説明

潜在反応基を含有するナノ繊維

ナノ繊維は、1種または複数の天然または合成ポリマー物質と、少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤とを組み合わせることにより、形成される。潜在反応性で活性化可能なナノ繊維は、潜在反応性・活性化可能基の少なくとも1個を活性化して、基材の表面とその潜在反応性・活性化可能基との間における共有結合の形成により、ナノ繊維を該表面に結合することによって、基材の表面を改質するために使用され得る。残りの潜在反応性・活性化可能基(複数可)は、基材の表面上に接触可能に残されており、基材表面の更なる改質のために使用され得る。生物活性物質は、基材の表面上にある接触可能な潜在反応基と反応することにより、ナノ繊維改質表面上に固定化され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ナノ繊維およびナノ繊維改質表面に関する。より特定すれば、本発明は、各々が少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する、1種または複数の多官能架橋剤を含むナノ繊維を対象とする。潜在反応性で活性化可能な架橋剤を含有するナノ繊維は、基材の表面を改質するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
ナノ繊維は、高い表面積、小さい繊維径、層の薄さ、高い透過性および低い基礎重量を含む独特な性質のために、多様な用途について検討されている。とりわけ、創傷包帯、バイオセンサーおよび組織工学用足場などの生物医学用途において、活性化学物質を組み入れる能力を有する機能化ナノ繊維に対して、より多くの関心が集まってきた。
【0003】
ナノ繊維は、静電紡糸(電気紡糸とも称する)により作製され得る。繊維を形成できる液体および/または溶液の電気紡糸技法は、よく知られており、例えば、特許文献1および特許文献2などの多くの特許に記載されている。電気紡糸法は、液体に繊維を生成させるために、電場中への液体の導入を一般に伴う。こうした繊維は、一般に、収集用の引力電位で導体に引き寄せられる。液体が繊維に変換される間に、繊維は硬化および/または乾燥する。この硬化および/または乾燥は、液体の冷却、即ち液体が室温では通常固体になることにより、溶媒の蒸発、例えば脱水(物理的誘発硬化)により、または硬化機構(化学的誘発硬化)により起こし得る。
【0004】
静電紡糸法は、例えば、特許文献1に開示されているように、マットまたは他の不織材料を創製するための繊維の使用を通常対象としてきた。直径範囲が50nm〜5μmのナノ繊維は、不織布またはナノ繊維配列メッシュに電気紡糸することができる。小さい繊維径のために、電気紡糸テキスタイルは、非常に高い表面積および小さい孔径を元来有する。こうした性質のために、電気紡糸布地は、膜、組織足場および他の生物医学用途を含む多くの用途に対して、有力な候補となる。最近、ナノ繊維の不織布膜を生成するための努力が、電気紡糸技法の使用に集中してきた。
【0005】
ナノ繊維は、基材の表面を改質するために、使用することができる。大部分のナノ繊維表面は、生体分子を固定化する能力を得るために、処理されなければならない。生体適合性の改良を意図した合成生体用材料の表面改質は、広範に研究されてきており、多くの汎用技法が、ポリマーナノ繊維の改質に対して検討されてきた。例えば、Sandersらは、非特許文献1において、電気紡糸ポリウレタン(PU)繊維表面上に、負荷電または正荷電モノマーのプラズマ誘発表面重合により異なる表面電荷を導入した。表面荷電PU繊維メッシュを5週間ラット皮下背面に埋め込み、組織適合性を評価したところ、負荷電表面は、繊維多孔性メッシュの生体用材料中に血管の内方成長を促進し得ることが判明した。Maらは、非特許文献2において、グラフト化ポリメタクリル酸スペーサーを介して、ホルムアルデヒド前処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)のナノ繊維上にゼラチンをコンジュゲートしたところ、ゼラチン改質は、PETナノ繊維上における内皮細胞(EC)の伸展および増殖を改善し、ECの表現型を保持することも判明した。Chuaらは、非特許文献3において、繊維表面上にUVグラフト化したポリ(アクリル酸)スペーサーに対する共役結合性のコンジュゲーションにより、ポリ(e−カプロラクトン−co−エチルエチレンホスフェート)(PCLEEP)のナノ繊維足場上にガラクトースリガンドを導入した。ガラクトシル化PCLEEPナノ繊維の3D足場、ならびに機能性2D膜基材上で、肝細胞の付着、アンモニアの代謝、アルブミンの分泌、およびシトクロームP450の酵素活性を調べた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4043331号明細書
【特許文献2】米国特許第5522879号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Fibro−Porous Meshes Made from Polyurethane Micro−Fibers: Effects of Surface Charge on Tissue Response」、Biomaterials 26巻、813〜818頁(2005年)
【非特許文献2】「Surface Enginerring of Electospun Polyethylene Terephthalate (PET) Nanofibers Towards Development of a New Material for Blood Vessel Engineering」、Biomaterials 26巻、2527〜2536頁(2005年)
【非特許文献3】「Stable Immobilization of Rat Hepatocyte Spheroids on Galactosylated Nanofiber Scaffold」、Biomaterials 26巻、2537〜2547頁(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記にまとめた方法および技法は、コストがかかり、複雑で、または材料特異的である。したがって、より一般的で使い易く、温和な条件下で幅広い種類のナノ繊維に応用できる、表面改質手法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、ナノ繊維は、1種または複数の天然または合成ポリマー物質と、各々が少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤とを含む。使用時に、光化学的または熱的な潜在反応基は、エネルギー源に曝されると共有結合を形成することになろう。適切なエネルギー源には、放射線および熱のエネルギーが挙げられる。幾つかの実施形態では、放射エネルギーは、可視光線、紫外線、赤外線、X線またはマイクロ波の電磁放射線である。
【0010】
架橋剤は、少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有し得る。これらの潜在反応基は、同一でもよく、異なっていてもよい。例えば、潜在反応基は全て、光化学反応基でもよい。あるいは、本発明の他の実施形態では、架橋剤は、光化学的、熱的双方の反応基を含んでもよい。更に、架橋剤は、モノマー物質もしくはポリマー物質でもよく、またはモノマー、ポリマー双方の物質の混合物でもよい。
【0011】
本発明の多様な実施形態によれば、ナノ繊維のポリマー物質は、所望の用途に応じて親水性、疎水性、両親媒性または熱応答性でもよい。本発明のまた更なる実施形態によれば、ナノ繊維は、生分解性または非生分解性ポリマーのいずれでもよい。本発明の更に更なる実施形態では、ナノ繊維は、生物活性物質を含んでもよい。
【0012】
ナノ繊維は、通常、1nm〜100ミクロンの範囲の直径を有し、1nm〜1000nmの範囲の直径を有し得る。ナノ繊維は、少なくとも約10から少なくとも100の範囲のアスペクト比を有し得る。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、潜在反応性で活性化可能なナノ繊維は、1種または複数のポリマー物質と、各々が少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤とを組み合わせ、その組合せから少なくとも1本のナノ繊維を形成することにより、生成される。ナノ繊維は、ポリマー物質および架橋剤を含有する組合せを電気紡糸することにより、形成し得る。本発明のまた更なる実施形態によれば、その組合せは、生物活性物質も含んでもよく、または後に生物活性物質と反応する官能性ポリマーと更に組み合わせてもよい。官能性ポリマーには、生物活性物質と反応する、1種または複数の官能基を有する任意の適切なポリマーが含まれる。こうしたポリマーの代表的官能基には、カルボキシ、エステル、エポキシ、ヒドロキシ、アミド、アミノ、チオ、N−ヒドロキシスクシンイミド、イソシアネート、酸無水物、アジド、アルデヒド、塩化シアヌリルまたはホスフィン基が挙げられる。
【0014】
また別の実施形態によれば、本発明は、基材の表面をコーティングする方法を提供する。本発明の一実施形態によれば、該方法は、1種または複数のポリマー物質と、各々が少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤とを組み合わせるステップ、その組合せから少なくとも1本のナノ繊維を形成するステップ、基材の表面をナノ繊維と接触させるステップ、およびナノ繊維と表面との間に結合を形成するステップを含む。本発明の更なる実施形態によれば、該方法は、潜在反応性・活性化可能基の少なくとも1つをエネルギー源で活性化して、ナノ繊維を生物活性物質と結合させるステップを含む。本発明の代替的実施形態によれば、該方法は、ナノ繊維を表面に結合するために、第1の潜在反応性・活性化可能基を、およびナノ繊維を生物活性物質に結合するために、第2の潜在反応性・活性化可能基を、同時に活性化するステップを含む。
【0015】
更に別の実施形態によれば、本発明は、1種または複数の天然または合成ポリマー物質と、各々が少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤とを含んだ複数のナノ繊維を含む、表面被膜を有する物品を提供する。幾つかの実施形態では、生物活性物質がナノ繊維に結合している。
【0016】
更にまた別の実施形態によれば、本発明は、1種または複数のポリマー物質と、各々が少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤とを含んだ少なくとも1本のナノ繊維を有する、表面被膜を含む細胞培養プレートである。
【0017】
多数の実施形態が開示されるが、本発明の更に他の実施形態は、本発明の例示的実施形態を説明し、記載する以下の詳細な説明から、当業者には明らかとなろう。したがって、詳細な説明は、性質上、例示的であって限定的ではないと見なすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1A〜1Dは、実施例1に記載の方法により調製した、ポリカプロラクトンの電子画像を示す図である。
【図2】図2は、実施例7に記載する、カルボキシおよびアミン基を含有するナノ繊維の官能基密度を示す図である。
【図3】図3は、実施例7に記載する、カルボキシおよびアミン基を含有するナノ繊維の官能基密度を示す図である。
【図4】図4は、実施例7に記載する、カルボキシおよびアミン基を含有するナノ繊維の官能基密度を示す図である。
【図5】図5は、実施例10に記載する、ナノ繊維のタンパク質固定化量を示す図である。
【図6】図6は、実施例11に記載する、ナノ繊維の西洋ワサビペルオキシダーゼ活性を示す図である。
【図7】図7は、実施例12に記載する、ナノ繊維の酵素的分解をグラフ化した図である。
【図8】図8A〜8Dは、実施例12に記載する、酵素分解ナノ繊維の電子画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、潜在反応性で活性化可能なナノ繊維を対象とする。潜在反応性で活性化可能なナノ繊維は、基材の表面を改質して機能化表面を得るために、使用することができる。生物活性物質は、基材の表面上に露出した潜在反応基と反応することにより、ナノ繊維改質表面上に固定化し得る。通常、生物活性物質は、ナノ繊維改質表面上に固定化された後、その生物活性の少なくとも一部を保持している。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ナノ繊維は、1種または複数の天然または合成ポリマー物質と、各々が少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する架橋剤とを含む。本発明の更なる実施形態によれば、ナノ繊維は、生分解性または非生分解性ポリマーでもよく、生物活性物質も含み得る。潜在反応性で活性化可能なナノ繊維は、潜在反応性・活性化可能基の少なくとも1個を活性化して、基材の表面と潜在反応性・活性化可能基との間に共有結合を形成することにより、ナノ繊維をその表面に結合することによって、基材の表面を改質するために使用することができる。残りの潜在反応性・活性化可能基(複数可)は、基材の表面上に接触可能に残され、基材表面の更なる改質のために使用され得る。
【0021】
延伸、鋳型合成、相分離、自己集合または電気紡糸などの多くの加工技術が、ナノ繊維の調製に使用されてきた。一実施形態では、ナノ繊維は、1種または複数のポリマー物質と、少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する架橋剤とを含む、繊維形成性組合せの電気紡糸により形成することができる。本発明の代替的実施形態によれば、繊維形成性組合せは生物活性物質も含み得る。電気紡糸は、溶液または液体にナノ繊維を生成させるために、1種または複数のポリマーまたは他の繊維形成性の溶液もしくは液体を電場中へ導入することを一般に伴う。毛管出口を有するシリンジ中に保持された繊維形成性組合せに、強い静電場を印加すると、毛管出口からの繊維形成性組合せの懸垂液滴が、Taylorコーンに変形する。電圧が閾値を超えると、電気力が液滴上の表面張力に打ち勝ち、溶液または液体の荷電ジェットが、Taylorコーンの先端から放出される。次いで、放出ジェットは、低電位の対電極として作用する収集金属スクリーンへと移動する。そのジェットは、小さい荷電繊維または細繊維に分割され、存在する溶媒は全て蒸発して、後にはスクリーン上に形成された不織布マットが残される。
【0022】
静電紡糸繊維は、非常に細い直径を有するように生成することができる。電気紡糸繊維の直径、粘稠度および均一性に影響するパラメーターには、繊維形成性組合せ中のポリマー物質および架橋剤濃度(添加量)、印加電圧、ならびに針・コレクター間距離が挙げられる。本発明の一実施形態によれば、ナノ繊維は、約1nm〜約100μmの範囲の直径を有する。他の実施形態では、約1nm〜約1000nmの範囲の直径を有する。更に、ナノ繊維は、少なくとも約10から少なくとも約100の範囲のアスペクト比を有し得る。微小な繊維径のために、該繊維は、質量単位当たり高い表面積を有することが理解されよう。この高い表面積対質量比のために、繊維形成性溶液または液体は、液体または溶媒和繊維形成物質から固体ナノ繊維へ1秒にも満たないうちに変換されることが可能である。
【0023】
ナノ繊維の形成に使用されるポリマー物質は、架橋剤と適合性のある任意の繊維形成物質から選択し得る。意図する用途に応じて、繊維形成ポリマー物質は、親水性、疎水性または両親媒性でもよい。それに加え、繊維形成ポリマー物質は、熱応答性ポリマー物質でもよい。
【0024】
合成または天然で、生分解性または非生分解性のポリマーは、ナノ繊維を形成し得る。「合成ポリマー」とは、合成で調製され、非天然モノマー単位を含むポリマーを指す。例えば、合成ポリマーは、アクリレートまたはアクリルアミド単位などの非天然モノマー単位を含むことができる。合成ポリマーは、付加重合、縮合重合またはフリーラジカル重合などの従来の重合反応により、通常形成される。合成ポリマーには、非天然モノマー単位(例えば、合成ペプチド、ヌクレオチドおよび糖誘導体)と組み合わせた天然ペプチド、ヌクレオチドおよび糖モノマー単位などの天然モノマー単位を有するものも含むことができる。こうした種類の合成ポリマーは、固相合成または可能な場合は組換えなどの標準的な合成技法により、生成することができる。
【0025】
「天然ポリマー」とは、天然、組換えまたは合成のいずれかで調製され、ポリマー主鎖中では天然モノマー単位からなるポリマーを指す。幾つかの場合には、天然ポリマーを修飾、プロセシング、誘導体化、または他の処理をして、天然ポリマーの化学的および/または物理的性質を変化させてもよい。こうした例では、「天然ポリマー」という用語は、天然ポリマーに対する変化を反映するように、改変されよう(例えば、「誘導体化天然ポリマー」または「脱グリコシル化天然ポリマー」)。
【0026】
ナノ繊維材料には、例えば、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンサルファイド、ポリアリーレンオキサイド、ポリスルホン、修飾ポリスルホンポリマー、ならびにそれらの混合物などの付加ポリマーおよび縮合ポリマー材料の双方を含み得る。こうした包括的部類に入る例示的材料には、ポリエチレン、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリレート(および他のアクリル樹脂)、ポリスチレンおよびそのコポリマー(ABA型ブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、様々な加水分解度(87%〜99.5%)のポリビニルアルコールが挙げられ、架橋型および非架橋型を取っている。例示的な付加ポリマーは、ガラス状(室温より高いTg)になる傾向がある。これは、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレート、ポリスチレンポリマー組成物、またはポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコール材料では、アロイもしくは低結晶に当てはまる。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態では、ナノ繊維は、ポリアミド縮合ポリマーである。より特定の実施形態では、ポリアミド縮合ポリマーは、ナイロンポリマーである。用語「ナイロン」は、長鎖合成ポリアミド全ての総称である。通常、ナイロンの術語には、出発物質がCジアミンおよびC二酸であることを示す、ナイロン−6,6などの一連のメンバーが含まれる(1つ目の数字がCジアミンを示し、2つ目の数字がCジカルボン酸化合物を示す)。別のナイロンは、少量の水の存在下でε−カプロラクタムの重縮合により作製し得る。この反応は、線状ポリアミドであるナイロン−6(ε−アミノカプロン酸の名でも知られている、環状ラクタムから作製される)を形成する。更に、ナイロンコポリマーも想定されている。コポリマーは、各種ジアミン化合物、各種二酸化合物および各種環状ラクタム構造を反応混合物中で組み合わせ、次いでモノマー物質がポリアミド構造中にランダムに配置したナイロンを形成することにより、作製することができる。例えば、ナイロン6,6−6,10材料は、ヘキサメチレンジアミンならびにCおよびC10の二酸ブレンドから製造されるナイロンである。ナイロン6−6,6−6,10は、εアミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミン、ならびにCおよびC10二酸物質のブレンドの共重合で製造されるナイロンである。
【0028】
ブロックコポリマーも、ナノ繊維材料として使用することができる。ナノ繊維調製用の組成物の調製では、溶媒系は、両ブロックが溶媒中に溶解するように選択することができる。一例は、塩化メチレン中のABA(スチレン−EP−スチレン)またはAB(スチレン−EP)ポリマーである。このようなブロックコポリマーの例は、スチレン/ブタジエンおよびスチレン/水素化ブタジエン(エチレンプロピレン)を含むKratonTM型のABおよびABAブロックポリマー、PebaxTM型のε−カプロラクタム/エチレンオキサイド、およびSympatexTM型のポリエステル/エチレンオキサイド、ならびにエチレンオキサイドおよびイソシアネートのポリウレタンである。
【0029】
付加ポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン、シンジオタクチックポリスチレン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(アクリロニトリル)とそのアクリル酸およびメタクリレートとのコポリマーなどの非晶質付加ポリマー、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)およびその各種コポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)およびその各種コポリマーなどは、低い圧力および温度で溶解するので、比較的容易に溶液紡糸をすることができる。ポリエチレンおよびポリプロピレンのような高結晶性ポリマーは、溶液紡糸をしようとすれば、より高い温度および高い圧力を一般に必要とする。
【0030】
ナノ繊維は、ポリマー混合物、アロイ形式または架橋した化学結合構造中に、2種以上のポリマー物質を含むポリマー組成物からも形成することができる。2種の関連ポリマー物質をブレンドすることにより、有益な性質を有するナノ繊維を得ることができる。例えば、高分子量ポリ塩化ビニルは、低分子量ポリ塩化ビニルとブレンドすることができる。同様に、高分子量ナイロン材料は、低分子量ナイロン材料とブレンドすることができる。包括的ポリマー属の異なる種も、ブレンドすることができる。例えば、高分子量スチレン材料は、低分子量の高衝撃性ポリスチレンとブレンドすることができる。ナイロン−6材料は、ナイロン−6;6,6;6,10コポリマーなどのナイロンコポリマーとブレンドすることができる。更に、87%加水分解ポリビニルアルコールなどの低加水分解度のポリビニルアルコールは、98〜99.9%間およびそれより高い加水分解度の完全または超加水分解ポリビニルアルコールとブレンドすることができる。混合物中のこうした物質は全て、適当な架橋機構を用いて架橋することができる。ナイロンは、アミド連結部中の窒素原子と反応性がある架橋剤を用いて架橋することができる。ポリビニルアルコール材料は、ホルムアルデヒドなどのモノアルデヒド、尿素、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂およびその類縁体、ホウ酸および他の無機化合物、ジアルデヒド、二酸、ウレタン、エポキシおよび他の既知の架橋剤などのヒドロキシ反応性物質を用いて、架橋することができる。架橋試薬は、反応してポリマー鎖間に共有結合を形成することにより、分子量、耐薬品性、全体的強度および耐機械的分解性を実質的に改良する。
【0031】
生分解性ポリマーも、ナノ繊維構造と関連した物品の調製に使用することができる。生分解性材料としてこれまで研究された合成ポリマーの部類例には、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリイミノカーボネート、脂肪族カーボネート、ポリホスファゼン、ポリ酸無水物、およびそれらのコポリマーが挙げられる。例えば、埋込型医療具に関連して使用できる生分解性材料の具体例には、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド−co−ジオキサノン)、ポリ酸無水物、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)およびポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)が挙げられる。こうしたポリマーの他の生分解性ポリマーとのブレンドも、使用することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、ナノ繊維は非生分解性ポリマーである。非生分解性ポリマーとは、一般に、非酵素的、加水分解的または酵素的に分解することができないポリマーを指す。例えば、非生分解性ポリマーは、プロテアーゼが起こし得る分解に耐性を示す。非生分解性ポリマーは、天然または合成ポリマーのいずれかを含み得る。
【0033】
ナノ繊維を形成する組成物内に架橋剤を含めることにより、ナノ繊維は、広範囲の支持体表面と適合することが可能である。架橋剤は、所望の表面特性を付与するために、単独または他の物質と組み合わせて使用することができる。
【0034】
適切な架橋剤には、放射線、電気エネルギーおよび熱エネルギーなどのエネルギー源に曝されると、他の物質と共有結合を形成できる少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する、モノマー物質(低分子物質)またはポリマー物質のいずれかが挙げられる。一般に、潜在反応性・活性化可能基は、加えられた特定の外部エネルギーまたは刺激に応答して、活性種を生成する結果、隣接化学構造と共有結合を形成する化学実体である。潜在反応基は、保存条件下ではその共有結合を保持するが、外部エネルギー源で活性化されると、他の分子と共有結合を形成するような基である。幾つかの実施形態では、潜在反応基は、フリーラジカルなどの活性種を形成する。こうしたフリーラジカルには、外部から加えた電気、電気化学または熱エネルギーを吸収した際のナイトレン、カルベン(carbine)または励起状態ケトンを含み得る。既知のもしくは市販されている潜在反応基の多様な例が、米国特許第4973493号、米国特許第5258041号および米国特許第5563056号、米国特許第5637460号および米国特許第6278018号に報告されている。
【0035】
トリクロロメチルトリアジンに基づく8種の市販多官能光架橋剤が、Aldrich Chemicals、Produits Chimiques Auxiliaires et de Syntheses (Longjumeau, France)、Shin−Nakamara Chemical、Midori Chemicals Co., Ltd. またはPanchim S. A. (France)から入手できる。その8種の化合物には、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5トリアジン、2−(メチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、4−(4−カルボキシフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(1−エテン−2−2’−フリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンおよび2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンが含まれる。
【0036】
幾つかの実施形態では、潜在反応基は同じであるが、他の実施形態では、潜在反応基は異なり得る。例えば、潜在反応基は、放射線で共に活性化される2種の異なる基でもよい。他の実施形態では、1つの潜在反応基は放射線で活性化し得るが、もう1つの潜在反応基は熱で活性化し得る。適切な架橋剤には、二官能性、三官能性および多官能性モノマーおよびポリマー物質が含まれる。
【0037】
熱的または熱エネルギーに反応する潜在反応基は、多様な反応性部分を包含し、熱分解して反応種を形成した後、共有結合を形成することになる既知の化合物を包含し得る。その共有結合により、架橋が隣接物質に結合することが可能になる。適切な熱反応基は、通常、熱感受性の、または熱不安定な結合をもつ一対の原子を有する。熱不安定な結合には、過酸化物結合などの酸素−酸素結合、窒素−酸素結合、および窒素−窒素結合が含まれる。このような結合は、80〜200℃を超えない範囲の温度で反応または分解することになろう。
【0038】
熱発生したカルベンおよびナイトレンは共に、炭素結合挿入、移動、水素引抜きおよびダイマー形成を含む、多様な化学反応を受ける。カルベン発生剤の例には、ジアジリンおよびジアゾ化合物が含まれる。ナイトレン発生剤の例には、アリールアジド、特に過フッ化アリールアジド、アシルアジドおよびトリアゾリウムイリドが含まれる。それに加え、加熱した際に反応性三重項状態を形成する、ジオキセタンなどの基、またはラジカルアニオンおよびラジカルカチオンも、熱反応基の形成に使用され得る。
【0039】
一実施形態では、架橋剤の熱反応基は、過酸化物の−(O−O)−基を含む。熱反応性の過酸化物含有基には、例えば、熱反応性ジアシル過酸化基、熱反応性パーオキシジカーボネート基、熱反応性ジアルキル過酸化基、熱反応性パーオキシエステル基、熱反応性パーオキシケタール基、および熱反応性ジオキセタン基が挙げられる。
【0040】
ジオキセタンは、分子の環歪みのために、標準的な過酸化物と比較して低い温度で反応または分解する、4員環状過酸化物である。ジオキセタンの分解における初期段階は、O−O結合の切断であり、第2段階では、C−C結合を破壊して、励起三重項状態のカルボニルを1個、および励起一重項状態のカルボニルを1個創出する。励起三重項状態のカルボニルは、隣接物質から水素を引き抜き、2個のラジカル種を隣接物質上に1個および酸素の付いたそのカルボニルの炭素上に1個形成することができ、熱反応性ジオキセタンと隣接物質との間に新たな共有結合を形成することになろう。
【0041】
代表的な熱反応性部分は、米国特許出願公開第20060030669号に報告されており、他の代表的な熱潜在反応基は、米国特許第5258041号に報告されている。これらの文書は共に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
紫外線または可視線などの電磁線に反応する潜在反応基は、通常、光化学反応基と呼称される。
【0043】
潜在反応性・活性化可能なアリールケトンの形態をした潜在反応性・活性化可能種の使用は、有用である。例示的な潜在反応性・活性化可能なアリールケトンには、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、アントロン様ヘテロ環(即ち、10位にN、OまたはSを有するものなどのアントロンのヘテロ環類縁体)、およびそれらの置換(例えば、環置換)誘導体が挙げられる。アリールケトンの例には、アクリドン、キサントンおよびチオキサントンを含むアントロンのヘテロ環誘導体、ならびにそれらの環置換誘導体が挙げられる。特に、約360nmより大きい励起エネルギーを有するチオキサントンおよびその誘導体は、有用である。
【0044】
このようなケトンの官能基は、活性化/不活性化/再活性化サイクルを容易に受けることができるので、適している。ベンゾフェノンは、三重項状態への系間交差を受ける励起一重項状態の初期形成により、光化学的に励起できるので、例示的な光化学反応性・活性化可能基である。励起三重項状態は、水素原子の引抜き(例えば、支持体表面から)により炭素−水素結合中に挿入し、したがってラジカル対を創出することができる。ラジカル対のその後の崩壊によって、新たな炭素−炭素結合が形成される。反応性結合(例えば、炭素−水素)が結合するために利用できない場合、ベンゾフェノン基の紫外光誘発励起は可逆的であり、その分子は、エネルギー源を除いたときに基底状態エネルギー準位に戻る。ベンゾフェノンおよびアセトフェノンなどの光化学反応性・活性化可能なアリールケトンは、これらの基が、水中で多数回の再活性化を受け、そのためコーティング効率を増加させるため、特に重要である。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態では、光化学反応性架橋剤は、異なる3種の分子ファミリーに由来し得る。幾つかのファミリーは、1つまたは複数の親水性部分、即ちヒドロキシ基(保護されていることもある)、アミン、アルコキシ基などを含む。他のファミリーは、疎水性または両親媒性部分を含み得る。一実施形態では、そのファミリーは、次式:
L−((D−T−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R))
を有する。
【0046】
Lは連結基である。Dは、O、S、SO、SO、NRまたはCRである。Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)または(−CHCHCHCH−O−)である。Rは、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基である。Xは、O、SまたはNRである。Pは、水素原子または保護基であるが、但し、XがNRであるときは、存在しない。Rは、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基である。Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oである。RおよびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)、(−CH−)S(O)(−CH−)もしくは(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされている。RおよびR10は、各々独立に水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基である。RおよびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基である。RおよびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、qは、1から約7までの整数であり、rは、0から約3までの整数であり、sは、0から約3までの整数であり、mは、2から約10までの整数であり、tは、1から約10までの整数であり、xは、1から約500までの整数である。
【0047】
一実施形態では、Lは、約2〜約10の間の炭素原子を有する分岐または非分岐アルキル鎖である。
【0048】
別の実施形態では、Dは、酸素原子(O)である。
【0049】
更に別の実施形態では、Tは、(−CH−)または(−CHCH−O−)であり、xは、1または2である。
【0050】
更にまた別の実施形態では、Rは、水素原子である。
【0051】
また別の実施形態では、Xは酸素原子Oであり、Pは水素原子である。
【0052】
別の実施形態では、Rは、水素原子である。
【0053】
更に別の実施形態では、Gは、酸素原子Oである。
【0054】
更にまた別の実施形態では、RおよびRは、各々個別に、更に置換することができるアリール基であり、mは3である。
【0055】
特定の一実施形態では、Lは
【0056】
【化1】

であり、DはOであり、Tは(−CH−)であり、Rは水素原子であり、XはOであり、Pは水素原子であり、Rは水素原子であり、GはOであり、RおよびRはフェニル基であり、mは3であり、xは1である。
【0057】
また別の特定の実施形態では、Lは(−CH−)であり、DはOであり、Tは(−CH−)であり、Rは水素原子であり、XはOであり、Pは水素原子であり、Rは水素原子であり、GはOであり、RおよびRはフェニル基であり、mは2であり、xは1であり、yは2から約6までの整数であり、特にyは2、4または6である。
【0058】
ある種の実施形態では、xは、約1〜約500、より特定すれば約1〜約400、約1〜約250、約1〜約200、約1〜約150、約1〜約100、約1〜約50、約1〜約25または約1〜約10までの整数である。
【0059】
別の実施形態では、そのファミリーは、次式:
L−((T−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R))
を有し、L、T、R、X、P、R、G、R、R、R、R、R10、R、q、r、s、m、tおよびxは、上記に定義した通りである。
【0060】
一実施形態では、Lは、構造(I):
【0061】
【化2】

に従った式を有する。
【0062】
AおよびJは、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはBと共に環式環を形成し、但し、AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基である場合は、Bは存在しておらず、Bは、NR11、Oまたは(−CH−)であり、但し、A、BおよびJが環を形成する場合は、AおよびJが、(−CH−)またはC=Oであり、R11は、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはTとの結合を表しており、各zは、独立に0から3までの整数であり、但し、AまたはJのいずれかがC=Oである場合は、Bが、NR11、Oまたは(−CH−)であって、zは、少なくとも1でなければならない。
【0063】
別の実施形態では、Tは、−CH−である。
【0064】
別の実施形態では、そのファミリーは、次式:L−((GTZRC(=O)R))を有し、L、T、G、R、R、R10、R、q、r、s、m、tおよびxは、上記に定義した通りである。Zは、Tが(−CH−)である場合、C=O、COOまたはCONHでもよい。
【0065】
一実施形態では、Lは、構造(I):
【0066】
【化3】

に従った式を有し、A、B、J、R11およびzは、上記に定義した通りである。
【0067】
別の実施形態では、Lは、構造(II):
【0068】
【化4】

に従った式を有する。
12、R13、R14、R15、R16、R17は、各々独立に水素原子、アルキルもしくはアリール基であるか、またはTとの結合を表し、但し、R12、R13、R14、R15、R16、R17の少なくとも2つは、Tと結合しており、各Kは、独立にCHまたはNである。
【0069】
別の実施形態では、そのファミリーは、次式:
L−((TGQRC(=O)R))
を有する。L、G、R、R、R10、R、q、r、s、m、tおよびxは、上記に定義した通りである。Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)、(−CHCHCHCH−O−)であるか、または結合を形成する。Qは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)または(−CHCHCHCH−O−)であり、pは、1から約10までの整数である。
【0070】
一実施形態では、Lは、構造(I):
【0071】
【化5】

に従った式を有する。A、B、J、R11およびzは、上記に定義した通りである。
【0072】
別の実施形態では、Lは、構造(II):
【0073】
【化6】

に従った式を有する。R12、R13、R14、R15、R16、R17は、各々独立に水素原子、アルキルもしくはアリール基であるか、またはTとの結合を表し、但し、R12、R13、R14、R15、R16、R17の少なくとも2つは、Tと結合しており、各Kは、独立にCHまたはNである。
【0074】
更にまた別の実施形態では、本発明の化合物は、RおよびRが、共にフェニル基であり、CO、SまたはCHを介して一緒に繋ぎ合わされていることを条件とする。
【0075】
また別の実施形態では、本発明の化合物は、RおよびRが、共にフェニル基であるとき、そのフェニル基は、各々独立に、CHO−(CHCHO−)−またはCHO(−CHCHCHO−)−などの少なくとも1個のアルキルオキシアルキル基、HO−CHCHO−、HO(−CHCHO−)−またはHO(−CHCHCHO−)−などのヒドロキシル化アルコキシ基などで置換することができ、式中nは、1から約10までの整数であることを条件とする。
【0076】
別の実施形態では、そのファミリーは、次式:
L−(((−CH−)xxC(R)((G)RC(=O)R
を有する。
【0077】
L、各R、R、各G、各R、各R、各R10、各q、各r、各s、各tおよびmは、上記に定義した通りであり、xxは、1から約10までの整数である。
【0078】
一実施形態では、Lは、構造(I):
【0079】
【化7】

に従った式を有する。A、B、J、R11およびzは、上記に定義した通りである。
【0080】
別の実施形態では、AおよびBは、共に水素原子である。
【0081】
更に別の実施形態では、xxは、1である。
【0082】
また別の実施形態では、Rは、Hである。
【0083】
更にまた別の実施形態では、Gは(−CH−)O−であり、tは1である。
【0084】
別の実施形態では、RおよびRは、各々個別にアリール基である。
【0085】
更にまた別の実施形態では、xxは1であり、RはHであり、各Gは(−CH−)O−であり、tは1であり、RおよびRの各々は、各々個別にアリール基である。
【0086】
本発明の別の実施形態では、そのファミリーは、次式:
L−((−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R
を有する。L、R、R、R、R、R、R、R、R10、X、P、G、q、r、s、tおよびmは、上記に定義した通りである。
【0087】
一実施形態では、Lは
【0088】
【化8】

であり、R20およびR21は、各々個別に水素原子、アルキル基またはアリール基である。
【0089】
別の実施形態では、Rは、Hである。
【0090】
更に別の実施形態では、Xは、Oである。
【0091】
また別の実施形態では、Pは、Hである。
【0092】
更にまた別の実施形態では、Rは、Hである。
【0093】
別の実施形態では、Gは(−CH−)O−であり、tは1である。
【0094】
更に別の実施形態では、RおよびRは、各々個別にアリール基である。
【0095】
また別の実施形態では、RはHであり、XはOであり、PはHであり、RはHであり、Gは(−CH−)O−であり、tは1であり、RおよびRは、各々個別にアリール基であり、R20およびR21は、共にメチル基である。
【0096】
また別の実施形態では、本発明は、次式:
L−((GRC(=O)R))
を有する化合物のファミリーを提供する。L、G、R、R、R、R10、q、r、s、mおよびtは、上記に定義した通りである。
【0097】
一実施形態では、Lは、
【0098】
【化9】

である。
【0099】
別の実施形態では、Gは、C=Oである。
【0100】
更に別の実施形態では、RおよびRは、各々個別にアリール基である。
【0101】
また別の実施形態では、GはC=Oであり、RおよびRは、各々個別にアリール基である。
【0102】
また別の実施形態では、本発明は、次式:
L−((GRC(=O)R))
を有する化合物のファミリーを提供する。Lは連結基であり、Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、RおよびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、R10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、Rは、水素原子、アルキルまたはアリール基であり、qは、1から約7までの整数であり、rは、0から約3までの整数であり、sは、0から約3までの整数であり、mは、2から約10までの整数であり、tは、1から約10までの整数である。
【0103】
「アルキル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、明示した数の炭素原子(即ち、C〜Cは、1〜6個の炭素原子を意味する)を有し、親のアルカン、アルケンまたはアルキンの単一炭素原子から、1個の水素原子を除くことにより誘導される、飽和または不飽和で、分岐、直鎖または環状の1価炭化水素基を指す。典型的なアルキル基には、それだけに限らないが、メチル;エタニル、エテニル、エチニルなどのエチル;プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル、シクロプロパ−2−エン−1−イル、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなどのプロピル;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどのブチルなどが挙げられる。特定の飽和度を意図する場合、以下に定義するように、術語「アルカニル」、「アルケニル」および/または「アルキニル」が使用される。「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0104】
「アルカニル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、親アルカンの単一炭素原子から1個の水素原子を除くことにより誘導される、分岐、直鎖または環状の飽和アルキルを指す。典型的なアルカニル基には、それだけに限らないが、メタニル;エタニル;プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルなどのプロパニル;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イルなどのブタニルなどが挙げられる。
【0105】
「アルケニル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、親アルケンの単一炭素原子から1個の水素原子を除くことにより誘導される、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する分岐、直鎖または環状の不飽和アルキルを指す。この基は、二重結合(複数可)に関してシスまたはトランスのいずれかの配座を取り得る。典型的なアルケニル基には、それだけに限らないが、エテニル;プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、プロパ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル、シクロプロパ−2−エン−1−イルなどのプロペニル;ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルなどのブテニルなどが挙げられる。
【0106】
「アルキルオキシアルキル」とは、酸素原子を介して一緒に繋ぎ合わされた2個のアルキル基を有する部分を指す。適切なアルキルオキシアルキル基には、メチル基などのアルキル基を末端とする、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリオキシアルキレンが挙げられる。このような化合物の一般式は、R’−(OR”)または(R’O)−R”と表すことができ、式中nは、1から約10までの整数であり、R’およびR”は、アルキルまたはアルキレン基である。
【0107】
「アルキニル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、親アルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除くことにより誘導される、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する分岐、直鎖または環状の不飽和アルキルを指す。典型的なアルキニル基には、それだけに限らないが、エチニル;プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなどのプロピニル;ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどのブチニルなどが挙げられる。
【0108】
「アルキルジイル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、明示した数の炭素原子(即ち、C〜Cは、1〜6個の炭素原子を意味する)を有し、親のアルカン、アルケンもしくはアルキンの異なる2個の各炭素原子から、1個の水素原子を除くことにより、または親のアルカン、アルケンもしくはアルキンの単一炭素原子から、2個の水素原子を除くことにより誘導される、飽和または不飽和で、分岐、直鎖または環状の2価炭化水素基を指す。2個の1価基中心、または2価基中心の各価標(valency)は、同じまたは異なる原子との結合を形成することができる。典型的なアルキルジイル基には、それだけに限らないが、メタンジイル;エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイルなどのエチルジイル;プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−エン−1,2−ジイル、プロパ−2−エン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロパ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−イン−1,3−ジイルなどのプロピルジイル;ブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1,1−ジイル、ブタ−1−エン−1,2−ジイル、ブタ−1−エン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1,4−ジイル、2−メチル−プロパ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,4−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,3−ジイル、シクロブタ−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1,4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1,4−ジイルなどのブチルジイルなどが挙げられる。特定の飽和度を意図する場合、術語のアルカニルジイル、アルケニルジイルおよび/またはアルキニルジイルが、使用される。2個の価標が同じ炭素原子上にあることを特に意図する場合、術語「アルキリデン」が使用される。「低級アルキルジイル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキルジイル基である。幾つかの実施形態では、アルキルジイル基は、基の中心が末端炭素にある、非環状の飽和アルカニルジイル基、例えば、メタンジイル(メタノ)、エタン−1,2−ジイル(エタノ)、プロパン−1,3−ジイル(プロパノ)、ブタン−1,4−ジイル(ブタノ)などである(下記に定義するアルキレンとも称する)。
【0109】
「アルキレン」とは、それ自体または別の置換基の一部として、親の直鎖アルカン、アルケンまたはアルキンの2個の各末端炭素原子から、1個の水素原子を除くことにより誘導される、飽和または不飽和の直鎖アルキルジイル基を指す。特定のアルキレン中に二重結合または三重結合が存在する場合、その位置は鉤括弧で示す。典型的なアルキレン基には、それだけに限らないが、メチレン(メタノ);エタノ、エテノ、エチノなどのエチレン;プロパノ、プロパ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロパ[1]イノなどのプロピレン;ブタノ、ブタ[1]エノ、ブタ[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブタ[1]イノ、ブタ[2]イノ、ブタ[1,3]ジイノなどのブチレンなどが挙げられる。特定の飽和度を意図する場合、術語のアルカノ、アルケノおよび/またはアルキノが使用される。幾つかの実施形態では、アルキレン基は、(C〜C)アルキレンまたは(C〜C)アルキレンである。他の実施形態は、直鎖飽和アルカノ基、例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノなどを包含する。
【0110】
「アリール」とは、それ自体または別の置換基の一部として、明示した数の炭素原子(即ち、C〜C15は、5〜15個の炭素原子を意味する)を有し、親芳香環系の単一炭素原子から1個の水素原子を除くことにより誘導される、1価芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基には、それだけに限らないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどに、ならびにそれらの水素化異性体に由来する基が挙げられる。幾つかの実施形態では、アリール基は、(C〜C15)アリール、あるいは(C〜C10)アリールである。他の実施形態は、フェニルおよびナフチルを包含する。
【0111】
「アリールアルキル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、炭素原子、通常は末端またはsp炭素原子に結合した水素原子の1つが、アリール基で置き換えられている非環式アルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基には、それだけに限らないが、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが挙げられる。特定のアルキル部を意図する場合、術語のアリールアルカニル、アリールアルケニルおよび/またはアリールアルキニルが使用される。好ましくは、アリールアルキル基は、(C〜C30)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部は、(C〜C10)であり、アリール部は(C〜C20)であり、より好ましくは、あるいはアリールアルキル基は、(C〜C20)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部は、(C〜C)であり、アリール部は(C〜C12)である。
【0112】
「アリールオキシアルキル」とは、アリール基およびアルキル基が酸素結合を介して一緒に繋ぎ合わされている部分を指す。適切なアリールオキシアルキル基には、メトキシフェニルまたはエトキシフェニルなどのフェニルオキシアルキレンが挙げられる。
【0113】
「シクロアルキル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、「アルキル」基の環状型を指す。典型的なシクロアルキル基には、それだけに限らないが、シクロプロピル;シクロブタニルおよびシクロブテニルなどのシクロブチル;シクロペンタニルおよびシクロアルケニルなどのシクロペンチル;シクロヘキサニルおよびシクロヘキセニルなどのシクロヘキシルなどが挙げられる。
【0114】
「シクロヘテロアルキル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、1個または複数の炭素原子(および付随する任意の水素原子)が、同じまたは異なるヘテロ原子で独立に置換えられている、飽和または不飽和の環式アルキル基を指す。炭素原子(複数可)に置き換わる典型的なヘテロ原子には、それだけに限らないが、N、P、O、S、Siなどが挙げられる。特定の飽和度を意図する場合、術語「シクロヘテロアルカニル」または「シクロヘテロアルケニル」が使用される。典型的なシクロヘテロアルキル基には、それだけに限らないが、エポキシド、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジンなどに由来する基が挙げられる。
【0115】
「ハロゲン」または「ハロ」とは、それ自体または別の置換基の一部として、別途明記しない限り、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
【0116】
「ハロアルキル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、水素原子の1個または複数が、ハロゲンで置換えられているアルキル基を指す。したがって、用語「ハロアルキル」は、モノハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキルなどパーハロアルキルまでを包含することを意図している。例えば、「(C〜C)ハロアルキル」という表現は、フロオロメチル、ジフロオロメチル、トリフロオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、パーフルオロエチルなどを包含する。
【0117】
「ヘテロアルキル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、1個または複数の炭素原子(および付随する任意の水素原子)が、同じまたは異なるヘテロ原子基で各々独立に置換えられている、アルキル、アルカニル、アルケニルおよびアルキニル基をそれぞれ指している。典型的なヘテロ原子基には、それだけに限らないが、−O−、−S−、−O−O−、−S−S−、−O−S−、−NR’−、=N−N=、−N=N−、−N=N−NR’−、−PH−、−P(O)−、−O−P(O)−、−S(O)−、−S(O)−、−SnH−などが挙げられ、式中R’は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリールまたは置換アリールである。
【0118】
「ヘテロアリール」とは、それ自体または別の置換基の一部として、親ヘテロ芳香環系の単一原子から1個の水素原子を除くことにより誘導される、1価ヘテロ芳香族基を指す。典型的なヘテロアリール基には、それだけに限らないが、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、ベンゾオキサジン、ベンズイミダゾール、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどに由来する基が挙げられる。好ましくは、上記ヘテロアリール基は、5〜20員ヘテロアリールであり、より好ましくは、5〜10員ヘテロアリールである。適切なヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンに由来する基である。
【0119】
「ヘテロアリールアルキル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、炭素原子、通常は末端またはsp炭素原子に結合した水素原子の1つが、ヘテロアリール基で置き換えられている非環式アルキル基を指す。特定のアルキル基を意図する場合、術語「ヘテロアリールアルカニル」「ヘテロアリールアルケニル」および/または「ヘテロアリールアルキニル」が使用される。幾つかの実施形態では、ヘテロアリールアルキル基は、6〜21員ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部は、(C〜C)アルキルであり、ヘテロアリール部は、5〜15員ヘテロアリールである。他の実施形態では、ヘテロアリールアルキルは、6〜13員ヘテロアリールアルキルであり、例えば、アルカニル、アルケニルまたはアルキニル部は、(C〜C)アルキルであり、ヘテロアリール部は、5〜10員ヘテロアリールである。
【0120】
「ヒドロキシアルキル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、水素原子の1つまたは複数が、ヒドロキシ置換基で置き換えられているアルキル基を指す。したがって、用語「ヒドロキシアルキル」は、モノヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、トリヒドロキシアルキルなどを包含することを意図している。
【0121】
「親芳香環系」とは、共役π電子系を有する環式または多環式不飽和環系を指す。「親芳香環系」の定義内に具体的に含まれるものは、1個または複数の環が芳香族であり、1個または複数の環が飽和または不飽和である、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン、テトラヒドロナフタレンなどの縮合環系である。典型的な親芳香環系には、それだけに限らないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、テトラヒドロナフタレン、トリフェニレン、トリナフタレンなど、ならびにそれらの多様な水素化異性体が挙げられる。
【0122】
「親ヘテロ芳香環系」とは、1個または複数の炭素原子(および付随する任意の水素原子)が、同じまたは異なるヘテロ原子で独立に置き換えられている親芳香環系を指す。炭素原子に置き換わる典型的なヘテロ原子には、それだけに限らないが、N、P、O、S、Siなどが挙げられる。「親ヘテロ芳香環系」の定義内に具体的に含まれるものは、1個または複数の環が芳香族であり、1個または複数の環が飽和または不飽和である、例えば、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどの縮合環系である。典型的な親ヘテロ芳香環系には、それだけに限らないが、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられる。
【0123】
「脱離基」は、反応中に求核試薬により置き換えられる基である。適切な脱離基には、S(O)Me、−SMeまたはハロ(例えば、F、Cl、Br、I)が挙げられる。
【0124】
「連結基」は、2個以上の末端基間の中間部位として働く基である。連結基の性質は、広範に変化でき、1つの分子部分を別の部分から隔てるために有用な、原子または基の事実上任意の組合せを包含することができる。例えば、リンカーは、非環式炭化水素架橋(例えば、メタノ、エタノ、エテノ、プロパノ、プロパ[1]エノ、ブタノ、ブタ[1]エノ、ブタ[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノなどの飽和または不飽和アルキレノ)、単環式もしくは多環式炭化水素架橋(例えば、[1,2]ベンゼノ、[2,3]ナフタレノなど)、単純な非環式ヘテロ原子もしくはヘテロアルキルジイル架橋(例えば、−O−、−S−、−S−O−、−NH−、−PH−、−C(O)−、−C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NH−、−S(O)NH−、−O−CH−、−CH−O−CH−、−O−CH=CH−CH−など)、単環式もしくは多環式ヘテロアリール架橋(例えば、[3,4]フラノ、ピリジノ、チオフェノ、ピペリジノ、ピペラジノ、ピラジジノ、ピロリジノなど)、またはこのような架橋の組合せでもよい。
【0125】
「保護基」は、例えば、不安定な水素原子に代わってヒドロキシ酸素に付加される基である。適切なヒドロキシ保護基(複数可)には、エステル(アセテート、エチルアセテート)、エーテル(メチル、エチル)、エトキシル化誘導体(エチレングリコール、プロピレングリコール)などが挙げられ、保護基が除かれ、水素原子で置き換えられるように、酸性または塩基性いずれかの条件下で除くことができる。適当な保護基の選択、ならびにその結合および除去の合成戦略に対する指針は、例えば、Greene & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis、3版、John Wiley & Sons, Inc., New York(1999年)およびその中に引用された参考文献(以後では「Greene & Wuts」)に見出し得る。
【0126】
本発明で使用し得る基材材料には、様々なものがある。ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ塩化(ビニル)などの塩素含有ポリマー材料、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、アミノエポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、セルロース系プラスチックおよびゴム様プラスチックなどのプラスチック類は、全て支持体として使用して、本明細書に記載するように改質できる表面を提供し得る。それに加え、熱分解炭素、パリレン被覆表面、およびガラス、セラミックまたは金属のシリル化表面で形成されたような支持体も、表面改質に適切である。
【0127】
本発明の方法では、支持体表面への生物活性物質の付着または結合を伴ってもよい。例えば、架橋剤を含むナノ繊維は、支持体表面の存在下で2個以上の潜在反応性・活性化可能基を有するように供給される。潜在反応性・活性化可能基の少なくとも1個は、活性化され、その表面に共有結合する。残りの潜在反応基は、不活性状態で残ることが可能であり、後に再活性化されることにより、生物活性物質に後に結合し、基材表面へ生物活性物質を結合させる。
【0128】
この方法の各ステップは、適切な任意の順序で行うことができる。例えば、本明細書に記載するような、架橋剤を含むナノ繊維は、疎水相互作用によって適切な支持体表面に物理的に吸収させる、または吸着させることができる。エネルギー源により活性化すると、潜在反応性・活性化可能基(例えば、ベンゾフェノン基)の少なくとも1個は、支持体表面で共有結合の形成を受ける。残りの未結合の潜在反応性・活性化可能基(複数可)の近傍に引抜き可能な水素が存在しない場合、エネルギー源が除かれることにより、その潜在反応性・活性化可能基は、励起状態から基底状態へ戻る。その後、こうした残りの潜在反応性・活性化可能基は、固定化するつもりの生物活性物質が存在し、処理済み表面が次回の照射に曝された場合、再活性化することができる。この方法は、「2段階」手法と表現することができ、第1ステップでは、潜在反応性で活性化可能なナノ繊維を施して潜在反応性で活性化可能な表面を創出し、第2ステップでは、生物活性物質を添加して、活性化された表面に付着させる。
【0129】
あるいは、「1段階」法と表現される方法は、本発明の潜在反応性で活性化可能なナノ繊維を生物活性物質と共に組み合わせ、または混合し、組成物を形成することを条件とする。生成する組成物は、エネルギー源による単一の活性化ステップで物質を表面改質するために、使用される。この場合、エネルギー源による活性化は、少なくとも1個の潜在反応性・活性化可能基の基材表面との共有結合形成を誘発するだけでなく、その表面上に存在する任意の隣接生物活性物質との共有結合形成も同時に誘発する。
【0130】
代替的な実施形態では、ナノ繊維が、ポリマー物質、少なくとも2個の潜在性・活性化可能基を有する架橋剤、および生物活性物質を含む組合せまたは混合物から形成される。潜在反応性・活性化可能基の少なくとも1個は、支持体表面で共有結合形成を受け、ナノ繊維をその基材表面に結合させる。残りの潜在反応性・活性化可能基(複数可)は、エネルギー源による活性化を受けて、第2の生物活性物質と反応することができる。あるいは、ナノ繊維中に組み入れた生物活性物質自体が、第2の生物活性物質と反応し、基材を更に機能化することができる。
【0131】
別の代替法では、本発明の潜在反応性で活性化可能なナノ繊維は、潜在反応基でそれ自体が官能化された分子の適用および結合の前に、基材表面の前処理に使用される。この方法は、特に困難な基材が最大限の被膜耐久性を必要とする状況において、有用である。このようにして、基材表面と潜在反応基で誘導体化した標的分子との間に形成される共有結合数は、所望の潜在反応基含有標的分子だけによる表面改質と比較して、通常、増加させることができる。
【0132】
支持体表面に付着させるために、本発明で使用する適切な生物活性分子または他の標的分子は、多様な一群の物質を包含する。標的分子は、非誘導体形態で使用でき、または予め誘導体とすることもできる。その上、標的分子は、単独で、または他種の標的分子と組み合わせて固定化することもできる。
【0133】
標的分子は、当該表面を本発明の潜在反応性で活性化可能なナノ繊維で下塗りした後に(例えば、逐次に)、表面に固定化することができる。あるいは、標的分子は、基材の表面に潜在反応性で活性化可能なナノ繊維を付着させる間に(例えば、と同時に)固定化される。
【0134】
通常、標的分子は、その表面および/またはその表面を有する器具もしくは物品に、特定の所望の性質を付与するように選択される。本発明の一実施形態によれば、標的の分子または物質は、生物活性物質である。ナノ繊維改質基材の表面上に固定化し得る、またはナノ繊維組成物の一部として供給され得る生物活性物質には、一般に、それだけに限らないが、以下のもの:酵素、タンパク質、炭水化物、核酸およびそれらの混合物が挙げられる。生物活性物質を含めた適切な標的分子の更なる例、およびそれらを通常使用して付与される表面性質は、以下の非限定的な一覧によって表される。
【0135】
【数1】

【0136】
【数2】

【0137】
【数3】

標的分子は、官能性ポリマーであってもよい。官能性ポリマーは、更なる化学反応のために使用できる官能基を有するポリマーと定義される。官能基には、それだけに限らないが、カルボキシ、アミン、チオール、エポキシ、NHS、アルデヒド、アジド、ホスフィンまたはヒドロキシが挙げられる。
【0138】
本発明の潜在反応性で活性化可能なナノ繊維は、フィルター、組織工学用足場、保護着、複合材料の強化およびセンサー技術を含む、多種多様な用途で使用することができる。
【0139】
本発明の潜在反応性で活性化可能なナノ繊維から作製し、またはそれでコーティングし、またはそれで処理することができる医療品には、それだけに限らないが、以下のもの:尿カテーテルおよび血管カテーテル(例えば、末梢および中心血管カテーテル)を含むカテーテル、創傷排液チューブ、動脈移植片、軟組織用パッチ、手袋、シャント、ステント、気管カテーテル、創傷包帯、縫合糸、ガイドワイヤーおよび補綴装具(例えば、心弁およびLVAD)を挙げることができる。本発明に従って調製できる血管カテーテルには、それだけに限らないが、単腔および多腔中心静脈カテーテル、末梢挿入中心静脈カテーテル、救急注入カテーテル、経皮的シース導入システム、熱希釈カテーテルが挙げられ、それらには、このような血管カテーテルのハブおよびポート、ペースメーカー、除細動器、人工心臓および埋込型バイオセンサーなどの電子装置へのリードが含まれる。
【0140】
本発明の潜在反応性で活性化可能なナノ繊維から作製できる、またはそれでコーティングもしくは処理できる表面を有する、追加の物品には、それだけに限らないが、以下のもの:スライド、マイクロタイターウェル、マイクロタイタープレート、ペトリ皿、組織培養スライド、組織培養プレート、組織培養フラスコ、細胞培養プレート、あるいはカラム支持体および/またはクロマトグラフィー媒体を挙げることができる。
【0141】
別の実施形態では、本発明の潜在反応性で活性化可能なナノ繊維は、生体分子固定化用の顕微鏡スライドまたは「チップ」に適用することができる。
【0142】
また別の実施形態では、本発明の潜在反応性で活性化可能なナノ繊維は、細胞培養プレートの表面に適用することができる。
【0143】
以下の非限定的な実施例に関して、本発明を更に説明する。本発明の範囲から逸脱せずに、上記の実施形態に多くの変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、本出願に記載の実施形態に限定せずに、特許請求の範囲の言葉で表現した実施形態、およびそうした実施形態の均等物によってのみ限定すべきである。別途指示しない限り、全てのパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0144】
(実施例1)
電気紡糸光反応性ナノ繊維
平均分子量80kDaのポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)をAldrich Chemicals(Milwaukee, WI)から購入した。0.14g/mlのPCL溶液は、テトラヒドロフランおよびN,N−ジメチルホルムアミドからなる有機溶媒混合物(1:1)100ml中にPCL14gを溶解し、室温で24時間混合物を渦撹拌することにより、よく混合することによって調製した。光架橋剤含量(TriLite、
トリス[2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)プロピル]イソシアヌレートなど)が重量パーセントで1%、5%および10%のポリマー溶液は、PCL溶液中に異なる量の架橋剤を添加することにより作製した。そのポリマー溶液を、27Gの針をはめたプラスチック製シリンジに入れた。シリンジポンプ(KD Scientific, USA)を用いて、針先端にポリマー溶液を供給した。高電圧電源(Gamma High Voltage Research, USA)を用いて、針先端を帯電させた。針先端から一定の距離にある接地アルミホイル上に、ナノ繊維を収集した。次いで繊維メッシュを取り除き、真空チャンバー中に少なくとも48時間入れて、残存有機溶媒を除いた後、デシケーター中に保存した。ナノ繊維は、顕微鏡下で評価した。他の光反応性ナノ繊維も、TriLite含有ポリマー溶液の電気紡糸により調製した。該ポリマーには、ナイロン6/6(Aldrich)、ポリスチレン(Mw170000、Aldrich)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm、Mw20000〜25000、Aldrich)、およびPEG−PIPAAmが含まれる。PEG−PIPAAmは、開始剤として過硫酸アンモニウム(Aldrich)および触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(Aldrich)を用いる、水中でのN−イソプロピルアクリルアミド(Aldrich)とポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(Mw2000、Aldrich)とのフリーラジカル共重合により、合成した。光反応性ポリマーのPVB−BPは、ポリ(ビニルブチラール)(Mw70000〜100000、Polysciences)と、4−ベンゾイル安息香酸(Aldrich)および塩化オキサリル(Aldrich)の反応で調製したベンゾフェノン酸クロリドとの反応により、合成した。光反応性PVB−BPナノ繊維は、TriLiteなしでPVB−BP溶液を電気紡糸することにより、調製した。電気紡糸条件は、表1にまとめてある。
【0145】
【表1】

全てのナノ繊維の形態は、日立S−3500N SEMを用いて調べた。繊維試料は、炭素テープを用いてアルミニウムスタブ上に載せ、金でスパッタコーティングしてから観察した。ナノ繊維の平均直径は、少なくとも20本の繊維の測定値に基づいて決定した。図1は、光架橋剤濃度の異なるナノ繊維の典型的なSEM像を示す。0%、1%、5%および10%ナノ繊維の平均繊維径は、それぞれ208±146nm、212±80nm、453±146nm、315±160nmである。図1の全4種の配合物において、高多孔性の構造が観察された。
【0146】
(実施例2)
ポリマー析出による酸誘導体化ナノ繊維
ナノ繊維表面上にカルボン酸を付与するために、ポリ(アクリル酸)(PAA)を用いた。平均分子量5kDaのPAAナトリウム塩をAldrich Chemicalsから購入した。ある一定量の光反応性PCLナノ繊維メッシュを、石英円形皿(Quartz Scientific, Inc., Fairport Harbor, OH)の50〜100mg/ml PAA水溶液20ml中に浸漬した。ナノ繊維中に捕捉された気泡を除くために、穏やかに撹拌した。次いで、UVP CL−1000 Ultraviolet Crosslinker中の混合物に、UV照射を加えた(40ワット、254nm、光源からの距離は12.7cmである)。ナノ繊維メッシュは、裏返して、UV照射を再び加えた。被覆ナノ繊維メッシュを脱イオン水で24時間洗浄した後、一定重量になるまで真空下で乾燥した。
【0147】
(実施例3)
ポリマー析出によるアミン誘導体化ナノ繊維
表面上にアミノ基を付与するために、ポリ(ジメチルアクリルアミド−co−アミノプロピルメタクリルアミド)(DMA:APMA80/20)を用いた。平均分子量5kDaのそのコポリマーを、DMAおよびAPMA塩酸塩のフリーラジカル共重合により合成した。ある一定量の光反応性PCLナノ繊維メッシュを、石英円形皿(Quartz Scientific, Inc., Fairport Harbor, OH)の50mg/ml PDMA/APMA水溶液20ml中に浸漬した。ナノ繊維中に捕捉された気泡を除くために、穏やかに撹拌した。次いで、UVP CL−1000 Ultraviolet Crosslinker中の混合物に、UV照射を加えた(40ワット、254nm、光源からの距離は12.7cmである)。ナノ繊維メッシュは、裏返して、UV照射を再び加えた。被覆ナノ繊維メッシュを脱イオン水で24時間洗浄した後、一定重量になるまで真空下で乾燥した。
【0148】
(実施例4)
ポリマー析出によるエポキシ誘導体化ナノ繊維
表面上にエポキシ基を付与するために、ポリ(グリシジルメタクリレート)(Mw25000、Polysciences)を用いた。ある一定量の光反応性PCLナノ繊維メッシュを、石英円形皿(Quartz Scientific, Inc., Fairport Harbor, OH)の50mg/mlポリ(グリシジルメタクリレート)水/DMSO溶液10ml中に浸漬した。ナノ繊維中に捕捉された気泡を除くために、穏やかに撹拌した。次いで、UVP CL−1000 Ultraviolet Crosslinker中の混合物に、UV照射を加えた(40ワット、254nm、光源からの距離は12.7cmである)。ナノ繊維メッシュは、裏返して、UV照射を再び加えた。被覆ナノ繊維メッシュを脱イオン水で24時間洗浄した後、一定重量になるまで真空下で乾燥した。
【0149】
(実施例5)
自己集合単分子層(SAM)による酸誘導体化ナノ繊維
ナノ繊維表面上にカルボン酸を付与するために、SAM酸を用いた。SAM酸は、ISurTec, Inc.によって合成された。ある一定量の光反応性PCLナノ繊維メッシュを、石英円形皿(Quartz Scientific, Inc., Fairport Harbor, OH)の1.0mg/ml SAM酸水溶液中に浸漬した。ナノ繊維中に捕捉された気泡を除くために、穏やかに撹拌した。次いで、UVP CL−1000 Ultraviolet Crosslinker中の混合物に、UV照射を加えた(40ワット、254nm、光源からの距離は12.7cmである)。ナノ繊維メッシュは、裏返して、UV照射を再び加えた。被覆ナノ繊維メッシュを脱イオン水で24時間洗浄した後、一定重量になるまで真空下で乾燥した。
【0150】
(実施例6)
グラフト重合による酸またはアミン誘導体化ナノ繊維
予め秤量したPCLナノ繊維メッシュを、琥珀色ガラス瓶入りの50mg/mlのアクリル酸(Aldrich)または3−アミノプロピルメタクリルアミド(APMA・HCl、Polysciences)水溶液20ml中に浸漬した。その混合物をアルゴンで2時間バブリングし、石英円形皿(Quartz Scientific, Inc., Fairport Harbor, OH)に移し、その後繊維メッシュの各面を2分間UVで照射した(Harland Medical UVM400, MN、光源からの距離は8インチであった)。その後、試料を蒸留水で3回濯ぎ洗い、水で終夜洗浄し、凍結乾燥した。
【0151】
(実施例7)
官能基の特性決定
ナノ繊維上の官能基(即ち、カルボキシおよびアミノ)は、可逆的なイオン性色素結合により測定した。較正は、溶出に使用した溶媒中で各色素を用いて行った。蛍光/UV/可視測定は、Molecular DevicesのSpectraMax M2 Multi−detection Reader上で行った。
【0152】
カルボキシ基
PCLナノ繊維試料を、エタノール中の10mg/mlチオニン(Aldrich Chemicals)10mlの中で、室温で終夜振盪し、エタノールで3回各30秒間濯ぎ洗い、その後エタノールおよび水の1:1混合物中の0.01N HCl溶液10mlに浸漬した。1.5時間振盪した後、溶液の蛍光を620nmで記録した(励起485nm)。
【0153】
アミン基
PCLナノ繊維試料を、Orange II(Aldrich Chemicals)の50mmol/L水溶液(pH3、HCl)中で終夜、室温で振盪した。試料を水(pH3)で3回洗浄し、水(pH12、NaOH)10ml中に浸漬した。15分間振盪した後、溶液のUV/可視吸収を479nmで記録した。
【0154】
ナノ繊維表面上の官能基は、官能基と色素分子との1:1錯形成に基づいて決定した。
【0155】
官能基密度は、ナノ繊維1mg当たりの官能基のnmolとして報告した(図2〜4)。図2は、1%、5%および10%ナノ繊維上へのPAAの析出により、それぞれ282、203および572nmol/mgのカルボキシ基密度が得られたことを示す。理論的には、直径が同じままであれば、架橋密度の高い方のナノ繊維は、官能基密度が高くなるはずである。しかし、5%ナノ繊維上の官能基密度は、1%ナノ繊維よりやや低かった。同じ質量のナノ繊維の直径が大きいほど、表面積が小さくなると思われることに留意されたい。そのため、5%ナノ繊維の方が、全重量で多量の架橋剤を有していても、繊維表面上の光学基が接触し難くなる結果、その表面上のPAA密度が低下するとも思われる。PCLのバルク密度(1.12g/ml)およびSEMで決定したナノ繊維の直径を用いて、官能基nmol/mgナノ繊維の密度を、官能基数/nm繊維表面に換算することができる。官能基密度の再計算値は、1%、5%および10%ナノ繊維に対して10基、16基および30基/nmであった(表2)が、これらは全て、本発明者らが予想した最小密度レベルの0.1基/nmを超えている。図3に示すように、(80:20)DMA:APMAの析出により創出された表面上のアミン密度は、PAAの析出により生成したカルボキシ密度より低かったが、その原因の1つは、DMA:APMA上の20%アミノ化対PAA上の100%カルボキシル化であった。光反応性ナノ繊維に対するAPMAのグラフト重合は、低アミン密度(2nmol/mg、8nmol/mgおよび7nmol/mg)を与え、低グラフト効率を示したが、その原因は、恐らく、モノマーAPMAにおける不純物の存在であった。図4は、3種の官能化法は全て、1%ナノ繊維上に高密度のカルボキシ基を生成でき、カルボキシ密度の高い方から低い方への順は、PAA>AAグラフト>酸−SAMであったことを示す。
【0156】
【表2】

(実施例8)
多孔率測定
ナノ繊維メッシュの多孔率は、液体置換法で決定した。メッシュ試料を、V体積のイソプロパノール(IPA)を含む目盛付きシリンダー中に浸漬した。IPAを強制的に孔内に入れ、気泡を放散させるために、浴で超音波振動を加える。10分後、その体積をVと記録する。湿ったメッシュ試料をシリンダーから取り出した。残存IPA体積はVである。(V−V)は、繊維内に保持されたIPAの体積であって、繊維内の孔空隙の体積を表すのに対し、(V−V)は、フィルターおよび孔空隙の全体積であった。したがって、フィルターの多孔率は、(V−V)/(V−V)として得られた。
【0157】
【表3】

(実施例9)
生体分子固定化
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP、ペルオキシダーゼXII型、Sigma)を、EDC/NHSカップリング法によりPCLナノ繊維上に固定化した。カルボキシ官能化ナノ繊維メッシュを、10mg/mlのEDCおよび5mg/mlのNHSを含有し、pH4.5に調整した新鮮な水溶液中に浸漬した。4℃で30分間のシェーカー(100rpm)上でのインキュベーション後、活性化試料を取り出し、氷冷水で素早く濯ぎ洗い、タンパク質溶液(5.0μg/ml、PBS、pH7.4)中に直ちに浸漬した。室温で2時間穏やかに撹拌した後、ナノ繊維を取り出し、PBSで濯ぎ洗いした後、PBS−0.1%Tritonで終夜徹底的に洗浄した。タンパク質固定化ナノ繊維を濯ぎ洗い、分析してタンパク質および活性の検定値を求めた。
【0158】
(実施例10)
ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ
タンパク質非特異吸着用のものを含め、ナノ繊維上のタンパク質担持量を、標準的BCAアッセイで決定した。予め秤量したタンパク質コンジュゲートナノ繊維を、2%SDSを含有する1.0N NaOH 2ml中に、37℃で終夜溶解した。次いで、溶液を1N HClで中和し、溶液1mlを6.1N TCA溶液250μlに添加した。4℃で10分間のインキュベーション後、試料を14krpmで5分間遠心し、タンパク質ペレットを形成した。ペレットを遠心により冷アセトン200μlで2回洗浄し、熱ブロック上で95℃、5分間乾燥した。タンパク質ペレットを、0.1N NaOH中の5%SDS溶液40μlに、および蒸留水960μlに溶解した後、BCAアッセイキット(Pierce, Rockford, IL)を用いたタンパク質アッセイに用いた。タンパク質担持量は、ナノ繊維の乾燥重量に対する固定化タンパク質の重量比率(%)として決定した。
【0159】
図5は、異なる表面改質による1%ナノ繊維上のタンパク質固定化量を示す。BSAは、較正曲線を作成するために用いた。PAA改質ナノ繊維が、最高のタンパク質固定化(1.7μg/mg)を示し、次いでAAグラフト化ナノ繊維(1.4μg/mg)および酸−SAM被覆ナノ繊維(0.7μg/mg)であった。この順は、1%ナノ繊維上のカルボキシ密度の順と相関している。
【0160】
(実施例11)
固定化タンパク質の生物活性
固定化HRPの生物活性は、TMB基質溶液を用いて決定した。基質溶液(KPL)2mlをHRPコンジュゲートナノ繊維に添加した後に、発色が開始した。10分後に硫酸を添加して、発色を停止させ、450nmでの吸光度を測定した。固定化HRPの生物活性を計算するために、標準HRP曲線を使用した。
【0161】
HRP活性は、HRP触媒TMB酸化により測定した。図6に示すように、PAA改質ナノ繊維上にコンジュゲートしたHRPが、最高の活性を示し、酸−SAM被覆およびAAグラフト化ナノ繊維上では、より低い活性が見出された。AAグラフト化ナノ繊維上のタンパク質量が、酸−SAM被覆ナノ繊維のその量のほぼ2倍であったことを考慮すると、類似の活性は、酸−SAMの方が、タンパク質コンジュゲーションにとって良好なスペーサー候補とも思われることを示している。PAA析出とAAグラフト化との活性差は、ナノ繊維上のPAA鎖の配向が、タンパク質活性に重要な役割を果たし得ることを示唆している。
【0162】
(実施例12)
光架橋ナノ繊維の分解
2種の分解用緩衝液:1)PBS、pH7.4;2)P. cepacia由来のリパーゼ50U/mlを有するPBS、の中で分解を試験した。分解試験用の試料は、以下のように調製した。電気紡糸の後、繊維を水中に浮かせて、アルミニウムコレクターから緩ませることにより、繊維をそのコレクターから取り出し、次いで凍結乾燥した。次いで、繊維メッシュをUV照射(UVP CL−1000 Ultraviolet Crosslinker、40ワット、254nm、光源からの距離は5インチである)下で15分間架橋した。ナノ繊維40〜50mgを15mlの遠心管中に入れ、10mlの分解用緩衝液を添加した。その管を、37℃インキュベーター中のシェーカー上に置いた。試料を所定の時点に抜き取り、遠心により蒸留水で3回洗浄し、真空下で一定重量になるまで乾燥した。実験は、3回繰り返した。分解率は、次式のように計算した。
【0163】
%重量減少=(M−M)/M×100%
式中、MおよびMは、分解の後、および前のナノ繊維の質量である。
【0164】
分解性ポリマーの生体用材料としての重要な一特徴は、機能を果たした後に体内で消失し、除去するための第2の手術を必要としないことである。適用が異なれば、異なる分解速度が必要になる。材料の分解挙動を理解し、できればそれを制御することが重要である。分解は、分子量、結晶性、鎖の配向および他の形態的変数などのポリマーの物理化学的性質だけでなく、環境条件によっても影響される。この分解試験では、2つの条件:加水分解および酵素的分解を調べた。バルク材料として、PCLの分解は、高い疎水性および高い結晶度のために非常に遅いことがよく知られている。PCLをナノ繊維に作製した後では、表面積が大幅に増加するため、分解が速くなり得る。他方で、ベンゾフェノン基によるPCLの架橋のために、分解速度が低下し得る。架橋剤の導入量が異なる4段階(0%、1%、5%、10%wt/wt)のPCLナノ繊維の分解を、リン酸緩衝塩水PBS(pH7.4)中、およびリパーゼ50U/mlを含有するPBS中で行った。その結果、PBS中23週間後に、架橋剤0%のPCLナノ繊維では、10.66%の重量減少が見出されたのに対し、架橋剤1%、5%および10%で架橋されたナノ繊維上では、分解の兆候が全く現れない(4%未満)ことが示された。しかし、リパーゼの存在下では、ナノ繊維が遥かに速く分解し、架橋剤0%、1%、5%および10%のナノ繊維の重量減少は、24時間後で93.6%、41.0%、8.6%および3.7%であった(図7)。光架橋は、ナノ繊維の分解に大いに影響すると結論される。分解速度は、架橋剤含量の増加と共に低下した。光架橋剤含量の変更によりナノ繊維の分解を調整することは、可能であり、この変更は、特に、様々な分解速度を要する様々な用途に1つの物質が必要な場合に、非常に有望である。SEM像から、5時間後に、0%および1%のナノ繊維では、相当な分解が認められ、繊維表面が荒れてきたのに対し、5%および10%のナノ繊維は、大体において完全性を保ち、繊維表面が滑らかなままであることが示された(図8)。
【0165】
(実施例13)
UVの直接照射を用いた、光反応性PCLナノ繊維へのリゾチームの固定化
ISurTecで電気紡糸した大型のナノ繊維シートから、ナノ繊維16片を切り出した。繊維シートは、異なる4段階のTriLite(TL)添加量を用いて調製した。そのTriLite添加量は、0%、1%、5%および10%であった。16片中8片は、BCAタンパク質アッセイで使用するために調製し、その他の8片は、活性アッセイのために調製した。ナノ繊維片の各々は、リゾチームとのインキュベーションの前に秤量した。
【0166】
リゾチーム溶液は、ニワトリ卵白由来のリゾチーム(Amresco, Solon, OH)を用いて調製した。リゾチームは、dHO中で50mg/mlに調製した。ナノ繊維は、リゾチーム溶液中で、室温で1時間振盪しながらインキュベートした。
【0167】
リゾチーム溶液中での1時間のインキュベーション後、ナノ繊維をリゾチーム溶液から取り出し、UV照射のためにTeflon片上に置いた。その繊維を合計2分間照射した(片面30秒間を2回ずつ)。
【0168】
UV照射後、ナノ繊維を新しいシンチレーションバイアルに入れ、PBS/0.1%Triton(Sigma−Aldrich, Milwaukee, WI)2mlで終夜洗浄することにより、未結合リゾチームを完全に除いた。ナノ繊維をシェーカー上で室温で洗浄した。
【0169】
PBS/0.1%Triton中で終夜洗浄した後、各ナノ繊維片をdHOで濯ぎ洗い、新しいシンチレーションバイアルに入れた。活性アッセイ用のナノ繊維片は、アッセイのために直ちに使用した。
【0170】
1N NaOH/2%SDS(Sigma−Aldrich, Milwaukee, WI)溶液2mlを、BCAタンパク質アッセイ用のナノ繊維片に添加して、それを溶解した。ナノ繊維をNaOH/SDS溶液と37℃で終夜インキュベートした。
【0171】
(実施例14)
リゾチーム活性
A.固定化リゾチームの活性アッセイ
EnzChek(登録商標)リゾチームアッセイキット(Molecular Probes, Euguene, OR)を用いて、NF上の固定化リゾチームの活性レベルを決定した。アッセイに用いた試薬は全て、キットの使用説明書に従って調製した。
【0172】
標準曲線は、キットの使用説明書に従って96ウェルプレートにて調製した。基質溶液(キットの使用説明書に従ってキット試薬で調製した)1.5mlを、ナノ繊維片を含んだ各シンチレーションバイアルに添加した。標準溶液およびナノ繊維片を、基質溶液と共に37℃で1時間50分間インキュベートした(遮光しておく)。
【0173】
基質溶液とのインキュベーション後、各ナノ繊維試料の上清100μlを、標準溶液を含有する96ウェルプレートに添加して、同一物3点とし、蛍光を518nmで測定した。
【0174】
B.BCAタンパク質アッセイ
1)トリクロロ酢酸(TCA)を用いたリゾチームの沈殿
トリクロロ酢酸(Sigma−Aldrich, Milwaukee, WI)を用いて、溶解ナノ繊維を含有する溶液からリゾチームを沈殿させた。
【0175】
溶解ナノ繊維を含有する溶液は、1N HClを用いてpH2に調整した後、エッペンドルフ管に入れた。次いで、TCAを溶液に添加し(1容積:4容積)、その管を氷上に10分間置いた。
【0176】
氷上での10分間のインキュベーション後、その管をミクロ遠心機(microfuge)中で14000rpmで5分間回転させた。上清を除き、タンパク質ペレットはそのまま残した。
【0177】
次いで、冷アセトン200μlを各管に添加して、ペレットを洗浄した。その管を14000rpmで5分間再び回転させ、上清を除いた。このアセトン洗浄は、合計3回のアセトン洗浄を2度繰り返した。
【0178】
最終のアセトン洗浄後、タンパク質ペレットを熱ブロック中で10分間乾燥することにより、残存アセトンを完全に除いた。
【0179】
2)BCAアッセイ用タンパク質試料の調製
タンパク質ペレットの乾燥後、0.2N NaOH/5%SDS溶液40μlを各管に添加して、ペレットを溶解した。次いで、dHO 960μlを各管に添加して、全量を1mlとした。タンパク質溶液は、アッセイのためにガラス試験管に移した。
【0180】
3)リゾチーム標準曲線の作成
標準曲線は、dHO中のリゾチーム(Amresco, Solon, OH)を用いて作成した。10種の標準溶液を、10μg/mlから0.0195μg/mlまでの濃度に亘って、ガラス試験管中で調製した(標準溶液1種について全量1ml)。
【0181】
4)標準溶液および実験試料のBCA作用試薬とのインキュベーション
QuantiProTMBCAアッセイキット(Sigma−Aldrich, Milwaukee, WI)をアッセイに用いた。BCA作用試薬1ml(キットの使用説明書に従って調製)を、標準溶液および実験試料の各々に添加した(管1本につき全量2ml)。次いで、標準溶液および試料を37℃で3時間インキュベートした。標準溶液および実験溶液の200μlを96ウェルプレートに添加して、同一物3点とし、吸光度を562nmで測定した。
【0182】
その結果、相当量のリゾチームが、UV直接照射によりPCLナノ繊維にコンジュゲートしたが、固定化リゾチームは、活性が限られており、UV直接照射中の活性の喪失を示すことが確認された。
【0183】
考察した例示的実施形態に、本発明の範囲から逸脱せずに、多様な改変および追加を行うことができる。例えば、上記の実施形態は特定の特徴に言及しているが、本発明の範囲は、特徴の異なる組合せを有する実施形態、および上記特徴の全ては含んでいない実施形態も包含する。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲内に入るような全ての代替形態、改変形態および変形形態を、それらの全ての等価形態と共に包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数の天然または合成ポリマー物質と、エネルギー源に曝された際に共有結合を形成するための少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する、1種または複数の架橋剤とを含む、ナノ繊維。
【請求項2】
前記潜在反応性・活性化可能基が、光化学的または熱的に活性化可能な基である、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項3】
前記エネルギー源が、放射エネルギーまたは熱エネルギーである、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項4】
前記放射エネルギーが、可視光線、紫外線、赤外線、X線、マイクロウェーブ、または他の電磁放射線である、請求項3に記載のナノ繊維。
【請求項5】
前記潜在反応性・活性化可能基が、同じまたは異なる活性化可能基である、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項6】
前記架橋剤が、モノマー物質またはポリマー物質である、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項7】
前記架橋剤が、二官能性または三官能性モノマー物質である、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項8】
生物活性物質または官能性ポリマーを更に含む、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項9】
前記生物活性物質が、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、多糖、核酸、エポキシド、酸無水物、アミド、アミン、カルボン酸、カーボネート、エステルまたはウレタンである、1個または複数の官能基を有する化合物である、請求項8に記載のナノ繊維。
【請求項10】
前記官能性ポリマーが、カルボキシ、アミン、チオール、エポキシ、N−ヒドロキシスクシンイミド、イソシアネート、酸無水物、塩化シアヌリル、アルデヒド、アジド、アルキン、ホスフィンまたはヒドロキシなどの、1個または複数の官能基を含有するポリマーである、請求項8に記載のナノ繊維。
【請求項11】
約1nm〜100ミクロンの範囲の直径を有する、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項12】
約1nm〜1000nmの範囲の直径を有する、請求項11に記載のナノ繊維。
【請求項13】
少なくとも約10から少なくとも100の範囲のアスペクト比を有する、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項14】
前記ポリマー物質が、1種または複数の親水性、疎水性、両親媒性または熱応答性のポリマー物質である、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項15】
前記ポリマー物質が、合成または天然の、生分解性または非生分解性ポリマーである、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項16】
少なくとも1個の潜在反応性・活性化可能基のエネルギー源による活性化時に、基材の表面と結合するように適合されている、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項17】
少なくとも1個の潜在反応性・活性化可能基のエネルギー源による活性化時に、生物活性物質と結合するように適合されている、請求項1に記載のナノ繊維。
【請求項18】
1種または複数のポリマー物質と、少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤とを組み合わせるステップ、およびその組合せから少なくとも1本のナノ繊維を形成するステップを含む、潜在反応性で活性化可能なナノ繊維を生成する方法であって、該ナノ繊維が、約1nm〜100ミクロンの範囲の直径、および少なくとも10から少なくとも100の範囲のアスペクト比を有する、方法。
【請求項19】
前記組合せから少なくとも1本のナノ繊維を形成するステップが、前記組合せを電気紡糸することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマー物質が、1種または複数の合成または天然の、親水性、疎水性、両親媒性または熱応答性のポリマー物質である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー物質および前記架橋剤と共に、生物活性物質を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
基材の表面をコーティングする方法であって、1種または複数のポリマー物質と、少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤とを組み合わせるステップ、その組合せから少なくとも1本のナノ繊維を形成するステップ、該表面を該ナノ繊維と接触させるステップ、および該ナノ繊維と該表面との間に結合を形成するステップを含む方法。
【請求項23】
生物活性物質を、ポリマー物質、および少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する前記架橋剤と組み合わせるステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノ繊維と前記表面との間に前記結合を形成するステップが、前記潜在反応性・活性化可能基の少なくとも1個をエネルギー源で活性化して、前記ナノ繊維を前記表面に結合することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記潜在反応性・活性化可能基の少なくとも1個を活性化して、前記ナノ繊維を生物活性物質に結合するステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ繊維を前記表面に結合するために、第1の潜在反応性・活性化可能基を、そして前記ナノ繊維を生物活性物質に結合するために、第2の潜在反応性・活性化可能基を、同時に活性化するステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマー物質が、親水性、疎水性、両親媒性または熱応答性のポリマー物質である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
複数のナノ繊維を含む表面被膜を有する物品であって、該ナノ繊維が、1種または複数の天然または合成ポリマー物質と、エネルギー源に曝された際に共有結合を形成するための少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する、1種または複数の架橋剤とを含む、物品。
【請求項29】
前記表面被膜が、生物活性物質を更に含み、該生物活性物質が、前記ナノ繊維に結合している、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
前記ナノ繊維が、生物活性物質を更に含む、請求項28に記載の物品。
【請求項31】
前記ポリマー物質が、親水性、疎水性、両親媒性または熱応答性のポリマー物質である、請求項28に記載の物品。
【請求項32】
前記ナノ繊維が、前記物品の表面に結合している、請求項28に記載の物品。
【請求項33】
尿カテーテル、血管カテーテル、創傷排液チューブ、動脈移植片、軟組織用パッチ、手袋、シャント、ステント、気管カテーテル、ペースメーカー、除細動器、人工心臓置換弁、人工心臓またはバイオセンサーである、請求項28に記載の物品。
【請求項34】
スライド、マイクロタイターウェル、マイクロタイタープレート、ペトリ皿、組織培養スライド、組織培養プレート、細胞培養プレート、組織培養フラスコおよび瓶、細胞培養マイクロキャリアまたはクロマトグラフィー媒体である、請求項28に記載の物品。
【請求項35】
1種または複数の天然または合成ポリマー物質と、エネルギー源に曝された際に共有結合を形成するための少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する、1種または複数の架橋剤とを含む、少なくとも1本のナノ繊維を含んでいる表面被膜を備えた、細胞培養器具。
【請求項36】
前記ナノ繊維が、生物活性物質を更に含む、請求項35に記載の細胞培養器具。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項に記載の架橋剤であって、次式:
a)L−((D−T−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
Dは、O、S、SO、SO、NRまたはCRであり、
Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)または(−CHCHCHCH−O−)であり、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Xは、O、SまたはNRであり、
Pは、水素原子または保護基であるが、但し、XがNRであるときは、Pは存在せず、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
およびR10は、各々独立に水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
およびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基であり、
およびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数であり、
xは、1から約500までの整数である)、
b)L−((T−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)または(−CHCHCHCH−O−)であり、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Xは、O、SまたはNRであり、
Pは、水素原子または保護基であるが、但し、XがNRであるときは、Pは存在せず、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
およびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数であり、
xは、1から約500までの整数である)、
c)L−((GTZRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)、(−CHCHCHCH−O−)であるか、または結合を形成しており、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
Zは、C=O、COO、またはTが(−CH−)である場合、CONHであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、またはアルキル基もしくはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数であり、
xは、1から約500までの整数である)、
d)L−((TGQRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)、(−CHCHCHCH−O−)であり、または結合を形成しており、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
Qは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)または(−CHCHCHCH−O−)であり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、またはアルキル基もしくはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
pは、1から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数であり、
xは、1から約500までの整数である)、
e)L−((−CH−)xxC(R)((G)RC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
各Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
各RおよびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
各R10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
各Rは、水素原子、またはアルキル基もしくはアリール基であり、
各qは、1から約7までの整数であり、
各rは、0から約3までの整数であり、
各sは、0から約3までの整数であり、
a.mは、2から約10までの整数であり、
各tは、1から約10までの整数であり、
xxは、1から約10までの整数である)、ならびに
f)L−((−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Xは、O、SまたはNRであり、
Pは、水素原子または保護基であるが、但し、XがNRであるときは、Pは存在せず、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
b.Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
およびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数である)
を有する光化学架橋剤である架橋剤。
【請求項38】
請求項1から36のいずれか一項に記載の架橋剤であって、次式:
a)L−((D−T−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
Dは、O、S、SO、SO、NRまたはCRであり、
Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)または(−CHCHCHCH−O−)であり、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Xは、O、SまたはNRであり、
Pは、水素原子または保護基であるが、但し、XがNRであるときは、Pは存在せず、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
およびR10は、各々独立に水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
およびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基であり、
およびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数であり、
xは、1から約500までの整数である)
を有する光化学架橋剤である架橋剤。
【請求項39】
Lが、約2〜約10個の間の炭素原子を有する分岐または非分岐アルキル鎖である、請求項38に記載の光化学架橋剤。
【請求項40】
Lが
【化10】

であり、DがOであり、Tが(−CH−)であり、Rが水素原子であり、XがOであり、Pが水素原子であり、Rが水素原子であり、GがOであり、RおよびRがフェニル基であり、mが3であり、xが1である、請求項38に記載の光化学架橋剤。
【請求項41】
Lが(−CH−)であり、DがOであり、Tが(−CH−)であり、Rが水素原子であり、XがOであり、Pが水素原子であり、Rが水素原子であり、GがOであり、RおよびRがフェニル基であり、mが2であり、xが1であり、yが2から約6までの整数である、請求項38に記載の光化学架橋剤。
【請求項42】
請求項1から36のいずれか一項に記載の架橋剤であって、次式:
L−((T−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)または(−CHCHCHCH−O−)であり、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Xは、O、SまたはNRであり、
Pは、水素原子または保護基であるが、但し、XがNRであるときは、Pは存在せず、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
およびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数であり、
xは、1から約500までの整数である)
を有する光化学架橋剤である架橋剤。
【請求項43】
請求項42に記載の光化学架橋剤であって、Lが、構造(I):
【化11】

(式中AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはBと共に環式環を形成し、但し、AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基である場合は、Bは存在しておらず、
Bは、NR11、Oまたは(−CH−)であり、
但し、A、BおよびJが環を形成する場合は、AおよびJが、(−CH−)またはC=Oであり、
11は、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはTとの結合を表しており、
各zは、独立に0から3までの整数であり、
但し、AまたはJのいずれかがC=Oである場合は、Bが、NR11、Oまたは(−CH−)であって、zは、少なくとも1でなければならない)
に従った式を有する光化学架橋剤。
【請求項44】
請求項1から36のいずれか一項に記載の光化学架橋剤であって、次式:
L−((GTZRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)、(−CHCHCHCH−O−)であり、または結合を形成しており、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
Zは、C=O、COO、またはTが(−CH−)である場合、CONHであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、またはアルキル基もしくはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数であり、
xは、1から約500までの整数である)
を有する光化学架橋剤。
【請求項45】
請求項44に記載の光化学架橋剤であって、Lが、構造(I):
【化12】

(式中AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはBと共に環式環を形成し、但し、AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基である場合は、Bは存在しておらず、
Bは、NR11、Oまたは(−CH−)であり、
但し、A、BおよびJが環を形成する場合は、AおよびJが、(−CH−)またはC=Oであり、
11は、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはTとの結合を表しており、
各zは、独立に0から3までの整数であり、
但し、AまたはJのいずれかがC=Oである場合は、Bが、NR11、Oまたは(−CH−)であって、zは、少なくとも1でなければならない)
に従った式を有する光化学架橋剤。
【請求項46】
請求項45に記載の光化学架橋剤であって、Lが、構造(II):
【化13】

(式中R12、R13、R14、R15、R16、R17が、各々独立に水素原子、アルキルもしくはアリール基であるか、またはTとの結合を表し、但し、R12、R13、R14、R15、R16、R17の少なくとも2つは、Tと結合しており、各Kが、独立にCHまたはNである)
に従った式を有する光化学架橋剤。
【請求項47】
請求項1から36のいずれか一項に記載の架橋剤であって、次式:
L−((TGQRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
Tは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)、(−CHCHCHCH−O−)であり、または結合を形成しており、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
Qは、(−CH−)、(−CHCH−O−)、(−CHCHCH−O−)または(−CHCHCHCH−O−)であり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、またはアルキル基もしくはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
pは、1から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数であり、
xは、1から約500までの整数である)
を有する光化学架橋剤である架橋剤。
【請求項48】
請求項44に記載の光化学架橋剤であって、Lが、構造(I):
【化14】

(式中AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはBと共に環式環を形成し、但し、AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基である場合は、Bは存在しておらず、
Bは、NR11、Oまたは(−CH−)であり、
但し、A、BおよびJが環を形成する場合は、AおよびJが、(−CH−)またはC=Oであり、
11は、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはTとの結合を表しており、
各zは、独立に0から3までの整数であり、
但し、AまたはJのいずれかがC=Oである場合は、Bが、NR11、Oまたは(−CH−)であって、zは、少なくとも1でなければならない)
に従った式を有する光化学架橋剤。
【請求項49】
請求項48に記載の光化学架橋剤であって、Lが、構造(II):
【化15】

(式中R12、R13、R14、R15、R16、R17が、各々独立に水素原子、アルキルもしくはアリール基であるか、またはTとの結合を表し、但し、R12、R13、R14、R15、R16、R17の少なくとも2つは、Tと結合しており、各Kが、独立にCHまたはNである)
に従った式を有する光化学架橋剤。
【請求項50】
請求項1から36のいずれか一項に記載の架橋剤であって、次式:
L−((−CH−)xxC(R)((G)RC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
各Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
各RおよびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
各R10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
各Rは、水素原子、またはアルキル基もしくはアリール基であり、
各qは、1から約7までの整数であり、
各rは、0から約3までの整数であり、
各sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
各tは、1から約10までの整数であり、
xxは、1から約10までの整数である)
を有する光化学架橋剤である架橋剤。
【請求項51】
請求項50に記載の光化学架橋剤であって、Lが、構造(I):
【化16】

(式中AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはBと共に環式環を形成し、但し、AおよびJが、各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基である場合は、Bは存在しておらず、
Bは、NR11、Oまたは(−CH−)であり、
但し、A、BおよびJが環を形成する場合は、AおよびJが、(−CH−)またはC=Oであり、
11は、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、またはTとの結合を表しており、
各zは、独立に0から3までの整数であり、
但し、AまたはJのいずれかがC=Oである場合は、Bが、NR11、Oまたは(−CH−)であって、zは、少なくとも1でなければならない)
に従った式を有する光化学架橋剤。
【請求項52】
請求項1から36のいずれか一項に記載の架橋剤であって、次式:
L−((−C(R)(XP)CHRGRC(=O)R))
(式中、Lは連結基であり、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Xは、O、SまたはNRであり、
Pは、水素原子または保護基であるが、但し、XがNRであるときは、Pは存在せず、
は、水素原子、アルキル、アルキルオキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキルまたはアリールオキシアリール基であり、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
およびRは、各々独立に水素原子、アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数である)
を有する光化学架橋剤である架橋剤。
【請求項53】
Lが
【化17】

であり、R20およびR21が、各々個別に水素原子、アルキル基またはアリール基である、請求項52に記載の光化学架橋剤。
【請求項54】
請求項1から36のいずれか一項に記載の架橋剤であって、次式:
L−((GRC(=O)R))
(式中Lは連結基であり、
Gは、O、S、SO、SO、NR10、(CH−O−またはC=Oであり、
およびRは、各々独立にアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基であり、またはRおよびRは、(−CH−)、(−CH−)C=O(−CH−)、(−CH−)S(−CH−)、(−CH−)S=O(−CH−)もしくは(−CH−)S(O)(−CH−)、(−CH−)NR(−CH−)を介して一緒に繋ぎ合わされており、
10は、水素原子、またはアルキル、アリールもしくはアリールアルキル基であり、
Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、
qは、1から約7までの整数であり、
rは、0から約3までの整数であり、
sは、0から約3までの整数であり、
mは、2から約10までの整数であり、
tは、1から約10までの整数である)
の化合物である架橋剤。
【請求項55】
ナノ繊維の表面上に官能性ポリマーを固定化する方法であって、
(a)1種または複数のポリマー物質、および少なくとも2個の潜在反応性・活性化可能基を有する1種または複数の架橋剤から、ナノ繊維を形成するステップ、
(b)該ナノ繊維の露出表面を官能性ポリマーと接触させるステップ、
(c)該ナノ繊維をエネルギー源に曝すことにより、該ナノ繊維の該表面と該官能性ポリマーとの間に共有結合を形成するステップ
を含む方法。
【請求項56】
前記官能性ポリマーが、生物活性物質と反応する、1つまたは複数のカルボキシ、エステル、エポキシ、ヒドロキシ、アミド、アミノ、チオ、N−ヒドロキシスクシンイミド、イソシアネート、酸無水物、アジド、アルデヒド、塩化シアヌリル、アルキンまたはホスフィン官能基を有するポリマーである、請求項55に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−531394(P2010−531394A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513460(P2010−513460)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067739
【国際公開番号】WO2009/002869
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(509351650)イノベイティブ サーフェイス テクノロジーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】