説明

溶解性を向上させたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有顆粒の製造方法

【課題】使用エネルギーが少ない攪拌造粒手段を用いつつ、水への溶解性が良好なα−スルホ脂肪酸アルキルエステル(α−SF)塩含有顆粒の製造方法を提供すること。
【解決手段】α−SF塩及びノニオン性界面活性剤を所定量、所定割合で含有するペーストと、所定量、所定割合の炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムとを攪拌造粒して、得られた造粒物85〜99質量%に対して、1〜15重量%(水和物基準)のA型ゼオライトを添加し、両者を混合する工程を含むα−SF塩含有顆粒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性を向上させたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を含有する顆粒を噴霧乾燥せずに製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、衣料用粉末洗剤を構成する界面活性剤として広く用いられている。α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩はα−SF塩と称され、アルキル部分がメチル基の場合、特にMES(Methyl Ester Sulfonate)塩と呼ばれる。
界面活性剤を含有する高嵩密度顆粒は、一般的に、細い孔径のノズルから水性洗剤スラリーを噴霧し、熱風を導入したタワー内で微小な液滴とし、短時間で乾燥させること(所謂噴霧乾燥)により得られた噴霧乾燥粒子と様々な洗剤成分とを攪拌造粒するか又は捏和・粉砕する方法により製造することができる。その他の方法としては、様々な洗剤成分を乾式混合して撹拌造粒するか又は捏和・粉砕する方法により製造することができる。前者は、噴霧乾燥に使用するエネルギー量が大きく、従って環境に与える負荷が大きい。
環境に与える負荷を小さくするには、後者の洗剤成分を乾式混合して攪拌造粒するか又は捏和・粉砕する方法が好適であるが、α−SF塩を含有する顆粒は水への溶解性が低いため、α−SF塩を含有する顆粒を製造するのには、良好な溶解性を得るために、該顆粒の水への均一分散性が良好となる、捏和・粉砕プロセスが多く活用されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、捏和・粉砕プロセスでは、粉砕機への付着が多く発生するとともに、プロセスに使用エネルギーも依然として大きい(例えば、特許文献2参照)。
一方、撹拌造粒プロセスは使用エネルギーが少ないという利点を有する。造粒後に行われる粗粉粉砕工程では、粉砕機への負荷が軽いため、粉砕機への付着は大きな課題とはならない。しかし、得られる顆粒の水への溶解性が劣るといった課題がある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−253800号公報
【特許文献2】特開平8−283799号公報
【特許文献3】特開平6−128594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、使用エネルギーが少ない攪拌造粒手段を用いつつ、水への溶解性が良好なα−SF塩含有顆粒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、α−SF塩顆粒にノニオン性界面活性剤を含ませ、かつ炭酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの合計量及び両者の比を特定の範囲に設定することにより、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、下記工程1及び2を含むことを特徴とするα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有顆粒の製造方法を提供する。
工程1:
(a)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩とノニオン性界面活性剤とを含有するペーストであって、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩をペーストの全質量に対して60質量%以上含有し、かつα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩/ノニオン性界面活性剤(質量比)=1/0.2〜1/0.4である前記ペーストを、工程2で得られる顆粒を基準にして15〜30質量%、
(b)炭酸ナトリウム、及び
(c)硫酸ナトリウム
を攪拌造粒して、
(b)炭酸ナトリウムと(c)硫酸ナトリウムの合計量が、工程2で得られる顆粒を基準にして50〜80質量%であり、かつ
(b)炭酸ナトリウム/(c)硫酸ナトリウム(質量比)=1/0.5〜1/0.1である造粒物を得る工程
工程2:
上記工程1で得られた造粒物:1質量部に対して、(d)A型ゼオライト:0.01〜0.18質量部(水和物基準)を添加し、両者を混合する工程。
【0006】
本発明はまた、上記製造方法により製造されたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有顆粒に、ノニオン性界面活性剤を噴霧することを含む粒状洗剤組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用エネルギーが少なく、従って環境に与える負荷が小さい方法で、水への溶解性が高いα−SF塩含有顆粒を提供することができる。本発明によれば、粉砕機を使用しなくても、あるいは使用したとしても軽い負荷で粉砕することができるので、装置への付着が少ない。本発明の製造方法により得られる顆粒はまた変形に対する圧縮強度が高いため貯槽や輸送時に固化することが少なくハンドリングが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
工程1
本発明の工程1において、上記(a)α−SF塩含有ペーストと、(b)炭酸ナトリウムと、(c)硫酸ナトリウムとを攪拌造粒することにより造粒物を得る。
〔α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩〕
本発明において(a)成分を構成するα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩としては、以下の式で表されるものを好適に用いることができる。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R1は炭素数6〜20、好ましくは8〜18、より好ましくは14〜18の直鎖又は分岐、好ましくは直鎖アルキル又はアルケニル基である。R1の炭素数が6未満であるか20超であると洗浄力が劣ることがある。
2は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1の直鎖又は分岐、好ましくは直鎖アルキル又はアルケニル基である。
Mはアルカリ金属、アンモニム又はアミンであり、好ましくはアルカリ金属、より好ましくはナトリウム又はカリウムである。
特に好ましいものは、上記式においてR1が炭素数12〜16の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり、R2がメチル基であり、Mがナトリウムである化合物である。
本発明において、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は一種単独を使用することもできるし、二種以上の混合物として使用することもできる。混合物であるのが好ましい。
本発明において使用するα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、公知の方法で製造することもできるし、市販品を使用することもできる。
【0011】
〔ノニオン性界面活性剤〕
本発明においては、(a)成分を構成するノニオン性界面活性剤としては、粒状洗剤を製造するのに一般的に用いられているものであれば特に制約なく用いることができる。具体的には、
(1)炭素数10〜20のアルキル基を有し、ポリオキシアルキレン(アルキレンの炭素数は2〜4)の付加モル数が5〜50のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、
(2)炭素数8〜18のアルキル基を有し、グルコースユニットの平均付加モル数が1〜10のアルキルポリグルコシド、
(3)炭素数8〜18のアルキル基を有し、グリセリンユニットの平均付加モル数が1〜3のアルキルグリセリルエーテル、
(4)炭素数10〜20の脂肪酸ジエタノールアミド、
(5)炭素数10〜18アルキル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1〜30のメトキシポリオキシエチレンアルカノエート等があげられる。
なかでも、(1)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、更に特に、平均炭素鎖長が10〜18、平均EO付加モル数が5〜25のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0012】
〔(a)α−SF塩含有ペースト〕
α−SF塩とノニオン性界面活性剤とを含有するα−SF塩含有ペーストは、例えば、定法により、脂肪酸アルキルエステルをスルホン化し、エステル化して製造したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル(以下、α−SF酸と記することもある)を、NaOH等のアルカリ剤で中和し、α−SFの塩を形成するときに、アルカリ水溶液と共にノニオン性界面活性剤をα−SF酸に加えることにより製造することができる。中和前後にα−SF酸またはα−SF塩を漂白してもよい。
【0013】
中和後、必要により濃縮して中和物に含まれる水分やエステル化に用いたアルコール分を除去し、α−SF塩の量を、ペーストの全質量に対して60質量%以上、好ましくは60〜80質量%、より好ましくは60〜75質量%とする。60質量%未満では、ペースト中の水分が高くなるため、得られる造粒物中の水分も高くなってしまい、結果として得られる造粒物の変形に対する圧縮強度が低くなる。80質量%を超えるとペースト粘度が高くなりハンドリングが困難になる。なお、ペースト中のα−SF塩の量は、高速液体クロマトグラフにより測定することができる。濃縮は、例えばリサイクルフラッシュ蒸発装置を用いて行うことができる。
【0014】
このとき、顆粒に含ませるノニオン性界面活性剤の量は、顆粒に含まれるα−SF塩に対して1/0.2〜1/0.4(質量比)であり、1/0.2〜1/0.35であるのが好ましい。α−SF塩に対して0.2未満の量だとα−SF塩含有ペーストの粘度が高くなりハンドリングが困難になる。α−SF塩に対して0.4を超えると、顆粒にしたときにノニオンの染み出しが多く発生し、変形に対する圧縮強度が低くなる。
【0015】
ペーストに含まれる水分量は、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは7〜13質量%である。水分量がこのような範囲にあることにより、造粒物中の水分を低く抑えるとともに、ペースト粘度を低くして良好なハンドリングが可能となる。なお、ペースト中の水分量は、カールフィッシャー水分計により測定することができる。
α−SF塩含有ペーストは、工程2で得られる顆粒に対して、15〜30質量%、好ましくは17〜28質量%、より好ましくは17〜26質量%となる量で用いる。15質量%未満では、得られる顆粒中のビルダー量が相対的に多くなり、結果として顆粒の水への溶解性が低下する。30質量%を超えると水中で溶解した場合にα−SF塩のゲル化による粒子同士の凝集が多く発生し溶解性が低下する場合がある。
【0016】
〔(b)炭酸ナトリウム及び(c)硫酸ナトリウム〕
本発明において用いる炭酸ナトリウムはアルカリ剤として洗浄に作用し、硫酸ナトリウムは、溶解性の向上剤として作用する。また炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムは、造粒物の核となる。このため、これらの平均粒子径は100〜400μmであるのが好ましい。嵩密度や粒子形状は特に限定されない。なお、炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの平均粒子径は、篩(後述の〔篩による平均粒子径の測定方法〕参照)やレーザー回折・散乱式粒度分布測定器により測定することができる。
炭酸ナトリウムと硫酸ナトリウムとの合計量は、工程2で得られる造粒物総量に対して50〜80質量%、好ましくは55〜75質量%、より好ましくは60〜72質量%である。50%未満だと、造粒物の核となる粒子が少なくなるため造粒物の粒度分布が非常にブロードなものになる。その結果、水への溶解性や固化性の劣化が起こる。80質量%を超えると、顆粒の水への溶解性が低下する。
炭酸ナトリウムと硫酸ナトリウムとは、炭酸ナトリウム/硫酸ナトリウム(質量比)=1/0.5〜1/0.1、好ましくは1/0.13〜1/0.47、より好ましくは1/0.15〜1/0.45である。炭酸ナトリウムに対する硫酸ナトリウムの量が0.5より多くなると、顆粒の圧縮強度が低くなる。炭酸ナトリウムに対する硫酸ナトリウムの量が0.1より少なくなると、顆粒の水への溶解性が低下する。
【0017】
本発明の工程1において、上記(a)α−SF塩含有ペーストと、(b)炭酸ナトリウムと、(c)硫酸ナトリウムとを攪拌造粒することにより造粒物を得る。
工程1において、任意成分としてビルダー(例えばゼオライト、炭酸カリウム)、アニオン界面活性剤、蛍光剤等を添加してもよい。この場合、各任意成分の形態に応じて配合時期を設定することができる。例えば、任意成分が粉体物である場合は、(b)炭酸ナトリウム及び(c)硫酸ナトリウムと共に添加するのがよい。ゼオライトを加える場合、A型が好ましい。但し、工程1で加えるゼオライトの量と工程2で加えるA型ゼオライトの量の合計が、本発明で規定する範囲を超えないようにする。任意成分の形状が液体である場合は、(b)炭酸ナトリウム、(c)硫酸ナトリウム及び他の粉体物の添加後に配合するのが好ましい。
【0018】
本工程で用いることのできる撹拌造粒装置は、攪拌羽根を備えた一以上の攪拌軸を装置内部中心に有し、チョッパーを装置内部壁面に有する構造であるのが好ましい。攪拌羽根と装置内壁との間の平均クリアランスは1〜30mmであるのが好ましい。連続式、バッチ式いずれでもよい。例えば、タービュライザー(ホソカワミクロン(株))、レーディゲミキサー((株)マツボー)、プロシェアミキサー(大平洋機工(株))、ハイスピードミキサー(深江パウテック(株))等が挙げられる。
【0019】
攪拌造粒は、撹拌造粒装置に、上記成分を同時に又は順次投入して行う。同時に投入するよりは、ペースト状である(a)α−SF塩含有ペーストと、粉体である(b)炭酸ナトリウム及び(c)硫酸ナトリウムとに分けて、順次投入するのがよい。粉体を先に、ペーストを後から投入するのがさらによい。更に特に、撹拌造粒装置の主軸を、単独で又はチョッパーと共に回転させて、粉体(b)及び(c)を流動化させながら(a)α−SF塩含有ペーストを添加するのが好ましい。
バッチ式攪拌造粒装置を用いる場合、(a)〜(c)成分の充填率が高い程、攪拌造粒能力が高くなるため好ましい。ただし、充填率が高すぎると粒子同士の凝集した粗粒が多く発生し造粒が困難となる。好ましくは充填率10〜60体積%、より好ましくは充填率15〜50体積%である。例えば、内容量が300Lの攪拌造粒装置の場合、(b)及び(c)成分、必要により添加する他の粉体の見掛け体積の合計が30〜180L程度であるのがよい。
攪拌軸の回転数は、造粒する際、下記数式1で定義されるフルード数が1〜4となるように調整するのが好ましく、1.2〜3であるのがより好ましい。フルード数が1未満では圧密化が促進されず好ましくない。4を越えると粒度分布が広くなり好ましくない。
Fr=V/(R×g)0.5 数式1
V:攪拌羽根の先端の周速〔m/s〕
R:攪拌羽根の回転半径〔m〕
g:重力加速度〔m/s2
チョッパーは、粒子同士の凝集が問題とならない場合には使用しなくてもよいが、一般的には2000〜7000rpmで使用するのがよい。
造粒時間は、粒子同士の凝集・分散、造粒時の動力による発熱、生産能力の観点から、0.5〜15分が好ましく、0.5〜10分がより好ましい。
【0020】
α−SF塩含有ペーストの添加速度は、混合状態と得られる顆粒の粒度より決定するが、0.5〜10kg/minで添加するのがよい。
(a)α−SF塩含有ペーストの温度は55〜80℃であるのが好ましい。(b)及び(c)成分の温度は5〜40℃であるのが好ましい。粒子同士の凝集した粗粒が問題となる場合、攪拌造粒装置外側にジャケットを取付け、そこに0〜20℃の冷却水等の冷媒を流して冷却することで凝集の抑制が可能となる。
【0021】
工程2
本発明の工程2において、工程1で得られた造粒物とA型ゼオライトとを混合してα−SF塩含有顆粒を得る。
〔(d)A型ゼオライト〕
A型ゼオライトは、ビルダーとして作用する。一般的にはA型、P型及びX型ゼオライトを使用し得るが、本発明ではA型ゼオライトを使用する。A型ゼオライトは安価で洗浄性能への寄与が高く、また使用することにより得られる顆粒の流動性や固化性が優れる。A型ゼオライトの一次粒子の平均粒径は、1〜10μmであるのが好ましい。A型ゼオライトの平均粒子径はレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置にて測定できる。
A型ゼオライトは、工程1で得られた造粒物1質量部に対して、0.01〜0.18質量部、好ましくは0.05〜0.12質量部(水和物基準)の量を使用する。0.01質量部未満では、顆粒の合一が著しく、塊状となる。0.18質量部を超えると、ゼオライト単独で存在する量が多くなるため顆粒の水への溶解性が低下する。
本工程で用いることのできる攪拌造粒装置としては、工程1において述べたのと同じものを用いることができる。工程2における攪拌造粒に関する条件は、工程1について述べたのと同じである。工程2の後に得られる顆粒の温度は通常25〜50℃である。50℃を超えると粒子同士の凝集による粗粒が多く発生することがある。
【0022】
本発明の製造方法により得られる顆粒中のα−SF塩の量は、10〜18質量%であるのが好ましく、10〜16質量%であるのがより好ましい。10質量%未満では活用範囲が狭くなるし、相対的に他成分の無機ビルダー配合量が多くなり、顆粒の水への溶解性が低下する。18質量%を超えると、水中で溶解した場合にα−SF塩のゲル化による粒子同士の凝集が多く発生し顆粒の水への溶解性が低下する場合がある。
本発明の製造方法により得られる顆粒の平均粒径は、200〜800μm程度であり、嵩密度は0.5〜1.0g/cm3程度である。なお、顆粒の平均粒径は篩(後述の〔篩による平均粒子径の測定方法〕参照)やレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定することができる。嵩密度はJISK3362に従って測定することができる。
本発明の製造方法により得られる顆粒の水分含量は1.0〜3.0質量%である。なお、この水分含量にはゼオライトから持ち込まれる水分は含まれない。1.0質量%未満であると発塵の懸念がある。また3.0質量%を超えると圧縮強度が低下することがある。顆粒の水分含量はKett水分計(商品名、(株)ケツト科学研究所製;赤外線水分計)により測定できる。測定条件は110℃、20分で行う。
【0023】
本発明の製造方法により得られた顆粒は、そのまま使用することもできるし、他の洗剤成分を含む顆粒と粉体混合して使用することもできる。さらにアニオン界面活性剤やノニオン性界面活性剤、ビルダー、酵素、色素、香料等と一緒にして粒状洗剤組成物とすることもできる。
アニオン界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、石鹸等があげられる。ノニオン性界面活性剤としては、上で述べたのと同じものを使用できる。ビルダーとしては、ゼオライト、トリポリリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体等があげられる。
本発明の粒状洗剤組成物は、上記方法で得られたα−SF塩含有顆粒に、ノニオン性界面活性剤噴霧することにより製造することができる。この場合、工程2で得られた顆粒に対して0.1〜2.0質量%のノニオン性界面活性剤を噴霧することが好ましい。前記顆粒に含まれるノニオン性界面活性剤と前記顆粒に噴霧するノニオン性界面活性剤の総量が、粒状洗剤組成物の全量を基準にして2〜11質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。ノニオン性界面活性剤の総量がこのような範囲にあると、発塵抑制効果があり、かつ固化しにくいので好ましい。
本発明の粒状洗剤組成物はまた、上記方法で得られたα−SF塩含有顆粒に、ビルダーと混合し、そこへノニオン性界面活性剤と色素を順次噴霧し、最後に酵素を加えることにより製造することもできる。
【実施例】
【0024】
〔原料〕
<α−SF塩含有ペーストの製造に用いた成分>
・ミリスチン酸メチル(ライオン(株)製、商品名:パステルM−14)
・パルミチン酸メチル(ライオン(株)製、商品名:パステルM−16)
・ステアリン酸メチル(ライオン(株)製、商品名:パステルM−180)
・メタノール(住友化学工業社製メタノール:工業グレード水分500ppm以下)
・35%過酸化水素(三菱ガス化学社製35%工業用過酸化水素:工業グレード)
・LAS−H:直鎖アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸(ライポンLH−200(ライオン(株)製)LAS−H(純分96%))。
・ノニオン性界面活性剤:ECOROL26(ECOGREEN社製炭素数12〜16のアルキル基をもつアルコール)の酸化エチレン平均15モル付加体(純分90%)。
・NaOH(ダイソー株式会社製苛性ソーダ:工業グレード)
【0025】
<α−SF塩含有顆粒の製造に用いた成分>
・炭酸ナトリウム:粒灰(旭硝子(株)製、平均粒子径320μm(篩(後述の〔篩による平均粒子径の測定方法〕参照)にて測定)、嵩密度1.07g/cm3
・硫酸ナトリウム:日本化学工業株式会社製、中性無水芒硝、平均粒子径300μm(篩(後述の〔篩による平均粒子径の測定方法〕参照)にて測定)、嵩密度1.53g/cm3
・A型ゼオライト:シルトンB(水澤化学(株)製、純分80%、平均粒子径4μm(レーザー回折・散乱粒子径測定装置にて測定)、嵩密度0.45g/cm3
・炭酸カリウム:炭酸カリウム(粉末)(旭硝子(株)製、平均粒子径490μm、嵩密度1.30g/cm3)を粉砕したもの(平均粒子径50μm、嵩密度0.77g/cm3
【0026】
<処方例のアニオン界面活性剤含有粒子及び粒状洗剤組成物の製造に用いた成分>
・炭酸ナトリウム:粒灰(旭硝子(株)製、平均粒子径320μm、嵩密度1.07g/cm3
・マレイン酸−アクリル酸コポリマー:アクリル酸/マレイン酸コポリマーNa塩、アクアリックTL−400(日本触媒(株)製)(純分40%水溶液)
・ラウリン酸:日本油脂(株)製、NAA−122、融点43℃
・A型ゼオライト:シルトンB(水澤化学(株)製、純分80%、嵩密度0.45g/cm3
・LAS−K(カリウム塩):直鎖アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸(ライポンLH−200(ライオン(株)製)LAS−H(純分96%)を噴霧乾燥用スラリー調製時に48%水酸化カリウム水溶液で中和する)。表4中の配合量は、LAS−Kとしての質量%を示す。
【0027】
・石鹸:炭素数12〜18の脂肪酸ナトリウム(ライオン(株)製、純分:67%、タイター:40〜45℃、脂肪酸組成:炭素数C12:11.7%、炭素数C14:0.4%、炭素数C16:29.2%、炭素数C18F0*(ステアリン酸):0.7%、C18F1*(オレイン酸):56.8%、炭素数18F2*(リノール酸):1.2%、分子量:289)。*F0、F1、F2とは脂肪酸中の二重結合の数である。
・ノニオン性界面活性剤:ECOROL26(ECOGREEN社製炭素数12〜16のアルキル基をもつアルコール)の酸化エチレン平均15モル付加体(純分90%)
・亜硫酸ナトリウム
・炭酸カリウム:炭酸カリウム(粉末)(旭硝子(株)製、平均粒子径490μm、嵩密度1.30g/cm3)を粉砕したもの(平均粒子径50μm、嵩密度0.77g/cm3
・硫酸ナトリウム:日本化学工業株式会社製、中性無水芒硝(嵩密度1.53g/cm3
・酵素:サビナーゼ12TW(ノボザイムズジャパン(株)製)/LIPEX100T(ノボザイムズジャパン(株)製)/ステインザイム12T(ノボザイムズジャパン(株)製)/セルクリーン4500T(ノボザイムズジャパン(株)製)=4/2/2/2(質量比)の混合物、平均粒子径700μm、嵩密度0.85g/cm3
・色素:群青(大日精化工業(株)製、Ultramarine Blue)
・香料:特開2002−146399号公報[表11]〜[表18]に示す香料組成物A
・蛍光剤:チノパールCBS−X(チバスペシャルティケミカルズ)/チノパールAMS−GX(チバスペシャルティケミカルズ)=3/1(質量比)の混合物
【0028】
製造例1.(a)α−SF塩含有ペーストAの製造
1.1 α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造
<原料>
脂肪酸アルキルエステルとして、α−SF塩含有ペーストAはミリスチン酸メチルとパルミチン酸メチルとを、質量比にして18/82の比率で混合、α−SF塩含有ペーストBとCはパルミチン酸メチル(ライオン(株)製、商品名:パステルM−16)とステアリン酸メチル(ライオン(株)製、商品名:パステルM−180)とを質量比80:20の比率に混合し、水添触媒(商品名SO−850(堺化学工業(株)製))を、脂肪酸メチルエステル混合物に対して0.1質量%添加し、170℃、1時間の条件で水添処理することにより、ヨウ素価はα−SF塩含有ペーストAは0.2にしたものを、α−SF塩含有ペーストBとCは0.03にしたものを用いた。なお、ヨウ素価は、脂肪酸アルキルエステル100グラムと反応するハロゲンの量を、ヨウ素のグラム数に換算した値であり、基準油脂分析法2.3.4.1−1996に従って測定した。
水添処理後、濾過により触媒を除去した。スルホン化ガスとして、乾燥空気(露点−55℃)を用いてSO2を触媒酸化して生成したSO3ガスを用いた。触媒としては五酸化バナジウム(モンサント社製)を用いた。着色抑制剤として、硫酸ナトリウム(四国化成社製;粒径40〜50μm)を使用した。
【0029】
<スルホン化>
流下型薄膜反応器を用いて、上記脂肪酸メチルエステルを上記SO3ガスで、反応モル比(SO3/飽和脂肪酸エステル)=1.18、反応温度80℃の条件にてスルホン化し、スルホン化生成物を得た。
<熟成>
得られたスルホン化生成物を熟成した。熟成は、平均滞留時間20分の二重管ジャケット付きのループ式熟成管を3基連続して繋げ、平均滞留時間を60分としたところにスルホン化生成物を導入し、78〜82℃(熟成管設定温度80℃)において、線速0.16m/sでスルホン化生成物を流し攪拌することにより行った。斯様にしてα−SF酸を得た。
<漂白>
得られたα−SF酸100質量部にメタノール20質量部を添加し、混合物を得た。この混合物と35%過酸化水素5.7質量部とを、混合ミキサーと熱交換器を備えた連続ループ式反応器に導入して漂白した(α−スルホ脂肪酸メチルエステル漂白処理物を得た)。
【0030】
1.2 α−SF塩含有ペーストの製造
次に、中和、濃縮後に得られるペーストの組成が表1記載のα−SF塩含有ペーストA組成と同様になるように48%NaOH水溶液と、ノニオン性界面活性剤と、水と、メタノールと、上記α−SF酸(α−スルホ脂肪酸メチルエステル漂白処理物)とを、ループ型連続中和装置に導入し、pHを7に調整してα−SF酸を中和し、α−SF塩含有組成物を得た。なお、ループ型連続中和装置として図1に示す装置を用いた。ループ型連続中和装置は、混合槽と、中和ミキサーと、リサイクルポンプと、抜き出しポンプと熱交換器から構成される。
上で得られたα−SF塩含有組成物を、図2に示した装置でリサイクルフラッシュ蒸発を行い、低級アルコールの除去及び濃縮化を行って濃縮したα−SF塩含有ペーストAを得た。なお、リサイクルフラッシュ蒸発装置は、加熱器(例えばプレート型熱交換器)、圧力コントロールバルブ(例えばKITZ社製グローブ弁(3/8B))フラッシュ缶(容量30L)、循環ポンプ(例えば大東工業HP-4TJV2B-38(5L/min))、凝縮器(例えばシェル&チューブ型熱交換器)から構成される。リサイクルフラッシュ蒸発の条件は以下のとおり:加熱器内の加熱管温度120〜130℃、加熱器内圧:0.2MPa以下加圧、循環圧0.6MPa以下で蒸発操作を行い、水分が10〜11質量%になるまで常圧でフラッシュ濃縮。
【0031】
製造例2.(a)α−SF塩含有ペーストBの製造
製造例1において、原料の脂肪酸メチルエステルを、パルミチン酸メチルとステアリン酸メチルとの80/20混合物(質量比)に変更し、熟成後のα−SF酸をLAS−Hと混合した(従って、得られたα−SF塩含有組成物にはLAS-Naも含まれる)こと以外は製造例1と同様にして濃縮したα−SF塩含有ペーストBを得た。
【0032】
製造例3.(a)α−SF塩含有ペーストCの製造
製造例1において、原料の脂肪酸メチルエステルを、パルミチン酸メチルとステアリン酸メチルとの80/20混合物(質量比)に変更し、水分が25〜26質量%になるまで常圧フラッシュ濃縮を行ったこと以外は製造例1と同様にして濃縮したα−SF塩含有ペーストCを得た。
製造例1〜3で得られたα−SF塩含有ペーストの組成を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
〔実施例1〕
工程1
(b)炭酸ナトリウム、(c)硫酸ナトリウム及びA型ゼオライトを攪拌造粒装置に投入した。攪拌造粒装置としては、鋤刃状ショベルを具備し、ショベル−壁面間のクリアランスが5mmのレーディゲミキサー((株)マツボー製、M20型)を用いた。投入量の合計は工程1と工程2で配合する粉体原料の見かけ体積が4Lになるようにした(充填率25体積%)。
次いで、主軸回転数を175rpmとし、チョッパーを停止したまま30秒間撹拌した(フルード数2.4)。その後、主軸回転数は175rpmのまま、チョッパー回転数を4000rpmとし、ジャケットに9〜11℃の冷水を7kg/minで流しながら、(a)α−SF塩含有ペーストB(70℃)を、約1.7kg/minの速度で添加し、ペースト投入終了後30秒間同条件で攪拌し、造粒物を得た。
工程2
α−SF塩含有ペーストの添加終了後、同じ運転条件で攪拌造粒装置を運転させながら(d)A型ゼオライトを投入した。A型ゼオライト投入終了後にさらに30秒間同条件で撹拌し、α−SF塩含有顆粒(35℃)を得た。
【0035】
〔実施例2〕
実施例1において、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及びA型ゼオライトに加えて炭酸カリウムを工程1で攪拌造粒装置に投入したこと、α−SF塩含有ペーストBに代えてα−SF塩含有ペーストA(70℃)を使用したこと、用いた各成分の量を表2に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にしてα−SF塩含有顆粒(37℃)を得た。
【0036】
〔実施例3〜4及び6〜7〕
実施例1において、用いた各成分の量を表2に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にしてα−SF塩含有顆粒(35〜36℃)を得た。
【0037】
〔実施例5〕
実施例1の工程1において、α−SF塩含有ペーストを添加した後にノニオン性界面活性剤(70℃)を添加したこと、及び用いた各成分の量を表2に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にしてα−SF塩含有顆粒(35〜37℃)を得た。
【0038】
〔比較例1〜5及び8〕
実施例1において、用いた各成分の量を表2に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にしてα−SF塩含有顆粒(35〜38℃)を得た。
【0039】
〔比較例6〕
実施例1において、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及びA型ゼオライトに加えて炭酸カリウムを工程1で攪拌造粒装置に投入したこと、α−SF塩含有ペーストBに代えてα−SF塩含有ペーストAを使用したこと、用いた各成分の量を表2に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にしてα−SF塩含有顆粒(40℃)を得た。
【0040】
〔比較例7〕
実施例1において、α−SF塩含有ペーストBに代えてα−SF塩含有ペーストC(70℃)を使用したこと、用いた各成分の量を表2に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にしてα−SF塩含有顆粒(35℃)を得た。
【0041】
〔評価方法〕
実施例及び比較例で得られたα−SF塩含有顆粒の水分、顆粒中α−SF塩質量%、平均粒子径、粒子凝集性、溶解性及び固化性(荷重による成形体の圧縮強度(変形に対する圧縮強度))を、以下に記載の方法で評価した。結果を表2に示す。
〔α−SF塩含有顆粒水分の測定方法〕
顆粒の水分含量はKett水分計(商品名、(株)ケツト科学研究所製;赤外線水分計)により測定した。測定条件は110℃、20分で行った。
〔α−SF塩濃度の測定方法〕
α−SF塩の標準品0.02,0.05,0.1gを200mLメスフラスコに正確に量りとり、メタノールを加えて超音波を用いて溶解させた。溶解後、約25℃まで冷却し、メタノールを標線まで正確に加え、これを標準液とした。
この標準液約2mLを、0.45μmのクロマトディスクを用いて濾過後、下記測定条件の高速液体クロマトグラフィーを行い、ピーク面積から検量線を作成した。
(高速液体クロマトグラフィー測定条件)
・装置(送液ポンプ):LC−6A(島津製作所製)
・カラム:Nucleosil AX(ジーエルサイエンス社製)
・カラム温度:40℃.
・検出器:示差屈折率検出器RID−6A(島津製作所製)
・移動相:0.75%過塩素酸ナトリウム、0.2%モノクロロ酢酸のメタノール溶液
・流量:1.0mL/min.
・注入量:100μL
次に、α−SF塩含有ペースト1.5gを200mLメスフラスコに正確に量りとり、水約50mLとメタノール約50mLを加えて超音波を用いて溶解させた。溶解後、約25℃まで冷却し、メタノールを標線まで正確に加え、これを試験溶液とした。
試験溶液約2mLを、0.45μmのクロマトディスクを用いて濾過後、上記と同じ測定条件の高速液体クロマトグラフィーで分析し、上記で作成した検量線を用いて、試料溶液中のα−SF塩濃度を求めた。
【0042】
〔篩による平均粒子径の測定方法〕
目開き1680μm、1410μm、1190μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、149μm、の9段の篩と受け皿を用いて分級操作を行なった。分級操作は、受け皿に目開きの小さな篩から目開きの大きな篩の順に積み重ね、最上部の1680μmの篩の上から100g/回のサンプルを入れ、蓋をしてロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、温度25℃、相対湿度40%の雰囲気条件化で、10分間振動させた後、それぞれの篩及び受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収する操作を行った。
この操作を繰すことによって、1410〜1680μm(1410μm.on)、1190〜1410μm(1190μm.on)、1000〜1190μm(1000μm.on)、1000〜710μm(710μm.on)500〜710μm(500μm.on)、350〜500μm(350μm.on)、250〜350μm(250μm.on)、149〜250μm(149μm.on)、皿〜149μm(149μm.pass)の各粒子径の分級サンプルを得、重量頻度(%)を算出した。
次に、算出した重量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きをaμmとし、またaμmよりも一段大きい篩の目開きをbμmとし、受け皿からaμmの篩までの重量頻度の積算をc%、またaμmの篩上の重量頻度をd%として、次式によって平均粒子径(重量50%)を求めた。

平均粒子径(重量50%径)=
10(50-(c-d/(log b-log a) × log b))/(d/(log b-log a))
【0043】
〔粒子凝集性評価方法〕
製造直後のα−SF塩含有顆粒を目開き1.7mmの篩にかけ、篩上に残った物の質量を測定した。篩にかける前のα−SF塩含有顆粒の質量に対する篩を通過したα−SF塩含有顆粒の質量から、篩上に残ったα−SF塩含有顆粒の割合を算出することにより、粒子凝集性を評価した。
評価基準
◎ :0%〜15%
○ :15%超え〜30%
△ :30%超え〜50%
× :50%超え〜100%
【0044】
〔溶解性評価方法〕
被洗布としてアクリルシャツ2枚、ナイロンスリップ2枚及び綿シャツ2枚を使用し、重量バランス布として肌シャツ5枚を使用して総重量を1.5kgとした。これらを三菱電機社製の二槽式洗濯機CW−225(W)型に投入した。被洗布3種類は上部から眺めたときすべての布が見えるようにした。実施例又は比較例のα−SF塩含有顆粒30g及び20℃の水道水30リットルを加え、浴比1:20で5分間洗濯した。
洗濯終了後、被洗布を1分間脱水した後、被洗布へのα−SF塩含有顆粒の付着量を、目視により下記評価基準で評価した。
評価基準
○ :付着物が全く又はほとんど認められない
△ :付着物がごく僅かに認められる
× :付着物が多く認められる
【0045】
〔固化性評価方法(荷重による成形体の圧縮強度評価方法)〕
35℃に加熱した直径5cm、高さ10cmの円筒の内部に、高さ5cmまで、35℃に加熱した実施例又は比較例のα−SF塩含有顆粒を入れた。円筒内に直径4.9cm、重さ3kgfの円柱を上から入れることで顆粒に荷重して3分間静置させ、円柱状の顆粒成形体を得た。得られた成形体を電子天秤の上に静置させ、水平の板を取り付けた加圧アームを3cm/分の速度で降下させ、成形体に荷重を徐々に加え、崩壊するまでにかかった最大荷重(kg)を測定した。
成形体が崩壊するまでにかかった最大荷重(kg)により、下記評価基準に基づいて評価した。
評価基準
○ :成形体が崩壊するまでにかかった最大荷重:3kg未満
△ :成形体が崩壊するまでにかかった最大荷重:3kg以上〜5kg未満
× :成形体が崩壊するまでにかかった最大荷重:5kg以上
【0046】
【表2−1】

【0047】
【表2−2】

【0048】
〔処方例〕
実施例1のα−SF塩含有顆粒から、表3に示す粒状洗剤組成物を下記方法により調製した。
【表3】

【0049】
表面被覆炭酸ナトリウムは以下のようにして製造した:
炭酸ナトリウムを、攪拌造粒装置(レーディゲミキサー((株)マツボー製、M20型))に投入し(充填率30容積%)、主軸回転数200rpm、チョッパーは停止したまま撹拌した。撹拌開始後10秒後にマレイン酸−アクリル酸コポリマーを30秒かけて添加し、炭酸ナトリウム表面を該コポリマーで被覆した。
同条件で撹拌しながらラウリン酸を30秒かけて添加し、コポリマーで被覆した上を更にラウリン酸で被覆した。
表面被覆炭酸ナトリウムの組成は、炭酸ナトリウム85質量%、マレイン酸−アクリル酸コポリマー3質量%、ラウリン酸7質量%、残部は水である。
【0050】
アニオン界面活性剤含有粒子は、以下のようにして製造した:
[噴霧乾燥粒子の調製]
表4の噴霧乾燥粒子組成に示す成分を、攪拌機、ジャケットを有する反応装置内に投入し、水に溶解分散させ(攪拌機のジャケット温度75℃)、固形分濃度約60質量%のスラリーを調製した。
ついで、このスラリーを、向流式乾燥塔を用いて以下の条件で噴霧乾燥し、噴霧乾燥粒子を得た。また噴霧乾燥塔の下部より噴霧乾燥粒子コート被覆剤としてA型ゼオライト(2)を、表4に示す配合割合となるように導入した。
・噴霧乾燥装置:向流式、塔径2.0m、有効長5.0m。
・微粒化方式:加圧ノズル方式。
・噴霧圧力:30kg/cm2
・熱風入口温度:300℃。
・熱風出口温度:100℃。
得られた噴霧乾燥粒子の平均粒子径は約300μm、嵩密度は0.3g/cm3、水分含有量は5質量%であった。なお、噴霧乾燥粒子の平均粒子径は、前述の〔篩による平均粒子径の測定方法〕で述べた方法で測定した。噴霧乾燥粒子中の水分含有量(質量%)は、Kett水分計(商品名、(株)ケツト科学研究所製;赤外線水分計)により測定した。測定条件は170℃、20分で行った。
【0051】
[ドウ状物の調製]
得られた噴霧乾燥粒子と、表4に示す捏和時配合成分を連続ニーダー(栗本鐵工所社製、KRC−S4型)に投入し、捏和して[条件:ニーダーの回転数135rpm、ジャケット温度:ジャケット入り口5℃、出口25℃(ジャケットに通水して冷却)]、ドウ状物を調製した。得られたドウ状物の温度は55±15℃であった。
[ドウ状物の造粒]
次いで、得られたドウ状物を、ペレッターダブル(不二パウダル(株)製、製品名:EXD−100型)に投入し、孔径約10mm、厚さ10mmのダイスから押し出すと同時に切断し、ペレット状成形体[直径約10mm、長さ70mm以下(実質的には5mm以上)]を得た[ペレッター(カッター)のカッター周速は5m/s]。
【0052】
[粉砕]
このペレット状成形体に、粉砕助剤としてのA型ゼオライト(3)を添加し、送風共存下で3段直列に配置されたフィッツミル(ホソカワミクロン(株)製、DKA−6型)を用いて粉砕して粉体を得た。粉砕条件は以下の通りとした。得られた粉体の温度は30±10℃であった。
・送風温度:15±3℃。
・送風量(気/固の比率):2.8±0.25m3/kg。
・スクリーン径:1段目6mm、2段目4mm、3段目2mm。
・粉砕機回転数:4700rpm(周速約60m/s)。
・処理速度:244kg/hr。
【0053】
【表4】

【0054】
〔処方例の調製方法〕
水平円筒転動ドラム(直径0.70m、長さ1.40m、傾斜角3°、厚さ1mm×高さ50mm×長さ350mmの邪魔板15枚付き)に、実施例1のα−SF塩含有顆粒、表面被覆炭酸ナトリウム、アニオン界面活性剤含有粒子およびA型ゼオライトを表3の割合に従い投入し、混合すると同時にノニオン性界面活性剤を噴霧した。ノニオン性界面活性剤は圧力円錐ノズルKシリーズ((株)いけうち製)を用い、噴霧圧力0.5〜1.5MPaでの噴霧した。その後色素(20質量%水溶液)、香料を噴霧した後、酵素を添加して処方例の粒状洗剤組成物を得た。なお、水分の測定は、Kett水分計(商品名、(株)ケツト科学研究所製;赤外線水分計)により測定した。測定条件は130℃、20分で行った。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例において用いることができるループ型連続中和装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例において用いることができるリサイクルフラッシュ蒸発装置の概略構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1及び2を含むことを特徴とするα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有顆粒の製造方法:
工程1:
(a)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩とノニオン性界面活性剤とを含有するペーストであって、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩をペーストの全質量に対して60質量%以上含有し、かつα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩/ノニオン性界面活性剤(質量比)=1/0.2〜1/0.4である前記ペーストを、工程2で得られる顆粒を基準にして15〜30質量%、
(b)炭酸ナトリウム、及び
(c)硫酸ナトリウム
を攪拌造粒して、
(b)炭酸ナトリウムと(c)硫酸ナトリウムの合計量が、工程2で得られる顆粒を基準にして50〜80質量%であり、かつ
(b)炭酸ナトリウム/(c)硫酸ナトリウム(質量比)=1/0.5〜1/0.1である造粒物を得る工程
工程2:
上記工程1で得られた造粒物1質量部に対して、(d)A型ゼオライト:0.01〜0.18質量部(水和物基準)を添加し、両者を混合する工程。
【請求項2】
得られる顆粒中の水分が、1.0〜3.0質量%である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記顆粒中のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の量が10〜18質量%である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記顆粒中のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の量が10〜16質量%である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記顆粒に含まれるノニオン性界面活性剤の量が2〜11質量%である請求項1〜4記載の製造方法。
【請求項6】
前記顆粒が、炭酸カリウムを含まない、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法により製造されたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有顆粒に、ノニオン性界面活性剤を噴霧することを含む粒状洗剤組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−155910(P2010−155910A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334537(P2008−334537)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】