説明

潤滑油のための粘度指数改良剤

最小化された結晶化度を有する少なくとも1つの制御分布ブロックコポリマーを有する水素添加されたブロックコポリマーを含むポリマー粘度指数改良剤が提供される。少なくとも基油と先述の粘度指数改良剤を含む油組成物も提供される。先述の粘度指数改良剤を含むポリマー性濃縮物がさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、粘度指数改良剤(VII)、このような粘度指数改良剤を含有する油組成物及びこのような粘度指数改良剤を含有するポリマー性濃縮物に関する。より具体的には、本発明は、粘度指数改良剤として使用される最小化された結晶化度を有する制御分布ブロックコポリマー、粘度指数改良剤として制御分布ブロックコポリマーを含有する油組成物及び粘度指数改良剤として制御分布ブロックコポリマーを含有するポリマー性濃縮物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油の粘度は温度とともに変動する。一般に、油は、所定のより低い温度及び所定のより高い温度における油粘度の関数である粘度指数によって特定される。所定のより低い温度及び所定のより高い温度は長年の間に変動するが、ASTM試験操作における任意の所定の時点では固定される(ASTMD2270)。現在、試験で指定されるより低い温度は40℃であり、より高い温度は100℃である。100℃で同じ運動学的粘度を有する2つのエンジン潤滑剤の場合、40℃でより低い運動学的粘度を有するものがより高い粘度指数を有する。より高い粘度指数を有する油は、40℃と100℃の温度の間で、より低い運動学的粘度変化を受ける。一般に、エンジンオイルに添加される粘度指数改良剤は、粘度指数及び運動学的粘度を増加させる。
【0003】
SAE Standard J300粘度分類システムは、マルチグレード油を分類するための粘度指数の使用を指定していない。しかしながら、低温で極度に粘性である油は寒冷な気候でエンジンの始動を困難にすることが認められていたので、ある時点で、SAE規格は、ある種の等級がより高い温度で行われた運動学的な粘度測定から外挿された低温粘度を満たすことを要求していた。この理由のため、高い粘度指数値を有するマルチグレード油が好まれた。これらの油は、もっとも低い低温外装された粘度を与えた。その時以来、ASTMは、エンジンのクランキング速度と相関し、低温で始動する若干高い剪断速度の粘度計であるASTMD5293(旧ASTMD2602)という冷クランキングシミュレータ(CSS;cold cranking simulator)を開発した。今日、CCSによって測定されるクランキング粘度限界がSAEJ300規格において定義されており、粘度指数は使用されていない。この理由のため、潤滑油の粘度特性を改善するポリマーは、粘度指数改良剤の代わりに、粘度修正剤と称されることがある。
【0004】
今日、クランキング粘度は、潤滑剤のエンジン中での低温性能を完全に推定するには十分でないことも認められている。SAEJ300は、小型回転式粘度計と呼ばれる低剪断速度の粘度計中でポンピング粘度を測定することも要求している。この装置は、粘度及びゲル形成を測定するために使用することが可能であり、後者は、降伏応力の測定によって測定される。この試験では、粘度及び降伏応力が測定される前に、2日の期間にわたって、指定された温度まで油をゆっくり冷却する。降伏応力の観察は、この試験では、自動的な不具合を構成するのに対して、油が、寒冷な気候条件中に、エンジンにポンピングの不具合を経験しないようにするために、ポンピング粘度は、指定された限界を下回らなければならない。本試験は、TP1−MRV試験、ASTMD4684と称されることがある。
【0005】
完全に調合されたマルチグレードのエンジンオイルの調合物中には、多数の材料が使用されている。パラフィン系、ナフテン系及び合成的に得られた液体及びポリマー粘度指数改良剤を含み得る基本原料(basestock)の他に、耐磨耗剤、さび止め剤、界面活性剤、抗酸化剤、分散剤及び流動点降下剤として作用する、添加される多数の潤滑添加物が存在する。これらの潤滑添加物は、通常、油の中で組み合わされ、一般的には、分散剤−阻害剤パッケージ又は「DI」パッケージと称される。
【0006】
マルチグレード油の調合における一般的な慣行は、SAEJ300における指定されたSAE等級要件によって測定される標的運動学粘度及びクランキング粘度に混合される。DIパッケージは、粘度指数改良剤油濃縮物と、及び1つの基本原料又は異なる粘度特性を有する2つ若しくはそれ以上の基本原料と組み合わされる。例えば、SAE10W−30マルチグレードに関しては、DIパッケージの濃度は一定に保たれ得るが、HVI100中性及びHVI250中性又はHVI300中性基本原料の量は、標的粘度に到達するまで、VI改良剤と一緒に調整され得る。
【0007】
調合物が標的とされる運動学的粘度及びクランキング粘度を有する調合物に到達したら、TP1−MRV粘度が測定される。相対的に低いポンピング粘度及び降伏応力の不存在が望ましい。極めて低温から低温のポンピング粘度又は降伏応力に寄与する粘度指数改良剤の使用が、マルチグレード油の調合において極めて望ましい。これは、エンジンポンピングの不具合を引き起こし得る油を調合するリスクを最小限に抑え、ポンピング粘度に寄与する他の成分の使用におけるさらなる柔軟性を油の製造業者に与える。
【0008】
ブタジエンの高い1,4付加によって作製されたポリブタジエンを含む共役ジエンのコポリマーの水素添加されたポリマー性アームを含有する水素添加された星型ポリマーである粘度指数改良剤は、米国特許第4,116,917号に以前記載された。米国特許第5,460,739号は、粘度指数改良剤として(EP−EB−EP)アームを有する星型ポリマーを記載している。このようなポリマーは、優れた粘稠化特性を与えるが、仕上げが困難である。米国特許第5,458,791号は、粘度指数改良剤として、(EP−S−EP’)アームを有する星型ポリマーを記載している。このようなポリマーは、優れた仕上げ易さ特性を有し、優れた低温性能を有する油を与えるが、粘稠化特性が低減する。また、水素添加されたポリブタジエンポリマーを基礎とする粘度指数改良剤は、部分的に結晶性であるので、通例、上手く機能しない。結晶性セグメントは、基本材料油中の蝋と共結晶化し、蝋結晶を連結する。これは、エンジンオイルの流動点を低くする流動点降下剤の能力を阻害し、エンジンオイルは、基本材料の天然の流動点、通常、−18℃から−7℃で固体になる傾向がある。
【0009】
米国特許第6,034,042号は、粘度指数改良剤として、水素添加されたイソプレン及びブタジエンの星型ポリマーを提供する。このようなポリマーは、優れた低温特性及び粘稠化効率を有する油組成物を与えるが、このようなポリマーは、上記の水素添加されたポリブタジエンポリマーを製造する上でより高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
優れた粘稠化特性及び優れた仕上げ特性を有するが、水素添加されたイソプレンとブタジエンポリマーより低い製造費用を有するポリマーを生産できることが有利である。本発明は、このようなポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本発明は、高性能エンジンのために調合された油組成物中の粘度指数改良剤として有用である最小化された結晶化度を有する低コストの固体コポリマーを提供する。本明細書に記載されているコポリマーは、粘度が改善された油組成物を作るために、基油とともに使用することができる。基油の少なくとも約75重量%及び本発明のコポリマーの約5から約25重量%を含有する濃縮物も作製することができる。
【0012】
具体的には、本発明のコポリマーは、モノアルケニルアレーンと共役ジエンの少なくとも1つの制御分布ブロックを含む水素添加されたブロックコポリマーである。より具体的には、本発明において使用される水素添加されたブロックコポリマーは、少なくとも1つのポリマーブロックBを有し、及び、少なくとも1つのポリマーブロックAを場合によって有し、
a.水素添加の前に、各Aブロックはモノアルケニルアレーンホモポリマーブロックであり、並びに各Bブロックは、少なくとも1つの共役ジエン及び少なくとも1つのモノアルケニルアレーンの制御分布コポリマーブロックであり;
b.水素添加の後に、アレーン二重結合の約0から約10%が還元され、及び共役ジエン二重結合の少なくとも約90%が還元されており;
c.各Aブロックは約3,000と約60,000の間の数平均分子量を有し、及び各Bブロックは約30,000と約300,000の間の数平均分子量を有し;
d.各Bブロックは共役ジエン単位に富むAブロックに隣接する末端領域と、及びモノアルケニルアレーン単位に富むAブロックに隣接していない1つ又はそれ以上の領域とを含み;
v.水素添加されたブロックコポリマー中のモノアルケニルアレーンの総量が約20重量%から約80重量であり;並びに
f.各Bブロック中のモノアルケニルアレーンの重量%が約10%と約75%の間であり、
但し、Aブロックが存在しない場合には、各Bブロックは、共役ジエン単位に富む末端領域を含み、及びモノアルケニルアレーン単位に富む1つ又はそれ以上の非末端単位を含み、並びに、2以上のAブロックが存在する場合には、各Aブロックが約5000未満の分子量を有する。
【0013】
本発明において使用されるブロックコポリマーの一般配置は、(B)、A−B、A−B−A、(A−B)、(A−B−A)、(A−B)−A、(A−B−A)X、(A−B)X、(B−A−B)、(B−A−B)X又はこれらの混合物(nは、2から約60、好ましくは2から約30、より好ましくは2から約15の整数であり、Xは当業者に周知のカップリング剤残基であり、及びmは1から約60の整数であり、好ましくは1から約30、より好ましくは1から約15である。)である。
【0014】
発明の詳細な説明
上述のように、本発明は、最小化された結晶化度を有する水素添加された陰イオン性ブロックコポリマーを含む、油組成物中で使用するための粘度指数改良剤を提供する。「最小化された結晶化度」とは、本発明のブロックコポリマーが、基油の蝋と共結晶化することができるBブロック(すなわち、制御分布ブロック)中の結晶セグメントを実質的に有さないことを意味する。本発明において、これは、水素添加された1,4−ブタジエンセグメントが短すぎて油中の蝋と共結晶化することができないように、共役ジエン中の1,2−ブタジエンを約15から約30mol%の範囲に調節することによって及びBブロック中のモノアルケニルアレーンの量及び分布を調節することによって達成される。
【0015】
本発明の油組成物は、本分野で周知の慣用の操作を用いて作製される。典型的には、本発明の油組成物は、潤滑油を、制御分布ブロックを有する水素添加されたブロックコポリマーと混合することによって作製される。混合は、あらゆる慣用の混合装置を用いて行うことができ、通常、混合は、高温で行われる。例えば、必要に応じて使用される他の成分(以下に、さらに詳しく記載されている。)との2つの不可欠な成分の混合は、約80℃から約175℃の温度で行い得る。
【0016】
上述のように、本発明の粘度指数改良剤は、「Novel Block Copolymers and Method for Making Same」という名称の共有付与された米国特許No.7,169,848中に記載されているように、モノアルケニルアレーンと共役ジエンの制御分布コポリマーである少なくとも1つの特有のブロックを含有する水素添加されたブロックコポリマーを含む。’981特許の全内容、特に、’981特許中に記載されている陰イオン性重合法は、参照により、本明細書に組み込まれる。幾つかの実施形態において、モノアルケニルアレーン及び共役ジエンの特有のブロックはコポリマーの中間ブロックに相当する。このような実施形態において、中間ブロックは、モノアルケニルアレーンを含む終末ブロックによって取り囲まれている。さらに別の実施形態において、モノアルケニルアレーン及び共役ジエンの制御分布ブロックはコポリマー中に存在する唯一のブロックに相当する。さらに別の実施形態において、モノアルケニルアレーン及び共役ジエンの制御分布ブロックは、モノアルキレンアレーン中間ブロックを取り囲む終末ブロックである。
【0017】
驚くべきことに、(1)モノマー付加のための特有の制御と(2)溶媒の成分としてのジエチルエーテル又はその他の調整剤(「分布剤」と称される。)の使用を組み合わせると、2つのモノマーのある種の特徴的な分布(本明細書において、「制御分布」重合(すなわち、「制御分布」構造をもたらす重合)と称される。)をもたらすとともに、ポリマーブロック中にある種のモノアルケニルアレーンに富む領域及びある種の共役ジエンに富む領域の存在ももたらす。
【0018】
本明細書において、「制御分布」は、以下の属性、すなわち、(1)共役ジエン単位に富む(すなわち、共役ジエン単位の平均より多い量を有する)モノアルケニルアレーンホモポリマー(「A」)ブロックに場合によって隣接することができる末端領域;(2)モノアルケニルアレーン単位に富む(すなわち、モノアルケニルアレーン単位の平均より多い量を有する)Aブロックに隣接していない1つ又はそれ以上の領域;及び(3)相対的に低いモノアルケニルアレーン(例えば、スチレン)ブロック度を有する全体構造、を有する分子構造として定義される。本明細書において、「に富む」とは、平均量より多いこと、好ましくは平均量より5%超多いことと定義される。この相対的に低いモノアルケニルアレーンブロック度は、示差走査熱量測定法(「DSC」)熱的方法若しくは機械的方法を用いて分析された場合に、何れかのモノマーのみのTgの中間に単一のガラス遷移温度(Tg)のみが存在することによって示されることができ、又はプロトン核磁気共鳴(「H−NMR」)法を用いて示されることができる。ブロック度ポテンシャルは、Bブロックの重合の間におけるポリスチリルリチウム末端基の検出に適した波長範囲のUV−可視吸光度の測定から推測することも可能である。この値の鋭く、大幅な増加は、ポリスチリルリチウム鎖末端の大幅な増加の指標である。このようなプロセスにおいて、これは、制御分布重合を維持するための臨界レベルを下回るまで、共役ジエン濃度が低下した場合にのみ生じる。この点で存在する全てのモノアルキレンアレーンモノマー(例えば、スチレンなど)は、ブロック様式で付加する。プロトンNMRを用いて、当業者によって測定される「スチレンブロック度」という用語は、ポリマー鎖上に2つのS再近隣を有する、ポリマー中のS(すなわち、スチレン)単位の割合であると定義される。この考察はスチレンブロック度に関するが、あらゆるモノアルケニルアレーンモノマーに対して同じことが当てはまることが当業者によって理解される。
【0019】
スチレンブロック度は、以下のように2つの実験的な量を測定するために、H−1NMRを用いて決定される。第一に、スチレン単位の総数(すなわち、任意の機器単位(これは、比を求めたときに相殺される。))は、7.5から6.2ppmまで、H−1NMRスペクトル中の総スチレン芳香族シグナルを積算し、各スチレン芳香環上に存在する5つの芳香族水素を考慮するために、この量を5で割ることによって求められる。第二に、ブロック状スチレン単位は、6.88と6.80から6.2ppmとの間の最小シグナルからH−1NMRスペクトル中の芳香族シグナルの当該部分を積算し、各ブロック状スチレン芳香環上の2つのオルト水素を考慮するために、この量を2で割ることによって求められる。このシグナルは、2つのスチレン再近隣を有するスチレン単位の環状の2つのオルト水素に割り当てられることが、「F.A.Bovey,High Resolution NMR of Macromolecules (Academic Press,New York and London,1972),chapter 6」に報告された。
【0020】
スチレンブロック度は、単純に、全スチレン単位に対するブロック状スチレンの%である。
【0021】
ブロック度%=100×(ブロック状スチレン単位/全スチレン単位)
【0022】
このように表されると、ポリマーBd−S−(S)−S−Bd−ポリマー(nは0より大きい。)がブロック状スチレンであると定義される。例えば、上記例においてn=8であれば、ブロック度指数は80%である。本発明において、ブロック度指数は約40未満であることが好ましい。10重量%から40重量%のスチレン含量を有する幾つかのポリマーに関しては、ブロック度指数は約10未満であることが好ましい。
【0023】
制御分布構造によって、2つのモノマーの相分離が実質的に存在しないことが確保されるので(すなわち、モノマーが、異なるTgを有する別個の「ミクロ相」として実際に残存するが、実際に、化学的に互いに結合されているブロックコポリマーとは対照的である。)、生じたコポリマーの結晶化度を最小限に抑える上で、この制御分布構造は極めて重要である。この制御分布構造によって、1つのTgのみが存在すること、従って、生じたコポリマーの熱的性能が予測可能となり、実際、予め決定できるようになる。さらに、水素添加後に、結晶化する1,4−ブタジエンの長い配列から生じる結晶化度を最小限に抑えるのは、コポリマーブロック全体にわたるスチレンの分布の調節である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、本制御分布コポリマーブロックは、ブロックの末端上の共役ジエンに富む領域及びブロックの真ん中又は中央付近のモノアルケニルアレーンに富む領域という領域の2つの異なる種類を有する。特に、ブロックの真ん中又は中央付近において、モノアルケニルアレーン単位の比率が徐々に最大へと増加し、次いで、ポリマーブロックが完全に重合化されるまで徐々に減少するモノアルケニルアレーン/共役ジエン制御分布コポリマーブロックが望ましい。本発明の別の好ましい実施形態において、モノアルケニルアレーンに富む領域が1つ又はそれ以上の非末端領域に存在し、末端領域は、このような実施形態において、共役ジエンに富む。本発明において使用される陰イオン性ブロックコポリマーの制御分布ブロックは、従来技術において論述されている先細り構造及び/又はランダムな構造とは別個であり、これらとは異なる。
【0025】
本発明の制御分布ブロックコポリマーを形成するための陰イオン性溶液共重合は、概ね、公知の及び以前に使用された方法及び材料を用いて実施することができる。一般に、共重合は、重合開始剤、溶媒、促進剤及び構造修飾剤などの補助材料の公知の選択を用いて陰イオン的に達成されるが、本発明の中心的な特徴として、ある種の分布剤の存在下で達成される。このような分布剤は、好ましい実施形態において、非キレートエーテルである。このようなエーテル化合物の例は、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピランなどの環状エーテル並びにジエチルエーテル及びジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテルである。幾つかの事例において、特に、共役ジエンのビニル含量が50%を上回るべき場合には、エチレングリコールのジアルキルエーテル並びにジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルなどの脂肪族ポリエーテルなどのキレート剤を使用することが必要であり得る。他の分布剤には、例えば、オルトジメトキシベンゼン又は「ODMB」(キレート剤と称される場合がある。)が含まれる。好ましくは、エーテルは脂肪族モノエーテルであり、より好ましくはジエチルエーテルである。このような共重合は、バッチ、セミバッチ又は連続的調製として実施することができるが、バッチが最も好ましく、但し、これとは無関係に、共重合プロセスの開始前に又は開始と同時に、選択された溶媒中にランダム化剤が存在することが重要である。
【0026】
分布剤の導入は、成長する鎖末端が、別のモノマーに比べて、あるモノマーへ優先的に付着するのを打ち消す。例えば、スチレン及びジエンの場合には、ジエンに対して優先される。リビング鎖末端は、他のモノマーと概ね同程度にあるモノマーを容易に「見つける」ので、この分布剤は、2つのモノマーのより効率的な「制御分布」共重合を促進するように作用する。これにより、重合プロセスは、各モノマーがほぼ同じ速度でポリマー中に取り込まれ得るように「微調整」される。このようなプロセスは、モノマー成分の何れかの「長い連続」を持たないコポリマー、換言すれば、本明細書において上で定義されたような制御分布ブロックコポリマーをもたらす。好ましいプロセスにおいて、重合が共役ジエンに富んで終了するように、モノアルケニルアレーンモノマーは、ジエンの第二の分取試料の遅い付加が完結する時点までに、ほぼ消費される。共役ジエンモノマーの短いブロックが重合を通じて形成され得るが、共役ジエンモノマーの濃度が極めて低くなると、モノアルケニルアレーンモノマーのブロックのみが形成される。好ましい条件下で、Bブロック中のモノアルケニルアレーンモノマーの累積的パーセントは、約40%から60%の全体的な転化においてピークに達するが、最終値を約5%から30%、好ましくは5から15%超過するに過ぎない。この相対的に均一なモノマーの分布の結果は、2つの対応するホモポリマーのTg値の加重平均である単一Tgを有する産物である。
【0027】
上述のように、分布剤は、好ましくは、非キレートエーテルである。「非キレート」とは、このようなエーテルが成長しているポリマーとキレートを形成しないこと、すなわち、それらが、開始剤化合物(例えば、リチウムイオン)に由来する鎖末端と特異的な相互作用を形成しないことを意味する。本発明において使用される非キレートエーテルは、全体の重合電荷の極性を修飾することによって作用するので、好ましくは、相対的に高い濃度で使用される。ジエチルエーテルが選択される場合には(ジエチルエーテルが好ましい)、重合電荷(溶媒及びモノマー)の重量に対して約0.1から約10%、好ましくは約0.5から約10%まで、より好ましくは約0.5から約6重量%の濃度であることが好ましい。あるいは、このモノエーテルのより高い濃度を使用することが可能であるが、効率の向上なしに、費用を増加させるものと思われる。分布剤がODMBである場合には、使用される量は、典型的には、総反応装置内容量を基礎として、約20から約400質量百万分率(「PPMW(parts by million weight)」)、好ましくは、低ビニル産物に関しては約20から約40PPMW、及びより高いビニル産物に関しては約100から200PPMWである。
【0028】
本発明の重要な態様は、制御分布コポリマーブロック中の微細構造及び共役ジエンのビニル含量を調節することである。「ビニル含量」という用語は、共役ジエンが、1,2−付加(ブタジエンの場合−イソプレンの場合には、3,4−付加)を介して重合されるという事実を表す。純粋な「ビニル」基は、1,3−ブタジエンの1,2−付加重合の場合にのみ形成されるが、ブロックコポリマーの最終特性に対するイソプレンの3,4−付加重合(及び他の共役ジエンに対する同様の付加)の効果は同様である。「ビニル」という用語は、ポリマー鎖上のペンダントビニル基の存在を表す。ビニル含量は、分布剤の相対量を変動させることによって、効果的に調節される。理解されるように、分布剤は2つの目的を果たす。分布剤は、モノアルケニルアレーンと共役ジエンの制御分布を作り出し、共役ジエンの微細構造も調節する。リチウムに対する分布剤の適切な比は、米国特許.Re27,145(開示内容は、参照により、組み込まれる。)中に開示及び教示されている。
【0029】
形成しているポリマーのリビング陰イオン性鎖末端と反応しない何れかの炭化水素であり得る重合ビヒクルとして使用される溶媒は、市販の重合単位中で容易に取り扱われ、産物ポリマーに特徴的である適切な溶解度を与える。例えば、一般に、イオン化可能な水素を欠如する非極性脂肪族炭化水素は、特に適切な溶媒となる。頻繁に使用されるのは、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びシクロオクタン(これらは全て、相対的に非極性である。)などの環状アルカンである。他の適切な溶媒が当業者に公知であり、プロセス条件の所与の群において効果的に性能を発揮するように選択することができ、温度が考慮に入れられる主要な因子の1つである。
【0030】
本発明において使用される制御分布コポリマーを調製するための出発材料には、イニシャルモノマーが含まれる。アルケニルアレーンは、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン及びp−ブチルスチレン又はこれらの混合物から選択することができる。これらのうち、スチレンが最も好ましく、市販されており、比較的安価であり、様々な製造業者から入手できる。本発明において使用される陰イオン性ブロックコポリマーを調製する上で使用することができる共役ジエンは、1,3−ブタジエン及び、例えば、イソプレン、ピペリレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン及び1−フェニル−1,3−ブタジエン又はこれらの混合物などの置換されたブタジエンである。これらのうち、1,3−ブタジエンが最も好ましい。本明細書において使用される場合、「ブタジエン」とは、特に、「1,3−ブタジエン」を表す。
【0031】
陰イオン性共重合のための他の重要な出発材料には、例えば、アルキルリチウム化合物及び他の有機リチウム化合物など(m−ジイソプロペニルベンゼンのジ−sec−ブチルリチウム付加物などのジイニシエータを含む、s−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、アミルリチウムなど)の1つ又はそれ以上の重合開始剤が含まれる。他のこのようなジイニシエータは、米国特許第6,492,469号に開示されている。様々な重合開始剤のうち、s−ブチルリチウムが好ましい。開始剤は、所望のポリマー鎖あたりの1開始剤分子を基にして計算された量の重合混合物(モノマー及び溶媒を含む。)において使用することができる。リチウム開始剤プロセスは周知であり、例えば、米国特許4,039,593号及び再審査27145号に記載されており、それらの記載は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明のブロックコポリマーを調製するための重合条件は、典型的には、陰イオン性重合について一般に使用される重合条件と同様である。重合は、好ましくは約−30℃から約150℃、より好ましくは約10℃から約100℃、最も好ましくは、産業的な制約に照らして、約30℃から約90℃の温度で実施される。重合は、不活性雰囲気、好ましくは窒素中で実施され、約0.5から約10バールの範囲内の圧力下でも達成され得る。この共重合は、一般に、約12時間未満を必要とし、温度、モノマー成分の濃度、ポリマーの分子量及び使用される分布剤の量に応じて、約5分から約5時間で達成され得る。
【0033】
上で論じたように、制御分布ブロックの重合の間におけるモノマー供給の制御が重要である。ブロック度を最小化するために、ブタジエンの存在下で、スチレンの可能な限り多くを重合することが望ましい。この目的に向けて、好ましいプロセスは、可能な限り長く、好ましくはスチレンがほぼ枯渇するまで、ブタジエンの約0.1重量%以上の濃度を維持するために、ブタジエンをゆっくり転化しながら、可能な限り素早く、スチレン充填物を添加する。ブタジエンがこのレベルを下回ると、スチレンブロックがこの時点で形成するリスクが存在する。一般に、反応のブタジエン充填部分の間に、スチレンブロックを形成することは望ましくない。
【0034】
上で論じたように、及び、1つ又はそれ以上のAブロックを有する一実施形態において、制御分布ポリマーブロックはAブロックに隣接しているジエンに富む領域及びAブロックに隣接しておらず、典型的にはBブロックの中心近くに位置するアレーンに富む領域を有する。典型的には、Aブロックに隣接する領域は、ブロックの最初の5から25%、好ましくは最初の15から25%を含み及びジエンに富む領域を含み、残りはアレーンに富むと考えられる。「ジエンに富む」という用語は、当該領域が、アレーンに富む領域に比べて、ジエン/アレーンの測定可能により高い比を有することを意味する。これを表現するための別の方法は、ブロックの真ん中又は中央付近で、モノアルケニルアレーン単位の割合が、ポリマー鎖に沿って、徐々に最大まで増加し(ABA構造が記載されているものと仮定する。)、ポリマーブロックが完全に重合されるまで、徐々に減少するということである。制御分布ブロックBに関しては、モノアルケニルアレーンの重量%は約10%と約75%の間である。
【0035】
本発明は、様々なポリマー構造を想定し、このようなポリマー構造内の様々なブロックの分子量を調節することが重要である。(B)ポリマーに関しては、Bポリマーの好ましい分子量範囲は、m=1であれば、約30,000から約300,000であり、mが1より大きければ、約20,000から約100,000である。ABジブロックについては、モノアルケニルアレーンAブロックに関しては所望のブロック分子量は約3,000から約60,000であり、制御分布共役ジエン/モノアルケニルアレーンBブロックについては約30,000から約300,000である。好ましい範囲は、Aブロックに関しては、約5,000から約45,000であり、Bブロックに関しては、約50,000から約250,000である。トリブロック(逐次ABA又はカップリングされた(AB)又は(ABA)ブロックコポリマーであり得る。)に関しては、Aブロックは、約5000未満、好ましくは約3,000から約4,500未満であるべきであるのに対して、逐次ブロックについてのBブロックは、約30,000から約300,000であるべきであり、及びカップリングされたコポリマーに対するBブロックは約20,000から約100,000であるべきである。トリブロックコポリマーに対する総平均分子量は、約40,000から約400,000であるべきであり、ラジアルコポリマーに関しては、約60,000から約600,000、及び星型コポリマーに関しては、約100,000から約1,000,000であるべきである。これらの分子量は、光散乱測定によって最も正確に測定され、数平均分子量として表される。
【0036】
本発明の別の実施形態において及びブタジエンが共役ジエンとして使用されている場合には、コポリマーブロック中の凝縮されたブタジエン単位の約15から約30mol%が、プロトンNMR分析によって測定された1,2ビニル配置を有することが好ましい。本発明のこの実施形態において、1,2ビニル配置を有するコポリマーブロック中の縮合ブタジエンの前記範囲は、制御分布重合中に配置されたスチレン(又は別のモノアルケニルアレーン)の存在によって、水素添加されたポリマー中の結晶化度を最小限に抑えながら、油中の濃縮能を最大化するために、水素添加されたブロックコポリマーが最大の骨格長を有することができるようにする。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態において、使用される水素添加されたブロックコポリマーは、水素添加されたABジブロックポリマー(Aはポリスチレンであり及びBはEB/S、すなわち、水素添加されたポリブタジエン(EB)/スチレン(S)制御分布ブロック)である。このような実施形態において、ポリスチレンブロック(A)は、約30,000から約50,000の分子量を有し、約40,000から約47,000の分子量が典型的であり及びEB/S制御分布ブロックは約60,000から約110,000、典型的には、約80,000から約95,000の分子量及び約30から約45重量%、典型的には、約35から約40重量%のスチレン含量を有する。特に好ましいブロックコポリマーでは、EB/S制御分布コポリマーブロックは、典型的には57,000/33,000の分子量を有し、ブタジエン二重結合の少なくとも90%、典型的には少なくとも95%を除去するために選択的に水素添加される。1,2/1,4−ブタジエン比は、約15/85から約30/70、典型的には約18/82から約22/77である。S−EB/Sジブロックの総スチレン含量は、約50から約65であり、典型的には約55から約60重量%である。
【0038】
上のパラグラフに記載されている水素添加されたABジブロックポリマーは、分布剤の少量が使用されたことを除き、同一出願人による米国特許第7,169,848号に記載されている同じ基本的操作を用いて作製される。「少量」とは、分布剤が1重量%未満の量で使用されたことを意味する。典型的には、分布剤はジエチルエーテであり、先述の水素添加されたABジブロックポリマーを形成する上で使用される量は約0.5重量%である。分布剤の低いレベルは、共重合の間の先細りが最小限になるように確保しつつ、(骨格長を最大化するために)1,2−ブタジエン付加を最小限に抑える。このジブロックにおいて、スチレンの分布は、ポリマー中の結晶化度を最小限に抑える上で役立つように、EB/Sブロックを通じて制御される。さらに、製造されるジブロックは、’981特許に開示されているカップリング剤の何れかを用いて、式(A−B)又は(A−B)Xのポリマーを生成するようにカップリングされ得る。
【0039】
本発明の別の実施形態において、使用される水素添加されたブロックコポリマーは、式(B)を有する直鎖、ラジアル又は星型ポリマーであり、各Bは、共役ジエン単位に富む末端領域を含み及びモノアルケニルアレーンに富む1つ又はそれ以上の非末端領域を含む。このようなコポリマーにおいて、mは1から約60、好ましくは1から約30、及びより好ましくは1から約15である。このようなブロックコポリマーの総分子量は、典型的には、m=1であれば、約30,000から約300,000であり、mが1より大きければ、約20,000から約100,000である。このようなブロックコポリマーは、’981特許にも記載されている基本的操作を用いて行われる。
【0040】
本発明のさらなる実施形態において、水素添加されたブロックコポリマーは、BブロックはA中間ブロックを取り囲む終末ブロックであるものである。このようなブロックコポリマーは、nが上に定義されているとおりである式(B−A−B)を有する。このようなブロックコポリマーは、’981特許に記載されている基本的操作を用いても行われる。
【0041】
本発明において使用される陰イオン性ブロックコポリマーは、選択的に水素添加される。水素添加は、従来技術において公知の幾つかの水素添加又は選択的水素添加プロセスの何れをも用いて実施することができる。例えば、このような水素添加は、例えば、米国特許第3,494,942号、同第3,634,594号、同第3,670,054号、同第3,700,633及び再審査番号27,145に教示されているような方法を用いて達成される。典型的には、水素添加は、共役ジエン二重結合の少なくとも約90%が還元され、及びアレーン二重結合の0から10%が還元されているような条件下で実施される。好ましい範囲は、還元される共役ジエン二重結合の少なくとも約95%であり、より好ましくは、共役ジエン二重結合の約98%が還元される。あるいは、芳香族の不飽和も上記の10%レベルを超えて還元されるように、ポリマーを水素添加することが可能である。この場合には、共役ジエン及びアレーンの両方の二重結合は、90%又はそれ以上還元され得る。
【0042】
これとは別に、本発明において用いされるブロックコポリマーは、様々な方法で官能化され得る。1つの方法は、カルボン酸基及びそれらの塩、無水物、エステル、イミド基、アミド基及び酸塩化物などの1つ又はそれ以上の官能基又はそれらの誘導体を有する不飽和モノマーで処理することによる方法である。ブロックコポリマー上に植え付けられるべき好ましいモノマーは、マレイン酸無水物、マレイン酸、フマル酸及びこれらの誘導体である。このようなブロックコポリマーを感応化するさらなる記述は、米国特許第4,578,429号及び同第5,506,299号に見出すことができる。別の様式で、本発明において使用される選択的に水素添加されたブロックコポリマーは、例えば、米国特許第4,882,384号に教示されているように、ケイ素又はホウ素を含有する化合物をポリマーに植え付けることによって官能化され得る。さらに別の様式で、本発明のブロックコポリマーは、シラン修飾されたブロックコポリマーを形成するために、アルコキシシラン化合物と接触され得る。さらに別の様式では、本発明のブロックコポリマーは、米国特許第4,898,914号に教示されているように少なくとも1つのエチレンオキシド分子をポリマーに反応させることによって又は米国特許第4,970,265号に教示されているように重合体を二酸化炭素と反応させることによって官能化され得る。さらに、本発明のブロックコポリマーは、米国特許第5,206,300号及び同第5,276,101号に教示されているように金属化(metallate)され得、ここにおいて、ポリマーは、アルキルリチウムなどのアルキルアルカリ金属と接触される。さらに、本発明のブロックコポリマーは、米国特許第5,516,831号に教示されているようにスルホン基をポリマーに植え付けることによって官能化され得る。
【0043】
本発明の水素添加された陰イオン性ブロックコポリマーは、粘度指数特性を向上させるために、様々な潤滑油に添加され得る。例えば、本発明の水素添加された陰イオン性ブロックコポリマーは、中間留分燃料、合成及び天然の潤滑油、未精製油及び産業油などの燃料油に添加され得る。油は、パラフィン系、ナフテン系及び芳香族であり得る。油は、天然油又は合成的に調製された油であり得る。エンジンオイルの他に、本発明の水素添加された陰イオン性ブロックコポリマーは、自動変速装置液、ギア潤滑油及び油圧油の製剤中で使用され得る。一般に、本発明の水素添加された陰イオン性ブロックコポリマーのあらゆる量を油中に混合し得、約0.05から約10重量%の量が最も一般的である。エンジンオイルに関しては、約0.2から約2重量%の範囲内の量が好ましい。
【0044】
本発明の水素添加された陰イオン性ブロックコポリマーを用いて調製される潤滑油組成物は、耐腐食性添加物、抗酸化剤、界面活性剤、流動点降下剤、1つ又はそれ以上のさらなるVI改良剤などの他の添加物も含有し得る。本発明の潤滑油組成物中で有用である典型的な添加物及びそれらの記載は、米国特許第3,772,196号及び同第3,835,083中に見出され、これらの特許の開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。他の添加物は、当業者にとって周知である範囲を用いて使用される。
【0045】
以下の実施例は、本発明の粘度指数改良剤を説明し、油組成物中で本発明の粘度指数改良剤を使用する際の幾つかの利点を実証するために提供されている。
【実施例】
【0046】
実施例
本実施例では、本発明のジブロックコポリマーの粘稠化能を、2つの慣用のVIIポリマーの濃縮能と比較した。コポリマー1(本発明の代表である)は、S−EB/Sジブロックポリマー(Sは、44,000の分子量を有するポリスチレンブロックであり、及びEB/Sは、ブタジエン二重結合の少なくとも95%を除去するために選択的に水素添加された分子量57,000/33,000の制御分布コポリマーブロックを表す。)であった。コポリマー1のEB/Sブロックのスチレン含量は約37重量%(25モル%)であり、1,2/1,4−ブタジエン比は21/79であった。コポリマー1の総スチレン含量は57重量%であった。コポリマー1は、上に概説された基本的操作を用いて作製された。具体的には、重合は、0.5重量%のジエチルエーテルを含有するシクロヘキサン中において、50℃で実施した。比較用ポリマー1及び2は、Sがポリスチレンを表し、EPが水素添加されたポリイソプレンを表すS−EP型ジブロックポリマーであった。比較用ポリマー1のブロック分子量は35,000及び65,000であるのに対して、比較用ポリマー2のブロック分子量は、それぞれ、S及びEPブロックに関して、37,000及び100,000であった。比較用ポリマー1及び2は、粘稠化油組成物の分野で典型的に使用される慣用のVIIポリマーである。
【0047】
上記ジブロックポリマーの各々は、自動車オイルに対して典型的に使用される基油中に3つの濃度で混合され、100℃で運動学的な粘度を測定した。基油の100℃での運動学的な粘度は、4.2センチストークであった。表1に示されている結果は、コポリマーの粘稠化能が2つの慣用のVIIポリマーの粘稠化能の中間にあることを示している。
【0048】
【表1】

【0049】
本発明の好ましい実施形態に関して本発明を具体的に示し、記載してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形式及び細部における先述の変更及びその他の変更を施し得ることが当業者に理解される。従って、本発明は、記載及び例示されている正確な形態及び詳細に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に属することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーブロックBを有し及び少なくとも1つのポリマーブロックAを場合によって有する水素添加されたブロックコポリマーを含み、並びに
a.水素添加の前に、各Aブロックはモノアルケニルアレーンホモポリマーブロックであり、並びに各Bブロックは、少なくとも1つの共役ジエン及び少なくとも1つのモノアルケニルアレーンの制御分布コポリマーブロックであり;
b.水素添加の後に、アレーン二重結合の約0から10%が還元され、及び共役ジエン二重結合の少なくとも約90%が還元されており;
c.各Aブロックは約3,000と約60,000の間の数平均分子量を有し、及び各Bブロックは約20,000と約300,000の間の数平均分子量を有し;
d.各Bブロックは共役ジエン単位に富むAブロックに隣接する末端領域と、及びモノアルケニルアレーン単位に富むAブロックに隣接していない1つ又はそれ以上の領域とを含み;
e.水素添加されたブロックコポリマー中のモノアルケニルアレーンの総量が約20重量%から約80重量であり;並びに
f.各Bブロック中のモノアルケニルアレーンの重量%が約10%と約75%の間であり、
但し、Aブロックが存在しない場合には、各Bブロックは、共役ジエン単位に富む末端領域を含み、及びモノアルケニルアレーン単位に富む1つ又はそれ以上の非末端単位を含み、並びに、2以上のAブロックが存在する場合には、各Aブロックが約5000未満の分子量を有する、
ポリマー粘度指数(VI)改良剤。
【請求項2】
前記モノアルケニルアレーンがスチレンであり、及び前記共役ジエンがイソプレン及びブタジエンからなる群から選択される、請求項1に記載のVI改良剤。
【請求項3】
前記共役ジエンがブタジエンであり及びブロックB中の縮合されたブタジエン単位の約15から約30モル%が1,2立体配置を有する、請求項2に記載のVI改良剤。
【請求項4】
前記共役ジエンがブタジエンであり及びブロックB中の縮合されたブタジエン単位の約18から約22モル%が1,2立体配置を有する、請求項2に記載のVI改良剤。
【請求項5】
前記ポリマーブロックBが約40モル%未満のモノアルケニルアレーンブロック度指数を有する、請求項1に記載のVI改良剤。
【請求項6】
ポリマーがABAポリマーであり、各ブロックBがブタジエン単位対スチレンの最小比を有する中心領域を有し、及び各Aが約5000未満の分子量を有する、請求項2に記載のVI改良剤。
【請求項7】
各Bブロック中のスチレンの重量%が約10%と約50%の間であり、及び各ブロックBのスチレンブロック度指数が約10%未満であり、前記スチレンブロック度指数はポリマー鎖上に2つのスチレン隣接を有するブロックB中のスチレン単位の割合であると定義される、請求項2に記載のVI改良剤。
【請求項8】
前記水素添加されたブロックコポリマーが、一般配置(B)、A−B、A−B−A、(A−B)、(A−B−A)、(A−B)−A、(A−B−A)X、(A−B)X、(B−A−B)、(B−A−B)X又はこれらの混合物(nは、2から約60の整数であり、Xはカップリング剤残基、及びmは1から約60の整数である。)を有する、請求項1に記載のVI改良剤。
【請求項9】
前記水素添加されたブロックポリマーが一般配置(B)を有し、Bブロックの各々が共役ジエン単位に富む末端領域及びモノアルケニルアレーンに富む1つ又はそれ以上の非末端領域を含む、請求項8に記載のVI改良剤。
【請求項10】
前記水素添加されたブロックコポリマーがS−EB/S型ポリマーであり、Sブロックが約30,000から約50,000の分子量を有し、EB/SブロックのEB単位が約50,000から約65,000の分子量を有し、EB/SブロックのS単位が約30,000から約40,000の分子量を有し、ブタジエン二重結合の少なくとも90%を除去するためにEB/Sブロックが選択的に水素添加されており、EB/Sブrックのスチレン含量が約30から約40重量%であり、1,2/1,4−ブタジエン比が約15/85から約30/70であり、及びS−EB/S型ポリマーの総スチレン含量が約50から約65である、請求項1に記載のVI改良剤。
【請求項11】
基油;及び
請求項1から10の何れか一項に記載のポリマー粘度指数改良剤の粘度改良量
を含む、油組成物。
【請求項12】
抗腐食性添加物、抗酸化剤、界面活性剤、流動点降下剤又は前記水素添加された陰イオン性ブロックコポリマーとは異なるさらなるVI改良剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項11に記載の油組成物。
【請求項13】
基油の少なくとも75重量%;及び
請求項1から10の何れか一項に記載のポリマー粘度指数改良剤の5%から25重量%
を含む、油組成物のためのポリマー性濃縮物。
【請求項14】
抗腐食性添加物、抗酸化剤、界面活性剤、流動点降下剤又は前記水素添加された陰イオン性ブロックコポリマーとは異なるさらなるVI改良剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項13に記載のポリマー性濃縮物。

【公表番号】特表2009−532513(P2009−532513A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558361(P2008−558361)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/005728
【国際公開番号】WO2007/106346
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508272307)クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー (12)
【Fターム(参考)】