説明

溶融樹脂整流装置

【課題】成形装置に対して溶融状態の合成樹脂を均一に供給できるようにする。
【解決手段】溶融樹脂供給路15の径に対応した幅を有する板材が当該板材の上流側の部分から当該板材の下流側の部分に向かうにつれて反時計回り方向/時計回り方向に180度ねじられた形状を有する左ねじり羽根60A/右ねじり羽根60Bのうちの一方と他方とを溶融樹脂供給路15の下流側に向かうにつれて交互に有する交互ねじり装置50を有する。隣接する左ねじり羽根60A/右ねじり羽根60B同士は連結されている。交互ねじり装置50の下流側には溶融樹脂供給路15における溶融樹脂の流れに対して抵抗を付与する多孔状抵抗材70を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置に対して供給される溶融状態の合成樹脂を整流する溶融樹脂整流装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂(プラスチック)の製品は、溶融状態の合成樹脂(溶融樹脂ということとする)が成形装置において成形されて製造される。
【0003】
例えば、図1,図6,図7に示すように、この成形装置100は、圧縮成形によって、合成樹脂を成形するものである。
下型102は位置固定的に設けられている。上型104は昇降可能である。上型104が最も下降した状態で、下型102の上面(内面)と上型104の下面(内面)との間にキャビティ106(図1)が形成される。
下型102には、下型溶融樹脂供給路103が形成されている。下型溶融樹脂供給路103の上流端は、下型102の側面に開口している。下型溶融樹脂供給路103は、下型102の内部をほぼ水平に延びた後に、ほぼ鉛直上方に向かっている。下型溶融樹脂供給路103の下流端は、下型102の上面に開口している。下型溶融樹脂供給路103は、円形断面を有している。
【0004】
そして、図6及び図7に示すように、上型104が上昇した状態で、下型溶融樹脂供給路103を通して、下型102の上面に対して溶融樹脂Rが供給され、その後、上型104が下降して下型102に接近する(図1参照。なお、図1においては溶融樹脂Rの図示なし)。
こうして、溶融樹脂Rが、下型102及び上型104(その各内面)によって圧縮され、下型102及び上型104によって形成されるキャビティ106内に充填した状態となり、それが冷却固化することによって合成樹脂の製品が成形され、その後に上型104が上昇し、その合成樹脂の製品が取り出される。
【0005】
ところで、溶融樹脂は溶融樹脂供給路(溶融樹脂供給管120等)を経て溶融樹脂供給源から成形装置100に対して供給されるのであるが、その溶融樹脂供給路内(その下流端)において、溶融樹脂の流れ(速度)が均一であれば、特に問題はない。すなわち、下型102の上面に対して、溶融樹脂Rが均一に供給される(図6参照)。
【0006】
しかしながら、特に、溶融樹脂供給路の途中に分岐部・合流部があったり、曲がった部分があったりすると、それによって、溶融樹脂供給路内における溶融樹脂の流速が不均一になりやすい。すなわち、溶融樹脂供給路の断面において、溶融樹脂の流速にムラが生じやすい。
もっとも、溶融樹脂供給路の断面における中心部と周縁部との間においては、本来的に流速に違いはあるのであるが、中心部から同じ距離の位置においても中心部からの方向によって流速に違いがある、というのが流速のムラなのである。
【0007】
そして、溶融樹脂供給路の下流端においても溶融樹脂の流速が不均一であると、図7に示すように、下型102の上面に対して、溶融樹脂Rが均一に供給されない。
すなわち、前述したように、溶融樹脂供給路の下流端は、下型102内に形成された下型溶融樹脂供給路の上流端に接続され、その下型溶融樹脂供給路の下流端は下型102の上面(内面)に接続されている(開口している)。
そして、溶融樹脂供給路の下流端において溶融樹脂の流速が不均一であると、その溶融樹脂Rは、下型溶融樹脂供給路103内も流速が不均一のまま流れ、下型102の上面において均等に各方向に流れず1つの方向に偏って流れたりする。
【0008】
このように下型102の上面に対して溶融樹脂Rが不均一に供給されると、下型102及び上型104(その各内面)によって溶融樹脂Rが圧縮される際においても、溶融樹脂Rの厚さにムラが生じ、結果的に成形される合成樹脂の製品の肉厚に偏りが生じたり(さらには、樹脂の欠落が生じる場合もあり得る)、下型102及び/又は上型104に損傷が生じる場合もある。
【0009】
なお、成形装置に対する樹脂の供給について改良を図った発明として、特許文献1に開示されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−234000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、成形装置に対して溶融状態の合成樹脂を均一に供給できるようにする装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、溶融状態の合成樹脂を成形装置に供給する溶融樹脂供給路に設けられる装置であって、前記溶融樹脂供給路における前記溶融状態の合成樹脂の流れを当該溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて時計回り方向にねじる右ねじり部及び同じく反時計回り方向にねじる左ねじり部のうちの一方と他方とを、当該溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて交互に有する交互ねじり装置を有する、溶融樹脂整流装置である。
【0013】
この発明の溶融樹脂整流装置では、溶融状態の合成樹脂は、溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて交互ねじり装置の右ねじり部及び左ねじり部の一方と他方とを交互に流れることによって、時計回り方向・反時計回り方向の各方向に交互にらせん状に流れる。こうして、その溶融状態の合成樹脂は撹拌され、その流速は均一にされる。
このため、この発明の溶融樹脂整流装置によって、均一な流速の合成樹脂が成形装置に供給されることになり、肉厚が均一な合成樹脂の製品が製造され得ることになる。
【0014】
請求項2に係る発明は、溶融状態の合成樹脂を成形装置に供給する円形断面の溶融樹脂供給路に設けられる装置であって、前記溶融樹脂供給路の径に対応した幅を有する板材が当該板材の上流側の部分から当該板材の下流側の部分に向かうにつれて時計回り方向にねじられた形状を有する右ねじり羽根及び同じく反時計回り方向にねじられた形状を有する左ねじり羽根のうちの一方と他方とを、当該溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて交互に有する交互ねじり装置を有する、溶融樹脂整流装置である。
【0015】
この発明の溶融樹脂整流装置では、溶融状態の合成樹脂は、交互ねじり装置の右ねじり羽根/左ねじり羽根によって時計回り方向/反時計回り方向にらせん状に流れる。
そして、その交互ねじり装置は、右ねじり羽根及び左ねじり羽根のうちの一方と他方とが溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて交互に有しているため、溶融状態の合成樹脂は、溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて、時計回り方向・反時計回り方向の各方向に交互にらせん状に流れる。
こうして、その溶融状態の合成樹脂は撹拌され、その流速は均一にされる。
このため、この発明の溶融樹脂整流装置によって、均一な流速の合成樹脂が成形装置に供給されることになり、肉厚が均一な合成樹脂の製品が製造され得ることになる。
る。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の溶融樹脂整流装置であって、前記右ねじり羽根及び前記左ねじり羽根とも、当該板材の上流側の部分から当該板材の下流側の部分に向かうにつれて180度ねじられた形状を有している、溶融樹脂整流装置である。
【0017】
この発明の溶融樹脂整流装置は、請求項2に係る発明の溶融樹脂整流装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、交互ねじり装置の右ねじり羽根及び左ねじり羽根とも、当該板材の上流側の部分から当該板材の下流側の部分に向かうにつれて180度ねじられた形状を有しているために、溶融状態の合成樹脂は、溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて、時計回り方向・反時計回り方向の各方向に交互に180度の回転角度でらせん状に流れる。
このため、その溶融状態の合成樹脂は適切に撹拌され、その流速は均一にされる。
【0018】
すなわち、各方向への回転角度が小さいものであると、撹拌の程度が小さいものとなり、各方向への回転角度が大きいものであると、結果的に交互ねじり装置の長さが長いものとなる必要があり、装置が大きくなってしまう。
その点、この発明では、装置の小型化を図りつつ、溶融状態の樹脂を十分に撹拌することができるのである。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に係る発明の溶融樹脂整流装置であって、前記右ねじり羽根及び/又は前記左ねじり羽根の上流側の縁部及び/又は下流側の縁部には、隣接する当該左ねじり羽根及び/又は右ねじり羽根の下流側の縁部及び/又は上流側の縁部に連結されるための連結係合用溝部が形成されている、溶融樹脂整流装置である。
【0020】
この発明の溶融樹脂整流装置は、請求項2又は請求項3に係る発明の溶融樹脂整流装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、交互ねじり装置の隣接する右ねじり羽根/左ねじり羽根同士は、連結係合用溝部によって容易に適切に連結される。
このため、交互ねじり装置が容易に製造され得る。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の溶融樹脂整流装置であって、前記交互ねじり装置の下流側に、当該溶融樹脂供給路における前記溶融状態の合成樹脂の流れに対して抵抗を付与する抵抗材を有する、溶融樹脂整流装置である。
【0022】
この発明の溶融樹脂整流装置では、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の溶融樹脂整流装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
この溶融樹脂整流装置は、交互ねじり装置の下流側に抵抗材を有しており、抵抗材のよって、溶融樹脂供給路における溶融状態の合成樹脂の流れに対して抵抗が付与される。
これによって、溶融樹脂供給路のうち抵抗材よりも上流側において、溶融状態の合成樹脂が高圧となる。このため、高圧の溶融状態の合成樹脂が交互ねじり装置を流れることとなり、その分、その溶融状態の合成樹脂は、交互ねじり装置によって、より大きく撹拌されることとなる。
こうして、この発明の溶融樹脂整流装置では、溶融状態の合成樹脂の流速はより均一にされる。このため、より均一な流速の合成樹脂が成形装置に供給されることになり、肉厚がより均一な合成樹脂の製品が製造され得ることになる。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明の溶融樹脂整流装置であって、前記抵抗材は、当該溶融樹脂供給路を塞ぐとともに当該抵抗付与部材の上流端と下流端との間を貫通する多数の孔を有するものである、溶融樹脂整流装置である。
【0024】
この発明の溶融樹脂整流装置では、請求項5に係る発明の溶融樹脂整流装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この溶融樹脂整流装置では、抵抗材が、溶融樹脂供給路を塞ぐとともに当該抵抗付与部材の上流端と下流端との間を貫通する多数の孔を有するものであるため、容易に確実に溶融状態の合成樹脂に対して抵抗を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例の溶融樹脂整流装置が成形装置(その一例)に対して接続された状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施例の溶融樹脂整流装置を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例の溶融樹脂整流装置の示す分解斜視図(一部破断)である。
【図4】本発明の一実施例の溶融樹脂整流装置のうちの交互ねじり装置を示す斜視図(一部破断)である。
【図5】本発明の一実施例の溶融樹脂整流装置のうちの交互ねじり装置を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施例の溶融樹脂整流装置が接続された成形装置(その一例)を示す図である。
【図7】本発明の一実施例の溶融樹脂整流装置が接続されていない成形装置(その一例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の一実施例について図面に基づいて説明する。
図1及び図6等に示すように、溶融樹脂整流装置10は、溶融樹脂供給管120と成形装置100との間に設けられる。
すなわち、溶融樹脂整流装置10の下流端は、成形装置100の下型溶融樹脂供給路103(その上流端)に対して接続される。
溶融樹脂整流装置10の上流端には、接続ブロック110を介して、溶融樹脂供給管120(その下流端)が接続される。溶融樹脂供給管120の上流端は、溶融樹脂供給源(図示省略)に接続されている。
そして、図2に示すように、溶融樹脂供給管120,接続ブロック110,溶融樹脂整流装置10にわたって、溶融樹脂供給路15が形成されている。別の見方をすれば、溶融樹脂整流装置10は溶融樹脂供給路15に対して設けられているともいえる。
【0027】
なお、この態様に限らず、溶融樹脂整流装置10の下流端には別の溶融樹脂供給管(120)(その上流端)が接続され、その溶融樹脂供給管(120)の下流端が成形装置100の下型溶融樹脂供給路103の上流端に接続されていてもよい。
別の見方をすれば、溶融樹脂整流装置10は、溶融樹脂供給管120(その途中に接続ブロック110等があってもよい)の途中に設けられてもよい。
【0028】
図2及び図3に示すように、溶融樹脂整流装置10は、上流側の主管部20,下流側の先管部40を有しており、主管部20及び先管部40は螺合されて結合されている。
すなわち、主管部20のうちの下流側の部分には、嵌合部21が形成されている。嵌合部21は、主管部20のうちの他の部分よりも外径が小さくされている。嵌合部21の外面にはおねじ22が形成されている。それに対して、先管部40のうちの上流側の略半部における内面にはめねじ42が形成されている。そして、両者が螺合されて結合されている。
【0029】
図2に示すように、主管部20のうちの下流側の部分を除く大半の部分の内径は、接続ブロック110における溶融樹脂供給路15の径よりも若干大径に形成されている(その部分のことを被挿入部30ということとする)。
図2及び図3に示すように、被挿入部30より下流側の部分の内径(溶融樹脂供給路15の径)は、被挿入部30の内径よりもよりも若干小径とされている(接続ブロック110における溶融樹脂供給路15の径と同一である)。その境界部分には、主管部20の長さ方向に垂直に円環状の段差面24が形成されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、主管部20には、交互ねじり装置50が配設されている。
図2,図4,図5に示すように、交互ねじり装置50は、複数(この場合4つ)のねじり羽根60,羽根外管52,一対の回転止めカラー56を有している。
【0031】
4つのねじり羽根60は、羽根外管52に収容されている。
羽根外管52は、円管状(薄肉の円筒状)をしている。羽根外管52の外径は、主管部20の被挿入部30の内径に対応している。
羽根外管52の内部が、溶融樹脂供給路15(その長さ方向における一部)を形成する。
【0032】
各ねじり羽根60は、羽根外管52の内径(溶融樹脂供給路15の径)に対応する長さの幅を有する板材が、その上流側の部分から下流側の部分に向かうにつれて徐々に180度ねじられた形状を有している。
ねじり羽根60(60A,60B)には2種類のものがある。一方が左ねじり羽根60Aであり、他方が右ねじり羽根60Bである。
左ねじり羽根60Aは、その上流側の部分から下流側の部分に向かうにつれて左方向(反時計回り方向)に徐々にねじられ、最終的には180度ねじられた形状をしている。右ねじり羽根60Bは、その上流側の部分から下流側の部分に向かうにつれて右方向(時計回り方向)に徐々にねじられ、最終的には180度ねじられた形状をしている。
なお、溶融樹脂供給路15(羽根外管52における溶融樹脂供給路15)のうち、左ねじり羽根60Aが存在する部分が左ねじり部であり、同じく右ねじり羽根60Bが存在する部分が右ねじり部である。
【0033】
図4及び図5に示すように、各ねじり羽根60の上流端及び下流端には、平板状の縁部である平板縁部62が形成されている。図5に示すように、平板縁部62(その幅方向における中央部)には、連結係合用溝部64が形成されている。
図4及び図5に示すように、すべてのねじり羽根60は、隣接する各ねじり羽根60の連結係合用溝部64同士が係合されて、羽根外管52の長さ方向に連結されている。
上流側から下流側に向けて、左ねじり羽根60Aと右ねじり羽根60Bとが交互に連結されている。隣接する各ねじり羽根60の平板縁部62同士は、直角の角度間隔を隔てている。その状態で連結係合用溝部64同士が結合されているのである。
【0034】
図2〜図5に示すように、各回転止めカラー56は、羽根外管52の上流端及び下流端に固定されている。
各回転止めカラー56は、円環状をしている。
図2に示すように、各回転止めカラー56の外径は、羽根外管52の外径と同一である(すなわち、主管部20の被挿入部30の内径に対応している)。
各回転止めカラー56の内径(溶融樹脂供給路15の径)は、主管部20のうちの被挿入部30より下流側の部分の内径(溶融樹脂供給路15の径)と同一であり、接続ブロック110における溶融樹脂供給路15の径と同一である。
【0035】
図2,図4,図5に示すように、各回転止めカラー56の内側(上流側の回転止めカラー56の下流側,下流側の回転止めカラー56の上流側)の面には、一対の回り止め係合用溝部57が形成されている。
上流側の回転止めカラー56においては、一対の回り止め係合用溝部57は、最も上流側のねじり羽根60(左ねじり羽根60A)の上流側の平板縁部62(その両端部)に対応して形成されている。
下流側の回転止めカラー56においては、一対の回り止め係合用溝部57は、最も下流側のねじり羽根60(右ねじり羽根60B)の下流側の平板縁部62(その両端部)に対応して形成されている。
すなわち、上流側の回転止めカラー56の一対の回り止め係合用溝部57と、下流側の回転止めカラー56の一対の回り止め係合用溝部57とは、直角の角度間隔を隔てている。
【0036】
そして、最も上流側のねじり羽根60(左ねじり羽根60A)の上流側の平板縁部62(その両端部)は、上流側の回転止めカラー56の一対の回り止め係合用溝部57に嵌合されている。
また、最も下流側のねじり羽根60(右ねじり羽根60B)の下流側の平板縁部62(その両端部)は、下流側の回転止めカラー56の一対の回り止め係合用溝部57に嵌合されている。
こうして、4つのねじり羽根60は回り止めされている。
【0037】
図2及び図3に示すように、交互ねじり装置50は、主管部20の被挿入部30に挿入され、その下流端である下流側の回転止めカラー56(その下流側の端部)は、段差面24に当接している。交互ねじり装置50は、主管部20(被挿入部30)に対して回り止めされている。
【0038】
図2及び図3に示すように、先管部40のおねじ22のすぐ下流側には、多孔状抵抗材70が配設されている。多孔状抵抗材70は、厚肉円板状をなし、その軸線方向と平行に、多数の貫通孔72が均一に形成されている。
先管部40のおねじ22のすぐ下流側の部分は、おねじ22よりも若干小径の嵌合孔部44とされている。その下流側における内径は、嵌合孔部44よりも若干小径とされている(主管部20のうちの段差面24よりも下流側の内径と同一である。)。その境界部分には、先管部40の長さ方向に垂直に円環状の段差面46が形成されている。
多孔状抵抗材70は、嵌合孔部44に嵌合されており、その下流端(その周縁部)は段差面46に当接し、その上流端(その周縁部)は主管部20の嵌合部21の下流端と当接している。
【0039】
次に、この溶融樹脂整流装置10の作用効果について説明する。
図1及び図6に示すように、溶融樹脂供給源(図示省略)から溶融樹脂供給管120,接続ブロック110(いずれもその溶融樹脂供給路15)を経て溶融樹脂整流装置10(その溶融樹脂供給路15)に流入した溶融状態の合成樹脂(溶融樹脂)は、溶融樹脂整流装置10(その溶融樹脂供給路15)を通って、成形装置100の下型溶融樹脂供給路103に流入する。なお、図1〜図5においては、溶融樹脂(R)は図示されていない。
【0040】
その際、図2及び図4に示すように、溶融樹脂は、溶融樹脂整流装置10の交互ねじり装置50において、反時計回り方向・時計回り方向の各方向に交互にらせん状に流れる。
すなわち、最も上流側(1番目)のねじり羽根60(左ねじり羽根60A)においては、溶融樹脂は、反時計回り方向に回転しつつ下流側に流れ、最終的には180度回転しつつ下流側に流れる。こうして、反時計回り方向にらせん状に流れる。
次(2番目)のねじり羽根60(右ねじり羽根60B)においては、溶融樹脂は、時計回り方向に回転しつつ下流側に流れ、最終的には180度回転しつつ下流側に流れる。こうして、時計回り方向にらせん状に流れる。
次(3番目)のねじり羽根60(左ねじり羽根60A)においては、最も上流側のねじり羽根60(左ねじり羽根60A)と同様に、溶融樹脂は、反時計回り方向にらせん状に流れる。
最後(4番目)のねじり羽根60(右ねじり羽根60B)においては、2番目のねじり羽根60(右ねじり羽根60B)と同様に、溶融樹脂は、時計回り方向にらせん状に流れる。
【0041】
以上のように、交互ねじり装置50において、溶融樹脂は、反時計回り方向・時計回り方向の各方向に交互にらせん状に流れることによって撹拌され、その流速は均一にされる。
【0042】
また、図2及び図3に示すように、上述のように交互ねじり装置50を流れた溶融樹脂は、その下流側において多孔状抵抗材70(その各貫通孔72)を流れる。
多孔状抵抗材70においては、溶融樹脂が流れることができるのは貫通孔72のみであり、すべての貫通孔72の断面積の合計は、それより上流側における溶融樹脂供給路15の断面積よりも小さい。
このため、多孔状抵抗材70においては、溶融樹脂の流れに抵抗が付与される。
これによって、溶融樹脂供給路15のうちの多孔状抵抗材70よりも上流側の部分の溶融樹脂の圧が高いものとなる。
このため、上述したように交互ねじり装置50を流れる溶融樹脂は、高圧のため、反時計回り方向・時計回り方向の各方向に交互にらせん状に流れる際に、より大きく撹拌され、その流速はより均一にされるのである。
【0043】
以上のようにして、溶融樹脂は、溶融樹脂整流装置10を流れることによって、流速が均一なものとされる。
このため、図6に示すように、下型溶融樹脂供給路103を流れる溶融樹脂Rの流速も均一なものとなり、下型102の上面において、溶融樹脂Rは、各方向に均一に流れる。
このため、下型102の上面(内面)と上型104の下面(内面)とによって圧縮される溶融樹脂Rの厚さにムラが生じず、結果的に成形される合成樹脂の製品の肉厚が均一なものとなる。
こうして、成形装置100によって、合成樹脂の製品が適切に製造されるのである。
【0044】
なお、上記のものはあくまで本発明の一実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【0045】
例えば、交互ねじり装置50においては、左ねじり羽根60A及び右ねじり羽根60Bは、2つずつでなく、3つずつ、又はそれ以上設けられていてもよい。
また、左ねじり羽根60A及び右ねじり羽根60Bは、板材が180度ねじられるものに限らず、90度や360度等、ねじられる角度は種々のものがありえる。
【符号の説明】
【0046】
10 溶融樹脂整流装置
15 溶融樹脂供給路
50 交互ねじり装置
60A(60) 左ねじり羽根(ねじり羽根)
60B(60) 右ねじり羽根(ねじり羽根)
70 多孔状抵抗材(抵抗材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の合成樹脂を成形装置に供給する溶融樹脂供給路に設けられる装置であって、 前記溶融樹脂供給路における前記溶融状態の合成樹脂の流れを当該溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて時計回り方向にねじる右ねじり部及び同じく反時計回り方向にねじる左ねじり部のうちの一方と他方とを、当該溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて交互に有する交互ねじり装置を有する、
溶融樹脂整流装置。
【請求項2】
溶融状態の合成樹脂を成形装置に供給する円形断面の溶融樹脂供給路に設けられる装置であって、
前記溶融樹脂供給路の径に対応した幅を有する板材が当該板材の上流側の部分から当該板材の下流側の部分に向かうにつれて時計回り方向にねじられた形状を有する右ねじり羽根及び同じく反時計回り方向にねじられた形状を有する左ねじり羽根のうちの一方と他方とを、当該溶融樹脂供給路の下流側に向かうにつれて交互に有する交互ねじり装置を有する、
溶融樹脂整流装置。
【請求項3】
請求項2に記載の溶融樹脂整流装置であって、
前記右ねじり羽根及び前記左ねじり羽根とも、当該板材の上流側の部分から当該板材の下流側の部分に向かうにつれて180度ねじられた形状を有している、
溶融樹脂整流装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の溶融樹脂整流装置であって、
前記右ねじり羽根及び/又は前記左ねじり羽根の上流側の縁部及び/又は下流側の縁部には、隣接する当該左ねじり羽根及び/又は右ねじり羽根の下流側の縁部及び/又は上流側の縁部に連結されるための連結係合用溝部が形成されている、
溶融樹脂整流装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の溶融樹脂整流装置であって、
前記交互ねじり装置の下流側に、当該溶融樹脂供給路における前記溶融状態の合成樹脂の流れに対して抵抗を付与する抵抗材を有する、
溶融樹脂整流装置。
【請求項6】
請求項5に記載の溶融樹脂整流装置であって、
前記抵抗材は、当該溶融樹脂供給路を塞ぐとともに当該抵抗付与部材の上流端と下流端との間を貫通する多数の孔を有するものである、
溶融樹脂整流装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−245647(P2012−245647A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117294(P2011−117294)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000143776)株式会社佐藤鉄工所 (7)
【Fターム(参考)】