説明

澱粉分解能を持つサッカロミセス・セレビシェの検出用プライマー

【課題】澱粉分解能を持つサッカロミセス・セレビシェの検出用プライマーセット等を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列で表される4種または5種のポリヌクレオチドまたはそれぞれの塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチドからなる群から選択されるプライマーを含んでなる、澱粉分解能を持つサッカロミセス・セレビシェの検出に用いられるLAMP法プライマーセット。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、澱粉分解能を持つサッカロミセス・セレビシェの検出用プライマーに関し、より詳細には、澱粉分解能を持つサッカロミセス・セレビシェの検出用のLAMP法プライマーセットに関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉分解能を持つサッカロミセス・セレビシェ、すなわち、サッカロミセス・セレビシェの変種ディアスタティカス(Saccharomyces cerevisiae var. diastaticus)(本明細書において単に「サッカロミセス・ディアスタティカス」と表記することがある)は、STA1等の遺伝子によってコードされるグルコアミラーゼ遺伝子を生産し、澱粉の側鎖をグルコースに分解して発酵することが出来る(Pretorius, I. S. et al., Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology, 26, 53-76, 1991)。AndrewsおよびGilliland(J. Inst. Brew., 58,189, 1952)は、麦汁のデキストリンを発酵性糖に変換して、その糖を発酵する酵母株を分離し、その株をサッカロミセス・ディアスタティカスという菌種に分類した。サッカロミセス・セレビシェとサッカロミセス・ディアスタティカスはかなり近縁な関係にあり、胞子形成可能な交雑体を作ることも可能であった(Tamaki, H., Mol. Gen. Genet., 164, 205, 1978)。サッカロミセス・ディアスタティカスは、現在ではサッカロミセス・セレビシェの中に分類されている(Kurtzman, C.P. & Fell, J.W. The Yeasts, A Taxonomic Study, 4th edition, 1998, Elsevier Science B.V., The Netherlands)。
【0003】
この菌株がビールに汚染すると、ビール中の残エキス(低分子量、あるいは高分子量のデキストリン)を消費して過剰に発酵し、製品中の混濁や沈殿物形成の原因となる。サッカロミセス・ディアスタティカスは全てのビールで製品の発酵度に関係なく増殖するため、強力なビール混濁菌に格付けされている(Back, W.:Farbatlas und Handbuch der Geraenkebiologie, Teil I, 1994, Verlag Hans Carl, Nuernberg)。
【0004】
伝統的な酵母の同定法としては形態学的、生理学的、生化学的手法が用いられ、特に様々な糖の資化能、発酵能を調査する事が多いが、サッカロミセス・セレビシェとサッカロミセス・ディアスタティカスは表現型的に互いに非常に似通っているため、デキストリン資化性以外に区別できない(Barnett, J.A. et al.:Yeasts, characteristics and identification, 3rd edition, 2000, Cambridge University Press, UK)。
【0005】
山内らはサッカロミセス・ディアスタティカスを検出するPCRプライマーを報告している(特開平9−299090号公報(特許文献1))。サッカロミセス・ディアスタティカスのグルコアミラーゼ遺伝子STA1は、サッカロミセス・セレビシェにおいては異なる位置にある3つのDNA領域(S2、S1、SGA)が進化の過程で融合したと考えられており、それぞれの領域には酵素分泌のためのシグナル配列、スレオニンとセリンを多く含むTS領域、およびサッカロミセス・セレビシェのグルコアミラーゼの触媒領域とほとんど同じ配列がコードされている(Yamashita, I. et al., J. Bacteriol., 169, 2142-2149, 1987(非特許文献1))。特開平9−299090号公報(特許文献1)におけるPCRプライマーは、サッカロミセス・ディアスタティカスのSTA1遺伝子がS2−S1−SGAの構造をとり、S2、S1に相当する領域とSGAに相当する領域が隣接するが、サッカロミセス・セレビシェでは分離して存在する性質を利用し、PCR用プライマーの一つをS1およびS2に相当する領域に、もう一つをSGAに相当する領域に設定された。
【0006】
しかし、PCRは高度な温度制御が必要なため、高価な機器を必要とする。またPCRは反応後に電気泳動、染色、写真撮影等が必要であり、遺伝子増幅工程後の結果判定までに時間がかかる。
【0007】
これまでにサッカロミセス属酵母検出用LAMP法プライマーセットが開発されているが(WO2005/093059号公報(特許文献2))、検出精度の点で更に改善の余地を残すものであった。また、サッカロミセス・ディアスタティカスをサッカロミセス・セレビシェ、あるいはその近縁種の集団であるSaccharomyces sensu strictoの菌株から区別するLAMP法プライマーセットは、これまでに報告されていない。
【特許文献1】特開平9−299090号公報
【特許文献2】WO2005/093059号公報
【非特許文献1】Yamashita, I. et al., J. Bacteriol., 169, 2142-2149, 1987
【発明の概要】
【0008】
本発明者は、サッカロミセス・ディアスタティカスのグルコアミラーゼ遺伝子STA1(accession No. X02649)のS2およびS1に相当する領域についてLAMP法プライマーセットを設計することにより、SGAに相当する領域を含まなくとも、サッカロミセス・ディアスタティカスを正確に識別できるLAMP法プライマーセットを開発することに成功した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0009】
本発明は、サッカロミセス・ディアスタティカスを正確に識別できるプライマーおよびプライマーセットを提供することを目的とする。
【0010】
本発明によれば、下記ポリヌクレオチドを含んでなる、サッカロミセス・ディアスタティカスの検出に用いられるLAMP法プライマーセットが提供される:
配列番号1の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチド;
配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチド;
配列番号3の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチド;および
配列番号4の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチド。
【0011】
本発明によれば、また、本発明によるLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程を含んでなる、サッカロミセス・ディアスタティカスの検出方法が提供される。
【0012】
本発明によるプライマーセットによれば、極めて高い検出感度で、サッカロミセス・ディアスタティカスを菌種あるいは変種レベルで正確に識別することができる。また、本発明によるプライマーセットは、LAMP法による核酸増幅反応に使用することができ、増幅産物の有無により対象菌種を検出することができる。従って、本発明によるプライマーセットによれば、サッカロミセス・ディアスタティカスを、菌種あるいは変種レベルで、正確、迅速、かつ簡便に識別することができる。
【0013】
本発明によるLAMP法プライマーセットによれば、また、試料中の菌体数を測定することができる。従って、本発明によるLAMP法プライマーセットによれば、サッカロミセス・ディアスタティカスを正確に定量することができる。
【0014】
サッカロミセス・ディアスタティカスは、酒類など各種飲料の品質に影響する原因菌であり、これらの菌の存在・不存在は各種飲料の品質管理の指標となりうる。従って、本発明によるプライマーセットは、各種飲料(例えば、酒類、特に、ビールおよび発泡酒)の品質管理や環境試料の検査に有用である。
【発明の具体的説明】
【0015】
プライマーおよびプライマーセット
本発明によるプライマーセットは、FIP、F3、BIP、およびB3の4種類のプライマーからなり、これらのプライマーは標的ヌクレオチド配列の6つの領域に対応している。具体的には、標的塩基配列について、3’末端側から5’末端側に向かって順番にF3c、F2c、F1c、B1、B2、B3という領域をそれぞれ規定し、この6領域に対し、4種類のプライマー、すなわちFIP、F3、BIPおよびB3を作製する。ここで、F3c、F2c、F1cの各領域に相補的な領域はそれぞれF3、F2、F1であり、またB1、B2、B3の各領域に相補的な領域はそれぞれB1c、B2c、B3cである。
【0016】
FIPは、標的配列のF2c領域と相補的なF2領域を3’末端側にもち、5’末端側に標的遺伝子のF1c領域と同じ配列を持つように作製されたプライマーである。必要ならば、FIPプライマーのF1cとF2の間に制限酵素部位を導入することもできる。
【0017】
F3は、標的遺伝子のF3c領域と相補的なF3領域をもつように作製されたプライマーである。
【0018】
BIPは、標的配列のB2c領域と相補的なB2領域を3’末端側にもち、5’末端側に標的遺伝子のB1c領域と同じ配列を持つように作製されたプライマーである。必要ならば、BIPプライマーのB1cとB2の間に制限酵素部位を導入することもできる。
【0019】
B3は、標的遺伝子のB3c領域と相補的なB3領域をもつように作製されたプライマーである。
【0020】
FIPおよびBIPプライマーに制限酵素部位が含まれる場合、LAMP法による核酸増幅反応後に増幅産物を制限酵素で処理することによって、電気泳動後に1つのバンドとして観察することができる。この場合、もし標的配列に制限酵素部位があれば、プライマーに人為的に制限酵素部位を導入しなくてもよい。
【0021】
本発明によるLAMP法プライマーセットの実施に当たっては、核酸の増幅反応を加速するためにループプライマー(LFプライマーまたはLBプライマー)を1種類あるいは2種類追加してもよい。ループプライマーをF1−F2間の領域、あるいはB1−B2間の領域にアニールするように設計し、LAMP法反応系に追加して使用すると、これらのプライマーが核酸増幅工程で利用されていないループ部分に結合することにより、全てのループ部分を起点として核酸反応が進み、核酸増幅反応が加速される(例えば、特開2002−345499号公報参照)。
【0022】
具体的には、本発明によるプライマーセットは、配列番号5の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LF)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを、ループプライマーとして、更に含んでいてもよい。
【0023】
本発明では、配列番号1〜5の塩基配列で表されるポリヌクレオチドのみならず、配列番号1〜5の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「相同ポリヌクレオチド」と言うことがある)も、プライマーとして用いることができる。
【0024】
本明細書において「ハイブリダイズする」とは、標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、標的ポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドには、実質的にはハイブリダイズしないことを意味する。ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下で実施することができる。ここで「ストリンジェントな条件」は、プライマー配列とその相補鎖との二重鎖のTm(℃)および必要な塩濃度などに依存して決定でき、プライマーとなる配列を選択した後にそれに応じたストリンジェントな条件を設定することは当業者に周知の技術である(例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)等参照)。ストリンジェントな条件としては、ハイブリダイゼーションに通常用いられる適切な緩衝液中で、ヌクレオチド配列によって決定されるTmよりわずかに低い温度(例えば、Tmよりも0〜約5℃低い温度)においてハイブリダイゼーション反応を実施することが挙げられる。ストリンジェントな条件としてはまた、ハイブリダイゼーション反応後の洗浄を高濃度低塩濃度溶液で実施することが挙げられる。ストリンジェントな条件の例としては、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム溶液中で、37℃(約14塩基のオリゴヌクレオチドについて)、48℃(約17塩基のオリゴヌクレオチドについて)、55℃(約20塩基のオリゴヌクレオチドについて)、60℃(約23塩基のオリゴヌクレオチドについて)の洗浄条件が挙げられる。
【0025】
相同ポリヌクレオチドのヌクレオチド長は、少なくとも10塩基である。
【0026】
LAMP法プライマーでは、FIPおよびBIPの相同ポリヌクレオチドのヌクレオチド長は、好ましくは、少なくとも30塩基(例えば、30〜60塩基)、より好ましくは少なくとも38塩基(例えば、38〜57塩基)とすることができる。また、F3、B3、LF、およびLBの相同ポリヌクレオチドのヌクレオチド長は、好ましくは、少なくとも12塩基(例えば、12〜30塩基)、より好ましくは、少なくとも20塩基(例えば、20〜25塩基)とすることができる。
【0027】
相同ポリヌクレオチドは、それぞれ、対応する塩基配列の連続する少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも18個、特に好ましくは少なくとも20個のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドであることができる。
【0028】
配列番号1〜5の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの相同ポリヌクレオチドの例を示すと以下の通りである。
・配列番号1の塩基配列で表されるFIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号1の連続する少なくとも38個(38〜49個)、より好ましくは、少なくとも45個(45〜49個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で57塩基、より好ましくは最大で52塩基とすることができる)
・配列番号2の塩基配列で表されるF3の相同ポリヌクレオチド:配列番号2の連続する少なくとも20個(20〜24個)、より好ましくは、少なくとも22個(22〜24個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基とすることができる)
・配列番号3の塩基配列で表されるBIPの相同ポリヌクレオチド:配列番号3の連続する少なくとも38個(38〜45個)、より好ましくは、少なくとも42個(42〜45個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で60塩基、好ましくは最大で57塩基、より好ましくは最大で49塩基とすることができる)
・配列番号4の塩基配列で表されるB3の相同ポリヌクレオチド:配列番号4の連続する少なくとも20個(20〜23個)、より好ましくは、少なくとも22個(22〜23個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で25塩基とすることができる)
・配列番号5の塩基配列で表されるLFの相同ポリヌクレオチド:配列番号5の連続する少なくとも20個(20〜25個)、より好ましくは、22個(22〜25個)のヌクレオチド(1または数個の変異が導入されていてもよい)を含んでなるポリヌクレオチド(ヌクレオチド長は最大で30塩基、好ましくは最大で27塩基とすることができる)
【0029】
相同ポリヌクレオチドは、また、それぞれ、対応する塩基配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドであることができる。同一性の数値は、当業界において周知のアルゴリズムに従って算出することができ、例えば、BLAST(http://www.ddbj.nig.ac.jp/search/blast-j.html)を使用して同一性の数値を算出することができる。
【0030】
相同ポリヌクレオチドは、更に、それぞれ、配列番号1〜5の塩基配列に1または数個の変異が導入された改変塩基配列からなり、かつ配列番号1〜5の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドであることができる。
【0031】
ここで「変異」は、同一または異なっていてもよく、置換、欠失、挿入、および付加から選択でき、好ましくは、ある1個の塩基を他の1個の塩基に置換する「一塩基置換」、ある1個の塩基を欠失させる「一塩基欠失」、ある1個の塩基を挿入する「一塩基挿入」、およびある1個の塩基を付加する「一塩基付加」から選択できる。また、変異の個数は、1〜6個、1、2、3、または4個、1または2個、あるいは1個とすることができる。
【0032】
本発明において「ポリヌクレオチド」とはDNA、RNA、およびPNA(peptide nucleic acid)を含む意味で用いられる。
【0033】
本発明によるプライマーおよびプライマーセット等を構成するポリヌクレオチドは、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M.et al., Nature, 310,105, 1984)等の通常の方法に準じて、核酸の化学合成を行うことにより調製してもよいし、検出対象の菌株の全DNAを取得し、本明細書に開示されるヌクレオチド配列に基づいて目的のヌクレオチド配列を含むDNA断片をPCR法等で適宜取得してもよい。
【0034】
本発明による検出方法の具体的な態様としては、核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を実施した後、核酸増幅産物の有無を検出する工程を含む検出方法が挙げられる。より具体的には、以下の通りである。
【0035】
本発明によれば、
(a)本発明によるLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;および
(b)増幅産物の有無を検出する工程
を含んでなり、増幅産物の生成がサッカロミセス・ディアスタティカスの存在を示す、サッカロミセス・ディアスタティカスの検出方法が提供される。
【0036】
LAMP法による核酸増幅工程に供される試料は、試料中の菌体を培養してから核酸を抽出しても、培養せずに核酸を抽出してもよい。菌体の培養や核酸の抽出など核酸試料の調製については後述する。
【0037】
LAMP法による核酸増幅工程では、試料中の核酸に対して増幅反応が実施される。LAMP法による核酸増幅反応については後述する。
【0038】
試料中に検出対象菌種が存在する場合には、標的とする特定の領域が増幅され、増幅産物が生成する。増幅産物が生成した場合には、核酸増幅反応が実施された試料溶液が白濁することから、試料溶液の濁度を測定することにより増幅産物の有無を決定することができる。LAMP法における濁度の測定は周知であり、市販のエンドポイント濁度測定装置(例えば、テラメックス社製LA−100)やリアルタイム濁度測定装置(例えば、テラメックス社製LA−200)を用いて濁度の測定をすることができる。
【0039】
後記実施例で示すように、試料溶液がある一定の濁度に達するまでの時間を測定することにより、検定試料中の菌体数を決定することができる。すなわち、本発明による検出方法の別の面によれば、核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を実施するとともに、核酸増幅反応の開始から試料がある一定の濁度に達するまでの時間を測定し、その時間から検体中の菌体数を求める工程を含む、サッカロミセス・ディアスタティカスの定量方法が提供される。
【0040】
すなわち、本発明によれば、
(a)本発明によるLAMP法プライマーセットを用いて、試料中の核酸についてLAMP法により核酸増幅反応を実施する工程;
(b’)核酸増幅反応の開始から一定の濁度に達するまでの時間を測定する工程;および
(b”)測定した時間から検体中の菌体数を求める工程
を含んでなる、サッカロミセス・ディアスタティカスの定量方法が提供される。
【0041】
本発明による定量方法においては、菌体数と一定の濁度に達するまでの時間との検量線を予め作成しておき、この検量線に基づいて、測定した時間から検体中の菌体数を求めることができる。検量線は、例えば、菌体を段階的に希釈した試料を準備し、それぞれについてLAMP法による核酸増幅法を実施し、菌体のコロニー形成数の対数に対して、核酸増幅反応の開始から濁度が0.1になるまでの時間をプロットすることにより作成することができる。
【0042】
本発明によるプライマーセットは、単独で、あるいは組み合わせて、キットの形態で提供することができる。従って、本発明によるプライマーセットと、場合によっては他のサッカロミセス属酵母用プライマーセットとを組み合わせて含んでなる、サッカロミセス属酵母の検出キットが提供される。
【0043】
LAMP法プライマーセットを含む本発明によるキットは、LAMP法による核酸増幅反応の実施に必要な試薬(例えば、Bst DNAポリメラーゼ、反応用試薬混合液)や器具(例えば、反応用チューブ)を含んでいてもよい。
【0044】
本発明によるプライマーセットを用いてLAMP法による核酸増幅反応を実施すると、各種飲料の品質に影響を与えるサッカロミセス・ディアスタティカスを菌種あるいは変種レベルで正確に識別することができる。従って、本発明によるプライマーセットおよびキットは、各種飲料(例えば、酒類、特に、ビールおよび発泡酒)の品質管理や、環境試料(例えば、原料用水)の検査に用いることができる。
【0045】
サッカロミセス・ディアスタティカスは、ビールおよび発泡酒の製造工程および最終製品の品質に影響する能力を持つ酵母種である。従って、本発明によるプライマーセットおよびキットは、好ましくは、ビールおよび発泡酒の品質管理に用いることができる。
【0046】
LAMP法による核酸増幅反応
本発明によるLAMP法プライマーセットは、LAMP法による核酸増幅反応のプライマーとして用いることができる。本発明によるプライマーセットはまた、LAMP法のみならず、LAMP法を改良した核酸増幅反応のプライマーとしても用いることができる。
【0047】
LAMP法の原理およびそれを利用した核酸増幅方法は周知であり、LAMP法による核酸増幅反応の実施に当たっては、例えば、WO00/28082号公報やNotomi T. et al., Nucleic Acids Research, 28(12),e63(2000)の開示を参照することができる。
【0048】
LAMP法による核酸増幅反応は、市販のLAMP法遺伝子増幅試薬キットに従って実施することができるが、例えば、サンプルのDNA、プライマー溶液、および市販のLAMP法遺伝子増幅試薬キット(例えば、栄研化学社製Loopamp DNA増幅キット)で提供される試薬を、キットに添付されている説明書に従って混合して一定温度(60〜65℃)に保ち、一定時間(標準で1時間)反応させることにより実施できる。
【0049】
LAMP法による核酸増幅反応は、以下のような工程を経て実施することができる。
(i)鎖置換型DNAポリメラーゼの働きにより、FIPのF2領域の3’末端を起点として鋳型DNAと相補的なDNA鎖が合成される。
(ii)FIPの外側に、F3プライマーがアニールし、その3’末端を起点として鎖置換型DNAポリメラーゼの働きによって、先に合成されているFIPからのDNA鎖を剥がしながらDNA合成が伸長する。
(iii)F3プライマーから合成されたDNA鎖と鋳型DNAが二本鎖となる。
(iv)FIPから先に合成されたDNA鎖は、F3プライマーからのDNA鎖によって剥がされて一本鎖DNAとなるが、このDNA鎖は、5’末端側に相補的な領域F1c、F1をもち、自己アニールを起こし、ループを形成する。
(v)上記(iv)の過程でループを形成したDNA鎖に対し、BIPがアニールし、このBIPの3’末端を起点として相補的なDNAが合成される。この過程でループが剥がされて伸びる。さらに、BIPの外側にB3プライマーがアニールし、その3’末端を起点として鎖置換型DNAポリメラーゼの働きによって、先に合成されたBIPからのDNA鎖を剥がしながらDNA合成が伸長する。
(vi)上記(v)の過程で二本鎖DNAが形成される。
(vii)上記(v)の過程で剥がされたBIPから合成されたDNA鎖は両端に相補的な配列を持つため、自己アニールし、ループを形成してダンベル様の構造となる。
(viii)上記ダンベル構造のDNA鎖を起点として、FIP次いでBIPのアニ−リングを介して所望DNAの増幅サイクルが行われる。
【0050】
LAMP法による核酸増幅反応は、上記の工程を適宜改変して実施できることは当業者に自明であろう。本発明によるプライマーセットはそのような改変された方法にも用いることができる。
【0051】
本発明によるLAMP法プライマーセットは、約60〜約65℃(例えば65℃)においてアニーリングと同時にDNA鎖の合成も起こす。アニ−リング反応およびDNA鎖合成により約1時間反応を行うことにより10〜1010倍に核酸を増幅させることができる。
【0052】
本発明によるLAMP法プライマーセットをLAMP法による核酸増幅反応の条件の下で試料核酸と反応させると、検出対象の菌株のターゲット領域が増幅される。このような増幅反応が起こると、副産物として形成されるピロリン酸マグネシウムの影響で反応液が白濁するため、この濁度に基づき増幅の有無が目視により判定できる。増幅の有無は、濁度測定装置を用いて濁度を光学的に測定してもよく、また、アガロースゲル電気泳動法などを利用してDNA断片の有無を確認し検出してもよい。
【0053】
核酸増幅が観察されるならば、標的塩基配列が存在することを意味し、プライマーセットの検出対象である菌種陽性(+)を表す。逆に、核酸増幅が観察されない場合には、標的塩基配列が不存在であることを意味し、プライマーセットの検出対象である菌種陰性(−)を表す。
【0054】
検出対象試料とその調製
本発明によるプライマーセットおよびキットの検出の対象となる試料としては、ビール、発泡酒、ワインなどの酒類;ラムネ、炭酸水などの清涼飲料;原料用に採取された水等の環境試料;酒類や清涼飲料等の製造工程から採取された半製品などが挙げられる。
【0055】
これらをLAMP法の試料として用いる場合には、試料中に存在する菌の濃縮、分離、および培養、菌体からの核酸分離、核酸の濃縮などの操作を前処理として実施してもよい。試料中に存在する菌の濃縮や分離の方法としては、ろ過、遠心分離などが挙げられ、適宜選択できる。また試料から濃縮、分離した菌を、さらに培養して菌数を増やしてもよい。培養には、対象とする酵母株の増殖に適切な寒天固体培地や液体培地を用いることができ、また対象とする酵母菌株を選択するために硫酸銅などの薬剤を添加してもよい。飲料試料や環境試料などに存在する菌体、あるいは培養した菌体から核酸を遊離させるためには、例えば、市販のキットを使用する方法や、アルカリ溶液などによって菌体を処理し、100℃での加熱により菌体から核酸を遊離させる方法を選択することができる。また、核酸を更に精製する必要があれば、フェノール/クロロホルム処理、エタノール沈殿や遠心等により核酸の精製を行い、最終的にTE緩衝液などに再溶解させ鋳型DNAとして試験に供してもよい(European Brewery Convention:ANALYTICA - MICROBIOLOGICA - EBC, 2nd ed. 2005 Fachverlag Hans Carl, Nuernberg、Rolfsら:PCR - Clinical diagnostics and research, Springer-Verlag, Berlin, 1992、大嶋泰治ら:蛋白 核酸 酵素, vol. 35, 2523-2541, 1990)。
【0056】
本発明によるプライマーセットおよびキットを用いたサッカロミセス属酵母の検出は、例えば、以下のように実施することができる。
【0057】
まず、試料中に存在すると考えられるサッカロミセス属酵母を適切な培地で増菌培養する。次いで、寒天培地上に形成されたコロニーからDNAを分離し、このDNAに対して本発明によるプライマーセットを用いたLAMP法を実施し、サッカロミセス属酵母の特定遺伝子領域を増幅する。遺伝子増幅産物の存在は検出対象菌種の存在を示す。また、検出対象菌種の存在は、混濁菌が試料中に存在していること、あるいは試料が混濁する見込みを示す。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1:サッカロミセス・ディアスタティカスの検出
(a)ゲノムDNA抽出法
寒天平板培地上で培養した菌体をかき取り、滅菌蒸留水に懸濁した。この懸濁液を遠心分離(15000rpm、5分間)し、上澄みを捨てた。沈殿した菌体に再度滅菌蒸留水を添加、懸濁し、遠心分離した。上澄みを捨て、得られた菌体にPrepMan Ultra(アプライドバイオシステムズ社製)の溶液100μlを添加し、95℃、10分間加熱した。その後、15000rpm、1分間遠心分離し、上澄みをゲノムDNA溶液として使用した。あるいは洗浄した菌体に0.1N NaOH溶液を100μl添加し、95℃、10分間加熱した。その後、1M Tris緩衝液(pH7.0)を用いて中和し、上澄みをゲノムDNA溶液として使用した。
【0060】
(b)LAMP用プライマー
下記のサッカロミセス・ディアスタティカス検出用プライマーを、富士通システムソリューションズ社のeGenome Order(http://genome.e-mp.jp/index.html)、あるいはそれと同等の方法で化学合成し、TE緩衝液(pH8.0)で100μMの濃度になるように溶解した。これらの溶液を、FIP、BIPプライマー:16μM、F3、B3プライマー:2μM、LF、LBプライマー:8μMとなるように混合し、希釈した。
[サッカロミセス・ディアスタティカス検出用プライマーセット(STA2LF1)]
FIP:GAGGAGGATCCTCTAGGAACTAGTGCTTCTACTCGCTTATTTGGTCCTT (配列番号1)
F3:CATATACGCACACTATGCAAAGAC (配列番号2)
BIP:GCAACATCACTTCCTCCGGTCCGACAGTAGTGCCAGTAGAAAAGC (配列番号3)
B3:GGGTATTTGGATGATGATGGAGT (配列番号4)
LF:CCAAAGCTGAGTTAAATAGAAGCGA (配列番号5)
【0061】
(c)LAMP増幅反応溶液調製
LAMP法のための遺伝子増幅試薬キットとして、栄研化学社製Loopamp DNA増幅キットを使用した。反応用チューブに、ゲノムDNA溶液:2.5μl、プライマー溶液:2.5μl、2倍濃度反応用緩衝液:12.5μl、Bst DNAポリメラーゼ:1μl、滅菌水:6.5μlを添加し、全量25μlの反応液を調製した。
【0062】
(d)LAMP反応
LAMP反応には、テラメックス社製リアルタイム濁度計LA−200、あるいは栄研化学社製LA−320Cを使用した。反応チューブをセットし、65℃一定(ボンネットは75℃)で反応させ、その間の濁度変化を6秒毎に計測した。濁度が上昇するものを陽性、濁度の上昇が認められないものを陰性とした。
【0063】
(e)プライマーの評価
サッカロミセス・ディアスタティカスに対して作成した特異的プライマーについてSaccharomyces sensu strictoの各菌種を含むサッカロミセス属酵母標準株を使ってLAMP法で特異性を評価した。結果は表1〜4に示される通りであった。
表1:各種サッカロミセス属酵母標準株を使ったプライマーの評価(マス内の数字:増幅が起こるまでの反応時間、−:反応80分以内に増幅なし)
【表1】


表2:各種酵母標準株を使ったプライマーの評価(マス内の数字:増幅が起こるまでの反応時間、−:反応80分以内に増幅なし)
【表2】

表3:各種ビール醸造用酵母、ビール醸造所分離野生酵母株を使ったプライマーの評価(マス内の数字:増幅が起こるまでの反応時間、−:反応80分以内に増幅なし)
【表3】

表4:ワイン分離野生酵母株を使ったプライマーの評価(マス内の数字:増幅が起こるまでの反応時間、−:反応80分以内に増幅なし)
【表4】

【0064】
STA2LF1プライマーを用いた場合はサッカロミセス・ディアスタティカスと反応させた時のみに、反応開始60分以内にDNA増幅に伴う濁度の上昇が見られた(表1)。また、プライマーが検出対象にしている菌株と反応した場合に、反応開始から60分以内に増幅が起こり、反応チューブ内の濁度が上昇した(図1)。
【0065】
さらに、STA2LF1プライマーについて各種酵母標準株、ビール醸造用酵母、ビール工場分離野生酵母、ワイン分離野生酵母株を使用して各プライマーの特異性を評価した所、プライマーが検査対象にしている株以外からはほとんど増幅が見られず、菌種に対する特異性が非常に高いことが分かった(表2、表3、および表4)。
【0066】
以上により、サッカロミセス・ディアスタティカスに対して作成した本発明によるプライマーセットは、検査対象とする菌種の株を正確に検出できることが示された。本発明によるプライマーセットを用いれば、遺伝子増幅の有無を確認するだけでサッカロミセス・ディアスタティカスが同定・検出できる。
【0067】
実施例2:LAMP法の検出限界
LAMP法の増幅効率を検討するために、寒天平板培地で培養したサッカロミセス・ディアスタティカスの菌体を滅菌水に段階的に希釈して上記した方法でDNA抽出し、これをLAMP法に供した。その結果、LAMP法では10cfuレベルの少ない菌体量からも増幅が観察された。
【0068】
また、菌体の各段階の希釈液から抽出したゲノムDNAを使ったときにLAMP反応で濁度が0.1を越えた時間を検出時間として、各プライマーの検出時間とコロニー形成数の対数をグラフにしたところ、累乗近似により非常に高い相関係数の近似曲線を描くことが出来た(R=0.999)。これを検量線とすることにより、10−10cfuの範囲で、サンプル中のサッカロミセス・ディアスタティカスの存在を定量的にある程度推測することが可能であることが示された。
プライマーの検出限界と検量線の相関係数
検出限界 検量線近似式 検量線相関係数(R
STA2LF1 4.4x103cfu y=629.38x-1.3965 0.999
【0069】
実施例3:特許文献にあるプライマーの評価
(a)特許文献のプライマー
土屋らの特許文献(WO2005/093059号公報)に記載されていた以下のサッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)について、実施例1(b)と同様にLAMP法用プライマー溶液を調製した。サッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)はrRNA遺伝子のD2領域を標的としている。
[サッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)]
FIP: TGCGAGATTCCCCTACCCCAGACATGGTGTTTTGTGCC (配列番号6)
F3: AGACCGATAGCGAACAAGTA (配列番号7)
BIP: CTGTGGGAATACTGCCAGCTGGCCGTGTTTCAAGACGGGCGG (配列番号8)
B3: CTTGGTCCGTGTTTCAAGAC (配列番号9)
LB: CAAGGATGCTGGCATAATGGTT (配列番号10)
【0070】
実施例1(c)および(d)の記載に従って、上記プライマーセットを用いて、LAMP法により各種菌株の検出を行った。結果は図2に示される通りであった。
【0071】
(b)プライマーの評価
その結果、SSC1LB1は試験したサッカロミセス属酵母のほとんどの菌種と反応し、サッカロミセス属酵母の中での識別は出来ないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】サッカロミセス・ディアスタティカス検出用プライマーセット(STA2LF1)の検出対象菌種への反応特異性を示した図である。使用菌株は次の通りである。サッカロミセス・セレビシェNBRC10217、サッカロミセス・バヤヌスNBRC11022、サッカロミセス・パストリアヌスNBRC11024、NBRC11023、NBRC10610、サッカロミセス・セレビシェ・ディアスタティカスDSM70487、サッカロミセス・パラドクサスNBRC10609、サッカロミセス・カリオカヌスNBRC10947、サッカロミセス・ミカタエNBRC1815、サッカロミセス・クドリアヴゼヴィNBRC1802、サッカロミセス・エクシグスNBRC1128、サッカロミセス・セルバジーNBRC1838、サッカロミセス・ウニスポラスNBRC0316、サッカロミセス・ダイレネンシスNBRC0211、サッカロミセス・クルイベリNBRC1685、Nega:ゲノムDNA無添加。
【図2】サッカロミセス属検出用プライマーセット(SSC1LB1)の検出対象菌種への反応特異性を示した図である。使用菌株は次の通りである。サッカロミセス・セレビシェNBRC10217、サッカロミセス・バヤヌスNBRC11022、サッカロミセス・パストリアヌスNBRC11024、NBRC11023、NBRC10610、サッカロミセス・セレビシェ・ディアスタティカスDSM70487、サッカロミセス・パラドクサスNBRC10609、サッカロミセス・カリオカヌスNBRC10947、サッカロミセス・ミカタエNBRC1815、サッカロミセス・クドリアヴゼヴィNBRC1802、サッカロミセス・エクシグスNBRC1128、サッカロミセス・セルバジーNBRC1838、サッカロミセス・ウニスポラスNBRC0316、サッカロミセス・ダイレネンシスNBRC0211、サッカロミセス・クルイベリNBRC1685、Nega:ゲノムDNA無添加。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ポリヌクレオチドを含んでなる、澱粉分解能を持つサッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae var. diastaticus)の検出に用いられるLAMP法プライマーセット:
配列番号1の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(FIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチド;
配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(F3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチド;
配列番号3の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(BIP)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチド;および
配列番号4の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(B3)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号5の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(LF)またはその塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基のポリヌクレオチドを更に含んでなる、請求項1に記載のプライマーセット。
【請求項3】
配列番号1〜5の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチドが、それぞれ、対応する塩基配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドである、請求項1または2に記載のプライマーセット。
【請求項4】
配列番号1〜5の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチドが、それぞれ、対応する塩基配列と少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチドである、請求項1または2に記載のプライマーセット。
【請求項5】
配列番号1〜5の塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも10塩基対のポリヌクレオチドが、それぞれ、対応する塩基配列に1または数個の変異が導入された改変塩基配列からなり、かつ対応する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドである、請求項1または2に記載のプライマーセット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−27951(P2009−27951A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193464(P2007−193464)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】