説明

滑り軸受

【課題】給油設備及び排油処理設備との接続を容易に実施して、施工の工期及びコストを低減できること。
【解決手段】回転軸1を下方から覆うと共に、この回転軸を摺動自在に支持する下側摺動面13を備えた下半軸受部11と、回転軸を上方から覆うと共に、この回転軸を摺動自在に支持する上側摺動面14を備え、下半軸受部に接合される上半軸受部12とを有し、回転軸の外周面2と下側摺動面13及び上側摺動面14との隙間に潤滑油を供給する給油通路17が下半軸受部に形成され、前記隙間から潤滑油を排出する排油通路18が下半軸受部に形成された滑り軸受10において、給油通路17の下流部分と排油通路18の上流部分とが回転軸を挟んで互いに反対位置に設けられ、給油通路17の上流部分が排油通路18の上流部分側へ延び、排油通路18の下流部分が給油通路17の下流部分側へ延びて構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンなどの回転機械の回転軸を、潤滑油の油膜圧力によって支持する滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンや発電機などの回転機械には、回転軸の荷重を支持するため、図9及び10に示すような滑り軸受100が用いられている。この滑り軸受100は、下半軸受部101と上半軸受部102を有して構成され、両者は下半軸受部101の上端面103と上半軸受部102の下端面104にて接合または分割可能な構造になっている。
【0003】
下半軸受部101の上端面103には、給油溝105と排油溝107が形成されている。回転機械の運転時に、潤滑油は、給油孔106を経て給油溝105に供給され、この給油溝105にて軸方向に広がった後、回転軸110と下半軸受部101の内周面109との隙間に流入する。この隙間に流入した潤滑油に油膜圧力が発生し、この油膜圧力によって回転軸110の荷重が支持される。
【0004】
回転軸110の回転に伴って上半軸受部102の内周面111に流入した潤滑油は、一部が排油溝107と排油孔108を経て、滑り軸受100の外部に排出される。上半軸受部102の内周面111には、軸方向の一部にオーバーショット溝112が形成される。このオーバーショット溝112は、回転軸110と上半軸受部102の内周面111との隙間を意図的に広くして、潤滑油の粘性に起因する摩擦損失を低減するものである。
【0005】
近年、図11及び図12に示すように、滑り軸受100に対して、給油孔106と排油孔108の位置を逆にし、給油溝105と排油溝107の位置を逆にして給油と排油の方向を逆転させ、更に、オーバーショット溝112の前後に残された上半軸受部102の内周面111に、堰113及び114を形成した滑り軸受115が提案されている。(特許文献1参照)。
【0006】
堰113及び114では、回転軸110との隙間が0.1〜1mm程度であり、オーバーショット溝112の深さと比較して狭くなっている。このため、堰113及び114の表面に流体抵抗が発生し、排油溝107や給油溝105からオーバーショット溝112へ流入する潤滑油の量が、堰113及び114を設けない滑り軸受100に比較して減少する。
【0007】
このように給油と排油の方向を逆転させ、且つ堰113及び114を設けることによって、回転軸110の回転に伴うオーバーショット溝112への潤滑油の流入量を減少させることができる。このため、オーバーショット溝112内で潤滑油が溜まることを防止できるので、潤滑油の粘性により発生する摩擦損失の低減を確実化できる。
【0008】
更に、滑り軸受115では、給油溝105側の堰114の回転上流側の位置に、オーバーショット溝112と滑り軸受115の外部とを連通させる排出口116が設けられることがある。このような場合には、オーバーショット溝112を通過して高温となった潤滑油の一部が、給油溝105側の堰114によりその流れが堰止められて、排出口116から滑り軸受115の外部に排出される。その結果、下半軸受部101の内周面109側に流入する潤滑油の温度を低く保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭58−177621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図9及び図10に示す滑り軸受100は、従来、汽力発電プラント向け蒸気タービン発電機に広く用いられてきたが、近年の蒸気タービンの性能向上・出力増大に伴って重量の大きい回転軸110が採用されることがある。この場合には、滑り軸受100へ供給される潤滑油の必要給油量が増大する傾向にある。
【0011】
一方、図11及び図12に示す滑り軸受115は、オーバーショット溝112への潤滑油の流入量を制御でき、下半軸受部101の内周面109側へ潤滑油を積極的に供給できる。このため、この滑り軸受115が大型化しても、滑り軸受100と比較して潤滑油の必要給油量を低減させることができる。
【0012】
このため、既設プラントでの性能向上を目的としたタービン取替等において、滑り軸受100を滑り軸受115へと変更することは、給油ポンプなどの既設の給油設備を殆ど改造せずに流用できるという点において、コスト上また工期上のメリットが大きい。
【0013】
しかしながら、滑り軸受100と滑り軸受115とは、給油孔106と排油孔108が互いに逆位置になるため、既設プラントの軸受交換においては、各孔106、108に接続される配管の引き回しが煩雑且つ困難になるという課題がある。
【0014】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、給油設備及び排油処理設備との接続を容易に実施して、施工の工期及びコストを低減できる滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、回転軸を下方から覆うと共に、この回転軸を摺動自在に支持する下側摺動面を備えた下半軸受部と、回転軸を上方から覆うと共に、この回転軸を摺動自在に支持する上側摺動面を備え、前記下半軸受部に接合される上半軸受部とを有し、前記回転軸の外周面と前記下側摺動面及び前記上側摺動面との隙間に潤滑油を供給する給油通路が前記下半軸受部に形成され、前記隙間から潤滑油を排出する排油通路が前記下半軸受部に形成された滑り軸受において、前記給油通路の下流部分と前記排油通路の上流部分とが前記回転軸を挟んで互いに反対位置に設けられ、前記給油通路の上流部分が前記排油通路の上流部分側へ延び、前記排油通路の下流部分が前記給油通路の下流部分側へ延びて構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下半軸受部における給油通路の下流部分と下半軸受部における排油通路の上流部分とが回転軸を挟んで互いに反対位置に設けられ、給油通路の上流部分が排油通路の上流部分側へ延び、排油通路の下流部分が給油通路の下流部分側へ延びて構成されている。従って、滑り軸受の外部領域であって、給油通路の下流部分側の領域に排油処理設備が設置され、排油通路の上流部分側の領域に給油設備が設置された場合においても、給油設備を上記給油通路の上流部分に、排油処理設備を上記排油通路の下流部分に共に容易に接続できる。この結果、滑り軸受と給油設備及び排油処理設備との接続を容易に実施して、施工の工期及びコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る滑り軸受の第1実施形態を示す断面図。
【図2】(A)、(B)は、図1のIIA−IIA線、IIB−IIB線にそれぞれ沿う断面図。
【図3】本発明に係る滑り軸受の第2実施形態を示す断面図。
【図4】(A)、(B)は、図3のIVA−IVA線、IVB−IVB線にそれぞれ沿う断面図。
【図5】本発明に係る滑り軸受の第3実施形態を示し、(A)は断面図、(B)は図5(A)のカバーを省略して示すVB矢視図。
【図6】(A)、(B)は、図5(A)のVIA−VIA線、VIB−VIB線にそれぞれ沿う断面図。
【図7】本発明に係る滑り軸受の第4実施形態を示す断面図。
【図8】(A)、(B)は、図7のVIIIA−VIIIA線、VIIIB−VIIIB線にそれぞれ沿う断面図。
【図9】従来の滑り軸受を示す断面図。
【図10】(A)、(B)は、図9のXA−XA線、XB−XB線にそれぞれ沿う断面図。
【図11】従来の他の滑り軸受を示す断面図。
【図12】(A)、(B)は、図11のXIIA−XIIA線、XIIB−XIIB線にそれぞれ沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[A]第1実施形態(図1、図2)
図1は、本発明に係る滑り軸受の第1実施形態を示す断面図である。図1及び図2に示す滑り軸受10は、蒸気タービンや発電機などの回転機械における回転軸1の荷重を支持するものであり、下半軸受部11及び上半軸受部12を有して構成される。下半軸受部11は、回転軸1を下方から覆うと共に、この回転軸1を摺動自在に支持する下側摺動面13を備える。上半軸受部12は、回転軸1を上方から覆うと共に、この回転軸1を摺動自在に支持する上側摺動面14を備え、下半軸受部11に接合される。互いに接合される下半軸受部11の上端面15と上半軸受部12の下端面16は、接合面または分割面となる。
【0020】
下半軸受部11には、回転軸1の外周面2と下半軸受部11の下側摺動面13及び上半軸受部12の上側摺動面14との隙間に潤滑油を供給する給油通路17と、前記隙間から潤滑油を排出する排油通路18とが形成されている。回転軸1の外周面2と下側摺動面13及び上側摺動面14(特に下側摺動面13)との隙間に流入した潤滑油に生ずる油膜圧力によって、回転軸1の荷重が支持される。
【0021】
給油通路17は、互いに連通する給油溝19及び給油孔20を有してなり、この給油孔20が、給油溝19に連通する給油孔下流部分20Bと、この給油孔下流部分20Bに連続する給油孔上流部分20Aからなる。給油孔上流部分20Aが給油通路17の上流部分として機能し、給油孔下流部分20B及び給油溝19が給油通路17の下流部分として機能する。
【0022】
排油通路18は、互いに連通する排油溝21及び排油孔22を有してなり、この排油孔22が、排油溝21に連通する排油孔上流部分22Aと、この排油孔上流部分22Aに連続する排油孔下流部分22Bからなる。排油溝21及び排油孔上流部分22Aが排油通路18の上流部分として機能し、排油孔下流部分22Bが排油通路18の下流部分として機能する。
【0023】
給油溝19及び給油孔下流部分20B(給油通路17の下流部分)と排油溝21及び排油孔上流部分22A(排油通路18の上流部分)は、下半軸受部11において、回転軸1を挟んで互いに反対位置に設けられる。このうち、給油溝19は、下半軸受部11の上端面15における図1の左側端面に、回転軸1の軸方向に延びて形成される。また、排油溝21は、下半軸受部11の上端面15における図1の右側端面に、回転軸1の軸方向に延びて形成される。
【0024】
従って、給油溝19と排油溝21は、回転軸1を挟んで互いに反対位置に設けられることになる。そして、滑り軸受10の外部領域にあっては、排油溝21側に給油設備23が、給油溝19側に排油処理設備24がそれぞれ設置されている。
【0025】
前記給油孔上流部分20A(給油通路17の上流部分)は、給油孔下流部分20Bに対して排油溝21側(排油通路18の上流部分側)へ延び、その先端の給油入口25が、接続配管26を経て給油設備23に接続される。また、前記排油孔下流部分22B(排油通路18の下流部分)は、排油孔上流部分22Aに対し給油溝19側(給油通路17の下流部分側)へ延び、その先端の排油出口27が接続配管28を経て排油処理設備24に接続される。
【0026】
上述のように、給油孔上流部分20Aとを排油孔下流部分22Bは、下半軸受部11の内部において交差して形成される。このとき、これらの給油孔上流部分20Aと排油孔下流部分22Bとが干渉して連通しないように、図2(A)及び(B)に示すように、給油孔上流部分20Aと排油孔下流部分22Bは下半軸受部11の軸方向にずらした位置に形成される。これに対応して、給油孔下流部分20Bと排油孔上流部分22Aは、下半軸受部11の軸方向に直交する鉛直方向に対し、互いに反対向きに傾斜して形成されている。
【0027】
ところで、回転軸1の荷重の支持に積極的に寄与しない上半軸受部12の上側摺動面14には、軸方向の一部の領域にオーバーショット溝33が形成されている。このオーバーショット溝33は、回転軸1の外周面2と上半軸受部12の上側摺動面14との隙間を意図的に広くして、潤滑油の粘性に起因する摩擦損失を低減するための溝である。
【0028】
更に、上半軸受部14の上側摺動面14には、オーバーショット溝33の両端側の部分に堰29及び30が突設されている。これらの堰29及び30は、回転軸1の外周面2との隙間が0.1〜1mm程度となるように設定されており、オーバーショット溝33の溝底と回転軸1の外周面2との隙間に比較して狭く設定されている。このため、堰29及び30の表面に流体抵抗が発生し、給油溝19及び排油溝21からオーバーショット溝33へ流入する潤滑油の流入量が、堰29及び30を設けない場合に比べて減少する。これにより、オーバーショット溝33内に潤滑油が必要量以上に溜まることを防止できるので、潤滑油の粘性により発生する摩擦損失の低減が確実化される。
【0029】
また、下半軸受部11には、給油溝19側の堰29における回転軸1の回転方向上流側に排出口31が形成されている。この排出口31は、オーバーショット溝33と滑り軸受10の外部とを連通するものである。オーバーショット溝33内の高温状態の潤滑油の一部は、堰29により流れが堰き止められた後、排出口31から滑り軸受10の外部へ排出される。これにより、回転軸1の外周面2と下側摺動面13との隙間へ供給される潤滑油の温度を低く保持でき、滑り軸受10の信頼性を向上させることが可能になる。
【0030】
また、下半軸受部11に形成された給油溝19及び排油溝21と下側摺動面13との境界部分には面取り面32が加工されている。これにより、給油溝19内の潤滑油が回転軸1の回転に伴って、この回転軸1の外周面2と下側摺動面13との隙間に流入し易くなり、また、回転軸1の外周面2と下側摺動面13との隙間内の潤滑油が、回転軸1の回転に伴って排油溝21内へ排出され易くなる。
【0031】
蒸気タービンなどの回転機械の運転時に、潤滑油は、給油設備23から接続配管26を経て給油孔20内へ流入し、給油溝19に供給されて回転軸1の軸方向に広がった後、回転軸1の回転に伴って、回転軸1の外周面2と下半軸受部11の下側摺動面13との隙間に積極的に流入する。この隙間に流入した潤滑油に発生する油膜圧力によって、回転軸1の荷重が支持される。
【0032】
回転軸1の外周面2と下半軸受部11の下側摺動面13との隙間に流入した潤滑油は、回転軸1の回転に伴って、一部が上半軸受部12の上側摺動面14側へ流入し、オーバーショット溝33内へ流入した後、排出口31から外部へ排出される。また、回転軸1の外周面2と下半軸受部11の下側摺動面13との隙間に流入した潤滑油の残りの大部分は、回転軸1の回転に伴い、排油溝21を経て排油孔22に流入し、接続配管28を経て排油処理設備24へ排出される。
【0033】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)および(2)を奏する。
【0034】
(1)給油通路17の下流部分(給油孔下流部分20B及び給油溝19)と排油通路18の上流部分(排油溝21及び排油孔上流部分22A)とが、回転軸1を挟んで互いに反対位置に下半軸受部11に設けられている。更に、給油通路17の上流部分(給油孔上流部分20A)が排油通路18の前記上流部分(排油溝21及び排油孔上流部分22A)側へ延び、また、排油通路18の下流部分(排油孔下流部分22B)が給油通路17の前記下流部分(給油溝下流部分22B及び給油溝19)側へ延びて構成されている。
【0035】
従って、滑り軸受10の外部領域であって、給油通路17の前記下流部分(給油孔下流部分20B及び給油溝19)側の領域に排油処理設備24が設置され、排油通路18の前記上流部分(排油溝21及び排油孔上流部分22A)側の領域に給油設備23が設置された場合であっても、給油設備23を給油通路17の前記上流部分(給油孔上流部分20A)に、排油処理設備24を排油通路18の前記下流部分(排油孔下流部分22B)に共に容易に接続できる。この結果、滑り軸受10と給油設備23及び排油処理設備24との接続を、配管の引き回し変更を伴うことなく容易に実施できるので、施工工期及び施工コストを低減できる。
【0036】
(2)上半軸受部12内で回転する回転軸1の回転方向下流側に給油通路17の給油溝19が、上流側に排油通路18の排油溝21がそれぞれ下半軸受部11の上端面15に形成され、更に、上半軸受部12の上側摺動面14の両側端部に堰29及び30が形成されている。このため、給油溝19からの潤滑油は、オーバーショット溝33内へ流入することが抑制され、回転軸1の外周面2と下半軸受部11の下側摺動面13との隙間へ回転軸1の回転に伴って積極的に流入する。従って、たとえ滑り軸受10が大型化しても、この滑り軸受10に供給される潤滑油供給量を抑制できる。
【0037】
尚、本実施形態において、給油孔20及び排油孔22の長さが従来に比較して長尺化されているが、これらの給油孔20及び排油孔22の直径は、給油孔20及び排油孔22の長さを長くすることで生じた圧力損失分を解消すべく拡大して設計されている。また、給油設備23が給油溝19側に、排油設備24が排油溝21側にそれぞれ設置されている場合には、図11に示す従来の滑り軸受115を採用することが好ましい。
【0038】
[B]第2実施形態(図3、図4)
図3は、本発明に係る滑り軸受の第2実施形態を示す断面図である。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0039】
本実施形態の滑り軸受40が前記第1実施形態の滑り軸受10と異なる点は、図3及び図4に示すように、給油通路17の給油孔下流部分20Bと排油通路18の排油孔上流部分22Aが下半軸受部11に鉛直方向に形成された点である。従って、本実施形態においても、前記第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏する他、次の効果(3)を奏する。
【0040】
(3)給油通路17の給油孔下流部分20Bと排油通路18の排油孔上流部分22Aが、下半軸受部11に鉛直方向に形成されたので、給油通路17及び排油通路18の加工が容易になり、加工コストを低減できる。更に、給油通路17及び排油通路18の長さを短縮できるので、これらの給油通路17及び排油通路18内を流れる潤滑油の圧力損失を低減できる。
【0041】
[C]第3実施形態(図5、図6)
図5は、本発明に係る滑り軸受の第3実施形態を示す断面図である。この第3実施形態において前記第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0042】
この第3実施形態の滑り軸受50が前記第1実施形態の滑り軸受10と異なる点は、図5及び図6に示すように、給油孔51が給油溝19から、排油孔53が排油溝21から、それぞれ下半軸受部11内を鉛直方向に延びて下半軸受部11の外表面55に至るまで形成され、更に下半軸受部11の外表面55に、給油孔51に連通する給油導入溝52と、排油孔53に連通する排油排出溝54がそれぞれ形成された点である。
【0043】
特に図5(B)に示すように、これらの給油導入溝52及び排油排出溝54のうち、給油導入溝52は、給油溝19側から排油溝21側へ延び、また、排油排出溝54は、排油溝21側から給油溝19側へ給油導入溝52と平行に延び、互いに独立して構成されている。これらの給油導入溝52及び排油排出溝54は、下半軸受部11の外表面55に一定深さでコの字形状に形成されると共に、下半軸受部11の外表面55全体を覆うカバー56によって油路として構成される。このカバー56に形成されて給油導入溝52に連通する給油入口57が、接続配管26を経て給油設備23に接続される。また、カバー56に形成されて排油排出溝54に連通する排油出口58が、接続配管28を経て排油処理設備24に接続される。
【0044】
ここで、本実施形態において、給油導入溝52が給油通路17の上流部分として、給油溝19及び給油孔51が給油通路17の下流部分としてそれぞれ機能する。また、排油溝21及び排油孔53が排油通路18の上流部分として、排油排出溝54が排油通路18の下流部分としてそれぞれ機能する。従って、本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏する他、次の効果(4)を奏する。
【0045】
(4)給油通路17の給油孔51及び排油通路18の排油孔53が下半軸受部11に鉛直方向に形成され、給油通路17の給油導入溝52及び排油通路18の排油排出溝54が下半軸受部11の外表面55に形成されたので、給油通路17及び排油通路18の加工が容易になり、加工コストを低減できる。
【0046】
[D]第4実施形態(図7、図8)
図7は、本発明に係る滑り軸受の第4実施形態を示す断面図である。この第4実施形態において前記第1及び第3実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0047】
この第4実施形態の滑り軸受60が前記第1実施形態の滑り軸受10と異なる点は、図7及び図8に示すように、給油孔61が給油溝19から、排油孔62が排油溝21から、それぞれ下半軸受部11内を鉛直方向に延びて下半軸受部11の外表面55へ至り、更に、給油孔61に接続可能な給油配管63と、排油孔62に接続可能な排油配管64とが交差してユニット化された配管ユニット65を有す点である。
【0048】
本実施形態では、給油溝19及び給油孔61が給油通路17を構成し、排油溝21及び排油孔62が排油通路18を構成する。これらの給油通路17と排油通路18は、回転軸1を挟んで互いに反対位置に下半軸受部11に形成される。また、配管ユニット65の給油配管63は、給油入口66を排油溝21側に位置づけて給油溝19側へ延び、この給油通路17の給油孔61に接続可能に構成される。給油入口66に接続配管26を経て給油設備23が接続される。また、配管ユニット65の排油配管64は、排油出口67を給油溝19側に位置づけて排油溝21側へ延び、この排油通路18の排油孔62に接続可能に構成される。排油出口67に接続配管28を経て排油処理設備24が接続される。
【0049】
更に、給油配管63には、潤滑油の給油量を調整可能な調整手段としてのオリフィス68が配設されている。配管ユニット65が配置されて潤滑油の圧力損失が上昇した分を補うために給油設備23の容量は若干増大されるが、実際に潤滑油を配管ユニット65を経て滑り軸受60へ供給する際には、潤滑油の供給量を必要十分な量に調整する必要があり、このために前記オリフィス68が配設されたのである。
【0050】
以上のように構成されたことから、本実施形態においても、前記第1実施形態の効果(2)と同様な効果を奏する他、次の効果(5)を奏する。
【0051】
(5)下半軸受部11において、給油通路17(給油溝19及び給油孔61)と排油通路18(排油溝21及び排油孔62)が回転軸1を挟んで互いに反対位置に設けられている。更に、配管ユニット65の給油配管63が、給油入口66を排油溝21側に位置づけて給油溝19側へ延び、また、配管ユニット65の排油配管64が、排油出口67を給油溝19側に位置づけて排油溝21側へ延びて構成されている。
【0052】
従って、滑り軸受60の外部領域であって、給油通路17の給油溝19側の領域に排油処理設備24が設置され、排油通路18の排油溝21側の領域に給油設備23が設置されている場合においても、配管ユニット65における給油配管63の給油出口66を給油設備23に容易に接続することができ、また、排油配管64の排油出口67を排油処理設備24に容易に接続することができる。このように配管ユニット65を用いることで、滑り軸受60を給油設備23及び排油処理設備24に容易に接続して、施工工期及び施工コストを低減できる。
【0053】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形してもよく、また、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 回転軸
2 外周面
10 滑り軸受
11 下半軸受部
12 上半軸受部
13 下側摺動面
14 上側摺動面
15 上端面
17 給油通路
18 排油通路
19 給油溝
20 給油孔
20A 給油孔上流部分
20B 給油孔下流部分
21 排油溝
22 排油孔
22A 排油孔上流部分
22B 排油孔下流部分
23 給油設備
24 排油処理設備
40 滑り軸受
50 滑り軸受
51 給油孔
52 給油導入溝
53 排油孔
54 排油排出溝
60 滑り軸受
61 給油孔
62 排油孔
63 給油配管
64 排油配管
65 配管ユニット
66 給油入口
67 排油出口
68 オリフィス(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を下方から覆うと共に、この回転軸を摺動自在に支持する下側摺動面を備えた下半軸受部と、
回転軸を上方から覆うと共に、この回転軸を摺動自在に支持する上側摺動面を備え、前記下半軸受部に接合される上半軸受部とを有し、
前記回転軸の外周面と前記下側摺動面及び前記上側摺動面との隙間に潤滑油を供給する給油通路が前記下半軸受部に形成され、
前記隙間から潤滑油を排出する排油通路が前記下半軸受部に形成された滑り軸受において、
前記給油通路の下流部分と前記排油通路の上流部分とが前記回転軸を挟んで互いに反対位置に設けられ、
前記給油通路の上流部分が前記排油通路の上流部分側へ延び、前記排油通路の下流部分が前記給油通路の下流部分側へ延びて構成されたことを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
前記給油通路は、下半軸受部における上半軸受部との接合面に回転軸の軸方向に延びて形成された給油溝と、この給油溝に連通して前記下半軸受部に形成された給油孔とを備えてなり、
排油通路は、前記接合面において回転軸を挟み前記給油溝と反対位置に前記回転軸の軸方向に延びて形成された排油溝と、この給油溝に連通して前記下半軸受部に形成された排油孔とを備えてなり、
前記給油孔は、前記給油溝に連通する下流部分に対し、この下流部分に連続する上流部分が前記排油溝側へ延び、
前記排油孔は、前記排油溝に連通する上流部分に対し、この上流部分に連続する下流部分が前記給油溝側へ延びて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の滑り軸受。
【請求項3】
前記給油孔の下流部分と排油孔の上流部分が、鉛直方向に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の滑り軸受。
【請求項4】
前記給油通路は、下半軸受部における上半軸受部との接合面に回転軸の軸方向に延びて形成された給油溝と、この給油溝に連通して前記下半軸受部に形成された給油孔と、この給油孔に連通して前記下半軸受部の外表面に形成された給油導入溝とを備えてなり、
排油通路は、前記接合面において回転軸を挟み前記給油溝と反対位置に前記回転軸の軸方向に延びて形成された排油溝と、この給油溝に連通して前記下半軸受部に形成された排油孔と、この排油孔に連通して前記下半軸受部の前記外表面に形成された排油排出溝とを備えてなり、
前記給油導入溝が前記給油溝側から前記排油溝側へ延び、前記排油排出溝が前記排油溝側から前記給油溝側へ延びて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の滑り軸受。
【請求項5】
回転軸を下方から覆うと共に、この回転軸を摺動自在に支持する下側摺動面を備えた下半軸受部と、
回転軸を上方から覆うと共に、この回転軸を摺動自在に支持する上側摺動面を備え、前記下半軸受部に接合される上半軸受部とを有し、
前記回転軸の外周面と前記下側摺動面及び前記上側摺動面との隙間に潤滑油を供給する給油通路が前記下半軸受部に形成され、
前記隙間から潤滑油を排出する排油通路が前記下半軸受部に、前記回転軸を挟んで前記給油通路と反対位置に形成された滑り軸受において、
給油入口を前記排油通路側に位置づけて前記給油通路側へ延び、この給油通路に接続可能な給油配管と、排油出口を前記給油通路側に位置づけて前記排油通路側へ延び、この排油通路に接続可能な排油配管とがユニット化された配管ユニットを有することを特徴とする滑り軸受。
【請求項6】
前記配管ユニットの給油配管には、給油量を調整可能な調整手段が配設されたことを特徴とする請求項5に記載の滑り軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−219862(P2012−219862A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83974(P2011−83974)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】