説明

溶融塩電解質及びリン含有カソードを備えた電池

リチウムイオン電池は、負極と、正極と、溶融塩を含む電解質とを備える。正極は、リン、酸素、リチウム、及び他の少なくとも1種の金属または半金属を含む電気活性化合物を含む。そのような電極組成物と溶融塩電解質の組合せは、電池に非常に高い熱安定性を付与する。アルカリ金属イオン等の他のイオンはリチウムイオンの代わりに他の電池技術における用途に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池、特に融解塩電解質を有する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
安全性はリチウムイオン(Liイオン)電池の実用性において重要な問題である。従来の有機電解質は蒸気圧が高く、燃え易い。これに対して、溶融塩電解質は融点が高く、蒸気圧が低い。このため溶融塩電解質は有機電解質より高い安全レベルを提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、カソード(正極)におけるLiCoO及びLiNiO等のLiイオン電池に使用される従来のカソード電気活性物質は、溶融塩電解質を備えたLiイオン電池であってもコストと熱安定性の問題がある。溶融塩電解質を備えたLiイオン電池の性能をさらに向上させるためには高い熱安定性を備えた他のカソード物質を見つける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本件出願は、2004年5月17日付けの米国仮特許出願シリアルNo.60/571,778の優先権を主張し、言及することによってその全内容を本書に取り込む。
【0005】
電池は、正極と、負極と、溶融塩を含む電解質とを備える。正極は、第1の種、リン、酸素、及び第1種以外の1種以上の金属または半金属の化合物である電気活性物質を含む。例えば、第1の種はリチウムとして、電池を溶融塩リチウムイオン電池とすることができる。第1の種のカチオン(リチウムイオン等)が、電池の動作中に電気活性物質に挿入され、電気活性物質から取り出される。
【0006】
正の電気活性物質は、式Li(PO(但し、1≦x≦3、1≦y≦3、1≦z≦3、Mはリチウム以外の1種またはそれ以上の金属を表す)によって表すことができる。この物質は、リン酸鉄リチウムのような、リチウムと遷移金属等の他の少なくとも1種の金属とのリン酸塩とすることができる。リン酸塩は、例えば式Li(POFのように、フッ素化やその他のハロゲン化をすることもできる。Mは、Mg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,In,Sn,Sb,La,Ce,W,及びAuからなる群から選択してもよい。他の電池技術において、Liを別のカチオン生成種に置き換えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の例による電池は、溶融塩電解質と、リチウム、リチウム以外の少なくとも1種の金属、リン、及び酸素を有するリン酸リチウム合金のような電気活性化合物を含むカソード(ここでは正極を表すために使用される)とを備えるリチウムイオン(Liイオン)電池を含む。
【0008】
リチウムイオン電池及び同様の充電式電池では、アノードという用語が慣例として負極に使用され、カソードが慣例として正極に使用される。これらの名称は放電サイクルの電池にのみ技術的に正しいが、これらの名称は文献において広く使用され、ここでも使用する。電池という用語はここでは、1またはそれ以上の電気化学的セルを含む装置を示すものとして使用される。
【0009】
リチウムイオン電池の一例は、アノード(負極)と、カソード(正極)と、溶融塩電解質とを含み、カソードはリチウム、別の金属、リン、及び酸素の化合物であるカソード電気活性物質を有する。そのような化合物の一例は、リチウム、他の少なくとも1種の金属、リン、及び酸素を含むリン酸リチウム合金である。本発明の例におけるリチウムイオン電池は、従来のLiイオン電池と比較して熱安定性を改善でき、コストを低くすることができる。
【0010】
本発明の例では、電池はリチウムイオン電池であり、カソード(正極)は、式Li(PO(但し、1≦x≦3,1≦y≦3,1≦z≦3)によって表わされる物質のような正の電気活性物質(カソード電気活性物質とも呼ばれる)を含む。Mは1種またはそれ以上の原子種を表わし、それは遷移金属、アルカリ土類金属や、他の金属及び/または半金属を含んでもよい。例えば、Mは、Mg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,In,Sn,Sb,La(Ce等の他のランタノイド),W,及びAuからなる群から選択される1種またはそれ以上の元素を表わしてもよい。Mは、アルカリ土類金属、遷移金属、13族金属、及び14族金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を表わしてもよい。他の例で、Mは、他の金属と組み合わせることもできる1種またはそれ以上の半金属(ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、またはテルル等)を表わしてもよい。
【0011】
カソードの電気活性物質は、LiCoPOF等のフッ化リン酸リチウム合金とすることもできる。フッ化リン酸リチウム合金は、リチウムと、1種またはそれ以上の遷移金属、他の金属、または半金属とのフッ化リン酸塩を含み、リチウムと、Mg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,In,Sn,Sb,La(及びCe等の他のランタノイド),W,及びAuからなる群から選択される1種またはそれ以上の金属とのフッ化リン酸塩を含む。
【0012】
カソードの電気活性物質は、例えば平均径が1ミクロン未満のナノ粒子からなるナノ構造であってもよい。
【0013】
リチウム系リン酸塩は国際特許公報WO 0031812Aに記載され、金属リン酸塩と金属ヒ酸塩の有機電解質電池は米国特許第3,736,184号に記載されている。これらの公報に記載された物質は本発明の一例として使用することができる。
【0014】
従って、リチウムイオン電池等の改良二次電池(充電式電池)は、アノードと、溶融塩電解質と、カソードとを含み、カソードは式A(POを有する電気活性リン酸塩物質を含む。本発明の例では、電気活性リン酸塩物質はA種のイオンの形で挿入することができるイオン挿入化合物である。記号Aはアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、またはセシウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム等)、他の金属原子、または他の種を表わすことができ、そのカチオンは電気活性物質へ挿入することができる。例えば、Aは電気活性物質への有機イオン挿入に基づく充電式電池における有機種を表わすこともできる。Mは1種またはそれ以上の金属原子、半金属原子、またはA種以外の他の種を表わすことができる。電気的活性リン酸塩物質は、例えば、式A(POFのようにフッ素化等、ハロゲン化することもできる。
【0015】
正の電気活性物質は、例えば平均径が1ミクロン未満の粒子のようなナノ粒子の形態でカソード中に存在してもよい。導電性粒子の電気活性コーティング、あるいは公知の電極構造のように他の電極構造を使用することもできる。
【0016】
本発明の例による電池は溶融塩電解質を有する。ここで、溶融塩電解質という用語は、例えば電解質の30%を超える電解質の重要な構成要素として1種またはそれ以上の溶融塩を含む電解質を表わすために使用される。溶融塩電解質は、電池の動作温度で少なくとも部分的に溶融した(さもなければ液状の)1種またはそれ以上の塩を備える電解質である。融解塩電解質は水溶媒を必要としないことから溶融した非水電解質、あるいはイオン性液体と説明することもできる。
【0017】
発明の実施例で使用可能な溶融塩電解質は、ジャイフォード(Gifford)のNo.4,463,071、ママントフ(Mamantov)他のNo.5,552,241、カーリン(Carlin)他のNo.5,589,291、カジャ(Caja)他のNo.6,326,104、ミチョット(Michot)のNo.6,365,301,及びグイドッティ(Guidotti)のNo.6,544,691等の米国特許に記載されている。
【0018】
溶融塩の例は、芳香族カチオン(イミダゾリウム塩またはピリジニウム塩等)、脂肪族第四級アンモニウム塩、またはスルホニウム塩を有するものを含む。本発明の溶融塩電解質は、アンモニウム、ホスホニウム、オキソニウム、スルホニウム、アミジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム等のオニウム、及びPF、BF、GFSO、(CFSO、(FSO、(CSO、Cl、Br等のアニオンを含んでもよい。
【0019】
本発明の一例として使用される溶融塩電解質は、Y(−SORf)(−XRf)をも含んでもよい。但し、Yは、イミダゾリウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウム、(イソ)チアゾリルイオン、(イソ)オキサゾリウムイオンからなる群から選択されたカチオンである。前記カチオンが―CHRfまたは―OCHRf(但し、RfはC1−10のポリフルオロアルキルである)の少なくとも1種の置換基を有し、RfとRfとが独立してC1−10のパーフルオロフェニルか、合わせてC1−10のパーフルオロアルキレンを構成し、Xが−SO−または―CO―であれば、C1−10のアルキルまたはエーテル結合を有するC1−10のアルキルに置き換えてもよい。
【0020】
溶融塩は芳香族カチオン(イミダゾリウム塩またはピリジニウム塩等)、脂肪族第四級アンモニウム塩、またはスルホニウム塩を有する塩を含む。
【0021】
イミダゾリウム塩は、ジメチルイミダゾリウムイオン、エチルメチルイミダゾリウムイオン、プロピルメチルイミダゾリウムイオン、ブチルメチルイミダゾリウムイオン、ヘキシルメチルイミダゾリウムイオン、あるいはオクチルメチルイミダゾリウムイオン等のジアルキルイミダゾリウムイオン、または1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、あるいはl−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等のトリアルキルイミダゾリウムイオンを有する塩を含む。イミダゾリウム塩は、エチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩(EMI−BF)、エチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(EMI−TESI)、プロピルメチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(DEMI−TFSI)、及び1,2,4−トリエチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(TEMI−TESI)を含む。
【0022】
ピリジニウム塩は、1−エチルピリジニウムイオン、1−ブチルピリジニウムイオンまたは1−ヘキシルピリジニウムイオン等のアルキルピリジニウムイオンを有する塩を含む。ピリジニウム塩は、1−エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸塩、及び1−エチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホニルイミドを含む。
【0023】
アンモニウム塩は、トリメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(TMPA−TFSI)、ジエチルメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド、及び1−ブチル−1−メチルピロリジウムトリフルオロメタンスルホニルイミドを含む。スルホニウム塩は、トリエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(TES−TFSI)を含む。
【0024】
カチオンの移動を通じて作動する二次電池では、通常、電解質はカチオン源を含み、電池の種類によってカチオンを供給する。リチウムイオン電池の場合、カチオン源はリチウム塩とすることができる。リチウムイオン電池の電解質中のリチウム塩は、LiPF,LiAsF,LiSbF,LiBF,LiClO,LiCFSO,Li(CFSON,Li(CSON,LiCSO,Li(CFSOC,LiBPh,LiBOB,及びLi(CFSO)(CFCO)Nを1種またはそれ以上含んでもよい。本発明の例は、他のアルカリ金属または他のカチオンに基づく電池のような、リチウム以外のイオンを使用する充電式電池を含むことができ、その場合には適切な塩が使用される。例えば、カリウムイオン電池の溶融塩はKPF等のカリウムイオンを供給する化合物を含んでもよい。
【0025】
本発明によるリチウムイオン電池の一例は、アノードと、カソードと、電解質とを含む。カソード(正極)は、カソード電気活性物質としてリン含有化合物を含む。例えば、カソード電気活性物質は、リチウム、他の1種またはそれ以上の金属種(他の1種またはそれ以上の遷移金属種)、リン、及び酸素の化合物としてもよい。リン含有化合物はリン酸鉄リチウム等のリン酸塩とすることもできる。
【0026】
本発明の例において、カソード電気活性物質はイオン挿入及び抽出を可能にし、その結果、電気活性物質の挿入イオン量は電池の充電状態によって変化する。このため、Li(POのような式におけるxは充電の状態に応じて変わる。カソードはさらに導電材料、バインダ、あるいは所期の電気的または機械的性質を付与するために選択される他の成分を含んでもよい。カソードはカソードコレクタと電気的に接続するよう形成することができる。
【0027】
アノード(負極)は、アノードの電気活性物質と、(任意に)電子伝導物質と、バインダとを備えることができる。アノードはアノードコレクタと電気的に接続可能に形成することもできる。アノードの電気活性物質は、天然黒鉛、メゾカーボン微小ビーズ(MCMBs)、高次熱分解黒鉛(HOPG)、硬質炭素、または軟質炭素等のような黒鉛炭素及び/または無定形炭素等の炭素系でも、あるいはシリコン、錫、あるいは他の成分を備える物質でもよい。負極はLiTi12等のチタン酸リチウムとすることができる。
【0028】
本発明の例による充電式電池は、可逆的に蓄積し(例えば、挿入または差し込み)、放出することができるいかなるカチオンに基づくものをも含む。カチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等のアルカリ金属、カルシウム及びバリウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム、アルミニウム、銀及び亜鉛等の他の金属、及び水素の陽イオンを含んでもよい。他の例で、カチオンは、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジンイウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、そのようなイオンのアルキルや他の誘導体等の誘導体でもよい。
【0029】
本発明の例による電池のアノードまたはカソードに使用可能な伝導物質は、黒鉛等の炭素含有物質でもよい。電子伝導性物質の他の例は、ポリアニリン等の伝導性高分子、炭素繊維、カーボンブラック(またはアセチレンブラック等の同様な物質、またはケッチェンブラック)、及びコバルト、銅、ニッケル、他の金属または金属化合物等の非電気活性金属を含む。電子伝導性物質は、粒子(この用語はグラニュール、フレーク、パウダー等を含む)、繊維、メッシュ、シートあるいは他の二次ないし三次元の構造とすることもできる。電子伝導性物質はさらに、SnO,Ti,In/SnO(ITO),Ta,WO,W1849,CrO,及びTi等の酸化物、式MC(MはWC、TiC及びTaC等の金属である)によって表わされる炭化物、式MCによって表わされる炭化物、金属窒化物及び金属タングステンを含む。
【0030】
アノード及び/またはカソードをそれぞれコレクタと関連づけることができる。コレクタは、金属、伝導性高分子または他の伝導物質からなる導電性部材とすることができる。コレクタは、シート、メッシュ、ロッド等の所望の形でよい。例えば、コレクタは、Al、Ni、Fe、Ti、ステンレス鋼、あるいは他の金属または合金等の金属でもよい。コレクタは、例えばタングステン(W)、プラチナ(Pt)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、酸化チタン(例えばTi)、リン化銅(Cu)、リン化ニッケル(Ni)、リン化鉄(FeP)等からなる保護層のような腐食を抑える保護皮膜を有してもよい。
【0031】
一方または両方の電極はさらにバインダを含んでもよい。バインダは、電極の機械的性質を向上させ、電極の製造または加工を容易にする等の目的で、1種またはそれ以上の不活性物質を備えてもよい。バインダ物質の例は、ポリエチレン、ポリオレフィン、及びその誘導体、ポリエチレンオキシド、アクリルポリマー(ポリメタクリレートを含む)、合成ゴム等のポリマーを含む。また、バインダは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン)共重合体(PVDF−HFP)等のフッ素ポリマーを含んでもよい。
【0032】
電池はさらに、ハウジング、及びカソードとアノードとの間のセパレータを備えてもよい。電池は、電極間で直接の電気接触(短絡)を防ぐ目的で、負極と正極の間に位置する1種またはそれ以上のセパレータを含んでもよい。セパレータは、例えば多孔質シート、フィルム、メッシュ、織布または不織布、繊維状マット(布)、あるいはその他の形態等のイオン透過シートとすることができる。セパレータは任意であり、固体電解質が同様の機能を有してもよい。セパレータは、ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、メチルセルロース等)、ゾル−ゲル物質、無機-有機複合体(Ormosil)、ガラス、セラミック、ガラスセラミック等のような物質を含む多孔性等のイオン透過シートとすることができる。セパレータは一方または両方の電極の表面に取り付けられてもよい。
【0033】
電池の一例として、さらに、電気リードと適切なパッケージング、例えば集電体と電気的に接続する電気コンタクトを提供するシール容器を含んでもよい。
【0034】
(例)
図1は、LiNiO型カソードと、LiTi12アノードと、1.25モル/lの濃度でリチウムイオン源(Li−TFSI)を含有するEMI−TFSI(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)溶融塩電解質とを有するリチウムイオン電池の過充電テスト結果を示す。合計電流は5Cであった。この過充電テスト時に煙と火が観測された。この図でSOCは充電の状態(State of Charge)を表す。
【0035】
図2は、LiFePOカソードと、LiTi12アノードと、1.25モル/lの濃度でLi−TFSIを含有する電解質であるEMI−TFSIとを有するリチウムイオン電池の過充電テスト結果を示す。電流は5Cであった。LiNiOカソードを有する電池と対照的に煙と火は観測されず、リン酸鉄リチウムカソードはより高い熱安定性を有していた。
【0036】
図3は2つの電池のDSCテスト結果を示し、一方は図1のデータを得たのと同じカソードを有するものを使用し、他方は図2のデータを得たLiFePOカソード有するものを使用し、他の詳細は図1及び図2に関して上記した通りである。溶融塩電解質を有するリチウムイオン電池に使用された場合、リン酸塩カソードは、より小さな熱流量のピークによって示されるように分解がより少ないことを示し、驚くほど良好な熱的安定性を有することがわかる。また、リン酸鉄リチウムを用いると、溶融塩電池構成に使用される従来の物質よりコスト面で有利である。
【0037】
図4は、正極10と、電解質12と、負極14とを備える電池の模式図を示し、本発明の電池の一例としては、電解質が溶融塩を備え、正極はリチウム等の第1の種、リン、酸素、及び第1種以外の1種またはそれ以上の金属または半金属を有する電気活性化合物を含む。
【0038】
この明細書において言及された特許または文献は、個々の特許または文献が言及によって取り込まれるよう具体的に個々に表示された場合と同じ程度に、言及によって本書に取り込まれる。特に、2004年5月17日付けの米国仮特許出願シリアルNo.60/571,777を言及によってここに取り込む。記載された例は、請求項に記載された発明の範囲を限定するよう意図されない。その変更及び他の用途に当業者は想到するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来のLiNiOカソード(正極)と溶融塩電解質とを有するリチウムイオン電池の過充電テスト結果であって、カソード物質の不安定性を示すグラフ
【図2】LiFePOカソードと溶融塩電解質とを有するリチウムイオン電池の過充電テスト結果であって、LiNiOカソードと比較して高い安定性を示すグラフ
【図3】溶融塩電解質を有する2つのリチウムイオン電池のDSCテスト結果であって、LiFePOカソードを有する電池はLiNiOカソードを有する電池より高い熱安定性を有することを示すグラフ
【図4】電池の単純化された模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塩を含む電解質と、負極と、電気活性物質を含む正極とを備える電池であって、
電気活性物質が、第1の種、リン、酸素、及び前記第1の種以外の1種またはそれ以上の金属または半金属の化合物であり、
動作中に、前記第1の種のカチオンが、前記電気活性物質に挿入され、前記電気活性物質から取り出される電池。
【請求項2】
前記第1の種がアルカリ金属である請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記アルカリ金属がリチウムのリチウムイオン電池である請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記電解質が1種またはそれ以上の第1の種の塩を含む請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記電気活性物質が、式A(PO(但し、1≦x≦3、1≦y≦3、1≦z≦3であり、Aはアルカリ金属を表し、MはA以外の1種またはそれ以上の金属を表す)で表されるものである請求項2に記載の電池。
【請求項6】
前記電気活性物質が、アルカリ金属と、アルカリ土類金属、遷移金属、13族金属、14族金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属とのリン酸塩である請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記アルカリ金属がリチウムであり、前記電気活性物質がリン酸鉄リチウムである請求項5に記載の電池。
【請求項8】
前記電気活性物質が、式A(POHal(但し、Aは第1の種を表し、MはA以外の1種またはそれ以上の金属を表し、Halはハロゲンを表す)で表されるものである請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記ハロゲンがフッ素である請求項8に記載の電池。
【請求項10】
負極と、正極と、溶融塩を含む電解質とを備えるリチウムイオン電池であって、
正極が、リン、酸素、リチウム、及び少なくとも他の1種の金属または半金属を含む電気活性化合物を有するリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記電気活性化合物が、リチウムと、アルカリ土類金属、遷移金属、13族金属、及び14族金属からなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属とを有するリン酸リチウム合金である請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項12】
前記リン酸リチウム合金がハロゲン化されている請求項11に記載のリチウムイオン電池。
【請求項13】
前記電気活性化合物が、式Li(PO(但し、1≦x≦3、1≦y≦3、1≦z≦3であり、Mがリチウム以外の1種またはそれ以上の金属を表す)によって表わされるものである請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項14】
前記Mが、Mg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,In,Sn,Sb,La,Ce,W,及びAuからなる金属の群から選択される1種またはそれ以上の金属である請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項15】
前記Mが、アルカリ土類金属、遷移金属、13族金属、及び14族金属からなる金属の群から選択される1種またはそれ以上の金属である請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項16】
前記電気活性化合物がリン酸鉄リチウムである請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項17】
前記電気活性化合物が、Li(POF(但し、Mは、アルカリ土類金属、遷移金属、13族金属、及び14族金属からなる金属の群から選択される金属である)によって表されるフッ化リン酸塩である請求項10に記載のリチウムイオン電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−538374(P2007−538374A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527365(P2007−527365)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/017219
【国際公開番号】WO2005/121413
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505438890)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】TOYOTA MOTOR ENGINEERING & MANUFACTURING NORTH AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】25 ATLANTIC AVENUE,ERLANGER, KENTUCKY 41018, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(506386343)サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シオンティフィーク (3)
【出願人】(506386354)ユニバーシティ・ドゥ・モントリオール (3)
【Fターム(参考)】