説明

潤滑剤供給方法、支持部材及び回転体ユニット

【課題】円筒状の回転部材と支持部材との間の摺動部に対する潤滑剤の塗布工程の効率化を図る。
【解決手段】電子写真画像形成装置Aに備えられるスリーブシリンダ41と、スリーブシリンダ41における軸方向の一端側の内周面を周方向に摺動自在に支持する支持部材47との間の摺動部に対して潤滑剤を供給する潤滑剤供給方法において、支持部材47には、中空部47eと、中空部47eからスリーブシリンダ41の内周面に向けて開口する開口47cとが設けられており、中空部47eから開口47cを介して摺動部に潤滑剤を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に備えられる円筒状の回転部材と、この回転部材の内周面を摺動自在に支持する支持部材との間の摺動部に対して潤滑剤を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体を含有した一成分トナーを現像剤として用いるモノクロプリンター等では、マグネットローラを内部に配置したアルミ製現像スリーブ表面にトナーコートを行い、潜像形成された像担持体上にトナーを移動させて現像を行う方法が広く採用されている。(特許文献1参照)
また、現像スリーブの構成としては、円筒状のアルミシリンダの両端にアルミシリンダと一体的になるようにフランジ部材を取り付け、このフランジ部材を支持することにより、画像形成装置内で回転可能に支持する方法が広く採用されている。このような画像形成装置においては、プロセスカートリッジのリサイクル方法としてマグネットを取り出して再利用する事も行われている。そして、フランジ部材をアルミシリンダに対して、接着ではなく、圧入による固定を採用することで、マグネットを取り出す際のアルミシリンダの切断を不要にすることが可能となる技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0003】
近年では、部品点数削減を目的として、アルミ製現像スリーブに対する摺動接点を兼ねた導電樹脂製の支持部材を、現像スリーブ内周面に摺動させる構成を採用しているものもある。この構成によれば、上記の圧入による固定よりも、さらに、支持部材を取り外す事を容易にできるため、内部のマグネットローラをより簡単に取り出すことができる。その結果、リサイクルに対しても非常に有効な構成である。
一方、このような支持構成は、現像スリーブと電気接点としての支持部材の間の接触抵抗を安定化するために、現像スリーブ内面と支持部材との摺擦面に導電性の潤滑剤を使用したほうが望ましい。
しかし、支持部材の外周面にグリスを塗布して現像スリーブと支持部材を組み立てた場合、グリスが現像スリーブによって押し出されて、現像スリーブ外周面にはみ出すことが懸念される。はみ出したグリスは、例えば現像スリーブ外側の表面に回りこんで、画像弊害等、様々な弊害を起す恐れがある。そのため、グリス塗布工程としては、現像スリーブ内周面にグリスを塗布した後、支持部材との組付けを行うことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−197220号公報
【特許文献2】特開2003−029535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような構成において、現像スリーブの内周面に確実に潤滑剤を塗布する事は容易ではない。例えば、現像スリーブ内周面に導電グリス等の潤滑剤を注射器等の手段で塗布した後に、支持部材を現像スリーブに挿入して組付けようとすると、塗布した導電グリスのほとんどが支持部材により奥側に移動し、必要量が摺動部に残存しない場合がある。また、支持部材表面の塗布量の確認も困難である。そのため、塗布量管理のため様々な条件が付加されている状況であり、従来の構成では、グリス塗布は丁寧な手作業が要求される場合が多い。このように、現像スリーブのような円筒状の回転部材の内周面と支持部材との摺動性向上のための潤滑剤塗布について、より効率的に作業が行われる
ことが望まれている。
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、円筒状の回転部材と支持部材との間の摺動部に対する潤滑剤の塗布工程の効率化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
電子写真画像形成装置に備えられる円筒状の回転部材と、前記回転部材における軸方向の一端側の内周面を周方向に摺動自在に支持する支持部材との間の摺動部に対して潤滑剤を供給する潤滑剤供給方法であって、
前記支持部材には、中空部と、前記中空部から前記回転部材の内周面に向けて開口する開口部とが設けられており、
前記支持部材の前記中空部から前記開口部を介して前記摺動部に潤滑剤を供給することを特徴とする。
また、電子写真画像形成装置に備えられる円筒状の回転部材における軸方向の一端側の内周面を周方向に摺動自在に支持する支持部材において、
予め潤滑剤が収容されている中空部と、
前記中空部から前記回転部材の内周面に向けて開口する開口部と、
前記中空部から前記開口部を介して、前記回転部材との間の摺動部に潤滑剤を供給するために前記中空部内の潤滑剤を押圧する押圧手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円筒状の回転部材と支持部材との間の摺動部に対する潤滑剤の塗布工程の効率化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の電子写真画像形成装置の概略構成を示す断面図
【図2】実施例1の現像スリーブユニットと感光体ドラムユニットを示す概略断面図
【図3】実施例1の支持部材を示す概略斜視図
【図4】実施例1の現像スリーブユニットの組立て方法について説明するための図
【図5】潤滑剤塗布装置でスリーブシリンダに潤滑剤を塗布する状態を示す図
【図6】潤滑剤塗布装置で感光体ドラムに潤滑剤を塗布する状態を示す図
【図7】実施例2の支持部材がスリーブシリンダに組付いた状態を示す概略断面図
【図8】実施例2の支持部材がスリーブシリンダに組付いた状態を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0010】
以下に、実施例1について説明する。
(画像形成装置の概要)
図1は、本実施例の電子写真画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図1において、電子写真画像形成装置Aは、像担持体(電子写真感光体)としての感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1は、帯電手段としての帯電ローラ2により一様に接触帯電され、次いで、露光手段としての光学スキャナ3により画像情報に基づいた露光が行われ、感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。この静電潜像はトナー(現像剤)により現像され、その結果、感光体ドラム1上にはトナー像が形成される。感光体ドラム1
上のトナー像は、転写手段としての転写ローラ7に電圧が印加されることによって、カセット6から転写位置へ搬送された記録材5に転写される。トナー像が転写された記録材5は、定着手段8により加熱加圧されて定着が行われる。
【0011】
(プロセスカートリッジの構成)
プロセスカートリッジBは、感光体ドラム1と、感光体ドラム1に作用する少なくとも1つのプロセス手段を備えたものである。ここでプロセス手段は、帯電ローラ2、現像剤担持体としての現像スリーブ4、クリーニングブレード9等に相当する。
感光体ドラム1は、アルミシリンダ等の導電性基体上に感光層を有するもので、プロセスカートリッジBに回転自在に設けられている。帯電ローラ2は金属製芯金に弾性層を備えており、感光体ドラム1の表面に加圧接触して配設され、芯金に電圧が印加されることにより、感光体ドラム1の表面を一様に帯電する。
光学スキャナ3は半導体レーザからのレーザ光を感光体ドラム1上に収束させる光学系や高速回転するポリゴンミラー等を用いたもので、画像情報に応じた露光を感光体ドラム1上に行うことを可能にしたものである。露光により生じる感光体ドラム1表面の電位差によって静電潜像が形成される。
【0012】
現像スリーブ4は、感光体ドラム1に形成された静電潜像を可視化するためのトナーを担持するものである。現像スリーブ4は、アルミシリンダの表面が導電性材料によるコート、もしくはブラスト等により処理されており、現像スリーブ4表面には、現像剤規制部材等によって均一な厚みを持つ薄いトナー層が形成されている。現像スリーブ4に電圧が印加されることで、感光体ドラム1上の静電潜像との間で生じた電位差によりトナーが転移し、これにより画像情報に応じたトナー像が感光体ドラム1上に形成される。
クリーニングブレード9はウレタンゴム等で成形されており、感光体ドラム1の表面移動に対してカウンタ方向になるように当接配置されており、記録材5への転写後に感光体ドラム1上に残存するトナー等の異物をかきとる事が可能である。
【0013】
(現像スリーブユニットの構成)
次に、図2を用いて、現像スリーブ4まわりの構成について更に詳細に説明する。図2は、プロセスカートリッジB内に配置されている現像スリーブユニット40と感光体ドラムユニット10を示す概略断面図である。
感光体ドラムユニット10は、ドラムシリンダ11、ドラムギア12、ドラムフランジ13で構成されている。図1において感光体ドラム1として示されている部分はドラムシリンダ11に相当する。ドラムギア12及びドラムフランジ13は、ともにカシメや圧入等の方法によりドラムシリンダ11に一体化されている。ドラムギア12に対して駆動力が不図示のギアにより伝達されて、感光体ドラム1は回転する。
【0014】
現像スリーブユニット40は、スリーブシリンダ41、スリーブフランジ42、マグネットローラ43、間隔(間隙)保持部材44,45、スリーブギア部材46、及び、支持部材47で構成されている。図1において現像スリーブ4として示されている部分は円筒状の回転部材としてのスリーブシリンダ41に相当する。
スリーブシリンダ41はスリーブフランジ42と圧入等の方法により一体化されている。スリーブフランジ42には、スリーブギア部材46に係合するDカット部が形成されており、スリーブギア部材46に伝達された駆動力によりスリーブシリンダ41が回転するように構成されている。
スリーブフランジ42と一体化されているスリーブシリンダ41は、軸方向(回転軸方向、長手方向)の一端側がスリーブギア部材46の先端部46aに配設された不図示の軸受けで支持されており、他端側が支持部材47により支持されている。このようにして、スリーブシリンダ41は回転可能に構成されている。支持部材47はプロセスカートリッジBの内部で回転しないように構成され、スリーブシリンダ41は支持部材47に対して
摺動するように構成されている。
【0015】
マグネットローラ43は、支持部材47及びスリーブフランジ42によって支持されており、さらに、マグネットローラ43に形成されているDカット部が支持部材47に係合することによって、支持部材47に対して回転しないように構成されている。この結果、マグネットローラ43によって形成される磁束密度分布が、トナー循環や現像に対して有効に働く事が可能となる。
間隔保持部材44,45は、スリーブシリンダ41の軸方向の端部に配設されるとともに、ドラムシリンダ11の表面に当接するように構成されている。プロセスカートリッジB内では、感光体ドラムユニット10と現像スリーブユニット40とは互いに加圧されるように構成されている。そして、間隔保持部材44,45の厚みにより感光体ドラム1の表面と現像スリーブ4の表面との間隔が0.2〜0.4mm程度になるように設定されている。
【0016】
支持部材47は導電性樹脂により成形されており、上述したスリーブシリンダ41及びマグネットローラ43の支持だけでなく、スリーブシリンダ41に対して現像バイアスの接点としての働きも有する。
【0017】
(支持部材の構成)
次に、図3を用いて、支持部材47の構成について詳細に説明する。図3は、本実施例の支持部材47を示す概略斜視図である。
支持部材47は、スリーブシリンダ41を支持するための円筒形部分47aを有しており、円筒形部分47aの外周面は、でスリーブシリンダ41の内周面を周方向(回転方向)に摺動自在に支持している。また、円筒形部分47aには、その内部(内周側)に中空部47eが設けられており、さらに中空部47eに連通する開口(開口部)47b,47cが設けられている。ここで、開口47cは、中空部47eからスリーブシリンダ41の内周面に向けて開口している。また、開口47bは、スリーブシリンダ41の外部に向けて開口する外向開口部であって、中空部47eに連通して設けられた外向開口部に相当する。
【0018】
また、円筒形部分47aのうち軸方向におけるスリーブシリンダ41側の端部の内周面には、マグネットローラ43のDカット部を受ける平面部47dが設けられている。
上述したように、支持部材47は現像スリーブ4への現像バイアスの供給を行う接点としての機能も持っている。具体的には、アセタール樹脂にカーボンを分散させて導電性も持たせて支持部材47を成形している。また、画像形成装置側の接点をこの支持部材47に当接させることで、画像形成装置に内蔵されている電源(不図示)の出力バイアスを現像スリーブ4に通電させている。
【0019】
(現像スリーブユニットの組立方法)
次に、図4を用いて現像スリーブユニット40の組立て方法について説明する。図4は、現像スリーブユニット40の組立て方法について説明するための図であり、図4(a)はスリーブシリンダ41にスリーブフランジ42及びマグネットローラ43を組付ける方法について説明するための図である。図4(b)はスリーブフランジ42及びマグネットローラ43が組付いた状態のスリーブシリンダ41に、間隔保持部材44,45、スリーブギア部材46、支持部材47を組付ける方法について説明するための図である。
まず、スリーブフランジ42をスリーブシリンダ41における軸方向の右端部に圧入などの方法によって固定する。その後、マグネットローラ43をスリーブシリンダ41内部に挿入する(図4(a)参照)。この時、マグネットローラ43右端部の細軸部43aとスリーブフランジ42の内周面42aの摺動性を向上させるため、細軸部43aには潤滑油が塗布される。
【0020】
図4(b)に示すように、上述したスリーブシリンダ41、スリーブフランジ42及びマグネットローラ43を組付けたものに対してさらに、間隔保持部材44,45、スリーブギア部材46、支持部材47が挿入される(組付けられる)。このとき、スリーブシリンダ41の右側には間隔保持部材44、スリーブギア部材46が、またスリーブシリンダ41の左側には間隔保持部材45、支持部材47が挿入される。また、スリーブシリンダ41の右側は間隔保持部材44、スリーブギア部材46の順で、またスリーブシリンダ41の左側は間隔保持部材45、支持部材47の順で、挿入される。組み立てられた現像スリーブユニット40は、不図示のプロセスカートリッジBの枠体にビス等の固定手段により固定される。
【0021】
(潤滑剤の塗布(供給)方法)
次に上述のように組み立てられた現像スリーブユニット40のスリーブシリンダ41の内周面(摺動面)と、支持部材47の円筒形部分47aの外周面(摺動面)との間の摺動部の潤滑性(摺動性)を確保するための潤滑剤の塗布方法について図5を用いて説明する。図5は、不図示の台に置かれた現像スリーブユニット40に対して、潤滑剤塗布装置100のノズル100aの先端を、現像スリーブユニット40の支持部材47の開口47bから支持部材47の内部に挿入している様子を示す概略断面図である。ここで、潤滑剤塗布装置100は注射器状の手段でも良い。
ノズル100aの先端部を、支持部材47の開口47bより挿入し、中空部47e及び開口47cを介してスリーブシリンダ41の内周面に接近させる。ノズル100aの先端部がスリーブシリンダ41の内周面に対して、0.5〜1mmに接近した状態で、ノズル100aの先端部より潤滑剤としての導電グリスを吐出させることで、スリーブシリンダ41の内周面(摺動部)に導電グリスを塗布する。塗布する位置は、摺動する圧力が最も大きくなると予測される部分、例えば、軸方向で間隔保持部材45と感光体ドラム1との当接部位付近が望ましい。吐出中に、スリーブシリンダ41を回転させると、より効率的に摺動部に導電グリスを送り込むことが可能である。
【0022】
(マグネットローラのリサイクル)
本実施例においては、マグネットローラ43がリサイクル可能に構成されている。上述したように現像スリーブユニット40において、支持部材47は、スリーブシリンダ41に対して固定されず、回転可能(摺動自在)に構成されている。このことで、スリーブシリンダ41に対して支持部材47を外す際の抵抗が小さくなり、容易にマグネットローラ43を取り出すことが可能となっている。
【0023】
以上説明したように、本実施例では、スリーブシリンダ41の内周面に向けて開口する開口47cから、スリーブシリンダ41と支持部材47との間の摺動部に導電グリスを供給している。このように本実施例では、スリーブシリンダ41と支持部材47とを組付けた後に、摺動部に導電グリスを塗布することができる。このことで、従来のようにスリーブシリンダと支持部材とを組付けることで、組付け前に塗布した導電グリスが移動してしまうようなことはなく、必要量の導電グリスをより確実に摺動部に供給することができる。これにより、摺動性をより向上させることが可能となる。また、従来のようにスリーブシリンダと支持部材とを組付けることで、組付け前に塗布した導電グリスが移動してスリーブシリンダ41の表面が導電グリスにより汚染されることを防止することができる。これにより、スリーブシリンダ41の表面に導電グリスが付着することによる画像弊害の発生を抑制することができる。
したがって、スリーブシリンダ41の表面が導電グリスにより汚染されることを防止しながら、支持部材47との間の摺動部に対して、より効率的に潤滑剤を塗布することが可能となる。さらには、支持部材47がスリーブシリンダ41に対する接点を兼ねる場合において、より良好な接触状態を得ることが可能となる。
【0024】
(他の形態)
以下に、他の形態として、円筒状の回転部材としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1における軸方向の一端側に設けられ感光体ドラム1を回転可能(摺動自在)に支持する支持部材200との間の摺動部に対して潤滑剤を供給する場合について説明する。図6は、感光体ドラム1と支持部材200との間の摺動部に対して潤滑剤の供給を行う方法を示した図である。
感光体ドラム1が円筒状の回転部材である場合においても、上記現像スリーブを用いて説明した場合と同様に、潤滑剤塗布装置100のノズル100aの先端部より導電グリスを吐出させて感光体ドラム1の内周面(摺動部)に塗布することができる。
【実施例2】
【0025】
以下に、実施例2について説明する。図7,8は本実施例の支持部材48がスリーブシリンダ41に組付いた状態を示す概略断面図である。
支持部材48は、実施例1の支持部材同様、電子写真画像形成装置に備えられる円筒状の回転部材における軸方向の一端側の内周面を周方向(回転方向)に摺動自在に支持するものである。また、支持部材48と、円筒状の回転部材とが組付けられることで回転体ユニットが構成される。なお、本実施例の電子写真画像形成装置は、支持部材の構成以外は実質的に上述した実施例1の電子写真画像形成装置Aと同様の構成であり、同様の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0026】
図7に示すように、本実施例の支持部材48は、実施例1と同様にスリーブシリンダ41に組み込まれ、現像スリーブユニット40を構成している。支持部材48には、潤滑剤を一時蓄えるための一時容器部48aが設けられ、この部分に導電グリスが予め注入され蓄えられる(収容されている)。ここで、一時容器部48aは中空部に相当する。
一時容器部48aは、支持部材48の内部に設けられた空間であって、2つの開口(開口部)が設けられている。2つの開口のうち一方は、現像スリーブユニット40が組み立てられた場合に、スリーブシリンダ41の内周面に向けて開口する開口48dである。他方は、導電グリスが蓄えられた状態で、封止部材48bによって封止されている。
【0027】
本実施例の特徴として、支持部材48には、一時容器部48aに蓄えられている潤滑剤を押圧する押圧手段が設けられている。押圧手段は、封止部材48b、押し部材48e、及び、押し部材48eと封止部材48bとの間に配設されたバネ部材48cで構成されている。ここで、押し部材48eは、(支持部材48の外部から)押されることで変位する操作部材に相当する。また、封止部材48bは、押し部材48eが押され変位した場合に、一時容器部48a内(中空部内)の潤滑剤を押圧する押圧部材に相当する。
【0028】
押し部材48eには係止爪48e1が設けられており、係止爪48e1が支持部材48の内壁に設けられた凹部に係合することで、押し部材48eは支持部材48本体に係止されることとなる。支持部材48の凹部は、スリーブシリンダ41に組み込まれた場合におけるスリーブシリンダ41の軸方向の内側の凹部48g1と外側の凹部48g2との2箇所に設けられている。導電グリスが支持部材48の一時容器部48aに注入された状態であって、プロセスカートリッジBの組立て前の状態では、係止爪48e1は凹部48g2に係合している。このように本実施例では、支持部材48本体と押し部材48eとの間には、凹部48g1,48g2、係止爪48e1で構成される係止機構が設けられている。
【0029】
プロセスカートリッジBの組立て時には、導電グリスが支持部材48の一時容器部48aに注入された状態で、現像スリーブユニット40を組立て、さらに、不図示の必要な部品を組付けプロセスカートリッジBとして完成させる。プロセスカートリッジBの完成後に、図8に示すように、押し部材48eを軸方向の内側に押し込み、係止爪48e1を奥
側(軸方向内側)の凹部48g1に係合する(引っかかる)ところまで押し込む。バネ部材48cは圧縮され、その結果、封止部材48bは奥側に向かう方向に押圧(加圧)される。これにより、封止部材48bによって、一時容器部48aに蓄えられている導電グリスも押圧(加圧)されるため、開口48dよりスリーブシリンダ41の内周面に導電グリスが供給される。このとき、スリーブシリンダ41を回転させれば、さらに効率的にスリーブシリンダ41の内周面に導電グリスを塗布することが可能となる。このようにして、本実施例においても、スリーブシリンダ41の内周面(摺動面)と、支持部材48の外周面(摺動面)との間の摺動部に、一時容器部48aから開口48dを介して導電グリスを塗布することが可能となる。
【0030】
本実施例によれば、実施例1で説明した効果に加えて次のような効果を得ることができる。すなわち、潤滑剤の量や、スリーブシリンダ41に対する軸方向における潤滑剤供給位置を、実施例1に比べて、より安定させることができ、これにより、より確実な摺動性、電気的導通性を得ることができる。
【0031】
ここで、押し部材48eを押し込むのはプロセスカートリッジBの組立て完成後である必要はなく、現像スリーブユニット40の組立後であればよい。そのため、プロセスカートリッジ組立工程において、潤滑剤塗布の時期を選べるため、工程全体の効率を考慮しながらの実施も可能となり、組立て効率の向上が可能となる。
また、本実施例では、封止部材48b、押し部材48e及びバネ部材48cにより押圧手段を構成しているが、これに限るものでない。すなわち、押圧手段は、一時容器部48a内の潤滑剤を押圧することで、開口48dを介して、スリーブシリンダ41の内周面と支持部材48の外周面との間の摺動部に潤滑剤を供給できるものであればよい。
また、感光体ドラム1が円筒状の回転部材である場合においても、上述したような、円筒状の回転部材としてスリーブシリンダ41を用いた場合に適用した支持部材と同様な支持部材を採用することができる。
なお、上述した実施例1,2では、円筒状の回転部材としてスリーブシリンダ41、感光体ドラム1を適用した場合について説明したが、円筒状の回転部材は、これらに限るものではない。電子写真画像形成装置に備えられる円筒状の回転部材において、支持部材がこの回転部材における軸方向の一端側の内周面を周方向に摺動自在に支持するように構成されているものであれば、本発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
A 電子写真画像形成装置 ; 41 スリーブシリンダ ; 47,48 支持部材
; 47c,48d 開口 ; 47e 中空部 ; 48a 一時容器部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真画像形成装置に備えられる円筒状の回転部材と、前記回転部材における軸方向の一端側の内周面を周方向に摺動自在に支持する支持部材との間の摺動部に対して潤滑剤を供給する潤滑剤供給方法であって、
前記支持部材には、中空部と、前記中空部から前記回転部材の内周面に向けて開口する開口部とが設けられており、
前記支持部材の前記中空部から前記開口部を介して前記摺動部に潤滑剤を供給することを特徴とする潤滑剤供給方法。
【請求項2】
前記中空部には予め潤滑剤が収容され、
前記支持部材には、前記中空部内の潤滑剤を押圧する押圧手段が設けられており、
前記押圧手段が前記中空部内の潤滑剤を押圧することにより、前記摺動部に潤滑剤を供給することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給方法。
【請求項3】
前記押圧手段は、
前記支持部材の外部から押されることで変位する操作部材と、
前記操作部材が前記支持部材の外部から押され変位した場合に、前記中空部内の潤滑剤を押圧する押圧部材と、
を有し、
前記操作部材を押して変位させることで、前記押圧部材により前記中空部内の潤滑剤を押圧して前記摺動部に潤滑剤を供給することを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤供給方法。
【請求項4】
前記支持部材は、前記回転部材の外部に向けて開口する外向開口部であって、前記中空部に連通して設けられた外向開口部を有し、
潤滑剤塗布装置を用いることで、前記外向開口部、前記中空部及び前記開口部を介して前記摺動部に潤滑剤を供給することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給方法。
【請求項5】
電子写真画像形成装置に備えられる円筒状の回転部材における軸方向の一端側の内周面を周方向に摺動自在に支持する支持部材において、
予め潤滑剤が収容されている中空部と、
前記中空部から前記回転部材の内周面に向けて開口する開口部と、
前記中空部から前記開口部を介して、前記回転部材との間の摺動部に潤滑剤を供給するために前記中空部内の潤滑剤を押圧する押圧手段と、
を有することを特徴とする支持部材。
【請求項6】
前記押圧手段は、
外部から押されることで変位する操作部材と、
前記操作部材が外部から押され変位した場合に、前記中空部内の潤滑剤を押圧する押圧部材と、
を有することを特徴とする請求項5に記載の支持部材。
【請求項7】
電子写真画像形成装置に備えられる回転体ユニットであって、
円筒状の回転部材と、
前記回転部材における軸方向の一端側の内周面を周方向に摺動自在に支持する請求項5又は6に記載の支持部材と、
を有することを特徴とする回転体ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−215327(P2011−215327A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82634(P2010−82634)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】