説明

溶融樹脂供給装置

【課題】加熱シリンダによって高温に晒されることがなく、ノズル先端から漏れ出た溶融樹脂によって動作不良などの悪影響を受けることのないシャットオフバルブを備えた溶融樹脂供給装置を提案すること。
【解決手段】溶融樹脂供給装置1の加熱シリンダ3の先端に取り付けたノズル5にはシャットオフバルブ6が配置されている。シャットオフバルブ6のバルブ駆動用シリンダ7は加熱シリンダ3から熱的に分離されるように離れた位置にあり、スライド式の伝達機構を介してシャットオフバルブ6に連結されている。樹脂注入時にのみ、加熱シリンダ3が後退位置3Bから前進位置3Aに移動してバルブ駆動用シリンダ7の側に接近し、シャットオフバルブ6がバルブ駆動用シリンダ7によって閉じ状態から開き状態に切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置、押出成形装置などの溶融樹脂供給装置に関するものであり、さらに詳しくは、溶融樹脂を射出成形型に供給するノズルを開閉するために用いるシャットオフバルブなどの開閉弁の駆動機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機などの成形装置では、熱可塑性樹脂を加熱溶融する加熱シリンダを備えており、この先端にはシャットオフノズルが取り付けられ、加熱シリンダ内部からシャットオフノズルを介して成形型に溶融樹脂が供給される。シャットオフノズルとしては、特許文献1に開示されているようにスプリングなどのばね力によって閉じ状態に保持され、溶融樹脂圧力が高まると開くように構成されたもの、特許文献2、3に開示されているように駆動用シリンダ、回転駆動手段を用いて開閉するように構成されたものが知られている。後者のノズル開閉用の駆動源を備えたものにおいては、駆動用シリンダ、回転駆動手段が加熱シリンダに取り付けられ、駆動力伝達部材を介してシャットオフノズルの弁体に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−81588号公報
【特許文献2】特開平11−42680号公報
【特許文献3】特開2002−292683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、シャットオフノズルは加熱シリンダの加熱によって高温状態に晒され、高温に加熱された状態でシャットオフノズルから供給される溶融樹脂がノズル周辺に付着する。したがって、加熱シリンダに取り付けられている駆動用シリンダ、モータなどの駆動源は高温に晒され、耐久性などが劣化しやすいという問題点がある。また、ノズル先端から漏れ出た溶融樹脂が駆動力伝達部材に付着して硬化して、それらの動作不良の原因になるという問題点もある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、加熱シリンダによって高温に晒されることがなく、しかも、ノズル先端から漏れ出た溶融樹脂によって動作不良などの悪影響を受けることのないシャットオフバルブを備えた溶融樹脂供給装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の溶融樹脂供給装置は、
樹脂を加熱溶融する加熱シリンダと、
前記加熱シリンダの先端に取り付けた溶融樹脂供給用のノズルと、
前記ノズルに取り付けたシャットオフバルブと、
前記シャットオフバルブを開閉するための駆動力を発生するバルブ駆動力源と、
前記加熱シリンダおよび前記バルブ駆動力源を相対移動させる移動機構と、
前記バルブ駆動力源からの駆動力を前記シャットオフバルブに伝達する伝達機構とを有しており、
前記伝達機構は、前記加熱シリンダの前記シャットオフバルブの側に取り付けたバルブ側部材と、前記バルブ駆動力源の側に取り付けた駆動側部材とを有しており、
前記バルブ側部材と前記駆動側部材は、前記移動機構による移動方向に相対的にスライド可能な状態で連結されていることを特徴としている。
【0007】
ここで、加熱シリンダおよびバルブ駆動力源が相互に離れる方向に所定量移動すると、バルブ側部材と駆動側部材の連結状態が解除された連結解除状態になり、加熱シリンダおよびバルブ駆動力源が相互に離れた位置から接近する方向に所定量移動すると、バルブ側部材と駆動側部材が再び前記連結状態に戻るように構成してもよい。
【0008】
本発明の溶融樹脂供給装置では、シャットオフバルブのバルブ駆動力源を加熱シリンダから離れた位置に配置しておくことができる。あるいは、バルブ駆動源を加熱シリンダから機械的に分離した位置に配置しておくことができる。したがって、シャットオフバルブと加熱シリンダとを熱的に分離した状態にできるので、加熱シリンダによる高温に晒されてシャットオフバルブの動作性能、耐久性が劣化してしまうことを防止あるいは抑制できる。
【0009】
また、バルブ駆動力源からシャットオフバルブに開閉用の駆動力を伝達するための伝達機構が、加熱シリンダとバルブ駆動力源の相対的な移動位置、例えば加熱シリンダの軸線方向の移動位置に応じて、連結および切り離し可能となっている場合には、シャットオフバルブを駆動する必要がある場合にのみ、加熱シリンダを軸線方向などに移動させて伝達機構を連結状態に切り替えればよい。シャットオフバルブを駆動させる必要がない状態では伝達機構を切り離しておけばよいので、伝達機構を構成している部材を介して加熱シリンダの熱がバルブ駆動力源の側に伝導してバルブ駆動力源が高温状態になってしまうことを防止できる。
【0010】
さらに、シャットオフバルブの駆動時にのみ伝達機構が連結状態になり、それ以外の状態では加熱シリンダおよびノズルから離れているので、ノズルから漏れ出た溶融樹脂がバルブ駆動力源、当該バルブ駆動力源に連結されている伝達機構の構成部品に付着して、それらの動力伝達性能が劣化するなどの弊害も回避できる。
【0011】
ここで、加熱シリンダは一般的には、シリンダ移動機構によって、その軸線方向に移動して、成形型に溶融樹脂を供給する前進位置、および、ここから後退した後退位置などに位置決めされ、バルブ駆動力源は定まった位置、例えば装置架台などに取り付けられる。
【0012】
この場合、バルブ側部材および駆動側部材のうちの一方の部材を、加熱シリンダの軸線方向に延びるスライド溝を備えたものとし、他方の部材を、スライド溝に沿ってスライド可能な係合部を備えたものとすることができ、係合部を、スライド溝内から軸線方向に直交する方向には引き抜き不可とし、バルブ駆動力源によって駆動側部材を軸線方向に直交する方向に移動させるようにすればよい。
【0013】
次に、シャットオフバルブとしては、ノズルを閉じた閉じ位置および当該ノズルを開いた開き位置に移動可能な弁体を備えており、バルブ側部材は、軸線方向に直交する方向の移動位置に応じて、弁体閉じ位置および開き位置に位置決め可能であり、当該バルブ側部材は、ノズルの外周面から軸線方向に直交する方向に突出している突出部分を備え、当該突出部分の先端に係合部あるいはスライド溝が形成されている構成のものを用いることができる。
【0014】
この場合、シャットオフバルブとして、
ノズル内に同軸状に取り付けたバルブケースと、
軸線方向に直交するノズル半径方向にスライド可能な状態でバルブケースに取り付けられている連結ロッドと、
バルブケース内に位置する連結ロッドの部位に取り付けられており、軸線方向に対して傾斜している一対の平行な前側カム面および後側カム面を備えたカム板と、
前側カム面の前側に配置されており、軸線方向に移動可能な状態でバルブケースに取り付けられているニードル状の弁体とを備えており、
カム板のノズル半径方向の移動位置に応じて、前側カム面によって弁体が軸線方向の前方に押し出されてノズルの先端に形成されているノズル口を封鎖した閉じ位置と、弁体がノズル内の溶融樹脂の圧力によって軸線方向の後方に押し込まれて、ノズル口を開放した開き位置とに切り替わるように構成されているものを用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の溶融樹脂供給装置では、その加熱シリンダのノズルに取り付けたシャットオフバルブの駆動機構が、加熱シリンダの移動位置、例えば、軸線方向の移動位置に応じて、加熱シリンダに対して熱的に切り離された状態、たとえば、機械的な連結が解除された状態に切り替わるようになっている。
【0016】
したがって、シリンダなどのバルブ駆動力源が加熱シリンダ、溶融樹脂による高温に晒される状態を必要最小限に抑えることができ、また、ノズルから漏れ出た溶融樹脂が伝達機構の構成部品に付着して動作不良が発生することも抑制できる。よって、長期に亘ってノズル開閉動作を適切に行うことのできるシャットオフバルブを実現できるので、長期にわたって安定した溶融樹脂供給動作を行うことのできる溶融樹脂供給装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した溶融樹脂供給装置の主要部分を示す説明図である。
【図2】図1の溶融樹脂供給装置における加熱シリンダの先端に取り付けたシャットオフバルブおよびその駆動機構を示す部分縦断面図および部分横断面図である。
【図3】シャットオフバルブの開き状態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した溶融樹脂供給装置の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は本発明を適用した溶融樹脂供給装置の主要部分を示す説明図である。溶融樹脂供給装置1は、装置架台2に搭載されている熱可塑性樹脂を加熱して溶融する加熱シリンダ3を備えている。加熱シリンダ3は水平な姿勢で、その軸線方向3aに沿って前後に直線往復移動可能な状態で装置架台2に搭載されており、サーボモータ、駆動シリンダなどの駆動機構(図示せず)によって前進および後退させることができる。例えば、図1において想像線で示す後退位置3Bから実線で示す前進位置3Aまでの間を移動させることができる。
【0020】
加熱シリンダ3の外周面にはヒーター4が取り付けられており、その内部には同軸状態にスクリュ(図示せず)が配置されている。加熱シリンダ3の後端部側から内部に投入された熱可塑性樹脂のペレットがスクリュによって先端に向けて送り出されながら加熱されて溶融状態になる。加熱シリンダ3の先端開口3bには溶融樹脂供給用のノズル5が同軸状態に取り付けられている。このノズル5にはニードル式のシャットオフバルブ6が同軸状に組み込まれており、ノズル5の先端に形成されている所定内径のノズル口5aが当該シャットオフバルブ6によって開閉制御される。
【0021】
前進位置3Aにある加熱シリンダ3のノズル5の側方位置にはバルブ駆動用シリンダ7(バルブ駆動力源)が配置されている。バルブ駆動用シリンダ7は、加熱シリンダ3の軸線方向3aに直交する状態で装置架台2に水平に取り付けられ、その作動ロッド7aがノズル5の側を向いている。この作動ロッド7aと、加熱シリンダ3の側のシャットオフバルブ6との間は、駆動力伝達用の伝達機構10によって連結されている。
【0022】
伝達機構10は、ノズル5の外周面から水平に軸線方向3aに直交するノズル半径方向に突出している突出ロッド11(バルブ側伝達部材)と、バルブ駆動用シリンダ7の作動ロッド7aに固定した連結バー12(駆動側部材)とを備えている。加熱シリンダ3の軸線方向3aが移動できるように、突出ロッド11と連結バー12は軸線方向3aに相対的にスライド可能な状態で連結されており、バルブ駆動用シリンダ7によって、シャットオフバルブ6の開閉を切り替え可能となっている。
【0023】
図2(a)および(b)は、加熱シリンダ3の先端のノズル5に取り付けたシャットオフバルブ6および、その駆動機構を示す部分縦断面図および部分横断面図である。これらの図も参照して説明すると、バルブ駆動用シリンダ7の作動ロッド7aに取り付けた連結バー12は、加熱シリンダ3の軸線方向3aに平行に延びる矩形断面の部材であり、この連結バー12における加熱シリンダ側に面している側面12aには、軸線3aに平行に延びる直線状のスライド溝13が形成されている。スライド溝13は矩形断面の溝であり、その開口縁が狭い幅となっており、その長さ方向の両端は溝端開口13a、13b(図1参照)となっている。
【0024】
突出ロッド11の先端部分は大径のボルト状の係合頭部11aが形成されている。この係合頭部11aは、スライド溝13の溝端開口13aから当該スライド溝13に対して軸線方向3aに沿って出し入れ可能であり、スライド溝13内から軸線方向3aに直交する方向には引き抜き不可となっている。したがって、スライド溝13に係合頭部11aが挿入された連結状態においては、バルブ駆動用シリンダ7の作動ロッド7aを伸縮させると、同一方向に突出ロッド11を移動させることができる。後述のように、突出ロッド11の移動によって、シャットオフバルブ6が閉じ状態から開き状態、および、開き状態から閉じ状態に切り替わる。
【0025】
次に、ニードル式のシャットオフバルブ6の構造を説明する。シャットオフバルブ6は、ノズル5内に同軸状に取り付けたバルブケース21を備えている。このバルブケース21は円柱状のコマ部分21aを備え、このコマ部分21aの前側円形端面からは同軸状に前方に小径の円筒状先端部分21bが突出している。コマ部分21aの後側円形端面からは同軸状に後方に先細りの紡錘状後端部分21cが突出している。また、ノズル5の内部の溶融樹脂通路5bはコマ部分21aによって前後に遮断されているが、当該コマ部分21aに形成した左右一対の一定幅の円弧状断面の連通路21dを介して溶融樹脂の流通が確保されている。コマ部分21aの後側の紡錘状後端部分21cは溶融樹脂の流れを淀みなく連通路21dに導くための整流機能が備わっている。
【0026】
この構成のバルブケース21のコマ部分21aの中央部には左右に延びる一定幅の矩形断面の内部空間21eが形成されている。この内部空間21eには矩形のカム板22が配置されている。このカム板22は突出ロッド11の内端および支持ロッド23の内端の間に連結されている。突出ロッド11はノズル5およびバルブケース21をスライド可能かつ液密状態に貫通している。支持ロッド23は突出ロッド11と同軸状態に配置されており、突出ロッド11とは反対側においてノズル5およびバルブケース21をスライド可能かつ液密状態に貫通している。
【0027】
カム板22は、軸線方向3aの前側に向いている前側カム面22aと、後側に向いている後側カム面22bとを備えている。これら前後のカム面22a、22bは軸線方向3aに対して同一角度を成す平行な傾斜面である。
【0028】
前側カム面22aの前方には、コマ部分21aから前方に突出している円筒状先端部分21bの中心を前後方向にスライド可能な状態で貫通して延びているニードル24(弁体)が配置されている。ニードル24の先細りの円錐状の先端部24aは、ノズル3の先端に形成されているノズル口5aに対して内側から同軸状に対峙している。
【0029】
後側カム面22bの後方には、コマ部分21aから後方に突出している紡錘状後端部分21cに形成した所定深さの中心穴にガイドロッド25が装着されている。このガイドロッド25の先端25aは後側カム面22bに対峙している。カム板22がノズル半径方向における図において実線で示す位置にある場合には、ガイドロッド25の先端25aがカム板22の後側カム面22bから後側に僅かに離れた位置にある。この状態では、前側カム面22aによってニードル24が前方に押し出された位置24A(閉じ位置)にあり、その先端部24aがノズル口5aに押し込まれて、当該ノズル口5aを封鎖している。すなわち、シャットオフバルブ6によってノズル5が閉じ状態に保持されている。
【0030】
バルブ駆動用シリンダ7を駆動して作動ロッド7aを引くと、突出ロッド11も同一方向に引かれる。すなわち、ノズル半径方向に所定量だけ引き抜かれる。この結果、突出ロッド11の内端に連結されているカム板22も半径方向に移動して、その後側カム面22bがガイドロッド25の先端25aに当接した状態になり、その前側カム面22aがニードル24の後端から後方に離れる。
【0031】
図3はこの状態を示す部分縦断面図である。この図に示すように、ニードル24は前側カム面22aによる拘束が解除されるので、後方に移動可能になる。ノズル5内の溶融樹脂の圧力によってニードル24が後方に押し込まれた位置24B(開き位置)に移動し、ノズル口5aが開く。すなわち、シャットオフバルブ6が開き状態に切り替わる。この状態でバルブ駆動用シリンダ7を駆動して作動ロッド7aを押し出すと、シャットオフバルブ6を閉じ状態に戻すことができる。
【0032】
この構成の溶融樹脂供給装置1では、加熱シリンダ3に投入した熱可塑性樹脂が溶融状態になると、加熱シリンダ3を図1において想像線で示す後退位置3Bから実線で示す前進位置3Aまで移動する。これにより、加熱シリンダ3の先端のノズル5のノズル口5aが不図示の成形型の注入口に接続された状態を形成できる。
【0033】
加熱シリンダ3が前進位置3Aに到達して成形型の注入口に接続された後に、バルブ駆動用シリンダ7を駆動して作動ロッド7aを引き込み、シャットオフバルブ6を閉じ状態から開き状態に切り替える。これにより、ノズル口5aから溶融樹脂が所定の注入圧力で不図示の成形型に注入される。注入終了後には作動ロッド7aを押し出してシャットオフバルブ6を閉じ状態に戻す。この後に、加熱シリンダ3を前進位置3Aから後退位置3Bに向けて移動させる。
【0034】
なお、ノズル5には、例えば90度の角度間隔で、2本のプラグが装着されている。図1〜3においては一方のプラグ31のみを示してある。これらは、ノズル5内の溶融樹脂の圧力および温度を検出するためのセンサ装着用のプラグである。
【0035】
このように、溶融樹脂供給装置1では、加熱シリンダ3の側とバルブ駆動用シリンダ7の側と接近するのは、溶融樹脂の注入動作が行われる間のみである。注入時以外においては、加熱シリンダ3にバルブ駆動機構が搭載されている場合とは異なり、バルブ駆動用シリンダ7が加熱シリンダ3とは実質的に熱的に分離された状態(相互に十分に離れた状態)に保持されている。よって、バルブ駆動用シリンダ7が高温に晒されて動作性能、耐久性が劣化するなどの弊害を回避できる。また、ノズル口5aから漏れ出た溶融樹脂がバルブ駆動用シリンダ7の側に回り込み、その作動ロッド7aなどの駆動部品の動作不良が発生するおそれも防止あるいは抑制できる。
【0036】
なお、本例では、固定側にスライド溝13を配置し、移動側に係合頭部11aを配置したが、固定側にスライド溝に沿ってスライド可能な部材を配置し、移動側にスライド溝を備えた部材を配置してもよい。
【0037】
(その他の実施の形態)
上記の溶融樹脂供給装置1では、加熱シリンダ3の側と、バルブ駆動用シリンダ7の側との間の伝達機構が常に機械的に連結状態となっている。この代わりに、図1に示すように、加熱シリンダ3に投入した熱可塑性樹脂が溶融状態になると、加熱シリンダ3を想像線で示す後退位置3Cから位置3Bを経由して実線で示す前進位置3Aまで移動させるようにしてもよい。加熱シリンダ3が前進する途中において、突出ロッド11の先端の係合頭部11aがスライド溝13の溝端開口13aからスライド溝内に入り、突出ロッド11と連結バー12の機械的な連結状態が形成される。
【0038】
このように、突出ロッド11とスライド溝13を備えた連結バー12との機械的連結を解除できるようにしておくと、加熱シリンダ3の側と、バルブ駆動用シリンダ7の側を確実に熱的に分離できる。
【0039】
また、上記の実施の形態のように、加熱シリンダ3が後退位置にある状態においても突出ロッド11の係合頭部11aがスライド溝13に差し込まれている状態が保持される場合には、必要に応じて、スライド溝13を備えた連結バー12を放熱性に優れた素材から形成し、あるいは、放熱フィンなどを配置した放熱機構を付加すればよい。これにより、加熱シリンダ3の側からバルブ駆動用シリンダ7の側への伝熱を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0040】
1 溶融樹脂供給装置
2 装置架台
3 加熱シリンダ
3a 軸線方向
3A 前進位置
3B 後退位置
4 ヒーター
5 ノズル
5a ノズル口
5b 溶融樹脂通路
6 シャットオフバルブ
7 バルブ駆動用シリンダ
7a 作動ロッド
10 伝達機構
11 突出ロッド
11a 係合頭部
12 連結バー
12a 側面
13 スライド溝
13a、13b 溝端開口
21 バルブケース
21a コマ部分
21b 円筒状先端部分
21c 紡錘状後端部分
21d 連通路
21e 内部空間
22 カム板
22a 前側カム面
22b 後側カム面
23 支持ロッド
24 ニードル
24A 閉じ位置
24B 開き位置
24a 先端部
25 ガイドロッド
25a 先端
31 プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を加熱溶融する加熱シリンダ(3)と、
前記加熱シリンダ(3)の先端に取り付けた溶融樹脂供給用のノズル(5)と、
前記ノズル(5)に取り付けたシャットオフバルブ(6)と、
前記シャットオフバルブ(6)を開閉するための駆動力を発生するバルブ駆動力源(7)と、
前記加熱シリンダ(3)および前記バルブ駆動力源(7)を相対移動させる移動機構と、
前記バルブ駆動力源(7)からの駆動力を前記シャットオフバルブ(6)に伝達する伝達機構(10)とを有しており、
前記伝達機構(10)は、前記加熱シリンダ(3)の前記シャットオフバルブ(6)の側に取り付けたバルブ側部材(11)と、前記バルブ駆動力源(7)の側に取り付けた駆動側部材(12)とを有しており、
前記バルブ側部材(11)と前記駆動側部材(12)は、前記移動機構による移動方向に相対的にスライド可能な状態で連結されていることを特徴とする溶融樹脂供給装置(1)。
【請求項2】
前記加熱シリンダ(3)および前記バルブ駆動力源(7)が相互に離れる方向に所定量移動すると、前記バルブ側部材(11)と前記駆動側部材(12)の連結状態が解除された連結解除状態になり、
前記加熱シリンダ(3)および前記バルブ駆動力源(7)が相互に離れた位置から接近する方向に所定量移動すると、前記バルブ側部材(11)と前記駆動側部材(12)が再び前記連結状態に戻ることを特徴とする溶融樹脂供給装置(1)。
【請求項3】
前記移動機構は、前記加熱シリンダ(3)をその軸線方向に移動させるシリンダ移動機構であり、
前記バルブ駆動力源(7)は定まった位置に配置されており、
前記バルブ側部材(11)および前記駆動側部材(12)のうちの一方は、前記加熱シリンダ(3)の軸線方向(3a)に延びるスライド溝(13)を備えており、
前記バルブ側部材(11)および前記駆動側部材(12)のうちの他方は、前記スライド溝(13)に沿ってスライド可能な係合部(11a)を備えており、
前記係合部(11a)は、前記スライド溝(13)内から前記軸線方向(3a)に直交する方向には引き抜き不可であり、
前記バルブ駆動力源(7)は前記駆動側部材(12)を前記軸線方向(3a)に直交する方向に移動させるものであることを特徴とする請求項2に記載の溶融樹脂供給装置(1)。
【請求項4】
前記加熱シリンダ(3)および前記バルブ駆動力源(7)が相互に離れる方向に所定量移動すると、前記バルブ側部材(11)と前記駆動側部材(12)の連結状態が解除された連結解除状態になり、
前記加熱シリンダ(3)および前記バルブ駆動力源(7)が相互に離れた位置から接近する方向に所定量移動すると、前記バルブ側部材(11)と前記駆動側部材(12)が再び前記連結状態に戻ることを特徴とする請求項1に記載の溶融樹脂供給装置(1)。
【請求項5】
前記移動機構は、前記加熱シリンダ(3)をその軸線方向に移動させるシリンダ移動機構であり、
前記バルブ駆動力源(7)は定まった位置に配置されており、
前記バルブ側部材(11)および前記駆動側部材(12)のうちの一方は、前記加熱シリンダ(3)の軸線方向(3a)に延びるスライド溝(13)を備えており、
前記バルブ側部材(11)および前記駆動側部材(12)のうちの他方は、前記スライド溝(13)に沿ってスライド可能な係合部(11a)を備えており、
前記係合部(11a)は、前記スライド溝(13)の溝端開口(13a)から当該スライド溝(13)に対して前記軸線方向(3a)に沿って出し入れ可能であり、前記スライド溝(13)内から前記軸線方向(3a)に直交する方向には引き抜き不可であり、
前記バルブ駆動力源(7)は前記駆動側部材(12)を前記軸線方向(3a)に直交する方向に移動させるものであることを特徴とする請求項4に記載の溶融樹脂供給装置(1)。
【請求項6】
前記シャットオフバルブ(6)は、前記ノズル(5)を閉じた閉じ位置(24A)および当該ノズル(5)を開いた開き位置(24B)に移動可能な弁体(24)を備えており、
前記バルブ側部材(11)は、前記軸線方向(3a)に直交する方向の移動位置に応じて、前記弁体(24)を前記閉じ位置(24A)および前記開き位置(24B)に位置決め可能であり、
当該バルブ側部材(11)は、前記ノズル(5)の外周面から前記軸線方向(3a)に直交する方向に突出している突出部分を備え、当該突出部分の先端に前記係合部(11a)あるいは前記スライド溝(13)が形成されていることを特徴とする請求項3または5に記載の溶融樹脂供給装置(1)。
【請求項7】
前記シャットオフバルブ(6)は、
前記ノズル(5)内に同軸状に取り付けたバルブケース(21)と、
前記軸線方向(3a)に直交するノズル半径方向にスライド可能な状態で前記バルブケース(21)に取り付けられている連結ロッド(11)と、
前記バルブケース(21)内に位置する前記連結ロッド(11)の部位に取り付けられており、前記軸線方向(3a)に対して傾斜している一対の平行な前側カム面(22a)および後側カム面(22b)を備えたカム板(22)と、
前記前側カム面(22a)の前側に配置されており、前記軸線方向(3a)に移動可能な状態で前記バルブケース(21)に取り付けられているニードル状の前記弁体(24)とを備えており、
前記カム板(22)の前記ノズル半径方向の移動位置に応じて、前記前側カム面(22a)によって前記弁体(24)が軸線方向(3a)の前方に押し出されて前記ノズル(5)の先端に形成されているノズル口(5a)を封鎖した閉じ位置(24A)と、前記弁体(24)が前記ノズル(5)内の溶融樹脂の圧力によって前記軸線方向(3a)の後方に押し込まれて、前記ノズル口(5a)を開放した開き位置(24B)とに切り替わることを特徴とする請求項6に記載の溶融樹脂供給装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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