説明

滑り止めシート

【課題】 本発明は、ボルト等で締結した部材間のすべり係数を0.45以上とすることができる滑り止めシートを提供することを目的とする。また、部材に間違って貼着した場合であっても容易に滑り止めシートを正確な位置に貼着することが可能な滑り止めシートを提供することを目的とする。
【解決手段】 滑り止めシート1は、再剥離性貼着層2に硬化微粒子3が付着してなるものであり、前記再剥離性貼着層2が、ウレタン樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体とを含有することが好ましく、前記硬化微粒子3が、ダイヤモンド粒子であることが更に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製等の部材間に貼着して部材間のすべり係数を向上させるための滑り止めシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木建築分野において構築用材料同士をボルト等の締結手段で締結する場合には、構築用材料の摩擦面に次のような加工を施してすべり係数を確保していた。(1)グリッドブラスト加工、ショットブラスト加工等を構築用材料の摩擦面に施し表面を粗くしていた。(2)グラインダー等などにより構築用材料を磨耗させ、その後長時間放置して赤錆を発生させていた。(3)構築用材料表面に無機ジンクリッチ塗料を塗布していた。(4)構築用材料間に滑り止めシートを貼着していた。
【0003】
しかし、上記(1)及び(2)の従来の摩擦接合では、グリッドブラスト加工等や赤錆による加工表面のすべり係数に基づいているため摩擦係数が安定せず、土木建築分野における基準であるすべり係数が0.45以上を安定的に達成することができなかった。また、(3)の従来の方法では、無機ジンクリッチ塗料を塗布した後、乾燥させる必要があり生産性が悪いという問題を有していた。
【0004】
また、(4)の滑り止めシートを用いる方法については、基材の片面または両面に硬質の硬粒体群を形成した滑り止めシートを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この滑り止めシートを用いた方法は、構築用材料の対向する接合面に滑り止めシートを介挿した後、ボルト等の締結手段で締め付けて両構築用材料を締結して構築用材料摺動方向の摩擦抵抗力を増強するものであった。しかし、該滑り止めシートは、樹脂フィルムや紙等の基材表面に金属片等の硬粒体群を形成しているため、構築用材料相互を締結する際に硬粒体群が基材を付き破りにくく、硬粒体群が構築用材料に食い込みにくいために十分なすべり係数を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−88664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ボルト等で締結した部材間のすべり係数を0.45以上とすることができる滑り止めシートを提供することを目的とする。また、部材に間違って貼着した場合であっても容易に滑り止めシートを正確な位置に貼着することが可能な滑り止めシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の従来技術における課題を解決するために、本発明の滑り止めシートは、再剥離性貼着層に硬化微粒子が付着してなることを特徴とする。
また、前記再剥離性貼着層が、ウレタン樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体とを含有することが好ましい。
また、前記硬化微粒子が、ダイヤモンド粒子であることが好ましい。
また、前記再剥離性貼着層の厚さが5〜20μmで、硬化微粒子の平均粒子径が50〜200μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の滑り止めシートは、柔軟性を有する再剥離性貼着層に硬化微粒子が付着してなるため、金属製等の部材間を締結する際の圧力によって、硬化微粒子が再剥離性貼着層を容易に突き破り、個々の硬化微粒子の一部が再剥離性貼着層の両表面に突出する。そのため、個々の硬化微粒子が部材表面に食い込み摩擦力を増強させるため、部材間のすべり係数を0.45以上とすることができる。また、本発明の滑り止めシートは、再剥離性貼着層を有するため、滑り止めシートを部材に貼着する際に、間違って貼着した場合であっても容易に滑り止めシートを剥離する事が可能で、再度正確な位置に滑り止めシートを貼着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の滑り止めシートの断面概略図である。
【図2】図2は、本発明の滑り止めシートを使用して金属製等の部材間を締結する説明図である。
【図3】図3は、金属製等の部材間を締結された際の滑り止めシートの状態を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の滑り止めシートの断面概略図である。本発明の滑り止めシート1は、再剥離性貼着層2に複数の硬化微粒子3が付着し自立性を有する2層構成のものである。再剥離性貼着層2は、柔軟性を有し表面が室温で非粘着または微粘着である。本発明の滑り止めシートは、このような構成の再剥離性貼着層を有するため、滑り止めシートを部材に貼着する際に、間違って貼着した場合であっても容易に滑り止めシートを剥離することが可能で、再度正確な位置に滑り止めシートを貼着することができる。
【0011】
また、硬化微粒子3の平均粒子径が再剥離性貼着層2の厚さより大きいために、再剥離性貼着層2に付着される硬化微粒子3が1粒子の層として形成される。そのため、部材に滑り止めシートを貼着した後の締結時に個々の硬化微粒子3に部材からの圧力が伝わりやすくなり個々の硬化微粒子3が均一に部材に食い込まれる。よって、部材間の摩擦力を増強させるため、部材間のすべり係数を向上させることができる。また、1粒子層の硬化微粒子3における個々の粒子が滑り止めシートを挟持した両面の部材間に食い込まれて部材どうしを連結させるため、摩擦力を増強させ、部材間のすべり係数を向上させることができる。
【0012】
再剥離性貼着層としては、例えば、アクリル系重合体、アクリル系共重合体、天然ゴム、ウレタン樹脂、シリコーン系樹脂等を挙げることができる。この中でも特に、ウレタン樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体とから構成されたものが柔軟性と再剥離性とをかねそなえ薄膜なシートを得ることができるので好ましい。再剥離性貼着層の厚さは3〜100μmが好ましく、特に5〜20μmが好ましい。この厚さの再剥離性貼着層であれば、硬化微粒子3が再剥離性貼着層2から剥離することがなく良好に保持されるとともに、後述するように圧力が加わった硬化微粒子3が再剥離性貼着層2を突き破ることが可能となる。
【0013】
硬化微粒子3としては、例えばダイヤモンド粒子、セラミック粒子、金属酸化物粒子等を挙げることができる。この中でも特に、金属製等の部材表面に食い込みやすいためダイヤモンド粒子が好ましい。硬化微粒子3の平均粒子径は、10〜500μmが好ましく、特に50〜200μmが好ましい。この平均粒子径の硬化微粒子であれば、個々の硬化微粒子が部材表面に食い込み摩擦力を増強させるため、部材間のすべり係数を0.45以上とすることができる。
【0014】
本発明の滑り止めシートは、次のようにして製造することができる。
本発明の滑り止めシートは、可撓性基材上に、再剥離性貼着層を構成する樹脂等と硬化微粒子とを含む滑り止め塗料を塗工し、乾燥することにより得られる。滑り止め塗料は、樹脂等と硬化微粒子とを、有機溶剤中に分散して得られる。有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等を使用することができる。
【0015】
滑り止め塗料中に分散される硬化微粒子の樹脂に対する割合は、0.1〜2000質量%であり、より好ましくは1〜500質量%である。0.1質量%未満ではすべり係数向上の効果が低く、2000質量%を超えると硬化微粒子が再剥離性貼着層からの脱離が起こりやすくなる。
【0016】
可撓性基材上に滑り止め塗料を塗工する方法としては、エアードクターコート、ブレードコート、エアーナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、スプレーコート、バーコート、スピンコート等がある。
【0017】
上記の可撓性基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース等の材料が使用できる。可撓性基材は、滑り止めシートを金属製等の部材に貼着する際に剥離する。
【0018】
次に本発明の滑り止めシートを使用して金属製等の部材間を締結する実施態様を説明する。図2は、本発明の滑り止めシートを使用して金属製等の部材間を締結する説明図である。図2において、本発明の滑り止めシート1は、正方形の形状を有し、その中央部にボルト11を貫通させる貫通孔12を有している。滑り止めシート1は、再剥離性貼着層を下にしてボルト11を貫通させる貫通孔を有する下部部材13に貼着する。この際に本発明の滑り止めシート1は、剥離性を有するため、下部部材13の正確な位置に貼着するために複数回貼着と剥離を繰り返すことができる。下部部材13に貼着された滑り止めシートの硬化微粒子の突起面上からボルト11を貫通させる貫通孔を有する上部部材14を貼着する。その後、ワッシャ15、上部部材14、滑り止めシート1、下部部材13及びワッシャ16の貫通孔にボルト11を矢印方向に通してナット17により螺着し上部部材14と下部部材13とを締結する。
【0019】
図2の実施態様では、滑り止めシート1の形状を正方形としているが、形状、及びサイズは特に限定されない。また、上部部材14及び下部部材13としては、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属製のものを挙げることができるが、木材、プラスチック製のものなど特に限定されるものではない。
【0020】
図2のように、滑り止めシート1は、ボルト11とナット17により螺着することによって上部部材14と下部部材13から圧力が加えられる。そのため、図3に示したように、個々の硬化微粒子3が再剥離性貼着層2を貫通して再剥離性貼着層2の両面に硬化微粒子3の突起が形成される。該突起状の硬化微粒子3が、上部部材14及び下部部材13の表面に食い込むよって摩擦力を増強させ、部材間のすべり係数を0.45以上とすることができる。
【0021】
本発明の滑り止めシートは、土木建築分野において構築用材料同士をボルト等の締結手段で締結する際の滑り止め用途として使用することができるがこれに限るものではない。これ以外の用途、例えば工業用機械における部材どうしの摩擦力を増強させる用途にも使用することが可能である。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を用いて本発明を説明する。
[実施例1]
下記配合物をサンドミルを使用して混合、分散し、滑り止め塗料を調製した。
得られた滑り止め塗料を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートからなる可撓性基材上に、再剥離性貼着層の乾燥後の厚さが10μmとなるように塗工、乾燥して硬化微粒子が付着した再剥離性貼着層を形成し、実施例1の滑り止めシートを作製した。
可撓性基材から滑り止めシートを剥離した後、該滑り止めシートとアルミニウムからなる部材を用いて高力ボルトすべり係数試験をおこなったところすべり係数は0.50であった。
[滑り止め塗料]
ウレタン樹脂 50質量部
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂 50質量部
ダイヤモンド粒子(平均粒子径100μm) 200質量部
酢酸エチル 300質量部
【0023】
[実施例2]
ダイヤモンド粒子を100質量部となるように変更した他は、分散条件を含めて実施例1と同様にして、実施例2の滑り止めシートを作製した。
可撓性基材から滑り止めシートを剥離した後、該滑り止めシートとアルミニウムからなる部材を用いて高力ボルトすべり係数試験をおこなったところすべり係数は0.49であった。
【符号の説明】
【0024】
1 滑り止めシート
2 再剥離性貼着層
3 硬化微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再剥離性貼着層に硬化微粒子が付着してなることを特徴とする滑り止めシート。
【請求項2】
前記再剥離性貼着層が、ウレタン樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体とを含有することを特徴とする請求項1に記載の滑り止めシート。
【請求項3】
前記硬化微粒子が、ダイヤモンド粒子であることを特徴とする請求項1に記載の滑り止めシート。
【請求項4】
前記再剥離性貼着層の厚さが5〜20μmで、硬化微粒子の平均粒子径が50〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載の滑り止めシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−132530(P2012−132530A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286272(P2010−286272)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】