説明

潤滑及び潤滑油組成物

フッ素エラストマーエンジンシール材料に適合性があり、銅腐食要求を満たす潤滑油組成物用の無灰TBN供給源として有用なモノアリールトリアルキルフェニレンジアミン化合物、及びこのようなフェニレンジアミン化合物を含有する潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が参照により組み込まれている2009年10月29日に出願された米国特許出願第12/608,412号からの優先権を主張する。
本発明は、潤滑油組成物用の無灰TBN(Total Base Number:全塩基価)ブースターとして有用なフェニレンジアミン化合物、及びこの化合物を含有する、硫酸塩灰分(Sulfated ash:SASH)濃度が低下した潤滑油組成物、特にクランクケース潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境への懸念から、圧縮点火(ディーゼルを燃料とする)及び火花点火(ガソリンを燃料とする)軽量(light duty)内燃エンジンのCO、炭化水素及び窒素酸化物(NO)放出を減少させるために継続的な努力がなされている。さらに、圧縮点火内燃エンジンの粒子状物質放出を減少させるために継続的な努力がなされている。高馬力(heavy duty)ディーゼル車のための来るべき排出基準を満たすために、OEMs(original equipment manufactures)は、追加の排ガス後処理装置を必要とするかもしれない。このような排ガス後処理装置は、1種又は複数の酸化触媒、NO貯蔵触媒、及び/若しくはNH還元触媒を含み得る触媒コンバータ;並びに/又は粒子状物質捕集装置を含み得る。
【0003】
酸化触媒は、エンジン排ガスに存在する特定の元素/化合物への暴露によって、特に、リンを含有する潤滑油添加剤の分解によって排ガス中に導入されるリン及びリン化合物への暴露によって汚染され、その効果が弱くなることがある。還元触媒は、潤滑剤をブレンドするために使用される基油、及び硫黄を含有する潤滑油添加剤の両方の分解によって取り込まれるエンジン排ガス中の硫黄及び硫黄化合物に対して敏感である。粒子状物質捕集装置は、分解金属を含有する潤滑油添加剤の生成物である金属灰によって詰まってしまうことがある。
【0004】
長期の耐用寿命を確実にするために、このような後処理装置に最小限の悪影響しか与えない潤滑油添加剤を特定する必要がある。「新しいサービスフィル(service fill)」及び「ファーストフィル(first fill)」高馬力ディーゼル(heavy duty diesel:HDD)潤滑剤のためのOEM仕様では、0.4質量%の最大硫黄濃度;0.12質量%の最大リン濃度、及び1.1質量%未満の硫酸塩灰分含有量が要求され、これらの潤滑剤は、「mid−SAPS」潤滑剤と呼ばれる(ここで、「SAPS」は、「Sulfated Ash, Phosphorus, Sulfur(硫酸塩灰分、リン、硫黄)の頭字語である)。将来は、OEMは、さらに、これらの濃度最大濃度を、0.08質量%リン、0.2質量%硫黄及び0.8質量%硫酸塩灰分に制限する可能性があり、このような潤滑剤は、「low−SAPS」潤滑油組成物と呼ばれる。
【0005】
リン、硫黄及び灰分を含有する潤滑添加剤の量は、排ガス後処理装置に適合するmid−及びlow−SAPS潤滑剤を提供するために削減されつつあるので、潤滑油組成物は、高馬力エンジン潤滑剤についてのOEMの「新しいサービス」、及び「ファーストフィル」仕様、例えば、ACEA E6及びMB p228.51(欧州)及びAPI CI−4+及びAPI CJ−4(米国)仕様によって指示された十分な洗浄力を含めた高水準の潤滑性能を提供し続ける必要がある。上に記載された工業規格を満たす潤滑油組成物として分類される基準は、当業者に既知である。
【0006】
組成物の全塩基価(TBN)を増加させることによって、排ガス再循環(EGR)システム、特に再循環の前に排ガスが冷却される濃縮EGRシステムを備えたエンジン中で増加する燃焼の酸性副産物を中和する潤滑剤の能力を改善することができ、潤滑剤の排出間隔を延長することができる。従来、TBNは、硫酸塩灰分を組成物中に導入する過塩基化(overbased)洗浄剤によってもたらされている。硫酸塩灰分に寄与しないTBN増大成分を使用して高レベルのTBNを有する潤滑油組成物を提供することは有利であろう。高塩基性成分は、腐食を生じさせ、場合によっては、エンジンに使用される潤滑油組成物及びフッ素エラストマーシール材料の間の適合性を減少させることが知られているので、腐食を生じさせない、好ましくは、シール適合性に悪影響を与えない成分を提供することが望ましいであろう。改善された燃料節約に対する要望があるため、より粘性の低い潤滑剤、例えば、0W及び5W 20及び30グレードの潤滑剤が、より一般的になっている。このような潤滑剤のより容易な配合を可能にするために、添加剤によって導入されるポリマーの量を最小化することが好ましい。したがって、非ポリマー性の無灰TBN供給源を提供することがさらに望ましいであろう。
【0007】
米国特許第5,525,247号;5,672,570号;及び6,569,818号は、過塩基化洗浄剤を中性洗浄剤で置き換えることによって硫酸塩灰分含有量を減少させた「低灰分」潤滑油組成物を対象としている。これらの特許は、このような潤滑剤を、十分な洗浄力を提供するものとして記載しているが、それらは、例えば、HDDエンジンにおける使用のために十分なTBNを提供することは記載していない。米国特許出願第2007/0203031号は、無灰TBN供給源として高TBN窒素含有分散剤の使用を記載している。
米国特許第5,232,614号は、潤滑油組成物用の有効な抗酸化物質として置換パラ−フェニレンジアミンを記載している。英国特許第296592号は、N,N,N’−トリアルキル−N’−アリール−p−フェニレンジアミンを記載しているが、過酸化物−架橋ポリエチレン組成物用の抗酸化物質としてである。アルキル基のうちの2個は、1から4個の炭素原子を有する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ASTM D4739によって測定された無灰TBNブースターとして、潤滑油組成物にアリール−トリ脂肪族ヒドロカルビルフェニレンジアミンを提供することによって上記の問題に対処し、シール適合性及び銅腐食試験の要求に対処する。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、主要量の潤滑剤としての粘性をもつ油、及び少量の1種又は複数のN−アリール−N,N’,N’−脂肪族ヒドロカルビルフェニレンジアミンを含む、又はそれらを混合することによって製造される高馬力ディーゼル潤滑油などのクランクケース潤滑油組成物が提供され、ここで、それぞれの脂肪族ヒドロカルビル基、好ましくは、アルキル基は、独立に直鎖状であり、好ましくは、1から12個、好ましくは5から12個の炭素原子を有する。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、組成物のSASH含有量を同時に増加することなく、潤滑油組成物のTBNを増加する方法が提供され、この方法は、組成物中に、本発明の第一の態様に定義された、少量の1種又は複数のフェニレンジアミンを組み込むステップを含む。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、以下を含む、運転中の圧縮点火内燃エンジンの表面を潤滑する方法が提供される。
(a)主要量の潤滑剤としての粘性をもつ油中に、少量の請求項1に記載の1種又は複数のN−アリール−N,N’,N’−トリ脂肪族ヒドロカルビルフェニレンジアミンを加え、ASTM D4739で測定したTBNを、SASHを同時に増加することなく、高め、API CJ−4及びACEA E6規格の範囲に入る高温ベンチ腐食試験(ASTM D6594)における銅腐食性能を有し、MB p228.51規格の範囲に入るMB−AK6試験におけるフッ素エラストマーエンジンシール材料適合性能を有する潤滑油組成物を製造するステップ;
(b)前記潤滑油組成物をエンジンクランクケースに提供するステップ;及び
(c)前記エンジンを作動するステップ。
本発明の第4の態様によれば、第1の態様におけるように、高馬力エンジン潤滑剤用のACEA E6、MB p228.51、API CI−4+及びAPI CJ−4規格の1つ又は複数の性能基準を満たす潤滑油組成物が提供される。
【0012】
本発明の第5の態様によれば、排ガス再循環(EGR)システム、好ましくは濃縮EGRシステム及び粒子状物質捕集装置を備え、そのエンジンのクランクケースが、第一の態様の潤滑油組成物で潤滑される高馬力ディーゼルエンジンが提供される。
【0013】
本発明の第6の態様によれば、前記潤滑油組成物中に本発明の第1の態様のフェニレンジアミン化合物の1種又は複数を組み込むステップを含む、低減されたSASH含有量を有する高TBN潤滑油を生成する方法が提供される。
【0014】
本発明の第7の態様によれば、それぞれの脂肪族ヒドロカルビル、好ましくはアルキル基が、独立に直鎖であり、好ましくは、5から12個の、より好ましくは、5から8個の炭素原子を有するN−アリール−N,N’,N’−脂肪族ヒドロカルビルフェニレンジアミンが提供される。
【0015】
本明細書において、以下の用語及び表現は、使用される場合、以下に与えられる意味を有する。
「活性成分」又は「(a.i.)」は、希釈剤又は溶媒ではない添加物質を指し;
「含む(comprising)」又は任意の同系用語は、記載された特徴、ステップ、又は整数又は成分が存在することを明らかにするものであり、しかし、1種又は複数の他の特徴、ステップ、整数、成分又はそれらの群の存在又は添加を除外するものではなく;「からなる(consist of)」又は「から本質的になる(consist essentially of)」という表現又は同系は、「含む(comprise)」又は同系の範囲を包含することができ、ここで、「から本質的になる(consist essentially of)」は、それが適用される組成物の特性に物質的に影響を与えない物質の含有を許容し;
「主要量(major amount)」は、組成物の50質量%を上回ることを意味し;
「少量(minor amount)」は、組成物の50質量%未満を意味し;
「TBN」は、示されたようにASTM D2896又はASTM D4739によって測定された全塩基価を意味する。
本明細書においてさらに:
「リン含有量」は、ASTM D5185による測定により;
「硫酸塩灰分含有量」は、ASTM D874による測定により;
「硫黄含有量」は、ASTM D2622による測定により;
「KV100」は、ASTM D445によって測定された100Cにおける動粘度を意味し;
「ヒドロカルビル」、及び同系用語は、炭素及び水素原子を含有し、炭素原子を介して直接分子の残りに結合している基を指す。それらは、ヘテロ原子を含有することができるが、但し、このようなヘテロ原子が、ヒドロカルビル基の炭化水素としての性質に本質的に影響を及ぼさないことを条件とする。
【0016】
同様に、必須、任意及び習慣的な使用される様々な成分は、配合、貯蔵又は使用の条件下で反応し得、本発明は任意のこのような反応の結果として得ることができる又は得られる生成物も提供することは理解されよう。
【0017】
さらに、本明細書に記載された任意の品質上限及び下限、範囲上限及び下限並びに比率上限及び下限は、独立に組み合わせることができることは理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のフェニレンジアミンは、ASTM D2896で測定及び同様にASTM D4739で測定された潤滑剤のTBNに寄与することが見出される。さらに、本明細書の実施例に示されるように、上記フェニレンジアミンは、潤滑剤がMBSEAL−2/AK6試験におけるようなシール適合性試験のいずれにも不合格となる原因とならず、潤滑剤がASTM D6594に記載されたHTCBT試験、特にそれらの銅腐食試験のいずれにも不合格となる原因とならない。
【0019】
本発明において有用なフェニレンジアミンは、下式で表すことができる。
【化1】


式中、Rは、アリールであり、R、R及びRのそれぞれは、独立に直鎖C〜C12脂肪族ヒドロカルビル、好ましくはアルキル、最も好ましくはC〜C、アルキルであり;
、すなわち、それぞれのRは、独立に水素又はヒドロカルビル、好ましくは1〜12個の炭素原子を有するアルキルであり;
nは、0〜4である。
【0020】
好ましくは、本発明において有用なフェニレンジアミン化合物は、少なくとも50、例えば少なくとも100、好ましくは少なくとも120mg KOH/gの(ASTM D−2896及び/又はASTM D4739で測定、好ましくはASTM D4739で測定された)TBNを有する。
【0021】
本発明のフェニレンジアミンは、単一化合物の形態であってよく、又は上式の化合物の混合物であってよい。
【0022】
好ましくは、本発明のフェニレンジアミンは、平均して、450から700までの、例えば450から650までの、好ましくは500から600までの分子量を有する。
【0023】
好ましくは、窒素原子は、互いにパラに配置される。
【0024】
本発明において有用なフェニレンジアミン化合物は、当技術分野で知られている方法によって生成することができる。
【0025】
本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑剤としての粘性をもつ油及び少量のフェニレンジアミンを含む。
【0026】
本発明との関連で有用な潤滑剤としての粘性をもつ油は、天然潤滑油、合成潤滑油及びそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、粘度において、ガソリンエンジン油、鉱物潤滑油及び高馬力ディーゼル油などの、軽質蒸留鉱油から重質潤滑油の範囲に及び得る。一般的に、油の粘度は、100℃で測定して2から40までの、特に4から20mm−1までの範囲に及ぶ。
【0027】
天然油には、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油);液体石油及びパラフィン、ナフテン及び混合パラフィン−ナフテン型の水素化精製された、溶媒処理又は酸処理された鉱油が含まれる。石炭又はシェールから誘導される潤滑剤としての粘性をもつ油は、同様に有用な基油として役立つ。
【0028】
合成潤滑油には、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば重合オレフィン及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);及びアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド並びにそれらの誘導体、類似体及び同族体が含まれる。同様に有用であるのは、フィッシャー−トロプッシュ合成炭化水素からの合成軽油(gas to liquid)方法から誘導される合成油であり、これらは、一般的に合成軽油、又は「GTL」基油と呼ばれる。
【0029】
末端ヒドロキシル基が、エステル化、エーテル化などにより修飾されているアルキレンオキシドポリマー及び共重合体並びにそれらの誘導体は、既知の合成潤滑油の別のクラスを構成する。これらは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合により調製されるポリオキシアルキレンポリマー、及びポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチル−ポリイソ−プロピレングリコールエーテル又は1000〜1500の分子量を有するポリ−エチレングリコールのジフェニルエーテル);及びそれらのモノ及びポリカルボン酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C〜C脂肪酸エステル及びC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0030】
合成潤滑油の別の好適なクラスは、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)の種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、ポロピレングリコール)とのエステルを含む。このようなエステルの特定の例には、ジブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2−エチルヘキサン酸と反応させることにより形成される複合エステルが含まれる。
【0031】
合成油として有用なエステルには、C〜C12モノカルボン酸並びにネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール及びトリペンタエリトリトールなどのポリオール及びポリオールエステルから生成されるものも含まれる。
【0032】
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油などのシリコンをベースとする油は、合成潤滑剤の別の有用なクラスを含み;このような油には、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ−(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(p−tert−ブチル−フェニル)シリケート、ヘキサ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが含まれる。他の合成潤滑油には、リンを含有する酸(例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマー性テトラヒドロフランの液体エステルが含まれる。
【0033】
潤滑剤としての粘性をもつ油は、グループI、グループII又はグループIII、原料又は前述の原料の基油ブレンドを含むことができる。好ましくは、潤滑剤としての粘性をもつ油は、グループII又はグループIII原料、又はそれらの混合物、又はグループI原料及び1種若しくは複数のグループII及びグループIIIの混合物である。好ましくは、主要量の潤滑剤としての粘性をもつ油は、グループII、グループIII、グループIV又はグループV原料、又はそれらの混合物である。原料、又は原料ブレンドは、好ましくは少なくとも65、より好ましくは少なくとも75、例えば、少なくとも85%の飽和物含有量を有する。最も好ましくは、原料、又は原料ブレンドは、90%より大きい飽和物含有量を有する。好ましくは、上記油又は油ブレンドは、1未満の、好ましくは0.6未満の、最も好ましくは0.4重量%未満の硫黄含有量を有する。
【0034】
好ましくは、Noack揮発度試験(ASTM D5880)によって測定された上記油又は油ブレンドの揮発度は、30以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、最も好ましくは16%以下である。好ましくは、上記油又は油ブレンドの粘度指数(VI)は、少なくとも85、好ましくは、少なくとも100、最も好ましくは、約105から140までである。
【0035】
本発明における原料及び基油の定義は、the American Petroleum Institute(API)publication「Engine Oil Licensing and Certification System」、Industry Services Department、第14版、1996年12月、補遺1、1998年12月に見出されるものと同じである。前記刊行物は、原料を次のように分類している。
a)グループI原料は、表1に指定された試験方法を使用して、90パーセント未満の飽和物及び/又は0.03パーセントより多くの硫黄を含有し、80以上及び120未満の粘度指数を有する。
b)グループII原料は、表1に指定された試験方法を使用して、90パーセント以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含有し、80以上及び120未満の粘度指数を有する。
c)グループIII原料は、表1に指定された試験方法を使用して、90パーセント以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。
d)グループIV原料は、ポリアルファオレフィン(PAO)である。
e)グループV原料には、グループI、II、III、又はIVに含まれない全ての他の原料が含まれる。
【表1】

【0036】
金属を含有する又は灰分を形成する洗浄剤は、付着物を減少又は取り除くための洗浄剤として及び酸中和剤又はさび止め剤としての両方で機能し、それによって、摩耗及び腐食を低減しエンジン寿命を増加させる。洗浄剤は、一般的に、長い疎水性尾部を有する極性頭部を含み、極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。上記塩は、実質的に化学量論量の金属を含有することができ、この場合、それらは、正塩又は中性塩として通常記載され、0から80までの全塩基価又はTBN(ASTM D2896に従って測定され得る)を一般的に有する。大量の金属塩基を、過剰な金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)を酸性ガス(例えば、二酸化炭素)と反応させることによって組み込むことができる。得られる過塩基化洗浄剤は、金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外層として中性洗浄剤を含む。このような過塩基化洗浄剤は、150以上のTBNを有することができ、一般的に250から450以上のTBNを有する。ヒドロカルビル化フェニレンジアミンの存在下、過塩基化洗浄剤の量は減少させることができ、或いは過塩基化の減少したレベル(例えば、100から200のTBNを有する洗浄剤)を有する洗浄剤、又は中性洗浄剤を使用することができ、それらの性能の減少を伴わずに潤滑油組成物のSASH含有量の対応する低減をもたらすことができる。
【0037】
使用し得る洗浄剤には、金属、特にアルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムの油溶性中性及び過塩基化スルホン酸塩、フェノール塩、硫化フェノール塩、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、及びナフテン酸塩及び他の油溶性カルボン酸塩が含まれる。最も一般的に使用される金属は、カルシウム及びマグネシウムであり、これらは、両方とも潤滑剤に使用される洗浄剤中に存在してよく、さらにカルシウム及び/又はマグネシウムのナトリウムとの混合物である。特に便利な金属洗浄剤は、20から450TBNまでのTBNを有する中性及び過塩基化カルシウムスルホン酸塩、並びに50から450までTBNを有する中性及び過塩基化カルシウムフェノール塩及び硫化フェノール塩である。過塩基化又は中性又はそれらの両方に関わらず、洗浄剤の組合せを使用することができる。
【0038】
スルホン酸塩は、石油の精留又は芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるものなどのアルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化によって一般的に得られるスルホン酸から調製することができる。例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル又はクロロベンゼン、クロロトルエン及びクロロナフタレンなどのそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することによって得られるものが含まれた。アルキル化は、触媒の存在下で、約3から70個超の炭素原子を有するアルキル化剤を用いて実施することができる。アルカリルスルホン酸塩は、通常、一つのアルキル置換芳香族部分当たり約9から約80個以上の炭素原子、好ましくは約16から約60個の炭素原子を含有する。
【0039】
油溶性スルホン酸塩又はアルカリルスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸塩、硫化物、水硫化物、硝酸塩、ホウ酸塩及びエーテルによって中和することができる。金属化合物の量は、最終生成物の所望のTBNを考慮して選択されるが、一般的に、化学量論的に必要とされるものの約100から220質量%まで(好ましくは少なくとも125質量%)に及ぶ。
【0040】
フェノール及び硫化フェノールの金属塩は、酸化物又は水酸化物などの適切な金属化合物との反応によって調製され、中性又は過塩基化生成物を、当技術分野で知られている方法によって得ることができる。硫化フェノールは、フェノールを硫黄又は硫化水素、モノハロゲン化硫黄又はジハロゲン化硫黄などの硫黄を含有する化合物と反応させて、二つ以上のフェノールが硫黄を含有する橋によって架橋されている化合物の一般的に混合物である生成物を形成することによって調製することができる。
【0041】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油に添加した場合、ガソリン及びディーゼルエンジンにおける使用で、付着物の形成を有効に減少させる1種又は複数の無灰分散剤をさらに含有することができる。本発明の組成物において有用な無灰分散剤は、分散すべき粒子と会合し得る官能基を有する油溶性ポリマー性の長い主鎖を含む。一般的に、このような分散剤は、しばしば架橋原子団を介してポリマー主鎖に結合しているアミン、アルコール、アミド又はエステル極性部分を含む。無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素で置換されたモノカルボン酸及びポリカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミド及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体;それらに直接結合したポリアミン部分を有する長鎖脂肪族炭化水素;長鎖置換フェノールをホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンと縮合させることによって形成されるMannich縮合生成物から選択することができる。使用されている最も一般的な分散剤は、周知のスクシンイミド分散剤であり、これは、ヒドロカルビル置換コハク酸無水物及びポリ(アルキレンアミン)の縮合生成物である。モノ−スクシンイミド及びビス−スクシンイミド分散剤(及びそれらの混合物)の両方とも周知である。
【0042】
好ましくは、無灰分散剤は、4,000以上、例えば4,000及び20,000の間の数平均分子量(Mn)を有する「高分子量」分散剤である。正確な分子量の範囲は、分散剤を形成するために使用されたポリマーのタイプ、存在する官能基の数、及び使用される極性官能基のタイプによって決まるであろう。例えば、ポリイソブチレン誘導体化分散剤について、高分子量分散剤は、1680から5600までの数平均分子量を有するポリマー主鎖を用いて形成されたものである。典型的な市販のポリイソブチレンに基づく分散剤は、マレイン酸無水物(MW=98)によって官能化され、100から350までの分子量を有するポリアミンで誘導体化された約900から2300までの範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンポリマーを含有する。低分子量のポリマーも、複数のポリマー鎖を分散剤に組み込むことによって高分子量分散剤を形成するために使用することができ、これは、当技術分野で知られている方法を使用して達成することができる。
【0043】
分散剤の好ましい群には、ポリアミン−誘導体化ポリα−オレフィン分散剤、特にエチレン/ブテンアルファ−オレフィン及びポリイソブチレンに基づく分散剤が含まれる。
特に好ましいのは、コハク酸無水物基で置換されたポリイソブチレンから誘導され、ポリエチレンアミン、例えば、ポリエチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン;又はポリオキシアルキレンポリアミン、例えば、ポリオキシプロピレンジアミン、トリメチロールアミノメタン;ヒドロキシ化合物、例えば、ペンタエリトリトール;及びそれらの組合せと反応させた無灰分散剤である。特に好ましい分散剤の組合せは、コハク酸無水物基で置換され、1モルの(A)当たり約0.3から約2モルの(B)、(C)及び/又は(D)を使用して、(B)ヒドロキシ化合物、例えば、ペンタエリトリトール;(C)ポリオキシアルキレンポリアミン、例えば、ポリオキシプロピレンジアミン、又は(D)ポリアルキレンジアミン、例えば、ポリエチレンジアミン及びテトラエチレンペンタミンと反応させた(A)ポリイソブチレンの組合せである。別の好ましい分散剤の組合せは、米国特許第3,632,511号に記載されたように、(A)ポリイソブテニルコハク酸無水物の(B)ポリアルキレンポリアミン、例えば、テトラエチレンペンタミン、及び(C)多価アルコール又はポリヒドロキシ置換脂肪族第一級アミン、例えば、ペンタエリトリトール又はトリメチロールアミノメタンとの組合せを含む。
【0044】
無灰分散剤の別のクラスは、Mannich塩基縮合生成物を含む。一般的に、これらの生成物は、例えば、米国特許第3,442,808号に開示されたように、約1モルのアルキル置換モノ−又はポリヒドロキシベンゼンを、1から2.5モルのカルボニル化合物(単数又は複数)(例えば、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒド)及び0.5から2モルのポリアルキレンポリアミンと縮合させることによって調製される。このようなMannich塩基縮合生成物は、ベンゼン基の置換基としてメタロセン触媒による重合のポリマー生成物を含むことができ、又は米国特許第3,442,808号に開示されたものと類似の方法で、コハク酸無水物で置換されたこのようなポリマーを含有する化合物と反応させることができる。メタロセン触媒系を使用して合成された官能化及び/又は誘導体化オレフィンポリマーの例は、上記に特定された刊行物に記載されている。
【0045】
上記分散剤は、米国特許第3,087,936号及び3,254,025号に一般的に教示されているように、ホウ素化などの様々な従来の後処理によってさらに後処理することができる。分散剤のホウ素化は、アシル窒素含有分散剤を、アシル化窒素組成物の各1モルについてホウ素の0.1から20まで原子比をもたらすために十分な量のホウ素酸化物、ホウ素ハロゲン化物、ホウ素酸、及びホウ素酸のエステルなどのホウ素化合物で処理することによって容易に達成される。有用な分散剤は、0.05から2.0まで、例えば、0.05から0.7質量%までのホウ素を含有する。ホウ素は、無水ホウ酸ポリマー(主として(HBO)として生成物中に出現するが、アミン塩、例えば、ジイミドのメタホウ酸塩として分散剤イミド及びジイミドに結合していると考えられる。ホウ素化は、(アシル窒素化合物の質量に対して)0.5から4まで、例えば、1から3質量%までのホウ素化合物、好ましくはホウ酸を、通常、スラリーとして、アシル窒素化合物に添加し、135から190まで、例えば、140から170°Cまで1から5時間撹拌加熱し、次いで窒素ストリッピングすることによって実施することができる。別法として、ホウ素処理は、ホウ酸をジカルボン酸物質及びアミンの高温反応混合物に、水を除去しながら添加することによって実施することができる。当技術分野で一般的に知られている他の後反応プロセスも適用することができる。
【0046】
上記分散剤は、いわゆる「キャッピング剤」との反応によってさらに後処理することもできる。習慣的に、窒素含有分散剤は、このような分散剤がフッ素エラストマーエンジンシールに対して有する有害作用を低減するために「キャッピング」されてきた。多数のキャッピング剤及び方法が知られている。既知の「キャッピング剤」の中で、塩基性分散剤のアミノ基を非塩基性部分(例えば、アミド又はイミド基)に転換するものが、最も好適である。窒素含有分散剤及びアルキルアセトアセテート(例えば、エチルアセトアセテート(EAA))の反応が、例えば、米国特許第4,839,071号;4,839,072号及び4,579,675号に記載されている。窒素含有分散剤及びギ酸の反応が、例えば、米国特許第3,185,704号に記載されている。窒素含有分散剤及び他の好適なキャッピング剤との反応生成物が、米国特許第4,663,064号(グリコール酸);4,612,132号;5,334,321号;5,356,552号;5,716,912号;5,849,676号;5,861,363号(アルキル及びアルキレンカーボネート、例えば、エチレンカーボネート);5,328,622号(モノ−エポキシド);5,026,495号;5,085,788号;5,259,906号;5,407,591号(ポリ(例えば、ビス)−エポキシド)及び4,686,054号(マレイン酸無水物又はコハク酸無水物)に記載されている。前述の羅列は、網羅的なものではなく、窒素含有分散剤をキャッピングする他の方法は、当業者に既知である。
【0047】
十分なピストン付着物制御のために、窒素含有分散剤を、潤滑油組成物に0.03から0.15まで、好ましくは0.07から0.12質量%までの窒素を提供する量で添加することができる。
【0048】
無灰分散剤は、塩基性であり、したがって、極性基の性質及び分散剤がホウ素化又はキャッピング剤で処理されているか否かによって、5から200mg KOH/gまでであり得るTBNを有する。しかし、高濃度の塩基性分散剤窒素は、エンジンシールを形成するために習慣的に使用されているフッ素エラストマー材料に有害な作用を有することが知られており、したがって、ピストン付着物制御を提供するために必要な最小量の分散剤を使用すること、及び5より大きいTBNを有する分散剤を実質的に使わないこと、又は好ましくはまったく使わないことが望ましい。使用される分散剤の量は、4以下、好ましくは3mg KOH/g以下のTBNだけ潤滑油組成物に寄与することが好ましい。分散剤が、潤滑油組成物のTBNの30%以下、好ましくは25%以下をもたらすことが、さらに好ましい。
【0049】
追加の添加剤を、本発明の組成物に組み込み、それらが特定の要求を満たすことができるようにさせることができる。潤滑油組成物に含むことができる添加剤の例は、金属さび止め剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、酸化防止剤、摩擦改質剤、他の分散剤、消泡剤、摩耗防止剤及び流動点降下剤である。いくつかが、以下にさらに詳細に論じられる。
【0050】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、摩耗防止剤及び酸化防止剤としてしばしば使用される。金属は、アルカリ又はアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、錫、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅又は亜鉛であってよく、亜鉛が好ましい。亜鉛塩は、潤滑油組成物の総重量に対して、0.1から10まで、好ましくは0.2から2重量%までの量で潤滑油に最も一般的に使用される。それらは、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を、通常、1種又は複数のアルコール又はフェノールのPとの反応によって最初に形成し、次いで形成されたDDPAを亜鉛化合物で中和することによって、既知の技術に従って調製することができる。例えば、ジチオリン酸は、第1級アルコール及び第2級アルコールの混合物を反応させることによって生成することができる。別法として、一方のヒドロカルビル基が、特性上完全に二級であり、他方のヒドロカルビル基が、特性上完全に一級である場合、多種のジチオリン酸を調製することができる。亜鉛塩を生成するために、任意の塩基性又は中性亜鉛化合物を使用することができるが、酸化物、水酸化物及びカルボネートが最も一般的に使用される。市販の添加剤は、中和反応における過剰な塩基性亜鉛化合物の使用のために、過剰な亜鉛をしばしば含有する。
【0051】
好ましい亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、以下の式によって表すことができる。
【化2】


式中、R及びR’は、1から18まで、好ましくは2から12個までの炭素原子を含有する同じ又は異なるヒドロカルビルラジカルであってよく、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリル及び脂環式ラジカルなどのラジカルを含む。R及びR’基として特に好ましいのは、2〜8個の炭素原子のアルキル基である。したがって、上記ラジカルは、例えば、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸における炭素原子(即ち、R及びR’)の合計数は、一般的に約5以上である。したがって、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含むことができる。組成物の総質量に対して約0.02から約0.12質量%、例えば、約0.03から約0.10質量%、又は約0.05から約0.08質量%のリン濃度を含有する潤滑剤組成物と共に使用される場合、本発明は、特に有用であり得る。好ましい一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、主に(例えば、50モル%超、例えば、60モル%超)第2級アルコールから誘導された亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含有する。
【0052】
酸化防止剤又は抗酸化物質は、鉱油が使用中に劣化する傾向を減少する。酸化変質は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニス様付着物、及び粘度増加によって明示され得る。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、好ましくはC〜C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノール硫化物、油溶性フェノール塩及び硫化フェノール塩、リン硫化又は硫化炭化水素、リンエステル、金属チオカルバメート、米国特許第4,867,890号に記載された油溶性銅化合物、及びモリブデンを含有する化合物が含まれる。
【0053】
1個のアミン窒素に直接結合している少なくとも2個の芳香族基を有する一般的な油溶性芳香族アミンは、6から16個までの炭素原子を含有する。上記アミンは、3個以上の芳香族基を含有し得る。2つの芳香族基が、共有結合によって又は原子若しくは基(例えば、酸素又は硫黄原子、又は−CO−、−SO−又はアルキレン基)によって結合しており、2つが、1個のアミン窒素に直接結合している、少なくとも3個の芳香族基の合計を有する化合物は、同様に、窒素に直接結合している少なくとも2個の芳香族基を有する芳香族アミンと考えられる。芳香族環は、一般的にアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アシルアミノ、ヒドロキシ、及びニトロ基から選択される1種又は複数の置換基で置換されている。
【0054】
一般的に、複数の抗酸化物質が組み合わせて使用される。好ましい一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、0.1から1.2質量%までのアミン系酸化防止剤及び0.1から3質量%までのフェノール系酸化防止剤を含有する。別の好ましい実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、0.1から1.2質量%までのアミン系酸化防止剤、0.1から3質量%までのフェノール系酸化防止剤及び潤滑油組成物に10から1000ppmまでのモリブデンを提供する量のモリブデン化合物を含有する。
【0055】
好適な粘度調整剤の代表例は、ポリイソブチレン、エチレン及びプロピレンのコポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸及びビニル化合物のコポリマー、スチレン及びアクリル酸エステルの共重合体、並びにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、及びイソプレン/ブタジエンの部分水素化コポリマー、並びにブタジエン及びイソプレンの部分水素化ホモポリマーである。
【0056】
最終油の他の成分と相溶性がある摩擦改質剤及び燃料節約剤(fuel economy agent)も含むことができる。このような材料の例には、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、グリセリルモノ−オレエート;長鎖ポリカルボン酸のジオールとのエステル、例えば、二量化不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;並びにアルコキシル化アルキル置換モノ−アミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシル化獣脂アミン及びエトキシル化獣脂エーテルアミンが含まれる。
【0057】
他の既知の摩擦改質剤は、油溶性有機モリブデン化合物を含む。このような有機モリブデン摩擦改質剤は、酸化防止剤及び摩耗防止剤の信頼性も潤滑油組成物に提供する。このような油溶性有機モリブデン化合物の例には、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、硫化物など、及びそれらの混合物が含まれる。特に好ましいのは、モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート及びアルキルチオキサンテートである。
【0058】
さらに、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってよい。これらの化合物は、ASTM試験D−664又はD−2896滴定法で測定して塩基性窒素化合物と反応し、一般的に六価である。含まれるのは、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属モリブデン酸塩及び他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl、MoOBr、MoCl、3酸化モリブデン又は類似の酸性モリブデン化合物である。
【0059】
本発明の組成物において有用なモリブデン化合物の中に、次式の有機モリブデン化合物がある。
Mo(ROCS及びMo(RSCS
式中、Rは、一般的に1から30個までの炭素原子、及び好ましくは2〜12個の炭素原子の、アルキル、アリール、アラルキル及びアルコキシアルキルからなる群から選択される有機基であり、最も好ましくは2〜12個の炭素原子のアルキルである。特に好ましいのは、モリブデンのジアルキルジチオカルバメートである。
【0060】
本発明の潤滑組成物において有用な有機モリブデン化合物の別の群は、三核モリブデン化合物、特に式Moのもの及びそれらの混合物である(式中、Lは、該化合物を油中で可溶性又は分散性にするために十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立に選択されるリガンドであり、nは、1から4であり、kは、4から7まで変化し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルなどの中性電子供与化合物の群から選択され、zは、0から5までの範囲であり、非化学量論値を含む)。少なくとも21個の合計炭素原子、例えば少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が、全てのリガンド有機基の中に存在すべきである。
【0061】
分散剤−粘度指数向上剤は、粘度指数向上剤としても分散剤としても機能する。分散剤−粘度指数向上剤の例には、アミン、例えばポリアミンの、ヒドロカルビル置換基が、化合物に粘度指数向上性を付与するために十分な長さの鎖を含むヒドロカルビル置換モノ−又はジ−カルボン酸との反応生成物が含まれる。一般的に、粘度指数向上剤分散剤は、例えば、ビニルアルコールのC〜C24不飽和エステル若しくはC〜C10不飽和モノ−カルボン酸若しくはC〜C10ジ−カルボン酸の、4〜20個の炭素原子を有する不飽和窒素含有モノマーとのポリマー;C〜C20オレフィンの、アミン、ヒドロキシルアミン若しくはアルコールで中和された不飽和C〜C10モノ−若しくはジ−カルボン酸とのポリマー;又はエチレンの、C〜C20オレフィンとの、C〜C20不飽和窒素含有モノマーをそれらの上にグラフトすることによって、若しくは不飽和酸をポリマー主鎖上にグラフトし、次いでグラフトした酸のカルボン酸基を、アミン、ヒドロキシアミン又はアルコールと反応させることによってさらに反応させたポリマーであってよい。
【0062】
流動点降下剤は、別に潤滑油流動性向上剤(LOFI)として知られているが、流動体が流れる又は流動体を注ぐことができる最低温度を低下させる。このような添加剤はよく知られている。流動体の低温流動性を向上させる添加剤に典型的なのは、C〜C18ジアルキルフマレート/ビニルアセテートコポリマー、及びポリメタクリレートである。泡沫制御は、ポリシロキサンタイプ、例えば、シリコーン油又はポリジメチルシロキサンの消泡剤によって提供され得る。
【0063】
上記の添加剤のいくつかは、多くの作用を提供することができ;したがって、例えば、単一の添加剤は、分散剤−酸化防止剤として作用することもある。この手法は、よく知られており、本明細書でさらに詳述する必要はない。
【0064】
本発明において、ブレンドの粘度の安定性を維持する添加剤を含むことも好ましいことがある。したがって、極性基を含有する添加剤は、予備ブレンド段階で好適に低い粘度を達成するが、いくつかの組成物は、長期間保存された場合、粘度が増加することが観測されている。この粘度増加を制御する上で有効な添加剤には、上記に開示された無灰分散剤の調製に使用されるモノ−又はジカルボン酸又は無水物との反応によって官能化された長鎖炭化水素が含まれる。
【0065】
潤滑組成物が、1種又は複数の上記の添加剤を含有する場合、それぞれの添加剤が、一般的に、該添加剤がその所望の機能を提供し得る量で基油にブレンドされる。
【0066】
潤滑組成物が、1種又は複数の上記の添加剤を含有する場合、それぞれの添加剤が、一般的に、該添加剤がその所望の機能を提供し得る量で基油にブレンドされる。クランクケース潤滑剤に使用される場合の、このような添加剤の代表的な有効量を以下に挙げる。記載された全ての値は、質量パーセント活性成分として記載されている。
【表2】

【0067】
本発明の完全配合潤滑油組成物は、少なくとも8.5、好ましくは少なくとも9、例えば、8.5から13まで、好ましくは9から13まで、より好ましくは9から11mg、KOH/g(ASTM D2896)までのTBNを有することが好ましい。
【0068】
本発明の完全配合潤滑油組成物は、1.1以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8質量%以下の硫酸塩灰分(SASH)含有量(ASTM D−874)を有することが好ましい。
【0069】
好ましくは、本発明の完全配合潤滑油組成物は、組成物のTBNの少なくとも5、例えば、少なくとも10、例えば、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば、少なくとも25%をフェニレンジアミン化合物の少なくとも1種を含む無灰TBN供給源から得る。より好ましくは、本発明の完全配合潤滑油組成物は、組成物のTBNの少なくとも5、好ましくは少なくとも10、例えば、少なくとも15、より好ましくは少なくとも20%をフェニレンジアミン化合物の少なくとも1種から得、組成物のTBNの25未満、好ましくは20未満、より好ましくは15%未満を塩基性分散剤を含むフェニレンジアミン化合物以外の無灰TBN供給源から得る。
【0070】
本発明の完全配合潤滑油組成物は、0.4未満、より好ましくは0.35未満、より好ましくは約0.03未満、例えば、0.15質量%未満の硫黄含有量を有することがさらに好ましい。好ましくは、完全配合潤滑油組成物(全ての添加剤及び添加希釈剤を加えた潤滑剤としての粘性をもつ油)のNoack揮発度(ASTM D5880)は、13より大きくなく、例えば、12より大きくなく、好ましくは10より大きくない。本発明の完全配合潤滑油組成物は、好ましくは、1200より大きくない、例えば、1000より大きくない、又は800ppmより大きくないリンを有する。
【0071】
それによっていくつかの添加剤を、潤滑油組成物を生成するために同時に油に添加することができる、添加剤を含む1種又は複数の添加剤濃縮物(濃縮物は、添加剤パッケージと時々呼ばれる)を調製することは、必須ではないものの、望ましい場合がある。本発明の潤滑油組成物の調製用の濃縮物は、例えば、2.5、例えば5から30質量%までの1種又は複数のフェニレンジアミン化合物;10から40質量%までの窒素含有分散剤;2から20質量%までのアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン化合物、又はそれらの混合物;5から40質量%までの洗浄剤;及び2から20質量%までの金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートを含有し得る。
【0072】
最終組成物は、5から25まで、好ましくは5から18まで、一般的に10から15質量%までの濃縮物を使用することができ、残りは、潤滑剤としての粘性をもつ油及び粘度調整剤である。
【0073】
本明細書で表される全ての重量(及び質量)パーセント(特に指定のない限り)は、任意の関連した希釈剤を除いた、添加剤、及び/又は添加剤パッケージの活性成分(A.I.)含有量に基づく。しかし、洗浄剤は、習慣的に希釈油中で生成され、これは、生成物から取り除かれず、洗浄剤のTBNが、関連の希釈油中の活性な洗浄剤に習慣的に与えられる。したがって、重量(及び質量)パーセントは、洗浄剤に言及する場合、(特に指定のない限り)活性成分及び関連希釈油の合計重量(又は質量)パーセントである。
【0074】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに理解されることになるが、ここで、全ての部は、特に断りのない限り重量(又は質量)部である。
【実施例】
【0075】
本発明が、以下の実施例によって例示されるが、決してこれらに限定されるものではない。
【0076】
TBN性能
潤滑油組成物の塩基性度は、酸滴定によって求めることができる。得られる中和価は、全塩基価、又はTBNとして表され、様々な方法を使用して測定され得る。無灰塩基供給源を評価するために習慣的に選択される2つの方法は、ASTM D4739(電位差塩酸滴定)及びASTM D2896(電位差過塩素酸滴定)である。ASTM D2896は、ASTM D4739に比べてより強い酸及びより極性の強い溶媒系を使用する。より強い酸及びより極性の強い溶媒の組合せは、強塩基及び弱塩基の両方の存在を測定するより再現性のある方法をもたらす。ASTM D2896で測定されたTBN値は、新しい油仕様においてしばしば使用される。ASTM D4739の方法は、TBN減少/保持を測定するのにエンジン試験及び使用される油で有利である。一般的に、ASTM D4739の方法は、より強い塩基性種のみが滴定されるために、より低い測定TBN値をもたらす。
【0077】
成分
以下のフェニレンジアミン(「PDA」)を使用した。
PDA1:N,N,N−トリ−n−ペンチル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン
PDA2:N,N,N−トリ−イソ−ブチル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン(比較用)
PDA3:N,N,N−トリ−(2−エチルヘキシル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン(比較用)
PDA4:N,N−ジ−イソ−ブチル−N−(1−メチルデシル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン(比較用)
【0078】
PDA1は、本発明のものであり;PDA2−4は、比較用である。それぞれのPDAは、Abdel−Majid,A.F.ら、61J.Org.Chem.3849−62(1996年)の方法を修正してフェニレンジアミンのアルデヒド又はケトン及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリドによる還元的アルキル化を使用することによって生成された。当業者は、化学量論組成、反応時間、及び反応温度における調節が、様々な出発原料との所望の反応を達成するために必要であり得ることを理解されよう。以下の実施例は、この方法を例証する。
【0079】
合成実施例
PDA1:N−フェニル−N,N’,N’−トリ−n−ペンチル−p−フェニレンジアミン
ジクロロメタン(500mL)中のN−フェニル−p−フェニレンジアミン(22.4g、122mmol)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(100g、472mmol)の懸濁液を、還流冷却器を備えた1リットルフラスコ中において室温で撹拌した。バレルアルデヒド(40.7g、472mmol)を、少しずつ(毎20分5mL)添加した。この反応物を室温で終夜放置した。反応が完了したことがTLCによって示され、飽和水性NaHCOを用いてクエンチした。この混合物を分配し、有機相を飽和水性NaHCO、水及びブラインで洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、濾過し、濃縮して、濃色の油が得られ、これをカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0080】
PDAの2−4を類似の方法によって製造した。
【0081】
潤滑剤
油中に存在する塩基性成分の量は、酸滴定によって求めることができる。得られる中和価は、全塩基価、又はTBNとして表される。添加したPDAによってもたらされる追加のTBNを測定するために、ASTM方法のD2896及びD4739の両方で、参照油中で1%及び2%の処理量において、試料を試験した。D4739の方法は、D2896と比べて極性がより弱い溶媒及びより弱い酸を使用し、そのため、より強い塩基だけが滴定される。D4739は、酸を中和する油の能力のより正確な尺度として、さらにこの特性に関連したより良い性能のためしばしば使用される。
【0082】
使用されたアルキル化N−アリールフェニレンジアミン化合物は、上記の四つであった。
【0083】
(例1)
基油中に分散剤、洗浄剤混合物、酸化防止剤、ZDDP摩耗防止剤、流動点降下剤及び粘度調整剤を含有する完全配合潤滑油組成物を調製した。市販クランクケース潤滑剤を代表する潤滑油組成物を、対照(参照)潤滑剤として使用した。
【0084】
上記のN−アリールフェニレンジアミン化合物の性能を調べるために、1.00質量%及び2.00質量%のPDA1及び1.00質量%及び2.00質量%のPDA2を、別々の潤滑剤試料にそれぞれ添加した。基油の追加の量を、試料のそれぞれに添加して、比較可能な総質量にした。得られる試料のTBNを、ASTM D4739及びASTM D2896(mg KOH/gの単位)のそれぞれに従って測定した。結果は、表IIIに示されている。
【表3】

【0085】
表IIIのデータは、両方の化合物(PDA1及びPDA2)が、ASTM D2896により測定された潤滑油組成物のTBNを有効に増加したが、(本発明の)PDA1のみが、ASTM D4739により測定された潤滑油組成物のTBNを有効に増加したことを示している。
【0086】
(例2)
例1の手順を、PDA3を使用して繰り返した。結果は表IVに示されている。
【表4】

【0087】
表IVのデータは、PDA3は、SASH含有量に寄与することなくASTM D2896によって測定された潤滑油組成物のTBNを有効に増加したが、ASTM D4739によって測定された潤滑油のTBNを有効に増加しなかったことを示している。
【0088】
(例3)
例1の手順を、PDA4を使用して繰り返した。結果は、表IIIに示されている。
【表5】

【0089】
表Vのデータは、PDA4は、SASH含有量に寄与することなく、ASTM D2896によって測定された潤滑油組成物のTBNを有効に増加したが、ASTM D4739によって測定された潤滑油のTBNを有効に増加しなかったことを示している。
【0090】
(例4)
例1における完全配合潤滑油を、腐食及びシール適合性へのPDA1の作用を求めるためにさらに試験した。腐食を、配合油が、API CJ−4及びACEA E6の認証を受ける前に合格しなければならない高温腐食ベンチ試験(HTCBT)(ASTM D6595)を使用して試験した。シール適合性を、MB p228.51潤滑剤としての資格を得るために合格しなければならない業界標準のMB−AK6試験を使用して評価した。シール適合性及び腐食の両方を、参照油のTBNに対して二つのTBN上昇(D4739で測定)をもたらす量のPDA1の存在下で試験した。結果は、表IVに示されている。
【表6】

【0091】
示されたように、2mg KOH/g(D4739による)のTBN上昇をもたらす量で参照油に添加した場合、PDA1は、腐食又はシール適合性への有害作用を有さなかった。
【0092】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に示された、複数の特定成分を含む、それらからなる、又はそれらから本質的になる組成物の記載は、前記複数の特定成分を混合することによって生成される組成物も包含するものと解釈されるべきである。本発明の原理、好ましい実施形態及び操作の様式が、前述の明細書に記載されている。本出願者らが提出するものは、彼らの発明であるが、開示された実施形態は、制限的であるよりも例示的であるとみなされるので、開示された特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。変更は、本発明の精神から逸脱することなく、当業者によって行われ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要量の潤滑剤としての粘性をもつ油、及び、少量の1種又は複数のN−アリール−N’,N’,N’−トリ脂肪族ヒドロカルビルフェニレンジアミン化合物を含む又はそれらを混合することによって生成され、各脂肪族ヒドロカルビル基、好ましくはアルキルは、直鎖状であり、1から12個まで、好ましくは5から12個まで、より好ましくは5から8個までの炭素原子を有する高馬力ディーゼル潤滑油などのクランクケース潤滑油組成物。
【請求項2】
少なくとも6、例えば6から20までのASTM D4739により測定されたTBNを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0.8質量%以下のSASH含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ASTM D4739で測定した組成物のTBNの少なくとも10%、例えば、少なくとも15%、又は少なくとも20%、例えば、少なくとも25%が、前記フェニレンジアミン化合物から得られ、組成物のTBNの25%未満、好ましくは20%未満が、塩基性分散剤を含めた、前記フェニレンジアミン化合物以外の無灰TBN供給源から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
API CJ−4及びACEA E6規格の範囲に入る高温ベンチ腐食試験(ASTM D6594)における銅腐食性能を有し、MB p228.51規格の範囲に入るMB−AK6試験におけるフッ素エラストマーエンジンシール材料適合性能を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1から30質量%までの1種又は複数の前記フェニレンジアミン化合物;10から40質量%までの窒素含有分散剤;2から20質量%までのアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン化合物、又はそれらの混合物;5から40質量%までの洗浄剤;及び2から20質量%までの金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートを含む請求項1に記載の潤滑油組成物の調製用の濃縮物。
【請求項7】
運転中の圧縮点火内燃エンジンの表面を潤滑する方法であって、
(a)主要量の潤滑剤としての粘性をもつ油中に、少量の請求項1に記載の1種又は複数のN−アリール−N,N’,N’−トリ脂肪族ヒドロカルビルフェニレンジアミンを加え、ASTM D4739で測定したTBNを、SASHを同時に増加することなく、高め、API CJ−4及びACEA E6規格の範囲に入る高温ベンチ腐食試験(ASTM D6594)における銅腐食性能を有し、MB p228.51規格の範囲に入るMB−AK6試験におけるフッ素エラストマーエンジンシール材料適合性能を有する潤滑油組成物を製造するステップ;
(b)前記潤滑油組成物をエンジンクランクケースに提供するステップ;及び
(c)前記エンジンを作動するステップ
を含む上記方法。
【請求項8】
下式
【化1】


のN−アリール−N,N’,N’−脂肪族ヒドロカルビルフェニレンジアミン
(式中、Rは、アリールであり、
、R及びRのそれぞれは、独立に、直鎖のCからC12までの脂肪族ヒドロカルビル、好ましくはアルキル、最も好ましくはCからCまでのアルキルであり;
、すなわち、それぞれのRは、独立に、水素又はヒドロカルビル、好ましくは1から12個までの炭素原子を有するアルキルであり;
nは、0〜4である)。
【請求項9】
450から700まで、例えば450から650まで、好ましくは500から600までの平均分子量を有する、請求項8に記載のフェニレンジアミン。
【請求項10】
窒素原子が、互いにパラに配置されている、請求項8に記載のフェニレンジアミン。
【請求項11】
請求項8から10までのいずれか一項に記載のフェニレンジアミン化合物の混合物。
【請求項12】
N−フェニル−N,N’,N’−トリ−n−ペンチル−p−フェニレンジアミン。
【請求項13】
ASTM D4739で測定されたTBNが、少なくとも50、好ましくは少なくとも120mg KOH/gである、請求項8、9、10、及び12のいずれか一項に記載のフェニレンジアミン。

【公表番号】特表2013−508529(P2013−508529A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536827(P2012−536827)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050618
【国際公開番号】WO2011/059583
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【出願人】(510164360)インフィニウム インタナショナル リミテッド (2)
【Fターム(参考)】