説明

潤滑剤成形物、潤滑剤塗布装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】潤滑剤を像担持体上に長期間にわたり安定して供給する潤滑剤成形物を低コストで提供する。
【解決手段】潜像を担持する像担持体の表面に微粉末状で塗布される潤滑剤31を主成分として含有する潤滑剤成形物6bにおいて、ガリウム31が含有されているものとする。前記潤滑剤31は、好ましくは、メラミンシアヌレート、ポリテトラフッ化エチレン、及び、窒化ホウ素から選ばれる1種の潤滑性物質、又は、パラフィン、及び、ポリエチレンから選ばれる1種のワックスから構成されている。前記潤滑剤成形物は、好ましくは、棒状に圧縮成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用の像担持体の表面に塗布する潤滑剤成形物、その潤滑剤成形物を電子写真用の像担持体の表面に塗布する潤滑剤塗布装置、その潤滑剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、及び、その潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置は、像担持体を備えていて、像担持体の表面の放電によって電荷を与えて帯電させ、この帯電した像担持体の表面を露光して静電潜像を形成し、この像担持体の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して可視像を形成し、この像担持体の表面に形成された可視像を転写紙の表面に転写し、そして、この転写紙の表面に転写された可視像を定着して排出する。このような画像形成装置においては、可視像を転写した後の像担持体の表面に未転写のトナー等を含む付着物が残留するので、像担持体の表面は、これらの付着物が画像形成に悪い影響を与えないように、クリーニング装置でクリーニングされ、次の画像形成プロセスに備えられる。このようなクリーニング装置としては、ゴム等の弾性体からなるクリーニングブレードや合成樹脂からなる繊維を用いて形成したクリーニングブラシを像担持体の表面に摺擦させて、未転写トナー等の付着物を除去するのが一般的に知られている。特に、クリーニングブレードによるクリーニング装置は、クリーニング性能の安定性やコスト面で広く普及している。
【0003】
しかしながら、これらのクリーニングブレードは、像担持体との摺擦を続けると経時で磨耗して欠けや変形を起こすので、クリーニング性能が低下するという問題があった。また、像担持体の表面も磨耗するので、像担持体の寿命が短くなるという問題もあった。
【0004】
近年、画像形成装置の分野においては、画像を高画質化する要求が高まっている。特に高精細なカラー画像の形成を実現するために、トナーの小粒径化及び球形化が進められている。トナーを小粒径化すると、ドットの再現性が良好になり、また、トナーを球形化すると、現像性及び転写性の向上を図ることができる。しかしながら、このようなトナーの小粒径化及び球形化によって、トナーのクリーニング性は、一層、難しくなってきている。また、クリーニング部材(クリーニングブレード)と像担持体との摺擦により、像担持体の表面も摩耗するので、像担持体の寿命も短くなる。そこで、像担持体の表面に潤滑剤を塗布して、像担持体とクリーニング部材との間に働く摩擦抵抗を低減することにより、クリーニング部材と像担持体との摩耗等による不具合を解消している。また、像担持体の表面に潤滑剤を塗布すると、像担持体の表面の摩擦係数が低下するので、トナーに外添される流動性付与剤、帯電制御剤等の添加剤がクリーニング部材との当接圧で像担持体の表面に固着する、という問題(いわゆる、フィルミングが発生する、という問題)の発生を防止することができる。さらに、像担持体の表面におけるトナーの付着力が低減されるので、像担持体上に形成されたトナー像の転写性が向上する。
【0005】
像担持体の表面に潤滑剤を塗布する手段としては、例えば、次のような装置がある。即ち、脂肪酸金属塩等の潤滑剤を棒状に成型した固形潤滑剤を設置し、この固形潤滑剤と像担持体の両方に当接するようにブラシローラ(潤滑剤供給部材)を備えるものである。この塗布手段によれば、ブラシローラが回転駆動することにより、固形潤滑剤がブラシローラの摺擦により削られて粉体となってブラシローラの繊維に付着し、そのブラシローラに付着した粉体状の潤滑剤が像担持体の表面に塗布されるようになっている。
【0006】
像担持体の表面に塗布される潤滑剤の量が、少なすぎると、潤滑剤が十分に塗布される部分と塗布されない部分とができるので、塗布ムラが生じたり、十分に潤滑剤が塗布されていない部分にクリーニング不良や像担持体の偏摩耗が発生したりする。また、像担持体上に前述のフィルミングが発生して、その部分にトナーが現像されない、といった問題も発生する。一方、潤滑剤の塗布量が多すぎると、像担持体の表面と近接する帯電ローラの表面を汚染したり、像担持体上の塗布量のムラが顕著に現れたりして、ハーフトーンなどの画像にムラが生じる。また、高温高湿の環境下で潤滑剤が吸湿することにより、像担持体表面に形成する静電潜像が流れ、画像ボケを発生させてしまう。それ故、像担持体の表面に適切な量の潤滑剤を塗布することが重要である。
【0007】
前記潤滑剤の材料としては、従来から脂肪酸金属塩、特にステアリン酸亜鉛が一般的に知られている。このステアリン酸亜鉛を前述のように適正な量塗布すると、AC帯電ハザードによる像担持体の劣化現象を防ぐことができ、また、クリーニングブレードとの摺擦による像担持体の摩耗を低減させるができ、それらのために、像担持体の寿命を向上させることができるが、その反面、クリーニングブレードの摩耗促進や帯電ローラへのステアリン酸亜鉛付着による汚れにより、像担持体の寿命よりも先に画像上の問題が発生することが多い。
【0008】
そこで、脂肪酸金属塩特有の問題を解決するために、潤滑剤として代用可能な材料として、ポリテトラフルオロエチレン、一般的にトナーに含有されているワックス等の材料が提案されている(特許文献1,2を参照。)。しかしながら、前記ポリテトラフルオロエチレンを代表とする潤滑性物質やワックスは、クリーニングブレードの摩耗や帯電ローラの汚れを抑える効果が見込まれるが、成形手段により成形された成形体として適用する際には、像担持体の表面への塗布量が安定しないという問題があり、具体的には、ブラシローラ等の潤滑剤供給手段により像担持体上に供給される潤滑剤の供給量が、使用していくごとに低下し、最終的には供給がストップしてしまう問題点があった。
【特許文献1】特開平4−264482公報
【特許文献2】特許第3545942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0010】
即ち、本発明は、潤滑剤を像担持体上に長期間にわたり安定して供給する潤滑剤成形物を低コストで提供することを第1の目的とし、その潤滑剤成形物を像担持体の表面にに塗布する潤滑剤塗布装置、その潤滑剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ、及び、その潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置を低コストで提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、潜像を担持する像担持体の表面に微粉末状で塗布される潤滑剤を主成分として含有する潤滑剤成形物において、ガリウムが含有されていることを特徴とする潤滑剤成形物である。
【0012】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記潤滑剤が、メラミンシアヌレート、ポリテトラフッ化エチレン、及び、窒化ホウ素から選ばれる1種の潤滑性物質、又は、パラフィン、及び、ポリエチレンから選ばれる1種のワックスから構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記潤滑剤成形物が、棒状に圧縮成形されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明は、前記潤滑剤成形物の先端と、像担持体と、に回転しながら接触して、該潤滑剤成形物を削り取って形成した微粉末を該像担持体の表面に供給するようにしたブラシローラを少なくとも有する潤滑剤塗布装置において、前記潤滑剤成形物として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤成形物を有していることを特徴とする潤滑剤塗布装置である。
【0015】
請求項5に記載された発明は、像担持体と、該像担持体の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、該像担持体の表面をクリーニングするクリーニング手段と、を少なくとも含んで一体に支持され、画像形成装置に着脱自在に固定されるプロセスカートリッジにおいて、前記潤滑剤塗布装置として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有していることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0016】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載された発明において、前記潤滑剤塗布装置が、前記クリーニング手段よりも像担持体の移動方向に対して上流側に配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載された発明は、請求項5又は6に記載された発明において、前記クリーニング手段が、弾性部材で構成されるクリーニングブレードであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8に記載された発明は、請求項7に記載された発明において、前記クリーニングブレードが、前記像担持体の移動方向に対してカウンター方向に支持されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項9に記載された発明は、請求項5〜8のいずれか1項に記載された発明において、前記プロセスカートリッジが、前記像担持体の表面を均一に帯電する帯電装置を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項10に記載された発明は、潜像を担持する像担持体と、前記像担持体を均一に帯電させる帯電装置と、前記像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤で現像して可視像を形成する現像装置と、前記可視像を記録媒体に転写する転写装置と、前記像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、前記像担持体の表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段と、を少なくとも有する画像形成装置において、前記潤滑剤塗布装置として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有していることを特徴とする画像形成装置である。
【0021】
請求項11に記載された発明は、請求項10に記載された発明において、前記潤滑剤塗布装置が、前記転写装置よりも前記像担持体の移動方向の下流側位置であって、かつ、前記帯電装置よりも前記像担持体の移動方向の上流側位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項12に記載された発明は、請求項10に記載された発明において、前記クリーニング装置で用いられるクリーニング手段が、弾性部材で構成されるクリーニングブレードであることを特徴とするものである。
【0023】
請求項13に記載された発明は、請求項12に記載された発明において、前記クリーニングブレードが、前記像担持体の回転方向に対してカウンター方向に支持されていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項14に記載された発明は、請求項5〜9のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを有していることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載された発明によれば、潜像を担持する像担持体の表面に微粉末状で塗布される潤滑剤を主成分として含有する潤滑剤成形物において、ガリウムが含有されているので、該潤滑剤成形物の表面温度がガリウムの融点(29.8℃)付近に到達するとその潤滑剤成形物の内部又は表面部分のガリウムが次第に溶け出し、そのために、該潤滑剤同士の結合力を弱めていくこととなって潤滑剤成形物の削れ性が向上し、よって、潤滑剤を像担持体上に長期間にわたり安定して供給する潤滑剤成形物を低コストで提供することができる。
【0026】
請求項2に記載された発明によれば、前記潤滑剤がメラミンシアヌレート、ポリテトラフッ化エチレン、及び、窒化ホウ素から選ばれる1種の潤滑性物質、又は、パラフィン、及び、ポリエチレンから選ばれる1種のワックスから構成されているので、像担持体に当接するクリーニングブレードの摩耗の進行や帯電ローラへの付着を抑えることができ、そのために、ガリウムの含有により成形時の潤滑剤成形物の強度を保ちつつ潤滑剤成形物の削れ性が向上し、よって、潤滑剤を像担持体上にいっそう長期間にわたり安定して供給可能となる処方の潤滑剤成形物を提供することができる。
【0027】
請求項3に記載された発明によれば、前記潤滑剤成形物が棒状に圧縮成形されているので、該潤滑剤成形物を構成する潤滑剤同士の間に生じた僅かな空隙に溶け出したガリウムが浸透し、そのために、該潤滑剤成形物の削れ性を効率良く高めることができる。また、前記潤滑剤成形物が棒状に圧縮成形されているので、該潤滑剤成形物の設置スペースを低減することができ、そのために、潤滑剤成形物を装置に組み込む作業も容易となる。
【0028】
請求項4に記載された発明によれば、前記潤滑剤成形物の先端と、像担持体と、に回転しながら接触して、該潤滑剤成形物を削り取って形成した微粉末を該像担持体の表面に供給するようにしたブラシローラを少なくとも有する潤滑剤塗布装置において、前記潤滑剤成形物として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤成形物を有しているので、像担持体の表面に潤滑剤の微粉を長期間にわたり安定して均一に塗布する潤滑剤塗布装置を提供することができる。
【0029】
請求項5に記載された発明によれば、像担持体と、該像担持体の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、該像担持体の表面をクリーニングするクリーニング手段と、を少なくとも含んで一体に支持され、画像形成装置に着脱自在に固定されるプロセスカートリッジにおいて、前記潤滑剤塗布装置として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有しているので、潤滑剤を、像担持体の表面と該像担持体に当接する部材との潤滑性を長期間にわたり向上させることができ、そのために、高画質画像を長期間形するプロセスカートリッジを提供することができる。
【0030】
請求項6に記載された発明によれば、前記潤滑剤塗布装置が、前記クリーニング手段よりも像担持体の移動方向に対して上流側に配置されているので、該潤滑剤の塗布が他のプロセスに影響されずに行うことができ、そのために、像担持体の表面に潤滑剤の微粉をいっそう長期間にわたり安定して均一に塗布するプロセスカートリッジを提供することができる。
【0031】
請求項7に記載された発明によれば、前記クリーニング装置が弾性部材で構成されクリーニングブレードを有しているので、像担持体の表面に供給された潤滑剤の微粉がが均一に塗布され易くなると共に、クリーニング部材のコストを最小限に抑えるプロセスカートリッジを提供することができる。
【0032】
請求項8に記載された発明によれば、前記クリーニングブレードが前記像担持体の移動方向に対してカウンター方向に支持されているので、小粒径かつ球形トナーを用いた際にも未転写トナーのクリーニング性が向上するプロセスカートリッジを提供することができる。
【0033】
請求項9に記載された発明によれば、請求項5〜8のいずれか1項に記載された発明において、前記プロセスカートリッジが、前記像担持体の表面を均一に帯電する帯電装置を備えているので、画像形成装置内の簡素化及び小型化が可能となる。
【0034】
請求項10に記載された発明によれば、潜像を担持する像担持体と、前記像担持体を均一に帯電させる帯電装置と、前記像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤で現像して可視像を形成する現像装置と、前記可視像を記録媒体に転写する転写装置と、前記像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、前記像担持体の表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段と、を少なくとも有する画像形成装置において、前記潤滑剤塗布装置として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有しているので、潤滑剤を、像担持体の表面と該像担持体に当接する部材との潤滑性を長期間にわたり向上させることができ、そのために、高画質画像を長期間形成可能な画像形成装置を提供することができる。
【0035】
請求項11に記載された発明によれば、前記潤滑剤塗布装置が、前記転写装置よりも前記像担持体の移動方向の下流側位置であって、かつ、前記帯電装置よりも前記像担持体の移動方向の上流側位置に配置されているので、該潤滑剤の塗布が他のプロセスに影響されずに行うことができ、そのために、像担持体の表面に潤滑剤の微粉をいっそう長期間にわたり安定して均一に塗布することができ、よって、高画質画像をいっそう長期間形成可能な画像形成装置を提供することができる。
【0036】
請求項12に記載された発明によれば、前記クリーニング装置で用いられるクリーニング手段が、弾性部材で構成されるクリーニングブレードであるので、像担持体の表面に供給された潤滑剤の微粉がが均一に塗布され易くなると共に、クリーニング部材のコストを最小限に抑える画像形成装置を提供することができる。
【0037】
請求項13に記載された発明によれば、前記クリーニングブレードが前記像担持体の移動方向に対してカウンター方向に支持されているので、小粒径かつ球形トナーを用いた際にも未転写トナーのクリーニング性が向上する画像形成装置を提供することができる。
【0038】
請求項14に記載された発明によれば、請求項5〜9のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを有しているので、部品のメンテナンスや交換作業等が容易になり、そのために、ランニングコストを最小限に抑えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明の一実施の形態を示す潤滑剤成形物の断面概略説明図である。図2は、本発明の一実施の形態を示す潤滑剤成形物の製造方法を示す概略説明図である。図3は、本発明の他の一実施の形態を示す潤滑剤成形物の断面概略説明図である。図4は、本発明の実施の一実施の形態を示す画像形成装置の概略説明図である。図5は、クリーニングブレードの当接条件であるカウンター方式を説明する説明図である。図6は、クリーニングブレードの当接条件であるトレーリング方式を説明する説明図である。
【0040】
ガリウムは、その融点が29.96℃の金属であるので、常温状態から僅かに熱を加えるだけで液体状態に変化する。本発明の潤滑剤成形物6bは、かかるガリウムの物理的特性を活かすことによって、創作されたものである。即ち、図1,3,4に示すように、潜像を担持する像担持体1の表面に微粉末状で塗布される潤滑剤31,41を主成分として含有している潤滑剤成形物6bにおいては、ガリウム32、42が含有されている。前記ガリウム32、42は、例えば、潤滑剤成形物6bの内部又は表面部分に含有される。
【0041】
このように、潜像を担持する像担持体1の表面に微粉末状で塗布される潤滑剤31、41を主成分として含有する潤滑剤成形物6bにおいて、ガリウム32,42が含有されていると、該潤滑剤成形物6bの表面温度がガリウム32,42の融点(29.8℃)付近に到達すると、例えば、その潤滑剤成形物6bの内部又は表面部分のガリウム32,42が次第に溶け出し、そのために、該潤滑剤31,41同士の結合力を弱めていくこととなって潤滑剤成形物6bの削れ性が向上し、よって、潤滑剤31,41を像担持体1上に長期間にわたり安定して供給する潤滑剤成形物6bを低コストで提供することができる。
【0042】
本発明においては、前記潤滑剤成形物6b中における前記ガリウム32,42の含有量は、前記潤滑剤成形物6b中の潤滑剤31,41に対して、好ましくは、0.1〜20重量%、さらに好ましくは、0.5〜10重量%である。このように、前記潤滑剤成形物6b中における前記ガリウム32、42の含有量が前記潤滑剤成形物6b中の潤滑剤31,41に対して0.1〜20重量%であると、画像評価装置内の温度が異常に上昇した際にも必要な強度を有することができる。また、前記潤滑剤成形物6b中における前記ガリウム32,42の含有量が前記潤滑剤成形物6b中の潤滑剤31,41に対して0.5〜10重量%であると、材料コストを抑えた最良な処方となる。
【0043】
前記潤滑剤31、41は、好ましくは、メラミンシアヌレート、ポリテトラフッ化エチレン、及び、窒化ホウ素から選ばれる1種の潤滑性物質、又は、パラフィン、及び、ポリエチレンから選ばれる1種のワックスから構成されている。このように、前記潤滑剤31,41がメラミンシアヌレート、ポリテトラフッ化エチレン、及び、窒化ホウ素から選ばれる1種の潤滑性物質、又は、パラフィン、及び、ポリエチレンから選ばれる1種のワックスから構成されていると、像担持体1に当接するクリーニングブレード7aの摩耗の進行や帯電ローラ2aへの付着を抑えることができ、そのために、ガリウム32,42の含有により成形時の潤滑剤成形物6bの強度を保ちつつ潤滑剤成形物6bの削れ性が向上し、よって、潤滑剤31,41を像担持体1上にいっそう長期間にわたり安定して供給可能となる処方の潤滑剤成形物6bを提供することができる。
【0044】
前記潤滑剤成形物6bは、好ましくは、棒状に圧縮成形されている。即ち、図2に示されているように、前記潤滑剤成形物6bは、潤滑剤31とガリウム32とを任意の量スーパーミキサーで混合したものを汎用のプレス機により所定のプレス圧で圧縮成形される。圧縮成形時、又は、圧縮成形後において、圧縮成形物(前記潤滑剤成形物6b)に熱を加えてその強度を上げることができるが、熱処理をしない冷間圧縮でも圧縮成形物(前記潤滑剤成形物6b)を製造することができる。この冷間圧縮で製造された潤滑剤成形物6bは、図1に示されている。この潤滑剤成形物6bでは、その内部にガリウム32が均一に分散されて含有される。別の製造方法としては、図2に示されているように、前記潤滑剤41のみを圧縮成形して、潤滑剤成形物6bを形成しした後、その表面にハケなどを用いてガリウム粉末を適量塗り込む方法でも作製可能である。この潤滑剤成形物6bでは、その表面の部分にガリウム32が被覆された状態で含有される。前述の圧縮成形前に混合する方法の方が、大量生産に向いており製造コストが安く、しかも、図1に示すように潤滑剤成形物6b中にガリウム32が分散しているので、潤滑剤成形物6bの削れ量が安定し易い点で好ましい。
【0045】
また、前述の圧縮成形により製造された潤滑剤成形物6bの表面形状は、図2中の上パンチ21及び下パンチ22の形状が転写させることが可能であるので、用途に応じて様々な表面形状を簡単に作ることができる。例えば、ブラシローラ6cが当接する面を凹凸形状にし、初期の潤滑剤形成物6bの削れ量を意図的に上げることもできる。
【0046】
したがって、前記潤滑剤成形物6bが棒状に圧縮成形されていると、該潤滑剤成形物6bを構成する潤滑剤31,41同士の間に生じた僅かな空隙に溶け出したガリウム32,42が浸透し、そのために、該潤滑剤成形物6bの削れ性を効率良く高めることができる。また、前記潤滑剤成形物6bが棒状に圧縮成形されているので、該潤滑剤成形物6bの設置スペースを低減することができ、そのために、潤滑剤成形物6bを装置に組み込む作業も容易となる。
【0047】
本発明の潤滑剤塗布装置6は、前記潤滑剤成形物6bの先端と、像担持体1と、に回転しながら接触して、該潤滑剤成形物6bを削り取って形成した微粉末を該像担持体1の表面に供給するようにしたブラシローラ6cを少なくとも有している。そして、本発明の潤滑剤塗布装置6は、前記潤滑剤成形物6bとして、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤成形物を有している。前記潤滑剤成形物6bは、好ましくは、圧縮部材6aで圧縮されている。前記圧縮部材6aは、例えば、圧縮バネ、板バネ等のバネであるが、圧縮バネが好適に用いられる。また、前記潤滑剤成形物6bは、ブラシローラ6cによって削り取られて消耗し、経時的にその厚みが減少するが、圧縮部材6aで加圧されているので、常時ブラシローラ6cに当接している。ブラシローラー6cは回転しながら削り取った潤滑剤を像担持体1に塗布する。
【0048】
このように、前記潤滑剤成形物6bとして、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤成形物を有していると、像担持体1の表面に潤滑剤31,41の微粉を長期間にわたり安定して均一に塗布する潤滑剤塗布装置6を提供することができる。
【0049】
前記ブラシローラ6cは、前記潤滑剤塗布装置6内において回転自在に備えられている。前記ブラシローラ6cの回転方向は特に規定されないが、例えば、潤滑剤を多く像担持体1上に供給したい場合には、像担持体1の回転方向に対して、ブラシローラ6cの回転方向は、逆回転にするなど、適宜選択される。前記ブラシローラ6cには、化学繊維を生布に植え込んで作ったパイルを芯金に螺旋状に巻きつけてたものや、前記化学繊維を接着剤で表面を覆われた芯金に直接植え込んだものがある。前記化学繊維には、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、およびアクリルなどの熱可塑性の樹脂繊維が好ましい。特に、像担持体1を傷つけることなく像担持体1の表面に前記潤滑剤31,41を供給することが可能なポリエステル製およびナイロン製の繊維が好ましい。
【0050】
本発明のプロセスカートリッジ9は、像担持体1と、該像担持体1の表面に潤滑剤31,41を塗布する潤滑剤塗布装置6と、該像担持体1の表面をクリーニングするクリーニング装置7と、を少なくとも含んで一体に支持され、画像形成装置10に着脱自在に固定されている。そして、前記プロセスカートリッジ9は、前記潤滑剤塗布装置6として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有している。前記リーニング手段7は、例えば、クリーニングブレード7aと、支持部材7bと、トナー回収コイル7cと、スプリング7dとで構成される。図4において、8は、像担持体1を回転自在に保持するカートリッジケースである。
【0051】
このように、像担持体1と、該像担持体1の表面に潤滑剤31,41を塗布する潤滑剤塗布装置6と、該像担持体1の表面をクリーニングするクリーニング装置7と、を少なくとも含んで一体に支持され、画像形成装置10に着脱自在に固定されるプロセスカートリッジ9において、前記潤滑剤塗布装置6として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有していると、潤滑剤31,41を、像担持体1の表面と該像担持体1に当接する部材との潤滑性を長期間にわたり向上させることができ、そのために、高画質画像を長期間形するプロセスカートリッジ9を提供することができる。
【0052】
前記プロセスカートリッジ9においては、前記潤滑剤塗布装置6は、前記クリーニング装置7よりも像担持体1の移動方向に対して上流側に配置されている。このように、前記潤滑剤塗布装置6が前記クリーニング装置7よりも像担持体1の移動方向に対して上流側に配置されていると、該潤滑剤31,41の塗布が他のプロセスに影響されずに行うことができ、そのために、像担持体1の表面に潤滑剤31,41の微粉をいっそう長期間にわたり安定して均一に塗布するプロセスカートリッジ9を提供することができる。
【0053】
また、前記プロセスカートリッジ9においては、前記クリーニング装置7がクリーニングブレード7aを有している。前記クリーニングブレード7aは、ウレタンエラストマー、シリコーンエラストマー、フッ素エラストマー等の弾性体を板状に形成してなり、そのエッジが像担持体1の表面に当接するように設けられ、転写後に残留する像担持体1上のトナーや紙粉を除去する。特に、耐磨耗性、高機械強度等の点からウレタンエラストマーが優れている。また、クリーニングブレード7aは、図示しないが、金属、プラスチック、セラミック等からなる支持部材7bに貼着されて支持され、像担持体1に対し所定の角度で設置される。またクリーニングブレード7aは、スプリング7dによる加圧やプロセスカートリッジケース8に固定されることによって所定の当接圧、喰い込み量で像担持体1の表面に当接する。
【0054】
このように、前記クリーニング装置7がクリーニングブレード7aを有していると、像担持体1の表面に供給された潤滑剤31,41の微粉がが均一に塗布され易くなると共に、クリーニング装置7のコストを最小限に抑えるプロセスカートリッジ9を提供することができる。
【0055】
前記クリーニングブレード7aは、カウンター方式(図5を参照。)又はトレーリング方式(図4を参照。)によって、像担持体(感光体)に当接されている。本明細書においては、前記カウンター方式は、クリーニングブレード7aの像担持体1に対する当接角をβとすると、β=0°〜90°の場合をカウンター方式と呼び、そして、β=90°〜180°の場合をトレーリング方式と呼ぶ。
【0056】
前記プロセスカートリッジ9においては、前記クリーニングブレード7aは、好ましくは、前記像担持体1の移動方向に対してカウンター方向(図5を参照。)に支持されている。このように、前記クリーニングブレード7aが前記像担持体1の移動方向に対してカウンター方向に支持されていると、小粒径かつ球形トナーを用いた際にも未転写トナーのクリーニング性が向上するプロセスカートリッジ9を提供することができる。
【0057】
また、前記プロセスカートリッジ9においては、請求項5〜8のいずれか1項に記載された発明において、前記プロセスカートリッジ9が前記像担持体1の表面を均一に帯電する帯電装置(帯電装置)2を備えている。前記帯電装置2は、好ましくは、帯電ローラ2aと帯電クリーニングローラ2bとで構成されている。このように、請求項5〜8のいずれか1項に記載された発明において、前記プロセスカートリッジ9が、前記像担持体1の表面を均一に帯電する帯電装置2を備えていると、画像形成装置10内の簡素化及び小型化が可能となる。
【0058】
本発明の画像形成装置10は、潜像を担持する像担持体1と、前記像担持体1を均一に帯電させる帯電装置2と、前記像担持体1の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置3と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤で現像して可視像を形成する現像装置4と、前記可視像を記録媒体に転写する転写装置5と、前記像担持体1に潤滑剤31,41を塗布する潤滑剤塗布装置6と、前記像担持体1の表面に残存したトナーを除去するクリーニング装置7と、を少なくとも有している。そして、前記潤滑剤塗布装置6として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有している。
【0059】
このように、潜像を担持する像担持体1と、前記像担持体1を均一に帯電させる帯電装置2と、前記像担持体1の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置3と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤で現像して可視像を形成する現像装置4と、前記可視像を記録媒体に転写する転写装置5と、前記像担持体1に潤滑剤31,41を塗布する潤滑剤塗布装置6と、前記像担持体1の表面に残存したトナーを除去するクリーニング装置7と、を少なくとも有する画像形成装置10において、前記潤滑剤塗布装置6として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有していると、潤滑剤31,41を、像担持体1の表面と該像担持体1に当接する部材との潤滑性を長期間にわたり向上させることができ、そのために、高画質画像を長期間形成可能な画像形成装置10を提供することができる。
【0060】
また、本発明の画像形成装置10においては、前記潤滑剤塗布装置6は、前記転写装置よりも前記像担持体1の移動方向の下流側位置であって、かつ、前記帯電装置2よりも前記像担持体1の移動方向の上流側位置に配置されている。このように、前記潤滑剤塗布装置6が、前記転写装置2よりも前記像担持体1の移動方向の下流側位置であって、かつ、前記帯電装置2よりも前記像担持体1の移動方向の上流側位置に配置されていると、前記潤滑剤31,41の塗布が他のプロセスに影響されずに行うことができ、そのために、像担持体1の表面に潤滑剤31,41の微粉をいっそう長期間にわたり安定して均一に塗布することができ、よって、高画質画像をいっそう長期間形成可能な画像形成装置10を提供することができる。
【0061】
また、本発明の画像形成装置10においては、前記クリーニング装置7がクリーニングブレード7aを有している。このように、前記クリーニング装置7がクリーニングブレード7aを有していると、像担持体1の表面に供給された潤滑剤31,41の微粉がが均一に塗布され易くなると共に、クリーニング部材のコストを最小限に抑える画像形成装置10を提供することができる。
【0062】
また、本発明の画像形成装置10においては、前記クリーニングブレード7aが前記像担持体1の移動方向に対してカウンター方向(図5を参照。)に支持されている。このように、前記クリーニングブレード7aが前記像担持体1の移動方向に対してカウンター方向に支持されていると、小粒径かつ球形トナーを用いた際にも未転写トナーのクリーニング性が向上する画像形成装置10を提供することができる。
【0063】
また、本発明の画像形成装置10においては、請求項5〜9のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ9を有している。このように、請求項5〜9のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ9を有していると、部品のメンテナンスや交換作業等が容易になり、そのために、ランニングコストを最小限に抑えた画像形成装置10を提供することができる。
【0064】
次に、本発明の画像形成装置10における像担持体1、帯電装置(帯電手段)2、露光手段3、現像装置(現像手段)4、及び、転写装置(転写手段)5について説明する。本発明の画像形成装置10においては、像担持体(感光体)1は、回転可能に支持され、矢印方向に回転される。像担持体1の外周部には、電子写真方式に基づき、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、潤滑剤塗布装置6、クリーニング装置7が配備されている。像担持体1は4個(図示せず。)あるが、それぞれ周囲に設けられる画像形成用の部品構成は同じであり、現像装置4が扱う色材(トナー)の色がそれぞれ異なる。像担持体1は、一部が転写装置5の中間転写ベルト5bに接している。図4において、5aは、転写ローラである。
【0065】
像担持体1は、直径が30から100mm程度の導電性支持体表面に光導電性物質である感光層を設けたものである。導電性支持体にはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の導電性金属が可能である。本発明においては、アモルファスシリコンの表面層を有した像担持体1も採用できる。図1で示される本発明の画像形成装置においては、ドラム状の像担持体1が用いられているが、ベルト状の像担持体も用いてもよい。
【0066】
また、この像担持体1における感光層には、電荷発生材と電荷輸送材との機能が一体的に構成された単層型のものと、電荷発生層と電荷輸送層との2層構成となった機能分離型のものとが採用可能である。一般的な機能分離型の像担持体1には、導電性支持体上に直接、又は、下引き層(中間層)を介して電荷発生層が設けられ、そして、この電荷発生層上に電荷輸送物質を含有する樹脂層(電荷輸送層)が設けられる。特に、機能分離型の積層像担持体を用いると感度設計の自由度が広がるので、像担持体1には機能分離型の積層像担持体が好ましい。そして、前記現像手段4は、好ましくは、現像スリーブ4aとスクリュー4bとドクターブレード4cとで構成され、そして、転写手段5は、好ましくは、転写ローラ5aと中間転写ベルト5bとで構成されている。
【0067】
本発明における前記帯電装置2は、帯電部材として導電性芯金の周りに中抵抗の弾性層を被覆して構成される帯電ローラ2aや帯電ローラ2aを像担持体1に当接させるための図示しないスプリング等を備えている。帯電ローラ2aは、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。また、この帯電ローラ2aは、両端部にスペーサー部材を設けることにより、このスペーサーが像担持体1と当接し、像担持体1と一定のギャップを持たせて配置することも可能である。帯電ローラ2aの周囲には、帯電ローラ2aと像担持体1は接して、帯電ローラ2aの表面に付着した異物を清掃する帯電清掃部材である帯電クリーニングローラ2bが設けられている。これにより、帯電ローラ2aの長寿命化を実現することができる。
【0068】
本発明における前記露光手段3は、公知のレーザー方式によるものであるが、カラー画像形成に対応した光情報を一様に帯電された像担持体1の表面に潜像として照射する。本発明における前記露光手段3には、LEDアレイと結像手段から成る露光装置も採用可能である。
【0069】
本発明における前記現像手段4は、像担持体1と対向する位置に、内部に磁界発生手段を備える現像スリーブ4aが配置されている。現像スリーブ4aの下方には図示しないトナーボトルから投入されるトナーを現像剤と混合し、攪拌しながら現像スリーブ4aへ汲み上げるための2つのスクリュー4bが備えられている。現像スリーブ4aによって汲み上げられるトナーと磁性キャリアからなる現像剤は、ドクターブレード4cによって所定の現像剤層の厚みに規制され、現像スリーブ4aに担持される。現像スリーブ4aは、像担持体1のとの対向位置において矢印の方向に移動しながら、現像剤を担持搬送し、トナーを像担持体1の潜像面に供給する。
【0070】
本発明における前記転写手段5は、転写部材として導電性芯金の周りに中抵抗の弾性層を被覆して構成される転写ローラ5a、基体の厚みが20〜600μmの樹脂フィルム、又は、ゴムを基体にした耐熱性かつトナーを静電的に転写可能とする抵抗値を持った中間転写ベル5b等から構成されており、中間転写ベルト5bは矢印方向に移動可能であり、図示しないが回転ローラ、テンションローラ等を用いて支持、張架されている。また、ベルトループの内側には、転写ローラ5aが像担持体1の近傍に配備されている。ここでは、転写ローラ5aは、高電圧を印加するローラタイプであるが、電極から放電するチャージャを採用することもできる。
【0071】
本発明の画像形成装置10においては、前記プロセスカートリッジ9は、転写装置(転写手段)5よりも像担持体1の移動方向に対して下流側で露光装置(露光手段)3よりも上流側に配置されている。このように、前記プロセスカートリッジ9が、転写装置(転写手段)5よりも像担持体1の移動方向に対して下流側で露光装置(露光手段)3よりも上流側に配置されていると、未転写トナーのクリーニング性が向上し、高品位な画像を得ることができる。
【0072】
本発明の画像形成装置10においては、現像手段4で小粒径のトナーを用いると、潜像に対して緻密にトナーを付着させることができる。しかしながら、体積平均粒径が3μm未満であると、2成分現像剤として用いた場合には、現像手段4における長期の攪拌において磁性キャリアの表面にトナーが融着するので、磁性キャリアの帯電能力が低下し、また、1成分現像剤として用いた場合には、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着を発生させやすくなる。逆に、トナーの体積平均粒径が8μmを超えると、高解像度で高画質の画像を得ることが難しくなると共に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒径の変動が大きくなる。また、粒径分布を狭くすることで、トナーの帯電量分布が均一になり、高品位な画像を得ることができ、また転写率を高くすることができる。しかしながら、Dv/Dnが1.40を超えると、帯電量分布が広くなり、解像度も低下するため好ましくない。
【0073】
したがって、本発明の画像形成装置10においては、前記現像手段4で用いられるトナーの体積平均粒径は、好ましくは、3〜8μmであり、そして、前記現像手段で用いられるトナーの体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)は、好ましくは、1.00〜1.40である。このように、前記現像手段4で用いられるトナーの体積平均粒径が、3〜8μmであり、そして、前記現像手段4で用いられるトナーの体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.40であると、潜像に対して緻密にトナーを付着させることができると共に、トナーの帯電量分布が均一になって転写率も高くなり、そのために、いっそう高画質の画像を得ることができる。
【0074】
また、本発明の画像形成装置10においては、トナーの形状は、円形度が0.93以上あることが好ましい。円形度SR=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)×100%で定義され、トナーが真球に近いほど100%に近い値となる。従来の画像形成装置において、このようなトナーを使用するとクリーニングブレード等のクリーニング部材の当接で十分掻き取れない場合が発生する。これはトナーが像担持体上で転がりやすくなることに起因する。この場合、対策としてはクリーニングブレードでより強い力で像担持体に当接させる事が考えられるが、像担持体の回転もしくは移動精度に影響を与え、バンディングの原因となる。これに対し、像担持体表面に潤滑剤を塗布し、像担持体表面の摩擦係数を低減させることで、クリーニングブレードによるクリーニングの負担を減らし、クリーニングブレードを強い力で当接してもバンディングせずにクリーニングすることが可能となる。
【0075】
したがって、本発明画像形成装置10においては、前記現像手段4で用いられるトナーの平均円形度は、好ましくは、0.93〜1.00である。このように、前記現像手段4で用いられるトナーの平均円形度が、0.93〜1.00であると、細密充填が可能となり、そのために、いっそう高画質の画像を得ることができる。
【0076】
(実施例1)
メラミンシアヌレート粒子に対するガリウム粒子の含有量を0.5重量%になるように混合した粉末混合物を図2に示されるプレス型に均一充填した後、これを30secプレス圧150MPaで圧縮成形して、長さ:324mm、幅:8.2mm、高さ:6mm、重量:40gの直方体形状の潤滑成形物を得た。
【0077】
(実施例2)
メラミンシアヌレート粒子に対するガリウム粒子の含有量を10.0重量%になるように混合した粉末混合物とした以外は、実施例1と同様にして、潤滑成形物を得た。
【0078】
(実施例3)
メラミンシアヌレート粒子に対するガリウム粒子の含有量を20.0重量%になるように混合した粉末混合物とした以外は、実施例1と同様にして、潤滑成形物を得た。
【0079】
(実施例4)
ポリテトラフッ化エチレン粒子に対するガリウム粒子の含有量を0.5重量%になるように混合した粉末混合物を図2に示されるプレス型に均一充填した後、これを30secプレス圧150MPaで圧縮成形して、長さ:324mm、幅:8.2mm、高さ:6mm、重量:40gの直方体形状の潤滑成形物を得た。
【0080】
(実施例5)
ポリテトラフッ化エチレン粒子に対するガリウム粒子の含有量を10.0重量%になるように混合した粉末混合物とした以外は、実施例4と同様にして、潤滑成形物を得た。
【0081】
(実施例6)
窒化ホウ素粒子に対するガリウム粒子の含有量を0.5重量%になるように混合した粉末混合物を図2に示されるプレス型に均一充填した後、これを30secプレス圧150MPaで圧縮成形して、長さ:324mm、幅:8.2mm、高さ:6mm、重量:40gの直方体形状の潤滑成形物を得た。
【0082】
(実施例7)
窒化ホウ素粒子に対するガリウム粒子の含有量を10.0重量%になるように混合した粉末混合物とした以外は、実施例6と同様にして、潤滑成形物を得た。
【0083】
(実施例8)
パラフィンワックスに対するガリウム粒子の含有量を0.5重量%になるように混合した粉末混合物を図2に示されるプレス型に均一充填した後、これを30secプレス圧150MPaで圧縮成形して、長さ:324mm、幅:8.2mm、高さ:6mm、重量:40gの直方体形状の潤滑成形物を得た。
【0084】
(実施例9)
パラフィンワックスに対するガリウム粒子の含有量を10.0重量%になるように混合した粉末混合物とした以外は、実施例8と同様にして、潤滑成形物を得た。
【0085】
(実施例10)
ポリエチレンワックスに対するガリウム粒子の含有量を0.5重量%になるように混合した粉末混合物を図2に示されるプレス型に均一充填した後、これを30secプレス圧150MPaで圧縮成形して、長さ:324mm、幅:8.2mm、高さ:6mm、重量:40gの直方体形状の潤滑成形物を得た。
【0086】
(実施例11)
ポリエチレンワックスに対するガリウム粒子の含有量を10.0重量%になるように混合した粉末混合物とした以外は、実施例10と同様にして、潤滑成形物を得た。
【0087】
(比較例1)
メラミンシアヌレート粒子のみからなる粉末混合物を図2に示されるプレス型に均一充填した後、これを30secプレス圧150MPaで圧縮成形して、長さ:324mm、幅:8.2mm、高さ:6mm、重量:40gの直方体形状の潤滑成形物を得た。
【0088】
(比較例2)
ポリテトラフッ化エチレン粒子のみからなる粉末混合物とした以外は、比較例1と同様にして、潤滑成形物を得た。
【0089】
(比較例3)
ポリエチレンワックスのみからなる粉末混合物を図2に示されるプレス型に均一充填した後、これを30secプレス圧150MPaで圧縮成形して、長さ:324mm、幅:8.2mm、高さ:6mm、重量:40gの直方体形状の潤滑成形物を得た。
【0090】
直毛状のポリエステル繊維でかつ30k本/inch2の繊維密度のパイルを直径12mm、ブラシ長311mmになるように芯金に巻きつけてブラシローラとした。そして、実施例1〜11及び比較例1〜3で得た潤滑成形物を6.0Nの荷重で前記ブラシローラに当接させた潤滑剤塗布装置とした。次に、この潤滑剤塗布装置をデジタル複写機(imagio MP C4500 、リコー社製)におけるプロセスカートリッジに組み込んで像担持体を保持したプロセスカートリッジを作製した後、このプロセスカートリッジ前記デジタル複写機(imagio MP C4500、リコー社製)に取り付けて画像形成装置とした。続いて、この画像形成装置にA4サイズ紙に対して画像面積率が5%になるような規定画像を8万枚通紙して、下記の項目を評価した。その際、トナー平均円形度:0.972、体積平均粒径:5.0μm、結着樹脂の熱軟化点:70℃である重合トナー(リコー社製)を用いた。
【0091】
(評価項目・方法)
潤滑剤消費量の直線性:上記画像形成装置を用いて、20、50、80K枚通紙時点での潤滑剤成形物の重量変化から潤滑剤消費量を測定した。そして、通紙枚数と潤滑剤消費量から相関係数:Rを算出し、それらを2乗した値R2 により直線性、つまり、潤滑剤成形物及びそれらを用いた潤滑剤塗布装置の安定供給(塗布)性能を評価した。なお、相関係数は1に近いほど潤滑性物質を安定供給できていると見なすことができる。
【0092】
(評価基準)
2 が0.95以上であって実用上問題無いものを○とし、そして、R2 が0.95未満のものは、潤滑性物質の供給量過多又は供給量不足となっているので、潤滑性物質が耐久時に安定供給できていないと判断して、×とした。評価結果は、次の表1に示される。
【0093】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施の形態を示す潤滑剤成形物の断面概略説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す潤滑剤成形物の製造方法を示す概略説明図である。
【図3】本発明の他の一実施の形態を示す潤滑剤成形物の断面概略説明図である。
【図4】本発明の実施の一実施の形態を示す画像形成装置の概略説明図である。
【図5】クリーニングブレードの当接条件であるカウンター方式を説明する説明図である。
【図6】クリーニングブレードの当接条件であるトレーリング方式を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1 像担持体
2 帯電装置(帯電手段)
2a 帯電ローラ
2b 帯電クリーニングローラ
3 露光装置(露光手段)
4 現像装置(現像手段)
4a 現像スリ−ブ
4b スクリュー
4c ドクターブレード
5 転写装置(転写手段)
5a 転写ローラ
5b 中間転写ベルト
6 潤滑剤塗布装置
6a 圧縮部材
6b 潤滑剤成形物
6c ブラシローラー
7 クリーニング装置
7a クリーニングブレード(クリーニング手段)
7b 支持部材
7c トナー回収コイル
7d スプリング
8 カートリッジケース
9 プロセスカートリッジ
10 画像形成装置
21 上パンチ
22 下パンチ
31,41 潤滑剤又はワックス
32,42 ガリウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する像担持体の表面に微粉末状で塗布される潤滑剤を主成分として含有する潤滑剤成形物において、ガリウムが含有されていることを特徴とする潤滑剤成形物。
【請求項2】
前記潤滑剤が、メラミンシアヌレート、ポリテトラフッ化エチレン、及び、窒化ホウ素から選ばれる1種の潤滑性物質、又は、パラフィン、及び、ポリエチレンから選ばれる1種のワックスから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤成形物。
【請求項3】
前記潤滑剤成形物が、棒状に圧縮成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑剤成形物。
【請求項4】
前記潤滑剤成形物の先端と、像担持体と、に回転しながら接触して、該潤滑剤成形物を削り取って形成した微粉末を該像担持体の表面に供給するようにしたブラシローラを少なくとも有する潤滑剤塗布装置において、前記潤滑剤成形物として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤成形物を有していることを特徴とする潤滑剤塗布装置。
【請求項5】
像担持体と、該像担持体の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、該像担持体の表面をクリーニングするクリーニング装置と、を少なくとも含んで一体に支持され、画像形成装置に着脱自在に固定されるプロセスカートリッジにおいて、前記潤滑剤塗布装置として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有していることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
前記潤滑剤塗布装置が、前記クリーニング装置よりも像担持体の移動方向に対して上流側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項7】
前記クリーニング装置が、クリーニングブレードを有していることを特徴とする請求項5又は6に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記クリーニングブレードが、前記像担持体の移動方向に対してカウンター方向に支持されていることを特徴とする請求項7に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
前記プロセスカートリッジが、前記像担持体の表面を均一に帯電する帯電装置を備えていることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項10】
潜像を担持する像担持体と、前記像担持体を均一に帯電させる帯電装置と、前記像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤で現像して可視像を形成する現像装置と、前記可視像を記録媒体に転写する転写装置と、前記像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、前記像担持体の表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段と、を少なくとも有する画像形成装置において、前記潤滑剤塗布装置として、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記潤滑剤塗布装置が、前記転写装置よりも前記像担持体の移動方向の下流側位置であって、かつ、前記帯電装置よりも前記像担持体の移動方向の上流側位置に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記クリーニング装置で用いられるクリーニング手段が、弾性部材で構成されるクリーニングブレードであることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記クリーニングブレードが、前記像担持体の回転方向に対してカウンター方向に支持されていることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
請求項5〜9のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを有していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−1649(P2009−1649A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163157(P2007−163157)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】