説明

滴下シール剤組成物

【課題】硬化性が低下せずに、液安定性を向上させることができる、滴下シール剤樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ化合物、及び(B)アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤を含む、滴下シール剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物、及びアミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤を含む、滴下シール剤組成物に関する。
【0002】
滴下工法は、液晶表示セルの製造方法として適用されており、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、他方の基板を貼り合わせて液晶表示セルを製造する方法である。貼り合わせは、加熱により行われるため、滴下工法のためのシール剤組成物として、加熱硬化成分としてエポキシ基を含有する樹脂を含む熱硬化型の樹脂組成物が用いられる。
【0003】
特許文献1には、滴下工法に用いられるシール剤組成物の硬化剤として、ヒドラジド化合物などが記載されている。特許文献1に記載された硬化剤は、融点が高く、反応性が低いため、このような硬化剤を用いたシール剤を用いた滴下工法による液晶表示セルの製造方法では、硬化時の温度を高くする必要があり、一般的な120℃の硬化条件では、加熱によるシール剤の低粘度化が先に進んでしまう。これにより、シール剤成分由来の液晶汚染の原因になりやすいという問題がある。そのため、液晶物質の熱劣化を考慮し、滴下シール剤の硬化は、シール剤の低粘度化が顕著になる前に硬化が進む低温で行うのが好ましい。しかし、低温硬化の硬化剤を用いると室温でも硬化反応が徐々に始まるので液安定性が悪くなり、使用時間が短くなり、作業時間が限られる問題がある。
【0004】
また、滴下工法により塗工した後のディスペンサ内に残ったシール剤組成物を洗浄するために、アセトンやアルコールなどの有機溶剤が用いられている。しかし、従来の硬化剤には有機溶剤にわずかに溶解してしまうものがあり、このような硬化剤を用いた場合は、ディスペンサを洗浄する際にディスペンサ内に残ったシール剤組成物が粘稠液体となってしまい、洗浄しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−163763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、硬化性が低下せずに、液安定性を向上させることができる、滴下シール剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、イソシアネート処理したアミン化合物を硬化剤として用いることで、硬化性が低下せずに、液安定性を向上させることができる、滴下シール剤組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、(A)エポキシ化合物、及び(B)アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤を含む、滴下シール剤組成物に関する。
本発明は、前記に記載の滴下シール剤組成物を用いて得られた、表示素子に関する。
本発明は、アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、硬化性が低下せずに、液安定性を向上させることができる、滴下シール剤組成物が提供される。
また、本発明のアミン化合物とイソシアネート化合物を反応させた硬化剤は、アセトンなどの有機溶媒に溶解しないため、ディスペンサに滴下シール剤組成物を充填し、塗工した後で、ディスペンサ内に残存する滴下シール剤組成物を洗浄する際に、滴下シール剤組成物が粘稠液体にならず容易に取り除くことができ、有機溶媒に対して溶解する従来のアミン化合物である硬化剤を含む滴下シール剤組成物に対して、洗浄性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】イソシアネート付加アミン化合物「N1」のDSC曲線である。
【図2】イソシアネート付加アミン化合物「N2」のDSC曲線である。
【図3】イソシアネート付加アミン化合物「N3」のDSC曲線である。
【図4】ヒドラジド化合物「H1」のDSC曲線である。
【図5】アミンアダクト化合物「H2」のDSC曲線である。
【図6】イミダゾール化合物「H3」のDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、(A)エポキシ化合物、及び(B)アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤を含む、滴下シール剤組成物である。
【0012】
(1)(A)エポキシ化合物
本発明において、(A)エポキシ化合物は、滴下シール剤組成物の主成分である。エポキシ化合物として、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、公知のエポキシ化合物を用いることができる。
本発明において、エポキシ化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステルおよびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、本発明のエポキシ化合物として、前記したエポキシ化合物のグリシジル基の一部を(メタ)アクリレート化したエポキシ化合物も含まれる。なお、本発明において(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両方の意味を有する。
【0013】
(2)(B)アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤
本発明のアミン化合物とイソシアネート化合物を反応させることにより得られる硬化剤は、分子内に少なくとも1個の活性水素を有するアミン化合物に、1個以上のイソシアネート基をもつイソシアネート化合物を付加させたイソシアネート付加アミン化合物である。本発明において、活性水素とはアミン化合物とイソシアネート化合物と反応すると推測される水素であり、これにより尿素結合、ビュウレット結合、又はアロファネート結合が形成されると推測される。
【0014】
アミン化合物は、分子内に少なくとも1個の活性水素を有するものであれば特に限定されず、分子内に1個以上の第1級アミノ基を有する第1級モノ、ジ及びポリアミン化合物、分子内に1個以上の第2級アミノ基を有する第2級モノ、ジ及びポリアミン化合物、ヒドラジド化合物、並びにイミダゾール化合物;分子内に2個以上の第1級アミノ基を有する第1級ジもしくはポリアミン化合物、分子内に2個以上の第2級アミノ基を有する第2級ジもしくはポリアミン化合物、ヒドラジド化合物、又はイミダゾール化合物と、エポキシ樹脂とのアダクト化合物;ポリアミン化合物とポリアミン化合物のような同種の混合結晶;ポリアミン化合物とヒドラジド化合物のような異種の混合結晶が挙げられる。
【0015】
分子内に1個以上の第1級アミノ基を有する第1級モノ、ジ及びポリアミン化合物として、分子内に1個の第1級アミノ基を含む第1級モノアミン、分子内に2個の第1級アミノ基を含む第1級ジアミン、分子内に3個以上の第1級アミノ基を有する第1級ポリアミンが挙げられる。なお、分子内に1個以上の第1級アミノ基を有する第1級モノ、ジ及びポリアミン化合物は、分子内にヒドラジノ基(−NHNH)を含む化合物は含まない。
分子内に1個以上の第2級アミノ基を有する第2級モノ、ジ及びポリアミン化合物として、分子内に1個の第2級アミノ基を含む第2級モノアミン、分子内に2個の第2級アミノ基を含む第2級ジアミン、及び分子内に3個以上の第2級アミノ基を含む第2級ポリアミンが挙げられる。
なお、分子内に1個以上の第2級アミノ基を有する第2級モノ及びポリアミン化合物は、分子内に第1級アミノ基を含む化合物、1位の窒素原子が非置換であるイミダゾリル基を含む化合物、及びヒドラジノ基を含む化合物は含まない。
【0016】
このような、分子内に1個以上の1級アミノ基又は2級アミノ基を有する、モノ、ジ及びポリアミン化合物として、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン等の脂肪族第1級アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式第1級モノアミン;アニリン、トルイジン等の芳香族第1級アミン;エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加物等の1位の窒素原子が置換されたイミダゾリル基を有する第1級ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン;1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−3,6−ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類などが挙げられる。好ましくは、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの芳香族ポリアミンである。
【0017】
ヒドラジド化合物として、分子内に1個のヒドラジド基を有する一塩基酸ヒドラジド、分子内に2個のヒドラジド基を有する二塩基酸ヒドラジド、分子内に3個のヒドラジド基を有する三塩基酸ヒドラジド、分子内に4個以上のヒドラジド基を有する多官能ヒドラジドが挙げられる。
【0018】
一塩基酸ヒドラジドとして、具体的には、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、ペンタン酸ヒドラジド、ラウリル酸ヒドラジド、シクロヘキサンカルボヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、ベンゼンスルホノヒドラジドが挙げられる。
【0019】
二塩基酸ヒドラジドとしては、具体的には、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデンカンニ酸ジヒドラジド、ヘキサデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’−ビスベンゼンジヒドラジド、ハイドロキノンジグリコール酸ジヒドラジド、レゾルシノールジグリコール酸ジヒドラジド、カテコールジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’−エチリデンビスフェノール−ジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’−ビニリデンビスフェノール−ジグリコール酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0020】
三塩基酸ヒドラジドとしては、例えば、1,3,5−トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等の1,3,5−トリス(2−ヒドラジノカルボニルアルキル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0021】
多官能ヒドラジドとしては、例えば、ポリアクリル酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0022】
イミダゾール化合物は、分子内に第1級アミノ基を有さないイミダゾール化合物であり、このようなイミダゾール化合物として、1位の窒素原子が非置換であるイミダゾール環を含む化合物、例えば2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及び2−メチルイミダゾリン;並びに、1位の窒素原子が置換されたイミダゾール化合物、例えば1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、及び1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト等が挙げられる。
【0023】
アミン化合物とエポキシ樹脂のアダクト化合物は、前述した分子内に2個以上の第1級アミノ基を有する第1級ジもしくはポリアミン化合物、分子内に2個以上の第2級アミノ基を有する第2級ジもしくはポリアミン化合物、ヒドラジド化合物、又はイミダゾール化合物をエポキシ樹脂にアダクトさせたアミンアダクト化合物である。これらの化合物は、単独で用いても、または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0024】
エポキシ樹脂としては、(A)エポキシ化合物として例示した化合物が挙げられる。本発明において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とキシリレンジアミンとのアダクト化合物が、融点が低く、比較的低温で反応が進行することで、熱による低粘度化が顕著になる前に硬化されるので、シール剤成分の液晶への汚染が少なくすることができる点で好ましい。
【0025】
本発明において、ポリアミン化合物とポリアミン化合物のような同種の混合結晶やポリアミン化合物とヒドラジド化合物のような異種の混合結晶は、混合結晶に含まれる単独の成分の結晶系とは異なる結晶系を有する混合結晶である。混合結晶のX線回折スペクトルと、混合結晶に含まれる原料の1種類のアミン化合物のX線回折スペクトルとを比較して、原料に由来するピーク以外のピークの存在を確認することにより、混合結晶の存在を推認することができる。
【0026】
本発明において、ポリアミン化合物とポリアミン化合物のような同種の混合結晶やポリアミン化合物とヒドラジド化合物のような異種の混合結晶の組合せは任意であり、例えば、2種以上のポリアミン化合物、2種以上のイミダゾール化合物、2種以上のヒドラジド化合物、1種以上のポリアミン化合物と1種以上のイミダゾール化合物、1種以上のポリアミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物、1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物の組み合わせ等が挙げられ、2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶が、結晶の低融点化を果たし、かつ、アクリル樹脂との反応性も有しているため好ましい。
【0027】
また、本発明において、ヒドラジド化合物同士の組み合わせとしては、少なくとも1種が二塩基酸ジヒドラジドであることが好ましく、特にすべてのヒドラジド化合物が二塩基酸ジヒドラジドであることが好ましく、例えば、アジピン酸ジヒドラジドとセバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドとデカンジオジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドとデカンジオジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドとドデカン二酸ジヒドラジドの組合せ等を挙げることができる。本発明においてヒドラジド化合物は、アクリル樹脂との反応性が高く、比較的低温でアクリル樹脂と反応するため、UV照射による1次硬化が未熟な部分で、シール剤の低粘度化が顕著になる前に硬化が進行するため、液晶の汚染を少なくすることができる。次いで(又はほぼ同時に)、加熱によるエポキシ樹脂との反応が始まるため、反応物の粘性が速やかに上昇する。本発明において、セバシン酸ジヒドラジドとドデカン二酸ジヒドラジドの組合せがより好ましい。
【0028】
本発明において、2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶は、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の20〜25°の間で強い回折ピークが2〜3本程度観察される結晶変態を有する。また、本発明において、混合結晶に用いられるヒドラジド化合物は、結晶性ヒドラジド化合物であることが好ましい。ここで、結晶性ヒドラジド化合物は、CuKα線(波長1.541Å)に対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度2θ(誤差2θ±0.2°)の5.0〜7.5°の範囲にピークを有する、ヒドラジド化合物をいう。
【0029】
本発明においては、混合結晶に用いられる、ポリアミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物の少なくとも2種以上を併用するが、その併用割合は、硬化させるべきエポキシ樹脂の種類、用途、要求される硬化時間や硬化温度等の各種条件に応じて適宜決定すればよい。例えば、全混合結晶中に1種の化合物が通常1〜99重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜70重量%含有されるように、2種以上の化合物を併用するのがよい。
【0030】
本発明において、混合結晶は、混合結晶に含まれる化合物と錯体形成可能な金属元素をさらに含むことができる。金属元素を含む混合結晶は、液安定性の改善効果をさらに向上させることができるため好ましい。本発明において、好ましくは、2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶と、当該2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶に含まれるヒドラジド化合物と錯体形成可能な金属元素とを含む、2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶である。
【0031】
金属元素として、好ましくは、アルミニウム、チタン、スズ、ジルコニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、ビスマス、モリブデン、銅、アンチモン、バリウム、ホウ素、マンガン、インジウム、セシウム、ホルミウム、イットリウム、シリコン、カルシウム、銀、ゲルマニウム、及び金よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。金属元素として、より好ましくは、アルミニウム、チタン、スズ、ジルコニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、ビスマス、モリブデン、銅、アンチモン、バリウム及びホウ素よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。金属元素は、1種又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。また、金属元素は、金属酸化物、金属水酸化物の形態のものを用いることができる。
【0032】
金属元素の含有量は、混合結晶と金属元素との合計量に対して、好ましくは0.1〜20.0質量%、より好ましくは1.0〜10.0質量%である。金属元素の含有量が、混合結晶に含まれる化合物と金属元素との合計に対して、0.1〜20.0質量%であると、金属元素と混合結晶に含まれる化合物、例えば結晶性ヒドラジド化合物が良好な錯体を形成すると推測される。
【0033】
本発明に用いるアミン化合物は、粒状の形態を有することが好ましい。例えば、アミン化合物を粉砕して、粒状の形態にすることによって、このアミン化合物にイソシアネート化合物を付加して得られるイソシアネート付加アミン化合物を熱硬化剤として用いた場合に、樹脂との反応性をより高めて、硬化時間をより短縮することが可能である。
【0034】
アミン化合物の平均粒子径は、特に制限されるものではないが、平均粒子径が、好ましくは0.1〜20.0μmであり、より好ましくは0.5〜10.0μmの粒状のものを使用し、イソシアネートを付加させる事が好ましい。なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置によって求めることができ、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定における質量平均値D50(D50は累積質量が50%になるときの粒子径、すなわちメジアン径)として測定した値である。
【0035】
イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、分子内に1個のイソシアネート基を有するモノイソシアネート、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを用いることが出来る。
【0036】
イソシアネート化合物は、1種のイソシアネート化合物を単独で用いてもよく、2種以上のイソシアネート化合物を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0037】
任意の組み合わせとしては、1種のモノイソシアネートを単独で用いても良く、2種以上のモノイソシアネートを組み合わせて使用しても良く、1種のポリイソシアネートを単独で用いても良く、2種以上のポリイソシアネートを組み合わせて使用しても良い。また、モノイソシアネートとポリイソシアネートを組み合わせて使用しても良い。
【0038】
モノイソシアネートは、イソシアン酸エチル、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸プロピル、イソシアン酸イソプロピル、イソシアン酸tert−ブチル、イソシアン酸ドデシル、イソシアン酸シクロヘキシル、イソシアン酸オクタデシル、イソシアン酸(R)−(+)−α−メチルベンジル、イソシアン酸(S)−(−)−α−メチルベンジル、イソシアン酸(R)−(−)−1−(1−ナフチル)エチル、イソシアナト酢酸エチル、イソシアナト酢酸ブチル、イソシアン酸ベンジル、イソシアン酸3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジル、(S)−(−)−2−イソシアナトプロピオン酸メチル、(S)−2−イソシアナト−3−フェニルプロピオン酸メチル、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、6,7−メチレンジオキシ−(4−イソシアナトメチルクマリン)の中から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0039】
ジイソシアネートとしては、具体的には、プロパン−1,2−ジイソシアネート、2,3−ジメチルブタン−2,3−ジイソシアネート、2−メチルペンタン−2,4−ジイソシアネート、オクタン−3,6−ジイソシアネート、3,3−ジニトロペンタン−1,5−ジイソシアネート、オクタン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタテトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの中から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0040】
アミン化合物の種類、数、比率と、硬化させるべき樹脂組成物の種類、用途、要求される硬化時間、硬化温度等の各種の条件に応じて、イソシアネート化合物の付加状態を適宜決定することができる。
【0041】
次に、本発明のイソシアネート付加アミン化合物が示す物性について説明する。
【0042】
[FT−IRスペクトル]
本発明のイソシアネート付加アミン化合物は、イソシアネート基がアミン化合物の第1級アミノ基、及び/又は、第2級アミノ基と反応し、尿素結合、ビュウレット結合、アロファネート結合が形成されると推測される。
【0043】
イソシアネート基とアミン化合物が厳密に尿素結合、ビュウレット結合、アロファネート結合を形成しているかどうかは明らかでないが、本発明のイソシアネート付加アミン化合物と原料のアミン化合物を比較すると、イソシアネート付加反応が進むにつれ、フーリエ変換赤外分光光度計による、1280〜1200cm−1の範囲にあるピーク(以下、「Aピーク」という)の面積が変化する事が確認できる。この時、波長2975〜2875cm−1の範囲のCH収縮由来の基準ピークには変化が見られない。このことから、アミン化合物の第1級アミノ基、及び/又は、第2級アミノ基と、イソシアネート化合物のイソシアナト基が反応していると思われる。
【0044】
本発明のイソシアネート付加アミン化合物のAピーク変化率は、好ましくは101〜1,700%、より好ましくは103〜1,500%である。
【0045】
Aピーク変化率の計算方法は、以下に示す式のとおりである。
【数1】

【0046】
基準ピーク:3000〜2600cm−1
Aピーク:1280〜1200cm−1
【0047】
本発明のイソシアネート付加アミン化合物の融点は、好ましくは40〜240℃、より好ましくは50〜220℃の範囲である。イソシアネート付加アミン化合物の融点は、例えば示差走査熱量測定装置(Pyris6DSC、パーキンエルマー社製、以下、「DSC」と称する。)を用いて、融解による吸熱の最大ピーク温度を融点として求める。
【0048】
本発明において、(A)エポキシ樹脂、(B)アミン化合物とイソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート付加アミン化合物との混合比は、特に限定されず、(A)成分100重量部に対して、(B)成分1〜30重量部であるのが好ましく、2〜20重量部であるのがより好ましく、3〜20重量部であるのが特に好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、更に、イソシアネート処理をしていないポリアミン化合物、イソシアネート処理をしていないヒドラジド化合物、イソシアネート処理をしていないイミダゾール化合物;無機フィラー;光増感剤(ラジカル重合開始剤)、シランカップリング剤を含んでもよい。
【0050】
イソシアネート処理をしていないポリアミン化合物、イソシアネート処理をしていないヒドラジド化合物、及びイソシアネート処理をしていないイミダゾール化合物としては、上記したポリアミン化合物において例示された化合物が挙げられる。イソシアネート処理をしていないポリアミン化合物、イソシアネート処理をしていないヒドラジド化合物、及びイソシアネート処理をしていないイミダゾール化合物の含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜30重量部であるのが好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0051】
無機フィラーとしては、タルク、シリカ、及びマイカ等が挙げられる。無機フィラーの含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましい。
【0052】
光増感剤としては、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素など挙げられる。光増感剤として、具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物などが挙げられる。市販品としてチバ社製イルガキュアー184、イルガキュアー651、イルガキュアー819などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。光増感剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましい。
【0053】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等が挙げられる。シランカップリング剤の市販品には、例えばエポキシ系(例KBM403、KBM303)、ビニル系(KBM1003)、アクリル系シランカップリング剤(KBM503)、3−エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン(TESOX(東亞合成(株)製))などが挙げられる。シランカップリング剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。
【0054】
本発明の硬化剤の製造方法について説明する。
本発明の硬化剤は、水、有機溶媒及び更なるエポキシ化合物の存在下、本願発明のアミン化合物及びイソシアネート化合物を加熱混合し、混合物を得る工程と、溶媒を除去し、混合物を冷却して固化体を得る工程とを含む。
【0055】
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明において、硬化剤の溶解が非常に少ないため脂環式炭化水素が好ましい。溶媒の使用量は、アミン化合物100重量部に対し、10〜1000mlが好ましく、200〜800mlがより好ましい。
【0056】
水としては、イオン交換水が挙げられる。水の使用量は、アミン化合物100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。このような水の使用量であれば、イソシアネート化合物と水の反応が進みすぎず、アミン化合物とイソシアネート化合物の反応が適度に進むため、貯蔵安定性が低下しない。
【0057】
更なるエポキシ化合物としては、上記した(A)エポキシ化合物のほかに、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。このような更なるエポキシ化合物として、YX8034(JER社製)が挙げられる。更なるエポキシ化合物の使用量は、アミン化合物100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましく、0.1〜50質量部がより好ましい。
【0058】
アミン化合物とイソシアネート化合物の使用量は、硬化させるべき滴下シール剤組成物の組成、硬化部位、要求される硬化温度及び硬化時間に応じた、所望のイソシアネート化合物の付加状態に応じて、変更させることができるが、例えば、アミン化合物100質量部に対し、0.1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
また、アミン化合物のアミノ基1モルに対して、イソシアネート化合物のイソシアナト基が、1モル未満であり、0.01以上1モル未満であるのが好ましく、0.05〜0.9モルがより好ましい。
【0059】
加熱混合する温度は、特に限定されないが、好ましくは20〜80℃、より好ましくは25〜60℃である。加熱混合する時間は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜48時間、より好ましくは、0.1〜24時間である。加熱混合する時間は、加熱混合する温度によって異なり、温度が高ければ時間は短くなり、温度が低ければ時間が長くなるので、硬化剤として使用する際の使用目的等に合わせて最適な処理時間を選択することが可能である。溶媒を除去する方法は、公知の方法、例えばろ過により行うことが可能である。
【0060】
また、本発明のアミン化合物が、混合結晶の場合は、本発明の硬化剤の製造方法は、以下の混合結晶の製造方法を含む。
【0061】
本発明の混合結晶の製造方法は、原料である2種以上のアミン化合物を融点以上に加熱溶融し混合して、混合物を得る工程、及び該混合物を冷却して固化する工程を含む方法である。具体的には、混合結晶の製造方法は、分子内に1個以上の第1級アミノ基を有する第1級モノ、ジ及びポリアミン化合物、分子内に1個以上の第2級アミノ基を有する第2級モノ、ジ及びポリアミン化合物、ヒドラジド化合物、並びにイミダゾール化合物からなる群より選択される1以上のアミン化合物を、融点以上に加熱溶融し混合して、混合物を得る工程、及び該混合物を冷却して固化する工程を含む方法である。
【0062】
加熱溶融及び混合する工程においては、原料である2種以上のアミン化合物を加熱する温度は、特に限定されないが、原料である2種以上のアミン化合物の混合物がほぼ液体の状態となる温度であることが好ましい。原料である2種以上のアミン化合物がほぼ液体の状態となる温度としては、原料である2種以上のアミン化合物の融点付近の温度、例えば融点よりも10℃程度低い温度から該融点よりも10℃程度高い温度であることが好ましい。ここで、原料である2種以上のアミン化合物の融点は、原料である2種以上のアミン化合物の融点のうち、一番高い融点の温度をいう。
【0063】
原料である2種以上のアミン化合物の溶融混合物を冷却して固化する工程における冷却速度は、好ましくは20〜0.01℃/分、より好ましくは10〜0.05℃/分、さらに好ましくは5〜0.1℃/分である。冷却は多段階、例えば2段階で行っても良い。たとえば、1段目に100〜50℃まで冷却し、その温度で結晶を成長させ、2段目で室温まで冷却することが可能である。
【0064】
また、この原料である2種以上のアミン化合物の混合結晶と、原料であるアミン化合物と錯体形成可能な金属を含む、混合結晶の製造方法は、ポリアミン化合物、イミダゾール化合物、又はヒドラジド化合物と、このポリアミン化合物、イミダゾール化合物、又はヒドラジド化合物と錯形成可能な金属元素とを加熱溶融し混合して、混合物を得る工程と、混合物を恒温処理する工程と、混合物を冷却して固化体を得る工程とを含む。
【0065】
加熱溶融し混合して、混合物を得る工程及び混合物を冷却して固化体を得る工程については、上記のとおりである。
混合物を恒温処理する工程は、混合物を、一定時間、一定の温度で恒温処理を行う工程である。恒温処理とは、混合物を一定の温度(誤差範囲±10℃)で一定の時間保持することを意味する。恒温処理する温度は、特に限定されないが、好ましくは100〜280℃、より好ましくは130〜250℃である。恒温処理する時間は、特に限定されないが、硬化剤として使用する際の使用目的等に合わせて最適な処理時間、例えば0.01〜10時間とすることができる。
【0066】
さらに本発明の混合結晶の製造方法は、冷却して得られた固化体を粉砕し、平均粒子径が0.1〜20.0μmの粒子状に粉砕する工程を含むことが好ましい。
粉砕する方法としては、固化体は、例えば高圧粉砕機を使用して粉砕することが好ましい。高圧粉砕機としては、例えばクロスジェットミル(栗源鉄工所社製)、カウンタージェットミル(ホソカワミクロン社製)、ナノジェットマイザー(アイシンナノテクノロジーズ社製)等が挙げられる。
【0067】
本発明は、本発明の滴下シール剤組成物を用いて得られる表示素子に関する。このような表示素子として、液晶表示パネルが挙げられる。本発明の滴下シール剤組成物を用いて表示素子を製造する方法としては特に限定されず、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0068】
本発明において、滴下工法による表示素子の製造方法は、例えば、ITO薄膜等の2枚の電極付き透明基板の一方に、本発明の滴下シール剤組成物をスクリーン印刷、ディスペンサ塗布等により長方形状のシールパターンを形成する工程;次いで、滴下シール剤組成物が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方の透明基板を重ねあわせ、シール部に紫外線を照射して仮硬化を行う工程;その後、液晶アニール時に加熱して本硬化を行う工程を含む。
【0069】
アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる、硬化剤も本発明の対象である。本発明の硬化剤に用いられる、アミン化合物及びイソシアネート化合物は、好ましいものも含め、本発明の滴下シール剤組成物に含まれる硬化剤について、上記した化合物が挙げられる。上記した硬化剤は、熱硬化性組成物の硬化剤に適用することができる。本発明において、熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、上記したエポキシ化合物が挙げられる。本発明において、熱硬化性樹脂組成物は、更に、効果促進剤、無機フィラー、光増感剤(ラジカル重合開始剤)、及びシランカップリング剤などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、上記した添加剤が挙げられる。
【0070】
本発明のイソシアネート付加アミン化合物を硬化剤として含む滴下シール剤組成物は、硬化性が低下せずに、液安定性が良好であり、25℃での2週間の粘度の変化率(液安定性)、及び40℃での22時間の粘度の変化率が小さく、ポットライフ的にも安定である。また、従来の硬化剤のなかで、有機溶剤に溶解してしまうアミン硬化剤と比較して、本発明のイソシアネート付加アミン化合物を硬化剤とすることで洗浄性を向上させることができる。
【0071】
また、本発明の硬化剤を含むシール剤組成物に含まれる硬化剤は、アセトン、アルコール類、水系有機溶媒などの有機溶剤に対して溶解しないため、滴下工法において、塗工した後のディスペンサ内に残存する硬化前の滴下シール剤組成物を容易に洗浄することができるため、洗浄性が良好である。
【実施例】
【0072】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0073】
[実施例1]
混晶(混合結晶)を用いたイソシアネート付加アミン化合物の合成
セバシン酸ジヒドラジド(SDH、大塚化学社製)500gと、ドデカン二酸ジヒドラジド(DDH、大塚化学社製)500gと、酸化アルミニウム(AEROXIDE AluC、日本エアロジル社製)50g(アルミニウムの含有量が2.5質量%)を5000mlのセパラブルフラスコに入れ、200℃に加熱した。2種の結晶性ヒドラジド化合物が完全に溶融したのを確認し、溶融混合物を得た。この溶融混合物を200℃で2時間恒温処理を行った。
【0074】
その後、溶融混合物を200℃に予備加熱したパイレックス(登録商標)製のガラストレーに移し、200℃のオーブンにセットした。そして、オーブンの加温を停止し、室温まで自然冷却し、固化体を得た。
【0075】
室温まで完全に冷却した固化体をカッターミル(IKA社製)で平均直径100μm程度に粗粉砕し、最終的に高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒子径2.3μmのヒドラジド化合物を製造した。
【0076】
上記で得られたヒドラジド化合物10gと、ヘキサメチレンジイソシアネートを1.36gと、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YX8034、JER社製)を1.255gと、イオン交換水0.285gをメチルシクロヘキサン80ml中に混合し、50℃で4時間恒温処理を行った。
【0077】
その後、処理液をろ紙(桐山社製No.4)を使い桐山ロート(桐山社製)にてろ過し、脱液を行った。得られた濾取物をメチルシクロヘキサン100mlに混合し、前記と同様のろ過をする作業を、繰り返し計3回行った。最終的に濾取されたものを真空乾燥機(ESPEC社製)にて50℃、1Torrで12時間乾燥を行った。
【0078】
以上の操作で得られたイソシアネート付加アミン化合物を「N1」とする。
【0079】
[実施例2]
アミンアダクトを用いたイソシアネート付加アミン化合物の合成
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON EXA−850CRP、DIC社製)28gと、メタノール126gを300mlナスフラスコに仕込み、完全に溶解させた。次いでp−キシリレンジアミン(東京化成社製)20gを加え、25℃で攪拌し続けた。4時間攪拌した後、HPLC(Waters社製)でビスフェノールA型エポキシ樹脂の消失を確認。攪拌している水3Lの中に反応液を徐々に投入し、投入終了後15分攪拌した後水を取り除き、粘性物を得た。得られた粘性物を、50℃のオーブンで減圧乾燥させ固化物を得た。
【0080】
室温まで完全に冷却した固形物をカッターミル(IKA社製)で平均直径100μm程度に粗粉砕し、最終的に高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒子径2.2μmのアミンアダクト化合物を製造した。
【0081】
上記で得られたアミンアダクト化合物10gと、イソホロンジイソシアネートを1.8gと水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YX8034、JER社製)を1.255gと、イオン交換水と0.285gをメチルシクロヘキサン80ml中に混合し、25℃で4時間恒温処理を行った。
【0082】
その後、処理液をろ紙(桐山社製No.4)を使い桐山ロート(桐山社製)にてろ過し、脱液を行った。得られた濾取物をメチルシクロヘキサン100mlに混合し、前記と同様の濾過をする作業を、繰り返し計3回行った。最終的に濾取されたものを真空乾燥機(ESPEC社製)にて25℃、1Torrで12時間乾燥を行った。
【0083】
以上の操作で得られたイソシアネート付加アミン化合物を「N2」とする。
【0084】
[実施例3]
イミダゾールを用いたイソシアネート付加アミン化合物の合成
2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加物(四国化成社製、2MA−OK)を高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒子径2.0μmのイミダゾール化合物を製造した。
【0085】
上記で得られたイミダゾール化合物10gと、イソホロンジイソシアネート1.80gと水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YX8034、JER社製)1.255gと、イオン交換水0.285gとを、それぞれをメチルシクロヘキサン80ml中に混合し、25℃で4時間恒温処理を行った。
【0086】
その後、処理液をろ紙(桐山社製No.4)を使い桐山ロート(桐山社製)にてろ過し、脱液を行った。得られた濾取物をメチルシクロヘキサン100mlに混合し、前記と同様の濾過をする作業を、繰り返し計3回行った。最終的に濾取されたものを真空乾燥機(ESPEC社製)にて25℃、1Torrで12時間乾燥を行った。
以上の操作で得られたイソシアネート付加アミン化合物を「N3」とする。
【0087】
[比較例1]
ヒドラジド化合物の合成
セバシン酸ジヒドラジド(SDH、大塚化学社製)500gと、ドデカン二酸ジヒドラジド(DDH、大塚化学社製)500gと、酸化アルミニウム(AEROXIDE AluC、日本エアロジル社製)50g(アルミニウムの含有量が2.5質量%)を5000mlのセパラブルフラスコに入れ、200℃に加熱した。2種の結晶性ヒドラジド化合物が完全に溶融したのを確認し、溶融混合物を得た。この溶融混合物を200℃で2時間恒温処理を行った。
【0088】
その後、溶融混合物を200℃に予備加熱したパイレックス(登録商標)製のガラストレーに移し、200℃のオーブンにセットした。そして、オーブンの加温を停止し、室温まで自然冷却し、固化体を得た。
【0089】
室温まで完全に冷却した固化体をカッターミル(IKA社製)で平均直径100μm程度に粗粉砕し、最終的に高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒子径2.3μmのヒドラジド化合物を製造した。
【0090】
上記の操作で得られたヒドラジド化合物を「H1」とする。
【0091】
[比較例2]
アミンアダクト化合物の合成
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON EXA−850CRP 、DIC社製)28gと、メタノール126gを300mlナスフラスコに仕込み、完全に溶解させた。次いでp−キシリレンジアミン(東京化成社製)20gを加え、25℃で攪拌し続けた。4時間攪拌した後、HPLC(Waters社製)でビスフェノールA型エポキシ樹脂の消失を確認。攪拌している水3Lの中に反応液を徐々に加え、15分攪拌した後水を取り除き、粘性物を得た。得られた粘性物を、50℃のオーブンで減圧乾燥させ固化物を得た。
【0092】
室温まで完全に冷却した固形物をカッターミル(IKA社製)で平均直径100μm程度に粗粉砕し、最終的に高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒子径2.2μmのアミンアダクト化合物を製造した。
【0093】
以上の操作で得られたアミンアダクト化合物を「H2」とした。
【0094】
[比較例3]
イミダゾール化合物の合成
2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加物(四国化成社製、2MA−OK)を高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒子径2.0μmのイミダゾール化合物を製造した。
上記で得られたイミダゾール化合物を「H3」とした。
【0095】
実施例及び比較例の化合物について、以下の条件で測定した。
【0096】
[FT−IRスペクトル]
以下の測定装置及び測定条件にて、FT−IRスペクトルを測定した。
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計(製品名:spectrum one、パーキンエルマー社製)
【0097】
実験例1 安定性試験
[液安定性]
実施例1〜3のイソシアネート付加アミン化合物(B)と比較例1〜3のアミン化合物を熱硬化剤として用いて、実施例1、2、比較例1、2は、熱硬化剤15重量部と、ビスフェノールA型エポキシアクリル樹脂(KR−850CRP、KSM社製)100重量部とを配合し、実施例3と比較例3は、熱硬化剤6重量部と、ビスフェノールA型エポキシアクリル樹脂(KR−850CRP、KSM社製)100重量部とを配合し、樹脂組成物を作製した。なお、ビスフェノールA型エポキシアクリル樹脂は、エポキシ基1当量に対して、アクリロイル基が1当量であった。この樹脂組成物が25℃となるように恒温処理し、RE−105U型粘度計(東機産業社製)に3°×R7.7コーンロータを取り付け、対象となる樹脂組成物0.15mlをコーンロータ内にセットし、2.5rpmで25℃の樹脂組成物の粘度を測定した。測定対象とした樹脂組成物を2週間静置し、2週間後の該樹脂組成物の粘度を上記方法で測定し、初期の粘度から2週間後の粘度の変化率(%/2week)を算出した。測定レンジオーバーの場合は、測定不可とした。なお、測定レンジオーバーの基準は、1,200,000mPa・sである。
【0098】
[加温液安定性]
実施例1〜3のイソシアネート付加アミン化合物(B)と比較例1〜3のアミン化合物を熱硬化剤として用いて、熱硬化剤15重量部と、ビスフェノールA型エポキシアクリル樹脂(KR−850CRP、KSM社製)100重量部とを配合し、滴下シール剤樹脂組成物を作製した。なお、ビスフェノールA型エポキシアクリル樹脂は、エポキシ基1当量に対して、アクリロイル基が1当量である。この樹脂組成物が40℃となるように恒温処理し、RE−105U型粘度計(東機産業社製)に3°×R7.7コーンロータを取り付け、対象となる未硬化の滴下シール剤組成物0.15mlをコーンロータ内にセットし、2.5rpmで粘度を測定した。なお、粘度の測定自体は25℃で行った。測定対象とした樹脂組成物を22時間静置し、22時間後の該樹脂組成物の粘度を上記方法で測定し、初期の粘度から22時間後の粘度の変化率(%/22hour)を算出した。測定レンジオーバーの場合は、測定不可とした。なお、測定レンジオーバーの基準は、1,200,000mPa・sである。
液安定性及び加温液安定性の結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1の結果から明らかなように、アミン化合物を任意のイソシアネートで付加した、イソシアネート付加アミン化合物は、液安定性、加温液安定性の変化率が小さく、特に加温液安定性の変化率が小さいことが、比較例の結果と比べると顕著であることが明らかである。
【0101】
実験例2 硬化性試験
実施例1〜3のイソシアネート付加アミン化合物と比較例1〜3のアミン化合物を熱硬化剤として用い、熱硬化剤15重量部と、光開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE819、Ciba社製)を2重量部と、ビスフェノールA型エポキシアクリル樹脂(KR−850CRP、KSM社製)100重量部とを配合し、滴下シール剤組成物を製造した。
【0102】
上記の配合物を、以下の表2に記載の2つの条件(120℃1時間のみ、及びUV3000mJ/cm処理後120℃1時間)で硬化し、得られた硬化物をFT−IRにて測定し、硬化性の評価を行った。エポキシ硬化率の算出方法は、以下の式を用いた。また、アクリル硬化率は、以下の式におけるエポキシ基のピークをアクリル基のピークに置き換えて算出した。
【0103】
【数2】

【0104】
基準ピーク:1540〜1480cm−1(ピークトップ1510cm−1付近)
エポキシ基のピーク:925〜895cm−1(ピークトップ910cm−1付近)
アクリル基のピーク:1650〜1625cm−1(ピークトップ1635cm−1付近)
【0105】
硬化性試験の結果を表2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
表2の結果より、イソシアネート処理しても顕著な硬化性の低下はみられなかった。つまり、イソシアネート処理しても、硬化性が低下せずに、液安定性を向上させることができる。なお、硬化性が低下すれば、液安定が向上するのは当然のことである。
【0108】
実験例3 洗浄性試験
実施例1〜3のイソシアネート付加アミン化合物と比較例1〜3のアミン化合物を熱硬化剤として用いて、熱硬化剤15gと、光開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE819、Ciba社製)を2gと、ビスフェノールA型エポキシアクリル樹脂(KR−850CRP、KSM社製)100重量部とを配合し、樹脂組成物を製造した。この樹脂組成物を用いて、洗浄性の評価を行った。なお、ビスフェノールA型エポキシアクリル樹脂は、エポキシ基1当量に対して、アクリロイル基が1当量であった。
【0109】
洗浄性の評価方法
1mlテルモシリンジに、未硬化の樹脂組成物を0.1ml取り、ガラス板に線状に塗布する。300mlビーカーにアセトンを200ml入れ、その中に、スライドガラスに塗布した配合物が浸かるように立てかける。5分静置した後、振動を与えないように取り出し、スライドガラスの状態を観察する。樹脂組成物が残っているものを×、痕跡が残っているものを△、痕跡も見られないものを○とする。
【0110】
洗浄性の評価の結果を表3に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
比較例2のアミンアダクト化合物である硬化剤を含む樹脂組成物は洗浄性が劣っていたが、イソシアネート付加処理することで、アセトン洗浄性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の硬化剤は、液安定性に優れ、かつ洗浄性に優れている。よって、本発明の硬化剤を含む滴下シール剤組成物は極めて有用である。また、本発明の硬化剤は、熱硬化性樹脂組成物の硬化剤として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ化合物、及び
(B)アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤
を含む、滴下シール剤組成物。
【請求項2】
請求項1記載の滴下シール剤組成物を用いて得られた、表示素子。
【請求項3】
アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95795(P2013−95795A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237799(P2011−237799)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】