説明

溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートの製造方法及び溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シート

【課題】吸音性を確保できる程度の通気性を有し、かつ撥水撥油性を有する溶融被膜を備える合成樹脂発泡体シートに供給する。
【解決手段】熱溶融性の合成樹脂発泡体シート10の表面を、加熱ロール20又は加熱板で加熱すると共に押圧することにより、その表面に溶融被膜を形成する溶融被膜11を有する合成樹脂発泡体シート10の製造方法であって、表面に撥水撥油剤を含む溶液を付着させた後に、表面を加熱すると共に押圧することにより溶融被膜11を形成することを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートの製造方法及び溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートに関し、特に、吸音性と撥水撥油性を兼ね備えた溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートの製造方法及び溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱溶融性の合成樹脂発泡体シートを熱板若しくは熱ロールで押圧して、その発泡体シートの表面に溶融被膜を形成する方法が知られている。この加工方法は、一般的にメルトーム加工と呼ばれ、これにより成形された合成樹脂発泡体シートは、吸音材、断熱材、パッキン材、シール材等に幅広く利用されている。
【0003】
これらに関連する先行技術として、特許文献1がある。特許文献1では、連続生産に適し、表面を汚すことなく安定的に、溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートを提供することを目的として、 熱溶融性の合成樹脂発泡体シートの一表面上に耐熱性シートを配置し、その後、その耐熱性シートの上から発泡体シートを加熱できるように加熱ロールと送りロールからなる一対のロールで押圧し、加熱し、実質上平滑な溶融被膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−064056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の溶融被膜を形成した合成樹脂発泡体シートは、例えば、重機のエンジンルームの吸音材として使用された場合、油、土ほこり、雨水などにさらされるので、被膜の防水性が不十分だと、発泡体の中に水などが浸透し、エンジンルームとの接着に使用する両面テープが剥がれ易くなってしまう。一方、被膜が通気性を有さない完全なフィルムであると、音が反射してしまい吸音性を確保することができない。また、被膜は疎水性であるため、油汚れが付着すると除去しにくい傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、吸音性を確保できる程度の通気性を有し、かつ撥水撥油性を有する溶融被膜を備える合成樹脂発泡体シート及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、熱溶融性の合成樹脂発泡体シートの表面を、加熱ロール又は加熱板で加熱すると共に押圧することにより、その表面に溶融被膜を形成する溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートの製造方法であって、その表面に撥水撥油剤を含む溶液を付着させた後に、その表面を加熱すると共に押圧することにより溶融被膜を形成することを特徴とする製造方法が提供される。
これによれば、撥水撥油剤の溶液を合成樹脂発泡体シート表面に付着させる工程を追加するだけであり、溶液を乾燥及び撥水撥油剤の焼付工程を必要とせず、乾燥、被膜処理、焼付の3工程を加熱・押圧という1工程で行うことが可能となり、その結果、現行メルトームラインを使用して、インラインで、合成樹脂発泡体シート表面に撥水撥油性を有する溶融被膜を形成できる。
【0008】
さらに、その表面における、その撥水撥油剤の固形分の付着量が、7.5g/m2以上であることを特徴としてもよい。
これによれば、確実に撥水撥油性を有する溶融被膜を形成できる。
【0009】
上記課題を解決するために、上記の製造方法により製造された溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートが提供される。
これによれば、撥水撥油性と吸音性を両立した合成樹脂発泡体シートを提供できる。従って、この合成樹脂発泡体シートを土木重機などのエンジンルームの吸音材として用いた場合、撥水撥油性の被膜を有することにより、吸音性能を発揮しつつ、土や油汚れを水により容易に落とすことができ、また、ウレタン発泡体との貼り合わせに使用する両面テープが、雨水や洗車時の水により剥がれることを防止することができる。
【0010】
上記課題を解決するために、熱溶融性の合成樹脂発泡体を基材とするシート状の発泡層と、その発泡層の少なくとも一面側にその合成樹脂発泡体が熱溶融した溶融被膜層とを備える合成樹脂発泡体シートであって、その溶融被膜層は、溶融した合成樹脂発泡体の合成樹脂と撥水撥油剤とが融着したことを特徴とする合成樹脂発泡体シートが提供される。
これによれば、撥水撥油性と吸音性を両立した合成樹脂発泡体シートを提供できる。従って、この合成樹脂発泡体シートを土木重機などのエンジンルームの吸音材として用いた場合、撥水撥油性の被膜を有することにより、吸音性能を発揮しつつ、土や油汚れを水により容易に落とすことができ、また、ウレタン発泡体との貼り合わせに使用する両面テープが、雨水や洗車時の水により剥がれることを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、通気性を有することにより吸音性を有し、かつ撥水撥油性を有する溶融被膜を備える合成樹脂発泡体シート及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る一実施形態における合成樹脂発泡体シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明に係る合成樹脂発泡体シートの製造方法について述べる。本発明に係る合成樹脂発泡体シートの製造方法は、熱溶融性の合成樹脂発泡体シートの表面を、加熱ロール又は加熱板で加熱すると共に押圧することにより、表面に溶融被膜を形成する溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートの製造方法である。
【0014】
本発明に用いられる熱溶融性の合成樹脂発泡体シートは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の公知の合成樹脂発泡体を主体とする材料であり、好ましくはポリウレタン、より好ましくはエステル基を含むポリウレタンを好適に用いることができる。かかる合成樹脂発泡体シートを2〜12m/分の早さで搬送しながら、その合成樹脂発泡体シートの表面を、通常280〜400°Cに加熱した加熱ロール又は加熱板で加熱すると共に押圧することにより、その合成樹脂発泡体シートの表面に、合成樹脂が溶融した溶融被膜を形成する。
【0015】
なお、本合成樹脂発泡体シートにおける発泡体のセル数は、5〜80個/25mmが好ましく、30〜80個/25mmがより好ましい。あまりにも粗いと、溶融被膜が形成にくい。
【0016】
さらに、本発明に係る合成樹脂発泡体シートの製造方法は、加熱ロール又は加熱板で加熱・押圧する前に、合成樹脂発泡体シートの表面に撥水撥油剤を含む溶液を付着させる。換言すれば、合成樹脂発泡体シートの表面に撥水撥油剤を含む溶液を付着させた後に、その表面を加熱すると共に押圧することにより溶融被膜を形成する。
【0017】
使用される撥水撥油剤は、合成樹脂の熱溶融によって合成樹脂発泡体と融着する性能を有し、溶融被膜の一部を形成するものであれば特に限定されないが、例えば、シリコン系樹脂やフッ素系樹脂の撥水撥油剤が挙げられ、水や油より表面張力が小さくて、高い撥水性と撥油性が得られるフッ素系樹脂の撥水撥油剤を用いるのが好ましい。このような撥水撥油剤としては、具体的には、アサヒガード(旭硝子社)、ユニダイン(ダイキン社)等を使用できる。
【0018】
撥水撥油剤を含む溶液の濃度は、通常3〜40重量%が用いられるが、特にこの範囲に限定されるものではない。なお、撥水撥油剤を含むものは、エマルジョンであってもよく、適宜希釈化して使用される。
【0019】
合成樹脂発泡体シートの表面に撥水撥油剤を含む溶液の付着のさせ方は、表面に均一に付着させる方法であれば、特に限定されない。例えば、スプレーで溶液を表面に散布・噴霧させたり、容器に入れた溶液中に表面を浸漬したり、ローラー・刷毛等で溶液を表面に塗布したりする。散布・噴霧や塗布は、浸漬よりも溶液(撥水撥油剤)の付着量を減らすことができるので好ましい。
【0020】
この製造方法によれば、現行メルトームラインにおいて、撥水撥油剤の溶液を付着させる工程を追加するだけであり、その溶液を乾燥する工程及び撥水撥油剤の焼付工程を必要とせず、乾燥、被膜処理、焼付の3工程を、加熱・押圧という1工程で行うことが可能となり、その結果、現行メルトームラインを使用して、インラインで、合成樹脂発泡体シートの表面に撥水撥油性を有する溶融被膜層を形成できる。
【0021】
また、合成樹脂発泡体シートの表面における、撥水撥油剤の固形分の付着量が、7.5g/m2以上であることが好ましい。合成樹脂発泡体シートの表面にこの程度撥水撥油剤の固形分が付着すれば、確実に撥水撥油性を有する被膜を形成できる。
【0022】
また、上記の製造方法により製造された溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートは、撥水撥油性と吸音性を両立した合成樹脂発泡体シートとなる。従って、この合成樹脂発泡体シートを土木重機などのエンジンルームの吸音材として用いた場合、撥水撥油性の被膜を有することにより、吸音性能を発揮しつつ、土や油汚れを水により容易に落とすことができ、また、ウレタン発泡体との貼り合わせに使用する両面テープが、雨水や洗車時の水により剥がれることを防止することができる。
【0023】
なお、吸音性を有すると言うことは、表面の被膜は完全な被膜ではなく、微細な孔を有する被膜であることを示す。即ち、音としての空気分子の振動エネルギーが、その微細な孔を通して発泡体の内部に入りこみ、発泡体のセル内壁に衝突し、その振動エネルギーが高分子素材の分子の粘性的な運動に伴う摩擦熱に一部変換されることにより、音が吸収される、即ち吸音が実現される。被膜が有する微細な孔とは、液体の水や油は通さないが、気体となった水や油は通す程度の径を有する孔である。
【0024】
従って、上記製造方法により製造された合成樹脂発泡体シートの溶融被膜は、撥水撥油性と通気性(透湿性)を両立していると言える。そうすると、溶融被膜の無い合成樹脂発泡体シートの側面又は裏面から侵入した水分を、被膜を通して蒸発させることができ、両面テープが剥がれることがより少なくなる。
【0025】
また、本発明に係る合成樹脂発泡体シートは、熱溶融性の合成樹脂発泡体を基材とするシート状の発泡層と、その発泡層の少なくとも一面側に合成樹脂発泡体が熱溶融した溶融被膜層とを備え、その溶融被膜層は、溶融した合成樹脂発泡体の合成樹脂と撥水撥油剤とが融着したことにより形成される。なお、合成樹脂発泡体が熱溶融した溶融被膜層は、合成樹脂発泡体シートの片側の一面にあってもよいし、両面にあってもよい。
【0026】
合成樹脂発泡体が熱溶融した溶融被膜層は、合成樹脂発泡体シートの表面に付着した撥水撥油剤と一緒に加熱ローラー又は加熱板で加熱、押圧されたことにより、撥水撥油剤の溶液の水分は蒸発すると共に、溶融した合成樹脂発泡体の合成樹脂と撥水撥油剤の固形分とが互いに溶かし付けられたこと、即ち融着したことにより、形成されたものである。換言すれば、溶融被膜層は、溶融した合成樹脂発泡体の合成樹脂と撥水撥油剤とが混然一体となっている。
【0027】
これによれば、撥水撥油性と吸音性を両立した合成樹脂発泡体シートを提供できる。従って、本合成樹脂発泡体シートは、吸音性を有する合成樹脂発泡体シートの吸音性を低減させることなく、撥水撥油性を有する被膜を備え、撥水撥油性と吸音性(通気性)の両立が図られた合成樹脂発泡体シートとなる。その結果、この合成樹脂発泡体シートを土木重機などのエンジンルームの吸音材として用いた場合、撥水撥油性の被膜を有することにより、吸音性能を発揮しつつ、土や油汚れを水により容易に落とすことができ、また、ウレタン発泡体との貼り合わせに使用する両面テープが、雨水や洗車時の水により剥がれることを防止することができる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、さらに具体的に説明する。
<実施例1>
合成樹脂発泡体シートには、ポリエーテルエステルウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製 製品名:UEH)を用い、シート厚は13mmである。撥水撥油剤にはフッ素系樹脂エマルジョン(AGC社製 製品名:AG E−082)を用い、合成樹脂発泡体シート表面に、撥水撥油剤の固形分が50g/m2となるように付着させる。そして、溶かし代が3mmとなるように表面を溶融し、溶融被膜層を形成し、総厚みが10mmの合成樹脂発泡体シートを製造する。
【0029】
具体的には、図1に示す本発明に係る一実施形態における合成樹脂発泡体シートの製造方法により、製造する。この製造方法では、溶融被膜を一面(片面)に設けるものとする。
【0030】
この合成樹脂発泡体シート10をベルトコンベア50に載せ、投入方向に移動させる。合成樹脂発泡体シート10は、スプレーノズル40の下を通過する際に、スプレーノズル40から散布される撥水撥油剤の溶液の付着を受ける。本実施例の場合、溶液における撥水撥油剤の濃度、単位時間当たりの溶液の散布量、及びベルトコンベア50の上の移動する合成樹脂発泡体シート10の速度との関係により、撥水撥油剤の固形分の付着量が50g/m2となるように調整されている。
【0031】
なお、溶融被膜が両面にある場合は、図1において、送りローラー30が加熱ローラーともなる。また、図1においては、合成樹脂発泡体シートの上面に上方から撥水撥油剤の溶液を吹きかけているが、下面に溶液を付着するためには、刷毛等で塗布することもできる。
【0032】
上面に撥水撥油剤の溶液の付着を受けた合成樹脂発泡体シート10は、さらに投入方向に移動され、上面を加熱ローラー20、下面を送りローラー30により挟まれ、加熱ローラー20は温度が350°Cに加熱されているので、合成樹脂発泡体シート10の上面は、押圧されつつ加熱され、溶融した合成樹脂発泡体の合成樹脂と撥水撥油剤とが融着した溶融被膜層11が形成される。本実施例の場合、溶かし代が3mmとなるように表面を溶融して、溶融被膜層を形成し、総厚さ10mmの合成樹脂発泡体シートを製造した。
これは、シート厚に対する加熱ローラー20と送りローラー30の距離により調整される。
【0033】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は良好であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても良好又は合格であり、吸音性においても良好であり、総合判定は合格(OK)であった。なお、上記測定・評価方法については、後述する。また、表1中、実施例4と実施例7は、実施例1と同じ条件で製造した。
【0034】
<実施例2>
本実施例では、撥水撥油剤にはフッ素+シリコン系樹脂エマルジョン(ダイキン社製 製品名:TG5502)を用いた。これ以外は、実施例1と同じである。
【0035】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は良好であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても良好又は合格であり、吸音性においても良好であり、総合判定は合格(OK)であった。
【0036】
<実施例3>
本実施例では、合成樹脂発泡体シート表面に、撥水撥油剤の固形分が10g/m2となるように付着させた。これ以外は、実施例1と同じである。
【0037】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は良好であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても良好又は合格であり、吸音性においても良好であり、総合判定は合格(OK)であった。
【0038】
<実施例5>
本実施例では、合成樹脂発泡体シート表面に、撥水撥油剤の固形分が75g/m2となるように付着させた。これ以外は、実施例1と同じである。
【0039】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は良好であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても良好又は合格であり、吸音性においても良好であり、総合判定は合格(OK)であった。
【0040】
<実施例6>
本実施例では、シート厚が12mmのポリエーテルエステルウレタンフォームを用い、溶かし代が2mmとなるように表面を溶融して、溶融被膜層を形成し、総厚さ10mmの合成樹脂発泡体シートを製造した。これ以外は、実施例1と同じである。
【0041】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は良好であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても良好又は合格であり、吸音性においても良好であり、総合判定は合格(OK)であった。
【0042】
<実施例8>
本実施例では、元のシート厚が15mmのウレタンフォームを用い、溶かし代が5mmとなるように表面を溶融して、溶融被膜層を形成し、総厚さ10mmの合成樹脂発泡体シートを製造した。これ以外は、実施例1と同じである。
【0043】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は良好であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても良好又は合格であり、吸音性においても良好であり、総合判定は合格(OK)であった。
【0044】
<実施例9>
本実施例では、合成樹脂発泡体シートには、ポリエステルウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製 製品名:SM−55)12mmを用いた。また、溶かし代が2mmとなるように表面を溶融して、溶融被膜層を形成し、総厚さ10mmの合成樹脂発泡体シートを製造した。これ以外は、実施例1と同じである。
【0045】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は良好であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても良好又は合格であり、吸音性においても良好であり、総合判定は合格(OK)であった。
【0046】
<比較例1>
本比較例では、合成樹脂発泡体シートの表面に撥水撥油剤を付着させていない。これ以外は、実施例1と同じである。
【0047】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成と吸音性においては良好であったが、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても不良又は不合格であった。結果、総合判定は不合格(NG)であった。
【0048】
<比較例2>
本比較例では、合成樹脂発泡体シートには、ポリエステルウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製 製品名:SM−55)を用いた。また、合成樹脂発泡体シートの表面に撥水撥油剤を付着させていない。これ以外は、実施例1と同じである。
【0049】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成においては良好であったが、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても不良又は不合格、吸音性においても不良であった。結果、総合判定は不合格(NG)であった。
【0050】
<比較例3>
本比較例では、合成樹脂発泡体シートには、ポリエーテルウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製 製品名:ECS)を用いた。また、合成樹脂発泡体シートの表面に撥水撥油剤を付着させていない。これ以外は、実施例1と同じである。
【0051】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成において不良であり、撥水撥油性の評価ができなかった。結果、総合判定は不合格(NG)であった。
【0052】
<比較例4>
本比較例では、合成樹脂発泡体シート表面に、撥水撥油剤の固形分が5g/m2となるように付着させた。これ以外は、実施例1と同じである。
【0053】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成と吸音性においては良好であったが、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても不良又は不合格であった。結果、総合判定は不合格(NG)であった。
【0054】
<比較例5>
本比較例では、元のシート厚が11mmのウレタンフォームを用い、溶かし代が1mmとなるように表面を溶融して、溶融被膜層を形成し、総厚さ10mmの合成樹脂発泡体シートを製造した。これ以外は、実施例1と同じである。
【0055】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は不良であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても不良又は不合格であり、吸音性においても不良であり、総合判定は不合格(NG)であった。
【0056】
<比較例6>
本比較例では、元のシート厚が17mmのウレタンフォームを用い、溶かし代が7mmとなるように表面を溶融して、溶融被膜層を形成し、総厚さ10mmの合成樹脂発泡体シートを製造した。これ以外は、実施例1と同じである。
【0057】
このようにして製造された合成樹脂発泡体シートは、被膜形成は良好であり、撥水撥油性においては、イノアック法、JIS L1092 スプレー試験、AATCC−118のいずれにおいても良好又は合格であったが、吸音性においては不良であり、総合判定は不合格(NG)であった。
【表1】

【0058】
<実施例と比較例の対比>
実施例1及び9と、比較例1及び2を比較すると、合成樹脂発泡体の種類にかかわらず、本発明に係る製造方法によると、撥水撥油剤を用いることにより、総合判定が合格となる合成樹脂発泡体シートが得られることがわかる。
【0059】
また、実施例1と2を比べれば、撥水撥油剤の種類にかかわらず、本発明に係る製造方法によると、総合判定が合格となる合成樹脂発泡体シートが得られることがわかる。
【0060】
比較例4と、実施例3、4及び5を比べると、比較例4の撥水撥油剤の固形分が5g/m2だと総合判定が不合格であるが、実施例3,4,5の撥水撥油剤の固形分が10g/m2だと総合判定が合格になる。即ち、比較例4の固形分である5g/m2と実施例3の固形分である10g/m2の中間値である7.5g/m2以上であれば、総合判定が合格になると考えられ、より好ましくは10g/m2であれば総合判定が合格となる。
【0061】
また、比較例5と、実施例6,7,8を比較すると、溶かし代が1.0mmだと総合判定が不合格になるが、2.0mm以上だと総合判定が合格となる。即ち、比較例5の溶かし代である1.0mmと実施例6の溶かし代である2.0mmの中間値である1.5mm以上であれば総合判定が合格になると考えられ、より好ましくは2.0mm以上であれば総合判定が合格となる。
【0062】
一方、比較例6と、実施例6,7,8を比較すると、溶かし代が7.0mmだと総合判定が不合格になるが、5.0mm以下だと総合判定が合格となる。即ち、比較例6の溶かし代である7.0mmと実施例8の溶かし代である5.0mmの中間値である6.0m以下であれば総合判定が合格になると考えられ、より好ましくは5.0mm以下であれば総合判定が合格となる。
【0063】
従って、溶かし代は、1.5mm以上6.0mm以下であれば総合判定が合格になり、より好ましくは2.0mm以上5.0mm以下であれば総合判定が合格になる。
【0064】
<測定・評価方法>
・撥水撥油性に対するイノアック法: 蒸留水1滴(約0.45g)を被膜に垂らして、12時間放置後浸透が生じていなければ、撥水撥油性は良好(○)であると評価し、浸透が生じていれば、不良(×)と評価する。
・JIS L1092 スプレー試験:JIS L1092−98 6 2に基づいて、4級以上であれば撥水性有りと評価した。
・AATCC−118:American Association of Textile Chemists and Colorists(米国における繊維産業の業界団体)が定めた評価方法に基づいて、撥油性を評価した。
・被膜形成について:被膜の有無を目視により、被膜が形成された場合は良好(○)、形成されていない場合は不良(×)と評価した。
・吸音性について:1000−3000Hzの周波数領域にて、現行品(F−4)の垂直入射吸音率に比べ、−5%未満となる場合は不良(×)、−5%以上となる場合は良好(○)と評価する。
・総合判定:上記のいずれにおいても肯定的評価となった場合に、総合判定をOK(合格)とし、いずれかにおいて否定的評価となった場合は、NG(不合格)とした。
【0065】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 合成樹脂発泡体シート
11 溶融被膜層
20 加熱ローラー
30 送りローラー
40 スプレーノズル
50 ベルトコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶融性の合成樹脂発泡体シートの表面を、加熱ロール又は加熱板で加熱すると共に押圧することにより、前記表面に溶融被膜を形成する溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シートの製造方法であって、
前記表面に撥水撥油剤を含む溶液を付着させた後に、前記表面を加熱すると共に押圧することにより溶融被膜を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記表面における、前記撥水撥油剤の固形分の付着量が、7.5g/m2以上であることを特徴する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造された溶融被膜を有する合成樹脂発泡体シート。
【請求項4】
熱溶融性の合成樹脂発泡体を基材とするシート状の発泡層と、該発泡層の少なくとも一面側に前記合成樹脂発泡体が熱溶融した溶融被膜層とを備える合成樹脂発泡体シートであって、
前記溶融被膜層は、溶融した合成樹脂発泡体の合成樹脂と撥水撥油剤とが融着したことを特徴とする合成樹脂発泡体シート。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−31947(P2013−31947A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168779(P2011−168779)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】