溶融亜鉛めっき処理品の生産方法
【課題】 本発明は、処理工程数が少なく、クロメート処理に代わる、一次防錆に優れた溶融亜鉛めっき処理品の生産方法の提供を目的とする。
【解決手段】被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、次に当該被処理品を溶融亜鉛めっき浴から上昇させ表面が活性な状態から、シランカップリング剤を含有する冷却水に浸漬し冷却することで得られることを特徴とする溶融亜鉛めっき処理品の生産方法。
【解決手段】被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、次に当該被処理品を溶融亜鉛めっき浴から上昇させ表面が活性な状態から、シランカップリング剤を含有する冷却水に浸漬し冷却することで得られることを特徴とする溶融亜鉛めっき処理品の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一次防錆に優れた溶融亜鉛めっき処理品の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄や鋼製品においては溶融亜鉛めっき処理が広く普及している。
溶融亜鉛めっきは金属光沢が高いものの、白錆が発生しやすく、例えば特開2002−356786号に示すようにクロメート処理を施す場合が多い。
しかし、クロメート処理液には6価クロムが含まれているので環境負荷低減の観点からクロメート処理に代替できる表面処理が必要であった。
また、溶融亜鉛めっき製品に塗装処理する場合にあっては、塗装の密着性を確保すべく、リン酸塩処理等の化成皮膜処理や、表面研削を施しているのが現状であり、生産性向上の観点から塗装前処理の省力化が要求されていた。
【0003】
クロメート処理に代わる表面処理方法としてタンニン酸を使用する表面処理方法もあるが、タンニン酸を溶解した水溶液では、液中に溶解した鉄イオン、亜鉛イオン等と反応して溶液が黒っぽく変色し、それが溶融亜鉛めっき表面に付着し、外観不良になる場合もあった。
【0004】
特許文献2〜5には、亜鉛めっきの表面処理方法として、シランカップリング剤を含むコーティング剤や表面処理剤について開示するが、いずれもシランカップリング剤の他に樹脂成分や有機ケイ素成分等を必要とするものである。
また、表面処理の工程も複雑であり生産性に問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−356786号公報
【特許文献2】特開2004−197164号公報
【特許文献3】特開2003−201578号公報
【特許文献4】特開2007−277584号公報
【特許文献5】特開2007−297648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、処理工程数が少なく、クロメート処理に代わる、一次防錆に優れた溶融亜鉛めっき処理品の生産方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶融亜鉛めっき処理品の生産方法は、被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、次に当該被処理品を溶融亜鉛めっき浴から上昇させ表面が活性な状態から、シランカップリング剤を含有する冷却水に浸漬し冷却することで得られることを特徴とする。
溶融亜鉛めっきは、鉄製品や鋼製品を、亜鉛又は亜鉛合金を溶解しためっき釜に浸漬してめっき処理する方法である。
一般的に使用される溶融亜鉛めっき浴は430〜470℃に加温されていて、被処理品をめっき浴に浸漬後にめっき浴から上昇させた状態では、めっき表面が非常に活性な状態になっている。
そこで、被処理品をめっき浴から上昇引き上げ後に冷却水に浸漬して冷却処理をしている。
本発明は、この冷却工程に着目し、冷却水にシランカップリング剤を添加したものである。
従来は、溶融亜鉛めっき及びその後の冷却工程と亜鉛めっき表面の防錆処理は、別の異なる工程であると考えられていた。
しかし、これでは溶融亜鉛めっきの冷却工程と表面処理工程の2つの工程が必要であった。
これに対して本発明は、冷却水に水溶性のシランカップリング剤を添加することで一つの処理槽にて冷却と表面処理を同時に行うことができた。
従って、表面処理を兼ねた冷却水に、被処理品をめっき浴から上昇させた直後の高温の表面活性な状態から、そのまま冷却水に浸漬することになるので、冷却水に添加する表面処理剤は水溶性のものがよい。
【0008】
冷却水に添加するシランカップリング剤は、無色水溶性で質量にて1〜95%の範囲が好ましく、必要に応じてリン酸や硫酸等の無機酸を添加するとよい。
シランカップリング剤は、水溶性で、水に溶かすと概ね透明なものがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、溶融亜鉛めっき後の冷却水に水溶性で無色系のシランカップリング剤を添加することで、めっき浴から上昇させた表面活性な状態を利用した表面処理が可能になり、従来の冷却工程と表面処理工程を1つの工程で実施することができるために工程が少ない分だけ生産性が向上し、省エネルギーにも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の内容を試験サンプルに基づいて以下説明する。
【実施例1】
【0011】
大きさ100mm×75mm、板厚3.2mmの鉄製の試験サンプルを、亜鉛を溶解させた450〜460℃のめっき浴に約90秒間浸漬した後に、めっき浴から上昇引き上げて、冷却水に約10秒間浸漬し冷却した。
冷却水としては、No.1:水のみ,No.2:タンニン酸5%溶解,No.4:シランカップリング剤10%添加したものを用いた。
シランカップリング剤は、東レ・ダウコーニング社製の商品名Z−6040(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を用いた。
比較例としてNo.3は、試験片をNo.1と同様に水を用いて冷却した後に別工程で市販のクロメート処理をした。
上記にて処理した試験サンプルNo.1〜No.4を用いて、硫酸ナトリウム0.01%,塩化ナトリウム0.01%添加した腐食水溶液を上記サンプルNo.1〜No.4に噴霧し、50℃,湿度100%の中に24時間保持した。
試験後のサンプルNo.1〜No.4の評価結果を図1に示し、その外観写真を図2に示す。
本試験により、水のみの冷却水よりも冷却水にシランカップリング剤,タンニン酸を添加したものの方が耐食性がよく、さらには、シランカップリング剤を用いたものの方がタンニン酸を用いたものよりも耐食性に優れていることが明らかになった。
【実施例2】
【0012】
実施例1と同様に溶融亜鉛めっき後に冷却水にシランカップリング剤の他に無機酸としてリン酸を添加した場合を比較評価した。
サンプル作成条件を図3の表に示す。
表中、シラン含有量(%)はシランカップリング剤の質量での含有量(%)を示す。
このサンプルに実施例1と同じ腐食液を噴霧し、50℃×湿度100%中に24時間保持した。
その耐食性の評価結果を評価方法とともに図4に示し、その外観写真を図5に示す。
ここでブランクとは冷却水として水のみを用いたものをいう。
冷却水にリン酸のみを添加したNo.1−2及び冷却水にシランカップリング剤のみを添加したNo.1−3もブランクより耐食性が向上するが、冷却水にシッランカップリング剤とリン酸を添加したNo.1−4が最も耐食性に優れていた。
【実施例3】
【0013】
実施例1と同様の溶融亜鉛めっき後に冷却する冷却水に添加したシランカップリング剤の量の影響を評価した。
その結果を図6の表に示す。
これによりシランカップリング剤の添加量が15%以上になると表面がベタ付き、常温乾燥が困難になり、乾燥工程が必要であった。
【実施例4】
【0014】
シランカップリング剤の添加量と耐腐食性の関係を調査すべく、図7の表に示した冷却水を用いた試験サンプルを作成し、実施例2と同様の耐食性評価を実施した。
評価結果を評価方法とともに図8に示し、腐食試験前の外観写真を図9、腐食試験後の外観写真を図10にそれぞれ示す。
これにより冷却水として水にシランカップリング剤10%,リン酸0.004%添加したサンプルNo.3−4が最も耐食性に優れていた。
【実施例5】
【0015】
次に、冷却水に添加するシランカップリング剤の量を10%一定にし、リン酸の含有量を図11の表に示すように変化させた。
このサンプルに対して、腐食液(0.01%)を噴霧した後に50℃×湿度100%中に48時間保持した。
その評価結果を評価方法とともに図12に示し、試験前の外観写真を図13に腐食試験後の外観写真を図14に示す。
この結果、シランカップリング剤10%の他にリン酸0.1%添加したサンプルNo.4−5は表面処理後の外観に僅かではあるが白い変色が認められた。
また、シランカップリング剤10%の他にリン酸0.5%を添加したサンプルNo.4−6は耐食性においてサンプルNO.4−5よりも低下した。
また、サンプルNo.4−5は表面にクラックが生じ塗装の密着性も低下した。
この結果からシランカップリング剤の濃度が10%の場合には、リン酸の濃度は0.5%以下がよく、好ましくは0.1%以下である。
【実施例6】
【0016】
シランカップリング剤の濃度を濃くすると、冷却水に浸漬して表面処理した後の乾燥がやや遅いことは実施例3にて明らかになったが今度は耐食性について評価した。
実施例1と同様に溶融亜鉛めっき浴に浸漬後、上昇引き上げて図15に示す濃度の冷却水に浸漬した。
このようにして表面処理したサンプルを腐食液(0.01%)を噴霧後に50℃×湿度100%中に120時間保持した。
その結果を評価方法とともに図16に示し、試験前のサンプル写真を図17に示し、試験後のサンプル写真を図18に示す。
この結果、シランカップリング剤は1%以上で耐食性向上の効果が認められ、好ましくは15%以上がよいことも明らかになった。
なお、シランカップリング剤の濃度を濃くするとそれに応じてリン酸の濃度も高い方がよい。
【実施例7】
【0017】
次にシランカップリング剤及びリン酸の下限レベルを確認するために冷却水として図19の表に示すもので試験評価した。
この場合には腐食液を噴霧した後に12時間保持したものを評価した。
その評価結果を図20に示し、試験後の写真を図21に示す。
この結果、シランカップリング剤1%、リン酸0.001%でも耐食性が向上していた。
【実施例8】
【0018】
次にシランカップリング剤の上限レベルの確認をするために、冷却水として図2の表に示すようにシランカップリング剤95%を添加し、その上でリン酸濃度を0.1〜0.8%に高くした。
このサンプルの耐食性評価をしたが、差が明らかになるように腐食液を噴霧後の保持時間を72時間とした。
その結果を図23に示し、試験後の写真を図24に示す。
これにより、シランカップリング剤の濃度95%ではリン酸濃度は0.1%よりも濃い方がよく、0.4%で最も耐食性が良い結果になった。
【実施例9】
【0019】
次にリン酸以外の酸の効果を確認すべく、冷却水として図23に示すようにシランカップリング剤10%のときで、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸がそれぞれ0.01%添加したものを評価した。
その結果を図26に示し、試験後の写真を図27に示す。
この結果リン酸以外の酸でも耐食性が向上することが明らかになった。
【0020】
以上の評価結果から溶融亜鉛めっき後の冷却水にシランカップリング剤を1〜95%の範囲にて含有させると溶融亜鉛めっきの耐食性が向上し、シランカップリング剤単独よりもリン酸等の無機酸を少量添加する方がさらに耐食性が向上し、酸の濃度は0.001%以上で効果があり、好ましくは0.004〜1.0%の範囲であることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の試験サンプルの作成条件及び耐食性試験結果を示す。
【図2】実施例1の試験サンプルの試験後の外観写真を示す。
【図3】実施例2の試験サンプルの作成条件を示す。
【図4】実施例2の試験評価結果を示す。
【図5】実施例2の試験後の外観写真を示す。
【図6】実施例3の評価結果を示す。
【図7】実施例4の試験サンプルの作成条件を示す。
【図8】実施例4の試験評価結果を示す。
【図9】実施例4の試験前の外観写真を示す。
【図10】実施例4の試験後の外観写真を示す。
【図11】実施例5の試験サンプルの作成条件を示す。
【図12】実施例5の試験評価結果を示す。
【図13】実施例5の試験前の外観写真を示す。
【図14】実施例5の試験後の外観写真を示す。
【図15】実施例5の冷却水条件を示す。
【図16】実施例5の評価結果を示す。
【図17】実施例5の試験前写真を示す。
【図18】実施例5の試験後の写真を示す。
【図19】実施例6の冷却水条件を示す。
【図20】実施例6の評価結果を示す。
【図21】実施例6の試験後の写真を示す。
【図22】実施例7の冷却水条件を示す。
【図23】実施例7の評価結果を示す。
【図24】実施例7の試験後の写真を示す。
【図25】実施例8の冷却水条件を示す。
【図26】実施例8の評価結果を示す。
【図27】実施例8の試験後の写真を示す。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一次防錆に優れた溶融亜鉛めっき処理品の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄や鋼製品においては溶融亜鉛めっき処理が広く普及している。
溶融亜鉛めっきは金属光沢が高いものの、白錆が発生しやすく、例えば特開2002−356786号に示すようにクロメート処理を施す場合が多い。
しかし、クロメート処理液には6価クロムが含まれているので環境負荷低減の観点からクロメート処理に代替できる表面処理が必要であった。
また、溶融亜鉛めっき製品に塗装処理する場合にあっては、塗装の密着性を確保すべく、リン酸塩処理等の化成皮膜処理や、表面研削を施しているのが現状であり、生産性向上の観点から塗装前処理の省力化が要求されていた。
【0003】
クロメート処理に代わる表面処理方法としてタンニン酸を使用する表面処理方法もあるが、タンニン酸を溶解した水溶液では、液中に溶解した鉄イオン、亜鉛イオン等と反応して溶液が黒っぽく変色し、それが溶融亜鉛めっき表面に付着し、外観不良になる場合もあった。
【0004】
特許文献2〜5には、亜鉛めっきの表面処理方法として、シランカップリング剤を含むコーティング剤や表面処理剤について開示するが、いずれもシランカップリング剤の他に樹脂成分や有機ケイ素成分等を必要とするものである。
また、表面処理の工程も複雑であり生産性に問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−356786号公報
【特許文献2】特開2004−197164号公報
【特許文献3】特開2003−201578号公報
【特許文献4】特開2007−277584号公報
【特許文献5】特開2007−297648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、処理工程数が少なく、クロメート処理に代わる、一次防錆に優れた溶融亜鉛めっき処理品の生産方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶融亜鉛めっき処理品の生産方法は、被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、次に当該被処理品を溶融亜鉛めっき浴から上昇させ表面が活性な状態から、シランカップリング剤を含有する冷却水に浸漬し冷却することで得られることを特徴とする。
溶融亜鉛めっきは、鉄製品や鋼製品を、亜鉛又は亜鉛合金を溶解しためっき釜に浸漬してめっき処理する方法である。
一般的に使用される溶融亜鉛めっき浴は430〜470℃に加温されていて、被処理品をめっき浴に浸漬後にめっき浴から上昇させた状態では、めっき表面が非常に活性な状態になっている。
そこで、被処理品をめっき浴から上昇引き上げ後に冷却水に浸漬して冷却処理をしている。
本発明は、この冷却工程に着目し、冷却水にシランカップリング剤を添加したものである。
従来は、溶融亜鉛めっき及びその後の冷却工程と亜鉛めっき表面の防錆処理は、別の異なる工程であると考えられていた。
しかし、これでは溶融亜鉛めっきの冷却工程と表面処理工程の2つの工程が必要であった。
これに対して本発明は、冷却水に水溶性のシランカップリング剤を添加することで一つの処理槽にて冷却と表面処理を同時に行うことができた。
従って、表面処理を兼ねた冷却水に、被処理品をめっき浴から上昇させた直後の高温の表面活性な状態から、そのまま冷却水に浸漬することになるので、冷却水に添加する表面処理剤は水溶性のものがよい。
【0008】
冷却水に添加するシランカップリング剤は、無色水溶性で質量にて1〜95%の範囲が好ましく、必要に応じてリン酸や硫酸等の無機酸を添加するとよい。
シランカップリング剤は、水溶性で、水に溶かすと概ね透明なものがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、溶融亜鉛めっき後の冷却水に水溶性で無色系のシランカップリング剤を添加することで、めっき浴から上昇させた表面活性な状態を利用した表面処理が可能になり、従来の冷却工程と表面処理工程を1つの工程で実施することができるために工程が少ない分だけ生産性が向上し、省エネルギーにも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の内容を試験サンプルに基づいて以下説明する。
【実施例1】
【0011】
大きさ100mm×75mm、板厚3.2mmの鉄製の試験サンプルを、亜鉛を溶解させた450〜460℃のめっき浴に約90秒間浸漬した後に、めっき浴から上昇引き上げて、冷却水に約10秒間浸漬し冷却した。
冷却水としては、No.1:水のみ,No.2:タンニン酸5%溶解,No.4:シランカップリング剤10%添加したものを用いた。
シランカップリング剤は、東レ・ダウコーニング社製の商品名Z−6040(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を用いた。
比較例としてNo.3は、試験片をNo.1と同様に水を用いて冷却した後に別工程で市販のクロメート処理をした。
上記にて処理した試験サンプルNo.1〜No.4を用いて、硫酸ナトリウム0.01%,塩化ナトリウム0.01%添加した腐食水溶液を上記サンプルNo.1〜No.4に噴霧し、50℃,湿度100%の中に24時間保持した。
試験後のサンプルNo.1〜No.4の評価結果を図1に示し、その外観写真を図2に示す。
本試験により、水のみの冷却水よりも冷却水にシランカップリング剤,タンニン酸を添加したものの方が耐食性がよく、さらには、シランカップリング剤を用いたものの方がタンニン酸を用いたものよりも耐食性に優れていることが明らかになった。
【実施例2】
【0012】
実施例1と同様に溶融亜鉛めっき後に冷却水にシランカップリング剤の他に無機酸としてリン酸を添加した場合を比較評価した。
サンプル作成条件を図3の表に示す。
表中、シラン含有量(%)はシランカップリング剤の質量での含有量(%)を示す。
このサンプルに実施例1と同じ腐食液を噴霧し、50℃×湿度100%中に24時間保持した。
その耐食性の評価結果を評価方法とともに図4に示し、その外観写真を図5に示す。
ここでブランクとは冷却水として水のみを用いたものをいう。
冷却水にリン酸のみを添加したNo.1−2及び冷却水にシランカップリング剤のみを添加したNo.1−3もブランクより耐食性が向上するが、冷却水にシッランカップリング剤とリン酸を添加したNo.1−4が最も耐食性に優れていた。
【実施例3】
【0013】
実施例1と同様の溶融亜鉛めっき後に冷却する冷却水に添加したシランカップリング剤の量の影響を評価した。
その結果を図6の表に示す。
これによりシランカップリング剤の添加量が15%以上になると表面がベタ付き、常温乾燥が困難になり、乾燥工程が必要であった。
【実施例4】
【0014】
シランカップリング剤の添加量と耐腐食性の関係を調査すべく、図7の表に示した冷却水を用いた試験サンプルを作成し、実施例2と同様の耐食性評価を実施した。
評価結果を評価方法とともに図8に示し、腐食試験前の外観写真を図9、腐食試験後の外観写真を図10にそれぞれ示す。
これにより冷却水として水にシランカップリング剤10%,リン酸0.004%添加したサンプルNo.3−4が最も耐食性に優れていた。
【実施例5】
【0015】
次に、冷却水に添加するシランカップリング剤の量を10%一定にし、リン酸の含有量を図11の表に示すように変化させた。
このサンプルに対して、腐食液(0.01%)を噴霧した後に50℃×湿度100%中に48時間保持した。
その評価結果を評価方法とともに図12に示し、試験前の外観写真を図13に腐食試験後の外観写真を図14に示す。
この結果、シランカップリング剤10%の他にリン酸0.1%添加したサンプルNo.4−5は表面処理後の外観に僅かではあるが白い変色が認められた。
また、シランカップリング剤10%の他にリン酸0.5%を添加したサンプルNo.4−6は耐食性においてサンプルNO.4−5よりも低下した。
また、サンプルNo.4−5は表面にクラックが生じ塗装の密着性も低下した。
この結果からシランカップリング剤の濃度が10%の場合には、リン酸の濃度は0.5%以下がよく、好ましくは0.1%以下である。
【実施例6】
【0016】
シランカップリング剤の濃度を濃くすると、冷却水に浸漬して表面処理した後の乾燥がやや遅いことは実施例3にて明らかになったが今度は耐食性について評価した。
実施例1と同様に溶融亜鉛めっき浴に浸漬後、上昇引き上げて図15に示す濃度の冷却水に浸漬した。
このようにして表面処理したサンプルを腐食液(0.01%)を噴霧後に50℃×湿度100%中に120時間保持した。
その結果を評価方法とともに図16に示し、試験前のサンプル写真を図17に示し、試験後のサンプル写真を図18に示す。
この結果、シランカップリング剤は1%以上で耐食性向上の効果が認められ、好ましくは15%以上がよいことも明らかになった。
なお、シランカップリング剤の濃度を濃くするとそれに応じてリン酸の濃度も高い方がよい。
【実施例7】
【0017】
次にシランカップリング剤及びリン酸の下限レベルを確認するために冷却水として図19の表に示すもので試験評価した。
この場合には腐食液を噴霧した後に12時間保持したものを評価した。
その評価結果を図20に示し、試験後の写真を図21に示す。
この結果、シランカップリング剤1%、リン酸0.001%でも耐食性が向上していた。
【実施例8】
【0018】
次にシランカップリング剤の上限レベルの確認をするために、冷却水として図2の表に示すようにシランカップリング剤95%を添加し、その上でリン酸濃度を0.1〜0.8%に高くした。
このサンプルの耐食性評価をしたが、差が明らかになるように腐食液を噴霧後の保持時間を72時間とした。
その結果を図23に示し、試験後の写真を図24に示す。
これにより、シランカップリング剤の濃度95%ではリン酸濃度は0.1%よりも濃い方がよく、0.4%で最も耐食性が良い結果になった。
【実施例9】
【0019】
次にリン酸以外の酸の効果を確認すべく、冷却水として図23に示すようにシランカップリング剤10%のときで、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸がそれぞれ0.01%添加したものを評価した。
その結果を図26に示し、試験後の写真を図27に示す。
この結果リン酸以外の酸でも耐食性が向上することが明らかになった。
【0020】
以上の評価結果から溶融亜鉛めっき後の冷却水にシランカップリング剤を1〜95%の範囲にて含有させると溶融亜鉛めっきの耐食性が向上し、シランカップリング剤単独よりもリン酸等の無機酸を少量添加する方がさらに耐食性が向上し、酸の濃度は0.001%以上で効果があり、好ましくは0.004〜1.0%の範囲であることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の試験サンプルの作成条件及び耐食性試験結果を示す。
【図2】実施例1の試験サンプルの試験後の外観写真を示す。
【図3】実施例2の試験サンプルの作成条件を示す。
【図4】実施例2の試験評価結果を示す。
【図5】実施例2の試験後の外観写真を示す。
【図6】実施例3の評価結果を示す。
【図7】実施例4の試験サンプルの作成条件を示す。
【図8】実施例4の試験評価結果を示す。
【図9】実施例4の試験前の外観写真を示す。
【図10】実施例4の試験後の外観写真を示す。
【図11】実施例5の試験サンプルの作成条件を示す。
【図12】実施例5の試験評価結果を示す。
【図13】実施例5の試験前の外観写真を示す。
【図14】実施例5の試験後の外観写真を示す。
【図15】実施例5の冷却水条件を示す。
【図16】実施例5の評価結果を示す。
【図17】実施例5の試験前写真を示す。
【図18】実施例5の試験後の写真を示す。
【図19】実施例6の冷却水条件を示す。
【図20】実施例6の評価結果を示す。
【図21】実施例6の試験後の写真を示す。
【図22】実施例7の冷却水条件を示す。
【図23】実施例7の評価結果を示す。
【図24】実施例7の試験後の写真を示す。
【図25】実施例8の冷却水条件を示す。
【図26】実施例8の評価結果を示す。
【図27】実施例8の試験後の写真を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、
次に当該被処理品を溶融亜鉛めっき浴から上昇させ表面が活性な状態から、シランカップリング剤を含有する冷却水に浸漬し冷却することで得られることを特徴とする溶融亜鉛めっき処理品の生産方法。
【請求項2】
冷却水はシランカップリング剤の他に無機酸が添加されていることを特徴とする請求項1記載の溶融亜鉛めっき処理品の生産方法。
【請求項1】
被処理品を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、
次に当該被処理品を溶融亜鉛めっき浴から上昇させ表面が活性な状態から、シランカップリング剤を含有する冷却水に浸漬し冷却することで得られることを特徴とする溶融亜鉛めっき処理品の生産方法。
【請求項2】
冷却水はシランカップリング剤の他に無機酸が添加されていることを特徴とする請求項1記載の溶融亜鉛めっき処理品の生産方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図25】
【図26】
【図2】
【図5】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図21】
【図24】
【図27】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図25】
【図26】
【図2】
【図5】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図21】
【図24】
【図27】
【公開番号】特開2009−197297(P2009−197297A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42414(P2008−42414)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【特許番号】特許第4226063号(P4226063)
【特許公報発行日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(391033724)シーケー金属株式会社 (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【特許番号】特許第4226063号(P4226063)
【特許公報発行日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(391033724)シーケー金属株式会社 (32)
【Fターム(参考)】
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