説明

潤滑剤塗布装置

【課題】作業効率を向上させ、且つ、より小型で簡単な構造の潤滑剤塗布装置を提供する。
【解決手段】潤滑剤塗布装置1は、搬送スクリュ11の軸部12の両端に潤滑剤17を自動的に塗布する。潤滑剤塗布装置1は、搬送装置2と、投入部31と、排出部34と、搬送手段37と、塗布装置4と、を有する。搬送手段37には、装置本体2の開口側面20から立板22に向かって下る第一の傾斜面33と、装置本体2の立板22から開口側面20に向かって下る第二の傾斜面36と、が設けられている。塗布装置4は、搬送スクリュ11の軸部12の両端にそれぞれ潤滑剤17を塗布する。搬送スクリュ11は、投入部31から投入されて第一の傾斜面33上を立板22に向かって転がり、塗布装置4に潤滑剤17を塗布され、第二の傾斜面36上を転がって排出部34から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送スクリュの軸部の両端に潤滑剤を自動的に塗布する潤滑剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子複写装置等の画像形成装置は、光走査装置によって静電潜像が形成された感光体ドラムの表面に現像剤(トナーや、トナー及びキャリア)を供給する現像装置を備えている。現像装置は、例えば、トナーカートリッジと、一対の搬送スクリュと、現像ローラと、これらを収容するケーシングと、から構成される。現像剤はトナーカートリッジ内に格納されており、ケーシング内で搬送スクリュによって撹拌されて現像ローラの表面に供給される。そして、現像剤は、感光体ドラムの表面に供給され、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像をトナー像化する。
【0003】
搬送スクリュは、細円柱状の軸部と、軸部の表面に形成された羽根部と、を備えている。搬送スクリュは、軸受け部材を介してケーシングに回転自在に取り付けられる。軸受け部材は、軸受け本体と、シール部材と、を備えている。軸受け本体は略筒状に形成され、内部に軸部を回転自在に収容する。シール部材は円環状に形成されて、軸受け本体の内部に設けられている。シール部材は、軸受け本体の内部へ現像剤が侵入するのを防止する。通常、搬送スクリュを円滑に回転させ且つ回転する際の耐久性を向上させるために、軸部の表面と軸受け部材の内面との間には潤滑剤が塗布されている。
【0004】
従来は、図8に示すように、潤滑剤117は搬送スクリュ111の軸部112に作業者による手作業で塗布されていた。作業者は、搬送スクリュ111を一方の手91で保持し、潤滑剤117が充填されたディスペンサ(図示せず)に連なったバレル142を他方の手92で保持して、バレル142に設けられた吐出ボタン147を押して潤滑剤117を塗布していた。
【0005】
ところで、潤滑剤等の塗布材料を自動的に塗布する塗布装置としては、次のようなものが知られている(例えば、特許文献1ないし4参照)。特許文献1に記載された塗布装置は、貫通孔を有した平板状のトレイと、該トレイから凹に設けられ内部に潤滑剤が塗布された収容部と、該貫通孔を通って昇降自在に設けられたピンと、を備えている。被塗布部材は収容部の上方に載置される。ピンは、上面が収容部の内面と面一になる初期位置と、被塗布部材と略接触する塗布位置と、に亘って昇降する。ピンの上面には、収容部に潤滑剤が塗布される際に同時に潤滑剤が塗布され、ピンを塗布位置に移動させて潤滑剤を被塗布部材に接触するまで押し上げることによって、被塗布部材に潤滑剤を塗布している。
【0006】
特許文献2に記載された塗布装置は、例えば、ボス状の被塗布部材に潤滑剤を塗布する装置であり、昇降自在なノズルユニットに孔を設け、該孔内に予め潤滑剤を吐出しておき、該孔内に突起を挿入することによって、突起に潤滑剤を塗布している。
【0007】
特許文献3及び4に記載された塗布装置は、微小な被塗布部材に銀ペースト等の塗布材料を塗布する装置であり、高精度位置決めが可能な支持部材に被塗布部材を固定し、鉛直方向もしくは傾斜して配置され且つ被塗布部材に接離自在に設けられたニードルから塗布材料を吐出して、該被塗布部材に塗布材料を塗布している。
【特許文献1】特開平11−173496号公報
【特許文献2】特開平9−239305号公報
【特許文献3】特開平10−5657号公報
【特許文献4】特開平11−8499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一本の搬送スクリュは二箇所(軸部の両端)に潤滑剤を塗布する必要があり、前述したように潤滑剤塗布作業を作業者による手作業によって行う場合、一方の端部に塗布した後、搬送スクリュを反転させて他方の端部に塗布していた。また、一つの現像装置には二本の搬送スクリュが設けられることもあり、その場合は作業者は一工程内で四箇所に潤滑剤を塗布しなければならず、作業効率が悪化していた。
【0009】
また、潤滑剤塗布後の軸部への軸受け部材の組み付けも同工程内で行われているが、潤滑剤の塗布と同様に四箇所を行わなければならず、作業効率がさらに悪化していた。そして、この工程中は、作業者は一方の手で常に搬送スクリュを保持していなければならず、工数の増加を引き起こしていた。
【0010】
また、前述した特許文献1ないし4等に記載された潤滑剤等の塗布材料を自動的に塗布する塗布装置では、塗布材料が吐出されるノズルユニットやニードル、もしくは被塗布部材が電力やエア等の動力によって動いており、塗布装置が大型化、複雑化する傾向にあった。さらに、このような動力で動かすことによって、塗布装置を取り扱う作業者の身体等を可動部が巻き込む虞があり、またこのような事故を防止するための安全センサ等が別途必要になり、さらに装置が大型化、複雑化し、高価なものになることが考えられる。
【0011】
したがって、本発明は、作業効率を向上させ、且つ、より小型で簡単な構造の潤滑剤塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された本発明は、箱本体と、前記箱本体の一方の上端又は上端近傍に設けられた搬送スクリュを投入する投入部と、前記箱本体の一方の下端又は下端近傍に設けられた前記搬送スクリュを排出する排出部と、前記投入部と前記排出部とに亘って前記搬送スクリュを搬送する搬送手段と、を有する潤滑剤塗布装置において、(イ)前記搬送手段によって搬送される前記搬送スクリュの軸部の両端にそれぞれ潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段が設けられ、(ロ)前記搬送手段には、前記箱本体の一方から他方に下る第一の傾斜面と、前記箱本体の他方から一方に下る第二の傾斜面と、が設けられていることを特徴とした潤滑剤塗布装置である。
【0013】
請求項2に記載された本発明は、請求項1に記載された潤滑剤塗布装置において、前記第一の傾斜面の勾配が、5°〜10°とされていることを特徴とした潤滑剤塗布装置である。
【0014】
請求項3に記載された本発明は、請求項1または請求項2に記載された潤滑剤塗布装置において、前記第二の傾斜面の勾配が、15°〜30°とされていることを特徴とした潤滑剤塗布装置である。
【0015】
請求項4に記載された本発明は、請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載された潤滑剤塗布装置において、前記潤滑剤塗布手段には、前記潤滑剤を吐出する金属性部材から形成されたノズルが設けられ、そして、前記ノズルの先端と前記軸部の表面との間隙が、0.1〜0.5mmとされていることを特徴とした潤滑剤塗布装置である。
【0016】
請求項5に記載された本発明は、請求項4に記載された潤滑剤塗布装置において、前記ノズルの先端には、弾性部材から形成されたノズルカバーが設けられ、そして、前記ノズルカバーの先端と前記軸部の表面との間隙が、0より大きく0.1mm未満とされていることを特徴とした潤滑剤塗布装置である。
【0017】
請求項6に記載された本発明は、請求項1ないし請求項5のうちいずれか一項に記載された潤滑剤塗布装置において、前記潤滑剤が塗布された前記搬送スクリュの通過を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記潤滑剤塗布手段の前記潤滑剤を吐出するタイミングを制御する制御手段と、が設けられていることを特徴とした潤滑剤塗布装置である。
【0018】
請求項7に記載された本発明は、請求項1ないし請求項6のうちいずれか一項に記載された潤滑剤塗布装置において、前記排出部には、排出された前記搬送スクリュを収容する溝状の受け部が設けられていることを特徴とした潤滑剤塗布装置である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1に記載された本発明は、搬送手段によって搬送される搬送スクリュの軸部の両端にそれぞれ潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段が設けられ、搬送手段には、箱本体の一方から他方に下る第一の傾斜面と、箱本体の他方から一方に下る第二の傾斜面と、が設けられているので、搬送スクリュを投入部に置くだけで、搬送スクリュは第一の傾斜面を自重で転がり、軸部に潤滑剤を塗布されて第二の傾斜面上を転がって排出部から排出される。したがって、複数箇所への潤滑剤塗布作業の効率を向上させることができる。また、搬送スクリュを動かす動力が必要ないので、潤滑剤塗布装置を取り扱う作業者の身体等を可動部が巻き込むことがなく、このような事故を防止するための安全センサ等が必要なくなる。したがって、潤滑剤塗布装置を小型化、簡略化及び安価なものにすることができる。
【0020】
請求項2に記載された本発明は、第一の傾斜面の勾配が、5°〜10°とされているので、搬送スクリュは投入部から投入された後に引っ掛かることなく安定して第一の傾斜面上を転がって確実に潤滑剤塗布手段近傍に到達することができ、確実に軸部に潤滑剤を塗布することができる。
【0021】
請求項3に記載された本発明は、第二の傾斜面の勾配が、15°〜30°とされているので、搬送スクリュは引っ掛かることなく安定して第二の傾斜面上を転がって確実に排出部から排出される。さらに、勾配が最大でも30°とされているので、潤滑剤塗布装置の上下方向の大きさへの影響が小さく、潤滑剤塗布装置の大型化を抑制することができる。
【0022】
請求項4に記載された本発明は、潤滑剤塗布手段には、潤滑剤を吐出する金属性部材から形成されたノズルが設けられ、そして、ノズルの先端と軸部の表面との間隙が、0.1〜0.5mmとされているので、ノズルと軸部とが接触することがなく、軸部に傷や打痕をつけることなく潤滑剤を塗布することができる。
【0023】
請求項5に記載された本発明は、ノズルの先端には、弾性部材から形成されたノズルカバーが設けられ、そして、ノズルカバーの先端と軸部の表面との間隙が、0より大きく0.1mm未満とされているので、ノズルカバーと軸部とが接触しても軸部に傷や打痕をつけることがなく、ノズルカバーと軸部との間隙を小さくしてより確実に軸部に潤滑剤を塗布することができる。
【0024】
請求項6に記載された本発明は、潤滑剤が塗布された搬送スクリュの通過を検知する検知手段と、検知手段の検知結果に基づいて潤滑剤塗布手段の潤滑剤を吐出するタイミングを制御する制御手段と、が設けられているので、潤滑剤が塗布された搬送スクリュが排出された後に、人手を介さずに自動で次の搬送スクリュに塗布される潤滑剤を吐出することができる。
【0025】
請求項7に記載された本発明は、排出部には、排出された搬送スクリュを収容する溝状の受け部が設けられているので、排出された搬送スクリュが潤滑剤塗布装置から落下するのを防止することができる。また、排出された搬送スクリュを確実に収容することによって、検知手段の誤作動、即ち、排出部から排出された搬送スクリュが再び検知手段に検知されること、を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の第一の実施形態にかかる潤滑剤塗布装置1を図1ないし図5を参照して説明する。本発明の第一の実施形態にかかる潤滑剤塗布装置1は、図1に示すように、搬送スクリュ11の軸部12の両端にシリコーンオイル、シリコーングリス等の潤滑剤17を自動的に塗布する際に用いられる。
【0027】
搬送スクリュ11は、電子複写装置等の画像形成装置に組み込まれる現像装置を構成する。現像装置は、例えば、トナーカートリッジと、一対の搬送スクリュ11と、現像ローラと、これらを収容するケーシングと、から構成される。現像剤は、トナーカートリッジ内に格納されており、ケーシング内で搬送スクリュ11によって撹拌されて現像ローラの外周面に供給される。搬送スクリュ11は、図1等に示すように、軸部12と、軸部12の表面に設けられた羽根部13と、を備えている。
【0028】
軸部12は、金属性部材や合成樹脂等からなり、細円柱状に形成されている。軸部12は、搬送スクリュ11が回転する際の回転中心となる。軸部12の両端の表面には潤滑剤17が塗布されて、搬送スクリュ11が円滑に回転するとともに軸部12の耐久性が向上する。
【0029】
羽根部13は、金属性部材や合成樹脂等からなり、平面形状が矩形状に形成されている。羽根部13は、軸部12の両端近傍を除いた外周面に設けられ、該外周面から立設されている。羽根部13は、互いの間に軸部12の軸心を位置付けるように一対設けられている。そして、この一対の羽根部13は、軸部12の長手方向に沿って互いに等間隔をあけて複数設けられている。これら複数の羽根部13は、互いに同形状に形成されている。搬送スクリュ11が傾斜面に置かれると、搬送スクリュ11は、羽根部13の先端を傾斜面と接触させて自重によって傾斜面上を転がり落ちる。なお、羽根部13の形状はこれに限らず、例えば軸部12の表面に螺旋状に形成されていてもよい。
【0030】
前述した構成の搬送スクリュ11は、潤滑剤17が塗布された軸部12の両端が軸受け部材14に収容されて支持され、軸受け部材14がケーシングに取り付けられて、ケーシングに回転自在に取り付けられる。軸受け部材14によって、搬送スクリュ11は軸部12を中心として円滑に回転する。軸受け部材14は、図4に示すように、軸受け本体15と、シール部材16と、を備えている。軸受け本体15は略筒状に形成され、内部に軸部12を回転自在に収容する。
【0031】
シール部材16は、ゴム等の弾性部材からなり、円環状に形成されている。シール部材16は、軸受け本体15の内部に設けられ、軸受け本体15の内部に挿入される軸部12の表面と接触するように設けられている。シール部材16は、軸受け本体15の内部へ現像剤が侵入するのを防止する。
【0032】
潤滑剤塗布装置1は、図2に示すように、装置本体10(図5)と、箱本体としての搬送装置2と、搬送スクリュ11を投入する投入部31と、搬送スクリュ11を排出する排出部34と、搬送スクリュ11を搬送する搬送手段37と、潤滑剤塗布手段としての塗布装置4と、検知手段としてのセンサ5と、制御手段としての制御装置6と、を備えている。
【0033】
装置本体10は、例えば、平板状に形成され、作業台上等に載置される。装置本体10上には、搬送装置2と、塗布装置4と、制御装置6と、が載置される。
【0034】
搬送装置2は、金属板を溶接する等して形成される。搬送装置2は、図2等に示すように、底板21と、立板22と、一対の側板23と、を備え、上面及び一つの側面20が開口した箱状に形成されている(以下、一つの側面20を開口側面20とよぶ)。
【0035】
底板21は、平板状に形成され、平面形状が矩形状に形成されている。底板21の長手方向の長さは、搬送スクリュ11より長く設けられている。底板21は、搬送装置2の底に配置される。搬送装置2が装置本体10に載置されると、底板21は装置本体10と重なり合うように配置される。
【0036】
立板22は、平板状に形成され、平面形状が矩形状に形成されている。立板22は、底板21の幅方向の一端から立設されている。立板22には、立板22を貫通したノズル取付孔が一対設けられている。ノズル取付孔は、立板22の長手方向の両端近傍に設けられている。ノズル取付孔内には、塗布装置4の後述するノズル44が通って、ノズル44は搬送スクリュ11の軸部12の横部に潤滑剤17を塗布可能な位置に配置される。
【0037】
側板23は、平板状に形成され、平面形状が矩形状に形成されている。側板23は、底板21の長手方向の両端から立設され、且つ、立板22と連なり立板22と直交する。側板23は、それぞれ、互いに間隔をあけて相対し、互いに平行に設けられている。側板23には、それぞれ、センサ5が取り付けられるセンサ取付孔が設けられている。センサ取付孔は、側板23の立板22から離れた端部に設けられている。
【0038】
投入部31は、図2に示すように、搬送装置2の一方としての開口側面20の、上端20a近傍に設けられている。投入部31は、後述する第一の傾斜部32より上側の開口側面20とされている。投入部31には、搬送スクリュ11が投入される。
【0039】
排出部34は、図2に示すように、開口側面20の下端20b近傍に設けられている。排出部34は、後述する第一の傾斜部32より下側の開口側面20とされている。排出部34は、搬送スクリュ11を排出する。排出部34には、受け部としての溝26を有した突出部25が設けられている。
【0040】
突出部25は、図1及び図2等に示すように、底板21の幅方向の他端(立板22から離れた側)に設けられ、底板21の幅方向に突出して設けられている。突出部25は底板21の該他端の中央に一対設けられ、一対の突出部25は互いに間隔をあけて配置されている。突出部25は、突出片25aと、支持片25bと、止め片25cと、保持片25d(図3)と、を備えている。
【0041】
突出片25aは、底板21と一体に形成され、底板21の前述した他端から底板21の幅方向に突出している。突出片25aの上面と、底板21の内面と、は面一である。突出片25aは平面形状が矩形状に形成され、突出片25aの先端は底板21の長手方向と平行である。
【0042】
支持片25bは突出片25aと平行に設けられ、支持片25bの上面は突出片25aの下面と重なり合うように配置されている。支持片25bは平面形状が矩形状に形成され、支持片25bの先端は底板21の長手方向と平行である。支持片25bの先端は、突出片25aの先端よりもさらに底板21の幅方向に突出している。
【0043】
止め片25cは、支持片25bの先端に設けられている。止め片25cは、支持片25bと直交し且つ底板21の長手方向と平行になるように設けられている。止め片25cは、支持片25bの上面側に突出するように配置されている。
【0044】
突出片25aの先端面と、支持片25bの上面と、止め片25cの底板21寄りの外面とは、溝26を形成する。溝26は、突出部25の、底板21の長手方向と平行な方向全体に亘って設けられている。溝26の長手方向は、底板21の長手方向と平行である。溝26の幅は、搬送スクリュ11の外径より大きく設けられている。
【0045】
前述した構成の溝26には、潤滑剤17が塗布されて排出部34から排出された搬送スクリュ11が収容される。搬送スクリュ11が溝26に収容されることによって、排出された搬送スクリュ11が潤滑剤塗布装置1から落下するのを防止することができる。またセンサ5の誤作動、即ち、排出部34から排出された搬送スクリュ11が止め片25cで跳ね返されて再びセンサ5に検知されること、を防止することができる。
【0046】
なお、溝26の深さは、溝26に収容された搬送スクリュ11が排出部34に戻ることなく(突出片25aの厚さを調節する)、且つ、突出部25から落下することがないように(止め片25cの支持片25bからの突出量を調節する)設けられている。突出片25aの厚さと止め片25cの突出量とは、例えば、搬送スクリュ11の半径程度にするとよい。
【0047】
保持片25dは、図3に示すように、それぞれの止め片25cの互いに相対する外面に設けられている。保持片25dは、棒状に設けられ、底板21と平行に設けられている。保持片25dは、溝26の一部を塞ぐように設けられ、溝26に収容された搬送スクリュ11の羽根部13と当接可能に配置されている。保持片25dは、羽根部13と当接することによって、溝26内での搬送スクリュ11の長手方向への一定以上のがたつきを防止する。
【0048】
前述した構成の溝26に搬送スクリュ11が収容されると(図3に示す)、一対の突出部25は底板21の他端の中央に設けられているため、搬送スクリュ11の両端は空間27に露出される。この空間27を利用して、搬送スクリュ11の軸部12に簡単に軸受け部材14を取り付けることができる。作業者は、空間27に両手を入れて、軸部12の両端に同時に軸受け部材14を取り付ける。この際に、搬送スクリュ11の長手方向のがたつきが大きいと作業性が悪いが、前述した保持片25dによって搬送スクリュ11のがたつきが防止され、効率よく且つ正確な位置に確実に軸受け部材14を取り付けることができる。
【0049】
搬送手段37は、投入部31と排出部34とに亘って搬送スクリュ11を搬送する。搬送手段37は、図2に示すように、第一の傾斜部32に設けられた第一の傾斜面33と、第二の傾斜部35に設けられた第二の傾斜面36と、から構成される。搬送スクリュ11は、投入部31から投入されて第一の傾斜面33上を転がり、第二の傾斜面36に向かって落下し、第二の傾斜面36上を転がって排出部34から排出される。
【0050】
第一の傾斜部32は、平板状に形成され、平面形状が矩形状に形成されている。第一の傾斜部32は、一対の側板23の互いに相対する内面同士を連結するように設けられている。第一の傾斜部32は、底板21と互いに間隔をあけて相対するように配置され、側板23の高さ方向の中央近傍に設けられている。第一の傾斜部32の幅は底板21の幅より短く設けられ、第一の傾斜部32の立板22寄りの端部と立板22との間には間隙が形成されている。この間隙は搬送スクリュ11の外径より若干大きく設けられ、該間隙を搬送スクリュ11が通り抜ける。第一の傾斜部32は、開口側面20から立板22に向かうにしたがって底板21に近づく方向に傾斜している。第一の傾斜部32の底板21から離れた外面は、第一の傾斜面33とされている。
【0051】
第一の傾斜面33は、開口側面20から他方としての立板22に向かって下るように設けられている。即ち、第一の傾斜面33は、立板22に近づくにしたがって底板21に近づく方向に傾斜している。投入部31から投入された搬送スクリュ11は、第一の傾斜面33上を転がる。第一の傾斜面33の勾配θ1(水平面からの傾斜角)は、5°〜10°に設けられている。なお、この勾配θ1に関しては、後述する実施例1で検討した。
【0052】
第二の傾斜部35は、底板21の立板22寄りの一端に設けられている。第二の傾斜部35は、第一の傾斜面33から転がり落ちた搬送スクリュ11と接触可能な位置に配置されている。第二の傾斜部35は、断面形状が直角三角形の棒状に形成されている。第二の傾斜部35の三つの外周面のうち、二つは底板21の内面及び立板22の内面と接触している。第二の傾斜部35の残りの一つの外周面は、第二の傾斜面36とされている。
【0053】
第二の傾斜面36は、立板22から開口側面20に向かって下るように設けられている。即ち、第二の傾斜面36は、立板22から離れるにしたがって底板21に近づく方向に傾斜している。搬送スクリュ11は、第二の傾斜面36上を転がって排出される。第二の傾斜面36の勾配θ2は、15°〜30°に設けられている。なお、この勾配θ2に関しては、後述する実施例2で検討した。
【0054】
塗布装置4は、一対設けられ、搬送手段37によって搬送される搬送スクリュ11の軸部12の両端にそれぞれ潤滑剤を塗布する。塗布装置4は、図2等に示すように、ディスペンサ41と、バレル42と、ワンタッチカプラ43aと、ノズル44と、を備えている。
【0055】
ディスペンサ41は、ケーブル71によって制御装置6と電気的に接続され、制御装置6からの制御信号にしたがって所定のタイミングで一定量の空気を吐出する。空気量は、ノズル44の先端から吐出する潤滑剤17の量に応じて予め設定しておく。また、ディスペンサ41はホース72によってバレル42と接続されており、ディスペンサ41が吐出する空気はホース72内を通ってバレル42に伝えられる。
【0056】
バレル42は、水平方向に配置されている。バレル42は、長筒状の本体部と、本体部内と接続された空気投入部及び潤滑剤吐出部と、を備えている。本体部内には、潤滑剤17が充填されている。空気投入部は、本体部の一端に設けられている。空気投入部には前述したホース72が接続され、ディスペンサ41が吐出する空気が本体部内に伝えられる。潤滑剤吐出部は、本体部の他端に設けられている。潤滑剤吐出部は、空気投入部から投入される空気量にしたがって、本体部内から潤滑剤17を吐出する。
【0057】
ワンタッチカプラ43aは、筒状に設けられ、バレル42とノズル44とを接続している。ワンタッチカプラ43aの一端はバレル42の潤滑剤吐出部と接続され、他端はノズル44と接続されている。バレル42の潤滑剤吐出部から吐出された潤滑剤17は、ワンタッチカプラ43a内を通ってノズル44へと送られる。バレル42とノズル44とがワンタッチカプラ43aで接続されることによって、バレル42とノズル44とを簡単に接続、接続解除することができる。そして、例えば、バレル42内の潤滑剤17が空になった際に塗布装置4からバレル42を簡単に取り外して潤滑剤17を充填することができ、メンテナンス性が向上する。
【0058】
ノズル44は、金属性部材から形成され、細円筒状に設けられている。ノズル44の一端は、ワンタッチカプラ43aに接続されている。ノズル44の先端(他端)からは、潤滑剤17が吐出される。ノズル44は、立板22に設けられたノズル取付孔を通って水平方向に配置され、第一の傾斜面33から落下する搬送スクリュ11の軸部12両端の表面に水平方向から潤滑剤17を塗布するように配置されている(これを、「軸部12の横部から潤滑剤17を塗布する」という)。ノズル44の先端と搬送スクリュ11の軸部12の表面との間隙G1は、0.1〜0.5mmとなるように設けられている。このため、潤滑剤17の塗布時にノズル44の先端が軸部12の表面と接触して軸部12に傷や打痕がつくことがない。
【0059】
前述した構成の塗布装置4は、ディスペンサ41から所定のタイミングで空気が吐出されて、該空気はバレル42に伝わりバレル42内の潤滑剤17を吐出する。潤滑剤17はワンタッチカプラ43a内を通ってノズル44の先端から吐出され、搬送スクリュ11の軸部12に塗布される。
【0060】
また、前述した構成の塗布装置4は、バレル42とワンタッチカプラ43aとノズル44とが略直線状になるように組み立てられる。そして、塗布装置4は、図5に示すように、支持部材18によって装置本体10に対して水平になるように固定される。支持部材18は、断面形状がL字状に形成され、一対設けられている。一方の支持部材18の一端は装置本体10に固定され、他端はバレル42の端末を支持する。他方の支持部材18の一端は装置本体10に固定され、他端はワンタッチカプラ43aを支持する。本実施形態においては、塗布装置4のノズル44は、軸部12の横部に潤滑剤17を塗布するように設置されている。
【0061】
センサ5は、図1に示すように、一対設けられている。センサ5は、搬送装置2のそれぞれの側板23に設けられたセンサ取付孔に取り付けられる。センサ5は、側板23の立板22から離れた端部、且つ、底板21からの距離が少なくとも搬送スクリュ11の外径より低い位置に取り付けられる。一対のセンサ5は、互いに相対するように配置される。センサ5は、それぞれ、ケーブル73によって制御装置6と電気的に接続されている。センサ5は、潤滑剤17が塗布された搬送スクリュ11が互いの間を通過するのを検知する。センサ5の検知結果(検知信号)は、ケーブルを介して電気信号として制御装置6に伝達される。
【0062】
センサ5には、例えば、遮光型のフォトインタラプタを用いることができる。この場合、一方のセンサ5を発光素子が設けられた発光部とし、他方のセンサ5を受光素子が設けられた受光部とする。搬送スクリュ11がセンサ5の前を通過して排出部34から排出されると発光部からの光が遮られ、この遮りを受光部で検知することによって、搬送スクリュ11が排出されたことを検知することができる。センサ5は、勿論、フォトインタラプタ以外のものでもよい。
【0063】
制御装置6は、プリント基板に実装された電気回路と、プリント基板を収容するケース本体と、を少なくとも備えている。電気回路は、センサ5の検知信号を受信するとともに、塗布装置4のディスペンサ41に制御信号を発信するように形成されている。制御装置6は、ディスペンサ41及びセンサ5とそれぞれケーブル71、73によって電気的に接続されている。制御装置6は、センサ5の検知信号に基づいて塗布装置4の潤滑剤17を吐出するタイミングを制御する。即ち、制御装置6は、センサ5からの検知信号を受信した後に、所定の間隔をあけてディスペンサ41に制御信号を送ることによって、次に投入される搬送スクリュ11に塗布される潤滑剤17をノズル44から吐出するタイミングを制御する。
【0064】
この、タイミングを制御する、とは、例えば、検知信号を受信後に直ちに制御信号を発信するようにしてもよいし、後述するように潤滑剤17が低粘度の場合には、潤滑剤17がノズル44の先端に吐出された状態が短くなるように検知信号を受信後に一定時間をおいて制御信号を発信してもよく、自由に設定することができる。この制御信号によって、塗布装置4は次に投入される搬送スクリュ11の軸部12に塗布する潤滑剤17をノズル44の先端に吐出する。
【0065】
前述した潤滑剤塗布装置1を用いて搬送スクリュ11の軸部12の両端に潤滑剤17を塗布する際には、まず、制御装置6もしくはディスペンサ41を操作して、ノズル44の先端に潤滑剤17を吐出しておく(初回のみ)。そして、搬送スクリュ11を投入部31の第一の傾斜面33上に置く。第一の傾斜面33には5°〜10°の勾配θ1が設けられているので、搬送スクリュ11は自重で第一の傾斜面33上を転がっていく。
【0066】
第一の傾斜面33から転がり落ちた搬送スクリュ11は、軸部12の両端が塗布装置4のノズル44の先端近傍を通過して、軸部12に潤滑剤17が塗布される。そして、搬送スクリュ11は第二の傾斜面36に到達する。第二の傾斜面36には15°〜30°の勾配θ2が設けられているので、搬送スクリュ11は第二の傾斜面36上を転がり、余力で底板21の内面上を転がって、センサ5の前を通過して排出部34から排出される。
【0067】
この時、センサ5は搬送スクリュ11の通過を検知し、検知信号を制御装置6に発信する。検知信号を受信した制御装置6は、所定のタイミングで塗布装置4に制御信号を送信する。塗布装置4のディスペンサ41は制御信号を受信して制御信号にしたがって一定量の空気を吐出する。ディスペンサ41からの空気によって、ノズル44の先端には次に投入される搬送スクリュ11に塗布される潤滑剤17が自動で吐出される。
【0068】
センサ5の前を通過した搬送スクリュ11は、突出部25の溝26に収容される。溝26に収容された搬送スクリュ11の軸部12の両端に手作業で軸受け部材14を取り付けた後に、搬送スクリュ11を溝26から取り出す。そして、次の搬送スクリュ11を投入部31に投入する。
【0069】
本実施形態によれば、搬送手段37によって搬送される搬送スクリュ11の軸部12の両端にそれぞれ潤滑剤17を塗布する塗布装置4が設けられ、搬送手段37には、搬送装置2の開口側面20から立板22に向かって下る第一の傾斜面33と、搬送装置2の立板22から開口側面20に向かって下る第二の傾斜面36と、が設けられているので、搬送スクリュ11を投入部31に置くだけで、搬送スクリュ11は第一の傾斜面33を自重で転がり、潤滑剤17を塗布されて排出部34から排出される。したがって、複数箇所への潤滑剤塗布作業の効率を向上させることができる。また、搬送スクリュ11を動かす動力が必要ないので、潤滑剤塗布装置1を取り扱う作業者の身体等を可動部が巻き込むことがなく、このような事故を防止するための安全センサ等が必要なくなる。したがって、潤滑剤塗布装置1を小型化、簡略化及び安価なものにすることができる。
【0070】
第一の傾斜面33の勾配θ1が、5°〜10°とされているので、搬送スクリュ11は投入部31から投入された後に引っ掛かることなく安定して第一の傾斜面33上を転がって確実にノズル44近傍に到達することができ、確実に軸部12に潤滑剤17を塗布することができる。
【0071】
第二の傾斜面36の勾配θ2が、15°〜30°とされているので、搬送スクリュ11は引っ掛かることなく安定して第二の傾斜面36上を転がって確実に排出部34から排出される。さらに、勾配θ2が最大でも30°とされているので、潤滑剤塗布装置1の上下方向の大きさへの影響が小さく、潤滑剤塗布装置1の大型化を抑制することができる。
【0072】
塗布装置4には、潤滑剤17を吐出する金属性部材から形成されたノズル44が設けられ、そして、ノズル44の先端と軸部12の表面との間隙G1が、0.1〜0.5mmとされているので、ノズル44と軸部12とが接触することがなく、軸部12に傷や打痕をつけることなく潤滑剤17を塗布することができる。
【0073】
潤滑剤17が塗布された搬送スクリュ11の通過を検知するセンサ5と、センサ5の検知結果に基づいて塗布装置4の潤滑剤17を吐出するタイミングを制御する制御装置6と、が設けられているので、潤滑剤17が塗布された搬送スクリュ11が排出された後に、人手を介さずに自動で次の搬送スクリュ11に塗布される潤滑剤17を吐出することができる。
【0074】
排出部34には、排出された搬送スクリュ11を収容する溝26が設けられているので、排出された搬送スクリュ11が潤滑剤塗布装置1から落下するのを防止することができる。また、排出された搬送スクリュ11を確実に収容することによって、センサ5の誤作動、即ち、排出部34から排出された搬送スクリュ11が再びセンサ5に検知されること、を防止することができる。
【0075】
次に、本発明の第二の実施形態にかかる潤滑剤塗布装置1を図6及び図7を参照して説明する。なお、前述した第一の実施形態と同一構成分には、同一符号を付して説明を省略する。本実施形態の潤滑剤塗布装置1は、図6及び図7に示すように、塗布装置4のノズル44が、軸部12両端の表面に上側から潤滑剤17を塗布するように配置されている(これを、「軸部12の上部から潤滑剤17を塗布する」という)。
【0076】
搬送装置2には、塗布装置4を保持する上板24が設けられている。上板24は、平板状に形成され、平面形状が矩形状に形成されている。上板24の長手方向の長さは、底板21の長手方向の長さと等しく形成されている。上板24の幅方向の長さは底板21の幅方向の長さより短く形成されている。上板24は、立板22及び一対の側板23と連なるように設けられている。上板24と底板21とは、互いに間隔をあけて相対し、互いに平行に設けられている。
【0077】
上板24には、上板24を貫通したノズル取付孔が設けられている。ノズル取付孔は、上板24の長手方向の端部に設けられている。ノズル取付孔内にはノズル44が通って、ノズル44は鉛直方向に配置され、第一の傾斜面33上を転がる搬送スクリュ11の軸部12両端の表面に上側から潤滑剤17を塗布するように配置されている。
【0078】
ワンタッチカプラ43bは、L字状に屈曲した筒状に設けられ、バレル42とノズル44とを接続している。ワンタッチカプラ43bの一端はバレル42の潤滑剤吐出部と接続され、他端はノズル44と接続されている。L字状のワンタッチカプラ43bを用いることによって、バレル42を水平方向に保ったまま、軸部12の上部に潤滑剤17を塗布可能な位置にノズル44を配置することができる。
【0079】
ノズル44は、第一の実施形態のように単独で用いられてもよく、図6に示すように、ノズル44の先端と搬送スクリュ11の軸部12の表面との間隙G1は、0.1〜0.5mmとなるように設けられている。また、図7に示すように、ノズル44の先端には、ノズルカバー45が設けられていてもよい。ノズルカバー45は、ゴム等の弾性部材から形成され、細円筒状に設けられている。ノズルカバー45の先端と軸部12の表面との間隙G2は、0.1mm未満となるように設けられている。
【0080】
ノズル44の先端から吐出された潤滑剤17は、ノズルカバー45内を通ってノズルカバー45の先端から吐出され、搬送スクリュ11の軸部12に塗布される。ノズルカバー45は弾性部材から形成されているので、潤滑剤17の塗布時に軸部12と接触しても軸部12に傷や打痕がつくことはなく、前述のようにノズルカバー45の先端を軸部12の表面に十分近づけて潤滑剤17を確実に塗布することができる。
【0081】
本実施形態においては、第一の実施形態の効果に加え、ノズル44の先端には、弾性部材から形成されたノズルカバー45が設けられ、そして、ノズルカバー45の先端と軸部12の表面との間隙G2が、0より大きく0.1mm未満とされているので、ノズルカバー45と軸部12とが接触しても軸部12に傷や打痕をつけることがなく、ノズルカバー45と軸部12の表面との間隙G2を小さくしてより確実に軸部12に潤滑剤17を塗布することができる。
【0082】
前述した第一及び第二の実施形態においては、第二の傾斜部35及び第二の傾斜面36は、底板21の幅方向の一端(立板22寄り)から底板21の幅方向中央近傍まで設けられていた。しかしながら、第二の傾斜部35及び第二の傾斜面36は、底板21の幅方向全体に亘って形成されていてもよい。
【0083】
また、前述した第二の実施形態においては、ノズル44にノズルカバー45が設けられていた。しかしながら、本発明においては、勿論、第一の実施形態のノズル44にノズルカバー45が設けられていてもよい。
【0084】
(実施例1)
前述した第一の実施形態に記載された潤滑剤塗布装置を組み立てて、第一の傾斜面33の勾配θ1を表1に示すように変化させ、搬送スクリュ11の転がり易さを比較した。表1に示すように、勾配θ1が5°未満の場合(例えば2°)、勾配θ1が小さすぎて投入される搬送スクリュ11が転がりにくくなる。また、勾配θ1が10°より大きい場合(例えば20°)、搬送スクリュ11が転がる速度が大きくなりすぎて、第二の傾斜面36上を転がりにくくなって排出される搬送スクリュ11が転がりにくくなる。勾配θ1が5°〜10°の場合、良好な結果が得られた。
【0085】
【表1】

【0086】
(実施例2)
前述した第一の実施形態に記載された潤滑剤塗布装置を組み立てて、第二の傾斜面36の勾配θ2を表2に示すように変化させ、搬送スクリュ11の転がり易さを比較した。表2に示すように、勾配θ2が15°未満(例えば10°)の場合、勾配θ2が小さすぎて排出される搬送スクリュ11が転がりにくくなる。また、勾配θ2が30°より大きい(例えば45°)の場合、搬送スクリュ11が転がりにくくなることはないが、第二の傾斜面36が水平方向に一定の長さを保持しなければならないため、第二の傾斜部35を鉛直方向に延伸させることになって潤滑剤塗布装置1が大型化してしまう。勾配θ2が15°〜30°の場合、良好な結果が得られた。
【0087】
【表2】

【0088】
(実施例3)
前述した第一の実施形態においては、塗布装置4のノズル44が軸部12の横部に潤滑剤17を塗布するように設置された潤滑剤塗布装置1を説明した。また、前述した第二の実施形態においては、塗布装置4のノズル44(又はノズルカバー45)が軸部12の上部に潤滑剤17を塗布するように設置された潤滑剤塗布装置1を説明した。さらには、塗布装置4のノズル44が軸部12の下部に潤滑剤17を塗布するように設置することも可能である。このノズル44の設置位置に関して、軸部12の横部、上部及び下部に潤滑剤17を塗布するように設置された潤滑剤塗布装置1をそれぞれ組み立てて、ノズル44の設置位置の位置出し、ノズル44から吐出される潤滑剤17の塗布量、及び、潤滑剤17の粘度への対応性、について検討した。
【0089】
ノズル44の設置位置の位置出しに関しては、表3に示すように、軸部12の上部や下部に潤滑剤17を塗布するようにノズル44を設置する場合は、塗布する際の搬送スクリュ11は第一の傾斜面33上や底板21の内面上を転がっており、上下方向の動きはほどんどないのでノズル44の先端と軸部12との間隙が変化せず、比較的容易にノズル44の設置位置の位置出しが可能になる。一方、軸部12の横部に潤滑剤17を塗布するようにノズル44を設置する場合は、塗布する際の搬送スクリュ11は第一の傾斜面33から第二の傾斜面36へと落下する間であるので、ノズル44の先端と軸部12との間隙が変化する虞があり、ノズル44の設置位置の位置出しは上部や下部と比較すると若干困難になる。
【0090】
ノズル44から吐出される潤滑剤17の塗布量に関しては、表3に示すように、軸部12の上部や横部に潤滑剤17を塗布するようにノズル44を設置する場合は、ノズル44の先端から吐出される潤滑剤17は重力にしたがって吐出されることになり、潤滑剤17の塗布量の変動が小さい。一方、軸部12の下部に潤滑剤17を塗布するようにノズル44を設置する場合は、ノズル44は上向きに設置されて潤滑剤17は重力に逆らって吐出されることになり、潤滑剤17の塗布量の変動が大きくなる虞がある。
【0091】
【表3】

【0092】
潤滑剤17の粘度への対応性に関しては、表4に示すように、潤滑剤17が低粘度(例えば、シリコーンオイル等)の場合は、ノズル44の先端に吐出された潤滑剤17がノズル44の先端に保持されにくい。ノズル44を軸部12の横部や下部に潤滑剤17を塗布するように設置すると、ノズル44の先端から潤滑剤17が流れてしまって軸部12に塗布できなくなる虞があり、ノズル44の軸部12の上部に潤滑剤17を塗布するように設置することが望ましい。一方、潤滑剤17が高粘度(例えば、シリコーングロス等)の場合は、ノズル44の先端に吐出された潤滑剤17はノズル44の先端に保持されやすく、ノズル44を軸部12の横部や下部に潤滑剤17を塗布するように設置することが可能である。
【0093】
【表4】

【0094】
(実施例4)
前述した第一の実施形態に記載された潤滑剤塗布装置を組み立てて、潤滑剤17の粘度によるノズル44からの潤滑剤17の吐出のタイミングについて検討した。潤滑剤17が低粘度の場合は、ノズル44の先端に吐出された潤滑剤17がノズル44の先端に保持されにくい。潤滑剤17のノズル44の先端からの流れを最小限にするために、ノズル44の先端に潤滑剤17を吐出するタイミングは、表5に示すように、前回の塗布直後よりも次回の塗布直前が望ましい。一方、潤滑剤17が高粘度の場合、ノズル44の先端に吐出された潤滑剤17はノズル44の先端に比較的保持されやすいので、潤滑剤17を吐出するタイミングは考慮しなくてもよい。
【0095】
【表5】

【0096】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる潤滑剤塗布装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示された潤滑剤塗布装置の断面図である。
【図3】図1に示された搬送スクリュが溝に収容された状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示された軸受け部材を拡大して示す断面図である。
【図5】図2に示された塗布装置が装置本体に固定された状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態にかかる潤滑剤塗布装置を示す断面図である。
【図7】図6に示されたノズルがノズルカバーを有した状態を示す断面図である。
【図8】従来の潤滑剤塗布作業を示す概略図である。
【符号の説明】
【0098】
1 潤滑剤塗布装置
2 搬送装置(箱本体)
4 塗布手段(潤滑剤塗布手段)
5 センサ(検知手段)
6 制御装置(制御手段)
11 搬送スクリュ
12 軸部
17 潤滑剤
20 開口側面(一方)
20a 上端
20b 下端
22 立板(他方)
26 溝(受け部)
31 投入部
33 第一の傾斜面
34 排出部
36 第二の傾斜面
37 搬送手段
44 ノズル
45 ノズルカバー
θ1 第一の傾斜面の勾配
θ2 第二の傾斜面の勾配
G1 ノズルの先端と軸部の表面との間隙
G2 ノズルカバーの先端と軸部の表面との間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体と、前記箱本体の一方の上端又は上端近傍に設けられた搬送スクリュを投入する投入部と、前記箱本体の一方の下端又は下端近傍に設けられた前記搬送スクリュを排出する排出部と、前記投入部と前記排出部とに亘って前記搬送スクリュを搬送する搬送手段と、を有する潤滑剤塗布装置において、
(イ)前記搬送手段によって搬送される前記搬送スクリュの軸部の両端にそれぞれ潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段が設けられ、
(ロ)前記搬送手段には、前記箱本体の一方から他方に下る第一の傾斜面と、前記箱本体の他方から一方に下る第二の傾斜面と、が設けられている
ことを特徴とする潤滑剤塗布装置。
【請求項2】
前記第一の傾斜面の勾配が、5°〜10°とされていることを特徴とする請求項1記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項3】
前記第二の傾斜面の勾配が、15°〜30°とされていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項4】
前記潤滑剤塗布手段には、前記潤滑剤を吐出する金属性部材から形成されたノズルが設けられ、そして、前記ノズルの先端と前記軸部の表面との間隙が、0.1〜0.5mmとされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項5】
前記ノズルの先端には、弾性部材から形成されたノズルカバーが設けられ、そして、前記ノズルカバーの先端と前記軸部の表面との間隙が、0より大きく0.1mm未満とされていることを特徴とする請求項4記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項6】
前記潤滑剤が塗布された前記搬送スクリュの通過を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記潤滑剤塗布手段の前記潤滑剤を吐出するタイミングを制御する制御手段と、が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか一項に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項7】
前記排出部には、排出された前記搬送スクリュを収容する溝状の受け部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちいずれか一項に記載の潤滑剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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