説明

溶融メッキ鋼板の反応型後処理装置

【課題】 外観を損わずにスプレーリンガー方式で溶融メッキ鋼板に反応型後処理を施す。
【解決手段】 溶融メッキ帯鋼板を囲んだ処理室の上流区画内の帯鋼板の上側および下側に処理液スプレー装置が設けられ、前記区画に隣接した下流区画内に帯鋼板を上下から挟むリンガーロールが設けられている。上流区画内の入側と出側に液飛散防止板が設置され、液飛散防止板と鋼板との隙間は、30〜150mmに定められる。液飛散防止板は、Dをスプレーノズルから液飛散防止板までの距離、Vを鋼板の送り速度、tを処理ムラが発生する反応時間差としたとき、「Dmm≦Vm/min×tsec×1000mm/m÷60sec/min」の計算式を満足する位置に定められる。また、リンガーロールのエッジ部を覆うカバーが設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融メッキ鋼板の反応型後処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置として、連続して長さ方向に送られる溶融メッキ帯鋼板を囲んで処理室が設置され、その上流区画内の帯鋼板の上側および下側に処理液スプレー装置が設けられ、前記区画に隣接した下流区画内に帯鋼板を上下から挟むリンガーロールが設けられたものがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなスプレーリンガー方式で溶融メッキ鋼板に対し反応型後処理を施すと、スプレーした液が鋼板と衝突し、液が飛散することによる反応時間に差ができ、溶融メッキ鋼板に斑点状の処理ムラが発生していた。
【0004】
本発明は上記課題を解決し、外観を損ねることなくスプレーリンガー方式で溶融メッキ鋼板に反応型後処理を施すことができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1課題解決手段は、連続して長さ方向に送られる溶融メッキ帯鋼板を囲んだ処理室の上流区画内の帯鋼板の上側および下側に処理液スプレー装置が設けられ、前記区画に隣接した下流区画内に帯鋼板を上下から挟むリンガーロールが設けられたものにおいて、前記上流区画内の入側と出側に液飛散防止板が設置され、液飛散防止板と鋼板との隙間は、30〜150mmに定められ、前記液飛散防止板は、Dをスプレーノズルから液飛散防止板までの距離、Vを鋼板の送り速度、tを処理ムラが発生する反応時間差としたとき、「Dmm≦Vm/min×tsec×1000mm/m÷60sec/min」の計算式を満足する位置に定められることである。
【0006】
本発明の第2課題解決手段は、連続して長さ方向に送られる溶融メッキ帯鋼板を囲んだ処理室の上流区画内の帯鋼板の上側および下側に処理液スプレー装置が設けられ、前記区画に隣接した下流区画内に帯鋼板を上下から挟むリンガーロールが設けられたものにおいて、前記下流区画内にはリンガーロールのエッジ部を覆うカバーが設置され、該カバーの覆う範囲は、上側ロールの下流側で、鋼板に近い部分からロールの上側を覆うように上流側に屈曲し、下側ロールの下流側で、少なくとも鋼板に近い部分からロールの下流側を覆うように、かつ、ロールの両端面からロールの軸方向中程まで10〜150mmに定められることである。
【0007】
本発明の第3課題解決手段は、連続して長さ方向に送られる溶融メッキ帯鋼板を囲んだ処理室の上流区画内の帯鋼板の上側および下側に処理液スプレー装置が設けられ、前記区画に隣接した下流区画内に帯鋼板を上下から挟むリンガーロールが設けられたものにおいて、前記上流区画内の入側と出側に液飛散防止板が設置され、液飛散防止板と鋼板との隙間は、30〜150mmに定められ、前記液飛散防止板は、Dをスプレーノズルから液飛散防止板までの距離、Vを鋼板の送り速度、tを処理ムラが発生する反応時間差としたとき、「Dmm≦Vm/min×tsec×1000mm/m÷60sec/min」の計算式を満足する位置に定められ、前記下流区画内にはリンガーロールのエッジ部を覆うカバーが設置され、
該カバーの覆う範囲は、上側ロールの下流側で、鋼板に近い部分からロールの上側を覆うように上流側に屈曲し、下側ロールの下流側で、少なくとも鋼板に近い部分からロールの下流側を覆うように、かつ、ロールの両端面からロールの軸方向中程まで10〜150mmに定められることである。
【0008】
本発明の第4課題解決手段は、第1または第2または第3課題解決手段に加え、前記帯鋼板の上側のスプレーノズルは、鋼板上への処理液のボタ落を避けるように、鋼板の両縁直上から側方にずれていることである。
【発明の効果】
【0009】
スプレーリンガー方式で溶融メッキ鋼板に反応型後処理を施しても、外観を損ねる処理ムラの発生を抑制することができることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施態様を図面に示す一実施例に基いて説明する。図1,2において、連続して長さ方向に送られる溶融メッキ帯鋼板Aを囲んで、処理室1が設置される。その上流区画1a内の帯鋼板の上側および下側に、各々処理液スプレー装置21,22(供給管21a,22a,ノズル21b,ノズル22b)が設けられる。前記区画に隣接した下流区画内1bに帯鋼板を上下から挟むリンガーロール3が設けられている。
【0011】
ここで、前記帯鋼板の上側のスプレーノズル21bは、鋼板上への処理液のボタ落を避けるように、鋼板の両縁直上から側方にずれている。即ち、直管供給管21aは鋼板送り方向に平行で、かつ、鋼板の両縁直上から側方にずれている。また、下側のスプレー装置22では、直管供給管22aは鋼板幅方向に平行である。
【0012】
前記上流区画1a内の入側と出側に、液飛散防止板4a,4bが天井から垂下設置される。液飛散防止板と鋼板との隙間は、鋼板の形状不良時に接触するのを防止するため、
30〜150mmに定められ、板の幅は鋼板の幅と同じか、それより広い。
【0013】
また、前記液飛散防止板4の、スプレーノズル2bから帯鋼板の送り方向での距離は次のように定められる。即ち、Dをスプレーノズル2bから液飛散防止板までの距離、Vを鋼板の送り速度、tを処理ムラが発生する反応時間差としたとき、
「Dmm≦Vm/min×tsec×1000mm/m÷60sec/min」の計算式を満足する位置に定められる。ここで、処理ムラが発生する反応時間差tは、処理液の種類によって定まってくる。
【0014】
図2,3において、前記下流区画1b内には、リンガーロール3のエッジ部を覆うカバー5が設置される。該カバーの覆う範囲は、上側ロールの下流側で、鋼板に近い部分からロールの上側を覆うように上流側に屈曲し、下側ロールの下流側で、少なくとも鋼板に近い部分からロールの下流側を覆う範囲である。また、上下ロールの両端面からロールの軸方向中程まで、W=10〜150mmの範囲を覆うよう、処理室の両側壁の内面から張り出している。なお、カバー5を上下に分割してもよく、また、ロールの軸方向の全体を覆うようにしてもよい。この場合、カバー5と鋼板Aとの隙間は、鋼板の形状不良時に接触するのを防止するため、30〜150mmに定められる。
【0015】
従って、今、鋼板Aを速度Vで送っている状態で、スプレー装置2で処理液を噴射すると、鋼板に防止板4に当たり、一部は跳ね返って飛散する。このとき、防止板4に当たらない範囲の飛散滴はt時間以内であるから、鋼板に再び当ってもムラが生じない。防止板4に当たったものは防止板4に付着し、通常は鋼板に再び当たることがない。もし、鋼板に再び当たることがあっても、鋼板に当たる位置は上記計算式を満足しているため、ムラの発生を防止できることになる。
【0016】
また、リンガーロール3の回転に伴って、それに付着していた処理液はロールの両端部分に寄せられつつ、遠心力によって後方に飛散する。そして、これがロールカバー5に付着するので、鋼板に至ることなく、ムラの発生を防止できる。
【実施例】
【0017】
溶融亜鉛メッキ鋼板を、100m/minの速度Vで送り、反応型後処理液を噴射して後処理した。処理ムラを防止するためには、反応時間差0.3sece以下が必要条件であり、この条件を満たす位置に液飛散防止板4を設置した。即ち、液飛散防止板と鋼板との隙間は100mm,液飛散防止板の設置位置はD=300mm,リンガーロールのカバー範囲は、W=70mmであった。
【0018】
この結果、本発明適用前では、処理した鋼板5コイルのうち、処理ムラの生じたものは5コイルであり、処理ムラ発生率は(100%)であった。これに対し、本発明摘要後は、処理した鋼板数百コイルのうち、処理ムラの生じたものは零コイルであり、処理ムラ発生率は(0%)を達成した。
【0019】
本発明は前記した実施例や実施態様に限定されず、特許請求の範囲および範囲を逸脱せずに種々の変形を含む。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、溶融メッキ鋼板の反応型後処理装置に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の縦断面図である。
【図2】図1のY2−Y2断面図である。
【図3】図1のY3−Y3拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
A メッキ鋼板
1 処理室
1a 上流区画
1b 下流区画
21 上スプレー装置
21a 供給管
21b ノズル
22 上スプレー装置
22a 供給管
22b ノズル
3 リンガーロール
4 液飛散防止板
5 ロールカバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して長さ方向に送られる溶融メッキ帯鋼板を囲んだ処理室の上流区画内の帯鋼板の上側および下側に処理液スプレー装置が設けられ、前記区画に隣接した下流区画内に帯鋼板を上下から挟むリンガーロールが設けられたものにおいて、
前記上流区画内の入側と出側に液飛散防止板が設置され、液飛散防止板と鋼板との隙間は、30〜150mmに定められ、
前記液飛散防止板は、Dをスプレーノズルから液飛散防止板までの距離、Vを鋼板の送り速度、tを処理ムラが発生する反応時間差としたとき、
「Dmm≦Vm/min×tsec×1000mm/m÷60sec/min」の計算式を満足する位置に定められることを特徴とする溶融メッキ鋼板の反応型後処理装置。
【請求項2】
連続して長さ方向に送られる溶融メッキ帯鋼板を囲んだ処理室の上流区画内の帯鋼板の上側および下側に処理液スプレー装置が設けられ、前記区画に隣接した下流区画内に帯鋼板を上下から挟むリンガーロールが設けられたものにおいて、
前記下流区画内にはリンガーロールのエッジ部を覆うカバーが設置され、
該カバーの覆う範囲は、上側ロールの下流側で、少なくとも鋼板に近い部分からロールの上側を覆うように上流側に屈曲し、下側ロールの下流側で、少なくとも鋼板に近い部分からロールの下流側を覆うように、かつ、ロールの両端面からロールの軸方向中程まで10〜150mmに定められることを特徴とする溶融メッキ鋼板の反応型後処理装置。
【請求項3】
連続して長さ方向に送られる溶融メッキ帯鋼板を囲んだ処理室の上流区画内の帯鋼板の上側および下側に処理液スプレー装置が設けられ、前記区画に隣接した下流区画内に帯鋼板を上下から挟むリンガーロールが設けられたものにおいて、
前記上流区画内の入側と出側に液飛散防止板が設置され、液飛散防止板と鋼板との隙間は、30〜150mmに定められ、
前記液飛散防止板は、Dをスプレーノズルから液飛散防止板までの距離、Vを鋼板の送り速度、tを処理ムラが発生する反応時間差としたとき、
「Dmm≦Vm/min×tsec×1000mm/m÷60sec/min」の計算式を満足する位置に定められ、
前記下流区画内にはリンガーロールのエッジ部を覆うカバーが設置され、
該カバーの覆う範囲は、上側ロールの下流側で、鋼板に近い部分からロールの上側を覆うように上流側に屈曲し、下側ロールの下流側で、少なくとも鋼板に近い部分からロールの下流側を覆うように、かつ、ロールの両端面からロールの軸方向中程まで10〜150mmに定められることを特徴とする溶融メッキ鋼板の反応型後処理装置。
【請求項4】
前記帯鋼板の上側のスプレーノズルは、鋼板上への処理液のボタ落を避けるように、鋼板の両縁直上から側方にずれていることを特徴とする請求項1または2または3記載の溶融メッキ鋼板の反応型後処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−297658(P2007−297658A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125345(P2006−125345)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】