説明

潤滑油組成物

【課題】抗酸化性能の向上を実現することを可能にするクランクケース潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】(A)主要量の潤滑粘度のオイル;及び(B)官能化されていない、又は官能化された、例えば水素化された、油溶性で立体障害のないメタ−ヒドロカルビル置換フェノール、および0.8質量%未満のアミン系抗酸化剤及び/又は0.5質量%未満のヒンダードフェノール系抗酸化物を含む、少量の添加剤成分を含むクランクケース潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化劣化を受けるクランクケース潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤(潤滑剤組成物、潤滑油又は潤滑油組成物とも呼ばれる)、例えば、様々な機械類に用いられるものは、貯蔵、輸送及び使用の間に、特に、このような潤滑剤が、それらの酸化を大いに促進する、高温及び鉄触媒環境に曝される時には、酸化劣化を受け易い。この酸化は、抑制されなければ、腐食性酸性生成物、スラッジ、ワニス、樹脂及び他のオイル不溶性生成物の生成の一因となり、潤滑剤に指定された物理的及び摩擦学的特性の低下を引き起こし得る。これらの酸化生成物は、ピストン、ピストンライナー、バルブ及びバルブリフターのような重要なエンジンパーツでの有害なデポジットの生成を引き起こし得る。したがって、潤滑剤の使用寿命を延ばすように、酸化を少なくともある程度は防ぐために、潤滑剤にデポジット抑制及び抗酸化添加剤を含めることが、一般に行われている。
【0003】
「Chemistry and Technology of Lubricants」(第2版)Mortier、Orszulik編(ISBN 0 7514 0246 X)は、潤滑剤の酸化劣化の抑制を記載し(セクション4.4)、この目的に適する添加剤の1つの種類として、ラジカル捕捉剤を挙げる。ラジカル捕捉剤の中で、第三級アルキル基(これらの最も一般的なものは、第三級ブチル基である)により2及び6位で置換されたフェノールで例示される、立体障害のある(sterically hindered)フェノールが挙げられている。フェノールの2と6位の両方が第三級ブチル基により置換されている場合に最も望ましい保護が実現されること、及び、オルト位における1つの第三級ブチル基を1つのメチル基によって置き換えると、抗酸化活性がかなり低下することが、述べられている。
低コストで、広い範囲から入手可能で、再生可能な原材料から誘導できる代替フェノール系潤滑剤を提供することに関心がもたれている。しかし、これらは、MortierとOrszulikによって示されていない。
Patil等は、酸化防止剤の調製に使用され得る潜在的原材料として、カシューナッツ殻液を記載する。彼らはカルダノールを挙げているが、添加剤としてのその潜在的用途における主な欠点は、線状鎖における不飽和であることに言及している。彼らは、水素化による2重結合の除去を論じているが、15個の炭素の長い鎖は、熱安定性が悪いであろうということを指摘している。彼らは、鉱油、特に、電気絶縁性石油(又は、変換された)オイル(petroleum oil)における抗酸化剤として、水素化したカルダノールの使用を記載する。
英国特許第626251号は、内燃機関潤滑剤における金属清浄剤を可溶化するための添加剤として、直鎖状のメタペンタデセニルフェノール(カルダノールの成分)の使用を記載する。それは、抗酸化性を有するとしてフェノールに言及しておらず、酸化安定性は、他の添加剤とのブレンドによって改善され得ることを指摘している。
英国特許第633188号は、自動車エンジンのクランクケース潤滑剤のピストン清浄性能を向上させるために、硫化アルケン混合物と組み合わせて、僅かな比率の蒸留カルダノール(主として、メタペンタデセニルフェノール)を用いることを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許第626251号
【特許文献2】英国特許第633188号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Chemistry and Technology of Lubricants」(第2版)Mortier、Orszulik編(ISBN 0 7514 0246 X)
【発明の概要】
【0006】
上の問題を改善するために、カシューナッツ殻液(CNSL)のような原材料から得ることができるようなフェノールが、2又は6位のいずれにも第三級アルキル基がない(すなわち、これらのフェノールはこれらの位置のいずれにおいても立体障害がない)にもかかわらず、驚くべきことに、クランクケース潤滑剤の抗酸化剤として効果的であることが、今や、見出された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第1の態様は、
(A)主要量の潤滑粘度(lubricating viscosity)のオイル;及び
(B)官能化されていない、又は官能化された、例えば水素化された、油溶性で立体障害のない1種又は複数のメタ線状ペンタデセニル置換フェノールを含む少量の添加剤成分;を含む、又は混合することによって製造されるクランクケース潤滑油組成物であって、この組成物は、0.8質量%未満のアミン系抗酸化剤及び/又は0.5質量%未満のヒンダードフェノール系抗酸化剤を含み、但し、(B)が官能化されていない場合、この組成物は硫化アルケン混合物を含まない。
本発明の第2の態様は、乗用車クランクケース潤滑油組成物が、抗酸化性能の向上を実現することを可能にする方法であって、この方法は、組成物に、少量の1種又は複数の、本発明の第1の態様において定義された添加剤(B)を添加することを含む。
本発明の第3の態様は、
(i)潤滑剤の抗酸化性を向上させるために、主要量の潤滑粘度のオイルに、少量の1種又は複数の、本発明の第1の態様において定義された添加剤(B)を添加して、潤滑剤を製造すること;
(ii)内燃機関のクランクケースに前記潤滑剤を供給すること;
(iii)エンジンの燃焼室に炭化水素燃料を供給すること;及び
(iv)燃焼室において前記燃料を燃焼させること;
を含む、動作中の内燃機関の表面の潤滑方法である。
【0008】
本明細書において、次の用語及び表現は、用いられる場合、下に記載される意味を有する。
「活性成分」又は「(a.i.)」は、希釈剤又は溶媒ではない添加材料を表し、本明細書において表示されている全ての質量パーセントは、その添加剤のa.i.含有量に、また何らかの添加剤パッケージの全質量に基づいている。
「含んでいる」又は何らかの同族語は、述べられている特徴、ステップ、又は整数若しくは成分の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、整数、成分又はこれらのグループの存在又は添加を排除しない。表現「からなる」若しくは「から本質的になる」又は同族語は、「含む」又は同族語の中に包含され得るが、ここで、「から本質的になる」は、それが適用される組成物の特性に大きく影響しない物質を含めることを許容する。
「ヒドロカルビル」は、水素及び炭素原子を含み、炭素原子を通じてその化合物の残りの部分に直接結合している、化合物の化学基を意味する。その基は、炭素及び水素以外の1つ又は複数の原子(「ヘテロ原子」)を、それらがその基の本質的にヒドロカルビル的な特質に影響を及ぼさないのであれば、含んでいてもよい。
「主要量」は、組成物の50質量%以上を意味する。
「少量」は、組成物の50質量%未満を意味する。
また、必須の、さらには最適の、慣例の、用いられる様々な成分は、配合、貯蔵又は使用の条件下に反応し得ること、及び、本発明は、このような何らかの反応の結果として得ることができる、又は得られた生成物もまた提供することが、理解されるであろう。
さらに、本明細書に記載されている何らかの量、範囲及び比率の上限及び下限は、独立に組み合わせられてもよいことが理解されるべきである。
【0009】
本発明の様々な態様に、適切であれば、関連する本発明の特徴が、これから以下に、より詳細に説明される。
潤滑油組成物
本発明の実施において有用である潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度のオイル、及び少量の少なくとも1種のフェノール系化合物を含む。
本発明に関連して有用である潤滑粘度のオイルは、天然潤滑油、合成潤滑油及びこれらの混合物から選択され得る。潤滑油の粘度は、ガソリンエンジンオイル、潤滑鉱油及び大型車両(heavy duty)ディーゼルオイルのように、軽質留分鉱油から、重質潤滑油までの範囲に渡り得る。一般に、オイルの粘度は、100℃で測定して、2〜40mm2-1、特に4〜20mm2-1の範囲にある。
【0010】
天然オイルには、動物油及び植物油(例えば、ひまし油、ラード油);液状石油オイル、並びに、パラフィン、ナフテン及び混合パラフィン−ナフテン系の、水素化精製、溶媒処理又は酸処理された鉱油が含まれる。石炭又はシェールに由来する潤滑粘度のオイルもまた、有用な基油(base oil)として使える。
【0011】
合成潤滑油には、炭化水素オイル及びハロ置換炭化水素オイル、例えば、重合及びインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びに、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにこれらの誘導体、類似体及び同族体が含まれる。やはり有用であるのは、フィッシャー−トロプシュ合成による炭化水素からガス液化法により誘導される合成オイルであり、これらは、一般に、ガス液化基油、又は「GTL」基油と呼ばれている。
アルキレンオキシドポリマー及びインターポリマー、並びにこれらの誘導体は、末端ヒドロキシル基が、エステル化又はエーテル化によって修飾されている場合、知られている合成潤滑油の別の種類を構成する。これらは、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドの重合によって製造されるポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチルポリイソプロピレングリコールメチルエーテル、又は1000〜1500の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル);並びに、これらのモノ−及びポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル、混合C3−C8脂肪酸エステル、及びテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0012】
合成潤滑油の別の適切な種類には、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸2量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルへキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが含まれる。このようなエステルの具体例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸2量体の2−エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2−エチルへキサン酸とを反応させることによって生成される複合エステルが含まれる。
【0013】
合成オイルとして有用なエステルには、また、C5−C12モノカルボン酸と、ポリオール及びポリオールエステル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール及びトリペンタエリトリトールとから製造されるものも含まれる。
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、又はポリアリールオキシ−シリコーンオイル、及びシリケートオイルのようなケイ素をベースとするオイルは、別の種類の有用な合成潤滑剤を構成する;このようなオイルには、ケイ酸テトラエチル、ケイ酸テトライソプロピル、ケイ酸テトラ−(2−エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ−(p−tert−ブチル−フェニル)、ヘキサ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが含まれる。他の合成潤滑油には、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルリン酸のジエチルエステル)、及びテトラヒドロフランポリマーが含まれる。
【0014】
潤滑粘度のオイルは、前記基油原料(base stock)のグループI、グループII、又はグループIIIの基油原料又は基油ブレンドを含み得る。好ましくは、潤滑粘度のオイルは、グループII若しくはグループIIIの基油原料、又はこれらの混合物、或いは、グループIの基油原料と1種又は複数のグループII及びグループIIIとの混合物である。好ましくは、主要量の潤滑粘度のオイルは、グループII、グループIII、グループIV、又はグループVの基油原料、又はこれらの混合物である。基油原料、又は基油原料ブレンドは、好ましくは少なくとも65質量%、より好ましくは少なくとも75質量%、例えば、少なくとも85質量%の飽和物含有量を有する。最も好ましくは、基油原料、又は基油原料ブレンドは、90%を超える飽和物含有量を有する。好ましくは、オイル又はオイルブレンドは、1%質量未満、好ましくは0.6質量%未満、最も好ましくは0.4質量%未満の硫黄含有量を有するであろう。
好ましくは、オイル又はオイルブレンドの揮発度は、Noack揮発度試験(ASTM D5880)によって測定して、30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは16%以下である。好ましくは、オイル又はオイルブレンドの粘度指数(VI)は、少なくとも85、好ましくは少なくとも100、最も好ましくは約105〜140である。
【0015】
本発明における基油原料及び基油の定義は、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)出版物「Engine Oil Licensing and Certification System」、Industry Services Department(第14版、12月、1996年)、Addendum 1、12月、1998年に見出されるものと同じである。この出版物は、基油原料を次のように分類する。
a)グループIの基油原料は、表1に指定される試験法を用いて、90パーセント未満の飽和物及び/又は0.03パーセントを超える硫黄を含み、80以上で120未満の粘度指数を有する。
b)グループIIの基油原料は、表1に指定される試験法を用いて、90パーセント以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含み、80以上で120未満の粘度指数を有する。
c)グループIIIの基油原料は、表1に指定される試験法を用いて、90パーセント以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含み、120以上の粘度指数を有する。
d)グループIVの基油原料は、ポリアルファオレフィン(PAO)である。
e)グループVの基油原料は、グループI,II、III、又はIVに含まれていない他の全ての基油原料を含む。
【0016】
表1

【0017】
フェノール化合物(B)
ヒドロカルビル基又はその中の基は、例えば、12〜24個の炭素原子を有する線状アルキル又は線状アルケニル基であり得る。
本発明において用いられるフェノール系化合物に特有の構造上の特徴は、芳香族環のメタヒドロカルビル置換であり、置換基は、その第1炭素原子(C1)で環に結び付いている。この構造上の特徴は、フェノールとオレフィンとのフリーデル−クラフツ反応のようなアルキルフェノール化学合成によっては得られない。フリーデル−クラフツ反応は、通常、オルト及びパラアルキルフェノールの混合物を生じ(しかし、メタアルキルフェノールは約1%生じるにすぎない)、アルキル基は、芳香族環に、第2(C2)又はより高位の炭素原子で結び付く。
【0018】
本発明において用いられるフェノール系化合物に特有な構造上の第2の特徴は、それらには立体障害がない、すなわち、それらには、フェノール系化合物のヒドロキシル基に対する、ベンゼン環の2又は6位のいずれにも第三級アルキル基がないことである。
上の構造上の特徴を有するフェノール系化合物は、例えば、広い範囲から入手可能で、再生可能な原材料、例えば、カシューナッツ殻から誘導できる。このような殻は、約40%のフェノール系材料を含み、潜在的に、フェノールに対する低コスト原材料を成す。工業用(technical)カシューナッツ殻液(「工業用CNSL」)は、殻を炒ることによって抽出される液体である。工業用CNSLを蒸留すると、「カルダノール」を生じ、カルダノールの水素化は、しばしば「水素化蒸留カシューナッツ殻液」と呼ばれる材料を生じる。
【0019】
通常、カルダノールは、3−ペンタデシルフェノール(3%);3−(8−ペンタデセニル)フェノール(34〜36%);3−(8,11−ペンタデカジエニル)フェノール(21〜22%);及び3−(8,11,14−ペンタデカトリエニル)フェノール(40〜41%)を、少量の5−(ペンタデシル)レソルシノール(約10%)(カルドールとも呼ばれる)と共に含む。工業用CNSLは、主にカルダノールをいくらかの重合物質と共に含む。それゆえに、カルダノールは、かなりの量のメタ−線状8−ペンタデセニル置換フェノールを含むと言い表すことができ、この場合、ペンタデセニル基は、その第1炭素原子(C1)で芳香族環に結び付いている。
こうして、カルダノール及び工業用CNSLは、長い線状不飽和側鎖を有するかなりの量の材料と、長い線状飽和側鎖を有するほんの少量の物質とを含む。カルダノールが、潤滑剤に、抗酸化性をもたせることは、それに障害基がないことに加えて、2重結合の存在は、通常、この目的にとって、よくないと当技術分野では言われているので、驚くべきである。例えば、「Antioxidation and Antioxidants」、Volume II. Lundberg Wiley Interscience、793頁(17章:「Antioxidation and antioxidants of Petroleum」)は、次のように記載する:「オレフィン性2重結合を含む化合物は、一般に、飽和炭化水素又は高度に芳香族性の炭化水素より大きな速度で酸化される。」
【0020】
本発明は、また、添加剤として、フェノールの主要な部分、好ましくは全てが、長い線状飽和側鎖を含有するような、官能化された材料を含む材料も用い得る。このような後者の材料は、前記のように、完全に、又は部分的に、カルダノールを水素化することによって得ることができる;好ましい例は、3−(ペンタデシル)フェノールであり、この場合、ペンタデシル基は、線状であり、その第1炭素原子で芳香族環に結び付いている。それは、添加剤化合物(B)の50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上を成し得る。それは、少量の5−(ペンタデシル)レソルシノールを含み得る。
フェノール系化合物は、例えば、次の一般式によって表すことができる。
【0021】
【化1】

式中、Rは、C1位で芳香族核に結び付いた線状C1525-31ヒドロカルビル基であり、Xは、水素原子又はヒドロキシル基である。
適切には、添加剤成分(B)は、潤滑剤の全質量に対して、潤滑剤の0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%の量で存在する。
【0022】
補助添加剤(co−additive)
さらに存在し得る、添加剤成分(B)とは異なる補助添加剤が、潤滑剤における典型的な有効量と共に、下に列挙されている。列挙されている値の全ては、活性成分の質量パーセントとして提示されている。
【0023】

(1)粘度調整剤はマルチグレードオイルにおいてのみ用いられる。
【0024】
通常、基油に前記の1種の又は各添加剤をブレンドすることによって製造される、最終の潤滑剤は、5〜25質量%、好ましくは5〜18質量%、典型的には7〜15質量%の添加剤、すなわち、(B)及び補助添加剤のいずれかを含み、残りの部分は、潤滑粘度のオイルであり得る。
前記補助添加剤が、続いて、さらに詳細に論じられる:当技術分野において知られているように、いくつかの添加剤は、複数の作用をもたらすことができ、例えば、1つの添加剤は、分散剤として、また酸化防止剤として作用し得る。
【0025】
分散剤は、その主な機能が固体及び液体汚染物質を懸濁状態に保つことである添加剤であり、その機能により、汚染物質を不動態化し、スラッジの付着を減少させると同時にエンジンデポジットを減少させる。例えば、分散剤は、潤滑剤の使用中に酸化により生じる非油溶性物質を懸濁状態に保ち、こうして、スラッジの凝集及び析出、又はエンジンの金属パーツへの付着を防ぐ。
分散剤は、通常、前記のように「無灰分」であり、金属を含有し、そのために灰分を生成する材料とは対照的に、燃焼で灰分を実質的に生成しない非金属有機材料である。それらは、極性頭部を有する長い炭化水素鎖を含み、極性は、例えば、O、P、又はN原子を含むことに由来する。炭化水素は、油溶性を付与する親油性基であり、例えば40〜500個の炭素原子を有する。このように、無灰分の分散剤は、油溶性ポリマー骨格を含み得る。
好ましいオレフィンポリマーの種類が、C4精製流の重合によって製造され得るような、ポリブテン、特に、ポリイソブチレン(PIB)又はポリ−n−ブテンによって構成される。
【0026】
分散剤には、例えば、長鎖炭化水素置換カルボン酸の誘導体が含まれ、例は、高分子量ヒドロカルビル置換コハク酸の誘導体である。注目すべき分散剤のグループが、炭化水素置換スクシンイミドによって構成され、これらは、例えば、前記の酸(又は誘導体)と窒素含有化合物、有利にはポリアルキレンポリアミン、例えばポリエチレンポリアミンとを反応させることによって製造される。特に好ましいのは、US−A−3,202,678、US−A−3,154,560、US−A−3,172,892、US−A−3,024,195、US−A−3,024,237、US−A−3,219,666、及びUS−A−3,216,936に記載されているような、ポリアルキレンポリアミンと無水アルケニルコハク酸との反応生成物であり、これらは、それらの特性を向上させるために、ホウ素化(US−A−3,087,936、及びUS−A−3,254,025に記載されている)、フッ素化及びオキシレート化のような、後処理が行われてもよい。例えば、ホウ素化は、アシル窒素含有分散剤を、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ボロン酸、及びボロン酸エステルから選択されるホウ素化合物で処理することにより行うことができる。
【0027】
清浄剤は、エンジンにおけるピストンデポジット、例えば、高温ワニス及びラッカーデポジットの生成を減少させる添加剤である;それは、通常、酸を中和する特性を有し、微細な固形物を懸濁状態で保持することが可能である。大部分の清浄剤は、金属「石鹸」、すなわち、酸性有機化合物の金属塩に基づいている。
清浄剤は、一般に、長い疎水性尾部と共に、極性頭部を備え、極性頭部が、酸性有機化合物の金属塩を含む。これらの塩は、実質的に化学量論的な量の金属を含み得るが、この場合、それらは、通常、正塩又は中性塩と呼ばれ、典型的には、0〜80の全塩基価又はTBN(ASTM D2896によって測定され得る)を有するであろう。過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)と酸性ガス(例えば、二酸化炭素)との反応によって、大量の金属塩基を含めさせることができる。得られる過塩基性清浄剤は、金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外側層として、中和された清浄剤を含む。このような過塩基性清浄剤は、150以上のTBNを有し、通常、250〜500、又はこれを超えるTBNを有し得る。
【0028】
使用され得る清浄剤には、油溶性の中性及び過塩基性スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリシレート、及びナフテネート、並びに他の油溶性の金属(特に、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウム)カルボキシレートが含まれる。最も一般的に用いられる金属は、カルシウム及びマグネシウム(これらは、どちらも、潤滑剤に用いられる清浄剤に存在し得る)、並びにカルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムの混合物である。
特に好ましい金属清浄剤は、50〜450のTBN、好ましくは50〜250のTBNを有する中性及び過塩基性のアルカリ又はアルカリ土類金属サリシレートである。非常に好ましいサリシレート清浄剤には、アルカリ土類金属サリシレート、特に、マグネシウム及びカルシウムサリシレート、殊にカルシウムサリシレートである。
【0029】
摩擦調整剤には、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、モノオレイン酸グリセリル;長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル、例えば、2量体化不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;並びに、アルコキシル化アルキル置換モノアミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシ化タローアミン及びエトキシ化タローエーテルアミンが含まれる。
知られている他の摩擦調整剤には、油溶性有機モリブデン化合物が含まれる。このような有機モリブデン摩擦調整剤は、また、抗酸化及び耐摩耗に対する信頼性を潤滑油組成物に付与する。適切な油溶性有機モリブデン化合物は、モリブデン−硫黄コアを有する。例として、ジチオカルバミン酸塩、ジチオリン酸塩、ジチオホスフィン酸塩、キサントゲンサン塩、チオキサントゲンサン塩、硫化物、及びこれらの混合物を挙げることができる。特に好ましいのは、モリブデンのジチオカルバミン酸塩、ジアルキルジチオリン酸塩、アルキルキサントゲンサン塩、及びアルキルチオキサントゲンサン塩である。モリブデン化合物は、二核又は三核である。
【0030】
本発明の全ての態様において有用な好ましい有機モリブデン化合物の1つの種類は、式Mo3knzの三核モリブデン化合物、及びこれらの混合物であり、式中、Lは、その化合物をオイルに可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する、独立に選択されるリガンドであり、nは1〜4であり、kは、4から7まで変わり、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルのような中性電子供与化合物の群から選択され、またzは0〜5の範囲にあり、非化学量論的値を含む。少なくとも21個の総炭素原子、例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が、全リガンド有機基中に存在しているべきである。
モリブデン化合物は、潤滑油組成物中に、0.1〜2質量%の範囲の濃度で、又は、少なくとも10、例えば50〜2,000質量ppmのモリブデン原子を含ませる濃度で存在し得る。
好ましくは、モリブデン化合物からのモリブデンは、潤滑剤の全質量に対して、10〜1500ppm、例えば、20〜1000ppm、より好ましくは30〜750ppmの量で存在する。ある用途では、モリブデンは、500ppmを超える量で存在する。
【0031】
抗酸化剤は、酸化防止剤と呼ばれることがある;それらは、酸化に対する、潤滑剤の耐性を増大させ、過酸化物と結び付き、変質させて、それらを無害にすることによって、過酸化物を分解することによって、又は、酸化触媒を不活性にすることによって、機能し得る。酸化劣化は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面のワニス様デポジットによって、また粘度上昇によって、明白に示され得る。
それらは、ラジカル捕捉剤(例えば、立体障害のあるフェノール、第二級芳香族アミン、及び有機銅塩);ヒドロペルオキシド分解剤(例えば、有機硫黄及び有機リン添加剤);並びに多機能剤(例えば、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛、これらは、また、耐摩耗添加剤としても機能し得る、有機モリブデン化合物、これらは、また、摩擦調整剤及び耐摩耗添加剤としても機能し得る)に分類され得る。
適切な抗酸化剤の例は、(B)に付け加えて、銅含有抗酸化剤、硫黄含有抗酸化剤、芳香族アミン含有抗酸化剤、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、ジチオリン酸塩誘導体、チオカルバミン酸金属塩、及びモリブデン含有化合物から選択される。
ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩は、耐摩耗剤及び抗酸化剤として、しばしば用いられる。その金属は、アルカリ又はアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、亜鉛、モリブデン、マンガン、ニッケル若しくは銅であり得る。亜鉛塩は、潤滑剤の全質量に対して、例えば、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜2質量%の量で、潤滑油に最も一般的に用いられる。それらは、通常1種又は複数のアルコール又はフェノールとP25との反応によって、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を最初に生成させ、次いで、生成したDDPAを亜鉛化合物で中和することによって、知られている方法に従って調製され得る。例えば、ジチオリン酸は、第一級及び第二級アルコールの混合物との反応によって、製造され得る。代わりに、1つの酸の複数のヒドロカルビル基の種類が全て第二級であり、他の酸の複数のヒドロカルビル基の種類が全て第一級である、複合(multiple)ジチオリン酸が、調製され得る。亜鉛塩を製造するために、任意の塩基性又は中性亜鉛化合物が使用され得るが、酸化物、水酸化物及び炭酸塩が最も一般的に用いられる。市販の添加剤は、中和反応における過剰の塩基性亜鉛化合物の使用のせいで、しばしば、過剰の亜鉛を含む。
【0032】
耐摩耗剤は、摩擦及び過度の摩耗を低減させ、通常、硫黄若しくはリン又は両方を含み、例えば、関連する表面上にポリスルフィド皮膜を付着させることができる化合物に基づいている。注目すべきは、ジヒドロカルビルジチオリン酸塩、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)である。
無灰分の耐摩耗剤の例には、1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、硫化脂肪酸エステル、及びジチオカルバメート誘導体が含まれる。
【0033】
防錆剤及び腐食防止剤は、錆及び/又は腐食に対して表面を保護するために役立つ。防錆剤として、非イオン性ポリオキシアルキレンポリオール及びこれらのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、並びに陰イオン性アルキルスルホン酸を挙げることができる。
【0034】
流動点降下剤は、別に潤滑油流動向上剤として知られ、オイルが流動する、又はオイルを注ぐことができる最低温度を下げる。このような添加剤はよく知られている。これらの添加剤の典型的なものは、フマル酸C8−C18ジアルキル/酢酸ビニルコポリマー、及びポリメタクリレートである。
ポリシロキサン型の添加剤、例えば、シリコーンオイル又はポリジメチルシロキサンは、泡の制御を提供できる。
少量の解乳化成分が使用され得る。好ましい解乳化成分は、EP−A−330,522に記載されている。それは、アルキレンオキシドと、ビスエポキシド及び多価アルコールの反応により得られる付加物とを反応させることによって得られる。解乳化剤は、活性成分が0.1質量%を超えないレベルで用いられるべきである。活性成分が0.001〜0.05質量%の使用割合(treat rate)が好都合である。
粘度調整剤(又は粘度指数向上剤)は、高温及び低温での動作性を潤滑剤に付与する。分散剤としても機能する粘度調整剤もまた知られており、無灰分の分散剤に対して上で記載されたようにして調製され得る。一般に、これらの分散剤−粘度調整剤は、例えばアルコール又はアミンにより後で誘導体化された、官能化ポリマー(例えば、無水マレイン酸のような活性モノマーを後でグラフトしたエチレン−プロピレンのインターポリマー)である。
潤滑剤は、通常の粘度調整剤を用いて、又は用いないで、また分散剤−粘度調整剤を用いて、又は用いないで配合され得る。粘度調整剤として用いられるのに適する化合物は、ポリエステルを含めて、一般に、高分子量の炭化水素ポリマーである。油溶性粘度調整ポリマーは、通常、10,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜500,000の質量平均分子量を有し、これらの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー又は光散乱によって求めることができる。
【0035】
完全に配合されたオイル
完全に配合された本発明の乗用車ディーゼルエンジン潤滑油(PCDO)組成物は、好ましくは0.4質量%未満、例えば、0.35質量%未満、より好ましくは0.3質量%未満、例えば0.15質量%未満の硫黄含有量を有する。好ましくは、完全に配合されたPCDO(潤滑粘度のオイル+全ての添加剤)のNoack揮発度は、13以下、例えば12以下であり、好ましくは10以下であり得る。完全に配合された本発明のPCDOは、好ましくは、1200ppm以下、例えば、1000ppm以下、又は800ppm以下のリンを有する。完全に配合された本発明のPCDOは、好ましくは、1.0質量%以下の硫酸灰分(SASH)を有する。
完全に配合された本発明の大型車両ディーゼルエンジン(HDD)潤滑油組成物は、好ましくは1.0質量%未満、例えば0.6質量%未満、より好ましくは0.4質量%未満、例えば0.15質量%未満の硫黄含有量を有する。好ましくは、完全に配合されたHDD潤滑油組成物(潤滑粘度のオイル+全ての添加剤)のNoack揮発度は、20以下、例えば、15以下であり、好ましくは12以下であり得る。完全に配合された本発明のHDD潤滑油組成物は、好ましくは、1600ppm以下、例えば、1400ppm以下、又は1200ppm以下のリンを有する。完全に配合された本発明のHDD潤滑油組成物は、好ましくは、1.0質量%以下の硫酸灰分(SASH)含有量を有する。
【0036】
コンセントレート
複数の添加剤を含むので、潤滑油組成物を生成するために、いくつかの添加剤をオイルに同時に添加できる、1種又は複数の添加剤コンセントレート(コンセントレートは、添加剤パッケージと呼ばれることがある)を調製することが、不可欠ではないが、望ましいことであり得る。
最終組成物は、5〜25質量%、好ましくは5〜18質量%、通常は10〜15質量%のコンセントレートを用い、残りの部分は、潤滑粘度のオイル及び粘度調整剤であり得る。
【0037】
エンジン
本発明は、圧縮点火及び火花点火の2−又は4−気筒レシプロエンジンのような様々な内燃機関に適用できる。例には、乗用車、小型商用車及び大型オンハイウェイトラックのためのエンジン;航空機、発電、機関車及び船舶設備のためのエンジン;並びに、農業、建設及び混合のために用いられ得るような大型オフハイウェイエンジンが含まれる。
(例)
本発明が、次の例によって示されるが、それらによって決して限定されない。
【0038】
成分
次の成分を用いる。
成分(B1):蒸留工業用CNSL又は「カルダノール」(Palmer Internationalによる)
成分(B2):3−ペンタデシルフェノール(Sigma Aldrichによる)
ヒンダードフェノール:市販のヒンダードフェノール系抗酸化剤
アミン系:市販のアルキル化ジアリールアミン抗酸化剤
基油原料:市販のアルキル化ジアリールアミン抗酸化剤
潤滑油:乗用車モーターオイル
基油原料:グループII基油
【0039】
潤滑剤
前記成分から選択したものをブレンドして、様々なクランクケース潤滑油組成物を得た。試験に用いたエンジンオイル配合は、市販されている次の成分を含んでいた。本発明に関連しては、材料の種類及び正確な組成について特別な制約は存在しない。試験配合は下に記載され、下の「結果」という表題の下に記される何らかの変更を受ける。
組成
基油
過塩基性清浄剤
耐摩耗剤
スクシンイミド分散剤
VI向上剤
摩擦調整剤
第二級ジアリールアミン抗酸化剤
比較の基準として、1つの潤滑剤はフェノール系抗酸化剤を含まなかった。他の潤滑剤は、フェノール系成分(B1)及び(B2)の1つを含んでいた;(B1)及び(B2)を含むものは、本発明のものであり、他は比較例である。潤滑剤は、他の点では同じである。潤滑剤の量的組成は、「結果」の表題の下に、下の表に示す。
【0040】
試験
各潤滑剤を、ILSAC GF−3、GF−4、及びGF−5規格の一部である、中−高温熱酸化エンジンオイルシミュレーション試験(MHT4−TEOST)で、その抗酸化性能を評価したが、その試験の記載されている目的は、潤滑剤がデポジットを生成する傾向を評価することである。しかし、抗酸化剤が尽きた時にデポジットは生成し始めるので、それは抗酸化性の試験である。
試験は、熱酸化及び触媒条件下に、試験オイル(8.5g)が繰返し通過するように連続的にストレスを加えることによって、特別に作られたスチール棒に生成されるデポジットの質量を求める。試験は、0.15(x+16)mg(xは、2回以上の繰返し試験結果の平均値である)の典型的な繰返し精度を有する、Tannas Coによって製造された装置を用い、実施した。より少ないデポジット質量が、潤滑剤のより良好な酸化安定性を示す。
【0041】
結果
結果を下の表に要約する。
【0042】
表1
各潤滑剤は99質量%の潤滑油を含んでいた。また、それらは、硫化オレフィンを含んでいた。基油及びフェノールの量は、質量%で表されており、デポジットの質量はmgで表されている。
【0043】

【0044】
結果から、フェノール含有潤滑剤、すなわち、B1及びB2を含む潤滑剤の各々は、基準より良好な性能を示し、抗酸化活性を示すことが示される。B1もB2もヒンダードフェノールではなく、ヒドロキル基の障害は、当技術分野において、クランクケース潤滑剤の抗酸化活性にとって必要であると見なされているので、これは驚くべきことである。
【0045】
表2
各潤滑剤は、98.3質量%の潤滑油と、質量%で表される、それぞれ異なる量のB1、ヒンダードフェノール、及びアミン系抗酸化剤を含んでいた。表1におけると同じ基油を用い、残りの部分を補って、100%にする。デポジットの質量は、mgで表されている。
【0046】

【0047】
例4(比較例)及び4.1の結果は、アミン系含有潤滑剤において、ヒンダードフェノールをB1に置き換えると、抗酸化性が向上したことを示す。例5(比較例)及び5.1の結果は、アミン系を含まない潤滑剤において、ヒンダードフェノールをB1に置き換えると、やはり抗酸化性が向上したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主要量の潤滑粘度のオイル;及び
(B)官能化されていない、又は官能化された、例えば水素化された、油溶性で立体障害のない1種又は複数のメタ線状ペンタデセニル置換フェノールを含む少量の添加剤成分;を含む、又は混合することによって製造されるクランクケース潤滑油組成物であって、0.8質量%未満のアミン系抗酸化剤及び/又は0.5質量%未満のヒンダードフェノール系抗酸化剤を含み、但し、(B)が官能化されていない場合、硫化アルケン混合物を含まない、上記組成物。
【請求項2】
メタ置換基が、8−ペンタデセニル又はペンタデシル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(B)が、蒸留カシューナッツ殻液(若しくはカルダノール)又は水素化蒸留カシューナッツ殻液を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)が、50質量%以上、例えば60質量%以上、例えば70質量%以上、例えば80質量%以上、例えば90質量%以上の1種又は複数の立体障害のないメタ置換フェノールを含む、油溶性フェノール化合物の混合物である、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記フェノールが、次の式:
【化1】

[Rは、C1位で芳香族核に結び付いた線状C1525-31ヒドロカルビル基であり、Xは水素原子又はヒドロキシ基である]
を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(B)とは異なる、1種又は複数の他の添加剤成分をさらに含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
(B)とは異なる、他の添加剤が、無灰分の分散剤、金属清浄剤、腐食防止剤、抗酸化剤、流動点降下剤、耐摩耗剤、摩擦調整剤、解乳化剤、消泡剤及び粘度調整剤の1つ又は複数から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
乗用車クランクケース潤滑油組成物が抗酸化性能の向上を実現することを可能にする方法であって、組成物に、請求項1から5のいずれか1項に記載の少量の1種又は複数の添加剤(B)を添加することを含む上記方法。
【請求項9】
(i)潤滑剤の抗酸化性を向上させるために、主要量の潤滑粘度のオイルに、請求項1から5のいずれか1項に記載の少量の1種又は複数の添加剤(B)を添加して、潤滑剤を製造すること;
(ii)内燃機関のクランクケースに前記潤滑剤を供給すること;
(iii)エンジンの燃焼室に炭化水素燃料を供給すること;及び
(iv)燃焼室において前記燃料を燃焼させること;
を含む、動作中の内燃機関の表面の潤滑方法。

【公開番号】特開2013−87288(P2013−87288A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231762(P2012−231762)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】