説明

漏洩検知システム、漏洩検知装置及び漏洩検知方法

【課題】早期に大量漏洩を検知することが可能な漏洩検知システム、漏洩検知装置及び漏洩検知方法を提供する。
【解決手段】漏洩検知システム1は、ガスボンベ110から複数の住宅2側に燃料ガスを供給するメイン流路121と、メイン流路121をバイパスするバイパス流路122と、メイン流路121に設けられた親調整器140と、バイパス流路122に設けられ、親調整器140の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器150と、所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知装置160とを備えている。漏洩検知装置160は、親調整器140における圧力に応じた信号を出力する圧力センサにより出力された信号から圧力降下量を算出する圧力降下量算出部と、算出した圧力降下量から流量を推定する流量推定部と、推定した流量から所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩検知システム、漏洩検知装置及び漏洩検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、埋設管やゴム管の破損により生じた大量なガス漏れを確実に検出する漏洩検知装置が提案されている。この漏洩検知装置は、圧力センサによりガス圧力を検出し、検出されたガス圧力が正常範囲外であるか否かを判断する。そして、漏洩検知装置は、正常範囲外である状態が所定時間以上継続した場合に、大量漏洩であると判断する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−31580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の漏洩検知装置では、正常範囲外のガス圧力が所定時間以上継続しなければ、大量漏洩を判断できない。特に、漏洩検知装置がLP(Liquefied Petroleum)ガスを供給するガス供給システムに用いられている場合、LPガスボンベ内のガスが殆ど流出してしまう可能性もある。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、早期に大量漏洩を検知することが可能な漏洩検知システム、漏洩検知装置及び漏洩検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の漏洩検知システムは、ガス供給元から複数の住宅側に燃料ガスを供給するメイン流路と、前記メイン流路をバイパスするバイパス流路と、前記メイン流路に設けられた親調整器と、前記バイパス流路に設けられ、前記親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器と、所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知装置と、を備えた漏洩検知システムであって、前記漏洩検知装置は、前記親調整器における圧力に応じた信号を出力する圧力計測手段により出力された信号から圧力降下量を算出する圧力降下量算出手段と、前記圧力降下量算出手段により算出された圧力降下量から流量を推定する流量推定手段と、前記流量推定手段により推定された流量から所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この漏洩検知システムによれば、親調整器における圧力に応じた信号から圧力降下量を算出する。ここで、流量が増加すると親調整器の圧力は低下する傾向がある。このため、算出された圧力降下量から流量を推定することができる。特に、圧力降下は流量増加にあわせて比較的瞬時に発生することから、早期に大量漏洩を検知することができる。
【0008】
また、本発明の漏洩検知システムにおいて、前記圧力降下量算出手段は、規定流量以上の流量が発生している場合に圧力降下量を算出することが好ましい。
【0009】
この漏洩検知システムによれば、規定流量以上の流量が発生している場合に圧力降下量を算出するため、例えば流量が殆ど発生しておらず、周囲温度の変化によって圧力降下が発生する場合に、誤って大量漏洩と判断してしまう可能性を低減することができる。
【0010】
また、本発明の漏洩検知システムにおいて、前記親調整器は、ベンチュリ効果を抑制する効果抑制機構を有することが好ましい。
【0011】
この漏洩検知システムによれば、ベンチュリ効果を抑制する効果抑制機構を有するため、高流量域においても流量に応じて圧力が変化することとなり、多くの戸数を有する集合住宅等においても、圧力降下量から流量を推定することができる。
【0012】
また、本発明の漏洩検知装置において、ガス供給元から複数の住宅側に燃料ガスを供給するメイン流路をバイパスするバイパス流路に設けられた子調整器よりも調整圧力が低く設定された親調整器における圧力に応じた信号を出力するにより出力された信号から圧力降下量を算出する圧力降下量算出手段と、前記圧力降下量算出手段により算出された圧力降下量から流量を推定する流量推定手段と、前記流量推定手段により推定された流量から所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この漏洩検知装置によれば、親調整器における圧力に応じた信号から圧力降下量を算出する。ここで、流量が増加すると親調整器の圧力は低下する傾向がある。このため、算出された圧力降下量から流量を推定することができる。特に、圧力降下は流量増加にあわせて比較的瞬時に発生することから、早期に大量漏洩を検知することができる。
【0014】
また、本発明の漏洩検知方法において、ガス供給元から複数の住宅側に燃料ガスを供給するメイン流路と、前記メイン流路をバイパスするバイパス流路と、前記メイン流路に設けられた親調整器と、前記バイパス流路に設けられ、前記親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器と、所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知装置と、を備えた漏洩検知システムの漏洩検知方法であって、前記親調整器における圧力に応じた信号から圧力降下量を算出する圧力降下量算出工程と、前記圧力降下量算出工程において算出された圧力降下量から流量を推定する流量推定工程と、前記流量推定工程において推定された流量から所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
この漏洩検知方法によれば、親調整器における圧力に応じた信号から圧力降下量を算出する。ここで、流量が増加すると親調整器の圧力は低下する傾向がある。このため、算出された圧力降下量から流量を推定することができる。特に、圧力降下は流量増加にあわせて比較的瞬時に発生することから、早期に大量漏洩を検知することができる。
【0016】
本発明によれば、早期に大量漏洩を検知することが可能な漏洩検知システム、漏洩検知装置及び漏洩検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る漏洩検知システムを含むガス供給システムの構成図である。
【図2】図1に示した漏洩検知装置の詳細を示す構成図である。
【図3】図2に示した記憶部に記憶される親調整器の流量−圧力特性の一例を示すグラフである。
【図4】本実施形態に係る漏洩検知方法を示すフローチャートであって、初期値の記憶処理を示している。
【図5】本実施形態に係る漏洩検知方法を示すフローチャートであって、大量漏洩の判断処理を示している。
【図6】第2実施形態に係る親調整器の流量−圧力特性の一例を示すグラフである。
【図7】第2実施形態に係る親調整器のダイヤフラム上流流路の構造を示す図であって、(a)は断面図を示し、(b)は正面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る漏洩検知システムを含むガス供給システム1の構成図である。なお、以下では、LPガスを燃料ガスとして供給するガス供給システム1を例に説明するが、これに限らず、ガス供給システム1は都市ガスを供給するものであってもよい。
【0019】
ガス供給システム1は、ガスボンベ(ガス供給元)110から複数の住宅2に燃料ガスを供給する住宅設備である。このガス供給システム1は、漏洩検知システム100と、住宅側設備200とからなっている。漏洩検知システム100は、ガスボンベ110と、ガス流路120と、圧力調整器130〜150と、漏洩検知装置160とを備えている。
【0020】
ガス流路120は、ガスボンベ110から複数の住宅2側まで連続する流路であって、メイン流路121と、バイパス流路122とからなっている。メイン流路121は、ガスボンベ110から複数の住宅2側に燃料ガスを供給するメインとなる流路である。バイパス流路122は、メイン流路121をバイパスするものであって、両端がメイン流路121に接続されている。
【0021】
圧力調整器130〜150は、ガス流路120上に設けられ、閉塞状態と開放状態との2状態により下流側のガス圧力を調整するものである。このうち、元調整器130はガスボンベ110側に設けられている。また、親調整器140は、メイン流路121に設けられている。詳細に親調整器140は、メイン流路121のうちバイパス流路122によってバイパスされる部分に設けられている。子調整器150は、バイパス流路122に設けられ、親調整器140の調整圧力よりも調整圧力が高く設定されたものである。漏洩検知装置160は、ガス流路120のうちバイパス流路122上に設けられ、所定流量以上のガス漏洩(すなわち大量漏洩)を検知するものである。
【0022】
住宅側設備200は、複数の個別ガス流路210と、複数のバルブ220と、複数のガスメータ230と、複数のガス器具240とを備えている。複数の個別ガス流路210は、ガス流路120を通じて流れてきた燃料ガスを複数の住宅2に供給するものである。これら複数の個別ガス流路210は、ガス流路120から分岐するようにして、複数の住宅2にそれぞれに燃料ガスを供給する。
【0023】
バルブ220は、各個別ガス流路210の上流部位に設けられている。このバルブ220を開閉することにより、各住宅2の住居者は燃料ガスを家庭内に引き込むことができる。
【0024】
ガスメータ230は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。複数のガス器具240は、ガスストーブ、ファンヒータ、給湯器、床暖房、ガステーブル、及び、ガスBF風呂釜などである。
【0025】
このようなガス供給システム1において、小流量の燃料ガスは、親調整器140と子調整器150との調整圧力の違いから、親調整器140側を流れず、子調整器150側を介して流れることとなる。また、大流量の燃料ガスは、親調整器140及び子調整器150の双方を介して流れることとなる。
【0026】
図2は、図1に示した漏洩検知装置160の詳細を示す構成図である。図2に示すように、漏洩検知装置160は、圧力センサ(圧力計測手段)161と、流量センサ162と、記憶部163と、制御部164とを備えている。
【0027】
圧力センサ161は、親調整器140における圧力に応じた信号を出力するものであって、ピエゾ抵抗式や静電容量式などのセンサによって構成されている。図1に示すように、親調整器140は、親調整器140内から漏洩検知装置160まで接続するチューブ141を有しており、親調整器140内の圧力は漏洩検知装置160まで導かれる。圧力センサ161は、親調整器140から導かれた圧力を検出するように設置されており、親調整器140における圧力に応じた信号を出力することとなる。
【0028】
流量センサ162は、漏洩検知装置160の流路内におけるガス流量に応じた計測信号を出力するものであって、超音波センサやフローセンサなどで構成される。記憶部163は、各種データを記憶したものであって、後述する圧力初期値や、親調整器140の流量−圧力特性を記憶している。
【0029】
制御部164は、漏洩検知装置160の全体を制御するものであって、圧力降下量算出部(圧力降下量算出手段)164aと、流量推定部(流量推定手段)164bと、漏洩検知部(漏洩検知手段)164cと、遮断制御部164dとを備えている。なお、上記の記憶部163と制御部164とはCPU(Central Processing Unit)により構成することができる。
【0030】
圧力降下量算出部164aは、圧力センサ161により出力された信号から圧力降下量を算出するものである。例えば圧力降下量算出部164aは、1日の中で多めにガスを使っている時間帯の圧力を初期値として測定する。ここで、初期値が2.90kPaであったとする。圧力降下量算出部164aは、この初期値を記憶部163に記憶させる。その後、圧力降下量算出部164aは、圧力を測定し、測定した圧力と初期値との差を圧力降下量として算出することとなる。
【0031】
流量推定部164bは、圧力降下量算出部164aにより算出された圧力降下量から流量を推定するものである。この流量推定部164bは、記憶部163に記憶される親調整器140の流量−圧力特性に従って流量を推定する。
【0032】
図3は、図2に示した記憶部163に記憶される親調整器140の流量−圧力特性の一例を示すグラフである。図3に示すように、親調整器140は、流量が0L/hのときに圧力は3.10kPaを示し、流量が400L/hのときに圧力は2.95kPaを示している。同様に、流量が800L/hのときに圧力は2.93kPaを示し、流量が1500L/hのときに圧力は2.90kPaを示している。
【0033】
流量推定部164bは、図3に示したような流量−圧力特性に基づいて流量を推定する。具体的に説明すると、まず、初期値として流量が400L/hのときに圧力が2.95kPaであると記憶されている。圧力が0.50kPa低下したとする。このとき、流量推定部164bは、圧力降下量から、流量が1500L/hと推定する。
【0034】
再度、図2を参照する。漏洩検知部164cは、流量推定部164bにより推定された流量から所定流量以上のガス漏洩(すなわち大量漏洩)を検知するものである。ガス器具240が一斉に使用されたとしても1500L/h以上の流量が発生しない比較的小さな集合住宅(2戸や4戸など)において、例えば流量推定部164bにより1500L/hの流量が推定された場合、これは大量漏洩であるといえる。このため、漏洩検知部164cは、流量推定部164bにより推定された流量が1500L/hである場合に、大量漏洩であると検知する。
【0035】
なお、大量漏洩を検知するための所定流量は、集合住宅の大きさなどによって適宜設定できる。さらに、図3を参照すると、1500L/hと4000L/hとの圧力は同じ値となっている。このため、1500L/hを超える流量を推定することはできないが、例えば、初期値として流量が400L/hのときに圧力が2.95kPaであると記憶され、圧力が0.50kPa低下した場合、少なくとも1500L/hの流量が発生していると推定できるため、何ら問題ない。
【0036】
加えて、圧力は周囲温度の変化によって変動する。このため、流量推定部164bは、周囲温度に応じて初期値を補正したり、推定した流量結果を補正したりすることが望ましい。
【0037】
遮断制御部165dは、漏洩検知部164cにより大量漏洩が検知された場合に、遮断弁を弁閉動作させるものである。この遮断制御部165dは、直接遮断弁に弁閉する旨の信号を送ってもよいし、ガス管理センターなどに大量漏洩の事実を送信し、ガス管理センターから遮断弁に弁閉する旨の信号を送ってもよい。
【0038】
また、圧力降下量算出部164aは、規定流量(例えば21L/h)以上の流量が発生している場合に圧力降下量を算出することが望ましい。これにより、例えば流量が殆ど発生しておらず、周囲温度の変化によって圧力降下が発生する場合に、誤って大量漏洩と判断してしまう可能性を低減することができるからである。
【0039】
次に、本実施形態に係る漏洩検知方法について説明する。図4は、本実施形態に係る漏洩検知方法を示すフローチャートであって、初期値の記憶処理を示している。なお、図4に示す処理は初期的に1回だけ行われてもよいし、数日毎など予め定められた間隔で実行されてもよい。
【0040】
まず、図4に示すように、制御部162は、流量センサ162からの信号に基づいて、規定流量以上の流量が発生しているか否かを判断する(S1)。規定流量以上の流量が発生していないと判断した場合(S1:NO)、規定流量以上の流量が発生したと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0041】
一方、規定流量以上の流量が発生したと判断した場合(S1:YES)、制御部164は、所定の時間帯であるか否かを判断する(S2)。ここで、所定の時間帯とは、朝方や夕方など、他の時間帯よりもガス使用量が高まる時間帯である。
【0042】
所定の時間帯でないと判断した場合(S2:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、所定の時間帯であると判断した場合(S2:YES)、制御部164は、流量値及び圧力値を初期値として記憶部163に記憶させる(S3)。その後、図4に示す処理は終了する。
【0043】
なお、所定の時間帯であると判断した場合(S2:YES)に、初期値を記憶する理由は以下の通りである。まず、初期値は、流量推定部164bによる流量推定に用いられる。このとき、ガス使用量が小さかったときの流量値及び圧力値を初期値とすると、大流量が発生した場合における流量推定時に誤差が大きくなる可能性がある。
【0044】
図3に示すように、流量が200L/h未満の領域では、流量に応じて圧力の変動量が大きい。このため、測定誤差も大きくなる可能性が高く、ガス使用量が高まる所定時間帯の流量値及び圧力値を初期値として記憶することで、誤差を軽減することができる。特に、流量が180L/h未満では、親調整器140を介してガスが流れず、子調整器150のみを介してガスが流れる。このため、流量−圧力特性は、子調整器150を考慮すると、破線(図3参照)に示すようになる。このため、この領域における流量値及び圧力値を初期値として記憶してしまうと、誤差の発生要因となってしまう。よって、ガス使用量が高まる所定時間帯の流量値及び圧力値を初期値として記憶することで、一層誤差を軽減することができる。
【0045】
図5は、本実施形態に係る漏洩検知方法を示すフローチャートであって、大量漏洩の判断処理を示している。なお、図5に示す処理は、漏洩検知装置160の電源がオフされるまで、繰り返し実行されるものとする。
【0046】
まず、図5に示すように、制御部162は、流量センサ162からの信号に基づいて、規定流量以上の流量が発生しているか否かを判断する(S11)。規定流量以上の流量が発生していないと判断した場合(S11:NO)、規定流量以上の流量が発生したと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0047】
一方、規定流量以上の流量が発生したと判断した場合(S1:YES)、制御部164は、圧力センサ161からの信号に基づいて、親調整器140における圧力を計測する(S12)。次いで、圧力降下量算出部164aは、ステップS12において計測された圧力と図4のステップS3において記憶した初期値(圧力値)とから、圧力降下量を算出する(S13)。
【0048】
次に、流量推定部164bは、ステップS13において算出された圧力降下量、初期値(流量値)、及び、記憶部163に記憶されるデータテーブルから、流量を推定する(S14)。そして、漏洩検知部164cは、ステップS14において算出された流量が所定流量以上であるか否かを判断する(S15)。
【0049】
ステップS14において算出された流量が所定流量以上でないと判断した場合(S15:NO)、図5に示す処理は終了する。一方、ステップS14において算出された流量が所定流量以上であると判断した場合(S15:YES)、遮断制御部164dは、遮断弁を弁閉するための制御を実行する(S16)。その後、図5に示す処理は終了する。
【0050】
このようにして、本実施形態に係る漏洩検知システム1、漏洩検知装置160及び漏洩検知方法によれば、親調整器140における圧力に応じた信号から圧力降下量を算出する。ここで、流量が増加すると親調整器140の圧力は低下する傾向がある。このため、算出された圧力降下量から流量を推定することができる。特に、圧力降下は流量増加にあわせて比較的瞬時に発生することから、早期に大量漏洩を検知することができる。
【0051】
また、規定流量以上の流量が発生している場合に圧力降下量を算出するため、例えば流量が殆ど発生しておらず、周囲温度の変化によって圧力降下が発生する場合に、誤って大量漏洩と判断してしまう可能性を低減することができる。
【0052】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る漏洩検知システム1は、第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0053】
まず、第2実施形態に係る親調整器140は、ベンチュリ効果が抑制されている。すなわち、通常の親調整器140ではベンチュリ効果を発揮するための構造となっているため、図3に示す流量1500L/h以上の領域のように、流量の増加にあわせて圧力が低下しないようになっている。
【0054】
これに対して、第2実施形態に係る親調整器140は、ベンチュリ効果が抑制されているため、図6に示すように、流量1500L/h以上の領域であっても流量の増加にあわせて圧力が低下するようになっている。
【0055】
図6は、第2実施形態に係る親調整器140の流量−圧力特性の一例を示すグラフである。図6に示すように、ベンチュリ効果が抑制されることによって、親調整器140は、流量が1500L/hのときに圧力が2.90kPaであり、流量が4000L/hのときに圧力が2.85kPaとなる。
【0056】
また、第2実施形態において記憶部163は、図6に示すような流量−圧力特性を記憶している。従って、第2実施形態に係る流量推定部164bは、圧力降下量算出部164aにより算出された圧力降下量に基づいて、1500L/h以上の領域における流量について推定することができる。
【0057】
なお、ベンチュリ効果を抑制したことにより、流量−圧力特性は、流量200L/hから4000L/hまで略直線的になっている。よって、記憶部163は、流量200L/hから4000L/hまでの流量−圧力特性を直線近似した近似式を記憶していてもよい。
【0058】
ここで、親調整器140のベンチュリ効果を抑制する効果抑制機構は複数存在するが、好適には以下の効果抑制機構を採用するとよい。図7は、第2実施形態に係る親調整器140のダイヤフラム上流流路の構造を示す図であって、(a)は断面図を示し、(b)は正面図を示している。
【0059】
図7(a)に示すように、不図示のダイヤフラム上流の流路内には略H断面を有する弁141が設けられている。この弁141の上流側にはゴム部材142が取り付けられている。
【0060】
また、図7(a)及び図7(b)に示すように、弁141は、下流側の流路上方を塞ぐ突起部141aを有している。本実施形態において流路の上方側には、ダイヤフラムが設けられており、流路上方を塞ぐことによって流量下方からガスが流れ、このガスが上方に位置するダイヤフラムを押し上げることとなる。これにより、ベンチュリ効果が相殺されて抑制されることとなる。
【0061】
以上より、ベンチュリ効果が抑制されることから、1500L/h以上の流量について推定ができることとなり、比較的大きな集合住宅(5戸以上など)において、大量漏れを早期に検知することができる。
【0062】
このようにして、第2実施形態に係る漏洩検知システム1、漏洩検知装置160及び漏洩検知方法によれば、早期に大量漏洩を検知することができると共に、誤って大量漏洩と判断してしまう可能性を低減することができる。
【0063】
また、ベンチュリ効果を抑制する効果抑制機構を有するため、高流量域においても流量に応じて圧力が変化することとなり、多くの戸数を有する集合住宅等においても、圧力降下量から流量を推定することができる。
【0064】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0065】
例えば、本実施形態において漏洩検知装置160は圧力センサ161を備えているが、これに限らず、親調整器140が圧力センサを備え、その圧力センサからの信号を漏洩検知装置160に入力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…ガス供給システム
2…住宅
100…漏洩検知システム
110…ガスボンベ(ガス供給元)
120…ガス流路
121…メイン流路
122…バイパス流路
130…元調整器
140…親調整器
141…弁
141a…突起部
142…ゴム部材
150…子調整器
160…漏洩検知装置
161…圧力センサ(圧力計測手段)
162…流量センサ
163…記憶部
164…制御部
164a…圧力降下量算出部(圧力降下量算出手段)
164b…流量推定部(流量推定手段)
164c…漏洩検知部(漏洩検知手段)
164d…遮断制御部
200…住宅側設備
210…複数の個別ガス流路
220…複数のバルブ
230…複数のガスメータ
240…複数のガス器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給元から複数の住宅側に燃料ガスを供給するメイン流路と、
前記メイン流路をバイパスするバイパス流路と、
前記メイン流路に設けられた親調整器と、
前記バイパス流路に設けられ、前記親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器と、
所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知装置と、を備えた漏洩検知システムであって、
前記漏洩検知装置は、前記親調整器における圧力に応じた信号を出力する圧力計測手段により出力された信号から圧力降下量を算出する圧力降下量算出手段と、前記圧力降下量算出手段により算出された圧力降下量から流量を推定する流量推定手段と、前記流量推定手段により推定された流量から所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知手段と、
を備えることを特徴とする漏洩検知システム。
【請求項2】
前記圧力降下量算出手段は、規定流量以上の流量が発生している場合に圧力降下量を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の漏洩検知システム。
【請求項3】
ガス供給元から複数の住宅側に燃料ガスを供給するメイン流路をバイパスするバイパス流路に設けられた子調整器よりも調整圧力が低く設定された親調整器における圧力に応じた信号を出力するにより出力された信号から圧力降下量を算出する圧力降下量算出手段と、
前記圧力降下量算出手段により算出された圧力降下量から流量を推定する流量推定手段と、
前記流量推定手段により推定された流量から所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知手段と、
を備えることを特徴とする漏洩検知装置。
【請求項4】
ガス供給元から複数の住宅側に燃料ガスを供給するメイン流路と、
前記メイン流路をバイパスするバイパス流路と、
前記メイン流路に設けられた親調整器と、
前記バイパス流路に設けられ、前記親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器と、
所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知装置と、を備えた漏洩検知システムの漏洩検知方法であって、
前記親調整器における圧力に応じた信号から圧力降下量を算出する圧力降下量算出工程と、
前記圧力降下量算出工程において算出された圧力降下量から流量を推定する流量推定工程と、
前記流量推定工程において推定された流量から所定流量以上のガス漏洩を検知する漏洩検知工程と、
を有することを特徴とする漏洩検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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