説明

溶融速度が向上されたアスファルト改質剤組成物及びこれを使用して製造された改質アスファルト

本発明は、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体とアスファルトを含有するペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物、及び前記ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物とアスファルトを溶融混合して製造された改質アスファルトに関する。製造された改質アスファルトは、改質剤の溶融時間を短縮することで生産性を向上させると同時に、物性の低下及び熱劣化を防止できるという長所を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体とアスファルトを含有するペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物に関する。
【0002】
更に、本発明は、前記ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物をアスファルトに溶融混合して製造された改質アスファルトに関する。
【背景技術】
【0003】
アスファルトは粘度の高い、室温で黒くネバネバした半固形物である。アスファルトはその硬度、例えば、針入度、粘度及び相溶性によっていくつかの等級に区分される。
【0004】
アスファルトは通常、ASTM D946によるアスファルトの針入度試験を通して等級される。前記針入度は、アスファルトの硬度を表す指標であり、特定の温度、具体的に25℃で既定の荷重及び時間の下、アスファルトに標準ブローブを針入させることで測定される。これは、前記プローブが100gの力で5秒間押される時にアスファルトに針入したブローブの深さを0.1mm単位で測定する。一般に、この値が小さいほど硬いアスファルトを意味する。前記針入度には、40〜50、60〜70、85〜100、120〜150及び200〜300の5種類の標準針入度がある。例えば、針入度40〜50のアスファルトは、針入度200〜300のアスファルトより硬い。韓国内で生産される2種類の代表的な道路舗装用アスファルトは、針入度85〜100のAP−3と、針入度60〜70のAP−5である。
【0005】
アスファルトは高温状態に曝されると、粘性が増すため塑性変形をもたらす。一方、低温状態に曝されると、外部衝撃により砕けやすくなる。
【0006】
一般的に、SBSブロック共重合体、ポリオレフィン系樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの添加剤が、アスファルトの感温性を低減させるために使用される。添加剤の添加により向上された物性を有するアスファルトは“改質アスファルト”と呼ばれる。これらの添加剤のうち、SBSブロック共重合体が最も広く使用されている[J. of materals science 36, 2001, p.451-460]。
【0007】
SBSブロック共重合体を利用した改質アスファルトの物性については、アスファルト内のSBSブロック共重合体の溶解速度が重要因子として作用する。
【0008】
アスファルトにSBSブロック共重合体が溶解されるメカニズムは次の通り[図1(a)参照]。まず、改質剤であるSBSブロック共重合体が160〜200℃のアスファルトに添加される(第1段階)。その後、SBSブロック共重合体をアスファルトと混合し(第2段階)、アスファルトの芳香族系オイル成分がSBSブロック共重合体に浸透する(第3段階)。次いで、SBSブロック共重合体が膨潤してアスファルト内で分散され、物理的ネットワークを形成する(第4段階)[J. of materals science 36, 2001, p.451-460]。上記の通り、アスファルト内のSBSブロック共重合体の溶解速度は、SBSブロック共重合体がアスファルト成分によりどれだけの速さで膨潤されるか次第であることが知られている。
【0009】
SBSブロック共重合体を使用して改質されたアスファルトは、道路舗装用改質アスファルトと防水シートなどで広く使用されている。
【0010】
道路舗装用改質アスファルトは、大型溶融設備でアスファルトにペレットやクラムタイプの改質剤を3〜10重量%(例えば、SBSブロック共重合体)を添加して溶融した後、アスコン工場で骨材と改質アスファルトを混合(プレミックスタイプ湿式法)するか、或いは、アスコンを製造するために、アスコン工場で骨材とアスファルトを混合する際に5〜15重量%の改質剤をアスファルトに添加(プラントミックスタイプ乾式法)することで製造される。
【0011】
2種の道路舗装用改質アスファルトの製造工法のうち、プレミックタイプは、大型溶融設備で改質剤が160〜200℃のアスファルトに溶融混合されるため大量生産が可能であるという長所があり、それ故、道路舗装用として広く使用されている。しかし、溶融設備からアスコン工場まで改質アスファルトを長距離運搬しなければならない場合、長期にわたる運搬による老化により物性が劣化する。更に、この工法は、少量の改質アスファルトのみを必要とする小区間の舗装には適していない。また、保管や運搬時に改質剤とアスファルト間の相分離が起き得る。
【0012】
プラントミックスタイプは、保管工程なしにアスコン工場で改質剤をアスファルトと混合するため、相分離問題、及び製造及び運搬中に高温での物性の劣化が最小化され得るという長所がある。この方法は、プレミックスタイプの適用が困難なとき、例えば、小区間の道路舗装、接近性が容易ではない道路舗装、道路の維持、または配水可能な特殊なアスファルトを利用した舗装の際に広く使用される。プラントミックスタイプの場合、アスファルト改質剤を迅速にアスファルト内に溶融することが重要である。溶融が遅延すると、アスファルト混合物の製造が遅延したり、改質アスファルトとしての目的とする物性を発揮できない。
【0013】
この問題を解決するために、大韓民国特許第417,294号及び第655,635号には、プラントミックスタイプで使用されるアスファルト改質剤の溶融速度を向上させるために、SBSブロック共重合体、粘着性付与樹脂及び加工補助剤の混合物を含有する改質剤組成物を開示している。しかし、これらの改質剤も組成物を製造するために高粘度のSBSブロック共重合体が使用される場合、溶融速度に限界がある[大韓民国特許第701821号]。
【0014】
更に、粘着性付与樹脂と加工補助剤の費用がアスファルトの費用に比べて非常に高いため、プレミックスタイプの大量生産方式に比べて価格競争力が劣る。そして、主に加工補助剤として使用されるオイルは、アスコンをアスコン工場で製造して舗装現場に運搬する途中に蒸発する傾向があるため、アスコンから煙が出てしまう。
【0015】
防水シート用改質アスファルトは、道路舗装用改質アスファルトのプレミックスタイプと同様に製造される。160〜200℃の溶融設備で無機物が混合されたアスファルトに8〜20重量%のSBSブロック共重合体が添加されて溶融される。その後、溶融混合物を布に通過させて防水シートを製造する。このとき、SBSブロック共重合体がゆっくり溶融されると、最終製品の物性が長時間熱に露出されることによる熱酸化と老化により劣化され得る[Journal of the Korean Society of Road Engineers, Vol.6, No.2, 2004, p.15-24]。
【0016】
プレミックスタイプ技法(または防水シート用改質アスファルト)で早い溶解速度を得るために、大韓民国特許第701821号及び第581820号には、アスファルト改質剤に発泡剤を使用して多孔質にして表面積を増加させることにより、溶融速度を向上させる方法を開示している。しかし、発泡剤を使用する方法は、発泡剤が溶融工程で完全に消耗されない限り、保管または使用中に発泡が持続的に発生し、発泡工程で形成された副産物に汚染されてしまい、アスファルト改質剤の物性を劣化させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】J. of materals science 36, 2001, p.451-460
【非特許文献2】Journal of the Korean Society of Road Engineers, Vol.6, No.2, 2004, p.15-24
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】大韓民国特許第417,294号
【特許文献2】大韓民国特許第655,635号
【特許文献3】大韓民国特許第701821号
【特許文献4】大韓民国特許第581820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、プラントタイプの道路舗装用及び防水シート用改質アスファルトの製造時に利用されるアスファルト改質剤の溶融速度を著しく増加させることで、改質剤の溶融時間を短縮し、改質アスファルトの熱酸化による物性の劣化を最小化すると同時に、大きな重量平均分子量を有するSBSブロック共重合体を改質剤として使用可能なペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一様態では、本発明は、スチレン含有量10〜50重量%及び重量平均分子量50,000〜400,000g/molを含有するスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体100重量部、及びアスファルト21〜150重量部とを含有するペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物を提供する。
【0021】
別の様態では、本発明は、アスファルト70〜97重量%及び前記SBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物3〜30重量%とを含有する改質アスファルトを提供する。
【0022】
また別の様態では、本発明は、スチレン10〜50重量%を含有し、重量平均分子量50,000〜400,000g/molを有するSBSブロック共重合体100重量部と、アスファルト21〜150重量部を100〜160℃で混合した後、加工して、ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物を製造し、前記ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物3〜30重量%をアスファルト70〜97重量%に160〜200℃で溶融混合して改質アスファルトを製造することをからなる改質アスファルトの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の上記及び他の特徴は、実例として添付図面に例示するその特定の典型的な実施形態について詳細に説明するだけのものであり、本発明を限定しない。
【0024】
【図1】アスファルト改質剤がアスファルトに溶融混合される工程を説明するものであり、(a)は従来の改質剤をアスファルトに溶融する工程を説明するものであり、(b)は本発明による改質剤をアスファルトに溶融する工程を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の様々な実施形態、添付図面に例示し後に説明する例について詳細に説明する。本発明を典型的な実施形態と共に説明するが、本発明をこの説明がこれらの典型的な実施形態に限定しないことが理解されるだろう。また、本発明は典型的な実施形態だけでなく、添付した請求項により定義されるような、本発明の精神及び範囲内で様々な可能性、変更、同等なもの及び別の実施形態を対象にするものである。
【0026】
本発明は、SBSブロック共重合体とアスファルトを含有するペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物、及びペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物を含有する改質アスファルトを提供する。
【0027】
アスファルト改質剤としてSBSブロック共重合体を使用した従来の改質アスファルトの製造工程は、図1(a)を参照にして説明する。まず、改質剤であるSBSブロック共重合体改質剤がアスファルトに添加される(第1段階)。その後、前記改質剤が溶融混合され(第2段階)、アスファルトはSBSブロック共重合体内に浸透される(第3段階)。そして、SBSブロック共重合体が膨潤してアスファルトと混合される(第4段階)。ここで、全体の溶融速度は、アスファルトがSBSブロック共重合体内に浸透する速度によって大きく影響される。
【0028】
図1(b)は、本発明による、SBSブロック共重合体とアスファルトを混合してペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物を製造した後、アスファルト内に溶融させる工程を説明している。まず、パレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物がアスファルトに添加される(第1段階)。その後、前記マスターバッチ改質剤組成物がアスファルトに混合、分散される(第2段階)。次に、前記マスターバッチ改質剤組成物に含まれているSBSブロック共重合体が膨潤して、物理的ネットワークがアスファルト内に形成される(第3段階)。
【0029】
図1(a)に説明された従来の改質剤溶融メカニズムと比較すると、SBSブロック共重合体とアスファルトを含有するペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物は、図1(a)の第3段階での浸透が完了した状態と類似しているため、図1(b)の工程では図1(a)の第3段階が必要ない。その結果、アスファルトへの溶融速度が、先行技術の溶融速度と比べて著しく向上する。
【0030】
本発明によるペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物の製造方法を詳細に説明する。
【0031】
本発明で使用されるSBSブロック共重合体は、当分野で一般的に使用されるものであり、特別に限定しない。具体的に、スチレン含有量10〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、及び重量平均分子量50,000〜400,000g/mol、好ましくは60,000〜300,000g/molを有する線状または分岐型の共重合体が使用される。前記スチレン含有量が10重量%未満の場合、弾性が不十分であるため、アスファルトの改質時に軟化点またはその他の物性が悪化する。一方、前記スチレン含有量が50重量%を超過すると、可塑性が強いため、アスファルトの改質効果が十分でない。前記重量平均分子量が50,000g/molより少ない場合、アスファルトの改質効果が十分でない。一方、前記重量平均分子量が400,000g/molを超過すると、粘度と相転移温度 が極めて高いため、アスファルトへの溶融が困難である。
【0032】
前記SBSブロック共重合体は当分野で一般的に使用される線状、分岐型またはテーパー型であり、結合効率(CE)が少なくとも50%、好ましくは60〜100%であるものが好ましい。結合効率が50%未満の場合、スチレン−ブタジエンジブロック含有量が高いため弾性が低下し、それ故、軟化点またはその他の物性が低下してしまう。
【0033】
前記分岐ブロック共重合体は下記化学式1で表されたものである。
(化1)
【0034】
[(S−B)nm−X
【0035】
前記化学式1において、nは1または2の整数であり、mは2〜6の整数であり、Sはビニル芳香族炭化水素ブロックであり、Bは共役ジエンブロックであり、Xは多官能性結合剤である。
【0036】
更に、本発明の共重合されたSBSブロックは、スチレンブロック全体の量に対してテーパーブロックを5〜35重量%、好ましくは6〜30重量%含む。テーパーブロックの導入は、改質アスファルトの物性が維持されながら溶融工程で相転移が容易に起きるため、溶融速度が向上されるという長所を提供する。前記テーパーブロックの含有量が5重量%未満の場合、テーパーブロックの添加による効果が期待できない。一方、前記テーパーブロックの含有量が35重量%を超過すると、相転移温度が非常に低いため、アスファルト改質時、軟化点が低下する。
【0037】
ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物に含有されるアスファルトは、当分野で一般的に使用される建築用または道路舗装用のものであり、特別に制限されない。
【0038】
通常、アスファルトは道路舗装用アスファルト及びブローンアスファルトに区分され、針入値が0〜300の範囲で5種類の標準針入度がある。道路舗装用アスファルトとしては、AP−3(針入度80〜100)及びAP−5(針入度60〜80)が多く使用される。そして、ブローンアスファルトは、アスファルト分子の重縮合を誘導するために、加熱されたストレートアスファルトまたは減圧下で蒸留した軽質の残渣油に220〜250℃の高温の圧縮空気を吹き込むことで製造された、重量平均分子量が大きいアスファルトのことを言う。ブローンアスファルトは、0〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40の5種の針入度に分けられる。SBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物を使用して製造された改質アスファルトが、軟化点が向上されたものから製造される点において、ブローンアスファルトはAP−3またはAP−5に比べて有利である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物の製造に使用されるアスファルトは、特別に種類は限定しないが、針入度が60〜100である。前記針入度が60未満の場合、低温時の改質アスファルトの伸長率が減少する。一方、100を超過すると、軟化点が低下する。それ故、前記範囲が維持されることが好ましい。
【0040】
前記アスファルトは、SBSブロック共重導体100重量部に対して21〜150重量部、好ましくは35〜130重量部の量で含まれる。前記アスファルトの含有量が21重量部未満の場合、溶融速度の改善効果が表れない。一方、前記含有量が150重量部を超過すると、ペレット化が困難で、弾性が十分でないためペレット化後、保管中にブロッキングが起き得る。
【0041】
SBSブロック共重合体の重量平均分子量が50,000〜90,000g/molの範囲のとき、前記共重合体は21〜120重量部、好ましくは35〜100重量部の量で使用されることが好ましい。前記量が120重量部を超過すると、弾性が不十分であるため、ペレット化後、保管中にブロッキングが起き得る。一方、前記SBSブロック共重合体の重量平均分子量が90,000〜400,000g/molの範囲である場合、前記共重合体は31〜150重量部、好ましくは35〜130重量部の量で使用されることが好ましい。前記量が31重量部未満の場合、溶融速度の改善効果が目覚しくない。一方、150重量部を超過すると、ペレット化後、保管中にブロッキングが起き得る。
【0042】
SBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物の製造時、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、炭酸カルシウム、タルク、スチレン−ブタジエンゴムなどのような当分野で一般的に使用される添加剤を当分野で知られた一般的な量で使用することができる。
【0043】
更に、本発明は、アスファルトが70〜97重量%、前記ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物が3〜30重量%含有された改質アスファルトを提供する。前記ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物の含有量が3重量未満の場合、アスファルト改質の効果が十分ではない。一方、前記含有量が30重量を超過すると、粘度が高いため処理が難しくなる。それ故、前記範囲が維持されることが好ましい。
【0044】
本発明のペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物と混合されるアスファルトは、その物性を向上させるために、針入度が20〜300であるアスファルト、針入度が0〜100であるブローンアスファルト、またはスチレン−ブタジエンブロック共重合体、クラムラバー、EVA、SBラテックス、粘着付与樹脂からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を含むアスファルトである。
【0045】
本発明のペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物は、防水シート用改質アスファルト、及びプラントミックスタイプまたはプレミックスタイプの道路舗装用改質アスファルトに使用することができる。特に、防水シート用改質アスファルトもしくはプラントミックスタイプの道路舗装用改質アスファルトに使用されるのが好ましい。ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物が防水シート用改質アスファルトに使用される場合、15〜30重量%の量で含まれることが好ましい。一方、ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物が道路舗装用改質アスファルトに使用される場合、3〜15重量%の含有量が好ましい。このように、改質アスファルトの用途によって含有量が異なり得る。
【0046】
ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤は、押出機、ニーダー、バンベリーミキサーなどの溶融混練機を利用して100〜160℃でSBSブロック共重合体、アスファルトおよび添加剤を混合して、ダイスを通してストランドにした後、冷却水で冷却し、カッターを利用して切断して製造される。前記温度が100℃未満の場合、溶融混練は困難である。そして、160℃を超過すると、ペレット化工程が困難となる。それ故、前記範囲が維持されることが好ましい。
【0047】
長期間保管する場合にブロッキングが生じるため、好ましくは、ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤100重量部に対して0.1重量部のステアリン酸カルシウム粉末にて、前記製造されたペレットタイプSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤の表面を均等に処理する。
【0048】
次に、ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を160〜200℃に加熱されたアスファルトに溶融混合して、改質アスファルトを得る。前記温度が160℃未満だと、溶融混合は困難である。そして、200℃を超過すると、改質剤とアスファルトの熱劣化が加速する。それ故、前記範囲が維持されることが好ましい。
【0049】
このように製造された改質アスファルトは、ASTM D 1574により測定されたTFOT後の質量損失率を0.01〜0.1%に維持する。
【0050】
以下、本発明を実施例を参照にして詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されない。
【実施例】
【0051】
実施例1
重量平均分子量が250,000g/molであり、スチレンが33重量%である分岐SBSブロック共重合体(SBS−1)100重量部、針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)50重量部、酸化防止剤(テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸)0.3重量部をバンベリーミキサーに入れて140℃で20分間混合した。混合後、155℃の押出機を通してストランド形状に押し出し、冷却液を使用して冷却してカッターを使用して切断して、直径約1〜2mmのペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。
【0052】
このように製造されたアスファルト改質剤を、180℃で加熱溶融された針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)に溶融混合して改質アスファルトを製造した。ここで、改質アスファルト全体のSBSブロック共重合体の含有量が8重量%となるように、パレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤12重量%をアスファルト88重量%と混合した。
【0053】
実施例2
針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)100重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0054】
実施例3
針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)の代りに、針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が10であり、軟化点が80℃であるブローンアスファルト(BAP)100重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0055】
実施例4
針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)130重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0056】
実施例5
重量平均分子量が85,000g/molであり、スチレン含有量が33重量%である線状SBSブロック共重合体(SBS−2)、及び針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト40重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0057】
実施例6
重量平均分子量が85,000g/molであり、スチレン含有量が33重量%である線状SBSブロック共重合体(SBS−2)、及び針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト80重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0058】
実施例7
改質アスファルト全体のSBSブロック共重合体の含有量が12重量%となるように、ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤18重量%とアスファルト82重量%を混合することを除き、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0059】
実施例8
針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)70重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてアスファルト改質剤を製造した。さらに、改質アスファルト全体のSBSブロック共重合体の含有量が12重量%となるように、ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤20.4重量%とアスファルト79.6重量%を混合することを除き、改質アスファルトは実施例1と同様の方法にて製造された。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0060】
実施例9
重量平均分子量が90,000g/molであり、スチレン含有量が35重量%であり、スチレンブロック全体のうち20重量%がテーパーされたSBSブロック共重合体(SBS−3)を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0061】
比較例1
針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)20重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0062】
比較例2
針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)170重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0063】
比較例3
重量平均分子量が85,000g/molであり、スチレン含有量が33重量%であるSBSブロック共重合体(SBS−2)、及び針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト18重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0064】
比較例4
重量平均分子量が85,000g/molであり、スチレン含有量が33重量%であるSBSブロック共重合体(SBS−2)、及び針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト155重量部を使用することを除き、実施例1と同様の方法にてペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0065】
比較例5
重量平均分子量が250,000g/molであり、スチレン含有量が33重量%である分岐SBSブロック共重合体(SBS−1)100重量部、粘着性付与樹脂(C9系石油樹脂)35重量部、プロセス油15重量部及び酸化防止剤(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸))0.3重量部を低速攪拌ミキサーに入れて、10分間混合した後、二軸押出機を利用して160℃で溶融混合することを除き、実施例1と同様の方法にてアスファルト改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0066】
比較例6
重量平均分子量が250,000g/molであり、スチレン含有量が33重量%である分岐SBSブロック共重合体(SBS−1)100重量部、針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)35重量部、ホワイトオイル15重量部、発泡剤(2−2−アゾビス(イソブチロニトリル))1.0重量部及び酸化防止剤(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸))0.3重量部を低速攪拌ミキサーに入れて10分間混合した後、二軸押出機を利用して160℃で溶融混合すること以外は、実施例1と同様な方法にてアスファルト改質剤を製造した。そして、改質アスファルトを実施例1と同様の方法にて製造した。
【0067】
比較例7
平均粒子サイズが1mmであり、重量平均分子量が250,000g/molであり、スチレン含有量が33重量%である分岐SBSブロック共重合体(SBS−1)を、針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)と180℃で混合した。改質アスファルトをSBSブロック共重合体12重量%とアスファルト88重量%とを混合して製造した。
【0068】
比較例8
平均粒子サイズが5mmであり、重量平均分子量が250,000g/molであり、スチレン含有量が33重量%である分岐SBSブロック共重合体(SBS−1)を、針入度(25℃、100g、5秒、0.1mm)が70であり、軟化点が50℃であるアスファルト(AP5)と180℃でした。改質アスファルトをSBSブロック共重合体12重量%とアスファルト88重量%とを混合して製造した。
【0069】
実験例
実施例1〜7及び比較例1〜8で製造された改質アスファルトの物性を次のように測定した。その結果は下記表1、2及び3に示される。
【0070】
[物性測定]
(1)溶融時間:改質アスファルトの製造過程で、アスファルトと改質剤の混合中、時間別に試料を少量採取した。前記試料をポリエステルシートに薄く塗布し、肉眼及び100倍に拡大した顕微鏡にて観察し、ブロック共重合体の固体粒子の有無を確認した。採取及び観察は、最初10分間経過後に5分間隔で行われた。
【0071】
(2)軟化点:軟化点は、改質アスファルトの熱劣化程度または溶融速度を判断するために測定した。同一の改質剤を同一含有量でアスファルトと混合しても、劣化程度が酷くなるにつれて軟化点が低くなる。軟化点はASTM D 36に準拠して測定された。
【0072】
(3)TFOT後の質量損失率:ASTM D 1754に準拠して測定した。薄膜加熱後の質量変化が大きいのは揮発性成分の蒸発を表しており、これにより建築現場への運搬途中にアスコンから煙が出ることになる。
【0073】
(4)ペレットの保管安定性:5cm(幅)×5cm(長さ)×2cm(厚さ)の寸法に堆積したパレットの上に3kgの錘を置いた。85℃で48時間放置した後、ブロッキングの有無が観察された。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表1及び2に見られるように、本発明のアスファルト改質剤(実施例1〜6及び9)が、比較例1〜6に比べて、溶融時間が25分以内で良好な溶融性と、優れた保管安定性を示した。具体的に、一般的なアスファルト(AP5)とブローンアスファルトが使用された実施例2と3を比較すると、ブローンアスファルトの使用は軟化点を上昇させるのに効果的であった。比較例1〜4はアスファルトの含有量による効果を比較している。アスファルトの含有量が高くなるほど溶融時間が早いが、保管安定性が良好ではなかった。一方、アスファルトの含有量が低いほど保管安定性が良いが、溶融時間が50分以上であった。
【0078】
特に、実施例1と比較例5及び6を比較すると、粘着性付与樹脂とプロセス油が使用された場合(比較例5)よりもアスファルトが組成物内に混合された場合(実施例1)の方が、溶融速度が2倍以上速かった。また、表面積を向上させるため発泡させた場合(比較例6)よりも溶融速度が良好であった。更に、TFOT後の質量損失率は、プロセス油が使用された場合(比較例5及び6)よりも実施例1のほうが非常に低かった。これは、運搬中での揮発物質の蒸発が少ないことを示している。
【0079】
表3は、改質アスファルト内のSBS−1含有量が12重量%に設定された実施例7及び8と比較例7〜8と比較している。混合開始110分後、軟化点は類似していた(126.2〜126.6℃)。しかし、溶融が完了した時点では、軟化点は溶融時間が短い実施例7及び8が、比較例7及び8よりも高かった。これは、溶融時間の短縮により熱劣化が最小化されたことを示している。
【0080】
本発明は好ましい実施形態を参照にして詳細に説明した。しかし、当業者により本発明の原理と精神から逸脱することなく、これら実施形態が変更され、本発明の範囲が添付された図面とその同等なものによって定義されることを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によるSBSブロック共重合体とアスファルトを含有するペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物と、前記ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物とアスファルトを混合して製造された改質アスファルトでは、改質剤組成物に含有されたアスファルトはSBSブロック共重合体に染み込まれたような状態で存在する。その結果、改質アスファルトの製造時、アスファルト内のSBSブロック共重合体の溶融性は著しく向上し、生産性が良く物性が向上した改質アスファルトを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン10〜50重量%を含有し、重量平均分子量50,000〜400,000g/molを有するスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体100重量部と、
アスファルト12〜150重量部と、
を含有する溶融速度が向上されたペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物。
【請求項2】
前記アスファルトは35〜130重量部含有される請求項1記載の改質剤組成物。
【請求項3】
重量平均分子量が50,000〜90,000g/molであるSBSブロック共重合体100重量部と、
アスファルト35〜100重量部と、
を含有する請求項1記載の改質剤組成物。
【請求項4】
重量平均分子量が90,000〜400,000g/molであるSBSブロック共重合体100重量部と、
アスファルト35〜130重量部と、
を含有する請求項1記載の改質剤組成物。
【請求項5】
前記SBS共重合体は線状、分岐型またはテーパー型である請求項1記載の改質剤組成物。
【請求項6】
前記線状SBSブロック共重合体は結合効率(CE)が50〜100%である請求項5記載の改質剤組成物。
【請求項7】
前記分岐SBSブロック共重合体は下記化学式1で表される請求項5記載の改質剤組成物。
(化1)
[(S−B)nm−X
(前記化学式1において、nは1または2の整数であり、mは2〜6の整数であり、Sはビニル芳香族炭化水素ブロックであり、Bは共役ジエンブロックであり、Xは多官能性結合剤である。)
【請求項8】
前記SBSブロック共重合体は、スチレンブロック全体の量に対してテーパーブロックが5〜35重量%含まれる請求項5記載の改質剤組成物。
【請求項9】
前記アスファルトは針入度(ASTM D946)が60〜100である請求項1記載の改質剤組成物。
【請求項10】
アスファルト70〜97重量%と、
請求項1〜4のうちいずれか1項のペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物30〜30重量%と、
を含有する改質アスファルト。
【請求項11】
TFOT後の質量損失率が0.01〜0.1%である請求項10記載の改質アスファルト。
【請求項12】
前記アスファルトは、その物性を向上させるために、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、クラムラバー、EVA、SBラテックス、粘着付与樹脂からなる群から選択された添加剤を含む請求項10記載の改質アスファルト。
【請求項13】
防水シート用またはプラントミックス用として使用される請求項10記載の改質アスファルト。
【請求項14】
スチレン10〜50重量%を含有し、重量平均分子量50,000〜400,000g/molを有するSBSブロック共重合体100重量部及びアスファルト21〜150重量部を100〜160℃で混合した後、加工して、ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物を製造し、前記ペレットタイプのSBS−アスファルトマスターバッチ改質剤組成物3〜30重量%とアスファルト70〜97重量%とを160〜200℃で溶融混合して改質アスファルトを製造することからなる改質アスファルトの製造方法。
【請求項15】
前記アスファルトは、その物性を向上させるために、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、クラムラバー、EVA、SBラテックス、粘着付与樹脂からなる群から選択された添加剤を含む請求項14記載の改質アスファルトの製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−510101(P2011−510101A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527886(P2010−527886)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005806
【国際公開番号】WO2009/045057
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510092960)コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】