説明

溶銑予備処理の制御方法および制御装置

【課題】多くの労力を要することなく溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を精度高く目標値に制御すること。
【解決手段】塩基度算出部31が、推定チャージの操業条件と操業実績データベース2に格納されている過去チャージの操業条件との間の距離を類似度として算出し、過去チャージの操業条件およびスラグ塩基度と算出された類似度とを用いて、溶銑予備処理におけるスラグ塩基度を算出するための回帰式を作成し、作成された回帰式を用いて推定チャージの操業条件で溶銑予備処理を行った場合のスラグ塩基度を算出する。そして、石灰投入量算出部32が、塩基度算出部31によって算出されたスラグ塩基度に基づいて推定チャージの溶銑予備処理を行う際に必要な石灰量を算出し、石灰投入量制御部33が、石灰投入量算出部32によって算出された石灰量に基づいて、溶銑に投入する石灰量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑予備処理の制御方法および制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、製鋼工程では、転炉精錬の負荷軽減および精錬に要する費用の削減を図るために、高炉から出銑された溶銑に含まれている珪素(Si)や燐(P)を転炉での主精錬前に除去する処理、いわゆる溶銑予備処理が行われている。具体的には、この溶銑予備処理では、酸化鉄などの固体酸素源を溶銑に投入して珪素を除去する脱珪処理を行い、脱珪処理で発生したスラグを除去した後、精錬剤および酸化剤を溶銑に投入して燐を除去する脱燐処理を行う。一般に、脱燐処理の精錬剤としては石灰が用いられ、酸化剤としては固体酸素源や気体酸素が用いられる。
【0003】
溶銑予備処理において溶銑中の燐濃度を低減するためには、脱燐処理の際に精錬剤である石灰を多量に投入することが望ましい。しかしながら、石灰を多量に投入した場合、処理費用が増加すると共に、スラグに溶融できず未溶解のまま残留した未滓化石灰が発生する。未滓化石灰は、スラグの冷却後、水和反応などによって膨張するために、スラグの利用に対する大きな妨げとなる。このため、従来の溶銑予備処理では、スラグ塩基度が1.5〜1.7の範囲内で脱燐処理が促進されることから、スラグ塩基度と溶銑温度とを入力変数とするモデル式を用いて石灰の最適な投入量を算出することによって、溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を目標値に制御するために必要な量だけ石灰を投入している(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−146335号公報
【特許文献2】特開2008−196026号公報
【特許文献3】特開2011−68925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の溶銑予備処理によれば、モデル式を用いて石灰の投入量を算出するために、以下に示すような問題が生じる。
【0006】
第1に、従来の溶銑予備処理によれば、モデル式を構築した際の操業条件とは異なる操業条件で溶銑予備処理を行う際、モデル式を構成するパラメータの値を新たな操業条件に合わせて調整しなければならず、多くの労力を要する。
【0007】
第2に、従来の溶銑予備処理によれば、モデル式の入力変数であるスラグ塩基度および溶銑温度以外に脱燐処理に影響を与える操業条件がある場合には、脱燐処理に必要な石灰の量を正確に算出することができず、結果として、溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を精度高く目標値に制御できなくなる。
【0008】
このため、多くの労力を要することなく溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を精度高く目標値に制御可能な技術の提供が期待されていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、多くの労力を要することなく溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を精度高く目標値に制御可能な溶銑予備処理の制御方法および制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る溶銑予備処理の制御方法は、溶銑予備処理を行うチャージの操業条件および溶銑予備処理が終了したチャージの操業条件をそれぞれ推定操業条件および過去操業条件として、該推定操業条件と該過去操業条件との類似度を過去操業条件毎に算出する類似度算出ステップと、前記過去操業条件、該過去操業条件で溶銑予備処理を行った際のスラグ塩基度、および前記類似度算出ステップにおいて算出された類似度を用いて、溶銑予備処理におけるスラグ塩基度を算出するための回帰式を作成する回帰式作成ステップと、前記回帰式作成ステップにおいて作成された回帰式を用いて、前記推定操業条件で溶銑予備処理を行った場合のスラグ塩基度を算出する塩基度算出ステップと、前記塩基度算出ステップにおいて算出されたスラグ塩基度に基づいて、前記推定操業条件で溶銑予備処理を行う際に必要な石灰量を算出する石灰量算出ステップと、前記石灰量算出ステップにおいて算出された石灰量に基づいて、溶銑予備処理において溶銑に投入する石灰量を制御する制御ステップと、を含む。
【0011】
本発明に係る溶銑予備処理の制御方法は、上記発明において、前記操業条件が、溶銑に供給する酸素の速度、溶銑に石灰を吹き込むランスの溶銑への浸漬深さ、および溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を算出する数式中の調整パラメータを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る溶銑予備処理の制御方法は、上記発明において、前記石灰量算出ステップが、前記塩基度算出ステップにおいて算出されたスラグ塩基度が所定の範囲内にあるか否かを判別するステップと、前記塩基度算出ステップにおいて算出されたスラグ塩基度が所定の範囲内にない場合、該スラグ塩基度が所定の範囲内になるように溶銑に供給する酸素の速度を変更するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る溶銑予備処理の制御装置は、溶銑予備処理が終了したチャージの操業条件およびスラグ塩基度に関する情報を格納する操業実績データベースと、溶銑予備処理を行うチャージの操業条件および操業実績データベースに格納されている操業条件をそれぞれ推定操業条件および過去操業条件として、推定操業条件と過去操業条件との類似度を過去操業条件毎に算出し、過去操業条件、過去操業条件で溶銑予備処理を行った際のスラグ塩基度、および類似度を用いて、溶銑予備処理におけるスラグ塩基度を算出するための回帰式を作成し、作成された回帰式を用いて推定操業条件で溶銑予備処理を行った場合のスラグ塩基度を算出する塩基度算出部と、前記塩基度算出部によって算出されたスラグ塩基度に基づいて、前記推定操業条件で溶銑予備処理を行う際に必要な石灰量を算出する石灰投入量算出部と、前記石灰投入量算出部によって算出された石灰量に基づいて、溶銑予備処理において溶銑に投入する石灰量を制御する石灰投入量制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る溶銑予備処理の制御方法および制御装置によれば、多くの労力を要することなく溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を精度高く目標値に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明が適用される溶銑予備処理を説明するための図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である溶銑予備処理の制御システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す操業実績データベースに格納される過去チャージデータの一例を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態である石灰投入量算出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である溶銑予備処理の制御システムの構成および動作について説明する。
【0017】
〔溶銑予備処理〕
始めに、図1を参照して、本発明が適用される溶銑予備処理について説明する。図1は、本発明が適用される溶銑予備処理を説明するための図である。
【0018】
図1に示すように、本発明が適用される溶銑予備処理では、インジェクションランス102を介して処理容器100内に保持した溶銑101の中に酸化剤としての気体酸素および/又は固体酸化剤(例えば焼結鉱、製鉄ダスト、ミルスケールなどの酸化鉄含有物質)並びに精錬剤としての石灰を連続的に供給することによって、溶銑101内の珪素を除去する脱珪処理と溶銑101内の燐を除去する脱燐処理とを行う。なお、高炉から出銑された直後の溶銑101は、珪素を0.1〜0.6質量%程度、燐を0.08〜0.18質量%程度含有している。このため、溶銑予備処理の開始当初は脱珪反応が優先的に進行し、その後、脱燐反応が支配的になる。また、脱珪反応によって二酸化珪素(SiO)分が多いスラグ103が生成される。このスラグ103は脱燐反応に悪影響を与えるので、脱珪反応の途中又は終了後に処理容器100から排出される。
【0019】
〔制御システムの構成〕
次に、図2,図3を参照して、本発明の一実施形態である溶銑予備処理の制御システムの構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態である溶銑予備処理の制御システムの構成を示すブロック図である。図3は、図2に示す操業実績データベースに格納される過去チャージデータの一例を示す模式図である。
【0020】
図2に示すように、本発明の一実施形態である溶銑予備処理の制御システム1は、操業実績データベース2と、石灰投入量制御装置3と、入力装置4と、出力装置5と、を備えている。操業実績データベース2は、過去のチャージに関する操業条件のデータとスラグ塩基度のデータとを過去チャージデータとして関連付けして格納している。より具体的には、図3に示すように、操業実績データベース2は、過去のチャージの操業条件およびスラグ塩基度をそれぞれ入力変数xおよび出力変数yとする過去チャージデータを格納している。
【0021】
なお、入力変数xの添え字iは、スラグ塩基度に影響を与える操業条件の数を表す変数であり、入力変数xおよび出力変数yの添え字kは過去のチャージの数を表す変数である。また、本明細書中において、チャージとは、溶銑予備処理を行うときの処理単位を意味し、図1に示す処理容器100一杯分の溶銑101に相当するものである。また、スラグ塩基度とは、SiO/CaOで定義されるスラグの状態を表す尺度のことを意味する。
【0022】
ここで、溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度は以下に示す数式(1)から算出することができる。また、数式(1)中の調整パラメータkPは以下に示す線形回帰式(2)で表すことができる。なお、線形回帰式(2)中の係数a0,a1,a2,a3は既知の値である。従って、数式(2)を整理することによって、溶銑予備処理後のスラグ塩基度は以下に示す数式(3)のように表すことができる。
【0023】
【数1】

【数2】

【数3】

【0024】
数式(3)によれば、溶銑に供給する酸素の速度(酸素供給速度)、溶銑101に石灰を吹き込むインジェクションランス102の溶銑への浸漬深さ(ランス浸漬深さ)、および数式(1)中の調整パラメータkPが溶銑予備処理後のスラグ塩基度を算出するための入力変数となる。そこで、本実施形態では、操業条件の数i=1〜3とし、入力変数xは酸素供給速度の実績値、入力変数xはインジェクションランス102の浸漬深さの実績値、入力変数xは調整パラメータkPの実績値を表すものとする。
【0025】
石灰投入量制御装置3は、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの情報処理装置によって構成されている。石灰投入量制御装置3は、情報処理装置内部のCPUなどの演算処理装置がコンピュータプログラムを実行することによって、塩基度算出部31、石灰投入量算出部32、および石灰投入量制御部33として機能する。これら各部の機能については後述する。入力装置4は、キーボードやマウスポインタなどの入力装置や情報通信装置によって構成され、各種情報を石灰投入量制御装置3に入力する。出力装置5は、印刷装置、表示装置、情報通信装置などによって構成され、石灰投入量制御装置3の処理結果を出力する。
【0026】
このような構成を有する制御システム1は、以下に示す石灰投入量算出処理を実行することによって、溶銑予備処理後の溶銑101中の燐濃度を目標値に制御する。以下、図4に示すフローチャートを参照して、この石灰投入量算出処理を実行する際の制御システム1の動作について説明する。
【0027】
〔石灰投入量算出処理〕
図4は、本発明の一実施形態である石灰投入量算出処理の流れを示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、入力装置4を介して石灰投入量算出処理の実行命令が入力されたタイミングで開始となり、石灰投入量算出処理はステップS1の処理に進む。
【0028】
ステップS1の処理では、塩基度算出部31が、操業実績データベース2内に格納されている過去チャージデータを読み出し、以下に示す数式(4)を用いて過去チャージデータの操業条件の値xを正規化する。なお、数式(4)中のパラメータxi,avは操業条件xの平均値を表し、パラメータσは操業条件xの標準偏差を表している。同様に、塩基度算出部31は、石灰投入量の算出対象であるチャージ(以下、推定チャージと表記)の操業条件の値xを正規化する。これにより、ステップS1の処理は完了し、石灰投入量算出処理はステップS2の処理に進む。
【0029】
【数4】

【0030】
ステップS2の処理では、塩基度算出部31が、以下に示す数式(5)を用いてステップS1の処理によって算出された推定チャージの操業条件xの正規化値xi,sと過去チャージの操業条件xの正規化値xi,sとの間の距離dをk個の過去チャージデータ毎に算出する。なお、数式(5)においては、操業条件の数i=1〜3としている。これにより、ステップS2の処理は完了し、石灰投入量算出処理はステップS3の処理に進む。
【0031】
【数5】

【0032】
ステップS3の処理では、塩基度算出部31が、以下に示す数式(6)を用いてステップS2の処理によって算出された各過去チャージデータの距離dに基づいて各過去チャージデータの重みwを算出する。なお、数式(6)中のパラメータpは調整用のパラメータを表し、パラメータσαは距離dの標準偏差を表している。これにより、ステップS3の処理は完了し、石灰投入量算出処理はステップS4の処理に進む。
【0033】
【数6】

【0034】
ステップS4の処理では、塩基度算出部31が、以下に示す数式(7)を用いて推定チャージのスラグ塩基度yを推定する。具体的には、過去チャージデータの出力変数yを以下に示す数式(8)のようにベクトル表記し、過去チャージデータの入力変数xを以下に示す数式(9)のような行列で表現し、スラグ塩基度yの算出式の係数bを以下に示す数式(10)のようにベクトル表記し、過去チャージデータの重みwを以下に示す数式(11)のような行列で表現すると、スラグ塩基度の算出式の係数ベクトルは以下に示す数式(12)のように表される。従って、推定チャージのスラグ塩基度yを推定する際、塩基度算出部31は、数式(12)を利用してスラグ塩基度yの算出式の係数bを算出し、算出された係数bと溶銑予備処理を行うチャージの操業条件xとを数式(7)に代入することにより、推定チャージのスラグ塩基度yを算出する。これにより、ステップS4の処理は完了し、石灰投入量算出処理はステップS5の処理に進む。
【0035】
【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【0036】
ステップS5の処理では、石灰投入量算出部32が、ステップS4の処理によって算出されたスラグ塩基度yが所定の範囲内(例えば1.5〜1.7)にあるか否かを判別する。判別の結果、スラグ塩基度yが所定の範囲内にない場合、石灰投入量算出部32は、石灰投入量算出処理をステップS6の処理に進める。一方、スラグ塩基度yが所定の範囲内にある場合には、石灰投入量算出部32は、石灰投入量算出処理をステップS7の処理に進める。
【0037】
ステップS6の処理では、石灰投入量算出部32が、スラグ塩基度yが所定の範囲内に入るように推定チャージの操業条件の1つである酸素供給速度xの値を変更した後、石灰投入量算出処理をステップS4の処理に戻す。
【0038】
ステップS7の処理では、石灰投入量算出部32が、以下に示す数式(13)を用いて推定チャージの石灰投入量を算出する。なお、数式(13)中のパラメータα1〜α2、β1〜β3、および酸化鉄供給量は予め与えられた値であり、塩基度はステップS4の処理によって算出されたスラグ塩基度である。これにより、ステップS7の処理は完了し、一連の石灰投入量算出処理は終了する。以後、石灰投入量制御部33が、出力装置5を介して石灰投入量算出部32よって算出された石灰投入量を図示しないプロセスコンピュータに出力することによって、溶銑101に投入される石灰量を制御し、溶銑予備処理後の溶銑101中の燐濃度を目標値に制御する。
【0039】
【数13】

【0040】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である溶銑予備処理の制御システム1によれば、塩基度算出部31が、推定チャージの操業条件と操業実績データベース2に格納されている過去チャージの操業条件との間の距離を類似度として算出し、過去チャージの操業条件およびスラグ塩基度と算出された類似度とを用いて、溶銑予備処理におけるスラグ塩基度を算出するための回帰式を作成し、作成された回帰式を用いて推定チャージの操業条件で溶銑予備処理を行った場合のスラグ塩基度を算出する。そして、石灰投入量算出部32が、塩基度算出部31によって算出されたスラグ塩基度に基づいて推定チャージの溶銑予備処理を行う際に必要な石灰量を算出し、石灰投入量制御部33が、石灰投入量算出部32によって算出された石灰量に基づいて、溶銑に投入する石灰量を制御する。
【0041】
すなわち、本発明の一実施形態である溶銑予備処理の制御システム1は、推定チャージの操業条件と過去チャージの操業条件との類似度に基づいてスラグ塩基度を算出するための回帰式を作成し、作成された回帰式を用いて石灰の投入量を制御する。そして、このような構成によれば、推定チャージの操業条件に合わせた回帰式が推定チャージ毎に作成されるので、所定のモデル式を利用した従来までの溶銑予備処理と比較して、多くの労力を要することなく溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を精度高く目標値に制御することができる。また、従来の溶銑予備処理と比較して石灰量をより最適な値に制御できるので、石灰量を削減して溶銑温度の降下を抑制することによって、銑配低減に寄与することができる。
【0042】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例、および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 制御システム
2 操業実績データベース
3 石灰投入量制御装置
4 入力装置
5 出力装置
31 塩基度算出部
32 石灰投入量算出部
33 石灰投入量制御部
100 処理容器
101 溶銑
102 インジェクションランス
103 スラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶銑予備処理を行うチャージの操業条件および溶銑予備処理が終了したチャージの操業条件をそれぞれ推定操業条件および過去操業条件として、該推定操業条件と該過去操業条件との類似度を過去操業条件毎に算出する類似度算出ステップと、
前記過去操業条件、該過去操業条件で溶銑予備処理を行った際のスラグ塩基度、および前記類似度算出ステップにおいて算出された類似度を用いて、溶銑予備処理におけるスラグ塩基度を算出するための回帰式を作成する回帰式作成ステップと、
前記回帰式作成ステップにおいて作成された回帰式を用いて、前記推定操業条件で溶銑予備処理を行った場合のスラグ塩基度を算出する塩基度算出ステップと、
前記塩基度算出ステップにおいて算出されたスラグ塩基度に基づいて、前記推定操業条件で溶銑予備処理を行う際に必要な石灰量を算出する石灰量算出ステップと、
前記石灰量算出ステップにおいて算出された石灰量に基づいて、溶銑予備処理において溶銑に投入する石灰量を制御する制御ステップと、
を含むことを特徴とする溶銑予備処理の制御方法。
【請求項2】
前記操業条件は、溶銑に供給する酸素の速度、溶銑に石灰を吹き込むランスの溶銑への浸漬深さ、および溶銑予備処理後の溶銑中の燐濃度を算出する数式中の調整パラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載の溶銑予備処理の制御方法。
【請求項3】
前記石灰量算出ステップは、
前記塩基度算出ステップにおいて算出されたスラグ塩基度が所定の範囲内にあるか否かを判別するステップと、
前記塩基度算出ステップにおいて算出されたスラグ塩基度が所定の範囲内にない場合、該スラグ塩基度が所定の範囲内になるように溶銑に供給する酸素の速度を変更するステップと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の溶銑予備処理の制御方法。
【請求項4】
溶銑予備処理が終了したチャージの操業条件およびスラグ塩基度に関する情報を格納する操業実績データベースと、
溶銑予備処理を行うチャージの操業条件および前記操業実績データベースに格納されている操業条件をそれぞれ推定操業条件および過去操業条件として、推定操業条件と過去操業条件との類似度を過去操業条件毎に算出し、過去操業条件、過去操業条件で溶銑予備処理を行った際のスラグ塩基度、および類似度を用いて、溶銑予備処理におけるスラグ塩基度を算出するための回帰式を作成し、作成された回帰式を用いて推定操業条件で溶銑予備処理を行った場合のスラグ塩基度を算出する塩基度算出部と、
前記塩基度算出部によって算出されたスラグ塩基度に基づいて、前記推定操業条件で溶銑予備処理を行う際に必要な石灰量を算出する石灰投入量算出部と、
前記石灰投入量算出部によって算出された石灰量に基づいて、溶銑予備処理において溶銑に投入する石灰量を制御する石灰投入量制御部と、
を備えることを特徴とする溶銑予備処理の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72095(P2013−72095A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210060(P2011−210060)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】