説明

潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維およびその製造方法

固有粘度差が大きい2種のポリマー、すなわち第1成分ポリマーとして固有粘度0.45〜0.65のポリエチレンテレフタラートと第2成分ポリマーとして固有粘度0.90〜1.10のポリトリメチレンテレフタラートを纎維長手方向にサイドバイサイド構造に配列されるように複合紡糸するポリエステル系複合纎維を開示する。本発明のポリエステル系複合繊維は、紡糸作業性および糸均斉度が著しく向上するという面で有利である。また、本発明のポリエステル系複合繊維は、後加工の弛緩熱処理工程で自発高捲縮特性を発揮するだけでなく、ポリトリメチレンテレフタラート纎維が有する固有特性によって、柔らかい肌触り、美しい色合いとドレープ性およびバルキー性に優れた織編物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の異なるポリマーを使用して纎維の長手方向にサイドバイサイド断面形態に複合紡糸してなるポリエステル系複合纎維、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2種のポリマーからなるサイドバイサイド形態の複合纎維は潜在捲縮性を有し、後工程の弛緩(RELAX)工程により弛緩熱処理されると、熱膨脹係数の相違したバイメタルの原理のように、自発的に均一な螺旋状の高捲縮性を発現するというのは周知の事実である。
【0003】
今まで、捲縮性の纎維を製造するにあたって、1種のポリマーを単独紡糸して部位別ケンチング速度を異にする方法と、2種の異なるポリマーを選択して複合紡糸を行う方法が使用されている。このなかで、ケンチングによる捲縮糸の製造方法は、2種のポリマーの複合紡糸法に比べ、捲縮性能が不足であり、大規模の生産設備を取り揃えるのに設備上の制約が多くて、現在は2種のポリマーを複合紡糸する方法が最も一般的に商業化されている。
【0004】
異種のポリマーを選択する基準としては、一つ目、固有粘度のみ異なる同一ポリマー、例えば固有粘土0.65のレギュラーポリエステルと固有粘土0.46のレギュラーポリエステルをそれぞれ第1成分と第2成分に使用する方法、二つ目、同一系のポリマーで収縮特性が相違した共重合体、例えば、一般のポリエステルと高収縮特性のある共重合ポリエステルをそれぞれ第1成分と第2成分にする方法等が提案されている。しかし、このような製造方法は、一般的に共重合体の物性が劣って、紡糸工程性が不良で、複合纎維の捲縮性能が低下する欠点があり、固有粘度差を用いる場合は特殊な紡糸口金の設計が必要であるため、現在まで大量生産が難しい。
【0005】
また、2種類の相違した収縮特性を有するポリマーを使用して製造されたフィラメント、すなわち従来の多くの特許に開示された方法によって製造されたフィラメント糸は、低速(1000〜1500m/分)または高速(2500m/分以上)で紡糸された原糸を、延伸機において第1ゴデットローラーと熱固定部の温度をそれぞれ80〜120℃、180〜250℃にして延伸工程を経る、すなわち2段階を経る場合に限り、後工程で乾熱または湿熱の弛緩熱処理によって、2種のポリマー間の熱収縮差が発生することになり、これによってクリンプが形成され、高捲縮および高伸縮の効果を期待することができる実情であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明者らは、まず相違した固有粘度を有するポリマーの複合紡糸が可能な特殊紡糸口金およびノズルを設計し、このようなポリマーの固有粘度差を極大化するため、繊維形成性および弾性に優れ、低温染色性およびソフトタッチの発現が可能であるだけでなく、従来のポリエチレンテレフタラートに比べ、固有粘度値がかなり高いポリトリメチレンテレフタラートをポリエチレンテレフタラートとともにサイドバイサイドタイプの複合紡糸法に適用して円形断面の高潜在捲縮性の複合纎維を製造した。すなわち、ポリエチレンテレフタラートとポリトリメチレンテレフタラートの固有粘度差によって発生するノズル面での曲糸(Bending及びKneeling)などの工程不良を解消するために自体開発した特殊紡糸口金とノズルを使用することになった。また、従来の紡糸、延伸という2段階による捲縮発現の代わりに、スピンドロープロセスという1段階によって複合纎維を製造した結果、後加工の弛緩熱処理工程で自体高捲縮特性を発現するだけでなく、ポリトリメチレンテレフタラート纎維が有する固有特性によって、柔らかい肌触り、美しい色合いとドレープ性およびバルキー性に優れた織編物を製造することができた。また、紡糸作業性および糸均斉度が著しく向上したポリエステル系潜在捲縮糸を製造することができ、その結果、本発明を完成することになった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、サイドバイサイドタイプのポリエステル系複合繊維を提供することにある。
【0008】
本発明のほかの目的は、前記ポリエステル系複合繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するため、本発明は、固有粘度差の大きい2種のポリマーからなったサイドバイサイド形態のポリエステル系複合纎維の製造方法において、第1成分ポリマーとして、固有粘度0.45〜0.65のポリエチレンテレフタラートと、第2成分ポリマーとして、固有粘度0.90〜1.10のポリトリメチレンテレフタラートとを使用し、傾斜角円形ノズルを通じてスピンドロー方式で複合紡糸することによって得られた原糸断面が次の二つの式を満足することを特徴とする、潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維の製造方法を提供する。
【0010】
式1
0≦(界面比=線分CDの長さ÷線分ABの長さ)≦0.6
式2
1≦(形態比=線分EFの長さ÷線分GHの長さ)≦1.4
上式において
線分AB:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の長軸長さ
線分CD:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の短軸長さ/2
線分EF:原糸断面の長軸の最大長さ
線分GH:原糸断面の短軸の最大長さ
また、本発明は、固有粘度差の大きい2種のポリマーからなったサイドバイサイド形態のポリエステル系複合纎維において、第1成分ポリマーとして、固有粘度0.45〜0.65のポリエチレンテレフタラートポリマーと、第2成分ポリマーとして、固有粘度0.90〜1.10のポリトリメチレンテレフタラートとからなった円形断面複合纎維であって、捲縮率が20%以上であり、原糸断面が次の二つの式を満足することを特徴とする、潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維を提供する。
【0011】
式1
0≦(界面比=線分CDの長さ÷線分ABの長さ)≦0.6
式2
1≦(形態比=線分EFの長さ÷線分GHの長さ)≦1.4
上式において
線分AB:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の長軸長さ
線分CD:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の短軸長さ/2
線分EF:原糸断面の長軸の最大長さ
線分GH:原糸断面の短軸の最大長さ
本発明の前記およびほかの目的、特徴および利点は添付図面を参照する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、サイドバイサイドタイプの複合紡糸に使用されるポリエチレンテレフタラート(以下、「PET」と略称する)は、固有粘度が0.45〜0.65の範囲、ポリトリメチレンテレフタラート(以下、「PTT」と略称する)は、固有粘度が0.90〜1.10の範囲のポリマーであって、2成分間の固有粘度差が大きいものを使用する。これにより、紡糸パックに一般の円形ストレートノズル(図3参照)を使用する場合、紡糸工程時、紡糸ノズル直下で固有粘度差による溶融粘度差が発生して、糸条が溶融粘度の高い側に曲がる曲糸現象(Bending又はKneeling)が発生するため、紡糸工程性が不良になり、大量生産が不可能になる。したがって、本発明の発明者らはこのような溶融粘度差を相殺させ、糸条の曲がる現象なしに安定した紡糸性を確保するために、傾斜角円形ノズル(図2参照)を製造して本発明の紡糸パック3に適用した。
【0013】
傾斜角円形ノズルの場合、固有粘度が高くて流れ速度が遅いポリマーをB面に、一方固有粘度が低くて流れ速度が速いポリマーをA面に紡糸することになると、傾斜角により、固有粘度差の大きい2種のポリマーに対する経路差を付与することになり、これにより、吐出ポリマーの曲がる現象なしに、安定した紡糸が可能になる。したがって、傾斜角ノズルを使用した紡糸においては、2種のポリマー間の溶融粘度差を1500ポイズ以上にすることが重要であり、粘度差が大きいほど紡糸が有利になるが、溶融粘度差が2500ポイズ以上に大きくなると、糸条が高粘度ポリマー側に曲がる現象がひどくなって紡糸が不可能になる。また、紡糸の際、2種のポリマー間の溶融粘度差が1500ポイズ以下になると、溶融粘度差が小さくなってポリマーが流れ速度の速いA面側に急激に曲がることにより紡糸工程性が不良になる。
【0014】
前記PETポリマーはテレフタル酸とエチレングリコールを、PTTポリマーはテレフタル酸とプロパンジオールを主成分とするもので、第3の官能エステル形成成分は共重合されないものを意味する。前記二つのポリマー成分の溶融粘度差の調節は、図1に示された各成分の押出機1、1−1の温度条件を異にして各成分の高分子溶融体の熱履歴を異にするか、高粘度成分と低粘度成分の紡糸温度を調節することによって達成することができる。紡糸時の2種のポリマー間の溶融粘度差を1500〜2500ポイズの適切な範囲に維持するためには、紡糸温度を265〜290℃の範囲内に調節することが望ましい。また、PETの押出機1の温度範囲は275〜295℃、PTTの押出機1−1の温度範囲は250〜270℃に調節することが望ましい。各押出機を通過した溶融物はギアポンプ2、2−1をそれぞれ通過して一つの紡糸パック3に供給される。
【0015】
前記のような溶融粘度差によって、紡糸された原糸の断面は、図4および図5に示すように、円形断面を形成することになり、その界面は、溶融粘度差によって高粘度側が凸状の、低粘度側が凹状の形態を形成することになり、その界面の形態は溶融粘度差によって次の式を満足する範囲内で変わることになる。
【0016】
式1
0≦(界面比=線分CDの長さ÷線分ABの長さ)≦0.6
上式において
線分AB:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の長軸長さ
線分CD:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の短軸長さ/2
また、PETの複合纎維中の割合は30〜70重量%であることが望ましく、PTTの複合纎維中の割合は70〜30重量%であることが望ましい。また、それぞれの吐出比が変化することにより、原糸の断面形態が次の式を満足する範囲内で変化することになる。
【0017】
式2
1≦(形態比=線分EFの長さ÷線分GHの長さ)≦1.4
上式において
線分EF:原糸断面の長軸の最大長さ
線分GH:原糸断面の短軸の最大長さ
特に制限するものではないが、本発明において、巻取6速度は3000〜5500m/分が適当であり、1段階スピンドロープロセスを用いて原糸を紡糸する場合、第1ゴデットローラー4の速度は2000m/分以上に、第2ゴデットローラー5の速度は4000m/分以上に設定することが、紡糸作業性および捲縮性能の向上に有利である。第1ゴデットローラーの延伸温度が低すぎる場合、染色不良の問題が発生し、高すぎると、糸道が安定せず工程性に不利な方向に作用する。したがって、第1ゴデットローラーの温度は70〜100℃の範囲が適当である。また、第2ゴデットローラーの温度が低すぎる場合、セッティング性が不良であって、後加工で織編物に製造する時、不良確率が高く、一方温度が高すぎると、糸道が不安定で、紡糸工程に不利な方向に作用することになる。したがって、第2ゴデットローラーの温度は100〜140℃程度が適当である。
【0018】
本発明の複合纎維は、強度が2.0〜3.3g/デニール、伸度が20〜40%であることが望ましい。強度が2.0g/デニール未満の場合には、強度が低くなって紡糸中の糸切が多く、織編物の製造時、作業性が不良であり、織編物の引裂強度が低下する現象が発生することになり、強度が3.3g/デニールを超えると、織物の製造後、肌触りが不良になる。伸度において、20%未満の場合は、紡糸時、毛羽が発生しやすく、40%を超える場合は、紡糸工程中の糸道不安による均斉度(U%)が不良になる。
【0019】
本発明により、第1成分ポリマーであるポリエチレンテレフタラートと第2成分ポリマーであるポリトリメチレンテレフタラートとからなった円形断面の複合纎維であって、捲縮率が20%以上、原糸断面が次の2つの式を満足すること(図4および図5参照)を特徴とする潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維が得られる。
【0020】
式1
0≦(界面比=線分CDの長さ÷線分ABの長さ)≦0.6
式2
1≦(形態比=線分EFの長さ÷線分GHの長さ)≦1.4
上式において
線分AB:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の長軸長さ
線分CD:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の短軸長さ/2
線分EF:原糸断面の長軸の最大長さ
線分GH:原糸断面の短軸の最大長さ
本発明により製造された複合纎維は、後述する方法で測定した捲縮率が20%以上のものが望ましい。PETとPTTのサイドバイサイド複合纎維は、捲縮率が20%以上になる場合、所望の伸縮特性を有する織編物の製造が可能になり、捲縮率が20%未満の場合は、織編物の製造時、伸縮特性の発現が不良になる。また、前記の式を満足する断面を有する円形潜在捲縮糸の場合、異形断面潜在捲縮糸に比べ、2種類のポリマーが接触し得る界面が多くなり、後加工の弛緩熱処理工程により、単位長さ当たり多くのクリンプが発現可能になり、それによって、織編物の伸縮性を向上させることになる。また、織編物に製造する時、円形断面によって柔らかくて楽な着用感を付与することになる。
【0021】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に制限されない。
【0022】
実施例1〜6
固有粘度差が極大化になったPETとPTTのサイドバイサイドタイプの複合紡糸のために傾斜角円形ノズルを使用した。ポリマーAとしては、表1のように、固有粘度0.460、0.550、および0.635程度のPETポリマーをそれぞれ使用し、ポリマーBとしては、固有粘度1.00のPTTポリマーを使用して、270〜290℃の範囲で、吐出比を互いに違うようにするなどの条件を表1のように変更し、傾斜角円形ノズルを使用し1段階プロセスを用いて複合纎維を製造した。ノズルの直下5〜120cmで23℃の冷却風を0.35m/秒の速度で供給し、油剤付着量は0.5〜1.1重量%の範囲にした。このように製造された纎維の経糸および緯糸を共に使用して100g/mを有する織物に製造した後、120℃で染色した。
【0023】
【表1】

【0024】
前記製造された織物の特性を次のように測定して評価した後、表2に示した。
【0025】
*固有粘度(I.V.;Intrinsic Viscosity):各ポリマーを120℃のオルト−クロロフェノールに1%濃度に充分に溶解させた後、30℃の恒温槽でウベロド(Ubbelohde)型粘度計を使用して測定した。
【0026】
*溶融粘度(M.V.;Melt Viscosity):測定しようとするポリマーを真空乾燥器により160℃で充分に乾燥させた後、毛細管タイプのレオメータ(capillary type rheometer)で280℃の温度で測定した。
【0027】
*捲縮率(T、%):試料に50mg/デニールの張力が与えられた状態で3000デニールに相当する量の試料を取る。この試料を熱水で処理して捲縮発現がなされる時、各纎維本間にもつれが発生しない水準の荷重である0.5mg/デニールの荷重を付与した状態で、熱水(100℃)で20分間処理し、荷重を除去した後、24時間放置して自然乾燥させる。自然乾燥後、試料に2mg/デニールの荷重を付与し、1分経過後、長さL1を測定し、2mg/デニール+200mg/デニールの荷重を付与し、1分経過後、長さL2を測定する。このように測定された値を下記式3に代入して捲縮率を求める。
【0028】
式3
(%)=(L2−L1)/L2×100
*織物の30%伸張弾性回復率(FR30、%):織物を経糸および緯糸方向にそれぞれ5.5cm×30cmにして3枚作成した後、試験片の幅を5cmにして引張試験機に装着し、初期荷重を付与して試片を広げる。低速伸張測定法(JIS L 1018−70)に従い、100%/分の速度で伸度30%まで伸ばした後、反対方向に同一速度で収縮させる。この時の応力−伸張曲線において、応力が初期荷重となる時の伸度(ε)を測定し、経糸および緯糸方向へのそれぞれの平均を計算して式4で求める。
【0029】
式4
FR30(%)=(30ε)/30×100
【0030】
【表2】

注:紡糸工程性、◎:優れている、○:よい、△:普通、×:悪い
【0031】
粘度差が2500ポイズ以上の場合、曲糸現象(kneeling)の発生によって紡糸工程性が不良となり、PETとPTTの固有粘度差が大きいほど、高い捲縮の原糸の製造が可能であった。PETの粘度差のみを用いて複合紡糸する場合とは異なり、1工程のスピンドロープロセスの場合も、下記比較例の2工程プロセス程度の捲縮性能が発現可能であるだけでなく、捲縮性能がかなり向上した複合纎維の製造が可能である。低粘度0.46のPETポリマーを使用する場合は、紡糸条件の設定が難しいだけでなく、製糸された原糸の強度が低いため、後加工で織物に製織した場合、引裂強度が低下する。
【0032】
比較例1〜4
図1に示すような押出機および紡糸設備において、2種のポリマーの固有粘度差を克服するために、傾斜角円形ノズルを使用して、表3のように、ポリマーAとしては、2種類のPETを50%使用し、ポリマーBとしては、固有粘度0.635のPETまたは固有粘度0.990のPTTを50%使用して、紡糸温度280〜290℃の範囲でそれぞれ2工程と1工程のプロセスを用いて複合纎維を製造した。ノズルの直下5〜120cmで23℃の冷却風を0.35m/秒の速度で供給し、油剤付着量は0.5〜1.1重量%の範囲で付与した。このように製造された纎維を経糸および緯糸として使用して100g/mの織物に製造した後、120℃で染色した。前記製造された織物の特性を実施例の方法と同様に測定して評価した後、表4に示した。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
粘度差が1500ポイズ以下の場合、紡糸工程性が不良であり、2種のポリマー間の固有粘度差が大きいほど、高い捲縮の原糸の製造が可能であった。1工程スピンドロープロセスの場合、2工程の紡糸および延伸プロセスに比べ、捲縮性能が低下する結果を得た(比較例2および4)。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、自体開発した傾斜角円形ノズルを使用することにより、1段階の工程でも自発高捲縮特性に優れるだけでなく、ポリトリメチレンテレフタラート纎維が有する固有特性によって、織編物の製造時、柔らかい肌触り、美しい色合いとドレープ性およびバルキー性の発現が可能な円形断面の潜在捲縮糸を製造することができた。また、紡糸作業性に優れ、特に曲糸現象がなくて糸均斉度が著しく向上したポリエステル系潜在捲縮糸を製造することができる。
【0037】
本発明の好適実施例を例示の目的で開示したが、当業者であれば、添付した特許請求範囲に開示されたような本発明の精神および範囲から逸脱しないで多様な変形、付加および代替ができることが理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の製造方法に使用される紡糸機の概略図である。
【図2】本発明に使用される複合紡糸パックの概略図である。
【図3】従来の一般的な円形ストレートノズル型紡糸口金の概略図である。
【図4】本発明によって製造されたポリエステル系複合纎維の原糸断面の概略図である。
【図5】本発明によって製造された複合纎維の製造条件による原糸断面の変形を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有粘度差の大きい2種のポリマーからなるサイドバイサイド形態のポリエステル系複合纎維の製造方法において、
第1成分ポリマーとして、固有粘度0.45〜0.65のポリエチレンテレフタラートと、第2成分ポリマーとして、固有粘度0.90〜1.10のポリトリメチレンテレフタラートとを使用し、傾斜角円形ノズルを通じてスピンドロー方式で複合紡糸することによって得られた原糸断面が次の二つの式を満足することを特徴とする、潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維の製造方法。
式1
0≦(界面比=線分CDの長さ÷線分ABの長さ)≦0.6
式2
1≦(形態比=線分EFの長さ÷線分GHの長さ)≦1.4
上式において
線分AB:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の長軸長さ
線分CD:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の短軸長さ/2
線分EF:原糸断面の長軸の最大長さ
線分GH:原糸断面の短軸の最大長さ
【請求項2】
紡糸時、前記の2種のポリマー間の溶融粘度差が2500ポイズ以下であることを特徴とする、請求項1に記載の潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維の製造方法。
【請求項3】
前記第1成分ポリマーであるポリエチレンテレフタラートはテレフタル酸とエチレングリコールを、前記第2成分ポリマーであるポリトリメチレンテレフタラートはテレフタル酸とプロパンジオールを主成分とするもので、第1成分ポリマーと第2成分ポリマーは、他の共重合される官能成分を持たないことを特徴とする、請求項1に記載の潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維の製造方法。
【請求項4】
第1成分ポリマーであるポリエチレンテレフタラートはポリエステル系複合纎維の30〜70重量%であり、第2成分ポリマーであるポリトリメチレンテレフタラートはポリエステル系複合纎維の70〜30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維の製造方法。
【請求項5】
前記複合紡糸時、1段階スピンドロープロセスを用い、第1ゴデットローラーの速度は2000m/分以上であり、第2ゴデットローラーの速度は4000m/分以上であることを特徴とする、請求項1に記載の潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維の製造方法。
【請求項6】
製造されたポリエステル系複合纎維の強度が2.0〜3.3g/デニールであり、伸度が20〜40%であることを特徴とする、請求項1に記載の潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維の製造方法。
【請求項7】
製造されたポリエステル系複合纎維の捲縮率が20%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維の製造方法。
【請求項8】
固有粘度差の大きい2種のポリマーからなるサイドバイサイド形態のポリエステル系複合纎維において、第1成分ポリマーとして、固有粘度0.45〜0.65のポリエチレンテレフタラートポリマーと、第2成分ポリマーとして、固有粘度0.90〜1.10のポリトリメチレンテレフタラートとからなった円形断面複合纎維であって、捲縮率が20%以上であり、原糸断面が次の2つの式を満足することを特徴とする、潜在捲縮性に優れたポリエステル系複合纎維。
式1
0≦(界面比=線分CDの長さ÷線分ABの長さ)≦0.6
式2
1≦(形態比=線分EFの長さ÷線分GHの長さ)≦1.4
上式において
線分AB:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の長軸長さ
線分CD:高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの界面の短軸長さ/2
線分EF:原糸断面の長軸の最大長さ
線分GH:原糸断面の短軸の最大長さ


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−524295(P2006−524295A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507811(P2006−507811)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000913
【国際公開番号】WO2004/094706
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(503424174)ヒュービス コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】HUVIS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】Huvis B/D,151−7,Samseong−dong,Gangnam−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】