説明

漏えい水収集装置、原子力プラントおよび漏えい監視方法

【課題】炉心損傷事故時の注水遅れによるコアキャッチャーの破損リスクおよび溶融炉心落下時の水蒸気爆発リスクを低減する。
【解決手段】原子力発電プラントに、格納容器2の内部で原子炉容器1の下方に配置されて上に開いたコリウム保持容器62と、その開口部の縁よりも低い位置の出口まで外面に沿って延びる冷却流路50を形成するペデスタル壁14などの構造体と、冷却流路50に冷却水を供給する給水配管12と、給水配管12に設けられた給水弁8と、開口部を覆うドレン集積蓋5と、を備える。冷却流路50をドレン廃液サンプとして用いることで、冷却流路50に常時冷却水が存在している状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉心を収める原子炉容器を格納する格納容器の内部に設けられた機器および弁からの漏えい水を収集する漏えい水収集装置、それを用いた原子力プラント、ならびに、漏えい監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉では、原子炉冷却材圧力バウンダリから格納容器への漏えいに対する監視設備の一つとして、ドライウェル床ドレン廃液サンプ水量測定装置が設けられている。ドライウェル床ドレン廃液サンプ水量測定装置は、漏えい液体が最終的に集まるドライウェル床ドレン廃液サンプの水位を測定することによって漏えいを検知する。
【0003】
ドライウェル床ドレン廃液サンプは、下部ドライウェルのコンクリート床面を掘り下げ、ライナーを内張りして設けられている。ドライウェル床ドレン廃液サンプには、ドライウェル低電導度廃液(LCW)サンプとドライウェル高電導度廃液(HCW)サンプの2種類がある。
【0004】
LCWサンプは各機器・弁とドレン配管で接続され、それらのドレン水を集積する。また、HCWサンプには制御棒駆動機構フランジ部からの漏えい水、弁フランジ部からの漏えい水、原子炉機器冷却水の漏えい水など、漏えい箇所を特定できない部分からの漏えい水が集積される。LCWサンプおよびHCWサンプの水位は、常時監視され、水位の変化率が大きくなった場合に警報が表示される。
【0005】
また、水冷却型原子炉では、原子炉圧力容器内への給水の停止や、原子炉圧力容器に接続された配管の破断により冷却水が喪失すると、原子炉水位が低下し炉心が露出して冷却が不十分になる可能性がある。このような場合を想定して、水位低下の信号により自動的に原子炉は非常停止され、非常用炉心冷却装置による冷却材の注入によって炉心を冠水させて冷却し、炉心溶融事故を未然に防ぐようになっている。
【0006】
しかし、極めて低い確率ではあるが、非常用炉心冷却装置が作動せず、かつ、その他の炉心への注水装置も利用できない事態も想定され得る。このような場合、原子炉水位の低下により炉心は露出し、十分な冷却が行われなくなり、原子炉停止後も発生し続ける崩壊熱によって燃料棒温度が上昇し、最終的には炉心溶融に至ることが考えられる。
【0007】
このような事態に進展すると、高温の炉心溶融物(コリウム)が原子炉圧力容器下部に溶け落ち、さらに原子炉圧力容器下鏡を溶融貫通して、格納容器内の床上に落下するに至る。格納容器床を形成するコンクリートとコリウムの反応が継続すると、格納容器破損に至り、格納容器内の放射性物質を外部環境へ放出させるおそれがある。このようなコリウムとコンクリートの反応を抑制するためにコアキャッチャーと呼ばれる設備が提案されている。圧力容器から落下したコリウムを耐熱材で受け止めて、注水手段と組み合わせてコリウムの冷却を図る設備である(たとえば特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3150451号公報
【特許文献2】特開2007−232529号公報
【特許文献3】特開2007−225356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、ドライウェル床ドレン廃液サンプは、下部ドライウェル床面のコンクリートを掘り下げ、ライナーを内張りして設けられている。しかし、コアキャッチャーを下部ドライウェルに設置した場合には、ドライウェルの床面に直接ドレン廃液サンプを設置することは困難である。特許文献3には、コアキャッチャーの上面にドレンサンプを設ける方法が開示されている。
【0010】
また、コリウム落下時にコアキャッチャー内側に冷却水が存在すると、高温コリウムと水との相互作用によって水蒸気爆発が生じる可能性がある。従来のコアキャッチャーでは、水蒸気爆発のリスクを回避するために、コリウムの落下後に冷却水の供給を行う構造となっている。
【0011】
炉心溶融に至るような事故の場合、電源喪失などの要因によって動的機器が使えない可能性が高い。このような場合でも冷却水の供給が行えるよう、溶融弁を用いた重力落下式給水方法が提案されている。しかし、溶融弁の作動が遅れた場合あるいは、所定の注水量が確保できない場合には、コアキャッチャーの温度が上昇し、冷却流路が破損して、コリウムが格納容器床面のコンクリートと接触するおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、炉心損傷事故時の注水遅れによるコアキャッチャーの破損リスクおよび溶融炉心落下時の水蒸気爆発リスクを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明は、炉心を収める原子炉容器を格納する格納容器の内部に設けられた機器および弁からの漏えい水を収集する漏えい水収集装置において、前記格納容器の内部で前記原子炉容器の下方に配置されて上に開いたコリウム保持容器と、前記コリウム保持容器の開口部の縁よりも低い位置の出口まで前記コリウム保持容器の外面に沿って延びる冷却流路を形成する構造体と、前記冷却流路に冷却水を供給する給水配管と、前記給水配管に設けられた給水弁と、前記開口部を覆うドレン集積蓋と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、原子力プラントにおいて、炉心を収める原子炉容器と、前記原子炉容器を格納する格納容器と、前記格納容器の内部で前記原子炉容器の下方に配置されて上に開いたコリウム保持容器と、前記コリウム保持容器の開口部の縁よりも低い位置の出口まで前記コリウム保持容器の外面に沿って延びる冷却流路を形成する構造体と、前記開口部を覆うドレン集積蓋と、前記冷却流路に冷却水を供給する給水配管と、前記給水配管に設けられた給水弁と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、炉心を収める原子炉容器を格納する格納容器の内部に設けられた機器および弁からの水の漏えいを監視する漏えい監視方法において、前記格納容器の内部で前記原子炉容器の下方に配置されて上に開いたコリウム保持容器に向かって落ちる漏えい水を前記コリウム保持容器の開口部を覆うドレン集積蓋で受け止めて、前記コリウム保持容器の開口部の縁よりも低い位置の出口まで前記コリウム保持容器の外面に沿って形成された冷却流路に導く工程と、前記冷却流路の水位が所定の高さを超えたときに前記冷却流路から水を排出する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、炉心損傷事故時の注水遅れによるコアキャッチャーの破損リスクおよび溶融炉心落下時の水蒸気爆発リスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る沸騰水型原子力発電所の第1の実施の形態における原子炉格納容器の立断面図である。
【図2】図1のII−II矢視平断面図である。
【図3】図2のIII−III矢視立断面図である。
【図4】図2のIV−IV矢視立断面図である。
【図5】図2のV−V矢視立断面図である。
【図6】図2のVI−VI矢視立断面図である。
【図7】本発明に係る沸騰水型原子力発電所の第1の実施の形態におけるドレン集積蓋近傍の斜視図である。
【図8】本発明に係る沸騰水型原子力発電所の第2の実施の形態におけるコアキャッチャー近傍の平断面図である。
【図9】図8のIX−IX矢視立断面図である。
【図10】本発明に係る沸騰水型原子力発電所の第3の実施の形態におけるコアキャッチャー近傍の立断面図である。
【図11】本発明に係る沸騰水型原子力発電所の第3の実施の形態における炉心溶融事故の圧力容器底部破損時に想定される格納容器雰囲気圧力条件でのコアキャッチャー近傍の立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る漏えい水収集装置の実施の形態を、沸騰水型原子力発電所を例として、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る沸騰水型原子力発電所の第1の実施の形態における原子炉格納容器の立断面図である。図2は、図1のII−II矢視平断面図である。図3は、図2のIII−III矢視立断面図である。図4は、図2のIV−IV矢視立断面図である。図5は、図2のV−V矢視立断面図である。図6は、図2のVI−VI矢視立断面図である。図7は、本実施の形態におけるドレン集積蓋近傍の斜視図である。
【0020】
本実施の形態の沸騰水型原子力発電所は、原子炉圧力容器1、格納容器2、漏えい水収集装置を有している。原子炉の炉心40は、原子炉圧力容器1の内部に形成されている。原子炉圧力容器1は、格納容器2に格納されている。漏えい水収集装置は、コアキャッチャー3とドレン収集蓋5とを備えている。
【0021】
格納容器2は、ペデスタル床41およびペデスタル床41から上方に延びる円筒状のペデスタル壁14を有している。原子炉圧力容器1は、ペデスタル壁14に支持されている。原子炉圧力容器1の下方のペデスタル壁14で囲まれた領域は、ドライウェル領域と呼ばれる。また、原子炉圧力容器1の下部には、炉心40に制御棒を挿入する制御棒駆動機構を保守するための保守用プラットホーム6が設けられている。
【0022】
ペデスタル壁14の外側には、圧力抑制プール42が形成されている。ペデスタル壁14の内部にはベント管15が埋め込まれている。ベント管15は配管破断などの事故時にドライウェル11に大量の水蒸気が放出された場合に、圧力抑制プール42に水蒸気を導くための管である。
【0023】
コアキャッチャー3は、ペデスタル床41の上で、原子炉圧力容器1の真下に配置される。コアキャッチャー3は、上に開いたコリウム保持容器62を有している。コリウム保持容器62は、たとえば上に開いた円錐形の底部と円筒形の壁とが結合した形状をしている。
【0024】
コリウム保持容器62の外側には、底面および側面に沿って、コリウム保持容器62に堆積したコリウムを底面から冷却するための冷却流路50が形成されている。冷却流路50は、ペデスタル壁14、コリウム保持容器62およびその他の構造体によって形成されている。冷却流路50の出口は、コリウム保持容器62の開口部の縁よりも低い位置に形成されている。冷却流路50の出口は、たとえばコリウム保持容器62の外周に沿ってリング状に形成されている。
【0025】
また、コアキャッチャー3は、冷却流路50に冷却水を供給する給水配管43を有している。給水配管43は、たとえばベント管15から分岐して、圧力抑制プール42と冷却流路50の出口の上部で下に向かう開口との間に延びている。給水配管43の途中には給水弁8が設けられている。給水弁8は、たとえばコリウム落下時の温度上昇を検知して作動する溶融弁である。
【0026】
格納容器2の上部には、プール水に浸漬された熱交換器9が設けられる。熱交換器9には、ドライウェル11に開口した蒸気供給配管10と、冷却流路50に接続された凝縮水ドレン配管12が接続されている。
【0027】
ドレン集積蓋5は、コリウム保持容器62の開口部を覆っている。ドレン集積蓋5は、制御棒駆動機構の保守用プラットホーム6から下方に延びる支持柱13で吊り下げられて、中央部とその中央部よりも低い周辺部に向かう斜面を備えている。ドレン集積蓋5は、楕円の短軸で折り曲げた形状に形成された金属板などの水密な板であり、支持材16で支持されている。ドレン集積蓋5には、ドレン集積蓋5を貫通する連通口24が設けられている。連通口24は、たとえばドレン集積蓋5の下側で開いた口からドレン集積蓋5の上側で下に向かって開いた口までドレン集積蓋5を貫通して延びた管である。
【0028】
コリウム保持容器62は、さらにドレン集積蓋5の外縁に沿って、その外縁よりも高い位置まで延びた耐熱堰17を備えている。耐熱堰17の内側は、耐熱材で覆われている。ドレン集積蓋5と耐熱堰17との接合部分は水密になるように、シールが施されている。耐熱堰17には、ドレン集積蓋5の外縁の最も低い位置と向かい合う部分にドレン孔19が形成されている。耐熱堰17は、コリウム保持容器62と一体として形成されていてもよいし、コリウム保持容器62に取り付けたものであってもよい。
【0029】
耐熱堰17の上端とペデスタル壁14との間は、リング状の多孔板18で覆われている。多孔板18は、たとえばグレーチングである。
【0030】
漏えい水収集装置は、さらに、格納容器2の内部に設けられた機器および弁からの漏えい水を冷却流路50に導くドレン配管20を有している。ドレン配管20は、たとえばドレンサンプカバー23を貫通して、冷却流路50の出口の上部で下に向かう開口まで延びている。ドレンサンプカバー23は、ペデスタル壁14の内面に沿ったリング状に形成されて冷却流路50の出口の上に設けられている。
【0031】
漏えい水収集装置は、さらに、水位測定器44およびサンプポンプ7を有している。水位測定器44は、冷却流路50の水位を測定する。サンプポンプ7は、水位測定器44で測定された冷却流路50の水位が所定の高さを超えたときに、図中Hで示される冷却水排出経路に沿って、冷却流路50から冷却水を排出する冷却水排出機である。サンプポンプ7によって排出される冷却水は、たとえば廃液処理系(図示せず)に送られる。
【0032】
給水弁8およびサンプポンプ7は、ドレンサンプカバー23と多孔板18との間に配置されている。
【0033】
また、漏えい水収集装置は、ドレン孔19から流れ出る漏えい水の温度を測定するドレン孔19の近傍に設けられた温度計21と、ドレン配管20から排出される漏えい水の温度を測定するドレン配管20の出口近傍に設けられた温度計22とを有している。
【0034】
このような沸騰水型原子力発電所において、通常運転時には、コリウム保持容器62はドレン集積蓋5で蓋をされた状態になっている。このため、原子炉冷却材の漏えい水がコリウム保持容器62の内側に溜まることはない。
【0035】
さらに、ドレン集積蓋5は、中央部とその中央部よりも低い周辺部に向かう斜面を備えているため、ドレン集積蓋5に落下したドレン水は、周辺部に向かって斜面に沿って流れていく。ドレン集積蓋5の外縁には耐熱堰17が設けられているが、最も低い位置にドレン孔19が形成されているため、ドレン集積蓋5の周辺部に流れていったドレン水は、ドレン孔19を通ってその外側に設けられた冷却流路50に流れ込む。
【0036】
また、ドライウェル11内の各機器・弁からの漏えい水は、ドレン配管20を通って冷却流路50に集められる。したがって、ドレン配管20で捕集される漏えい水はドレン配管20を通って、ドレン配管20で捕集されないその他の漏えい水はドレン集積蓋5によって冷却流路50に集められる。このようにして冷却流路50は、通常運転時に、サンプ水で満たされた状態となる。
【0037】
冷却流路50の水位は、水位測定器44で常時監視される。冷却流路4の水位の変動が規定値よりも大きい場合には、中央制御室に警報が表示される。また、冷却流路4の水位が所定の高さの規定値を超えた場合には、サンプポンプ7が冷却流路50のサンプ水を排出する。つまり、コアキャッチャー3の冷却流路50は、通常運転時に、ドレン廃液サンプとして用いられる。
【0038】
また、サンプポンプ7の運転時間および起動間隔は監視され、規定値を超えた場合に中央制御室に警報が表示される。温度計21,22が規定値を超える温度上昇を検出した場合も中央制御室に警報が表示される。温度計21,22をドレン配管20の近傍およびドレン孔19の近傍に設けることで、漏えい水による温度上昇を感度良く検知することができる。
【0039】
炉心溶融事故時には、原子炉圧力容器1の底部が破損し、コリウムがドレン集積蓋5の上に落下する。ドレン集積蓋5の上に落下したコリウムは、斜面に沿って周辺部に向かって移動したとしても、耐熱堰17で堰きとめられ、冷却流路50に流入するおそれは小さい。耐熱堰17に設けられたドレン孔19を、ドレン水を通過させるのに十分な大きさを有し、かつ、侵入したコリウムを耐熱堰17の熱容量で固化させるのに十分な小ささを有するよう設計しておくことにより、コリウムのドレン孔19の通過を妨ぐことができる。ドレン集積蓋5は、コリウムの熱によって溶融破損し、コリウムはコアキャッチャー3のコリウム保持容器62に落下する。
【0040】
コリウム保持容器62は、冷却流路4に満たされているサンプ水によって外面が冷却され、コアキャッチャー3の構造材が直ちに高温になることはない。また、コリウムの冷却に伴って冷却流路50で発生した水蒸気は、ドライウェル11の上部に設けられた熱交換器9で凝縮され、冷却水となって再び冷却流路に戻ってくる。コリウムの熱で雰囲気温度が上昇し、コリウムからの輻射も加わって給水弁8が開くと、圧力抑制プール42の冷却水が冷却流路4に供給される。冷却流路4にその体積以上の冷却水が供給されると、冷却水は多孔板18を通ってコリウム保持容器62の内部に溢水し、コリウムを上面からも冷却するようになる。
【0041】
ドレン廃液サンプとしてコアキャッチャー3の冷却流路50を用いることで、冷却流路50に常時冷却水が存在している状態となり、炉心損傷事故時の注水遅れによるコアキャッチャー3の破損リスクが低減される。さらに、ドレン廃液サンプとして冷却流路50の水位が常に制御されているため、炉心損傷事故時にコリウムが水中に落下する確率は抑制され、コリウム落下時の水蒸気爆発のリスクを極めて低くすることができる。
【0042】
格納容器2の漏えい試験の際には、格納容器2の雰囲気は加圧される。このとき、ドレン集積蓋5には連通口24が設けられるため、連通口24を通って雰囲気ガスが格納容器2の空間部からコアキャッチャー3のコリウム保持容器62の内側に流入する。このため、格納容器2の漏えい試験時に格納容器1の内部を加圧しても、ドレン集積蓋5で覆われたコアキャッチャー3のコリウム保持容器62の圧力は、格納容器2の雰囲気とほぼ同じ圧力となる。したがって、内外差圧によるドレン集積蓋5の破損を抑制することができる。
【0043】
コアキャッチャー3の蓋を兼ねるドレン集積蓋5は、制御棒駆動機構の保守用プラットホームか6ら吊り下げて支持される。このため、コアキャッチャー3のコリウム保持容器62の内側に敷設されている耐熱材を痛めるおそれが小さい。また、ドレン集積蓋5は、楕円の短軸で折り曲げた形状としているため、傾斜角度が等しい楕円平板のドレン集積面を用いた場合と比較して、耐熱堰17の上端までのコアキャッチャー3の容器高さを低くすることができる。このため、格納容器2の内部の物量を削減することができる。
【0044】
多孔板18は、通常運転時に、サンプポンプ7を設置するための架台、および、作業用足場として機能する。また、多孔板18は、炉心溶融事故時にはコアキャッチャーの冷却流路に異物が流入しないよう、フィルターの役割を果たす。
【0045】
[第2の実施の形態]
図8は、本発明に係る沸騰水型原子力発電所の第2の実施の形態におけるコアキャッチャー近傍の平断面図である。図9は、図8のIX−IX矢視立断面図である。
【0046】
本実施の形態の沸騰水型原子力発電所では、冷却流路51,52は、仕切り板25によって2つの領域に仕切られている。一方の冷却流路51には、ドレン配管20からの漏えい水が流入するようになっている。他方の冷却流路52には、ドレン集積蓋5で集められた漏えい水が流入するようになっている。ドレンサンプカバー23は、ペデスタル壁14と耐熱堰17との間のリング状の開口を覆うように設けられていて、冷却流路51にドレン配管20からの漏えい水以外の漏えい水が流入することを防止する。
【0047】
このような沸騰水型原子力発電所では、ドレン配管20からの漏えい水と、その他の漏えい水を区別して漏えい検知を行うことができる。つまり、ドライウェル低電導度廃液(LCW)サンプとドライウェル高電導度廃液(HCW)サンプとによる漏えい監視を行うことができる。
【0048】
[第3の実施の形態]
図10は、本発明に係る沸騰水型原子力発電所の第3の実施の形態におけるコアキャッチャー近傍の立断面図である。
【0049】
本実施の形態において、ドレン集積蓋4は伸縮可能な膜で形成されている。このドレン集積蓋4によって、コアキャッチャーのコリウム保持容器62の内側の領域と格納容器内雰囲気とは隔離されている。通常運転時には、コリウム保持容器62の内側の領域の圧力P1を、格納容器内雰囲気の圧力P2よりも高く維持しておく。これにより、通常運転時には、ドレン集積蓋4は、上に凸の状態に保たれる。
【0050】
また、炉心溶融事故の圧力容器底部破損時には、格納容器雰囲気の圧力P2は数気圧程度に上昇する。コリウム保持容器62の内側の領域の圧力P1を、炉心溶融事故の圧力容器底部破損時に想定される格納容器雰囲気圧力条件においては通常運転時と内外圧力差が減少あるいは逆転して、ドレン集積蓋4が凹んだ状態になるような値とする。
【0051】
図11は、本実施の形態における炉心溶融事故の圧力容器底部破損時に想定される格納容器雰囲気圧力条件でのコアキャッチャー近傍の立断面図である。
【0052】
通常運転時には、上に凸状になったドレン集積蓋4によって、ドレン水は冷却流路50に集積される。格納容器2の漏えい試験時には、格納容器雰囲気の圧力P2が上昇する。このとき、ドレン集積蓋4の膨らみ方は、内外差圧(ΔP=P1−P2)の値によって変化するが、ドレン集積蓋4にかかる応力は増大しない。
【0053】
炉心溶融事故時には格納容器内雰囲気圧力は数気圧に上昇すると予想され、このときドレン集積蓋4は凹の状態になっている。圧力容器から落下したコリウムは、ドレン集積蓋4の構造が保たれているうちはドレン集積蓋4によってその中心部に集積され、ドレン集積蓋4がコリウムの熱で溶けた後はコリウム保持容器62に落下する。
【0054】
このような沸騰水型原子力発電所では、ドレン集積蓋4を支持する支持柱や支持材が不要であるから、施工が容易となり、物量も低減できる。また、格納容器漏えい試験時にドレン集積蓋4が差圧によって破損することが抑制される。炉心溶融事故時には、コリウムを集積した後に、コアキャッチャー3の上に落下させることができる。
【0055】
[他の実施の形態]
上述の各実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。たとえば加圧水型原子炉など他のタイプの原子炉施設にも適用できる。また、各実施の形態の特徴を組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…原子炉圧力容器、2…格納容器、3…コアキャッチャー、4…ドレン集積蓋、5…ドレン集積蓋、6…保守用プラットホーム、7…サンプポンプ、8…給水弁、9…熱交換器、10…蒸気供給配管、11…ドライウェル、12…凝縮水ドレン配管、13…支持柱、14…ペデスタル壁、15…ベント管、16…支持材、17…耐熱堰、18…多孔板、19…ドレン孔、20…ドレン配管、21…温度計、22…温度計、23…ドレンサンプカバー、24…連通口、25…仕切り板、40…炉心、41…ペデスタル床、42…圧力抑制プール、43…給水配管、44…水位測定器、50…冷却流路、51…冷却流路、52…冷却流路、62…コリウム保持容器、H…冷却水排出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心を収める原子炉容器を格納する格納容器の内部に設けられた機器および弁からの漏えい水を収集する漏えい水収集装置において、
前記格納容器の内部で前記原子炉容器の下方に配置されて上に開いたコリウム保持容器と、
前記コリウム保持容器の開口部の縁よりも低い位置の出口まで前記コリウム保持容器の外面に沿って延びる冷却流路を形成する構造体と、
前記冷却流路に冷却水を供給する給水配管と、
前記給水配管に設けられた給水弁と、
前記開口部を覆うドレン集積蓋と、
を有することを特徴とする漏えい水収集装置。
【請求項2】
前記ドレン集積蓋は、中央部とその中央部よりも低い周辺部に向かう斜面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の漏えい水収集装置。
【請求項3】
前記ドレン集積蓋の外縁に沿って設けられて前記周辺部と向かい合う部分で貫通するドレン孔が形成された堰、を有することを特徴とする請求項2に記載の漏えい水収集装置。
【請求項4】
前記ドレン孔から流れ出る漏えい水の温度を測定する第1の温度計を有することを特徴とする請求項3に記載の漏えい水収集装置。
【請求項5】
前記ドレン集積蓋は伸縮可能な膜で形成されていて、原子炉通常運転時は、前記容器と前記ドレン集積蓋とで囲まれる空間はその外側よりも圧力が高く設定されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の漏えい水収集装置。
【請求項6】
前記ドレン集積蓋は、支持柱によって吊り下げられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の漏えい水収集装置。
【請求項7】
前記格納容器内の機器および弁からの漏えい水を前記冷却流路に導くドレン配管を有することを有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の漏えい水収集装置。
【請求項8】
前記冷却流路は、前記ドレン配管からの漏えい水を収集する領域とそれ以外の漏えい水を収集する領域とに分割されていることを特徴とする請求項7に記載の漏えい水収集装置。
【請求項9】
前記ドレン配管から排出される漏えい水の温度を測定する第2の温度計を有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の漏えい水収集装置。
【請求項10】
前記冷却流路の水位を測定する水位測定器と、
前記冷却流路の水位が所定の高さを超えたときに前記冷却流路から前記冷却水を排出する冷却水排出機と、
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の漏えい水収集装置。
【請求項11】
前記出口を覆う多孔板、を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の漏えい水収集装置。
【請求項12】
炉心を収める原子炉容器と、
前記原子炉容器を格納する格納容器と、
前記格納容器の内部で前記原子炉容器の下方に配置されて上に開いたコリウム保持容器と、
前記コリウム保持容器の開口部の縁よりも低い位置の出口まで前記コリウム保持容器の外面に沿って延びる冷却流路を形成する構造体と、
前記開口部を覆うドレン集積蓋と、
前記冷却流路に冷却水を供給する給水配管と、
前記給水配管に設けられた給水弁と、
を有することを特徴とする原子力プラント。
【請求項13】
炉心を収める原子炉容器を格納する格納容器の内部に設けられた機器および弁からの水の漏えいを監視する漏えい監視方法において、
前記格納容器の内部で前記原子炉容器の下方に配置されて上に開いたコリウム保持容器に向かって落ちる漏えい水を前記コリウム保持容器の開口部を覆うドレン集積蓋で受け止めて、前記コリウム保持容器の開口部の縁よりも低い位置の出口まで前記コリウム保持容器の外面に沿って形成された冷却流路に導く工程と、
前記冷却流路の水位が所定の高さを超えたときに前記冷却流路から水を排出する工程と、
を有することを特徴とする漏えい監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−237070(P2010−237070A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86030(P2009−86030)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】