説明

潤滑剤組成物

【課題】 人体に安全であって、自動給脂装置等の塗布装置にて均一に塗布することができる潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】 基油としての流動パラフィンと、増稠剤としてのアルミニウム複合石鹸と、増粘剤としてのポリイソブチレンと、防錆剤としてのモノオレイン酸ソルビタンとを含むグリースに、人体に安全な成分からなる溶剤が配合されており、潤滑剤組成物中に、溶剤としてイソパラフィン系溶剤が30〜70重量%配合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に安全な潤滑剤組成物に関し、特に、水門など水に接触するワイヤーロープに適した潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水門は、河川や貯水場その他の水処理施設に設置され、水を堰き止めたり、流量を調整したりするためのものである。水門の門戸を上げ下げするために使用されるワイヤーロープには、ワイヤーロープ素線間の摺動及びワイヤーロープと巻きドラムなどとの接触に対する潤滑、並びにワイヤーロープの防錆のために、潤滑剤が不可欠である。
【0003】
このような水門用のワイヤーロープには、従来から工業用ワイヤーロープの潤滑剤が使用されていた。特許文献1には、水門の門戸の巻き上げロープ用潤滑剤として、基油として鉱物油を用い、疎水性シリカで増稠すると共に、色艶を向上させる目的でパラフィンを配合し、防錆剤としてジシクロヘキシルアミンのオレイン酸塩、潤滑性向上剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛を配合した防錆グリースが提案されている。
【0004】
しかし、水門用のワイヤーロープは、常に水と接触しているといっても過言ではない。そのため、ワイヤーロープに接触した水には、潤滑剤成分が混入しやすい。上述したようにワイヤーロープに通常の工業用潤滑剤が使われていることから、水に混入した潤滑剤成分には、有害な成分も含まれている。ところが、有害な潤滑剤成分が混入された水は、農業用水として使用することもあれば、飲料用水として使用されることもある。そのため、有害な潤滑剤成分が混入された水を人間が長期にわたって摂取した場合に、安全であるとは言い難かった。
【0005】
また、最近では、環境問題への関心が高まり、排水中でも飲料水としての規格を満足させる規制を行う市町村条例が発令されるなど、更に厳しい制限が加えられる傾向にある。このような事情から、河川などの汚染防止を目的として、水門用などの水に接触するワイヤーロープ用の潤滑剤として、上述した工業用潤滑剤の代わりに、バクテリアが分解できる生分解性に優れた潤滑剤を使用する例も増えている。
【0006】
例えば、特許文献2には、基油として生分解性の良好な植物油を用い、増稠剤として脂肪酸の金属石鹸を含む生分解性グリース組成物が提案されている。しかし、特許文献2に記載の生分解性グリース組成物は、潤滑性向上剤として硫黄−燐系化合物の極圧剤や、防錆剤としてスルフォネート系化合物を含有するため、環境に無害とは言い難い。すなわち、バクテリアが分解できるなどの生分解性の規格は、人間が摂取した場合の長期安全性の確保とは根本的に評価基準が異なる。そのため、生分解性の潤滑剤であっても、人に対する安全性には疑問がある。
【0007】
このような事情を鑑み、例えば、特許文献3には、人体に安全な成分からなる潤滑剤組成物として、基油として流動パラフィンを用い、増稠剤としてアルミニウム複合石鹸を含み、また添加剤を配合した潤滑剤組成物が提案されている。しかし、特許文献3に記載の潤滑剤組成物は、グリース状を呈するため、ワイヤーロープに塗布する際に、自動給脂装置等の塗布装置ではなく、作業者が刷毛等を用いてワイヤーロープに均一に塗布しなければならず、作業性の面で効率が良いとは言い難いものであった。すなわち、人体に安全な潤滑剤組成物においては、ワイヤーロープに塗布する際の作業性が悪く、均一に塗布するには作業者の慣れという数値で表すことのできない技術が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3151947号公報
【特許文献2】特開平11−228983号公報
【特許文献3】特開2006−182856公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、人体に安全であって、自動給脂装置等の塗布装置にて均一に塗布することができる潤滑剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る潤滑剤組成物は、基油としての流動パラフィンと、増稠剤としてのアルミニウム複合石鹸と、増粘剤としてのポリイソブチレンと、防錆剤としてのモノオレイン酸ソルビタンとを含むグリースに、イソパラフィン系溶剤が30〜70重量%配合されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る潤滑剤組成物は、イソパラフィン系溶剤が、潤滑剤組成物中に40〜70重量%配合されていることが好ましい。また、本発明に係る潤滑剤組成物は、イソパラフィン系溶剤が、炭素数6〜9のイソパラフィン系炭化水素からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動給脂装置等の塗布装置にて給脂可能な流動性が付与されるため、自動給脂装置等の塗布装置にて均一に塗布することができ、また、偶発的に体内に混入した場合にも人体に安全な潤滑剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る潤滑剤組成物に関する具体的な実施の形態(本実施の形態)について、以下の順序で詳細に説明する。
1.潤滑剤組成物
1−1.グリース
1−2.溶剤
2.潤滑剤組成物の製造方法
3.実施例
【0014】
<1.潤滑剤組成物>
本発明に係る潤滑剤組成物は、基油と、増稠剤と、増粘剤と、防錆剤とを含むグリースに、溶剤成分が配合されてなるものである。これらのグリース及び溶剤成分は、後に詳述するように、いずれも人体に対して安全なものである。
【0015】
日本の食品衛生法には、食品工場などの安全を問われる箇所で使用可能な潤滑剤に関する規制はない。一方、公衆衛生規格認定機関である国際衛生財団(National Sanitation Foundation International:略称「NSF」)には、偶発的な食品接触条件下で使用可能な潤滑剤に関する規定がある。
【0016】
例えば、NSFガイドラインには、「NSF H1」や「NSF HX1」が規定されている。「NSF H1」は、偶発的に食品に触れる可能性がある箇所で使用できる潤滑剤を規定した分類である。「NSF HX1」は、偶発的に食品に触れる可能性がある箇所で使用できる潤滑剤に使用できる原料や成分を規定した分類である。また、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:略称「FDA」)は、安全な食品添加物などと共に、潤滑剤に使用可能な原料及び配合量を規則「FDA21CFR」中に定めている。
【0017】
潤滑剤は、規則「FDA21CFR178.3570」に規定されており、規定に合致した物質又は一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe:GRAS)物質からなる潤滑剤の使用が許可されている。
【0018】
本実施の形態に係る潤滑剤組成物に用いられるグリース及び溶剤は、米国食品医薬品局の規則「FDA21CFR」又はNSFガイドラインの「NSF H1」や「NSF HX1」に規定され、人体に対して安全なものとされたものである。
【0019】
<1−1.グリース>
(基油)
潤滑剤組成物に用いられる基油は、潤滑油であり、グリースの潤滑作用を行う成分である。基油としては、例えば、流動パラフィンを用いることができる。流動パラフィンは、規則「FDA21CFR178.3570」に、偶発的な食品接触条件下で潤滑剤として使用できる物質として規定されている。そのため、流動パラフィンは、定められた規定値を守る限り、偶発的に体内に混入しても人体に対する安全性が高い。また、流動パラフィンは、日本の食品衛生法における食品添加物の中の既存添加物にも属する物質であるため、人体に対する安全性が高い。
【0020】
(増稠剤)
増稠剤は、グリース中で石鹸分子等から成る繊維が絡み合って網目状の構造を形成し、この網目構造中に吸着作用と毛細管作用により、基油を保持する成分である。増稠剤としては、アルミニウム複合石鹸を用いることができる。アルミニウム複合石鹸は、ステアリン酸と安息香酸と水酸化アルミニウムとを原料とする。アルミニウム複合石鹸は、規則「FDA21CFR178.3570」に、偶発的な食品接触条件下で潤滑剤に使用できる物質として規定されている。そのため、アルミニウム複合石鹸は、偶発的に体内に混入しても人体に対する安全性が高い。また、アルミニウム複合石鹸は、増稠剤の中でも粘性が高いため、ワイヤーロープなどへの付着性が優れている。
【0021】
潤滑剤組成物中におけるアルミニウム複合石鹸の配合量は、1〜10重量%が好ましく、3〜10重量%が更に好ましい。アルミニウム複合石鹸の配合量が1重量%未満では、油分を充分に増稠できないため、潤滑剤の流出が起こりやすくなる。アルミニウム複合石鹸の配合量が10重量%を超えると、増稠剤の量が多くなるため、潤滑剤が硬くなって塗布作業性が低下してしまう。また、アルミニウム複合石鹸の配合量が10重量%を超えると、規則「FDA21CFR178.3570」に記載の配合許容範囲から外れるため、安全性の確保が難しくなる。
【0022】
(増粘剤)
増粘剤は、グリースに粘着性又は付着性を付与する成分である。増粘剤としては、ポリイソブチレンを使用することができる。ポリイソブチレンは、規則「FDA21CFR178.3570」に規定される物質であり、定められた規定範囲を守る限り安全性が高い。ポリイソブチレンの平均分子量は、35000〜140000の範囲が好ましい。平均分子量が35000〜140000である高分子量のポリイソブチレンは、付着性や粘着性を向上させるとともに撥水性を向上させることができる。一方、ポリイソブチレンの平均分子量が35000未満又は140000を超えたものは、規則「FDA21CFR178.3570」に規定された範囲から外れるため、人体に対する安全性の確保が難しい。
【0023】
潤滑剤組成物中におけるポリイソブチレンの配合量は、1〜15重量%が好ましく、3〜12重量%が更に好ましい。ポリイソブチレンの配合量が1重量%未満の場合には、ワイヤーロープなどへの良好な付着性及び粘着性が得られないため好ましくない。また、ポリイソブチレンの配合量が15重量%を超えた場合には、ポリイソブチレンの増粘作用が頭打ちとなるため好ましくない。
【0024】
(防錆剤)
防錆剤は、潤滑部材の発錆を防止するための成分である。防錆剤としては、モノオレイン酸ソルビタンを用いることができる。モノオレイン酸ソルビタンは、規則「FDA21CFR178.3570」で規定される物質であるため、定められた規定値を守る限り人体に対する安全性が高い。モノオレイン酸ソルビタンは、ソルビトールをオレイン酸でエステル化することにより製造することができる。モノオレイン酸ソルビタンは、けん化価が145〜160、ヒドロキシル価が193〜210であることが好ましい。けん化価及びヒドロキシル価が193〜210の範囲を外れると、食品用成分として安全性が確保され難くなる。
【0025】
潤滑剤組成物中におけるモノオレイン酸ソルビタンの配合量は、1〜7.5重量%が好ましく、3〜7.5重量%が更に好ましい。モノオレイン酸ソルビタンの配合量が1重量%未満の場合には、良好な防錆効果が得られないため好ましくない。また、モノオレイン酸ソルビタンの配合量が7.5重量%を超えると、防錆効果が頭打ちになるうえ、潤滑剤が水に洗い流されやすくなるため好ましくない。
【0026】
(その他の成分)
また、上述したグリース及び溶剤以外にも、付着性及び撥水性などを向上させるために、ワックス成分を配合することができる。特に、規則「FDA21CFR184」に記載されるカルナバワックス、ミツロウは、一般に安全と認められる物質(GRAS)物質であり、安全性を損なうことなく、性能の向上を図ることが可能である。
【0027】
<1−2.溶剤>
潤滑剤組成物は、人体に安全な成分からなりグリース成分を分散し得る溶剤が配合されている。この溶剤は、グリース成分を均一に塗布するために流動性を付与し、自動給脂装置等の塗布装置にて均一に塗布するための成分である。
【0028】
溶剤としては、例えば、規則「FDA21CFR178.3570」の規定に合致した物質、規則「NSF H1」又は「NSF HX1」の認証を受けている、又は、受けることが可能なものを用いることができる。また、溶剤としては、自動給脂装置等の塗布装置にて給脂可能な流動性を付与することができるものであれば、任意の乾燥性を持つものを用いてもよい。
【0029】
このような溶剤としては、人体に安全な成分からなり、また、上述したグリースとの相溶性に優れている理由から、イソパラフィン系溶剤が用いられる。イソパラフィン系溶剤としては、例えば、炭素数6〜9のイソパラフィン系炭化水素からなるものを用いることができる。炭素数が6未満のイソパラフィン系炭化水素からなるものは、自動給脂装置等の塗布装置にて給脂可能な流動性を効果的に付与できない可能性があり、また、入手が困難で、価格が高価である。炭素数が9を超えるイソパラフィン系炭化水素からなるものを用いた潤滑剤組成物は、乾燥性が悪く、自動給脂装置等の塗布装置にて均一に塗布できない可能性があり、実使用で加熱工程等が別途必要になってしまう。イソパラフィン系溶剤としては、炭素数の異なる2種以上のイソパラフィン系炭化水素を混合した混合溶剤を用いてもよい。
【0030】
潤滑剤組成物は、イソパラフィン系溶剤が潤滑剤組成物中に30〜70重量%配合されている。潤滑剤組成物中におけるイソパラフィン系溶剤の配合量を30〜70重量%とすることにより、グリースの粘度が調整されて、自動給脂装置等の塗布装置により容易且つ均一に潤滑剤組成物を塗布することができる。
【0031】
また、潤滑剤組成物は、イソパラフィン系溶剤が潤滑剤組成物中に40〜70重量%配合されていることが好ましい。潤滑剤組成物中におけるイソパラフィン系溶剤の配合量を40〜70重量%とすることにより、自動給脂装置等の塗布装置を用いて、より容易且つ均一に潤滑剤組成物を塗布することができる。
【0032】
以上説明したように、潤滑剤組成物は、基油としての流動パラフィンと、増稠剤としてのアルミニウム複合石鹸と、増粘剤としてのポリイソブチレンと、防錆剤としてのモノオレイン酸ソルビタンとを含むグリースに、イソパラフィン系溶剤が30〜70重量%配合されている。
【0033】
そのため、潤滑剤組成物は、偶発的に体内に混入した場合にも人体に対して安全である。また、潤滑剤組成物は、工業用潤滑剤と同程度の防錆性、耐水性、撥水性、付着性を有し、屋外などでも使用することができる。したがって、例えば、従来の食品機械用潤滑剤の代替品だけでなく、飲料用水として使用される可能性がある水に接触する機械類用としても使用することができる。特に、本実施の形態に係る潤滑剤組成物は、河川や貯水場その他の水処理施設に設置された水門の門戸の上げ下げに用いるワイヤーロープ用として優れている。
【0034】
また、潤滑剤組成物は、溶剤としてイソパラフィン系溶剤が30〜70重量%配合されているので、自動給脂装置等の塗布装置にて給脂可能な流動性が付与され、自動給脂装置等の塗布装置で容易に且つ均一に塗布することができる。
【0035】
<2.潤滑剤組成物の製造方法>
上述した潤滑剤組成物は、流動パラフィンと、アルミニウム複合石鹸と、ポリイソブチレンと、モノオレイン酸ソルビタンとを含むグリースに、イソパラフィン系溶剤を30〜70重量%配合させることにより製造することができる。
【0036】
例えば、アルミニウム複合石鹸の原料となるステアリン酸と安息香酸と水酸化アルミニウムとに、流動パラフィンを配合し、加熱撹拌してアルミニウム複合石鹸の基グリースを得る。続いて、この基グリースに、流動パラフィンと、ポリイソブチレンと、モノオレイン酸ソルビタンとを配合して、十分(例えば10〜30分程度)撹拌を行った後、3本ロールミルに通すことによってグリースを得る。続いて、このグリースに、溶剤としてのイソパラフィン系溶剤を、潤滑剤組成物中に30〜70重量%配合させる。このような製造方法により、上述した潤滑剤組成物を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
実施例1では、グリース成分として、NSF H1の認証を受けているスミルーブGR(住鉱潤滑剤株式会社製)を用いた。また、溶剤成分として、炭素数8のイソパラフィン系炭化水素からなるイソパラフィン系溶剤を用いた。グリースと溶剤との配合量を調整してグリースの希釈を行い、グリースが70重量%、イソパラフィン系溶剤が30重量%配合された潤滑剤組成物を得た。
【0039】
(実施例2)
実施例2では、グリースが60重量%、イソパラフィン系溶剤が40重量%配合されるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0040】
(実施例3)
実施例3では、グリースが50重量%、イソパラフィン系溶剤が50重量%配合されるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0041】
(実施例4)
実施例4では、グリースが40重量%、イソパラフィン系溶剤が60重量%配合されるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0042】
(実施例5)
実施例5では、グリースが30重量%、イソパラフィン系溶剤が70重量%配合されるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0043】
(比較例1)
比較例1では、グリースが100重量%、すなわち、イソパラフィン系溶剤を含んでいない潤滑剤組成物を得たこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0044】
(比較例2)
比較例2では、グリースが80重量%、イソパラフィン系溶剤が20重量%配合されるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0045】
(比較例3)
比較例3では、グリースが20重量%、イソパラフィン系溶剤が80重量%配合されるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0046】
(比較例4)
比較例4では、グリースが90重量%、イソパラフィン系溶剤が10重量%配合されるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0047】
(比較例5)
比較例5では、グリースが10重量%、イソパラフィン系溶剤が90重量%配合されるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして潤滑剤組成物を得た。
【0048】
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5の潤滑剤組成物の組成を表1に示す。また、実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5の各潤滑剤組成物について、その性能を吐出性試験及び垂れ性試験によって評価し、その評価結果を表1に示す。
【0049】
吐出性試験は、試料をポンプにて給脂する機器を用いて、実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5の潤滑剤組成物を鉄板に塗布した際の潤滑剤組成物の吐出性を確認した。潤滑剤組成物の吐出が息継ぎなど無い状態で全く問題なく均一になされる場合には「◎」、ほぼ問題なくなされる場合には「○」、息継ぎなどが確認されて均一に吐出されない場合には「×」と判定し、「◎」又は「○」を合格とした。
【0050】
また、垂れ性試験では、機器から吐出した潤滑剤組成物が鉄板に均一に付着している場合には「○」、塗りムラや垂れ落ちが生じた場合には「×」として判定し、「○」を合格とした。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示すように、イソパラフィン系溶剤が潤滑剤組成物中に30〜70重量%配合された実施例1〜実施例5の潤滑剤組成物は、十分な流動性が付与されたため、吐出性試験及び垂れ性試験の結果が良好であった。
【0053】
また、実施例2〜実施例5で得られた潤滑剤組成物は、吐出性試験の結果が特に良好であった。実施例2〜実施例5で得られた潤滑剤組成物は、実施例1で得られた潤滑剤組成物よりも、より十分に流動性が付与されたためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油としての流動パラフィンと、増稠剤としてのアルミニウム複合石鹸と、増粘剤としてのポリイソブチレンと、防錆剤としてのモノオレイン酸ソルビタンとを含むグリースに、イソパラフィン系溶剤が30〜70重量%配合されていることを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記イソパラフィン系溶剤は、当該潤滑剤組成物中に40〜70重量%配合されていることを特徴とする請求項1記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記イソパラフィン系溶剤は、炭素数6〜9のイソパラフィン系炭化水素からなることを特徴とする請求項1又は2記載の潤滑剤組成物。

【公開番号】特開2013−60541(P2013−60541A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200354(P2011−200354)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(591213173)住鉱潤滑剤株式会社 (42)
【Fターム(参考)】