説明

溶融樹脂のスクリュー式押出機

【課題】ハウジングに十分の強度を確保させる一方、押出機から押し出される樹脂の状態を、樹脂形成品の形成にとって、より最適のものにできるようにする。
【解決手段】溶融樹脂のスクリュー式押出機は、シリンダ形状のハウジング11と、ハウジング11の軸心10上でハウジング11に挿入され、軸心10回りに回転R駆動させられるスクリュー13と、ハウジング11の軸方向の複数箇所に形成され、ハウジング11の内部を視認可能にする複数個の視認窓23とを備える。ハウジング11の軸方向の一端部側内に投入された樹脂2をハウジング11内で熱溶融させると共にスクリュー13の回転Rによりハウジング11の他端部から樹脂成形機5に向けて押し出すようにする。ハウジング11の軸方向で互いに隣り合う二つの視認窓23(A),23(B)のうち、一方の視認窓23(A)と他方の視認窓23(B)とをハウジング11の周方向で互いに偏位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ形状のハウジングの一端部側内に投入した樹脂を、このハウジング内で熱溶融させると共に、このハウジング内で回転するスクリューにより上記ハウジングの他端部から押し出すようにした溶融樹脂のスクリュー式押出機に関し、より具体的には、上記ハウジング内における樹脂の溶融状態などの各種状態を上記ハウジングの外部から視認可能にする視認窓を上記ハウジングに形成した溶融樹脂のスクリュー式押出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記溶融樹脂のスクリュー式押出機には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、溶融樹脂のスクリュー式押出機は、シリンダ形状のハウジングと、このハウジングの軸心上でこのハウジングに挿入され、上記軸心回りに回転駆動させられるスクリューと、上記ハウジングの周方向の一部分で、その軸方向に所定ピッチをおいて断続的に形成され、このハウジングの内部を視認可能にする複数個の視認窓とを備えている。そして、上記ハウジングの軸方向の一端部側内に投入された樹脂は上記ハウジング内で熱溶融させられると共に上記スクリューの回転により上記ハウジングの他端部からダイなどの樹脂成形機に向けて押し出され、このように押し出された樹脂は、上記樹脂成形機でパイプなど所望の樹脂成形品となるよう形成されるようになっている。
【0003】
ここで、上記ハウジングの一端部側内に投入された樹脂が他端部から押し出される間における上記樹脂の搬送状態、熱溶融状態、および混練状態の各種状態は、上記各視認窓を通して視覚的に知覚できることとされている。
【0004】
そして、上記した樹脂の各種状態の視覚的な知覚によれば、上記ハウジング内の樹脂を搬送や混練するスクリューのピッチ寸法や外径寸法等の形状、スクリューの回転数、およびヒータの容量などの押出機の仕様についての再検討や再確認が精度よくできることとされ、もって、上記押出機から押し出される樹脂の状態を、この樹脂により形成される上記成形品の形成にとって、より最適のものにできることとされる。
【0005】
また、従来、下記特許文献2に示されるものがある。この公報のものは、前記特許文献1のものとほぼ同構成かつ同作用であるが、そのハウジングの周方向の一部分に、その軸方向に連続的に延びる長尺のスリット形状の視認窓が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−226597号公報
【特許文献2】特開平1−295814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記した特許文献1に係る視認窓は、前記したように、ハウジングの周方向の一部分で、その軸方向に所定ピッチをおいて断続的に設けられている。このため、上記したハウジング内における樹脂の各種状態についての視覚的な知覚は、このハウジングの軸方向で不連続なものにとどめられる。よって、このような連続性に欠ける知覚の内容は、押出機の仕様の再検討や再確認を、より精度よくする上で不十分になるおそれがあり、この点、改善の余地が残されている。
【0008】
一方、前記した特許文献2に係る視認窓は、前記したように、ハウジングの周方向の一部分で、その軸方向に連続的に長く延びる長尺のスリット形状とされている。このため、上記したハウジング内における樹脂の各種状態についての視覚的な知覚は、この軸方向で連続的にできる。そして、このような連続的な知覚によれば、押出機の仕様の再検討や再確認が、より精度よくできることとなって好ましい。
【0009】
しかし、上記ハウジング内では、樹脂を加圧しながらその他端部から押し出すようスクリューが回転していて、その内圧は例えば50MPaにも達することがあるため、上記ハウジングには十分の強度の確保が求められる。このため、上記したように視認窓を長尺のスリット形状にした場合には、上記ハウジング内の内圧に鑑み、このハウジングの強度が不足するおそれを生じ、これは、ハウジングの強度上、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、押出機におけるシリンダ形状のハウジングの一端部側内に投入した樹脂を、このハウジング内で熱溶融させると共に、このハウジング内で回転するスクリューにより上記ハウジングの他端部から押し出す場合において、上記ハウジングに十分の強度を確保させる一方、このハウジング内における樹脂の各種状態についての視覚的な知覚が、このハウジングの軸方向で連続的にできるようにして、上記押出機から押し出される樹脂の状態を、この樹脂により形成される形成品の形成にとって、より最適のものにできるようにすることである。
【0011】
請求項1の発明は、シリンダ形状のハウジング11と、このハウジング11の軸心10上でこのハウジング11に挿入され、上記軸心10回りに回転R駆動させられるスクリュー13と、上記ハウジング11の軸方向の複数箇所に形成され、このハウジング11の内部を視認可能にする複数個の視認窓23とを備え、上記ハウジング11の軸方向の一端部側内に投入された樹脂2を上記ハウジング11内で熱溶融させると共に上記スクリュー13の回転Rにより上記ハウジング11の他端部から樹脂成形機5に向けて押し出すようにした溶融樹脂のスクリュー式押出機において、
上記ハウジング11の軸方向で互いに隣り合う二つの視認窓23(A),23(B)のうち、一方の視認窓23(A)と他方の視認窓23(B)とを上記ハウジング11の周方向で互いに偏位させたことを特徴とする溶融樹脂のスクリュー式押出機である。
【0012】
請求項2の発明は、上記ハウジング11の周方向の一部分11aに上記一方の視認窓23(A)の複数個を配設し、上記ハウジング11の周方向の他部分11bに上記他方の視認窓23(B)の複数個を配設したことを特徴とする請求項1に記載の溶融樹脂のスクリュー式押出機である。
【0013】
請求項3の発明は、上記隣り合う二つの視認窓23(A),23(B)の上記ハウジング11の軸方向での互いの対向端部23a,23bが、上記ハウジング11の周方向で重なるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の溶融樹脂のスクリュー式押出機である。
【0014】
請求項4の発明は、上記ハウジング11の周方向の上記一部分11aと他部分11bとがなす角度θを100°以下にしたことを特徴とする請求項2に記載の溶融樹脂のスクリュー式押出機である。
【0015】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明による効果は、次の如くである。
【0017】
請求項1の発明は、シリンダ形状のハウジングと、このハウジングの軸心上でこのハウジングに挿入され、上記軸心回りに回転駆動させられるスクリューと、上記ハウジングの軸方向の複数箇所に形成され、このハウジングの内部を視認可能にする複数個の視認窓とを備え、上記ハウジングの軸方向の一端部側内に投入された樹脂を上記ハウジング内で熱溶融させると共に上記スクリューの回転により上記ハウジングの他端部から樹脂成形機に向けて押し出すようにした溶融樹脂のスクリュー式押出機において、
上記ハウジングの軸方向で互いに隣り合う二つの視認窓のうち、一方の視認窓と他方の視認窓とを上記ハウジングの周方向で互いに偏位させている。
【0018】
このため、仮に、上記ハウジングの軸方向で互いに隣り合う二つの視認窓の上記軸方向での互いの対向縁部を、この軸方向で互いに接近させたり、ハウジングの周方向で重ねたりして、上記二つの視認窓をハウジングの軸方向で、できるだけ連続的に配置したとしても、前記従来の技術にて説明した視認窓がハウジングの軸方向に連続的に長く延びる長尺のスリット形状のものに比べて、このハウジングには十分の強度を確保させることができる。
【0019】
そして、上記したようにハウジングに十分の強度を確保させる一方、上記隣り合う二つの視認窓をハウジングの軸方向で、できるだけ連続的に配置できるため、上記各視認窓を通してのハウジングの内部の視認により、このハウジング内における樹脂の各種状態についての視覚的な知覚が、このハウジングの軸方向で、より連続的に精度よくできることとなる。よって、このようなハウジングの軸方向で連続性のある精度のよい知覚によれば、押出機の仕様の再検討や再確認が、より精度よくできることとなる。この結果、押出機から押し出される樹脂の状態を、この樹脂により形成される成形品にとって、より最適のものにすることができる。
【0020】
請求項2の発明は、上記ハウジングの周方向の一部分に上記一方の視認窓の複数個を配設し、上記ハウジングの周方向の他部分に上記他方の視認窓の複数個を配設している。
【0021】
このため、上記一方の視認窓と他方の視認窓とは上記ハウジングの軸方向の一端部側から他端部側に向かうに従い、このハウジングの周方向の一部分と他部分とに交互に配置される。よって、上記各視認窓がハウジングの周方向に単に分散配置されることに比べて、上記各視認窓を通してのハウジングの内部の視認がし易くなる。よって、ハウジングの内部における樹脂の各種状態についての視覚的な知覚が、より精度よくできることとなり、その分、押出機の仕様の再検討や再確認が、更に精度よくできる。
【0022】
請求項3の発明は、上記隣り合う二つの視認窓の上記ハウジングの軸方向での互いの対向端部が上記ハウジングの周方向で重なるようにしている。
【0023】
このため、上記一方の視認窓を通してハウジングの内部を視認した後、これに続いて上記他方の視認窓を通して上記ハウジングの内部を視認する場合には、これら両視認の間で、上記各対向端部をそれぞれ通してハウジングの軸方向の同じ位置の内部をほぼ同時に視認することができる。よって、ハウジングの内部における樹脂の各種状態についての視覚的な知覚が、このハウジングの軸方向で更に連続的に精度よくできることとなり、その分、押出機の仕様の再検討や再確認が、更に精度よくできる。
【0024】
請求項4の発明は、上記ハウジングの周方向の上記一部分と他部分とがなす角度を100°以下にしたことを特徴とする請求項2に記載の溶融樹脂のスクリュー式押出機ている。
【0025】
このため、上記一方の視認窓と他方の視認窓とを順次通してハウジングの内部を視認する場合に、上記一方の視認窓と他方の視認窓とは、これらのなす角度が100°以下であって上記ハウジングの周方向で互いに接近していることから、上記一方の視認窓と他方の視認窓とを順次通してハウジングの内部を視認することが容易かつ円滑にできる。よって、ハウジングの内部における樹脂の各種状態についての視覚的な知覚が、より精度よくできることとなり、その分、押出機の仕様の再検討や再確認が、更に精度よくできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】平面図である。
【図2】側面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の溶融樹脂のスクリュー式押出機に関し、押出機におけるシリンダ形状のハウジングの一端部側内に投入した樹脂を、このハウジング内で熱溶融させると共に、このハウジング内で回転するスクリューにより上記ハウジングの他端部から押し出す場合において、上記ハウジングに十分の強度を確保させる一方、このハウジング内における樹脂の各種状態についての視覚的な知覚が、このハウジングの軸方向で連続的にできるようにして、上記押出機から押し出される樹脂の状態を、この樹脂により形成される形成品の形成にとって、より最適のものにできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0028】
即ち、溶融樹脂のスクリュー式押出機は、シリンダ形状のハウジングと、このハウジングの軸心上でこのハウジングに挿入され、上記軸心回りに回転駆動させられるスクリューと上記ハウジングの軸方向の複数箇所に形成され、このハウジングの内部を視認可能にする複数個の視認窓とを備えている。上記ハウジングの軸方向の一端部側内に投入された樹脂を上記ハウジング内で熱溶融させると共に上記スクリューの回転により上記ハウジングの他端部から樹脂成形機に向けて押し出すようにしている。上記ハウジングの軸方向で互いに隣り合う二つの視認窓のうち、一方の視認窓と他方の視認窓とが上記ハウジングの周方向で互いに偏位させられている。
【実施例】
【0029】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0030】
図において、符号1は押出成形機で、この押出成形機1は、熱可塑性の樹脂2を加熱溶融させて連続的に前方Frに向かって押し出し可能とするスクリュー式押出機3と、この押出機3から押し出された樹脂2を所望の成形品4に形成する樹脂成形機5とを備えている。
【0031】
上記成形品4がパイプなどの長尺体である場合には、上記樹脂成形機5は上記溶融樹脂を通過させるダイ孔が形成されたダイとされる。また、上記成形品4が射出成形品である場合には、上記樹脂成形機5は上記溶融樹脂を流入させるキャビティが形成された金型とされる。
【0032】
上記押出機3は、作業床8上に設置される架台9と、軸心10が水平に延びて上記架台9に締結具により支持されるシリンダ形状のハウジング11と、このハウジング11の軸心10上でこのハウジング11内のスクリュー孔12に挿入され、上記軸心10回りの一方向に回転R可能とされるスクリュー13と、上記ハウジング11の軸方向の一端部側(後端部側)に突設され、このハウジング11内に樹脂2を投入可能とさせるホッパー14と、上記架台9に支持されて上記スクリュー13の軸方向の一端部(後端部)に連結され、このスクリュー13を変速可能に回転R駆動させる電動機15と、上記ハウジング11の軸方向のほぼ全体にわたり、その外面に取り付けられるヒータ16とを備えている。上記スクリュー13の変速範囲は、0〜150r.p.mとされる。
【0033】
上記スクリュー13は、上記軸心10上に位置するスクリュー軸19と、このスクリュー軸19の外面に一体的に突設され、右ねじ状に形成される羽根20とを備えている。上記スクリュー軸19の外径寸法Dは、上記スクリュー13の一端部側から他端部側に向かうに従い、段階的に大きくされている。一方、上記羽根20のピッチ寸法Pは一定寸法とされている。また、上記スクリュー13の回転R方向は、このスクリュー13を一端部側から他端部側に向かう視線(前方に向かう視線)で見て反時計方向とされている。
【0034】
具体的には、上記ハウジング11とスクリュー13とは金属製で、ハウジング11のスクリュー孔12の内径寸法は、上記スクリュー13の外径寸法よりもわずかに大きく、上記スクリュー13の羽根20のピッチ寸法Pとほぼ同じ値とされ、30〜50mmとされる。
【0035】
上記ハウジング11の軸方向の複数箇所に形成され、このハウジング11の内部を視認可能にする複数個(10個)の視認窓23が設けられている。これら各視認窓23は、上記ハウジング11に形成され、その底部が上記スクリュー孔12に近接する嵌入孔24と、この嵌入孔24の底部から上記スクリュー孔12に連通するよう形成された連通孔25と、上記嵌入孔24に嵌入されたガラス製透明体26と、上記ハウジング11の外面に締結具27により締結され、上記嵌入孔24から上記透明体26が抜け出ることを防止する押え板28とを備えている。
【0036】
上記押え板28には視認孔29が貫設され、上記軸心10に沿った視線で見た視認窓23の横断面視(図3)で、上記嵌入孔24、連通孔25、透明体26、押え板28、および視認孔29の各中心31は、上記軸心10と直交する線上に位置し、それぞれ上記ハウジング11の軸方向に長く延びる形状とされている。上記ハウジング11の内部を視認可能にさせる上記視認窓23の実質的な範囲は上記視認孔29によって定められている。
【0037】
また、上記ハウジング11の内部の樹脂2の圧力を検出する圧力センサー32と、上記ハウジング11の内部の樹脂2の温度を検出する温度センサー33とがそれぞれ上記ハウジング11に取り付けられている。
【0038】
上記押出成形機1により、樹脂2の成形品4を形成する場合には、まず、原料となるペレットなどの樹脂2を上記押出機3のホッパー14を通して上記ハウジング11の軸方向の一端部側(後端部側)に投入する。すると、上記樹脂2は上記スクリュー13の回転Rによりハウジング11の内部を他端部側(前端部側)に向けて搬送される。そして、この搬送途中において、上記樹脂2は、上記ヒータ16による加熱により熱溶融され、かつ、上記スクリュー13により混練されて上記ハウジング11の他端部から上記樹脂成形機5に向けて押し出され、この樹脂成形機5において、上記成形品4が形成されるようになっている。
【0039】
ここで、上記押出機3の軸方向の一端部側は搬送(もしくは供給)ゾーン34といわれる部分であり、この搬送ゾーン34では、上記スクリュー13のスクリュー軸19の外径寸法Dが小さくされていて、押出機3による樹脂2の搬送量(kg/min)が大きくされている。
【0040】
また、上記押出機3の軸方向の中途部は、熱溶融(もしくは圧縮)ゾーン35といわれる部分であり、この熱溶融ゾーン35では、上記スクリュー13のスクリュー軸19の外径寸法Dが大きくされていて、押出機3による樹脂2の搬送量が減少させられる。このため、上記樹脂2は上記ヒータ16による加熱により十分に熱溶融させられると共に、上記搬送ゾーン34から供給される樹脂2により圧縮されながら混練される。
【0041】
また、上記押出機3の軸方向の他端部側は計量ゾーン36といわれる部分であり、この計量ゾーン36では、上記スクリュー13のスクリュー軸19の外径寸法Dがより大きくされていて、押出機3による樹脂2の搬送量が更に減少させられる。このため、上記樹脂2は上記スクリュー13により、より十分に混練されると共に圧縮されて上記ハウジング11の他端部から押し出され、上記樹脂成形機5に供給される。
【0042】
一方、上記各ゾーン34〜36における上記樹脂2の搬送状態、熱溶融状態、および混練状態の樹脂2の各種状態は、上記各視認窓23を通して視覚的に知覚できることとされている。
【0043】
そして、上記した樹脂2の各種状態の視覚的な知覚によれば、上記ハウジング11内の樹脂2を搬送や混練するスクリュー13のピッチ寸法Pや外径寸法D等の形状、スクリュー13の回転数、およびヒータ16の容量などの押出機3の仕様についての再検討や再確認が精度よくできる。よって、上記押出機3から押し出される樹脂2の状態を、この樹脂2により形成される上記成形品4の形成にとって、より最適のものにできることとなる。
【0044】
上記構成において、ハウジング11の軸方向で互いに隣り合う二つの視認窓23(A),23(B)のうち、一方の視認窓23(A)と他方の視認窓23(B)とを上記ハウジング11の周方向で互いに偏位させている。
【0045】
このため、仮に、上記ハウジング11の軸方向で互いに隣り合う二つの視認窓23(A),23(B)の上記軸方向での互いの対向縁部を、この軸方向で互いに接近させたり、ハウジング11の周方向で重ねたりして、上記二つの視認窓23(A),23(B)をハウジング11の軸方向で、できるだけ連続的に配置したとしても、前記従来の技術にて説明した視認窓23がハウジング11の軸方向に連続的に長く延びる長尺のスリット形状のものに比べて、このハウジング11には十分の強度を確保させることができる。
【0046】
そして、上記したようにハウジング11に十分の強度を確保させる一方、上記隣り合う二つの視認窓23(A),23(B)をハウジング11の軸方向で、できるだけ連続的に配置できるため、上記各視認窓23を通してのハウジング11の内部の視認により、このハウジング11内における樹脂2の各種状態についての視覚的な知覚が、このハウジング11の軸方向で、より連続的に精度よくできることとなる。よって、このようなハウジング11の軸方向で連続性のある精度のよい知覚によれば、押出機3の仕様の再検討や再確認が、より精度よくできることとなる。この結果、押出機3から押し出される樹脂2の状態を、この樹脂2により形成される成形品4にとって、より最適のものにすることができる。
【0047】
また、上記ハウジング11の周方向の一部分11aに上記一方の視認窓23(A)の複数個を配設し、上記ハウジング11の周方向の他部分11bに上記他方の視認窓23(B)の複数個を配設している。
【0048】
このため、上記一方の視認窓23(A)と他方の視認窓23(B)とは上記ハウジング11の軸方向の一端部側から他端部側に向かうに従い、このハウジング11の周方向の一部分11aと他部分11bとに交互に配置される。よって、上記各視認窓23がハウジング11の周方向に単に分散配置されることに比べて、上記各視認窓23を通してのハウジング11の内部の視認がし易くなる。よって、ハウジング11の内部における樹脂2の各種状態についての視覚的な知覚が、より精度よくできることとなり、その分、押出機3の仕様の再検討や再確認が、更に精度よくできる。
【0049】
また、上記隣り合う二つの視認窓23(A),23(B)の上記ハウジング11の軸方向での互いの対向端部23a,23bが上記ハウジング11の周方向で重なるようにしている。
【0050】
このため、上記一方の視認窓23(A)を通してハウジング11の内部を視認した後、これに続いて上記他方の視認窓23(B)を通して上記ハウジング11の内部を視認する場合には、これら両視認の間で、上記各対向端部23a,23bをそれぞれ通してハウジング11の軸方向の同じ位置の内部をほぼ同時に視認することができる。よって、ハウジング11の内部における樹脂2の各種状態についての視覚的な知覚が、このハウジング11の軸方向で更に連続的に精度よくできることとなり、その分、押出機3の仕様の再検討や再確認が、更に精度よくできる。
【0051】
具体的には、上記隣り合う二つの視認窓23(A),23(B)の上記互いの対向端部23a,23bが上記ハウジング11の周方向で重なる寸法Lは、上記スクリュー13の羽根20のピッチ寸法Pの1/2〜1/4倍とされている。
【0052】
また、上記ハウジング11の周方向の上記一部分11aと他部分11bとがなす角度θを100°以下、好ましくは90°以下にしている。
【0053】
このため、上記一方の視認窓23(A)と他方の視認窓23(B)とを順次通してハウジング11の内部を視認する場合に、上記一方の視認窓23(A)と他方の視認窓23(B)とは、これらのなす角度θが100°以下であって上記ハウジング11の周方向で互いに接近していることから、上記一方の視認窓23(A)と他方の視認窓23(B)とを順次通してハウジング11の内部を視認することが容易かつ円滑にできる。よって、ハウジング11の内部における樹脂2の各種状態についての視覚的な知覚が、より精度よくできることとなり、その分、押出機3の仕様の再検討や再確認が、更に精度よくできる。
【0054】
なお、以上は図示の例によるが、上記ハウジング11の内部における樹脂2の各種状態の知覚は、上記各視認窓23を通し直接視認しなくてもよく、例えば、テレビカメラで撮像したものを間接視認し、もしくは、この撮像したものを合成するなど画像処理したものを間接視認して、視覚的に知覚するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 押出成形機
2 樹脂
3 押出機
4 成形品
5 樹脂成形機
10 軸心
11 ハウジング
11a 一部分
11b 他部分
12 スクリュー孔
13 スクリュー
14 ホッパー
15 電動機
16 ヒータ
19 スクリュー軸
20 羽根
23 視認窓
23a 対向端部
23b 対向端部
24 嵌入孔
25 連通孔
26 透明体
27 締結具
28 押え板
29 視認孔
31 中心
34 搬送ゾーン
35 熱溶融ゾーン
36 計量ゾーン
D 外径寸法
L 重なる寸法
P ピッチ寸法
R 回転
Fr 前方
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ形状のハウジングと、このハウジングの軸心上でこのハウジングに挿入され、上記軸心回りに回転駆動させられるスクリューと、上記ハウジングの軸方向の複数箇所に形成され、このハウジングの内部を視認可能にする複数個の視認窓とを備え、上記ハウジングの軸方向の一端部側内に投入された樹脂を上記ハウジング内で熱溶融させると共に上記スクリューの回転により上記ハウジングの他端部から樹脂成形機に向けて押し出すようにした溶融樹脂のスクリュー式押出機において、
上記ハウジングの軸方向で互いに隣り合う二つの視認窓のうち、一方の視認窓と他方の視認窓とを上記ハウジングの周方向で互いに偏位させたことを特徴とする溶融樹脂のスクリュー式押出機。
【請求項2】
上記ハウジングの周方向の一部分に上記一方の視認窓の複数個を配設し、上記ハウジングの周方向の他部分に上記他方の視認窓の複数個を配設したことを特徴とする請求項1に記載の溶融樹脂のスクリュー式押出機。
【請求項3】
上記隣り合う二つの視認窓の上記ハウジングの軸方向での互いの対向端部が、上記ハウジングの周方向で重なるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の溶融樹脂のスクリュー式押出機。
【請求項4】
上記ハウジングの周方向の上記一部分と他部分とがなす角度を100°以下にしたことを特徴とする請求項2に記載の溶融樹脂のスクリュー式押出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228857(P2012−228857A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100021(P2011−100021)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(591265611)株式会社プラ技研 (9)
【Fターム(参考)】