となっている。したがって、容器10に入れられた溶液9のうち、底15に近い部分を中空のピストン軸2を通って上部の受け皿3へ吐出するようにしている。溶液9が回収されるときに不純物が混入したり、また、その他の要因により不純物が混入したときに、それらの不純物が容器10の底15に溜まることを抑止できる。また、容器10の底15に溜まった溶液9の最後の部分まで受け皿3へ吐出して利用できる。
【0017】
図3に示すように、この溶液供給装置50を備えた給液システム1においては、布、スポンジ90などを受け皿3に乗せて受け皿3を下へ押すと、シリンダ20の内部の溶液9が中空のピストン軸2による連通管2aを介して受け皿3へ吐出される。その後、受け皿3を下へ押す力を開放すると、図2に示すように、ピストン25がバネ30に押されて上方へ戻り、スポンジ90に付かず(吸収されず)、受け皿3に残った溶液9は中空のピストン軸2による連通管2aを介して容器10の中のシリンダ20に回収される。
【0018】
溶液供給装置50のピストン軸2は、容器10の上壁(天井)11の中央に、ピストン軸受け12および軸受け固定ねじ13を介して設置されている。そして、ピストン軸2は、ピストン軸受け12を貫通し、ピストン軸受け12の内部を上下にスライドする。したがって、容器10には、ピストン軸2が上壁11を貫通し、上下にスライドするように設置されているもののほぼ密閉されており、揮発性、嫌気性、毒性などの要因により、使用時に大気に露出した状態で放置することが、環境、安全、健康などの面で好ましくない溶液9を保持できる。
【0019】
受け皿3はその中央でピストン軸2に受け皿固定ねじ4により取り付けられている。図4に拡大して示すように、中空のピストン軸2による連通管2aと受け皿3とは連通しており、連通管2aの上端の開口が受け皿3に溶液9を吐出する吐出口5となっている。受け皿3の内部には、中空のピストン軸2の接続部分、すなわち、吐出口5を覆うように液受け網6が設けられている。溶液9の吐出口5を液受け網6で覆うことにより、吐出口5が布やスポンジ90で塞がれることを防止でき、十分な量の溶液9を受け皿3に供給できる。それとともに、スポンジ90に吸収されずに使い残された溶液9は液受け網6の下に残るので、吐出口5およびピストン軸の連通管2aを介して回収できる。
【0020】
受け皿3と中空のピストン軸2との接続部分である吐出口5には、その開口面積を制御可能な吐出量調整ネジ7が設けられている。吐出口5の開口面積を制御することにより吐出量を調整でき、必要十分に近い溶液9を受け皿3に供給できる。
【0021】
図5に、シリンダ20の構成を拡大して示している。シリンダ20の内部には、ピストン25が嵌め合わされており、ピストン25はシリンダ20の内部で上下にスライドする。ピストン25には、ピストン軸2の下端(連通管2aの下端の開口)が、ピストン25の下面、すなわち、シリンダ20の側に向くように嵌められており、ピストン軸2からなる連通管2aがピストン25の下面に表れ、シリンダ20の下側の空間と連通している。したがって、受け皿3を上下に動かすと、ピストン軸2を介してピストン25がシリンダ20の内部を上下にスライドし、溶液9をシリンダ20の内部で圧縮する。圧縮された溶液9は中空のピストン軸2の内部の連通管2aを介して受け皿3へ供給される。
【0022】
ピストン25がシリンダ20の内部を下方に動いてシリンダ20の内部の溶液9を圧縮する際、溶液9はピストン軸2の連通管2aを介して受け皿3へ供給されるだけではなく、シリンダ20の下端に設けられた液注入溝23を介して容器10に放出される。しかしながら、液注入溝23の開口面積S2は、連通管2aの開口面積S1に対して十分に小さく、溶液9が通過する際の差圧が十分に大きい。したがって、ピストン25が下側に適当な速度で押されてシリンダ20の内圧が急激に高くなると、シリンダ20の内部の溶液9のほとんどは、液注入溝23から容器10へ吐出されるのではなく、連通管2aを通って受け皿3へ吐出される。
【0023】
溶液供給装置50のシリンダ20とピストン25との間にはバネ30が取り付けられている。シリンダ20の底22は開放されており、バネ30は、シリンダ20の底22側のストッパ(C型止め輪)22sとピストン25との間に挿入されている。バネ30は、上方に尖った円錐状のコイルバネである。したがって、図3に示すように、バネ30は、上側から押されると、上下に重ならず、平面的に渦巻きを描くように収まる。このため、図3に示すように、縮んだバネ30を収納するためのスペースが小さくなり、ピストン25がシリンダ20の内部を上下に動く長さ(ストローク)を大きくできる。
【0024】
このバネ30は、シリンダ20に対してピストン25および受け皿3を上に押し上げる機能を持つ。同時に、受け皿3が下に押されたときにシリンダ20の底22を容器10の底15に押し付ける機能を果たし、受け皿3を下に押す力が開放されたときにもシリンダ20の底22を容器10の底15に押し付ける機能を果たす。したがって、シリンダ20は、底22が開放された簡易な構造であるが、ピストン25が下側に移動するとき、および上側に移動するときはシリンダ20の底22は容器10の底15に押し付けられ、ピストン25によりシリンダ20の内部の溶液9を加圧できる。また、ピストン25が上方にある定常的な状態では、シリンダ20の底22と容器10の底15との間に隙間が生じていてもよく、注入溝23だけではなく、シリンダ20の解放された底22を介しても、シリンダ20と容器10とは連通し、溶液9がシリンダ20の内部にスムーズに充填される。
【0025】
バネ30は、下側に尖った円錐状のコイルバネであっても良い。しかしながら、本例のように上方に尖った形状のコイルバネの方がシリンダ20にサポートし易い。
【0026】
シリンダ20の上側21も開放されており、ストッパ(C型止め輪)21sによりピストン25の上方への動きが制限されている。図6に示した例は、上方および底側が開放された円筒状のシリンダ20に代わり、底壁22wおよび上壁21wを備えたシリンダ29を採用した例である。このシリンダ29であると、ピストン25が下側に移動するときに、ピストン25の上側が負圧になり、ピストン25の移動、すなわち、受け皿3を下側に押すときに抵抗力が発生する。また、その後、ピストン25の上側に溶液9が満たされるので、受け皿3を下側に押す力を開放したときには、ピストン25が戻るときも抵抗力が発生する。したがって、ピストン25の上下をスムーズに行うことが難しく、ピストン25の移動スピードが上がり難く、注入溝23における差圧が立ちにくい(差圧が大きくなり難い)。このため、受け皿3への溶液の吐出する圧力が得られにくく、吐出量を増やしにくい。また、受け皿3に残った溶液を回収するための吸引力も得られにくくなる。また、円筒コイルバネ39であると圧縮されたときにバネ同士が重なるので、シリンダ29の高さに対してピストン25が上下に動くときの幅(変位、ストローク)を大きくできない。
【0027】
これに対し、図5に示したようにシリンダ20の上側21を開放にすると、シリンダ20の構造が簡易になるだけではなく、ピストン25を上下に移動したときにピストン25の上側が負圧になりにくく、ピストン25の上側の溶液9を放出するための抵抗が立ちにくい。したがって、ピストン25の上下動をスムーズに行うことができ、受け皿3を押す力が小さくなるとともに、ピストン25を高速で動かせる。このため、ピストン25の上下動によりシリンダ20の内部の圧力を急激に変動でき、注入溝23における差圧も大きくなる。したがって、注入溝23を介してシリンダ20から容器10に逆流したり、流れ込む溶液9の量を小さくできる。このため、効率良く溶液9を受け皿3に供給でき、受け皿3に残った溶液9を吸引して回収できる。また、円錐コイルバネ30なので、圧縮されたときにバネ同士が重ならず、シリンダ20の高さに対してピストン25が上下に移動するストロークを大きくできる。したがって、ピストン25を一回上下させるだけで十分な量の溶液9を受け皿3へ吐出できる。この溶液供給装置50においては、シリンダ20と容器10とを連通する注入溝23にはボール弁などの逆流を止める機構を設けていない。したがって、ピストン25の上下動を繰り返しても、それに応じて吐出量が増えるということはほとんど期待できない。このため、ピストン25の一回のストローク量を大きくすることは、十分な吐出量を確保するために重要である。
【0028】
この溶液供給装置50を備えた給液システム1の使用方法を纏めると以下のようになる。
1)スポンジ90または布を持った手で受け皿3の液受け網6の中心部を押し下げる。
2)ピストン軸2に圧入されたピストン25が下降し、シリンダ(シリンジ)20内の溶液9を加圧する。
3)加圧された溶液9は、中空のピストン軸2からなる連通管2aを通り上部に押し出される。その際、ピストン25の動きによりシリンダ20の内圧は急激に上昇するので、溝23においては開口面積S2が小さいので差圧が大きくなり、溶液9はシリンダ20から容器10に逆流し難い。
4)押し出された溶液9は、液受け網6に当たり、受け皿3の底面を外周まで広がり、液受け網6の小穴よりしみ出す。
5)しみ出た溶液は、手に持ったスポンジ30または布にしみ込む。
6)受け皿3を押していた手を離すと、円錐バネ30により受け皿3およびピストン25は上方へ押し戻される。
7)ピストン25が上方へ戻ることでシリンダ20の内部が負圧になる。その際、ピストン25の動きによりシリンダ20の内圧は急激に低下するので、溝23においては開口面積S2が小さいので差圧が大きくなり、溶液9は容器10からシリンダ20に流入し難い。
8)シリンダ20の内部の吸込み力により、ピストン軸2からなる連通管2aを通じ、受け皿3に残った溶液9がシリンダ20(容器10)に戻される。
9)消費された溶液分については、シリンダ20の下端にある溝23を通じて溶液9がシリンダ20に流入して充填される。その際、ピストン25は動かず、シリンダ20の内圧の変化はほとんどないので、溝23を通じて溶液9はシリンダ20の内部に容易に流入する。
【0029】
したがって、この溶液供給装置50および給液システム1においては、シリンダ20は、上下を開放した円筒状にすることが可能であり、簡易な構造で低コストに実現できる。このシリンダ20を採用すると、シリンダ29と比較して、ピストン軸2の動きがフリーになり、ピストン動作にきしみ等が発生しない。また、ピストン25および受け皿3を上方に押し上げる力と、シリンダ20を下側に押し下げる力を、一本の円錐バネ30で簡単に得ることができる。さらに、円錐バネ30を使用することで、バネ圧縮時のバネ重なりによるピストン25の降下量の減少を防ぐことができ、シリンダ20の長さを最短にできる。さらに、液受け皿3に取り付けられた吐出量調整ネジ7により、液吐出量を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】給液システムの概要を示す斜視図である。
【図2】溶液供給装置および給液システムの概略構成を示す断面図であり、受け皿が上がった状態を示す図である。
【図3】溶液供給装置および給液システムの概略構成を示す断面図であり、受け皿が下がった状態を示す図である。
【図4】受け皿とピストン軸との接続部分の構成を示す断面図である。
【図5】シリンダの構造を示す断面図である。
【図6】シリンダの異なる例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 給液システム
2 中空のピストン軸、 3 受け皿、 9 溶液
10 容器、 11 容器の上壁
20 シリンダ、 25 ピストン、 30 バネ
50 溶液供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を保持可能なほぼ密閉型の容器の上壁を貫通するように設置される中空のピストン軸と、
前記中空のピストン軸により前記容器の上部に支持される受け皿であって、前記中空のピストン軸と連動して前記容器に対して上下に動く受け皿と、
前記容器内に設置されるシリンダと、
前記中空のピストン軸と繋がり前記中空のピストン軸と連動して前記シリンダ内を上下に動くピストンと、
前記シリンダの内部において前記ピストンに対し上方の力を与えるバネとを有し、
前記シリンダは、前記シリンダの下方に設けられた連通口であって、前記容器に対して前記中空のピストン軸の開口面積よりも小さな開口面積で連通する連通口を含み、
前記受け皿を下へ押すと、前記シリンダの内部の溶液が前記中空のピストン軸を介して前記受け皿へ吐出され、前記受け皿を下へ押す力を開放すると、前記ピストンが前記バネに押されて上方へ戻り、前記受け皿に残った前記溶液の少なくとも一部が前記中空のピストン軸を介して回収される、溶液供給装置。
【請求項2】
請求項1において、前記バネは、円錐状のコイルバネである、溶液供給装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記シリンダは、上部が開放されている、溶液供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記シリンダは、底が開放されている、溶液供給装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記受け皿と前記中空のピストン軸との接続部分を覆うように前記受け皿の内部に設けられた液受け網をさらに有する溶液供給装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記受け皿と前記中空のピストン軸との接続部分の開口面積を制御可能な吐出量調整ネジをさらに有する溶液供給装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の溶液供給装置と、
前記容器とを有し、前記中空のピストン軸が前記容器の上壁を貫通して設置されている給液システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−298445(P2009−298445A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155198(P2008−155198)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(501469685)株式会社タック精工 (1)
【出願人】(500490457)井関産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】