説明

潤滑油添加剤組成物およびその製造方法

【課題】エンジン油に好適に使用される改良された油溶性潤滑油添加剤組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】コハク酸イミド、コハク酸アミドまたはそれらの混合物を第一後処理剤と反応させて、それにより最初の後処理生成物を生成させ、その生成物を第二後処理剤と反応させることを含む方法により製造される油溶性潤滑油添加剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン油に使用される改良された分散剤組成物に関するものであり、またその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油組成物の配合に、窒素を含有する分散剤及び/又は清浄剤を用いることが知られている。公知の多数の清浄分散剤化合物は、アルケニルコハク酸又は無水物をアミンまたはポリアミンと反応させて、選択した反応条件で決定されるアルケニルコハク酸イミドまたはアルケニルスクシンアミド酸を生成させることに基づいている。潤滑剤製造業者が直面する一つの問題は、内燃機関における粒子状物質の分散性にある。充分な粒子状物質分散性を得ることに失敗すれば、フィルタ詰りやスラッジ堆積、油増粘が生じる可能性がある。
【0003】
ある種の芳香族無水物とエチレン後処理済み分散剤との組合せが、スス増粘台上試験およびディーゼルエンジン燃料インジェクタの流量損失改善試験で示されるように、分散性の改善をもたらすことが見出された。
【0004】
特許文献1には、(i)少なくとも一種のポリアミンを、少なくとも一種の非環状炭化水素置換コハク酸アシル化剤であって、該非環状炭化水素置換基が平均して少なくとも40個の炭素原子を含むアシル化剤と反応させること、ただし、アシル化剤がポリアミンとポリアミンモル当り1.05乃至2.85モルのモル比で反応するような比率を用いて該反応を行ない、そして(ii)そのようにして生成した生成物を、(a)分子中に炭素原子4乃至30個を含み、かつ2つのカルボキシル基が互いに脂肪族炭素原子2個分離れている少なくとも一種の脂肪族隣接ジカルボン酸アシル化剤、または(b)少なくとも一種の該ジカルボン酸アシル化剤の無水物、酸ハロゲン化物又はエステル、または(c)(a)と(b)の組合せと反応させること、ただし、(ii)の反応では該アシル化剤のモル比が該ポリアミンモル当り0.10乃至2.50モルであるような比率を用いる、ここで、(i)及び(ii)のアシル化剤の全モル比が該ポリアミンモル当り2.40乃至4.50の範囲にあることを条件とする、により製造された分散剤を含む潤滑油が開示されている。
【0005】
特許文献2には、(a)多塩基性芳香族カルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)及びその無水物、(b)分子量約300−3000のアルケニル基が結合したアルケニルコハク酸又はその無水物、および(c)ポリアルキレンポリアミンを、(a):(b):(c)=1:1−4:1−4のモル比で処理し、次に得られた中間体をホウ素で処理することにより得られた、窒素に対するホウ素の質量比が約0.05−1の反応生成物を、有効量添加することにより製造された潤滑油組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3には、アミンカルボン酸生成物を含む潤滑油組成物が開示されている。
【0007】
特許文献4には、アミンと、モノカルボン酸およびアルキレン又はアリーレンジカルボン酸など高分子量カルボン酸との反応から得られた窒素含有組成物が開示されている。
【0008】
特許文献5には、高度の立体障害があるアシル化アルキレンポリアミン類を含む炭化水素媒体に分散したテレフタル酸が開示されている。
【0009】
特許文献6には、(1)アルケニルコハク酸イミド類と芳香族二無水物を反応させることにより得られた生成物であっても、あるいは(2)アルケニルコハク酸イミド類と、低分子量の脂肪族、脂環式又は芳香族モノ又はポリカルボン酸の無水物又は二無水物とを反応させることにより得られた生成物であってもよいが、次に得られた生成物を幾つかのヒドロキシル基及び/又はアミン基を持つ少なくとも一種の有機化合物と反応させたものである添加剤組成物が開示されている。これらの分散添加剤組成物は、例えば0.1乃至20質量%の比率で潤滑油に添加することができる。
【0010】
特許文献7には、ポリアミンと長鎖炭化水素置換ジカルボン酸、その無水物又はエステルとの反応生成物を、多無水物と反応させることにより得られる油溶性分散剤であって、2%w/w活性物質およびせん断速度上限0.26s−1Pa.sに規定されたハーク・レオロジー試験にて、油の粘度増加を8Pa.s未満に制限できることに特徴がある分散剤、並びにそのような分散剤を含む潤滑油及び燃料組成物および添加剤濃縮物が開示されている。
【0011】
特許文献8には、(A)(i)少なくとも一種の低級オレフィンの少なくとも一種の実質的に脂肪族の重合体と、(ii)一般式(式中、RおよびR’は独立に−OH、−O−低級アルキル、ハロゲン原子であり、あるいは一緒には単一の酸素原子である)で表される、酸性反応体または二種以上の酸性反応体の混合物とを反応させること、また(B)アシル化剤と、少なくとも一種のアルコール(好ましくは多価アルコール)またはアミン(好ましくは第一級アミノ基を少なくとも1個持つポリアミン)とを反応させることにより、コハク酸イミド類、コハク酸エステル類およびコハク酸エステル・アミド類を生成させることが開示されている。
【0012】
特許文献9には、潤滑油、ガソリン類、舶用クランクケース油および油圧作動油に分散剤として使用できる、カルバメート官能基を含むポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミド類が開示されている。
【0013】
特許文献10には、潤滑油、ガソリン類、舶用クランクケース油および油圧作動油に分散剤として使用できる、カルバメート官能基を含むポリアミノアルケニル又はアルキルコハク酸イミド類が開示されている。
【0014】
特許文献11には、高分子量アルケニル又はアルキル置換コハク酸無水物と、平均してモル当り4個より多い窒素原子を持つポリアルキレンポリアミンとの反応生成物であって、環状カーボネートで後処理したものであるアルケニル又はアルキルコハク酸イミド添加剤が、フルオロカーボン・エンジンシールに適合し、そしてフルオロカーボン・シール適合性を得る濃度レベルで、潤滑油や燃料に用いると分散及び/又は清浄特性の改善があることが開示されている。
【0015】
特許文献12には、高分子量アルケニル又はアルキル置換コハク酸無水物と、平均してモル当り4個より多い窒素原子を持つポリアルキレンポリアミンとの反応生成物であって、環状カーボネートで後処理したものであるアルケニル又はアルキルコハク酸イミド添加剤が、フルオロエラストマー・エンジンシールに適合し、そしてフルオロエラストマー・シール適合性を得る濃度レベルで、無塩素潤滑油に用いると分散及び/又は清浄特性の改善があることが開示されている。
【0016】
特許文献13には、アルケニル又はアルキルコハク酸誘導体と不飽和酸性試薬共重合体とポリアミンとの混合物を反応条件で反応させた後、反応生成物を環状カーボネート、線状モノ又はポリカーボネートまたはホウ素化合物の何れかで、反応条件で処理することにより、コハク酸イミド組成物を製造することが開示されている。
【0017】
特許文献14には、第一の不飽和酸性試薬と1,1−二置換オレフィンの共重合体、第二の不飽和酸性試薬と1−オレフィンの共重合体およびポリアミンの混合物を、反応条件で反応させた後、反応生成物を環状カーボネート、線状モノ又はポリカーボネートまたはホウ素化合物の何れかで、反応条件で処理することにより、ポリコハク酸イミド組成物を製造することが開示されている。
【0018】
特許文献15には、アルケニル又はアルキルコハク酸誘導体と不飽和酸性試薬共重合体とポリアミンとの混合物を反応条件で反応させることにより、コハク酸イミド組成物を製造することが開示されている。
【0019】
特許文献16には、アルケニル又はアルキルコハク酸誘導体と不飽和酸性試薬共重合体とポリアミンとの混合物を反応条件で反応させた後、反応生成物を環状カーボネート、線状モノ又はポリカーボネートまたはホウ素化合物の何れかで、反応条件で処理することにより、コハク酸イミド組成物を製造することが開示されている。
【0020】
特許文献17には、(1)ポリアルケンと不飽和酸性試薬の共重合体と、(2)不飽和酸性試薬のポリアルケニル誘導体との混合物を製造する方法であって、(a)(1)アルキルビニリデン異性体および非アルキルビニリデン異性体を含むポリアルケンと、(2)不飽和酸性試薬を、重合条件でラジカル開始剤の存在下で共重合させる工程、そして(b)工程(a)の生成物を不飽和酸性試薬と、高温で強酸の存在下で反応させる工程を含む方法を提供することが開示されている。
【0021】
特許文献18には、アルケニル又はアルキルコハク酸イミドを油溶性の強酸で処理し、そして処理したコハク酸イミドを環状カーボネートと接触させて、曇りのない後処理コハク酸イミドにすることにより製造された、曇りのない後処理コハク酸イミドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0438848号明細書
【特許文献2】特開昭51−130408号公報
【特許文献3】米国特許第3287271号明細書、スチュアート、外
【特許文献4】米国特許第3374174号明細書、ルスール
【特許文献5】米国特許第3692681号明細書、リストン
【特許文献6】米国特許第4747964号明細書、デュランド、外
【特許文献7】米国特許第6255258号明細書、クラーク、外
【特許文献8】米国特許第5241003号明細書、ディゴニア、外
【特許文献9】米国特許第4612132号明細書、ウレンバーグ、外
【特許文献10】米国特許第4747850号明細書、ウレンバーグ、外
【特許文献11】米国特許第5334321号明細書、ハリソン、外
【特許文献12】米国特許第5356552号明細書、ハリソン、外
【特許文献13】米国特許第5716912号明細書、ハリソン、外
【特許文献14】米国特許第5753597号明細書、ハリソン、外
【特許文献15】米国特許第5849676号明細書、ハリソン、外
【特許文献16】米国特許第6358892号明細書、ハリソン、外
【特許文献17】米国特許第6451920号明細書、ハリソン、外
【特許文献18】米国特許第6214775号明細書、ハリソン
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、エンジン油に使用される改良された分散剤組成物に関するものであり、またその製造方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
最も広義の態様では、本発明は、
下記の工程を含む方法により製造される潤滑油添加剤組成物に関する:
(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、窒素原子を少なくとも3個持つ少なくとも一種のポリアルキレンポリアミンと反応させ、それによりコハク酸イミドまたはコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、
(B)工程(A)の生成物を、無水フタル酸又は無水ナフタル酸後処理剤またはそれらの混合物と反応させ、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、そして
(C)工程(B)の生成物を、環状カーボネートと反応させ、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、ただし、最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物には、塩基性窒素が少なくとも1個残存している。
【0025】
また、本発明は、
主要量の潤滑粘度の油、および下記の工程を含む方法により製造された少量の潤滑油添加剤組成物を含む潤滑油組成物にも関する:
(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、窒素原子を少なくとも3個持つ少なくとも一種のポリアルキレンポリアミンと反応させ、それによりコハク酸イミドまたはコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、
(B)工程(A)の生成物を、無水フタル酸又は無水ナフタル酸後処理剤またはそれらの混合物と反応させ、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、そして
(C)工程(B)の生成物を、環状カーボネートと反応させ、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、ただし、最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物には、塩基性窒素が少なくとも1個残存している。
【0026】
本発明はまた、
下記の工程を含む潤滑油添加剤組成物の製造方法にも関する:
(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、窒素原子を少なくとも3個持つ少なくとも一種のポリアルキレンポリアミンと反応させ、それによりコハク酸イミドまたはコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、
(B)工程(A)の生成物を、無水フタル酸又は無水ナフタル酸後処理剤またはそれらの混合物と反応させ、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、そして
(C)工程(B)の生成物を、環状カーボネートと反応させ、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、ただし、最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物には、塩基性窒素が少なくとも1個残存している。
【発明の効果】
【0027】
従って、本発明は、内燃機関において分散剤として有用な多機能の潤滑油添加剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明には様々な変更や代替形態が可能であるが、本明細書では本発明の特定の態様について詳細に説明する。ただし、特定の態様についての本明細書の説明は、開示する特定の形態に本発明を限定しようとするものではなく、むしろ反対に本発明は、添付した特許請求の範囲で規定する本発明の真意および範囲内に含まれる全ての変更、等価及び代替の形態をも包含するものである。
【0029】
[定義]
説明に付随して使用する下記の用語を、次のように定義する。
【0030】
「PIB」は、ポリイソブテンの略語である。
【0031】
「PIBSA」は、ポリイソブテニルコハク酸無水物の略語である。
【0032】
「コハク酸基」は、下記式を有する基を意味する。
【0033】
【化1】

【0034】
式中、WおよびZは、独立に−OH、−Cl、−O−低級アルキルからなる群より選ばれるか、あるいは一緒には−O−であって無水コハク酸基を形成している。「−O−低級アルキル」は、炭素原子数1乃至6のアルコキシが含まれることを意味する。
【0035】
「コハク酸イミド」には、多数のアミド、イミド等、および無水コハク酸とアミンの反応により生成するものも含まれると当該分野では理解されている。ただし、主な生成物はコハク酸イミドであり、この用語は一般に、アルケニル又はアルキル置換コハク酸又は無水物とアミンとの反応の生成物を意味すると受け取られている。アルケニル又はアルキルコハク酸イミド類は多数の参考文献に開示され、当該分野でもよく知られている。コハク酸イミド類の一定の基本的な種類および「コハク酸イミド」なる技術用語に含まれる関連物質については、米国特許第2992708号、第3018291号、第3024237号、第3100673号、第3219666号、第3172892号及び第3272746号の各明細書に教示されていて、それらの開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0036】
「アルケニル又はアルキルコハク酸誘導体」は、下記式を有する構造を意味する。
【0037】
【化2】

【0038】
式中、LおよびMは、独立に−OH、−Cl、−O−低級アルキルからなる群より選ばれるか、あるいは一緒には−O−であってアルケニル又はアルキルコハク酸無水物基を形成している。
【0039】
「潤滑油に可溶性」とは、物質が潤滑油や燃料のような脂肪族及び芳香族炭化水素に、基本的にあらゆる比率で溶解する能力を意味する。
【0040】
「高分子量オレフィン類」は、それらの反応生成物を潤滑油に可溶性とするのに充分な分子量と鎖長を持つオレフィン類(残存不飽和を持つ重合オレフィン類も含む)を意味する。一般には、炭素原子数約30又はそれ以上のオレフィン類で充分である。
【0041】
「アルキル」は、直鎖及び分枝鎖両方のアルキル基を意味する。
【0042】
「ポリアルキル」は、モノ−オレフィン類、特には1−モノ−オレフィン類、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン等の重合体または共重合体であるポリオレフィン類から、一般に誘導されたアルキル基を意味する。好ましくは、用いられるモノ−オレフィンは炭素原子数2乃至約24であり、より好ましくは炭素原子数約3乃至12である。より好ましいモノ−オレフィン類としては、プロピレン、ブチレン、特にはイソブチレン、1−オクテン、および1−デセンが挙げられる。そのようなモノ−オレフィン類から製造された好ましいポリオレフィン類としては、ポリプロピレン、ポリブテン、特にはポリイソブテンが挙げられる。
【0043】
「塩基性窒素」は、プロトンを受容することができる窒素原子を意味する。
【0044】
「アルケニルコハク酸又は無水物」と「アルキルコハク酸又は無水物」とは、どちらも使用することができる。
【0045】
本発明の一態様は、後処理した油溶性の潤滑油添加剤組成物である。ある態様では組成物は、次の工程を含む方法により製造される:(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、窒素原子少なくとも3個を持つ少なくとも一種のポリアルキレンポリアミンと反応させ、それによりコハク酸イミドまたはコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、(B)工程(A)の生成物を第一の後処理剤と反応させ、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、そして(C)工程(B)の生成物を第二の後処理剤と反応させ、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、ただし、最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物には、塩基性窒素が少なくとも1個残存している。
【0046】
ある態様では組成物は、次の工程を含む方法により製造される:(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、窒素原子少なくとも3個を持つ少なくとも一種のポリアルキレンポリアミンと反応させ、それによりコハク酸イミドまたはコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、(B)工程(A)の生成物を、無水フタル酸又は無水ナフタル酸後処理剤またはそれらの混合物と反応させ、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、そして(C)工程(B)の生成物を環状カーボネートと反応させ、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、ただし、最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物には、塩基性窒素が少なくとも1個残存している。
【0047】
(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物
ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物は、ポリアルケニル反応体と不飽和酸性試薬との反応生成物である。塩素化反応法または熱反応法の何れかによりポリアルケニルコハク酸又は無水物が生成する。
【0048】
(ポリアルケン)
ポリアルケニル反応体は、単一種のオレフィンの重合体であっても、あるいは二種以上のオレフィンの共重合体であってもよいポリアルケンである。主なポリアルケニル基源としては、オレフィン重合体、特には炭素原子数2乃至約30のモノ−オレフィン類から製造された重合体が挙げられる。特に有用なのは、1−モノ−オレフィン類、例えばエチレン、プロペン、1−ブテンおよびイソブテンの重合体である。イソブテンの重合体が好ましい。
【0049】
上述した純粋なポリアルケニル置換基に加えて、本明細書および特許請求の範囲で使用する「ポリアルケニル」としては、実質的にポリアルケニルであるような物質も挙げられる。「実質的にポリアルケニル」とは、本明細書で使用するとき、そのようなポリアルケニル置換基の本発明での使用に関して、ポリアルケニル置換基のポリアルケニル特性に著しい影響を及ぼす非炭化水素置換基も非炭素原子も、ポリアルケニル基が含まないことを意味する。例えば、ポリアルケニル置換基は、これらの基が置換基のポリアルケニル特性に著しい影響を及ぼさない限り、一個以上のエーテル、オキソ、ニトロ、チア、カルボヒドロカルビルオキシまたは他の非炭化水素基を含むこともできる。
【0050】
本発明の別の重要な観点は、ポリアルケニルコハク酸化合物のポリアルケニル置換基が実質的に飽和している、すなわち炭素−炭素共有結合の総数のうちの少なくとも約95%が飽和結合であることにある。余分な部分である不飽和結合は分子を酸化や劣化、重合され易くし、結果として多くの用途で炭化水素油に使用するのに適さない生成物が生じる。
【0051】
コハク酸化合物のポリアルケニル置換基の大きさが、本発明の添加剤の潤滑油における有効性を決定するように理解される。分子量が約500乃至5000のオレフィン重合体(すなわちポリアルケン類)が好ましい。より好ましくは、オレフィン重合体の分子量は約700乃至3000である。好ましい態様では、オレフィン重合体の分子量は約1000である。別の好ましい態様では、オレフィンの分子量は約2300である。最も一般的なこれらポリアルケン源は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブテン等のポリオレフィン類である。特に好ましいポリオレフィンは、分子量約900乃至約2500のポリイソブテンである。
【0052】
(不飽和酸性試薬)
「不飽和酸性試薬」は、下記一般式のマレイン酸又はフマル酸反応体を意味する。
【0053】
【化3】

【0054】
式中、XおよびX’のうちの少なくとも一方が、反応してアルコールをエステル化したり、アンモニアまたはアミンとアミドまたはアミン塩を形成したり、反応性金属または塩基として反応する金属化合物と金属塩を形成したり、あるいはアシル化剤として機能することができる基であるならば、XおよびX’は同じでも異なっていてもよい。一般にXおよび/またはX’は、−OH、−O−炭化水素、−OM+(ただし、M+は1当量の金属、アンモニウム又はアミンカチオンを表す)、−NH2、−Cl、−Brであり、また一緒にはXおよびX’は、無水物を形成するような−O−であってよい。好ましくはXおよびX’は、両方のカルボキシル機能がアシル化反応の一部となりうるようなものである。無水マレイン酸は好ましい不飽和酸性反応体である。他の好適な不飽和酸性反応体としては、電子欠損オレフィン類、例えばモノフェニルマレイン酸無水物;モノメチル、ジメチル、モノクロロ、モノブロモ、モノフルオロ、ジクロロ及びジフルオロマレイン酸無水物;N−フェニルマレイミドおよび他の置換マレイミド類;イソマレイミド類;フマル酸、マレイン酸、マレイン酸及びフマル酸水素アルキル類、フマル酸及びマレイン酸ジアルキル類、フマルアニリド酸類およびマレアミド酸類;並びにマレオニトリルおよびフマロニトリルを挙げることができる。
【0055】
(ポリアルケニル誘導体の製造方法)
一般に、ポリアルケニルコハク酸及び無水物は、二つの異なるタイプの反応又は方法により製造することができる。
【0056】
第一のタイプの反応又は方法には、ポリアルケンをハロゲン、例えば塩素と予備反応させ、そしてハロゲン化ポリアルケンをマレイン酸又は無水物と反応させること、あるいはポリアルケンと無水マレイン酸又はマレイン酸をハロゲン、例えば塩素の存在下で接触させることが含まれる。このタイプの反応又は方法は、「塩素化」反応として当該分野では知られていて、米国特許第3172892号明細書(ルスール、外、1965年3月9日発行)に記載され、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0057】
ポリアルケニルコハク酸無水物又は酸を製造するのに用いることができる第二のタイプの反応又は方法には、単に炭化水素と無水マレイン酸又はマレイン酸を、(ハロゲンの不在下で)高温で接触させることが含まれる。このタイプの反応又は方法は、熱反応として当該分野では知られている。本明細書および特許請求の範囲の目的から、「熱的方法」及び「熱反応」としては、米国特許第3361673号明細書(スチュアート、外、1968年1月2日発行)に開示されている方法などの方法が挙げられ、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。さらに、米国特許第3912764号明細書(パーマー、1975年10月14日発行)には、熱的方法により炭化水素と無水マレイン酸又はマレイン酸の実質部分を反応させ、次に塩素化反応により反応を完了させることによる、熱的方法と塩素化法の組合せが含まれている。米国特許第3912764号明細書も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0058】
(B)アミン化合物
本発明の一態様では、アミンを上述したポルアルケニルコハク酸又は無水物と反応させる。アミンは、第一級アミンを少なくとも2個含むポリアルキレンポリアミンであることが好ましい。より好ましくは、ポリアルキレンポリアミン化合物は窒素原子を少なくとも3個有する。
【0059】
ある態様においてポリアルキレンポリアミンは、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、重質ポリアミン(HPA)、またはそれらの混合物である。高分子量ポリエチレンアミン類も用いることができる。ポリアルキレンポリアミン類は、分枝構造、環状構造またはそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0060】
ある態様ではポリアルキレンポリアミンは、第一級と第二級アミン両方を含むポリエーテルアミンであってよい。
【0061】
最初そして最終の後処理剤はいずれも、反応対象となる第一級又は第二級窒素部位を必要とする。両方の後処理工程後、窒素原子のうちの一部は塩基性窒素であることが好ましい。
【0062】
(C)コハク酸イミドの後処理
本発明の一態様では、コハク酸イミドを第一の後処理剤で後処理して、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる。最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を、次いで第二の後処理剤と反応させる。
【0063】
ある態様では、コハク酸イミドを芳香族カルボン酸無水物と反応させることにより、最初の後処理済みのコハク酸イミドを製造する。芳香族カルボン酸無水物は置換されていてもよい(すなわち、芳香環に応じてメチル基、ニトロ基、ヒドロキシル基で)。代表的な芳香族無水物としては、無水トリメリット酸、無水フタル酸、および無水ナフタル酸が挙げられる。好ましくは、芳香族無水物は無水フタル酸または無水ナフタル酸である。
【0064】
ある態様では、最初の後処理済みのコハク酸イミドを第二の後処理剤、好ましいのは環状カーボネートである、と反応させることにより、最終の後処理済みのコハク酸イミドを製造する。
【0065】
本発明に使用される代表的な環状カーボネート類としては、次のものが挙げられる:1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネート)、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(プロピレンカーボネート)、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(ブチレンカーボネート)、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−5−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジエチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−ヒドロキシ−1,3−ジオキサン−2−オン、5−ヒドロキシメチル−5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジエチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−メチル−5−プロピル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,4,6−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、およびスピロ[1,3−オキサ−2−シクロヘキサノン−5,5’−1’,3’−オキサ−2’−シクロヘキサノン]。他の好適な環状カーボネート類は、ソルビトール、グルコース、フルクトースおよびガラクトース等のサッカリド類から、またC1−C30オレフィン類から製造された近接ジオール類から、当該分野で知られている方法により製造することができる。
【0066】
これら環状カーボネート類のうちの幾つか、例えば1,3−ジオキソラン−2−オンまたは4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンは市販されている。環状カーボネート類は公知の反応により容易に製造することができる。例えば、一例として米国特許第4115206号明細書におけるように(その内容も参照内容として本明細書の記載とする)、ホスゲンと好適なアルファアルカンジオールまたはアルカン−1,3−ジオールとの反応により、本発明の範囲内で使用できるカーボネートが生じる。
【0067】
同様に、好適なアルファアルカンジオールまたはアルカン−1,3−ジオールを、エステル交換条件にて例えばジエチルカーボネートでエステル交換することによっても、本発明に使用できる環状カーボネート類を製造することができる。例えば米国特許第4384115号及び第4423205号の各明細書を参照されたく、それらの内容も環状カーボネート製造の教示に関して参照内容として本明細書の記載とする。
【0068】
代表的な線状モノカーボネート類としては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、およびジプロピルカーボネート等が挙げられる。代表的な線状ポリカーボネート類としては、ポリ(プロピレンカーボネート)等が挙げられる。
【0069】
代表的な芳香族カルボン酸無水物としては、2,3−ピラジンジカルボン酸無水物、2,3−ピリジンジカルボン酸無水物、3,4−ピリジンジカルボン酸無水物、無水ジフェン酸、無水イサト酸、フェニルコハク酸無水物、1−ナフタレン酢酸無水物、および1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物等を挙げることができる。代表的な芳香族カルボン酸類としては、上記無水物の酸類が挙げられる。
【0070】
代表的な芳香族カルボン酸エステル類としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチルヘキシル、フタル酸モノメチルヘキシル、フタル酸モノエチル、およびフタル酸モノメチルを挙げることができる。
【0071】
ある態様では第二の後処理剤は、環状カーボネートまたは線状モノカーボネートである。ある態様では第一の後処理剤は、芳香族カルボン酸、酸無水物又はエステルである。
【0072】
一般に、第一の後処理剤(すなわち、無水フタル酸または1,8−無水ナフタル酸)を、コハク酸イミドを含む反応器に加えて加熱し、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミドが生成する。最初の後処理済みのコハク酸イミドを更に第二の後処理剤、例えばエチレンカーボネートと反応させる。
【0073】
(D)後処理済みのコハク酸イミドの製造方法
ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、任意に窒素でパージしながら反応器に充填し、そして約80℃乃至約170℃の温度で加熱することを含む方法により、コハク酸イミドを製造する。任意に、希釈油を窒素でパージしながら同じ反応器に入れてもよい。アミン化合物を任意に窒素でパージしながら反応器に充填する。この混合物を窒素パージ下で約130℃乃至約200℃の範囲の温度に加熱する。任意に、混合物を約0.5乃至約2.0時間減圧状態にして、反応で生じた如何なる水分も取り除く。
【0074】
また、反応体の全部−ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物とアミン化合物を、所望の比率で同時に反応器に充填することを含む方法を用いて、コハク酸イミドを製造することもできる。混合および反応を容易にするために、反応体のうちの一種以上を高温で充填することができる。反応体を反応器に入れているときに、それらの混合を容易にするために静的混合機を使用することができる。約130℃乃至200℃の温度で約0.5乃至2時間反応を行う。任意に、反応時間中反応混合物を減圧状態にして、反応で生じた如何なる水分も取り除く。
【0075】
コハク酸イミドを任意に窒素でパージしながら反応器に充填し、そして約80℃乃至約170℃の温度で加熱することを含む方法により、最初の後処理済みのコハク酸イミドを製造する。任意に、希釈油を窒素でパージしながら同じ反応器に入れてもよい。芳香族カルボン酸無水物を任意に窒素でパージしながら反応器に充填する。この混合物を窒素パージ下で約130℃乃至約200℃の範囲の温度に加熱する。任意に、混合物を約0.5乃至約2.0時間減圧状態にして、反応で生じた如何なる水分も取り除き、最初の後処理済みのコハク酸イミドが生成する。
【0076】
最初の後処理済みのコハク酸イミドを任意に窒素でパージしながら反応器に充填し、そして約80℃乃至約200℃の温度で加熱することを含む方法により、最終の後処理済みのコハク酸イミドを製造する。任意に、希釈油を窒素でパージしながら同じ反応器に入れてもよい。環状カーボネートを任意に窒素でパージしながら反応器に充填し、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミドが生成する。
【0077】
(E)潤滑油組成物
上述した最終の後処理済みのコハク酸イミドは一般に、可動部分、例えば内燃機関、ギヤおよび変速機を充分に潤滑にできる基油に添加される。一般に本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の油と少量の潤滑油添加剤組成物を含有している。
【0078】
用いられる基油は、種々様々な潤滑粘度の油のいずれであってもよい。そのような組成物に使用される潤滑粘度の基油は、鉱油であっても合成油であってもよい。粘度が40℃で少なくとも2.5cStで流動点が20℃未満、好ましくは0℃以下である基油が望ましい。基油は合成原料からでも天然原料からでも誘導することができる。本発明に基油として使用される鉱油としては例えば、潤滑油組成物に通常使用されているパラフィン系、ナフテン系及びその他の油が挙げられる。合成油としては例えば、所望の粘度を有する炭化水素合成油と合成エステル類両方およびそれらの混合物が挙げられる。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合により製造された油、ポリアルファオレフィン又はPAO油、またはフィッシャー・トロプシュ法におけるような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いた炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6−C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー類、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン類、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。使用できる合成エステル類としては、モノカルボン酸およびポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノールおよびポリオールとのエステル類が挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から製造された複合エステル類も使用することができる。鉱油と合成油のブレンドも使用できる。
【0079】
従って、基油は、精製パラフィン型基油、精製ナフテン系基油、または潤滑粘度の合成炭化水素又は非炭化水素油であってよい。また、基油は鉱油と合成油の混合物であってもよい。
【0080】
(F)濃縮物
潤滑油濃縮物も考え得る。これら濃縮物は通常、約90質量%乃至約10質量%、好ましくは約90質量%乃至約50質量%の潤滑粘度の油と、約10質量%乃至約90質量%の前述した最終の後処理済みのコハク酸イミドを含んでいる。一般に濃縮物は、輸送や貯蔵の間取扱いを容易にするだけの充分な希釈剤を含有している。濃縮物に適した希釈剤としては任意の不活性希釈剤、好ましくは潤滑粘度の油が挙げられ、それにより濃縮物を容易に潤滑油と混合して潤滑油組成物を製造することができる。如何なる潤滑粘度の油でも使用することができるが、希釈剤として使用することができる好適な潤滑油の粘度は一般に、100°F(38℃)で約35乃至約500セイボルト・ユニバーサル粘度(SUS)の範囲にある。
【0081】
(G)その他の添加剤
本発明の一態様において以下の添加剤成分は、潤滑油組成物に好ましく用いることができる成分の一部の例である。
【0082】
これら添加剤の例は、本発明を説明するために記載するのであって、本発明を限定しようとするものではない。
【0083】
1)金属清浄剤
硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート類、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート類、ホウ酸化スルホネート類、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩類、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート類、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート類、アルカノール酸の金属塩類、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩類、およびそれらの化学的及び物理的混合物。
【0084】
2)酸化防止剤
酸化防止剤は、油が酸素や熱にさらされて劣化する傾向を低減する。この劣化の証拠は、スラッジ及びワニス状堆積物の形成、油の粘度増加および腐食又は摩耗の増加にある。本発明に使用できる酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−1−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−10−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を挙げることができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化アルファ−ナフチルアミンを挙げることができる。硫黄含有酸化防止剤としては、無灰スルフィド及びポリスルフィド類、金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、および15−メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)が挙げられる。リン化合物、特にはアルキル亜リン酸エステル類、硫黄・リン化合物、および銅化合物も酸化防止剤として使用することができる。
【0085】
3)耐摩耗性添加剤
耐摩耗性添加剤は、継続的な中位の負荷条件下で可動金属部分の摩耗を低減する。そのような添加剤の例としては、これらに限定されるものでないが、リン酸エステル類及びチオリン酸エステル類およびそれらの塩類、カルバメート類、エステル類、およびモリブデン錯体を挙げることができる。特に好ましい耐摩耗性化合物はリン酸アミン類である。
【0086】
4)さび止め添加剤(さび止め剤)
さび止め添加剤は、鉄金属の腐食を改善する。これらとしては、(a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート;および(b)その他の化合物、例えばステアリン酸および他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸類、脂肪酸アミン塩類、重質スルホン酸の金属塩類、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルを挙げることができる。
【0087】
5)抗乳化剤
抗乳化剤は、混入によって油と接触しうる水から油を分離することを促進する。抗乳化剤としては、アルキルフェノールとエチレンオキシドの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルを挙げることができる。
【0088】
6)極圧剤(EP剤)
極圧剤は、高負荷条件下で可動金属部分の摩耗を低減する。EP剤の例としては、硫化オレフィン類、ジアルキル−1−ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル型、第二級アルキル型及びアリール型)、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和又は部分中和リン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、および無硫黄リン酸エステル類を挙げることができる。
【0089】
7)摩擦緩和剤
脂肪アルコール、脂肪酸(ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸および他の脂肪酸又はそれらの塩類)、アミン、ホウ酸化エステル、他のエステル類、リン酸エステル類、三及び二炭化水素亜リン酸エステル以外の亜リン酸エステル類、およびホスホン酸エステル類。
【0090】
8)多機能添加剤
一部の添加剤は、多数の機能を同時に付与するように働く。特に、アリール及びアルキルジチオリン酸亜鉛類は、耐摩耗性、極圧性および酸化防止性を同時に付与することができる。特に好ましいのは、アルカリール、第一級アルキル及び第二級アルキルジチオリン酸亜鉛類である。第一級アルキルジチオリン酸亜鉛類が特に好ましい。
【0091】
9)粘度指数向上剤
粘度指数向上剤は、潤滑油の粘度指数を増加させるために使用され、それにより温度の上昇による油の粘度低下を軽減する。ポリメタクリレート重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、およびポリイソブチレンは全て粘度指数向上剤として使用できる。窒素及び酸素官能基を持つ重合体、いわゆる分散型粘度指数向上剤も使用することができる。
【0092】
10)流動点降下剤
流動点降下剤は、ろう分が潤滑油から析出する温度を下げて、それにより油の流れが妨げられる前に潤滑油が作用できる温度範囲を広げる。流動点降下剤としては、ポリメチルメタクリレート類、エステル・オレフィン共重合体、特にはエチレン・酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0093】
11)消泡剤
消泡剤は、作動中に潤滑剤に混入した気体の放出を促すように作用する。普通消泡剤としては、アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシロキサン重合体が挙げられる。
【0094】
12)金属不活性化剤
金属不活性化剤は、金属表面の腐食を妨げ、また金属イオンをキレート化して潤滑油に溶解させ、それにより金属イオンの触媒効果によって起こる酸化を低減する。普通金属不活性化剤としては、サリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール類、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾール類を挙げることができる。
【0095】
13)分散剤
アルケニルコハク酸イミド類、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド類、エチレンカーボネート又はホウ酸による後処理で変性したアルケニルコハク酸イミド類、ポリアルコールとポリイソブテニルコハク酸無水物のエステル類、フェネート−サリチレート類及びそれらの後処理済み類似物、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属のホウ酸塩類、水和アルカリ金属ホウ酸塩の分散物、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散物、およびポリアミド無灰分散剤等、またはそのような分散剤の混合物。
【0096】
(H)本発明の使用方法
本発明の最終の後処理済みのコハク酸イミドを潤滑粘度の油に添加し、それにより潤滑油組成物を製造することができる。潤滑粘度の油に添加した最終の後処理済みのコハク酸イミドを内燃機関に使用し、それによりススやスラッジ等の分散性を改善する。
【0097】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するために供するのであって、決して本発明の範囲を限定するものとみるべきではない。
【実施例】
【0098】
[実施例1] MW1000のPIBSAとジエチレントリアミンとから誘導したモノ−コハク酸イミド(アミン:PIBSAの充填モル比0.90:1)
1Lの反応器に、MW1000のPIBSA(シェブロン・オロナイト社(Chevron Oronite LLC)製)549.94g、およびシェブロンRLOP100N基油263gを充填した。冷却器と250mLの丸底フラスコを備えた蒸留ヘッドを、1Lの反応器に取り付けた。装置を窒素雰囲気中に置いて混合物を160℃に加熱した。次いで、ジエチレントリアミン(41.80g、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社製)を、30分かけて混合物に加えた。混合物を更に90分間160℃で加熱した。次に、30分間<0mmHgの真空状態にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=31.2mgKOH/g
窒素=1.85質量%
【0099】
[実施例2] MW1000のPIBSAとDETAとから誘導した無水フタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド(無水フタル酸:PIBSAの充填モル比0.80:1)
実施例1の生成物を、実施例1に記載した装置内で窒素雰囲気中で160℃に加熱した。無水フタル酸(53.25g、シグマ−アルドリッチ社製)を、15分にわたって添加した。反応混合物を更に90分間160℃で加熱した。次に、30分間≦0mmHgの真空状態にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=16.5mgKOH/g
窒素=1.85質量%
【0100】
[実施例3] MW1000のPIBSAと重質ポリアミンとから誘導したモノ−コハク酸イミド(アミン:PIBSAの充填モル比0.90:1)
2Lの反応器に、MW1000のPIBSA1030.1g、およびシェブロンRLOP100N基油321.3gを充填して、窒素雰囲気中に置いた。混合物を160℃に加熱した。次いで、重質ポリアミン(208.33g)を、20分かけて混合物に加えた。混合物を更に90分間160℃で加熱した。次に、30分間10mmHgの減圧状態にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=125.3mgKOH/g
窒素=4.58質量%
【0101】
[実施例4] MW1000のPIBSAとHPAとから誘導した無水フタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド(無水フタル酸:PIBSAの充填モル比0.80:1)
1Lの反応器に実施例3で製造したモノ−コハク酸イミド899.95gを充填し、窒素雰囲気中で160℃に加熱した。次いで、無水フタル酸(58.12g)を添加した。反応混合物を更に90分間160℃で加熱した。次に、30分間20mmHgの減圧状態にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=102.1mgKOH/g
窒素=4.51質量%
【0102】
[実施例5] MW1000のPIBSAとHPAとから誘導したエチレンカーボネートと無水フタル酸の後処理済みのモノ−コハク酸イミド
500mLの反応器に実施例4で製造した無水フタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド466.45gを充填し、窒素雰囲気中で160℃に加熱した。次いで、エチレンカーボネート(79.58g)を、1時間にわたって注射器ポンプで添加した。反応混合物を更に2時間160℃で加熱した。生成物は次のような性状であった。
TBN=48.0mgKOH/g
窒素=3.99質量%
【0103】
[実施例6] MW2300のPIBSAと重質ポリアミンとから誘導したモノ−コハク酸イミド(アミン:PIBSAの充填モル比0.90:1)
2Lの反応器に、MW2300のPIBSA(シェブロン・オロナイト社製)1163.7g、およびシェブロンRLOP100N基油251.3gを充填した。装置を窒素雰囲気中に置いて混合物を160℃に加熱した。次いで、重質ポリアミン(91.37g)を10分かけて混合物に加えた。混合物を更に90分間160℃で加熱した。次に、30分間10mmHgの減圧状態にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=83.9mgKOH/g
窒素=2.12質量%
【0104】
[実施例7] MW2300のPIBSAとHPAとから誘導した無水フタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド(無水フタル酸:PIBSAの充填モル比0.80:1)
1Lの反応器に実施例8を890.44g充填し、窒素雰囲気中で160℃に加熱した。無水フタル酸(25.97g)を添加した。反応混合物を更に90分間160℃で加熱した。次に、30分間10mmHgの減圧状態にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=40.94mgKOH/g
窒素=2.05質量%
【0105】
[実施例8] MW2300のPIBSAとHPAとから誘導したエチレンカーボネートと無水フタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド
500mLの反応器に実施例9で製造した無水フタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド404.05gを充填し、窒素雰囲気中で160℃に加熱した。次いで、エチレンカーボネート(32.1g)を、1時間にわたって注射器ポンプで添加した。反応混合物を更に2時間160℃で加熱した。生成物は次のような性状であった。
TBN=26.0mgKOH/g
窒素=1.89質量%
【0106】
[実施例9] MW2300のPIBSAと重質ポリアミンとから誘導したモノ−コハク酸イミド(アミン:PIBSAの充填モル比0.60:1)
2Lの反応器に、MW2300のPIBSA(シェブロン・オロナイト社製)1000.9gを充填した。装置を窒素雰囲気中に置いて混合物を160℃に加熱した。次いで、重質ポリアミン(52.24g)を20分かけて混合物に加えた。混合物を更に60分間160℃で加熱した。次に、30分間減圧状態(<20mmHg(絶対圧))にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=43.8mgKOH/g
窒素=1.68質量%
【0107】
[実施例10] MW2300のPIBSAとHPAとから誘導した無水ナフタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド(無水ナフタル酸:PIBSAの充填モル比0.60:1)
1Lの反応器に実施例13で製造したコハク酸イミド513.9gを充填し、窒素雰囲気中で140℃に加熱した。無水ナフタル酸(18.47g)を5分かけて添加した。反応混合物を160℃に加熱し、そしてその状態を160℃で更に60分間維持した。次に、30分間減圧状態(<20mmHg(絶対圧))にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=36.0mgKOH/g
窒素=1.62質量%
【0108】
[実施例11] MW2300のPIBSAとHPAとから誘導したエチレンカーボネートと無水ナフタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド
1Lの反応器に実施例14で製造したコハク酸イミド325.80gを充填し、窒素雰囲気中で160℃に加熱した。次いで、エチレンカーボネート(17.68g)を、1時間にわたって注射器ポンプで添加した。反応混合物を更に60分間160℃で加熱した。生成物は次のような性状であった。
TBN=xxmgKOH/g
窒素=1.62質量%
【0109】
[実施例12] MW2300のPIBSAとHPAとから誘導したエチレンカーボネートによる後処理済みのモノ−コハク酸イミド
500mLの反応器に実施例13で製造したコハク酸イミド278.84gを充填し、窒素雰囲気中で160℃に加熱した。エチレンカーボネート(20.08g)を添加した。反応混合物を更に60分間160℃で加熱した。次に、30分間減圧状態(<10mmHg(絶対圧))にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=24.4mgKOH/g
窒素=1.52質量%
【0110】
[実施例13] MW2300のPIBSAとHPAとから誘導した無水フタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド(無水フタル酸:PIBSAの充填モル比0.60:1)
4Lの反応器に、(反応保持時間が60分の代わりに90分であったこと以外は)実施例13で製造したようなコハク酸イミド1592.0gを充填し、窒素雰囲気中で160℃に加熱した。無水フタル酸(44.76g)を添加した。反応混合物を更に90分間160℃で加熱した。次に、30分間減圧状態(<20mmHg(絶対圧))にした。生成物は次のような性状であった。
TBN=30.5mgKOH/g
窒素=1.66質量%
【0111】
[実施例14] MW2300のPIBSAとHPAとから誘導したエチレンカーボネートと無水フタル酸による後処理済みのモノ−コハク酸イミド
500mLの反応器に実施例17で製造したコハク酸イミド247.17gを充填し、窒素雰囲気中で160℃に加熱した。次いで、エチレンカーボネート(13.53g)を、1時間にわたって注射器ポンプで添加した。反応混合物を更に1時間160℃で加熱した。生成物は次のような性状であった。
TBN=xxmgKOH/g
窒素=1.61質量%
【0112】
(スス増粘台上試験の結果)
実施例1〜10のモノ−コハク酸イミドおよび後処理済みのモノ−コハク酸イミドを、スス増粘台上試験にて反応させた。この試験では、試験試料98.0gを計量して250mLのビーカーに入れた。試験試料は、試験分散剤活性分50%に基づき8質量%、過塩基性フェネート清浄剤50ミリモル、ジチオリン酸亜鉛摩耗防止剤18ミリモル、およびVI向上剤7.3質量%を、150N油85%と600N油15%中に含有した。これに、ヴァルカン(Vulcan)XC−72(商標)カーボンブラック(キャボット社(Cabot Co.)製)2.0gを加えた。混合物を撹拌した後、デシケーター内に16時間保管した。カーボンブラック無しの第二の試料を、ウィレムズ・ポリトロン・ホモジナイザ、モデルPF45/6を用いて60秒間混合し、次いで真空オーブン内で50乃至55℃で30分間ガス抜きをした。次に、二つの試料の粘度を細管粘度計を用いて100℃で測定した。カーボンブラック有りと無しの試料の粘度を比較することにより、粘度増加パーセントを計算した。よって、粘度増加パーセントが低いほど分散剤の分散性が優れている。第1表に、スス増粘台上試験の結果を示す。
【0113】
【表1】

【0114】
スス増粘台上試験の結果は、(ii)無水フタル酸とエチレンカーボネート又は(ii)無水ナフタル酸とエチレンカーボネートによる後処理済みのモノ−コハク酸イミドを用いた配合油の粘度増加パーセントが、無水フタル酸/エチレンカーボネート又は無水ナフタル酸/エチレンカーボネート後処理モノ−コハク酸イミドを含まない配合油の粘度増加パーセントよりも、概して低かったことを示している。この試験は、本発明の潤滑油添加剤組成物が優れた分散性を有することを示している。
【0115】
本発明の真意および範囲から逸脱することなく本発明の変更や変形を行うことができるが、添付した特許請求の範囲に示したような制限しか課されないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む方法により製造される潤滑油添加剤組成物:
(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、窒素原子を少なくとも3個持つ少なくとも一種のポリアルキレンポリアミンと反応させ、それによりコハク酸イミドまたはコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、
(B)工程(A)の生成物を、無水フタル酸又は無水ナフタル酸後処理剤またはそれらの混合物と反応させ、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、そして
(C)工程(B)の生成物を、環状カーボネートと反応させ、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、ただし、最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物には、塩基性窒素が少なくとも1個残存している。
【請求項2】
ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物が、数平均分子量(Mn)約500乃至約5000のポリイソブテンから誘導されたものである請求項1に記載の潤滑油添加剤組成物。
【請求項3】
ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物が、数平均分子量(Mn)約700乃至約3000のポリイソブテンから誘導されたものである請求項2に記載の潤滑油添加剤組成物。
【請求項4】
ポリアルキレンポリアミンが、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、重質ポリアミンまたはそれらの混合物から選ばれる請求項1に記載の潤滑油添加剤組成物。
【請求項5】
ポリアルキレンポリアミンが重質ポリアミンである請求項4に記載の潤滑油添加剤組成物。
【請求項6】
ポリアルキレンポリアミンがテトラエチレンペンタアミンである請求項4に記載の潤滑油添加剤組成物。
【請求項7】
環状カーボネートが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートまたはブチレンカーボネートから選ばれる請求項1に記載の潤滑油添加剤組成物。
【請求項8】
主要量の潤滑粘度の油、および下記の工程を含む方法により製造された少量の潤滑油添加剤組成物を含む潤滑油組成物:
(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、窒素原子を少なくとも3個持つ少なくとも一種のポリアルキレンポリアミンと反応させ、それによりコハク酸イミドまたはコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、
(B)工程(A)の生成物を、無水フタル酸又は無水ナフタル酸後処理剤またはそれらの混合物と反応させ、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、そして
(C)工程(B)の生成物を、環状カーボネートと反応させ、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、ただし、最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物には、塩基性窒素が少なくとも1個残存している。
【請求項9】
ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物が、数平均分子量(Mn)約500乃至約5000のポリイソブテンから誘導されたものである請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
ポリアルキレンポリアミンが、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、重質ポリアミンまたはそれらの混合物から選ばれる請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
ポリアルキレンポリアミンが重質ポリアミンである請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
ポリアルキレンポリアミンがテトラエチレンペンタアミンである請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
下記の工程を含む潤滑油添加剤組成物の製造方法:
(A)ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物を、窒素原子を少なくとも3個持つ少なくとも一種のポリアルキレンポリアミンと反応させ、それによりコハク酸イミドまたはコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、
(B)工程(A)の生成物を、無水フタル酸又は無水ナフタル酸後処理剤またはそれらの混合物と反応させ、それにより最初の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、そして
(C)工程(B)の生成物を、環状カーボネートと反応させ、それにより最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物を生成させる工程、ただし、最終の後処理済みのコハク酸イミド又はコハク酸アミドまたはそれらの混合物には、塩基性窒素が少なくとも1個残存している。
【請求項14】
ポリアルケニルコハク酸またはポリアルケニルコハク酸無水物が、数平均分子量(Mn)約500乃至約5000のポリイソブテンから誘導されたものである請求項13に記載の潤滑油添加剤組成物の製造方法。
【請求項15】
内燃機関内のスス分散性を改善する方法であって、請求項8に記載の潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させることを含む方法。
【請求項16】
10乃至90質量%の請求項1に記載の潤滑油添加剤組成物、および90乃至10質量%の有機希釈剤を含む濃縮物。

【公表番号】特表2012−513495(P2012−513495A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542346(P2011−542346)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/068101
【国際公開番号】WO2010/075103
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】