説明

潤滑状態判定装置及び部品実装装置

【課題】部品実装装置が備える転がり式直線運動案内について潤滑状態を正確に判定する。
【解決手段】部品実装装置は直動ガイド21Aの潤滑状態判定装置41を備える。潤滑状態判定装置41は、直動ガイド21Aのガイドレール22Aとキャリッジ23Aとの間の導通電圧を検出する電圧検出器51と、キャリッジ23Aをガイドレール22A上で移動させるリニアモータ36を制御する駆動制御部47と、駆動制御部47によりキャリッジ23Aをガイドレール22A上で移動させた際に電圧検出器51で検出された導通電圧を使用して直動ガイド21Aの潤滑状態を判定する判定部43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑状態判定装置及びその方法、並びに部品実装装置及びその方法に関する。特に、本発明は、部品実装装置等が備える転がり式直線運動案内のグリースによる潤滑状態の判定に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置が備える基板搬送装置やヘッド位置決め装置では、転がり式直線運動案内(以下、「直動ガイド」と称する。)が使用されている。この直動ガイドでは、動作の円滑性と正確性を確保するための潤滑剤として、グリースが使用されている。グリースの基油の減少や劣化等の経時的変化により潤滑状態が低下した場合、グリースの補充や交換、つまり給脂の必要がある。しかし、従来、給脂時期の判断は作業者の経験等に依存しており、例えば、部品実装装置の稼動時間が予め定めた時間に達すると、潤滑状態の良否に係わらず給脂を行うといった運用がなされている。
【0003】
特許文献1には、転がり軸受における潤滑状態の判定に油膜パラメータを考慮することが記載されている。ここで、油膜パラメータは、転動溝の転動面と転動体(玉又はコロ)の表面との間に形成された油膜厚さの、転動溝の転動面と転動体の表面の合成表面粗さに対する割合を示すパラメータである。しかし、特許文献1では、グリースの減少や劣化等の経時的変化に起因する潤滑状態の低下は考慮されていない。また、特許文献1では、異なるグリースの混合(例えば機械製造メーカの奨励品とそれ以外のグリースの混合)が潤滑状態に与える影響についても考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−325929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、部品実装装置の搬送装置や位置決め装置が備える転がり式直線運動案内について、基油の減少や劣化等の経時的変化や混合による影響を考慮して潤滑状態を正確に判定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、レールと、レール上を移動するキャリッジと、前記レールと前記キャリッジとの間で転動する転動体と、キャリッジに充填された潤滑用のグリースとを備える転がり式直線運動案内の潤滑状態を判定する潤滑状態判定装置であって、前記レールと前記キャリッジ間の電圧、電流、又は抵抗である導通特性を検出する導通特性検出部と、前記キャリッジを前記レール上で移動させる駆動機構を制御する駆動制御部が前記キャリッジを前記レール上で移動させた際に前記導通特性検出部で検出された導通特性を使用して、前記転がり直線運動案内の潤滑状態を判定する判定部とを含む潤滑状態判定部とを備える、潤滑状態判定装置を提供する。
【0007】
具体的には、前記判定部は、正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度以上に前記駆動制御部により前記キャリッジの速度が上昇したときに、前記導通特性検出部によって検出された導通特性と前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す前記導通特性の閾値との比較に基づいて潤滑状態が正常であるか否かを判定する。
【0008】
代案としては、前記判定部は、前記キャリッジの速度を検出する速度検出部をさらに備え、前記判定部は、前記導通特性検出部によって検出された導通特性が前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す値であるときに、前記速度検出部によって検出された速度が正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度以下であれば正常な潤滑状態であると判定し、前記検出された速度が前記閾値速度を上回る場合には潤滑状態の低下であると判定する。
【0009】
本発明の第2の態様は、レールと、レール上を移動するキャリッジと、前記レールと前記キャリッジとの間で転動する転動体と、キャリッジに充填された潤滑用のグリースとを備える転がり式直線運動案内の潤滑状態を判定する潤滑状態判定方法であって、
前記キャリッジを前記レール上で移動するときの前記レールと前記キャリッジ間の電圧、電流、又は抵抗である導通特性を検出し、前記検出して導通特性に基づいて潤滑状態が正常であるか否かを判定する潤滑状態判定方法を提供する。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様の潤滑状態判定装置を備える部品実装装置を提供する。
【0011】
本発明の第4の態様は、基板位置決め装置で基板を位置決めすると共に、部品を保持したヘッドをヘッド位置決め装置で移動させて前記基板に対して位置決めして実装する部品実装方法であって、前記基板位置決め装置と前記ヘッド位置決め装置のうちの少なくとも一方は、レールと、レール上を移動するキャリッジと、前記レールと前記キャリッジとの間で転動する転動体と、キャリッジに充填された潤滑用のグリースとを備える転がり式直線運動案内を備え、前記キャリッジを前記レール上で移動するときの前記レールと前記キャリッジ間の電圧、電流、又は抵抗である導通特性を検出し、前記検出して導通特性に基づいて潤滑状態が正常であるか否かを判定する、部品実装方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャリッジをレール上で移動させた際に検出された導通特性を使用して転がり直線運動案内の潤滑状態を判定するので、グリースの基油の減少や劣化等の経時的変化や混合による影響も含めて正確に潤滑状態を判定できる。特に、正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度を使用することで正確な潤滑状態の判定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る部品実装装置の模式的な斜視図。
【図2】基板搬送装置の模式的な正面図。
【図3】基板搬送装置の模式的な側面図。
【図4】基板搬送装置の直動ガイドに設けた潤滑状態判定装置を示す模式的な構成図。
【図5】速度波形、正常時の導通電圧波形、潤滑状態が軽度に低下した時の導通電圧波形、及び潤滑状態が重度に低下した時の導通電圧波形を示す線図。
【図6A】サンプルA0〜A3の実験結果(速度波形と導通電圧波形)を示す図表。
【図6B】サンプルA0でキャリッジ速度が3m/sの場合の模式的な速度波形と導通電圧波形を示す図。
【図7】サンプルA0〜A3におけるキャリッジ速度と油膜パラメータΛの関係を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、部品実装装置1は、部品を吸着保持する複数の吸着ノズル8を備える実装ヘッド2、実装ヘッド2をXY方向に位置決めするヘッド位置決め装置3、基板搬送装置5、及び部品供給部6を基台7上に備える。基板搬送装置5は、基板10を着脱可能に保持した保持テーブル4をX方向に往復直動させ、それによって基板10を搬送する。実装ヘッド2はヘッド位置決め装置3によりXY方向に移動し、例えば複数のカセットフィーダの集合体である部品供給部6に対して位置決めされる。個々の吸着ノズル8が降下して部品を吸着保持する。その後、ヘッド位置決め装置3による実装ヘッド2のXY方向の移動により、基板10の部品実装位置に対して個々の吸着ノズル8が位置決めされ、吸着保持された部品が実装される。
【0015】
後に詳述するように、本実施形態では基板搬送装置5が備える直動ガイド21Aに本発明を適用している。しかし、本発明はヘッド位置決め装置3が備える直動ガイドにも適用できる。つまり、ヘッド位置決め装置3は、直動ガイドによってX方向に移動可能に実装ヘッド2を支持するXビーム11と、直動ガイドによってXビーム11をY方向に移動可能に支持するYビーム12A,12Bとを備えており、これらの直動ガイドにも本発明を適用できる。
【0016】
本実施形態における基板搬送装置5は、基板10を保持した保持テーブル4をX方向に移動させて基板10の搬送と位置決めを行う。しかし、基板位置決め装置の具体的な構成は本実施形態のものに限定されない。例えば、基板搬送装置は、保持テーブル4を用いずに、基板10の前後の端部(Y軸方向の両端部)を支持して搬送する搬送ベルトにより基板10を位置決め部(この位置決め部で基板10に部品が実装される)に搬送するものでもよい。
【0017】
図2から図4を参照して、基板搬送装置5について詳細に説明する。基板搬送装置5は一対の直線運動案内(直動ガイド)21A,21Bを備える。直動ガイド21A,21Bは、それぞれ1本の直線状のガイドレール22A,22Bを備える。これらのガイドレール22A,22BはX方向に延びるように基台7上に互いに平行に設置されている。個々のガイドレール22A,22Bには、それぞれ2個のキャリッジ23A,23B,23C,23DがX方向に進退移動可能に係合している。キャリッジ23A〜23D上には絶縁材料からなるスペーサ24を介して保持テーブル4が固定されている。キャリッジ23A〜23Dが直動ガイド21A,21Bに沿って直動することで保持テーブル4がX方向に移動できる。
【0018】
本実施形態における直動ガイド21A,21Bは、玉式で4方向等荷重型4列サーキュラーアーク溝2点接触構造リテーナ付き(正面組合せ)である。しかし、本発明は、玉式に限定されず転動体としてコロを備えるコロ式の直動ガイドに適用できる。また、転動溝の配置等を含む具体的な構造が本実施形態とは異なる直動ガイドにも本発明を適用できる。
【0019】
図4を参照すると、ガイドレール22A,22Bの両側壁にそれぞれに上下2本で合計4本のレール転動溝25a,25b,25c.25dが形成されている。これらのレール転動溝25a〜25dはX方向に延びる直線状であり、断面は円弧状である。キャリッジ23A〜23Dは、ガイドレール22A,22Bの上方に隙間をあけて配置された基部27と、この基部27の両側から下向きに延びてガイドレール22A,22Bの側壁に対して隙間をあけて配置された側部28A,28Bを備える。側部28A,28Bには、ガイドレール22A,22Bのレール転動溝25a〜25dに対向してX方向に延びる直線状で断面円弧状のキャリッジ転動溝31a,31b,31c,31dが形成されている。また、側部28A,28Bには、両端面を貫通する循環路31a',31b',31c',31d'が個々のキャリッジ転動溝31a〜31dにそれぞれ対応して形成されている。キャリッジ23A〜23Dの両端面には、それぞれ図2にのみ概念的に示すエンドプレート32A,32Bが装着されている。対応するキャリッジ転動溝31a〜31dと循環路31a’〜31d’はエンドプレート32A,32Bに形成された図示しない湾曲路で互いに接続され、転動体としての玉33の循環路を形成している。これらの循環路を循環する玉33がレール転動溝25a〜25dとキャリッジ転動溝31a〜31dとの間でそれぞれ循環するように転動することで、ガイドレール22A,22Bに沿ってキャリッジ23A〜23Dが円滑に直動する。また、玉33の循環路には図示しない供給口(グリースニップル)から潤滑剤としてのグリース34が充填されている。
【0020】
保持テーブル4をガイドレール22A,22Bに沿って進退移動させる駆動装置としてリニアモータ36が設けられている。リニアモータ36は、保持テーブル4の下面に取付られた可動子としてのモータコイル37と、モータコイル37の両側に並んで配置された固定子としてのマグネット38A,38Bとを備える。
【0021】
本実施形態では直動ガイド21A,21Bのうち、一方の直動ガイド21Aについてグリース34による潤滑状態の良否の判定を行う潤滑状態判定装置41が設けられている。以下、図4を参照して潤滑状態判定装置41を説明する。
【0022】
潤滑状態判定装置41は制御装置42を含む。制御装置42は、基板搬送装置5用のローカルの制御装置であってもよいし、部品実装装置1全体の制御装置であってもよい。制御装置42は、判定部43、記憶部44、警報処理部45、速度検出部46、及び駆動制御部47を備える。
【0023】
いずれも鉄やステンレス等の鋼製であるガイドレール22Aとキャリッジ23A(キャリッジ23Bでもよい)とは、導電路48で電気的に接続されている。導電路48には直流電源49と抵抗50が設けられており、簡易な直流電気回路が構成されている。本実施形態では、直流電源49として例えば1.0Vの乾電池を使用している。直流電源49としては乾電池1.0V〜1.5V程度のものが使用できるが、これに限定されない。例えば、直流電源49は安定化電源等であってもよい。前述のようにキャリッジ23Aと保持テーブル4との間には絶縁材料からなるスペーサ24が介在しているので、キャリッジ23Aと保持テーブル4とは電気的に分離されている。従って、ガイドレール22Aとキャリッジ23Aとの間の電圧を測定することでキャリッジ23Aとガイドレール22Aの間の玉33を介した電気導通状態を測定できる。キャリッジ23A(保持テーブル24)の移動により、キャリッジ23A(キャリッジ転動溝31a〜31d)と玉33の間と、ガイドレール22A(レール転動溝31a〜31d)と玉33の間に、それぞれグリース34で十分な油膜が形成されている場合、すなわち正常な潤滑状態が確保されている場合、形成された油膜によりキャリッジ23Aとガイドレール22Aとの間は電気的に絶縁される。抵抗50はキャリッジ23A(保持テーブル4)が停止中でグリース34による油膜形成前の短絡状態で直流電源49の消耗あるいは消費を抑制するために設けられており、本実施形態では10Ωである。キャリッジ23Aの移動時の油膜形成によってキャリッジ23Aとガイドレール22Aが電気的に絶縁されると、理想的には両者の間の電圧(導通電圧)は0Vである。しかし、油膜形成による絶縁抵抗値には変動があるため、本実施形態のように直流電源49が1.0Vで抵抗50が10Ωの場合、例えば0.3V以下で絶縁状態とみなせる。絶縁状態となる導通電圧を閾値電圧Vthと定義する。
【0024】
潤滑状態判定装置41は、導通電圧を検出する電圧検出器51を備える。電圧検出器51で検出された導通電圧は制御装置42の判定部43に出力される。また、判定部43には温度センサ52によって検出されたガイドレール22A又はその付近の温度が入力される。保持テーブル4のガイドレール22A上での位置を検出するエンコーダ53が設けられており、制御装置42の速度検出部46はエンコーダ53から入力される位置信号から保持プレート4(キャリッジ23A)が移動する速度を検出(算出)する。速度検出部46で検出された速度も判定部43に入力される。また、保持プレート4(キャリッジ23A)の速度は、保持テーブル4の進退させるリニアモータ36の駆動制御部47にも出力される。
【0025】
判定部43は、電圧検出器51から入力される導通電圧、温度センサ52から入力される温度、及び速度検出部45から入力される速度を使用すると共に、記憶部44に記憶された情報(例えば後述する閾値速度Sth等)を参照し、グリース34による直動ガイド21Aの潤滑状態を判定する。判定部43の判定結果は警報処理部45に出力される。警報処理部45は、判定部43での判定結果に応じ、ディスプレイ56、ランプ57、及びブザー58を制御して部品実装装置1のオペレータに対して警報を発する処理を実行する。
【0026】
判定部43は、2種類の判定方法でグリース34による直動ガイド21Aの潤滑状態を判定している。まず、第1の判定方法は、比較的軽度の潤滑状態の低下が生じているかを判定するものである。第1の判定方法によって軽度の潤滑状態低下の判定が成立すると、判定結果を判定部43から受けた警報処理部45が軽警報の処理を実行する。次に、第2の判定方法は、比較的重度の潤滑状態の低下が生じているかを判定するものである。第2の判定方法によって重度の潤滑状態低下の判定が成立すると、判定結果を判定部43から受けた警報処理部45が重警報の処理を実行する。軽警報の処理としては、例えば給油時期であることを示す文字、記号等のディスプレイ56上での表示がある。また、重警報の処理としては、例えばディスプレイ56上の表示とそれに加えたランプ57の点灯やブザー58の駆動がある。ただし、部品実装装置1のオペレータが重警報と軽警報を区別して認識できる限り、これらの処理におけるディスプレイ56、ランプ57、及びブザー58の制御の態様は、特に限定されない。
【0027】
以下、第1の判定方法を説明する。
【0028】
第1の判定方法は、油膜パラメータΛを応用して潤滑状態の低下を判定する。油膜パラメータΛは、転動体が転動する面である転動溝の転動面と転動体の表面との間に形成された油膜厚さの、転動溝の転動面と転動体の表面の合成表面粗さに対する割合を示すパラメータであり、以下の式(1)で定義される。
【0029】
【数1】

【0030】
合成表面粗さは以下の式(2)で定義される。
【0031】
【数2】

【0032】
合成表面粗さσとは、転がり接触する面の表面粗さσ,σを合わせたもので、一般に、算術平均値や調和平均値よりも実験値に適合するため二乗平均値(相乗平均値)を用いる。
【0033】
本実施形態では、σ1,σのうちの一方が転動溝25a〜25c,31a〜31dの転動面の表面粗さであり、他方が玉33の表面の表面粗さである。
【0034】
後に詳述する実験及び検討の結果、直動ガイドについて正常ないし良好な潤滑状態が得られる油膜パラメータΛが見出された。具体的には、本実施形態のように転動体が玉である直動ガイドの場合、油膜パラメータΛがある値、すなわち0.5以上5以下の値、好ましくは0.6以上であれば油膜のある状態で玉が転がり運動する良好な潤滑状態が得られる。一方、油膜パラメータΛがこの値を下回ると、グリース34による油膜形成が不十分で潤滑状態が低下する。このように潤滑状態の良否の境界となる油膜パラメータΛを、油膜パラメータ閾値Λthと定義する。
【0035】
転動溝25a〜25c,31a〜31dの転動面と玉33の表面の粗さは予め測定できる。一般に、転動溝25a〜25c,31a〜31dの転動面の表面粗さは0.1μm(Ra)以上0.3μm(Ra)以下程度であり、玉3の表面粗さは0.01μm(Ra)以上0.05μm(Ra)以下程度である。
【0036】
転動体が玉33である場合の最小油膜厚さhminは以下の式(3)で表される。
【0037】
【数3】

【0038】
材料パラメータGを決定するためのグリース34の動粘度等は、実測又は製造元の開示から予め得られる。また、直動ガイド21Aの使用条件が決まれば、荷重パラメータWも予め決定できる。接触楕円比kは転動体の玉が転動溝の面に接触する楕円の楕円比(転動方向(X)の楕円の長さ/転動方向に直交する接触面の方向の楕円の長さ)である。
【0039】
以上のように、油膜パラメータΛ(式(1))の決定に必要な表面粗さσ1,σ、材料パラメータG、及び荷重パラメータWは予め決定できる。従って、これらを式(1)〜(3)に適用することで、油膜パラメータ閾値Λthに相当する保持プレート4(キャリッジ23A)の速度(閾値速度Sth)を予め決定できる。リニアモータ36によりキャリッジ23A(保持テーブル4)を閾値速度Sth以上で移動させた場合、油膜がある状態で玉33が転がり運動する良好な潤滑状態となっているはずであるので、電圧検出器51で検出される導通電圧は前述のように絶縁状態とみなせる閾値電圧Vth(例えば0.3V)以下となるはずである。従って、キャリッジ23A(保持テーブル4)を閾値速度Sth以上で移動させたにもかかわらず、電圧検出器51で検出される導通電圧が閾値電圧Vth(例えば0.3V)を上回る場合は、基油の減少、劣化等の経時的変化、グリースの混合(例えば機械製造メーカの奨励品とそれ以外のグリースの混合)等が原因なって十分な油膜が形成されない(潤滑状態が低下している)と判断できる。
【0040】
この点について図5を参照すると、キャリッジ23A(保持テーブル4)は停止状態(速度Sが0)からX方向に往復移動し時刻t1〜t2,t5〜t6では速度Sは閾値速度Sth以上に達している。キャリッジ23Aの停止時には予圧と垂直荷重による弾性変形で金属接触状態にある。つまり、油膜が形成されていないので、キャリッジ23A及びガイドレール22Aはそれぞれ玉33と接触しており、キャリッジ23Aとガイドレール22Aは玉33を介して電気的に導通している。そのため、キャリッジ23Aの停止時の導通電圧Vは、直流電源49の印加電圧に相当する基準電圧Vb(例えば1.0V)である。図5の(a)で示すように、正常な潤滑状態が得られている場合、導通電圧Vはキャリッジ23Aの加速(時刻t0〜t1,時刻t4〜t5)に伴って閾値電圧Vth以下まで低下し、その後キャリッジ23Aの減速(時刻t2〜t3,時刻t6〜t7)に伴って基準電圧Vbまで上昇する。一方、重度の潤滑状態の低下である図5の(c)で示すように、油膜が形成されていない場合には、キャリッジ23Aが加速して速度Sが閾値速度Sth以上に達しても、導通電圧Vは安定せず閾値電圧Vth(例えば0.3V)を上回っている。
【0041】
前述のように表面粗さσ1,σ、材料パラメータG、及び荷重パラメータW等から閾値速度Sthを予め決定できるが、グリース34の基油の粘度は温度の影響を受けるので、閾値速度Sthも温度によって変化する。記憶部44には、温度と閾値速度Sthの関係が表や算出式等の態様で記憶されている。判定部43は温度センサ52が検出した温度から記憶部44に記憶された関係に基づいて閾値速度Sthを算出する。
【0042】
駆動制御部47は、速度検出部46で検出されるキャリッジ23A(保持プレート4)の速度Sを参照しつつリニアモータ36を駆動し、キャリッジ23Aの速度Sを判定部43が計算した閾値速度Sth以上まで上昇させる。判定部43は。キャリッジ23Aの速度Sが閾値速度Sth以上となったときの導通電圧Vから潤滑状態の良否を判定する。つまり、判定部43は、導通電圧Vが閾値電圧Vth以下であれば十分な油膜が形成された正常状態(絶縁傾向)であると判定する。一方、判定部43は導通電圧Vが細かく脈動し、平均導通電圧Vaveが閾値電圧Vthを上回る場合には十分な油膜が形成されておらず比較的軽度の潤滑状態の低下であると判定する。判定部43による軽度の潤滑状態低下の判定は警報処理部45に出力され、警報処理部45は前述した軽警報の処理を実行する。
【0043】
第1の判定方法の代案としては、駆動制御部47は導通電圧Vが閾値電圧Vth以下に低下するまでキャリッジ23A(保持プレート4)を加速するようにリニアモータ36を駆動し、判定部43は、導通電圧Vが閾値電圧Vth以下となったときに速度検出部46によって検出される速度Sから潤滑状態の良否を判定する。つまり、判定部43は速度Sが閾値速度Sth以下であれば十分な油膜が形成された正常状態であると判定し、速度Sが閾値速度を上回る場合には十分な油膜が形成されておらず比較的軽度の潤滑状態の低下であると判定する。
【0044】
以下、第2の判定方法の内容を説明する。
【0045】
本発明者の種々の実験と検討の結果、第1の判定方法で検出される比較的軽度の潤滑状態の低下(図5の(b)参照)から基油の減少や劣化等の経時的変化がさらに進行した場合、キャリッジの加速によりいったん低下した導通電圧がキャリッジの減速と停止に伴って基準電圧Vbまで上昇するのに要する時間が長くなることが見出された(図5(c)の一点鎖線円部参照)。従って、この時間を監視することでも重度の潤滑状態の低下を検出できる。
【0046】
駆動制御部47は例えば図5に示すような速度波形でキャリッジ23A(保持プレート4)の速度Sが変化するようにリニアモータ36を駆動する。判定部43はキャリッジ23Aの減速時(時刻t2〜t3,t6〜t7)、すなわちキャリッジ23Aが定速状態から停止するまでの導通電圧Vを監視し、導通電圧Vが基準電圧Vb(例えば1.0V)まで上昇するのに要する復帰時間dtを計測する。そして、駆動制御部47は計測した復帰時間dtを正常時の復帰時間dtに余裕量を加えた閾値復帰時間dt’(記憶部44に予め記憶されている)と比較し、潤滑状態の良否を判定する。つまり、測定部43は、復帰時間dtが閾値復帰時間dt’未満であれば潤滑状態は正常であると判定し、復帰時間dtが閾値復帰時間dt’以上であれば比較的重度の潤滑状態の低下であると判定する(図5の(c))。判定部43による重度の潤滑状態低下の判定は警報処理部45に出力され、警報処理部45は前述した重警報の処理を実行する。
【0047】
第1及び第2の判定方法は、転動体としてコロを備える直動ガイドにも適用できる。転動体がコロの場合、第1の判定方法で使用する最小油膜厚さhminは以下の式(4)で表される。また、コロ式の直動ガイドでは、一般に、転動溝の転動面の表面粗さは0.05μm(Ra)以上0.3μm(Ra)以下程度であり、玉3の表面の表面粗さは0.01μm(Ra)以上0.05μm(Ra)以下程度である。
【0048】
【数4】

【0049】
次に、第1の判定方法(軽度の潤滑状態の低下の判定)に使用される油膜パラメータ閾値Λthを得た電気導通状態の測定実験及び検討について説明する。
【0050】
まず、測定実験とその結果を説明する。実験には実施形態の基板搬送装置5(図2から図4参照)と同様の実験装置を使用した。リニアモータ36は推力1,000Nで最大総重量50kgfの可動部(実施形態では保持テーブル4)の最大総重量を最大加速度約3G(30m/s)、最高速度3m/sで駆動する駆動することができる。Y軸方向の前後で対向したリニアモータ36の固定子であるマグネット38A,38Bの中央にリニアモータの可動子であるモータコイル37を配置した構造を用いたのは、直動ガイド21Aにリニアモータ36のマグネット38A,38Bの磁気吸引力による直動ガイド21への負荷の影響がより出ないようするためである。玉式の直動ガイド21A,21Bは前述のように4方向等価荷重型4列サーキュラーアーク溝2点接触構造リテーナ付き(正面組合せ)であり、ガイドレール22A,22Bのレール幅は15mmである。直動ガイド21A,21Bの緒元を以下の表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
試験に使用したグリース34の性状を以下の表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
基油がポリ−α−オレフィン、増ちょう剤がリチウムコンプレックスの電子部品実装装置用市販グリース(AO)、並びにA0グリースの基油の粘度を変更した3種類のサンプル(A1,A2,A3)を作成した。実験中のレール温度は30℃〜35℃であったので33℃での基油の粘度測定値を基準に粘度調整を行った.サンプル名はA0(33℃の動粘度が125mm2/s)、A1(33℃の動粘度が90mm2/s)、A2(33℃の動粘度が70mm2/s)、A3(33℃の動粘度が30mm2/s)とした。試験グリースの作成に際し酸化防止剤、防錆剤、摩耗防止剤等各種添加剤配合量は同一とした。
【0055】
実施形態と同様に、電気導通状態の測定は2本のガイドレール22A,22Bのうち少なくとも1本のガイドレール22A(直動ガイド21A)の1個のキャリッジ23Aで行った。1本のガイドレール22A上にある2個のキャリッジ23A,23Bの走行範囲が重なるためサンプルグリースは2個のキャリッジ23A,23Bとも変更している。なお,非測定側の直動ガイド21Bはすべての実験でサンプルA0を用いた。実験側の直動ガイド21Aのグリース交換の際、非測定側の直動ガイド21Bも同時にグリースアップを行った。
【0056】
実験時の1回の走行距離は0.5m、1往復で1m走行とした.計測はグリース変更に伴うキャリッジ23A内の充填ムラ等を無くすため後述する2時間のエージング運転終了後、再度、所定のサンプルを注入し、設定速度で走行させ50〜100サイクルの間に実施した。走行パターンは加速・減速時の加速度は30m/s2一定とし,最高速度を3m/s,2m/s,1m/sとしキャリッジ23Aとガイドレール22Aの間の電圧を測定した。また、並びに定速走行時に油膜形成による電気絶縁(0.30V以下)が保たれる速度を油膜形成速度と定義し計測した。0.8V〜1.5V程度の電圧でも電食が発生する可能性があることから通電は測定時のみとした。
【0057】
グリースを変更する際は、部品レベルまでキャリッジ23Aを分解し、転動体である玉33はアセトンで超音波洗浄を行い、リターン部,キャリッジ本体など樹脂材料を含む部品は炭化水素系溶剤にて超音波洗浄、綿棒・ウエスによる拭き取りを併用した。ガイドレール22Aも炭化水素系容剤とアセトンを用いウエスにて拭き取り洗浄を行った。測定に使用したキャリッジ23Aと玉33は同一のものである。
【0058】
グリース交換後は加速・減速時の加速度30m/s2,速度3m/sの条件で1時間程度走行させた後、はみ出したグリースを拭き取り、再度レール転動面にグリースを塗布しキャリッジ23Aに設けられているグリースニップルからグリース注入を行った。さらに1時間走行後に再度ガイドレール23Aへのグリース塗布とグリースニップルからのグリース注入行ない、はみ出したグリースを拭き取ってエージングとした。
【0059】
全サンプルA0〜A3についてすべての測定結果を図6Aに示す。図6BはサンプルA0で最高速度3m/sの場合を概念的に示す。
【0060】
図6Aの最上段左端は、可動テーブルを最高速度3m/s、加速・減速時の加速度を30m/sとし1往復させたデータで、サンプルはA0である。横軸が時間でフルスケール1.0秒、縦軸が電圧で上が電気導通の導通度合を示す波形、下側が速度信号である。速度信号は可動テーブルの速度に応じ電圧が変化し、加速・減速域において一定の勾配で上昇・降下する直線となり,設定の3.0m/sまで加速し定速状態になるとプラス、またはマイナス5.2Vで水平な直線となる。電気導通波形は停止時、予圧と垂直荷重により弾性変形し金属接触状態にあるため印可電圧の1.0Vを示している。可動中は油膜により絶縁されるため0V(オシロスコープの平均電圧は0〜0.2V)程度を示す。
【0061】
サンプルA0の結果は図6Aの左端の縦列に示す。最高速度3m/s,2m/s,1m/s毎の波形を示し、加速・減速時の加速度は30m/s2一定とする。この波形の横軸のスケールは3m/sと2m/sが横軸フルスケール1秒で、1m/sはフルスケール2秒である。また、3m/sの導通電圧が0Vに達した時の速度は加速領域1/3程度の速度であり速度信号から算出した速度は1.1m/sであった。同様に2m/sの場合は加速領域1/2程度の速度で速度信号からの算出速度は1.0m/sであった。また、最高速度1m/sの測定では加速域が終了し定速域(1m/s)時点で導通電圧の最小電圧は0Vになっているが定速領域の平均電圧は0.23Vであった。
【0062】
サンプルA1(図6Aにおいて左から2つめの縦列)の3m/sでの導通電圧0Vは1.4m/s、2m/sでの導通電圧0Vは1.3m/s、1m/sでの平均導通電圧は0.37Vであった。油膜形成速度は1.3m/sで導通電圧は平均0.29Vであった。
【0063】
サンプルA2(図6Aにおいて右から2つめの縦例)の3m/sでの導通電圧0Vは1.8m/sであるが導通電圧は平均0.13Vであった。2m/sでの導通電圧0V(平均値は0.17Vであった)は1.7m/sであった。1m/sでの平均導通電圧は0.41Vであった.油膜形成速度の1.7m/sでの導通電圧は0.27Vであった。
【0064】
サンプルA3(図6Aにおいて右端)ではすべての速度で電気絶縁状態である0Vを示すことが無くそれぞれの速度での導通電圧は平均でそれぞれ3m/sで0.40V、2m/sで0.44V、1m/sで0.51Vであった。
【0065】
次に、実験結果の検討について説明する。実験結果の考察のため実験装置における弾性流体潤滑(EHL)膜厚をHamrock-Dowsonの式より計算し、表面粗さと最小油膜厚さから油膜パラメータΛを求め,実験結果との比較を行った。
【0066】
計算は表2の諸元において、可動テーブルの重量50kg(490N)を4個のキャリッジで受け、1個のキャリッジの設定予圧の最大値470N、これらを垂直荷重とし,1キャリッジ当りの垂直方向有効玉数14×2で受けると、1つの玉当り玉荷重は21.2N((490/4+470)/(14×2))となる。モーメント荷重は考慮しない。また、レール並びにキャリッジ転動面の表面粗さの実測値は0.21μmRa、ボールの表面粗さは0.01μm(Ra)による合成粗さ0.21μmを用いた。これらの値と速度パラメータより上述の式(1),(3)を用いて求めた油膜パラメータΛの計算結果を図7に示す。実験値との関係を見やすくするため横軸の速度はボール速度ではなくキャリッジ速度とした。図7に示す各基油粘度の油膜パラメータΛ計算値の曲線上の○印は実験で求めた油膜形成速度である。
【0067】
サンプルA0〜A3のグリースの基油の粘度の違いに伴い油膜形成速度も変化するが、油膜パラメータΛは0.6付近である。しかし基油粘度30mm/sのサンプルA3ではキャリッジ速度3m/sでも油膜パラメータΛが0.5程度であり本実験における電気導通状態の測定結果からも金属接触状況(軽度の潤滑状態の低下の状況)にあると考えられる。
【0068】
以上のように、油膜パラメータΛが0.6(種々の条件の変化に伴う変動を考慮すると0.5以上5以下の値)以上であれば、油膜のある状態で玉が転がり運動し、金属表面を起点とする損傷が抑えられた良好な潤滑状態が得られ、この値を下回るとグリース34による油膜形成が不十分で潤滑状態が低下する。
【0069】
油膜パラメータΛの上限が5以下としたのは、油膜パラメータΛは大きい方が好ましいが実用上(荷重や直動ガイドの位置決め案内精度上の実用上の与圧、グリースの粘度の実用範囲、市場に流通しているグリースの粘度から考慮)の値からである。荷重を下げてグリースの粘度を上げれば、直動ガイドのコロや玉がグリースをよけるように動作し、油膜パラメータΛは大きくなる。例えば、直動ガイドの与圧が小さければ直動ガイドのコロや玉が受ける荷重は小さく油膜パラメータは大きくなるが、与圧が少なく過ぎると直動ガイドの位置決め案内精度が低下してしまい実用的ではない。
【0070】
本発明は前記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。例えば、基板搬送装置が備える直動ガイドを例に本発明を説明したが、本発明は前述したようにヘッド位置決め装置が備える直動ガイドにも適用でき、部品実装装置が備えるその他の直動ガイドにも適用できる。
【0071】
また、実施形態ではレールとキャリッジ間の導通電圧を検出する電圧検出部を用いて直動ガイドの潤滑状態を判定しているが、レールとキャリッジ間の抵抗あるいは電流を検出して直動ガイドの潤滑状態を判定してもよい。抵抗値を用いる場合、キャリッジの移動が停止している時に抵抗値が変動するおそれがあれば、キャリッジの停止領域では判定を行わないようにする必要がある。また、電流値を用いる場合、金属部品の電気による腐食を考慮して微弱な電流(10mA〜50mA程度)が用いられるが、閾値が分かりにくい傾向がある。これらより、好ましくは実施形態のように電圧を用いて直動ガイドの潤滑状態を判定するのが、簡易で閾値も比較的分かりやすいのでより実用的である。
【0072】
実施形態では部品実装装置の基板搬送装置が備える転がり式直線運動案内(直動ガイド)を例に本発明を説明したが、本発明の適用対象は実施形態のものに限定されない。例えば、ロータリー式の実装ヘッドに対して基板をXY軸方向に移動して位置決めする基板位置決め装置や、位置決めされた基板に対して部品を保持した実装ヘッドをXY軸等の方向に移動させて部品を実装するヘッド位置決め装置等の位置決め装置が備える直動ガイドにおける潤滑状態判定にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 部品実装装置
2 実装ヘッド
3 ヘッド位置決め装置
4 保持テーブル
5 基板搬送装置
6 部品供給部
7 基台
8 吸着ノズル
10 基板
11 Xビーム
12A,12B Yビーム
21A,21B 直動ガイド
22A,22B ガイドレール
23A,23B,23C,23D キャリッジ
24 スペーサ
25a,25b,25c,25d レール転動溝
27 基部
28A,28B 側部
31a,31b,31c,31d キャリッジ転動溝
31a’,31b’,31c’,31d’ 循環路
32A,32B エンドプレート
33 玉
34 グリース
36 リニアモータ
37 モータコイル
38A,38B マグネット
41 潤滑状態判定装置
42 制御装置
43 判定部
44 記憶部
45 警報処理部
46 速度検出部
47 駆動部
48 導電路
49 直流電源
50 抵抗
51 電圧検出器
52 温度センサ
53 エンコーダ
56 ディスプレイ
57 ランプ
58 ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、レール上を移動するキャリッジと、前記レールと前記キャリッジとの間で転動する転動体と、キャリッジに充填された潤滑用のグリースとを備える転がり式直線運動案内の潤滑状態を判定する潤滑状態判定装置であって、
前記レールと前記キャリッジ間の電圧、電流、又は抵抗である導通特性を検出する導通特性検出部と、
前記キャリッジを前記レール上で移動させる駆動機構を制御する駆動制御部が前記キャリッジを前記レール上で移動させた際に前記導通特性検出部で検出された導通特性を使用して、前記転がり直線運動案内の潤滑状態を判定する判定部とを含む潤滑状態判定部と
を備える、潤滑状態判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、
正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度以上に前記駆動制御部により前記キャリッジの速度が上昇したときに、前記導通特性検出部によって検出された導通特性と前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す前記導通特性の閾値との比較に基づいて潤滑状態が正常であるか否かを判定する、請求項1の潤滑状態判定装置。
【請求項3】
前記導通特性検出部は前記レールと前記キャリッジ間の電圧を検出する電圧検出部であり、
前記判定部は、検出された電圧が前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す閾値電圧以下であれば正常な潤滑状態であると判定し、前記検出された導通電圧が閾値電圧を上回る場合には潤滑状態の低下であると判定する、請求項2の潤滑状態判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記キャリッジの速度を検出する速度検出部をさらに備え、
前記判定部は、前記導通特性検出部によって検出された導通特性が前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す値であるときに、前記速度検出部によって検出された速度が正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度以下であれば正常な潤滑状態であると判定し、前記検出された速度が前記閾値速度を上回る場合には潤滑状態の低下であると判定する、請求項1に記載の潤滑状態判定装置。
【請求項5】
前記導通特性検出部は前記レールと前記キャリッジ間の電圧を検出する電圧検出部であり、
前記判定部は、前記電圧検出部によって検出された導通電圧が前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す閾値電圧以下に低下したときに、前記速度検出部によって検出された速度が正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度以下であれば正常な潤滑状態であると判定し、前記検出された速度が前記閾値速度を上回る場合には潤滑状態の低下であると判定する、請求項4に記載の潤滑状態判定装置。
【請求項6】
レールと、レール上を移動するキャリッジと、前記レールと前記キャリッジとの間で転動する転動体と、キャリッジに充填された潤滑用のグリースとを備える転がり式直線運動案内の潤滑状態を判定する潤滑状態判定方法であって、
前記キャリッジを前記レール上で移動するときの前記レールと前記キャリッジ間の電圧、電流、又は抵抗である導通特性を検出し、
前記検出して導通特性に基づいて潤滑状態が正常であるか否かを判定する潤滑状態判定方法。
【請求項7】
レールと、レール上を移動するキャリッジと、前記レールと前記キャリッジとの間で転動する転動体と、キャリッジに充填された潤滑用のグリースとを備える、搬送装置及び位置決め装置の少なくとも1つが備える転がり式直線運動案内と、
前記レールと前記キャリッジ間の電圧、電流、又は抵抗である導通特性を検出する導通特性検出部と、
前記キャリッジを前記レール上で移動させる駆動機構を制御する駆動制御部が前記キャリッジを前記レール上で移動させた際に前記導通特性検出部で検出された導通特性を使用して、前記転がり直線運動案内の潤滑状態を判定する判定部とを含む潤滑状態判定部と
を備える、部品実装装置。
【請求項8】
前記判定部は、
正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度以上に前記駆動制御部により前記キャリッジの速度が上昇したときに、前記導通特性検出部によって検出された導通特性と前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す前記導通特性の閾値との比較に基づいて潤滑状態が正常であるか否かを判定する、請求項7の部品実装装置。
【請求項9】
前記導通特性検出部は前記レールと前記キャリッジ間の電圧を検出する電圧検出部であり、
前記判定部は、検出された電圧が前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す閾値電圧以下であれば正常な潤滑状態であると判定し、前記検出された導通電圧が閾値電圧を上回る場合には潤滑状態の低下であると判定する、請求項8の部品実装装置。
【請求項10】
前記判定部は、
前記キャリッジの速度を検出する速度検出部をさらに備え、
前記判定部は、前記導通特性検出部によって検出された導通特性が前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す値であるときに、前記速度検出部によって検出された速度が正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度以下であれば正常な潤滑状態であると判定し、前記検出された速度が前記閾値速度を上回る場合には潤滑状態の低下であると判定する、請求項7に記載の部品実装装置。
【請求項11】
前記導通特性検出部は前記レールと前記キャリッジ間の電圧を検出する電圧検出部であり、
前記判定部は、前記電圧検出部によって検出された導通電圧が前記レールと前記キャリッジか絶縁されたことを示す閾値電圧以下に低下したときに、前記速度検出部によって検出された速度が正常な潤滑状態が得られることが想定される油膜パラメータに対応する閾値速度以下であれば正常な潤滑状態であると判定し、前記検出された速度が前記閾値速度を上回る場合には潤滑状態の低下であると判定する、請求項10に記載の部品実装装置。
【請求項12】
基板位置決め装置で基板を位置決めすると共に、部品を保持したヘッドをヘッド位置決め装置で移動させて前記基板に対して位置決めして実装する部品実装方法であって、
前記基板位置決め装置と前記ヘッド位置決め装置のうちの少なくとも一方は、レールと、レール上を移動するキャリッジと、前記レールと前記キャリッジとの間で転動する転動体と、キャリッジに充填された潤滑用のグリースとを備える転がり式直線運動案内を備え、
前記キャリッジを前記レール上で移動するときの前記レールと前記キャリッジ間の電圧、電流、又は抵抗である導通特性を検出し、
前記検出して導通特性に基づいて潤滑状態が正常であるか否かを判定する、部品実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−159126(P2012−159126A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18424(P2011−18424)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】