説明

潤滑剤組成物

【課題】防錆性、耐熱性、低蒸気圧性を併せ持つ潤滑剤組成物を提供すること。
【解決手段】基油と防錆剤を含む潤滑剤組成物であって、該基油の少なくとも一部がイオン液体であり、該防錆剤が、脂肪酸アミド、脂肪酸アミン塩、及びコハク酸ハーフエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする潤滑剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑剤組成物に関し、特に高温および高真空下、例えば宇宙空間(宇宙ステーション)で使用する装置や真空装置、半導体装置(スパッタリング装置)等に適し、優れた防錆性、耐熱性、低蒸気圧性を併せ持つ潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低温から高温の広い温度範囲及び高真空下で使用される潤滑剤については今までに各種の研究成果が開示されている。例えば、鉱物油、エステル油、ポリα−オレフィン、フェニルエーテル油と比較して蒸気圧の低いPFAE(パーフルオロアルキルエーテル)、トリス(2−オクチルドデシル)シクロペンタン等を基油としたものがある(例えば、特許文献1参照)。潤滑性を損なうことなく、制電性・熱安定性に優れ、金属を腐食せず、湿度などの環境に依存されないものとして、潤滑性基油と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム等のリチウム化合物、及び窒素オニウムカチオンと、弱配位性含フッ素有機アニオンまたは弱配位性含フッ素無機アニオンとからなるイオン性液体から選択された制電性物質と、を含む制電性潤滑油組成物の提案がある(例えば、特許文献2参照)。潤滑性に優れ、あるいはさらに蒸気圧が低く、かつ静電防止程度の導電性を合わせ持つ半固体状潤滑剤組成物を提供するものとして、増ちょう剤及び固体潤滑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種と、基油とを含み、該基油の少なくとも一部がイオン性液体である半固体状潤滑剤組成物の提案がある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
耐熱性、及び酸化防止性を有する潤滑剤組成物として(a)25℃での蒸気圧が1×10-4Torr以下のフッ素を含有しない合成油、及びイオン性液体からなる群から選ばれる少なくとも1種の基油、及び(b)フラーレン化合物及びフラーレン製造時の副生炭素粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する潤滑剤組成物の提案がある(例えば、特許文献4参照)。基油として、カチオンとアニオンから構成され、イオン濃度が1mol/dm3以上であるイオン性液体を含み、かつ、滴点が260℃以上の増ちょう剤を含むグリース組成物の防錆剤として金属スルホネート、コハク酸エステル0.01〜10質量%を添加する提案がある(例えば、特許文献5参照)。
しかしこれらの提案はいずれも高温および高真空下で使用する装置に使用される金属の防錆効果には不十分であり、未だユーザーが十分に満足するものは得られていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開平10−140169
【特許文献2】特開2005−89667
【特許文献3】特開2005−154755
【特許文献4】特開2005−336309
【特許文献5】特開2006−291011
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は防錆効果に優れ、さらに耐熱性、低蒸気圧性を併せ持つ潤滑剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の潤滑剤組成物を提供するものである。
1.基油と防錆剤を含む潤滑剤組成物であって、
該基油の少なくとも一部がイオン液体であり、
該防錆剤が、脂肪酸アミド、及びコハク酸ハーフエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする潤滑剤組成物。
2.脂肪酸アミドが飽和又は不飽和の炭素数6〜22の脂肪酸とアルカノールアミンの反応生成物である上記1に記載の潤滑剤組成物。
3.脂肪酸アミン塩が飽和又は不飽和の炭素数6〜22の脂肪酸と飽和又は不飽和の炭素数4〜20のアミンの反応生成物である上記1に記載の潤滑剤組成物。
4.コハク酸ハーフエステルがコハク酸と飽和又は不飽和の炭素数が4〜30の1価及び/又は多価アルコールの反応生成物である上記1に記載の潤滑剤組成物。
5.該防錆剤を、潤滑剤組成物中、0.05〜20.0質量%含有することを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
6.イオン液体を基油全体の50〜100質量%含む上記1〜5のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
7.イオン液体以外の基油が25℃での蒸気圧が1×10-4Torr以下の合成油からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記6記載の潤滑剤組成物。
8.増ちょう剤及び固体潤滑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする上記1〜7のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の潤滑剤組成物は、防錆性、耐熱性、低蒸気圧性に優れるため、特に高温および高真空下、例えば宇宙空間(宇宙ステーション)で使用する装置や真空装置、半導体装置(スパッタリング装置)等の部材の潤滑に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の潤滑剤組成物において基油として使用するイオン液体は、常温溶融塩とも呼ばれる、室温(25℃)で液体となる溶融塩であれば特に限定されない。
最近、様々なアニオン、カチオンの組み合わせが工夫され、グリーンケミストリーの溶剤、電池材料として注目を集めている。イオン液体は蒸気圧がほとんど0であり、低温から高温まで液体であり、熱安定性に優れ、それ自身の酸化還元反応が起こりにくく、電気分解しにくく、イオン伝導性が高く、比熱が大きいという特性を有する。
【0009】
本発明において基油として使用するイオン液体の好ましい具体例としては、イオン液体のアニオンが、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミド、三酸化窒素、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、オクチルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ジエチレングリコールモノメチルエーテルスルホン酸、酢酸、トリフルオロメタンカルボン酸、ビスシアノイミド、またはトリストリフルオロメタンスルホン酸等であり、カチオンが、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピロール、ホスフォニウム又は四級アンモニウム塩であるものが挙げられる。
【0010】
イオン液体のカチオンの具体例としては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、アルキル-アルコキシルアルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピリジニウム、トリアルキルピリジニウム、1-フルオロトリアルキルピリジニウム、1-フルオロピリジニウム、アルキルピラゾリウム、アルキルピペリジン、ジアルキルピペリジン、アルキルモルホリン、ジアルキルモルホリン、アルキルピペラジン、ジアルキルピペラジン、アルキルピロール、ジアルキルピロール、テトラアルキルホスフォニウム、テトラアルキルアンモニウム、アルコキシアルキルトリアルキルアンモニウム等が挙げられる。なかには部分的にフッ素化されているものもある。また、脂肪族アミン系、脂環式アミン系、ピリジン(芳香族)系と分類されているものもある。
【0011】
さらに詳細な具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-テトラドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキサドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクタドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-オクチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム1,2-ジメチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-エチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-エチルイミダゾリウム、1-エチル3-オクチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ブチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ヘキシルイミダゾリウム、1-オクチル-3-エチルイミダゾリウム、1,2-ジエチル-3,4-ジメチルイミダゾリウム、1-フルオロピリジニウム、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウム、1-プロピル3-メチルピリジニウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウム、1-ブチル-3-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-3-メチルピリジウム、1-オクチル-4-メチルピリジニウム、1-オクチル-3-メチルピリジニウム、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウム、1-ブチル-3,5-ジメチルピリジニウム、1-メチルピラゾリウム、3-メチルピラゾリウム、1-エチル-1-メチルピペリジン、1-メチル-1-プロピルピペリジン、1-ブチル-1-メチルピペリジン、4-ブチル-4-メチルモルホリン、4-ヘキシル-4-メチルモルホリン、 4-メチル-4-オクチルモルホリン、4-ブチル-4-メチルピペラジン、1-プロピル-1-メチルピロール,1-ブチル-1-メチルピロール、1-ブチル-1-エチルピロール,1,1-ジプロピルピロール,1-ペンチル-1-メチルピロール、1-ヘキシル-1-メチルピロール、1-ブチル-1-プロピルピロール、1,1-ジブチルピロール、1-ヘプチル-1-メチルピロール、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリメチルヘプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチル(2-メトキシエチル)アンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジメチルブチルエチルアンモニウム、ジメチルエチルペンチルアンモニウム、ジメチルエチルヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルノニルアンモニウム、ジメチルエチルヘプタデシルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、ジメチルブチルプロピルアンモニウム、ジメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジメチルヘキシルプロピルアンモニウム、ジメチルヘプチルプロピルアンモニウム、ジメチルブチルペンチルアンモニウム、ジメチルブチルヘキシルアンモニウム、ジメチルブチルヘプチルアンモニウム、ジメチルヘキシルペンチルアンモニウム、ジエチルヘプチルメチルアンモニウム、ジヘキシルジメチルアンモニウム、ジプロピルブチルヘキシルアンモニウム、ジヘキシルジプロピルアンモニウム、ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウム、ジプロピルエチルメチルアンモニウム、ジエチルプロピルペンチルアンモニウム、ジエチルメチルペンチルアンモニウム、エチルメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジプロピルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルヘキシルメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0012】
様々なアニオンとカチオンを組み合わせたイオン液体(「IL」と略称する)が市販されており、容易に入手可能である。具体例としては以下のものが挙げられる。
IL−1:脂環式アミン系イオン液体(広栄化学工業株式会社製、IL−C1)
IL−2:脂肪族アミン系イオン液体(広栄化学工業株式会社製、IL−A1)
IL−3:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート
IL−4:1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート
IL−5:1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート
IL−6:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート
IL−7:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート
IL−8:1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート
IL−9:1−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート
IL−10:1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート
IL−11:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド
IL−12:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド
IL−13:1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド
IL−14:1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド
IL−15:ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド
【0013】
本発明の潤滑剤組成物に使用される基油は、イオン液体を含んでいる。基油全体に対するイオン液体の含有量は、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0014】
イオン液体とともに使用される他の基油は25℃での蒸気圧が1×10-4Torr以下であれば特に制限されない。例えば、鉱物油、合成炭化水素油、エステル油、エーテル油、フッ素油等の合成油が使用できる。鉱油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等が、合成炭化水素油としては、アルキルシクロペンタン、ポリアルファオレフィン油等が、エステル油としては、ジエステル油、ポリオールエステル油、又はこれらのコンプレックスエステル油、芳香族エステル油等が、エーテル油としては、ジアルキルジフェニルエーテル油、アルキルトリフェニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油、フッ素油としては、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0015】
さらに詳細な好ましい具体例としては、ジオクチルセバケート、ネオペンチルポリオールエステル等のエステル油、モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等のフェニルエーテル油、ジ(n−オクチル)シクロペンタン、ジ(n−デシル)シクロペンタン、ジ(n−ドデシル)シクロペンタン、トリス−(n−オクチル)シクロペンタン、トリス(n−デシル)シクロペンタン、トリス(n−ドデシル)シクロペンタン、トリス(2−オクチルドデシル)シクロペンタン等のアルキルシクロペンタン油等が挙げられ、特に好ましいものは、トリス(2−オクチルドデシル)シクロペンタン油、ネオペンチルポリオールエステル、ジアルキルジフェニルエーテル等である。
本発明の潤滑剤組成物において、イオン液体の含有量は潤滑剤組成物全体に対して、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50〜95質量%である。
【0016】
本発明に使用される防錆剤は、脂肪酸アミド、脂肪酸アミン塩、及びコハク酸ハーフエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、好ましくは飽和又は不飽和の炭素数6〜22、さらに好ましくは8〜18の脂肪酸(例えば、オレイン酸、ステアリン酸、カプリル酸等)が挙げられる。
脂肪酸アミドを構成するアミンとしては、特に限定されないが、アルカノールアミンが好ましい。
本発明に使用される脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸ジエタノールアミドが挙げられる。
【0017】
脂肪酸アミン塩を構成する脂肪酸としては、好ましくは飽和又は不飽和の炭素数6〜22、さらに好ましくは8〜18の脂肪酸(例えば、オレイン酸、ステアリン酸、カプリル酸等)が挙げられる。
脂肪酸アミン塩を構成するアミンとしては、特に限定されないが、飽和又は不飽和の炭素数4〜20のアミンが好ましい。
本発明に使用される脂肪酸アミン塩の具体例としては、オレイン酸ジシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0018】
コハク酸ハーフエステルのエステル部分を構成するアルコールとしては、炭素数2〜20の1価又は多価アルコールが挙げられる。
コハク酸にはアルキル基又はアルケニル基等が付加してもよく、その際のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは4〜30、さらに好ましくは8〜20である。
【0019】
本発明の潤滑剤組成物中、防錆剤の含有量は、好ましくは0.01〜20.0質量%、さらに好ましくは0.05〜10.0質量%、特に好ましくは0.1〜5.0質量%である。
【0020】
本発明の潤滑剤組成物は、固体状、半固体状、液状のいずれの形態のものでも良い。半固体状とは、潤滑性を示す液体(潤滑油)に増ちょう剤又は固体潤滑剤を分散させた潤滑剤であって、常温では流動性を示さないが、使用時に圧力がかかり、温度が上昇すると流動性を帯びて潤滑性を示すものをいう。例えば、グリース、ペーストコンパウンド、ワックス等の潤滑剤組成物が挙げられる。
【0021】
本発明の潤滑剤組成物に使用される増ちょう剤としては、金属石鹸、複合金属石鹸、ウレア化合物、ウレタン化合物、カーボンブラック、ベントナイト、シリカ化合物及び非金属無機導電性フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。非金属無機導電性フィラーとしては、酸化亜鉛系(ZnO(Al))、硫酸バリウム系(SnO2(Sb)/BaSO4, SnO2/BaSO4)、ホウ酸アルミニウム系(SnO2(Sb)/9Al2O3・2B2O3)、酸化チタン系(SnO2(Sb)/TiO2)、酸化スズ系(SnO2(Sb))、チタンブラック系(TiO(N))、チタン酸カリウム系(SnO2(Sb)/K2O・nTiO2)等が挙げられ、金属がドープされていてもされていなくてもよい。特にSbドープSnO2が好ましい。金属石鹸、複合金属石鹸は、基油がイオン液体以外の成分を含む場合に使用するのが好ましい。金属石鹸の具体例としては、アルミニウム石鹸、カルシウム石鹸、リチウム石鹸、ナトリウム石鹸、バリウム石鹸等が挙げられる。また複合金属石鹸の具体例としては、リチウムコンプレックス石鹸、カルシウムコンプレックス石鹸、アルミニウムコンプレックス石鹸等が挙げられる。
増ちょう剤の含有量は潤滑剤組成物を半固体状にするのに有効な量であり潤滑剤組成物全体に対して、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。
【0022】
固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、有機モリブデン、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、窒化ホウ素、メラミンシアヌル酸化合物及び軟質金属粒子(例えば、金、銀、銅)、フラーレン化合物(フラーレン及びその誘導体)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
固体潤滑剤の含有量は潤滑剤組成物を半固体状にするのに有効な量であり潤滑剤組成物全体に対して、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。
増ちょう剤及び固体潤滑剤の両者を含有させる場合その合計の含有量は潤滑剤組成物全体に対して、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。
本発明の潤滑剤組成物には、通常の潤滑剤組成物に普通に使用されている酸化防止剤、極圧剤等の添加剤を添加してもよい。
【実施例】
【0024】
以下実施例及び比較例を示し本発明をさらに詳細に説明する。「部」は特に明記しない限り質量部である。
防錆性の試験方法・評価基準
表面を研磨したSPCC鋼板に試料を塗布し、恒温恒湿槽(50℃、90%RH)にて24時間静置し、塗布面の発錆を目視にて確認した。
○:発錆無し ×:発錆あり
使用したイオン液体は次のとおりである。
イオン液体1:脂環式アミン系イオン液体(広栄化学工業社製、IL−C1)
イオン液体2:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド
イオン液体3:ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド
結果を表1〜表4に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】











【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
表1〜4の結果から、イオン液体に特定の防錆剤を組み合わせた本発明の潤滑剤組成物は、優れた防錆性を示すが、従来公知の他の防錆剤を使用した比較例の潤滑剤組成物では防錆効果が認められないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と防錆剤を含む潤滑剤組成物であって、
該基油の少なくとも一部がイオン液体であり、
該防錆剤が、脂肪酸アミド、脂肪酸アミン塩、及びコハク酸ハーフエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項2】
脂肪酸アミドが飽和又は不飽和の炭素数6〜22の脂肪酸とアルカノールアミンの反応生成物である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
脂肪酸アミン塩が飽和又は不飽和の炭素数6〜22の脂肪酸と飽和又は不飽和の炭素数4〜20のアミンの反応生成物である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
コハク酸ハーフエステルがコハク酸と飽和又は不飽和の炭素数が4〜30の1価及び/又は多価アルコールの反応生成物である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
該防錆剤を、潤滑剤組成物中、0.05〜20.0質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
イオン液体を基油全体の50〜100質量%含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
イオン液体以外の基油が25℃での蒸気圧が1×10-4Torr以下の合成油からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項6記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
増ちょう剤及び固体潤滑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。

【公開番号】特開2009−29981(P2009−29981A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197133(P2007−197133)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【Fターム(参考)】