説明

演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法

【課題】演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性を調整する工数を削減すること。
【解決手段】演算増幅器を含むアナログ回路である被測定回路402の入出力特性を測定し、この結果に応じてゲイン調整値を計算し、次に、この時点ではゲイン調整を行わずゲイン調整後の当該アナログ回路の入出力特性を推定し、この結果に応じてオフセット調整値を計算し、次に、先に計算したゲイン調整値とそのオフセット調整値に応じてゲイン調整とオフセット調整を同時に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電圧コンバータ装置等のパワー半導体モジュールに組み込まれた温度検出用ダイオードの定電流(IF電流)による順方向電流を測定し、パワー半導体モジュールの温度を検出する演算増幅器を含むアナログ回路において、IF電流の変動による当該アナログ回路の入出力特性の変動を適正に補正可能な演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両機器においては、高効率化、省エネルギー対策として、図10に示す駆動力を生む電動機11を有する車両駆動システム10では、大別して電源12と、昇降圧コンバータ13と、インバータ14とが含まれている。但し、電動機11は、車両の駆動時には3相のモータであるが、車両の制動時には発電機となる。また、矢印Y1で車両駆動時に流れるエネルギーの方向を示し、矢印Y2で車両制動時に流れるエネルギーの方向を示す。
【0003】
電源12は、架線からの給電電圧又は直列接続されたバッテリーから構成される。
昇降圧コンバータ13は、車両駆動時には電源12の電圧V(例:280V)を、モータ11の駆動に適した電圧V(例:750V)に昇圧し、車両の制動時には発電機となるモータ11から生じる電圧V(例:750V)を電源回路の電圧V(例:280V)に降圧して電力の回生動作を行う。
【0004】
インバータ14は、車両駆動時には昇降圧コンバータ13により昇圧された電圧Vから、3相モータ11の各相に電流を流すように、インバータ14内部のスイッチング素子をON/OFF制御し、このスイッチングの周波数により車両の速度を変化させる。また、車両制動時には、モータ11の各相に生じる電圧に同期してスイッチング素子をON/OFF制御し、いわゆる整流動作を行い、直流電圧に変換して回生を行う。
【0005】
次に、昇降圧コンバータ13の詳細構成を図11に示し、その説明を行う。昇降圧コンバータ13は、大別してリアクトル16と、コンデンサ17と、2つのスイッチング素子21,22と、これらスイッチング素子21,22を制御する制御回路23a,23bとを備えて構成されている。最近の車両機器の駆動系のスイッチング素子21,22は、図11に示すように、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)25(又は26)と、このIGBT25(又は26)のエミッタ・コレクタ間に、並列にダイオード27(又は28)を接続して構成されている。つまり、ダイオード27(又は28)は、IGBT25(又は26)に流れる電流とは逆方向で電流を流すように接続されている。
【0006】
この昇降圧コンバータ13の昇降圧動作の原理を説明する。また、昇圧時にリアクトル16に流れる電流波形を図12に示す。
最初に、昇圧動作を説明する。図12の時刻t0〜t1間、時刻t2〜t3間、時刻t4〜t5間に示すように、スイッチング素子21のIGBT25がON(導通)すると、リアクトル16に電流Iが流れ、リアクトル16(インダクタンスL)にLI/2のエネルギーが蓄積される。
一方、時刻t1〜t2間、時刻t3〜t4間、時刻t5以降に示すように、スイッチング素子21のIGBT25がOFF(非導通)すると、スイッチング素子22のダイオード28に電流Iが流れて、リアクトル16に蓄えられたエネルギーがコンデンサ17に送られる。
【0007】
次に、降圧動作を説明する。スイッチング素子22のIGBT26がON(導通)すると、リアクトル16に電流Iが流れ、リアクトル16にLI/2のエネルギーが蓄積される。
一方、スイッチング素子22のIGBT26がOFF(非導通)すると、スイッチング素子21のダイオード27に電流が流れて、リアクトル16に蓄えられたエネルギーが電源12へ回生される。
【0008】
このようにスイッチング素子21又は22のON時間(ONデューティ)を変更する事で、昇降圧の電圧を調整する事が可能であり、概略の値は次式にて求める事が出来る。
/V=ONデューティ (%)
:電源電圧
:昇圧後の電圧
ONデューティ:スイッチイング素子21又は22のスイッチング周期に対する導通期間の割合。
しかし、実際には負荷の変動、電源電圧の変動などがあるので、昇降圧後の電圧Vを監視し、目標値となるように、スイッチング素子21,22のON時間(ONデューティ)の制御を行う。
【0009】
図13は、昇降圧コンバータ用IPM30のブロック図である。IPM30は、大きく分けて、上アームのスイッチング部31と、下アームのスイッチング部32と、制御部23とを備えて構成され、高電圧回路側の各スイッチング部31,32と、低電圧回路側の制御部23とは電気的に絶縁が必要であり、このためフォトカプラ34,35,36,37,38や図示せぬパルストランスなどを用いて、信号の授受を行うようになっている。
【0010】
上アームのスイッチング部31は、上述したスイッチング素子22と同一チップ内に埋め込まれた温度検出用ダイオード40と、IGBT26のエミッタとアース間に直列接続された2つの抵抗器41,42の間と温度検出用ダイオード40のアノード側とに接続されたIGBT保護回路43と、このIGBT保護回路43の出力側とIGBT26のゲート側との間に接続されたゲートドライバ44と、温度検出用ダイオード40のアノード側に接続されたIGBTチップ温度検出部45とを備えて構成されている。
【0011】
下アームのスイッチング部32は、上述したスイッチング素子21と同一チップ内に埋め込まれた温度検出用ダイオード50と、IGBT25のエミッタとアース間に直列接続された2つの抵抗器51,52同士の間と温度検出用ダイオード50のアノード側とに接続されたIGBT保護回路53と、このIGBT保護回路53の出力側とIGBT25のゲート側との間に接続されたゲートドライバ54と、温度検出用ダイオード50のアノード側に接続されたIGBTチップ温度検出部55と、昇圧後の電圧Vを検出するVH検出回路56とを備えて構成されている。
【0012】
VH検出回路56は、入力される電圧Vを分圧する分圧回路57と、この分圧回路57で分圧された電圧のレベルを調整するレベル調整回路58と、三角波を生成する三角波生成器59と、その三角波とレベル調整後の電圧を比較し、この比較結果得られる「L」又は「H」レベルの電圧をフォトカプラ38へ出力する比較器60とを備えて構成されている。
【0013】
制御部23は、フォトカプラ38からの「L」に対応する「0」又は「H」に対応する「1」の信号を平滑化して直流レベルに変換するLPF(Low Pass Filter)62と、このLPF62からの直流レベルと昇降圧指令値とを比較するVH比較器63と、このVH比較器63の比較結果に応じて、昇圧後の電圧Vが昇降圧指令値に応じた所定電圧値となるようにゲート信号をフォトカプラ34,36へ出力するゲート信号発生器64とを備えて構成されている。
【0014】
このような構成のIPM30において、本発明の対象となる部分は、システムとしてIPM30の稼動状態を制御するために、スイッチング素子22,21と同一チップ内に埋め込まれた温度検出用ダイオード40,50のVF電圧により、IGBT26,25のチップ温度を測定するIGBTチップ温度検出部45,55である。
これらIGBTチップ温度検出部45,55を、上アームのスイッチング部31のIGBTチップ温度検出部45を代表して図14に内部ブロック図を示し、その説明を行う。
【0015】
IGBTチップ温度検出部45は、温度検出用ダイオード40のアノード側に接続された定電流源70と、定電流源70と温度検出用ダイオード40との間に+入力が接続されたオペアンプによるバッファ回路(単に、バッファとも称す)71と、レベル変換器77と、三角波発生器78と、三角波発生器78及びレベル変換器77の出力側に接続されたコンパレータ79と、このコンパレータ79の出力側に抵抗器80を介してゲートが接続され、ドレインが抵抗器82を介してデジタル・アナログ変換器90のフォトカプラ35に接続されたFET(Field Effect Transistor)81とを備えて構成されている。
【0016】
レベル変換器77は、バッファ回路71の出力に抵抗器72を介して−入力が接続されたオペアンプ73及び、当該オペアンプ73の入出力の間に接続された抵抗器74、第1の電源Vcc1及びアース間並びにオペアンプ73の+入力の間に接続された抵抗器75,76とを備えて構成されている。
デジタル・アナログ変換器90は、フォトカプラ35と、2値化回路91と、バッファ回路92と、LPF回路(低域通過フィルタ)93とを備えて構成されている。
【0017】
フォトカプラ35は、第1の電源Vcc1と抵抗82を介してFET81との間に接続されると共に抵抗84が並列接続された発光ダイオード85と、この発光ダイオード85からの発光を受光する受光ダイオード87とを備え、受光ダイオード87が、トランジスタ88のベースと第2の電源Vcc2との間に接続され、また、受光ダイオード87のカソードとトランジスタ88のコレクタとの間に抵抗器89が接続されて構成されている。
このフォトカプラ35のトランジスタ88のエミッタに2値化回路91が接続され、この2値化回路91の出力側に+入力が接続されると共に−入力と出力とが接続されたオペアンプによるバッファ回路92が接続され、このバッファ回路92の出力にLPF回路93が接続されている。
【0018】
このようなIGBTチップ温度検出部45によってIGBT26の温度を測定する場合、定電流源70からIGBT26と同一チップ内に埋め込まれた温度検出用ダイオード40に定電流を供給する。これによって、温度検出用ダイオード40の順方向降下電圧VF(VF電圧信号とも称す)が、図15に示すように温度に比例した電圧値となる。即ち、温度検出用ダイオード40のチップ温度が例えば165℃ではVF=1.5V、例えば25℃ではVF=2.0Vとして得られ、実際にはVFの変化量500mVが温度信号のフルスパンとなる。
【0019】
図16は、上記のバッファ回路71と、レベル変換器77と、三角波発生器78と、コンパレータ79とを有して成るVF/PWM変換回路100の詳細を示す。
三角波発生器78は、コンパレータ101及びオペアンプ102と、これら101,102の−,+入力端子と出力端子並びに電源Vcc1及びアースとの間に図示のように接続された抵抗器R21,R22、R23,R24,R25,R26と、コンデンサC11とを備えて構成されている。図14と同じ構成については同じ符号を用いて説明する。
【0020】
三角波発生器78からは三角波信号が所定の上限値と下限値との間で発生されている。
温度検出用ダイオード40の順方向降下電圧VFは、バッファ回路71でインピーダンス変換された後、レベル変換器77にて、三角波信号の上限値と高温(例:165℃)側VFとが合致、三角波信号の下限値と低温(例:25℃)側VFとが合致するように、増幅及びレベルの加減算が行われる。
つまり、レベル変換器77は、三角波信号の上限と下限との幅のレベル(振幅)に、VF電圧信号の幅のレベルが一致するようにVF電圧信号の幅を拡大する{ゲイン(増幅率)の調整}と共に、この拡大したVF電圧信号のレベルの上下を三角波の上限と下限の位置に一致させる(オフセットの調整)。ゲインとオフセットの調整は次のように行う。
【0021】
図16において、抵抗R11,R12にて電源Vcc1の電圧を分圧してオペアンプ73の+入力とし、電源Vcc1とオペアンプ73の−入力との間に接続した抵抗R13によってオフセット量を決定する。また、バッファ回路71の出力とオペアンプ73の−入力との間に接続された抵抗R14とオペアンプ73の−入力と出力との間に接続された抵抗R15とによってオペアンプ73のゲインを決定する。
【0022】
このレベル合わせを行った後、後段のコンパレータ79にてレベル変換器77の出力電圧Vlevと、三角波発生器の出力電圧Vtriとを比較し、Vlev>Vtriの場合はコンパレータ79の出力を「L」、Vlev<Vtriの場合は「H」とする。
この動作によって生成されるコンパレータ79の出力パルスのデューティは、VF電圧信号に比例する。例えばデューティ0%は低温(例:25℃)側VF、100%は高温(例:165℃)側VFとして、次段のフォトカプラ35によるPWM信号の絶縁伝送回路を介して、上及び下アームのスイッチング部31,32から制御部23の2値化回路91へPWM信号として伝送される。
【0023】
このPWM信号は、2値化回路91において、当該PWM信号のデューティが0%ではV1、100%ではV2なる電圧(2値化信号V1/V2)が形成されて出力される。この2値化信号V1/V2をバッファ回路92でインピーダンス変換した後、LPF回路93にて平滑化して直流レベルに変換すると、温度検出用ダイオード40の両端電圧VFに相当する各アームと絶縁された出力電圧(IGBTチップ温度電圧信号)Voutを得る事が出来る。
【0024】
このようにして得られたIGBTチップ温度に比例した電圧信号Voutは、昇降圧コンバータ13の上位のシステム(図示せず)に伝達され、そのシステムが常にIGBT25,26の温度を検出しながら、例えばIGBTチップ温度が所定の温度T1を超過すると、スイッチング周波数を1/2にし、更に所定の温度T2を超過するとスイッチング(昇降圧動作)を停止する保護機能を働かせる。
【0025】
この保護機能の作動は車両の駆動に影響を与えるので、IGBT25,26のチップ温度は正確に測定されなければならなず、概ね±5%の精度が要求される。チップ温度の測定の際の誤差要因は大別すると、IGBTチップに埋め込まれた温度検出用ダイオード40,50の順方向降下電圧VF値及び温度係数のバラツキと、バッファ回路71、レベル変換器77、三角波発生器78、フォトカプラ(PWM信号の絶縁伝送回路)35、2値化回路91、バッファ回路92及びLPF回路93から成る回路系のバラツキとの2種類となる。
【0026】
温度検出用ダイオード40,50のVF値のバラツキは、半導体プロセスに起因する要因が主で有るので、全体の許容誤差±5%のうち、例えばその6割である±3%をVF値のバラツキとして見込むと、回路系では±2%の誤差に抑制する必要がある。このため各々の回路では±0.5%の誤差に抑えた性能が求められる。
このため、抵抗素子、定電圧素子、オペアンプ等の回路素子は高精度品を用いる必要があるが、車両の環境温度は−40〜+105℃と広範囲での動作保証、車両用としての高信頼性及びクレームを生じた場合の敏速な対応が求められる点から、国内の大手半導体メーカー等の車載対応ICから選択せざるをえない。
【0027】
図16に示すVF/PWM変換回路100において、定電流源70(図16には不図示、図14参照)から供給される定電流IFにより、温度検出用ダイオード40に生ずる温度に比例した順方向降下電圧(チップ温度が165℃ではVF=1.5V、25℃ではVF=2.0V)がバッファ回路71でインピーダンス変換され、レベル変換器77に供給される。
レベル変換器77のオペアンプ73の+入力端子には、電源Vcc1の電位を抵抗器R11とR12で分圧した電位Vcc11に固定されているので、オペアンプ73の出力電圧は下式(1)で表される。
【0028】
【数1】

【0029】
一方、三角波発生器78からの三角波信号の上限値Vsuと下限値Vsdは下式(2)及び(3)で表される。なお、コンパレータ101の−入力端子には電源Vcc1を抵抗器R21とR22で分圧された電位Vcc12に固定されている。
【0030】
【数2】

【0031】
【数3】

但し、Vic3LOWは、コンパレータ101の「L」レベル出力である。また、「//」はその前後に示す抵抗等を並列接続した際の合成値を簡易表記したものであり、例えば(3)式の「R24//R25」はR24とR25とを並列接続した時の合成抵抗値を示す。以下においても同様である。
このような三角波発生器78の出力信号の上限値Vsuと下限値Vsdの三角波と、レベル変換器77の出力とを、コンパレータ79で比較して、下式(4)〜(6)で表される温度に比例したパルス幅のPWM信号を生成する。
【0032】
【数4】

【0033】
【数5】

【0034】
【数6】

【0035】
このPWM信号は、図17に詳細構成を示すデジタル・アナログ変換器90のフォトカプラ35で絶縁された後、2値化回路91、バッファ回路92、LPF回路93へ伝送される。このPWM信号のデューティ(Duty)とLPF回路93の出力(IGBTチップ温度電圧信号Vout)との関係は下式(7)で表される。
【0036】
【数7】

【0037】
但し、Vceは、Tr600の飽和状態におけるコレクタ・エミッター間の電圧であり、概ね0.15Vである。また、VLPFは、LPF回路93の出力である。
これらの式(1)〜(7)において、±0.1%の高精度抵抗器を用いれば、LPF回路93の出力の誤差は電源Vcc1,Vcc2のバラツキに依存することになる。
特に、Vcc1はフルスパンが500mVの信号を取り扱う回路に用いられるので高安定、高精度な電圧源が必要とされ、高精度なシャントレギュレータを用いる必要がある。また、Vcc2はフルスパンが4Vの信号を取り扱うので、Vcc1よりも高い精度は要求されない。
【0038】
電源Vcc1にシャントレギュレータを用いた場合の電位Vcc1と、電源Vcc2に標準レギュレータを用いた場合の電位Vcc2のバラツキは、正規分布として扱うことができる。
これらの基準電圧源の電圧バラツキは上式(1)〜(7)において、Vcc1,Vcc2の値が変わるので、温度に比例したLPF回路93の出力において、温度幅が130℃で出力電圧幅が4Vに割り当てているスパン、及び温度25℃で出力が4.5Vに割り当てているオフセットが影響を受ける事になる。
上記のVcc1を変動させた場合のLPF回路93の出力への影響を図18及び図19に、Vcc2を変動させた場合のLPF回路93の出力への影響を図20及び図21に示す。
【0039】
cc1,Vcc2の出力電圧のバラツキの分布を正規分布とした場合、分布の中心値から3σまでの範囲において、IGBTチップ温度電圧信号(LPF出力)Voutに生じる誤差及び区間内累積分布割合を統計計算した。この結果、1.2σ以下(母集団の77%)では、回路による温度計測は、最大±2%以下に抑制出来るが、残りの23%は±2%を超過してしまうので、図16に示したレベル変換器77における抵抗器R13をオフセット調整用、R15をゲイン調整用として抵抗値を変更しなければならない。
【0040】
このため、抵抗器R13,R15に関しては、±5σ以内であれば調整出来るように、予め抵抗値の低い素子を実装しておき、これをレーザートリミング装置で抵抗パターンを部分的に切断することによって目標とする調整値に合致させる。
この目標値を得るために、例えば回路基板にIGBTに内蔵された温度検出用ダイオード40,50が接続される端子に、チップ温度が135℃相当の電圧1.607V、40℃相当の1.946Vを模擬VF信号として入力し、その時に得られる2つのLPF出力信号レベルから計算により求める手法、または抵抗値をレーザートリミング装置でトリミングしながら、LPF出力信号の目標値に対する誤差をフィードバックする手法がある。これとは別に、抵抗器R13,R15に関しては未実装としておき、試験によって調整抵抗値が定まった時点で、後実装を行う手法もある。
【0041】
また、この種の従来の演算増幅器を用いたアナログ回路(レベル変換器77)の入出力特性調整方法として、例えば特許文献1及び2に記載のものがある。
ところで、上述したように、従来の演算増幅器を用いたアナログ回路に該当するレベル変換器77においては、入出力特性を調整する場合、予め抵抗値の低い素子を実装しておき、これをレーザートリミング装置で抵抗パターンを部分的に切断することによって目標とする調整値に合致させるようになっている。しかし、このトリミング工程では、調整抵抗値を本来の値よりも低くしているため、製品の全数について抵抗値のトリミングを行う必要が有り、1.2σ以下(母集団の77%)に関しては、抵抗値の調整が不要であるにも関わらずトリミング工数が必ず発生し、その分、回路製造コストが高くなる。
【0042】
また、細いレーザービームによる切断では、抵抗パターンを部分的に切断し、このトリミング後に抵抗素子に対して保護膜をコーティングするが、これが使用中の熱サイクルによって劣化して空気中の水分が付着し、抵抗値が変化することがあるので、その分、信頼性が低い。
更に、前述した調整抵抗値が定まった時点で後実装を行う手法は、後実装のため、回路基板及び初期実装回路素子に2度にわたる高温加熱が実施され、このため回路素子の信頼性が低下する恐れがある。
【0043】
これらの欠点を解消するため、演算増幅器の入出力側に予め複数の抵抗器を接続しておき、これら抵抗器を演算増幅器の出力信号のゲイン及びオフセットが目標値となるように切断して調整する方法が考えられる。この方法を、図22〜図31を参照して説明する。
図22は、従来の演算増幅器を用いたアナログ回路である被測定回路302の入出力特性測定装置の構成を示す回路図である。
図23は、従来の入出力特性測定装置のレベル変換器の入出力特性図である。
図24は、従来の入出力特性測定装置のアナログ/PWM変換器及びPWM/アナログ変換器の入出力特性図である。
【0044】
図25は、従来の入出力特性測定装置による被測定回路の入出力特性測定方法を説明するためのフローチャートである。
図26は、従来の入出力特性測定装置でのオフセット及びゲインの調整値が抵抗値調整に反映されるVF/PWM変換回路の構成を示す回路図である。
図27は、図26に示すVF/PWM変換回路のレベル変換器における各オフセット調整用抵抗器とゲイン調整用抵抗器との構成を示し、(a)は抵抗値調整前の構成、(b)は抵抗値調整後の構成を示す図である。
【0045】
図28は、図26に示すVF/PWM変換回路のレベル変換器における各オフセット調整用抵抗器とゲイン調整用抵抗器との他の構成を示し、(a)は抵抗値調整前の構成、(b)は抵抗値調整後の構成を示す図である。
図29は、上記被測定回路の入出力特性における温度と出力の関係及び、設定VF値に対する許容誤差、測定誤差、調整範囲、許容誤差VF−ER、VF調整範囲VFS−H,VFS−Lを示す図である。
【0046】
図30は、上記被測定回路のゲイン調整の有無を説明するための図である。
図31は、上記被測定回路のオフセット調整の有無を説明するための図である。
まず、図26〜図31を参照して、演算増幅器の入出力側に予め複数の抵抗器(調整用回路素子)を接続しておき、これら抵抗器を演算増幅器の出力信号のオフセット及びゲインが目標値となるように切断する構成が適用されたVF/PWM変換回路110について説明する。
【0047】
つまり、図26に示すVF/PWM変換回路110は、図22に示す入出力特性測定装置300によって測定される演算増幅器のオフセット及びゲインの調整値(抵抗値)をもとに、複数の抵抗器が削除される対象の回路である。
このVF/PWM変換回路110が、図16に示したVF/PWM変換回路100と異なる点は、レベル変換器120に、1つのオフセット設定用抵抗器R13と、第1並列回路として3個一組のオフセット微調整用抵抗器R13A,R13B,R13Cと第2並列回路として同じく3個一組のオフセット微調整用抵抗器R16A,R16B,R16Cと、第3並列回路として3個一組のゲイン調整用抵抗器R14A,R14B,R14Cと第4並列回路として3個一組のゲイン調整用抵抗器R15A,R15B,R15Cとを備え、所望の抵抗器Rを並列回路から切り離すことによって、オペアンプ73の出力信号のオフセット及びゲインを調整するようにしたことにある。
【0048】
なお、オフセット設定用抵抗器R13は、VF/PWM変換回路110に存在する抵抗器R13をオフセット設定用としたものである。
更に説明すると、オペアンプ73の+入力端子の電位を、抵抗器R11の抵抗値=抵抗器R12の抵抗値とする事によって電源Vcc1の電圧の1/2に設定を行い、電源Vcc1とオペアンプ73の−入力端子との間に1組のオフセット微調整用抵抗器R13A,R13B,R13Cを、アースとオペアンプ73の負入力端子との間にもう1組のオフセット微調整用抵抗器R16A,R16B,R16Cを並列接続する。
【0049】
この回路構成では、一方のオフセット微調整用抵抗器R13A,R13B,R13Cはオペアンプ73の出力電位を負方向に変化させ、他方のオフセット微調整用抵抗器R16A,R16B,R16Cはオペアンプ73の出力電位を正方向に変化させ、オフセットの微調整の役割を担う。
ここで、第1並列回路(抵抗器R13A,13B,13C)の合成抵抗値と第2並列回路(抵抗器16A,16B,16C)の合成抵抗値を同じにしておく、即ち抵抗器R13A=R16A,R13B=R16B,R13C=R16Cとすれば、抵抗器R13A,R13B,R13C,R16A,R16B,R16Cの全てが実装されている状態では、互いにオフセット調整は相殺される。従って、本来調整が不要な1.2σ以下(母集団の77%)については調整工程が不要となり、オフセット設定用抵抗器R13のみによって初期のレベル合わせを行うことができる。
【0050】
また、R13B=1/2×R13A、R13C=1/4×R13Aなる抵抗値とすれば、R13A,R13B,R13C及びR16A,R16B,R16Cから、片側の抵抗器Rを削除して1〜3個の抵抗器Rの組合せで、正負合計の14段階、等間隔のオフセット調整が出来る事になる。
一方、ゲイン調整としては、オペアンプ73の−入力端子と出力端子との間に接続されて増幅率の分子を決定する抵抗器として、複数の抵抗器R15A,R15B,R15Cを並列接続した第4並列回路を用い、これを1組のゲイン調整用抵抗器とする。また、オペアンプ73の−入力端子とその前段のバッファ71の出力端子との間に接続されて増幅率の分母を決定する抵抗器として、複数の抵抗器R14A,R14B,R14Cを並列接続した第3並列回路を用い、これを他の1組のゲイン調整用抵抗器とする。
【0051】
これらゲイン調整用抵抗器R14A,R14B,R14Cの合成抵抗値及びR15A,R15B,R15Cの合成抵抗値は、所望のゲインを得るための初期値となるように各抵抗器の抵抗値を選択する。なお、演算増幅器の増幅率(ゲイン)の設定には、オペアンプ73の−入力端子と出力端子との間、及びオペアンプ73の−入力端子とバッファ71の出力端子との間にそれぞれ抵抗器1個以上を接続することが必須となる。このため、第3並列回路及び第4並列回路を構成する抵抗器のうちそれぞれ1つ(例えばR15AとR16A)は切り離されることがない。
【0052】
実際には、ゲインはオペアンプ73の−入力端子と出力端子との間に並列接続されている抵抗器R15A,R15B,R15の組合せによる増幅率の分子を定める並列抵抗値と、オペアンプ73の−入力端子とバッファ71の出力端子との間に並列接続されている抵抗器R13A,R13B,R13Cの組合せによる増幅率の分母を定める並列抵抗値との比で決定されるため、96系列の抵抗値の組合せにより概ね等間隔に調整ができるように各並列回路の抵抗値を選定すればよい。
これらのオフセット調整用抵抗器R13、R13A〜R13C及びR16A〜R16C、ゲイン調整用抵抗器R14A〜R14C及びR15A〜R15Cを備えたオペアンプ73の出力は、下式(8)で表される。
【0053】
【数8】

【0054】
この式(8)において、オフセット及びゲイン調整を行うため、取外し又は抵抗膜を除去する対象の抵抗器Rには、抵抗値に∞を代入すると、オペアンプ73の出力電圧Vlevが求まる。
但し、ゲイン調整によってオフセット量も変化するので、オフセット変化量によっては、オフセット量も調整により補正を行う必要がある。
【0055】
次に、図27を参照してオフセット及びゲインの調整方法について説明する。図27は、各オフセット調整用抵抗器R13、R13A〜R13C及びR16A〜R16Cと、ゲイン調整用抵抗器R14A〜R14C及びR15A〜R15Cにおける抵抗値調整有無の状態を示すもので、(a)は抵抗値調整前の状態、(b)は抵抗値調整後の状態を示す図である。
【0056】
抵抗器Rは、図27(a)に示すように、ランド部201に銅配線パターン202が接続された抵抗実装用パッドに、チップ抵抗部203が図示せぬ表面実装手段により半田204で固着されている。チップ抵抗部203の表面には、セラミック基板に厚膜抵抗体を塗布や焼成するか、又は金属箔膜をスパッタなどで形成した後に、保護膜がコーティングされている。
【0057】
このような抵抗器Rに対してオフセット又はゲイン調整のため、不要となって並列回路から切り離される抵抗器Rに対して、図27(b)に示すように、チップ抵抗部203における保護膜及び厚膜抵抗体又は金属箔膜の所望範囲の抵抗皮膜除去領域203aを、図示せぬレーザービームなどで切断・除去する。この調整によって、並列回路から不要となった抵抗器が切り離され、並列回路の抵抗値を変化させてオフセット又はゲインを所定値とすることができる。
【0058】
この他、図28(b)に示すように、不要となった抵抗器Rを並列回路から切り離す際、チップ抵抗部203の半田付け領域をレーザービームで加熱し、半田204を溶解させた状態でチップ抵抗部203を取り外しても良い。これは、チップ抵抗部203の両端に半田鏝を押し当て、半田204を溶解させた状態でチップ抵抗部203を取り外しても良い。このようにしても、並列回路から不要となった抵抗器を切り離すことができ、並列回路の抵抗値を変化させてオフセット又はゲインを所定値とすることができる。
【0059】
なお、VF/PWM変換回路110の回路構成では、電源Vcc1,Vcc2の電圧のバラツキに限定して述べたが、例えば温度検出用ダイオード40,50のVFの温度特性によるバラツキ、及び温度検出用ダイオード40,50に印加する定電流IFのバラツキに対しても補償する事が可能である。
上記のように、レベル変換器120において、オペアンプ73の+入力端子の電位を半分に設定し、同オペアンプ73の−入力端子と電源との間、並びに同−入力端子とアースとの間に、それぞれ同数のオフセット調整用抵抗器R13A〜R13C及びR16A〜R16Cを並列接続し、これら抵抗器のうちオフセット調整で不要となった抵抗器を並列回路から切り離すようにした。
【0060】
この切り離しによって、並列回路の合成抵抗値を必要な値に変化させることができ、オペアンプ73の出力信号のオフセットを所定値に調整することができるようになっている。また、これによって、全製品のうち、回路素子のバラツキの1.2σ以下(母集団の77%)の製品に関しては、抵抗器のトリミング工程が不要になり、製品コストを削減する事が可能となっている。
【0061】
また、調整が必要な場合には対象となる値の抵抗素子を並列回路から切り離すこと、具体的には抵抗器を回路基板から取り外すか、または抵抗器の抵抗被膜を広い幅でレーザービームなどで完全に切断・除去出来るようになっている。また、不要となった抵抗器を並列回路から切り離してしまうため、製品の使用環境に対する耐劣化の面で優れ、車載用として用いた場合でも高信頼性を保有する事が可能となっている。
【0062】
更に、オペアンプ73の−入力端子と電源Vcc1との間に、同−入力端子とアースとの間よりも1つ多い抵抗器R13を並列接続し、この多く接続された1つの抵抗器R13を除く−入力端子と電源Vcc1との間の複数の抵抗器R13A〜R13Cと、同−入力端子とアースとの間の複数の抵抗器R16A〜R16Cとの並列抵抗値を等しくした。
このように等しくしたので、互いにオフセット調整が相殺され、この場合に、−入力端子と電源Vcc1との間に余分に1つ並列接続された抵抗器R13のみによってオペアンプ73の初期の出力レベル(オフセット量)を設定可能なようになっている。
【0063】
また、−入力端子と電源Vcc1との間に1つ多く並列接続された抵抗器R13を除く複数の抵抗器R13A〜R13Cの抵抗値と、同−入力端子とアースとの間に並列接続された複数の抵抗器R16A〜R16Cの抵抗値との比が、2のべき乗となる値をとるようにした。このような2のべき乗とする重み付けによって、オフセット電流の値を有効に変化可能なようになっている。
【0064】
また、オペアンプ73の−入力端子と出力端子との間に、増幅率の分子を決定するための抵抗器として複数の抵抗器R15A〜R15Cを並列接続し、同−入力端子と当該−入力端子に接続される前段の回路であるバッファ71の出力端子との間に、同増幅率の分母を決定するための抵抗器として複数の抵抗器R14A〜R14Cを並列接続し、これら抵抗器R14A〜R14C及びR15A〜R15Cのうち、ゲイン調整により不要となった抵抗器を並列回路から切り離す。並列回路からの切り離しは、抵抗器の抵抗皮膜を切断・除去してもよいし、抵抗器自体を取り外してもよい。これによって容易にゲイン調整を行うことが可能なようになっている。
【0065】
なお、上記の例においては、抵抗R11とR12で電源Vcc1の電圧を半分に分圧したが、これに限らない。即ち、オペアンプ73の−入力端子と電源Vcc1との間に抵抗R13のほかに複数の抵抗器を並列接続し、該抵抗器を介してオペアンプ73へ流入する第1の電流と、オペアンプ73の−入力端子とアースとの間に複数の抵抗器を並列接続し、該抵抗器を介してオペアンプ73から流出する第2の電流とが等しくなるように、電源電圧の分圧比、複数の抵抗器の抵抗値を選定しておけば、互いにオフセット調整は相殺され、本来調整が不要な1.2σ以下(母集団の77%)については調整工程が不要となり、オフセット設定用抵抗器R13のみによって初期のレベル合わせを行うことが可能なようになっている。
【0066】
更に、前記各並列回路において、並列回路を構成する複数の抵抗器の抵抗値は、相互に異なり基準となる抵抗器の抵抗値に対して2のべき乗となる抵抗値を選定しておけば調整が容易である。並列回路の抵抗値に調整を上記の例のように抵抗器を切り離すことで行えることはいうまでもない。
上述のように抵抗器を切り離し又は抵抗器の抵抗被膜を切断・除去して、演算増幅器のオフセット及びゲインを目標値とする場合に、図22に示す入出力特性測定装置300で、そのオフセット及びゲインを目標値に調整するための抵抗値を求める方法について説明する。
【0067】
入出力特性測定装置300は、温度検出系統回路である被測定回路302と、測定用信号源304と、第1の電圧測定部306と、第2の電圧測定部307と、第3の電圧測定部308と、演算部310とを備えて構成されている。
被測定回路302は、図26に示したバッファ71、レベル変換器120、三角波発生器78、アナログ/PWM変換器(演算増幅器)79並びに、図17に示したPWM/アナログ変換器90aを備えて成る。
【0068】
測定用信号源304は、被測定回路302に所定の電圧VFを入力するものである。入力信号電圧VFは、図14に示した温度検出用ダイオード40の両電圧VFに該当する電圧である。
第1の電圧測定部306は、レベル変換器120の出力電圧を測定するものである。その出力電圧をVLEV_Mとする。
第2の電圧測定部307は、PWM/アナログ変換器90aの出力電圧を測定するものである。その出力電圧をVCTIとする。
第3の電圧測定部308は、レベル変換器120及び三角波発生器78の電源電圧Vcc1を測定するものである。
【0069】
演算部310は、第1〜第3の電圧測定部306〜308での測定結果をもとに、被測定回路302の演算増幅器の出力信号のオフセット及びゲインを目標値に調整するための調整値(抵抗値)を、下記のように演算処理によって求めるものである。
このような構成において、出力電圧VCTIが0%〜100%になるように数段階の電圧を入力信号電圧VFとして印加し、この入力信号電圧VFに対する出力電圧VLEV_M,VCTIの電圧を第1及び第2の電圧測定部306,307で測定する。
【0070】
演算部310によって、それらの入力信号電圧VFと、測定された出力電圧VLEV_M,VCTIの値から、図23に直線で示すレベル変換器120の入出力特性であるVF,VLEV_M(mV)の関係と、図24に上下が折れ曲がった直線で示すアナログ/PWM変換器79及びPWM/アナログ変換器90aの入出力特性であるVLEV_M,VCTI(mV)の関係とを導く。
【0071】
そして、それらの直線関係にある部分のデータを用いて回帰直線処理を行えば、下記の入出力特性を表わす関係式(9)が得られる。この式(9)は出力値に対する入力値を表現する式であるが、温度検出用ダイオード40の特性、回路の特性に関わらず、温度検出系統回路の出力規定値が仕様として定められている。
CTIからVLEV_Mへの直線回帰式は、
LEV_M=γ×VCTI+δ …(9)
ここで、温度検出系統回路の出力規定値VCTIの0%,100%での値を、例えば140℃でVCTI_H=0.5V、25℃でVCTI_L=4.5Vとすると、VLEVでの電圧は下式(10)及び(11)のように表わされる。
LEV_M_H=γ×VCTI_H+δ …(10)
LEV_M_L=γ×VCTI_L+δ …(11)
【0072】
このVLEV_M_L,VLEV_M_Hは、VCTIの出力を0%,100%にするため必要なレベル変換器120の出力電圧を意味している。
LEV_MからVF_Mの直線回帰式は、
VF_M=α×VLEV_M+β …(12)
この式(12)を用いて、温度検出系統回路の出力規定値VCTIの0%,100%に相当するVLEVの電圧値VLEV_M_L,VLEV_M_Hに対するVFの値は下式(13)及び(14)のように表わされる。
VFM_H=α×VLEV_M_H+β …(13)
VFM_L=α×VLEV_M_L+β …(14)
【0073】
このように、2段階での回帰直線を用いる事により、温度検出系統回路の出力規定値VCTIの0%,100%に相当するVFの値VFM_H,VFM_Lが求まり、温度検出系統回路の被測定回路302によるバラツキを反映した入出力特性が得られる。
このような入出力特性測定装置300によって、温度検出系統回路である被測定回路302の入出力特性を測定して把握を行った後に、当該被測定回路302のゲイン調整とオフセット調整とを行う場合について説明する。
【0074】
まず、図29〜図31を参照して、ゲイン調整が不要/必要な場合、オフセット調整が不要/必要な場合について説明する。
図29には、温度検出用ダイオード40を用いて被測定回路302の温度測定を行う際のVF電圧の規定値(設定VF値)に対する許容誤差、測定誤差、調整範囲を示した。即ち、実線K1は設定VF値(規定値)、実線K1と破線K2及びK3の間は許容誤差VF−ER、実線K1と一点鎖線K4及びK5の間はVF調整範囲VFS−H,VFS−Lである。また、T1は低温側、T2は高温側の値を示す。
【0075】
最初に、被測定回路302のレベル変換器120のゲイン調整を行う際に、温度検出系統である被測定回路302に許容すべきVF調整範囲VFS−H,VFS−Lを算出する。即ち、被測定回路302の回路設計上のVF設計値(設定VF値)に対して、許容誤差:VF−ERから最小オフセット調整誤差VF−ER_OFF、入出力特性測定誤差VF−ER_MEAS、誤差余裕度VF−MARJINを減じた残りを、加・減算した値(正・負方向に広げた値)を、被測定回路302に許容されるVF調整範囲VFS−H,VFS−Lとする。
【0076】
被測定回路302に許容されるVF調整範囲VFS−H,VFS−Lに対する温度検出系統の入力電圧の実測値と比較し、実測値が許容されるVF調整範囲VFS−H,VFS−L内の場合は、ゲイン調整を行なわない。このゲイン調整が不要な場合の例を、図30に実線K11,K12で示す。また、ゲイン調整が必要な場合の例を破線K13,K14で示す。
【0077】
一方、実測値が許容されるVF調整範囲VFS−H,VFS−L外の場合は、図30に示す許容VF範囲の最大値VMAX、最小値VMINの何れが実測値に最も近いかを比較計算し、近い方の許容VF値と実測値との比を求める。この比の逆数と調整前のレベル変換器120のゲインGxとの積をAxとする。先の比が1以上の場合には、Gx≧Axで最もAxに近いゲインとなるようにゲイン調整用抵抗器(図26のR14A〜R14C)を削除し、比が1以下の場合には、Gx<Axで最もAxに近いゲインとなるようにゲイン調整用抵抗器(図26のR15A〜R15C)を削除する。
【0078】
このゲイン調整によって被測定回路302の入出力特性が変化するので、ゲイン調整の次に、レベル変換器120のオフセット調整を行うようになっている。図31に、ゲイン調整後にオフセット調整が不要な場合の例を実線K21で示し、オフセット調整が必要な場合の例を破線K22で示した。
オフセット調整は、実際に上述のようにゲイン調整を行う場合であれば、ゲイン調整用抵抗器を削除した後の回路において、再度、入出力特性測定装置310を用いて、温度検出系統である被測定回路302に設定すべきVF調整範囲VFS−H,VFS−Lに対するレベル変換器120の出力範囲を測定し、これと被測定回路302の出力電圧の範囲に相当するレベル変換器120の出力電圧の範囲とを比較し、範囲のずれが最も少なくなるように調整用のオフセット電流を求める。そして、電圧源電圧値Vcc1からオフセット調整抵抗値を求め、オフセット電流を流したい側との反対側の抵抗列から、先に求めたオフセット調整抵抗値に近いオフセット調整用抵抗器(図26のR13、R13A〜R13C及びR16A〜R16)を削除してオフセット調整を完了する。
【0079】
即ち、この被測定回路302のゲイン調整とオフセット調整とを行う手順は、図25のフローチャートに示す通りとなる。
ステップS11において、被測定回路302の入出力特性の測定を行い、ステップS12において、アナログ/PWM変換器79及びPWM/アナログ変換器90aの入出力特性の目標値の決定を行う。ステップS13において、レベル変換器120の入出力特性の目標値の決定を行い、ステップS14において、レベル変換器120の入出力特性の目標値に対するゲイン補正値の計算を行う。
【0080】
そして、ステップS15において、レベル変換器120のゲイン特性の調整を行う。即ち、先に計算されたゲイン補正値に応じたゲイン調整抵抗値分のゲイン調整用抵抗器を削除する。
次に、ステップS16において、そのゲイン補正後のレベル変換器120の入出力特性の測定を行い、この結果に応じて、ステップS17において、レベル変換器120の入出力特性の目標値に対するオフセット補正値の計算を行う。
【0081】
そして、ステップS18において、レベル変換器120のオフセット特性の調整を行う。即ち、先に計算されたオフセット補正値に応じたオフセット調整抵抗値分のオフセット調整用抵抗器を削除する。
これによって、被測定回路302を所望の入出力特性とすることができる。
【特許文献1】特開2005−2909号公報
【特許文献2】特開2004−279324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0082】
ところで、上述した従来の入出力特性測定装置300による演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法においては、アナログ回路であるレベル変換器120のゲイン調整用抵抗器の削除によるゲイン調整によって適正なゲインを得た後に、ゲイン調整後のレベル変換器120の入出力特性を測定してオフセット補正値を求め、これを用いてオフセット調整用抵抗器を削除するオフセット調整を行う作業が必要である。
【0083】
しかし、この作業には、レベル変換器120の入出力特性の測定及び抵抗調整に手間暇が掛かるが、これらをゲイン調整時とオフセット調整時との各々において実行しなければならず、このため、演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整の工数が高くなるという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性を調整する工数を削減することができる演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0084】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1による演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法は、オフセット及びゲインの調整用回路素子が組み合わされた演算増幅器を含むアナログ回路と、このアナログ回路の入力端子に複数の既知電圧を印加する信号源と、この信号源による前記印加の際に、前記演算増幅器の出力電圧と、前記アナログ回路の出力端子の電圧と、前記演算増幅器のオフセット電流を供給する電源電圧を測定する測定手段と、前記アナログ回路の入力端子へ印加する信号電圧と前記演算増幅器の出力電圧との関係から前記演算増幅器の入出力特性である第1の入出力特性を求め、前記演算増幅器の出力電圧と前記アナログ回路の出力電圧との関係から前記演算増幅器の出力側から前記アナログ回路の出力端子の入出力特性である第2の入出力特性を求め、前記アナログ回路の入出力特性を目標特性とするため、前記第2の入出力特性を用いて前記演算増幅器に要求される入出力特性を求め、前記演算増幅器のオフセット及びゲインを、要求される入出力特性と前記第1の入出力特性とを比較して、求められた目標値に調整するために前記調整用回路素子を調整する調整値を求める演算手段とを備えたアナログ回路の入出力特性調整方法において、前記ゲイン調整の前に測定された前記演算増幅器の入出力特性の実測値をもとに、ゲイン調整後の演算増幅器の入出力特性を推定して前記オフセット調整を行うことを特徴とする。
【0085】
また、本発明の請求項2による演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法は、オフセット及びゲインの調整用回路素子が組み合わされた演算増幅器を含むアナログ回路と、このアナログ回路の入力端子に複数の既知電圧を印加する信号源と、この信号源による前記印加の際に、前記演算増幅器の出力電圧と、前記アナログ回路の出力端子の電圧と、前記演算増幅器のオフセット電流を供給する電源電圧を測定する測定手段と、前記アナログ回路の入力端子へ印加する信号電圧と前記演算増幅器の出力電圧との関係から前記演算増幅器の入出力特性である第1の入出力特性を求め、前記演算増幅器の出力電圧と前記アナログ回路の出力電圧との関係から前記演算増幅器の出力側から前記アナログ回路の出力端子の入出力特性である第2の入出力特性を求め、前記アナログ回路の入出力特性を目標特性とするため、前記第2の入出力特性を用いて前記演算増幅器に要求される入出力特性を求め、前記演算増幅器のオフセット及びゲインを、要求される入出力特性と前記第1の入出力特性とを比較して、求められた目標値に調整するために前記調整用回路素子を調整する調整値を求める演算手段とを備えたアナログ回路の入出力特性調整方法において、演算増幅器の入出力特性の調整限界範囲を、前記規定値に対する許容誤差から前記オフセットの調整分解能、前記電流測定手段での測定誤差及び誤差余裕度の各値を減じた値を、前記規定値に対して正及び負方向に拡げた範囲とし、前記調整限界範囲を超過した際の前記演算増幅器のゲイン調整後の演算増幅器の入出力特性の測定を、当該ゲイン調整の前に測定された前記演算増幅器の入出力特性の実測値をもとにゲイン調整後の演算増幅器の入出力特性を推定することによって省略し、その推定値を用いて前記演算増幅器のオフセット調整を行うことを特徴とする。
【0086】
また、本発明の請求項3による演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法は、請求項1または2において、前記オフセット調整を行うと同時に、前記ゲイン調整後の演算増幅器の入出力特性の推定時に用いられるゲイン調整値に応じてゲイン調整を行うことを特徴とする。
【0087】
また、本発明の請求項4による演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法は、請求項1または2において、前記アナログ回路は、入力端子に接続された温度検出用のダイオードと、このダイオードに一定の順方向電流を供給する定電流源を有する場合に、前記ダイオードに供給される順方向電流を測定する電流測定手段とを備え、前記演算手段が、前記電流測定手段での順方向電流の測定値と順方向電流の規定値とのずれ量を求め、この電流ずれ量をもとに当該ずれ量の順方向電流が供給された際の前記ダイオードの順方向電圧のずれ量を求め、この電圧ずれ量をもとに、前記演算増幅器にて、前記アナログ回路の入力端子への印加電圧を規定値からずらす補正を行うことを特徴とする。
これらの方法によれば、演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性の測定及び抵抗調整を、従来は各々2回必要であったが、各々1回で済ませることができる。
【発明の効果】
【0088】
以上説明したように本発明によれば、演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性を調整する工数を削減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法を説明するためのフローチャートである。
本実施の形態の入出力特性調整方法の特徴は、演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性を測定し、この結果に応じてゲイン調整値を計算し、次に、この時点でゲイン調整を行わずゲイン調整後の当該アナログ回路の入出力特性を推定し、この結果に応じてオフセット調整値を計算し、既に計算されているゲイン調整値とそのオフセット調整値に応じてゲイン調整とオフセット調整を同時に行うことができるようにした点にある。つまり、従来の演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性の測定及び抵抗調整の各々2回を、本発明では各々1回で済むことである。
【0090】
図2に、本入出力特性調整方法による入出力特性の調整対象となる演算増幅器を用いたアナログ回路(被測定回路402)の入出力特性測定装置400の構成を示す。
この入出力特性測定回路400は、既に前述で説明済みの図22に示した入出力特性測定回路300と略同構成であるが異なる点は、被測定回路402が図14に示した温度検出用ダイオード40に一定の順方向電流IF(IF電流)を供給する定電流源70を備え、定電流源70からのIF電流のバラツキが起因する温度検出用ダイオード40の順方向電圧VF(VF電圧)の変動を補正可能となっており、このVF電圧の変動を補正するために、電流測定部404と、演算部410と、測定用電源304の接続/切断用のスイッチ406とを備えたことにある。
更に、演算部410は、本実施の形態の特徴であるゲイン調整後のアナログ回路の入出力特性を推定してオフセット調整を可能とする演算処理を行うようになっている。なお、演算部410は、上記演算処理以外に、図22の演算部310と同様の演算処理機能を有する。
【0091】
まず、演算部410において、IF電流の変動に伴うVF電圧の変動の補正を行う場合の処理を説明する。
電流測定部404は、IF電流を測定し、この測定値を演算部410へ出力する。演算部410は、そのIF電流の測定値をもとに、次に記載するようにVF電圧の変動を補正する演算処理を行う。
図3は、温度検出用ダイオード40の温度をパラメータとしたVF/IF特性を示し、IF電流の変動に伴いVF電圧が変動することを示している。図4は、VF電圧の温度係数のIF依存性を示し、IF電流が±5%変動すると、VF温度係数が±0.15%変動することを示している。図5は、25℃におけるVF電圧のIF電流依存性を示し、これからVF電圧とIF電流とがリニアな関係にあることが判る。
【0092】
図3〜図5の何れもリニアな関係に有るが、上述したようにVF電圧の温度係数のIF依存性は±0.15%の変動であり、被測定回路402全体に割り付けた±3%の誤差に対して十分小さいので無視することが可能である。
従って、IF電流のずれにより変動するVF電圧の補正は、図6に示すように、温度に関係無く一義的に補正すれば良い。温度検出用ダイオード40のVF電圧は、温度によって大きく変化し、またIF電流によっても変化するので、本来、IF電流を固定値としてVF電圧を測定する必要があるが、回路のバラツキによりIF電流は固定値からずれてしまう。
【0093】
このIF電流のずれによるVF電圧のずれ量は、温度検出用ダイオード40のロット内、ロット間で概ね一定であり、また図6に示すように温度検出用ダイオード40の温度が変化しても、IF電流のずれによる影響は概ね一定である。
従って、予め温度検出用ダイオード40のΔVF/ΔIFを図5のように測定値から求めておき、このΔVF/ΔIFを補正係数CΔVF/ΔIFとして演算部410に設定し、演算部410で、その補正係数CΔVF/ΔIFとIF電流の規定値からのずれ量ΔIFとの積から、本来の規定値のVF電圧値からのずれ量ΔVFを求める。
【0094】
演算部410で演算に用いられるVF電圧の補正式は下記のように表わされる。
順方向電流IFが規定値IFでのVF電圧は次の通りである。
VFSS_H(高温側順方向電圧)
VFSS_L(低温側順方向電圧)
順方向電流IFが規定値IFからずれた電流IFでのVF電圧は次の通りである。
VFS_H=VFSS_H+(IF−IF)×CΔVF/ΔIF …(15)
VFS_L=VFSS_L+(IF−IF)×CΔVF/ΔIF …(16)
このようにして、順方向電流IFが規定値IFからずれていても、対応するVF値(VFS_H,VFS_L)を求める事が可能となる。これらVFS_H,VFS_Lは、前述の図22を参照した背景技術で説明したように、回路基板に要求されるVF入力範囲である。
【0095】
このVF入力範囲VFS_H,VFS_Lを求めた後は、前述の図22を参照した背景技術で説明したと同様に、被測定回路402のバッファ71以降の特性の補償を行う。
このように入出力特性測定装置400において、定電流源70からのIF電流のバラツキが起因する温度検出用ダイオード40の順方向電圧VFの変動を補正することが可能となっている。
【0096】
次に、演算部410によって、本実施の形態の特徴である演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法を説明する。
図1のステップS1において、測定用信号源304からオン状態のスイッチ406を介して被測定回路402に所定の電圧VFが供給され、また、定電流源70から温度検出用ダイオード40にIF電流が供給されている状態において、第2の電圧測定部307で被測定回路402の出力電圧VCTIを測定し、第3の電圧測定部308で電源電圧Vcc1を測定し、また、電流測定部404でIF電流を測定し、これら測定値並びに入力信号電圧VFを演算部410で検出して記憶する。更に、演算部410にて、入力信号電圧VFと、測定結果の出力電圧VCTIとから被測定回路402の入出力特性VF−VCTIを求める。
【0097】
但し、入力信号電圧VFの供給は、出力電圧VCTIが0%〜100%になるように数段階の電圧供給とする。また、被測定回路402の入出力特性VF−VCTIは、図7の実線P1で示す様態となり、そのP1は、図29に示した被測定回路の温度と出力との関係図に実線K1で示す設定VF値(規定値)と逆比例の関係になる。
次に、ステップS2において、三角波発生器78の出力側からPWM/アナログ変換器90aの出力側までの入出力特性より、被測定回路402の出力電圧VCTIの最小値VCTI_L〜最大値VCTI_H間に対応するレベル変換器120の出力電圧VLEV_Mを演算部410によって算出する。但し、被測定回路402の出力電圧VCTIの最小値VCTI_L〜最大値VCTI_Hは、言い換えれば、温度検出系統回路の出力規定値VCTIの0%,100%である。
【0098】
つまり、温度検出系統回路の出力規定値VCTIの0%,100%に相当するVF電圧をVFM_L,VFM_Hとして被測定回路402に入力し、更に、三角波発生器78の出力状態において、被測定回路402の出力電圧VCTIを第2の電圧測定部307で測定し、レベル変換器120の出力電圧VLEV_Mを第1の電圧測定部306で測定する。
そして、演算部410で、それら測定値から図8に示すように、VCTI_L〜VCTI_Hに直線回帰関係となるVLEV_M_L〜VLEV_M_Hを求める。
次に、ステップS3において、バッファ回路71とレベル変換器120の入出力特性より、被測定回路402の出力電圧VCTIの最小値VCTI_L〜最大値VCTI_H間に対応するVF電圧を演算部410によって算出する。
【0099】
これは、レベル変換器120の出力電圧VLEV_Mを第1の電圧測定部306で測定し、演算部410で、その測定値から図9に示すように、VLEV_M_L〜VLEV_M_Hに直線回帰関係となるVF電圧VFM_L〜VFM_Hを求める。更に、その図9に示すVLEV_M_L〜VLEV_M_HとVFM_L〜VFM_Hの関係と、上記図8に示すVCTI_L〜VCTI_HとVLEV_M_L〜VLEV_M_Hの関係から、図7に示すVCTI_L〜VCTI_H間のVF電圧VF_L,VF_Hを求める。
【0100】
次に、ステップS4において、演算部410で、IF電流の規定値IFからのずれによる温度検出用ダイオード40のVF電圧値の補正を行う。この補正は、前述で説明した通りである。
次に、ステップS5において、演算部410で、VF電圧値の補正後のVF電圧設定範囲VFP_L,VFP_Hと、被測定回路402の実際のVF電圧範囲VFM_L,VFM_Hとを比較する。
そして、ステップS6において、演算部410で、上記ステップS5の比較結果であるVF電圧範囲の割合から、レベル変換器120のゲイン調整の補正値(ゲイン補正値)を算出(推定)する。この算出の詳細は後述で説明する。
【0101】
ステップS7において、演算部410で、そのゲイン補正値による設定ゲインからゲイン調整抵抗値を算出する。
次に、ステップS8において、レベル変換器120の出力電圧VLEV_Mが、被測定回路402の出力電圧VCTIの最小値VCTI_L〜最大値VCTI_H相当となるオフセット電流i(高温側),i(低温側)を、演算部410にて後述で説明するように算出する。このオフセット電流iH,を、図26に示す。
次に、ステップS9において、算出されたオフセット電流からオフセット調整抵抗値Roを後述で説明するように算出する。
【0102】
そして、ステップS10において、ゲイン調整抵抗値に応じてゲイン調整用抵抗器を除去すると共に、オフセット調整抵抗値Roに応じてオフセット調整用抵抗器を除去する。
ここで、オフセット調整抵抗値Roが+の場合、図26に示すR16A〜R16Cから該当オフセット調整抵抗値Rocとなるように組み合わせて除去し、一方、−の場合、R13、R13A〜R13Cから該当オフセット調整抵抗値Roとなるように組み合わせて除去する。この除去によって、対向側の実装抵抗器によりオフセット電流が流れることとなる。
【0103】
次に、上記ステップで省略した詳細説明内容について記述する。
まず、下式(17)は入力信号電圧VFから、レベル変換器120の出力電圧VLEVの理論値VLEV_Cを求める回路方程式である。図29に示すようにレベル変換器120のオペアンプ73の+入力電位は、抵抗器R11とR12の抵抗値を等しくすれば、Vcc1/2の電圧値となり、オペアンプ73の−入力電位も等価的にVcc1/2の電位となる。一方、R13A=R16A、R13B=R16B、R13C=R16Cとすれば、オペアンプ73のオフセット電流は抵抗器R11のみによって流れ込む。
【0104】
【数9】

【0105】
但し、//は抵抗の並列を示す。
上式(17)で入力信号電圧VFに対するVLEV_Cの計算値が求まるが、回路方程式に用いた回路定数は公称値であって、実際には誤差を持っている。
そこで、同一のVF電位を入力した時のVLEVの測定値VLEV_Mと、VLEVの理論値VLEV_Cとを比較し、回帰直線処理を行なって、下式(18)に示すゲイン補正値、オフセット補正値で、回路定数及び演算増幅器による公称値からのずれを表現する事が出来る。
LEV_M=VLEV_C×Vg_C+Vo_C …(18)
但し、Vg_C:レベル変換器120のゲインの理論補正値。
o_C:レベル変換器120のオフセットの理論補正値。
【0106】
このようにする事により、レベル変換器120の実際の特性を、回路方程式の理論補正値に対して補正を行なう事により推測可能となる。
前述の式(13)及び(14)で記述したVFM_H,VFM_Lは、温度検出系統回路の出力規定値VCTIの0%,100%に相当するVFの実力入力範囲を示し、VFS_H,VFS_Lを回路基板に要求されるVF入力範囲とすると、ゲイン補正値Vg_cは下式(19)で表わされる。
【0107】
【数10】

【0108】
ここで、ゲインを決定するゲイン調整用抵抗器において、ゲインを表わす式の分子はR15A〜15C、分母はR14A〜R14Cであるが、R15A及びR14Aはゲインの概略値を決める主抵抗器であり、抵抗器R15B,R15C,R14B,R14Cと比較して低抵抗値である。
従って、ゲインを調整するのはR15B,R15C,R14B,R14Cとなり、これらの組み合わせでゲイン補正を−2.6%,−1.73%,−0.86%,+0.83%,+1.64%,+2.50%に設定可能で、上記のゲインの補正値Vg_cに最も近い組合せを選定することにより、VFの入力範囲の幅は所望の値に設定出来る。
一方、ゲイン調整後のレベル変換器120の出力電圧は、下式(20)及び(21)の右辺で表わされ、VLEVに近い値になるように、オフセット電流を調整する。
【0109】
【数11】

【0110】
【数12】

【0111】
但し、R16:ゲイン調整後のゲインの分母に相当する抵抗値。
R15:ゲイン調整後のゲインの分子に相当する抵抗値。
上式(20)及び(21)を変形してオフセット電流(iH,)を求める式を下式(22)及び(23)に示す。
【0112】
【数13】

【0113】
【数14】

【0114】
但し、R13:オフセット調整の主抵抗器の抵抗値。
このようにして、レベル変換器120の出力調整用のオフセット電流の調整値(iH,)が求まる。
しかし、iH,の値が異なるので、実際には、それらの平均値Iを下式(24)のように求めて調整を行う。
=(i+i)/2 …(24)
このオフセット調整電流より削除する抵抗器の抵抗値(オフセット調整抵抗値Ro)を、下式(25)によって定める。
=Vcc1/2/I …(25)
【0115】
は、正負の値を持つ事から、計算上のRは正負の値を保有するが、これはオフセット電流を流す向きを表現しているのみである。従って、Rが正の場合はR16側の抵抗器を削除して、電流のアンバランスを起こさせる事により、R13側の抵抗器よりオフセット電流を流す。
一方、Rが負の場合はR13側の抵抗器を削除して、電流のアンバランスを起こさせる事により、R16側の抵抗器にオフセット電流を引き込む。このオフセット抵抗値Rもゲイン調整と同様に、近い値をR13,R13A,R13B,R13C,R16A,R16B,R16Cから選定すれば良い。
【0116】
このような本実施の形態の演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法によれば、演算増幅器を含むアナログ回路である被測定回路402の入出力特性を測定し、この結果に応じてゲイン調整値を計算し、次に、この時点ではゲイン調整を行わずゲイン調整後の当該アナログ回路の入出力特性を推定し、この結果に応じてオフセット調整値を計算し、先に計算したゲイン調整値とそのオフセット調整値に応じてゲイン調整とオフセット調整を同時に行うことができる。つまり、演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性の測定及び抵抗調整を各々1回で済むようにした。従来は各々2回必要であった。従って、被測定回路402の入出力特性調整の工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態に係る演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本入出力特性調整方法による入出力特性の調整対象となる演算増幅器を用いたアナログ回路(被測定回路)の入出力特性測定装置の構成を示す。
【図3】上記被測定回路の温度検出用ダイオードの温度をパラメータとしたVF/IF特性図である。
【図4】上記温度検出用ダイオードのVF電圧の温度係数のIF依存性図である。
【図5】上記温度検出用ダイオードの25℃におけるVF電圧のIF電流依存性図である。
【図6】上記温度検出用ダイオードのVF電圧の温度特性のIF電流依存性を示す図である。
【図7】上記被測定回路の入出力特性VF−VCTIを示す図である。
【図8】上記被測定回路の出力電圧VCTIと当該被測定回路のレベル変換器の出力電圧VLEV_Mとの関係を示す図である。
【図9】上記被測定回路の入力電圧VFと当該被測定回路のレベル変換器の出力電圧VLEV_Mとの関係を示す図である。
【図10】車両駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図11】車両駆動システムにおける昇降圧コンバータの構成を示すブロック図である。
【図12】昇降圧コンバータの昇圧動作時にリアクトルに流れる電流波形図である。
【図13】昇降圧コンバ−タ用IPMの構成を示すブロック図である。
【図14】昇降圧コンバ−タ用IPMにおけるIGBTチップ温度検出部の構成を示すブロック図である。
【図15】IGBTチップ温度検出部における定電流回路によるIGBTチップ温度検出ダイオードの順方向電圧の温度特性図である。
【図16】従来のレベル変換器を用いたVF/PWM変換回路の構成を示す回路図である。
【図17】昇降圧コンバ−タ用IPMにおけるデジタル・アナログ変換器の構成を示す回路図である。
【図18】上記の第1の電源の電圧を変動させた場合のIGBTチップ温度電圧信号のスパン変化を示す図である。
【図19】上記の第1の電源の電圧を変動させた場合のIGBTチップ温度電圧信号のオフセット変化を示す図である。
【図20】上記の第2の電源の電圧を変動させた場合のIGBTチップ温度電圧信号のスパン変化を示す図である。
【図21】上記の第2の電源の電圧を変動させた場合のIGBTチップ温度電圧信号のオフセット変化を示す図である。
【図22】従来の演算増幅器を用いたアナログ回路である被測定回路の入出力特性測定装置の構成を示す回路図である。
【図23】従来の入出力特性測定装置のレベル変換器の入出力特性図である。
【図24】従来の入出力特性測定装置のアナログ/PWM変換器及びPWM/アナログ変換器の入出力特性図である。
【図25】従来の入出力特性測定装置による被測定回路の入出力特性測定方法を説明するためのフローチャートである。
【図26】従来の演算増幅器を用いたアナログ回路であるレベル変換器を適用したVF/PWM変換回路の構成を示す回路図である。
【図27】上記レベル変換器における各オフセット調整用抵抗器とゲイン調整用抵抗器との構成を示し、(a)は抵抗値調整前の構成、(b)は抵抗値調整後の構成を示す図である。
【図28】上記レベル変換器における各オフセット調整用抵抗器とゲイン調整用抵抗器との他の構成を示し、(a)は抵抗値調整前の構成、(b)は抵抗値調整後の構成を示す図である。
【図29】上記被測定回路の入出力特性における温度と出力の関係及び、設定VF値に対する許容誤差、測定誤差、調整範囲、許容誤差VF−ER、VF調整範囲VFS−H,VFS−Lを示す図である。
【図30】上記被測定回路のゲイン調整の有無を説明するための図である。
【図31】上記被測定回路のオフセット調整の有無を説明するための図である。
【符号の説明】
【0118】
10 車両駆動システム
11 電動機
12 電源
13 昇降圧コンバータ
14 インバータ
16 リアクトル
17,C119,C604,C631 コンデンサ
21,22 スイッチング素子
23a,23b 制御回路
25,26 IGBT
27,28,84 ダイオード
30 昇降圧コンバータ用IPM
31 上アームのスイッチング部
32 下アームのスイッチング部
34,35,36,37,38 フォトカプラ
40,50 温度検出用ダイオード
41,42,51,52,80,82,89、R11,R12,R14,R15,R628,R637 抵抗器
43,53 IGBT保護回路
44 ゲートドライバ
45,55 IGBTチップ温度検出部
56 VH検出回路
57 分圧回路
58 レベル調整回路
59 三角波生成器
60 比較器
62 LPF
63 VH比較器
64 ゲート信号発生器
70 定電流源
71,92 バッファ回路
73,101,102 オペアンプ
77,120 レベル変換器
78 三角波発生器
79 コンパレータ(アナログ/PWM変換器)
85 発光ダイオード
87 受光ダイオード
88,TR600 トランジスタ
90 デジタル・アナログ変換器
90a PWM/アナログ変換器
91 2値化回路
93 LPF回路
300,400 入出力特性測定装置
302,402 被測定回路
304 測定用電源
306 第1の電圧測定部
307 第2の電圧測定部
308 第3の電圧測定部
310,410 演算部
404 電流測定部
406 スイッチ
R13 オフセット設定用抵抗器
R13A,R13B,R13C,R16A,R16B,R16C オフセット微調整用抵抗器
R14A,R14B,R14C,R15A,R15B,R15C ゲイン調整用抵抗器
Vcc1 第1の電源(又は電源電圧)
Vcc2 第2の電源(又は電源電圧)
Vout IGBTチップ温度電圧信号(LPF出力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット及びゲインの調整用回路素子が組み合わされた演算増幅器を含むアナログ回路と、このアナログ回路の入力端子に複数の既知電圧を印加する信号源と、この信号源による前記印加の際に、前記演算増幅器の出力電圧と、前記アナログ回路の出力端子の電圧と、前記演算増幅器のオフセット電流を供給する電源電圧を測定する測定手段と、前記アナログ回路の入力端子へ印加する信号電圧と前記演算増幅器の出力電圧との関係から前記演算増幅器の入出力特性である第1の入出力特性を求め、前記演算増幅器の出力電圧と前記アナログ回路の出力電圧との関係から前記演算増幅器の出力側から前記アナログ回路の出力端子の入出力特性である第2の入出力特性を求め、前記アナログ回路の入出力特性を目標特性とするため、前記第2の入出力特性を用いて前記演算増幅器に要求される入出力特性を求め、前記演算増幅器のオフセット及びゲインを、要求される入出力特性と前記第1の入出力特性とを比較して、求められた目標値に調整するために前記調整用回路素子を調整する調整値を求める演算手段とを備えたアナログ回路の入出力特性調整方法において、
前記ゲイン調整の前に測定された前記演算増幅器の入出力特性の実測値をもとに、ゲイン調整後の演算増幅器の入出力特性を推定して前記オフセット調整を行うことを特徴とする演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法。
【請求項2】
オフセット及びゲインの調整用回路素子が組み合わされた演算増幅器を含むアナログ回路と、このアナログ回路の入力端子に複数の既知電圧を印加する信号源と、この信号源による前記印加の際に、前記演算増幅器の出力電圧と、前記アナログ回路の出力端子の電圧と、前記演算増幅器のオフセット電流を供給する電源電圧を測定する測定手段と、前記アナログ回路の入力端子へ印加する信号電圧と前記演算増幅器の出力電圧との関係から前記演算増幅器の入出力特性である第1の入出力特性を求め、前記演算増幅器の出力電圧と前記アナログ回路の出力電圧との関係から前記演算増幅器の出力側から前記アナログ回路の出力端子の入出力特性である第2の入出力特性を求め、前記アナログ回路の入出力特性を目標特性とするため、前記第2の入出力特性を用いて前記演算増幅器に要求される入出力特性を求め、前記演算増幅器のオフセット及びゲインを、要求される入出力特性と前記第1の入出力特性とを比較して、求められた目標値に調整するために前記調整用回路素子を調整する調整値を求める演算手段とを備えたアナログ回路の入出力特性調整方法において、
演算増幅器の入出力特性の調整限界範囲を、前記規定値に対する許容誤差から前記オフセットの調整分解能、前記電流測定手段での測定誤差及び誤差余裕度の各値を減じた値を、前記規定値に対して正及び負方向に拡げた範囲とし、
前記調整限界範囲を超過した際の前記演算増幅器のゲイン調整後の演算増幅器の入出力特性の測定を、当該ゲイン調整の前に測定された前記演算増幅器の入出力特性の実測値をもとにゲイン調整後の演算増幅器の入出力特性を推定することによって省略し、その推定値を用いて前記演算増幅器のオフセット調整を行うことを特徴とする演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法。
【請求項3】
前記オフセット調整を行うと同時に、前記ゲイン調整後の演算増幅器の入出力特性の推定時に用いられるゲイン調整値に応じてゲイン調整を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法。
【請求項4】
前記アナログ回路は、入力端子に接続された温度検出用のダイオードと、このダイオードに一定の順方向電流を供給する定電流源を有する場合に、前記ダイオードに供給される順方向電流を測定する電流測定手段とを備え、前記演算手段が、前記電流測定手段での順方向電流の測定値と順方向電流の規定値とのずれ量を求め、この電流ずれ量をもとに当該ずれ量の順方向電流が供給された際の前記ダイオードの順方向電圧のずれ量を求め、この電圧ずれ量をもとに、前記演算増幅器にて、前記アナログ回路の入力端子への印加電圧を規定値からずらす補正を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の演算増幅器を含むアナログ回路の入出力特性調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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