説明

濁水処理システムおよび濁水処理方法

【課題】 薬剤を使用せず、濁水を処理することができ、脱水ケーキも再利用することができ、また、河川への放流のための水質汚濁に係る環境基準値以下のSS濃度の場合にのみ放流し、SSが高濃度の場合には放流しないように制御できるシステムを提供する。
【解決手段】 このシステムは、濁水に含まれる一部の粒子を捕捉し、第1処理水を送出する第1フィルタ22と、第1処理水中に残留する粒子を捕捉し、第2処理水を排出する第2フィルタ23と、第1処理水と第2処理水の差圧を計測するための差圧計測手段24と、計測された差圧が第1設定値未満であるか、第1設定値より高い第2設定値を超える場合に、第2処理水の放流を停止し、第1フィルタ22の前流側に戻すリターンライン25へ第2処理水の送出方向を切り替える電磁弁26、27とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集剤等の薬剤を一切使用することなく、工事濁水を処理することができる濁水処理システムおよび濁水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム工事やトンネル工事等で発生する工事濁水は、凝集沈殿方式による濁水処理装置やこの汚泥脱水装置を含む濁水処理設備により処理されている(例えば、特許文献1参照)。この工事濁水は、工事現場において発生する湧き水が土砂と混じり合って発生したり、掘削、ずり運搬、吹付けコンクリート、コンクリート打設、洗浄水等に伴い発生したりする。
【0003】
ここで、図1に従来から用いられている濁水処理設備の一例を示す。工事濁水には、礫、砂、泥土が粒子として含まれる。このため、比較的大きい粒子径をもつ粒子を沈降させ、固液分離するために、まず、沈砂槽10へ供給される。沈砂槽10は、連続処理が可能なように一定量貯留し、比較的大きい粒子径を有する礫や砂を泥水と分離する。沈砂槽10では、礫や砂を自然に沈降させることにより礫や砂は底に集まり、上澄み液が泥水として分離される。
【0004】
その後、上澄み液は、濁水処理装置11へ送られ、上澄み液のpH、濁度が計測される。セメント等のアルカリ成分の物質を含む場合、pHが高くなることから、濁水処理装置11へ流入する手前で炭酸ガス等の中和用ガスを注入し、液を中和する。その後、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄等の凝集剤が添加され、これにより、粒子径の小さい集合体が形成される。また、濁水処理装置11では、ポリアクリルアミド系の高分子凝集剤等が添加され、これにより、粒子径の小さい集合体が集められ、大きな集合体(フロック)が形成される。
【0005】
濁水処理装置11は、フロックの沈降時間を確保するため、凝集沈殿槽(シックナー)12を備える。凝集沈殿槽12では、上記の2つの凝集剤が添加された上澄み液が、上層の上水と、下層の凝集されたフロックとに分離される。
【0006】
上水は、凝集沈殿槽12からオーバーフローし、放流水槽13へ送られ、pH計でpHが、濁度計で濁度が計測され、予め求めておいた濁度と浮遊物質(SS)量との相関関係式により、計測された濁度をSS量へ換算し、放流基準を満たすpH値およびSS量であれば河川等に放流される。pH値またはSS量が放流基準を満たさない場合、破線で示されるように、沈砂槽10へ戻され、pHが調整される。
【0007】
一方、凝集沈殿槽12に沈殿したフロックは、汚泥貯留槽14へ送られ、固液分離を容易にするために脱水剤等の薬剤が添加される。その後、フロックは、フィルタプレス等の汚泥脱水装置15へ送られ、圧縮ろ過されて脱水ろ液と脱水ケーキとに分離される。脱水ケーキは、脱水剤や凝集剤を含み、高含水となることもあるため、所定の強度が得られない場合もある。このため、一般的には再利用が困難であるため、産業廃棄物として処分される場合が一般的である。一方、脱水ろ液は、沈砂槽10へ戻される。
【0008】
そのほか、濁水を処理するための装置として、濁水をろ過するろ過装置が提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。これらのろ過装置は、フィルタを備えており、フィルタに汚濁物質を捕捉することにより、濁水から汚濁物質を分離している。なお、これらのフィルタは、次第に目詰まりし、差圧が高くなってくることから、随時計測している差圧が設定した値に達したところで、新しいフィルタに交換され、または洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−307515号公報
【特許文献2】特開2009−255012号公報
【特許文献3】特開2010−119936号公報
【特許文献4】特許第4051260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
濁水処理装置で処理された後の処理水は、pH値およびSS量を、河川への放流のための水質汚濁に係る環境基準値以下にして河川等に排水するのが一般的であるが、その処理の際、上記の凝集剤を使用するため、自然環境が豊かな河川等へ放流すると、河川等が汚染されてしまう。したがって、このような薬剤は使用しない方が好ましい。放流水中に薬剤が残留し、河川環境等への影響が懸念されるからである。
【0011】
凝集剤を使用すると、フロックの沈降時間を確保する必要があることから、凝集沈殿槽12を設ける必要があり、その結果、濁水処理装置が大型化し、広い設置スペースが必要となり、装置コストが高くなるという問題があった。
【0012】
また、脱水剤の使用も、その脱水剤が薬剤であるため、それが残留すると河川環境等への影響が懸念される。脱水剤を用いて脱水した脱水ケーキは、再利用が困難で、産業廃棄物として処分されることから、処分費用がかかる。
【0013】
したがって、凝集剤や脱水剤等の薬剤を使用せず、濁水を処理することができ、脱水ケーキも再利用することができ、また、小型化して安価で提供することができ、容易にメンテナンスができるシステムや方法の提供が望まれていた。
【0014】
そこで、上記のようなフィルタを備えるろ過装置を用いて土粒子を捕捉し、分離することができる。フィルタは、多数の孔を有し、様々な孔径を有するものがある。孔径が大きいものは、多数の粒子を通過させることから、河川への放流のための水質汚濁に係る環境基準値(水域類型がAA、A、B型:25ppm)以下のSS濃度にすることは難しい。一方で、孔径を小さくすることで、上記の環境基準値以下のSS濃度にすることができる。しかしながら、フィルタでの抵抗が大きくなり、処理量が大幅に低下するとともに、目詰まりしやすくなる。これでは頻繁に交換あるいは洗浄しなければならない。
【0015】
このような孔径の小さい多数の孔を有するフィルタを用いることなく、上記の環境基準値以下のSS濃度にして排出することができるとともに、低コストで提供することができる装置の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記問題を解決するべく、濁水に含まれる一部の粒子を捕捉し、捕捉された粒子からなる泥土が分離された第1処理水を送出する第1分離手段と、第1処理水中に残留する粒子を捕捉し、該残留する粒子が分離された第2処理水を排出する第2分離手段と、第2分離手段へ流入する第1処理水と該第2分離手段から排出される第2処理水との差圧を計測するための差圧計測手段と、計測された差圧が第1設定値以上で、第2設定値以下である場合には河川等へ放流させ、第1設定値未満または第2設定値を超える場合は、第1分離手段の前流側に戻すリターンラインへ第2処理水の送出方向を切り替える切替手段とを備える構成を採用する。
【0017】
第1分離手段は、一次処理として、流入する濁水に含まれる粒子を減少させるべく、その濁水に含まれる一部の粒子を捕捉し分離する。第1分離手段は、水を通過させ、その一部の粒子を捕捉するための複数の孔を有する。この第1分離手段として、例えば、天然ヤシ繊維フィルタを用いることができ、再利用不能になった後は、現場内で緑化基盤材等に有効利用することができる。
【0018】
第2分離手段は、二次処理として、残留する粒子を捕捉し、SS濃度を、上記の環境基準値以下にして送出する。これら2つの分離手段により、凝集剤や脱水剤等の薬剤を使用せず、濁水を処理することができ、また、上記の泥土を回収し、脱水することで、脱水ケーキを得、その脱水ケーキを再利用することができる。
【0019】
この第2分離手段は、所定のメッシュサイズの金網から構成されるスクリーンとされ、スクリーン表面に、最初に比較的大きな粒子が捕捉され、その後小さな粒子が堆積することにより一定厚さの粒子層が形成され、その粒子層がフィルタの役割を果たし、スクリーンとこの粒子層の2段で捕捉することにより、上記の環境基準値以下にして送出することが可能となる。本発明では、この粒子層が形成されたときの差圧を第1設定値とし、さらに粒子が堆積して洗浄が必要となるときの差圧を第2設定値とし、差圧が第1設定値と第2設定値との間にあるとき、河川等へ第2処理水を放水し、それ以外のときは、リターンラインを通して第2処理水を戻すことができる。
【0020】
このように、差圧計測手段で差圧を計測し、切替手段で放流する処理水とリターンする処理水を切り替え制御することで、洗浄後に高濃度のSSが一時的に送出される場合であっても、差圧が第1設定値より小さいので、リターンラインを通して戻されることから、河川等への放流を阻止することができ、自然環境へ影響が及ぶのを防止することができる。
【0021】
第2分離手段は、第1処理水を受け入れる受入ノズルと、第2処理水を排出する排出ノズルとを備える中空円筒状の容器と、その容器の内部に配設される円筒形のフィルタとを含む構成とすることができる。この第2分離手段は、このフィルタの内面に、捕捉された第1処理水に含まれる粒子から構成される第1粒子層と、第1粒子層を構成する粒子より小さい粒子径を有する粒子から構成される第2粒子層とを形成し、そのフィルタとともに第1粒子層および第2粒子層を用いて、第1処理水に含まれる粒子を捕捉し分離することを特徴とする。
【0022】
また、第2分離手段は、上記の円筒形のフィルタの内面に堆積した粒子から構成される泥土を吸引して除去するための洗浄手段をさらに含むことができる。この洗浄手段としては、例えば、上記の円筒形のフィルタの内面に堆積した泥土に近隣して配設される吸引ノズルと、吸引ノズルに連続し、容器の中心軸に回転可能に配設され、容器の長手方向に移動可能とされる筒体と、筒体に連続し、筒体の径に比較して拡張した径を有するチャンバーと、チャンバーに連続し、チャンバー内を大気開放するための泥土排出弁と、筒体を回転させ、容器の長手方向へ移動させる可動手段とを備えるものとすることができる。
【0023】
この濁水処理システムは、さらに、第2分離手段から排出される第2処理水中の浮遊物濃度を計測するための濃度計測手段を含み、この場合、切替手段は、差圧計測手段で計測された差圧が第1設定値以上、第2設定値以下であり、かつ濃度計測手段で計測された浮遊物濃度が閾値以下である場合に、河川等へ放流させ、差圧が第1設定値未満もしくは第2設定値を超える場合、浮遊物濃度が閾値を超える場合は、第1分離手段の前流側に戻すリターンラインへ第2処理水の送出方向を切り替える。
【0024】
なお、このシステムは、濃度計測手段のみを備え、浮遊物濃度のみを計測して、切替手段が、計測した濃度が閾値以下であるか、それを超えるかを判断して、第2処理水の送出方向を切り替えることも可能である。
【0025】
また、第1分離手段により分離された粒子からなる泥土を受け入れる脱水容器を備え、その脱水容器内のガスを吸引することにより泥土に含まれる水分を除去する脱水装置をさらに含むことができる。泥土に含まれる水分を除去する方法としては、この脱水装置を用いる以外に、透水性を有する袋に泥土を充填し、袋詰脱水を行う方法や、天日乾燥する方法を挙げることができる。
【0026】
上記の脱水装置は、脱水容器内の空気および水蒸気を吸引するために真空ポンプといったガス吸引手段を備えることができる。脱水容器内を吸引していくと、泥土に含まれる水分が気化し、それを吸引することにより泥土を乾燥させることができる。この乾燥を促進するために、マグネトロンや遠赤外線ヒータ等の加熱装置を採用することができる。また、脱水容器内へ圧縮ガスを送り、圧縮ガス中へ水分を気化させ、それを上記のガス吸引手段により吸引して乾燥を促進させることができ、そのために、空気圧縮機といった圧縮ガス供給手段を備えることができる。
【0027】
脱水容器は、水平方向に対し傾斜させて配置され、泥土を上方から入れ、脱水容器内を滑らせ、下方から取り出すようにすることで、脱水容器内において泥土を搬送するための搬送手段を設ける必要がなくなる。
【0028】
本発明では、このシステムを用いた濁水処理方法も提供することができる。この方法は、第1分離手段で濁水に含まれる一部の粒子を捕捉し、捕捉された粒子からなる泥土が分離された第1処理水を送出する工程と、第2分離手段で第1処理水中に残留する粒子を捕捉し、該残留する粒子が分離された第2処理水を排出する工程と、第2分離手段へ流入する第1処理水と該第2分離手段から排出される第2処理水との差圧を計測する工程と、計測された差圧が第1設定値以上で、第2設定値以下である場合には河川等へ放流させ、第1設定値未満または第2設定値を超える場合は、第1分離手段の前流側に戻すリターンラインへ第2処理水の送出方向を切り替える工程とを含む。
【0029】
これらの工程に加えて、第1粒子層を形成する工程、第2粒子層を形成する工程、フィルタの内面に堆積した粒子から構成される泥土を吸引して除去する工程、第1分離手段により捕捉され分離された泥土を搬送手段により搬送する工程、泥土を受け入れる脱水容器を備え、その脱水容器内のガスを吸引する脱水装置により、泥土に含まれる水分を除去する工程をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来の濁水処理設備の構成を示した図。
【図2】本発明の濁水処理システムの構成を例示した図。
【図3】濁水処理システムに用いられる第2分離手段の構成例を示した図。
【図4】第2分離手段としての第2フィルタ上に形成される層を例示した図。
【図5】濁水処理システムの別の構成を例示した図。
【図6】濁水処理システムに用いられる脱水装置の1つの構成例を示した図。
【図7】図6に示す脱水装置の詳細を示した図。
【図8】脱水装置に用いられるガス吸引手段を例示した図。
【図9】脱水装置の別の構成例を示した図。
【図10】濁水処理システムのさらに別の構成を例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の濁水処理システムは、自然環境に優しいシステムであり、ゼロエミッション化(廃棄物ゼロ)を実現するものである。図2は、濁水処理システムの1つの構成例を示した図である。
【0032】
ダム工事やトンネル工事等においては、湧き水が発生し、この湧き水と掘削することにより発生する土砂とが混じり合い、また、掘削、ずり運搬、吹付けコンクリート、コンクリート打設、洗浄水等に伴い、濁水が発生する。この濁水には、コンクリート吹き付け等によりセメント材料の一部等も含まれるが、その多くは土砂である。濁水処理システムを連続運転するために、濁水は一度、図示しない原水槽へ貯留される。この原水槽への貯留により、比較的粒子径の大きい礫や砂は沈殿し、分離される。
【0033】
粒子径の小さい土粒子は、水とともに濁水を構成して図2に示すシステム内へ供給される。濁水処理システムは、高圧ポンプといった濁水供給手段20を備え、濁水供給手段20により濁水を圧送する。濁水供給手段20により圧送される濁水は、配管21を通り、第1分離手段としての第1フィルタ22へ供給される。配管21は、後述するリターンラインが接続される。
【0034】
なお、濁水をシステム内へ供給する際、必要に応じてpHを調整することができる。ダム工事やトンネル工事において発生する濁水は、ほぼ中性であるか、アルカリ性を呈することが多い。アルカリ性を呈する場合、炭酸ガスを注入し、液を中和することができる。一般排水基準値のpH値は5.8〜8.6であるから、この範囲に入るように、炭酸ガスを注入することができる。中和剤としては、炭酸ガスのほか、希硫酸を用いることができる。
【0035】
第1分離手段としての第1フィルタ22は、水を通過させ、濁水に含まれる粒子を捕捉するための複数の孔を有し、例えば、天然ヤシ繊維フィルタを用いることができる。このヤシ繊維フィルタは、例えば、約3000ppmの粒子が含まれる濁水からその粒子を捕捉して分離し、500〜1000ppm程度の粒子濃度の処理水である第1処理水を後流側の第2分離手段としての第2フィルタ23へ送出する。ヤシ繊維フィルタは、表面に付着した粒子からなる泥土を取り除き、再使用することができるが、使用に伴ってフィルタとしての機能が低下していく。そして、最終的には再利用不能になるが、このヤシ繊維は、現場内で緑化基盤材等に有効利用することができるので、産廃になることはない。
【0036】
ヤシ繊維フィルタに捕捉された粒子がある程度蓄積されたところで、そのフィルタが取り出され、その表面に付着した粒子からなる泥土は取り除かれ、後述する搬送手段により脱水装置へ搬送される。脱水装置では、その搬送された泥土を、再利用のために脱水する。
【0037】
ヤシ繊維フィルタは、例えば、100%天然ヤシ繊維を円筒状に形成し、同じ天然ヤシ繊維からなるネットで包んで作製されたものとされ、濁水中の土粒子を吸着し、濁水を濾過することができる。このフィルタは、濁度の平均低減率が約45%と高い濾過性能を有し、一般に水と土砂とを分離するために用いられる沈砂池に比較して約30〜50%の省スペース化を図ることができる。
【0038】
このフィルタへの通水は、円筒状のフィルタの長手方向と通水方向が同じになるように配置し、その長手方向へ向けて行うこともできるし、図2に示すようにフィルタの長手方向と通水方向が垂直となるように配置し、フィルタ側面の水平方向の一方の側から他方の側へ向けて行うことができる。この図2では、3本の円筒状のフィルタが互いに隣接して設置されているのが示されている。
【0039】
また、通水は、フィルタ側面の鉛直方向の下側から上側へ向けて行うこともできる。このように鉛直方向への通水は、フィルタ下面に捕捉された土粒子が自然沈降するので、フィルタの目詰まりを低減し、その結果、フィルタの交換頻度が減少する事ができる点で好ましい。この場合、第1フィルタ22の構成は、ヤシ繊維フィルタを容器の中央部分に複数本配置し、その下部へ濁水を供給し、その濁水がヤシ繊維フィルタを上部方向へ濾過しつつ移動する構成とすることができる。
【0040】
第2フィルタ23は、所定のメッシュサイズの金網から構成されたスクリーンとされ、異なるメッシュサイズの2以上の金網を組み合わせて構成されたスクリーンが好ましい。比較的小さな粒子を捕捉し、分離する場合、ある程度細かい穴をもつ10〜30メッシュの金網が必要であるが、このようなメッシュサイズの金網は低い強度であるため、この第2フィルタ23へ送られてくる第1処理水の水圧により折れ曲がる等、破損する場合がある。このため、例えば、1〜5メッシュの金網やこれよりさらに大きい穴をもつ金網といった高い強度のものをさらに用い、これらで挟み込み、補強したスクリーンが好ましいからである。
【0041】
ここで、図3を参照して、第2分離手段の1つの構成例について説明する。第2分離手段は、中空円筒形の容器30と、容器30内に配設される、中空円筒形に形成された第2フィルタ23とを備えている。容器30は、第1処理水を受け入れる受入ノズル31と、第1処理水に含まれる粒子を捕捉し、分離した後の第2処理水を排出する排出ノズル32とを備えている。
【0042】
受入ノズル31から受け入れられた第1処理水は、第2フィルタ23の内部へ送られ、第2フィルタ23を、その内面から外面へと通過することにより、第1処理水に含まれる粒子が捕捉され、分離される。その後、第2フィルタ23を通過した処理水は、第2処理水として、第2フィルタ23と容器30との間に形成される空間へ送られ、排出ノズル32から排出される。
【0043】
第2フィルタ23の内面には、第1処理水の通過により、粒子が堆積し、粒子層が形成される。一定の厚さの粒子層が形成されると、その粒子層がフィルタとしての効果を有し、第2フィルタ23とこの粒子層により、環境基準値以下のSS濃度となり、第2処理水として排出することができ、河川等へ放流することができる。
【0044】
その一方で、時間が経過していき、粒子層の厚さが所定の厚さを超えると、これが抵抗となり、所定量の濁水を処理することができなくなる。このため、第2フィルタ23に堆積した粒子からなる泥土を除去する必要がある。この第2分離手段は、この泥土を除去するための洗浄手段を備えることができる。
【0045】
図3に示す実施形態では、洗浄手段は、容器30の内部に配設される第2フィルタ23の内面に堆積した泥土に近隣して配設される吸引ノズル33と、吸引ノズル33に連続し、容器30の中心軸に回転可能に配設され、容器30の長手方向に移動可能とされる筒体34と、筒体34に連続し、筒体34の径に比較して拡張した径を有する膨張室であるチャンバー35と、チャンバー35に連続し、チャンバー35内を大気開放するための泥土排出弁36と、筒体34を回転させ、容器30の長手方向へ移動させる可動手段37とを含んで構成されている。
【0046】
この洗浄手段は、第2フィルタ23を洗浄する時期に達したときに起動し、泥土排出弁36を開き、チャンバー35内を大気開放する。容器30内へは、大気圧を超える所定の水圧、例えば0.5〜2MPaで、第1処理水が供給され、吸引ノズル33は、筒体34を介して大気圧とされたチャンバー35内へ連通しているため、吸引ノズル33に強力な吸引効果を生じる。吸引ノズル33は、第2フィルタ23の内面に堆積した泥土に近隣して配置されるため、この泥土を吸引し、また、筒体34が可動手段37により回転され、容器30の長手方向へ移動されるため、第2フィルタ23の内面全体に堆積した泥土を吸引して除去する。
【0047】
吸引ノズル33により吸引された泥土は、筒体34を通してチャンバー35内へ送られ、泥土排出弁36を介して抜き出される。吸引ノズル33は、筒体34に2以上設けることができ、可動手段37は、容器30の長手方向へ移動させるスライダ機構と、容器30の中心軸を中心として一定方向に筒体34を回転させる回転機構とを含む構成とされる。これらは、電動モータにより駆動させることができる。
【0048】
再び図2を参照して、濁水処理システムは、上記の第1フィルタ22および第2フィルタ23に加えて、第2フィルタ23の前流と後流との差圧を計測する差圧計測手段24と、その差圧に応じて第2処理水を河川等へ放流するか、リターンライン25を通して第1フィルタ22の前流側へ戻すかを決定する図示しない制御手段と、その制御手段からの信号により第2処理水を送出する方向を切り替える切替手段としての電磁弁26、27とを含んで構成される。
【0049】
差圧計測手段24は、差圧計とされ、第2フィルタ23へ供給される第1処理水の水圧と第2フィルタ23から排出される第2処理水の水圧との差を計測する。この差圧計測手段24は、一定の厚さの粒子層が形成されたときの差圧を第1設定値として保持し、第2フィルタ23を洗浄するときの差圧を第2設定値として保持する。第1設定値は、第2設定値より小さい値で、例えば、0.05〜0.2MPaという値とされる。第2設定値は、例えば、0.5〜1MPaという値とされる。これらの値は、環境基準値に応じて決定することができる。
【0050】
環境基準値は、SSの河川への放流のための水質汚濁に係る環境基準値であれば25ppm、湖沼へ放流するための水質汚濁に係る環境基準値であれば1ppm(水域類型がAA型)や5ppm(水域類型がA、B型)である。
【0051】
第2フィルタ23が新品のとき、あるいは洗浄直後には、差圧計測手段24では第1設定値未満の値が計測される。これは、第2フィルタ23の内面に一定の厚さの粒子層がまだ形成されていないからである。第1フィルタ22を通過した第1処理水には、比較的大きな粒子や細かい粒子が含まれており、新品時あるいは洗浄直後の第2フィルタ23へ第1処理水を通すと、細かい粒子は通過し、比較的大きな粒子が捕捉され、堆積していく。
【0052】
このため、図4に示すように、比較的大きな粒子から構成される第1粒子層40が最初に第2フィルタ23の内面上に形成される。第1粒子層40が形成されると、水は、粒子間を通して流れるようになり、第1粒子層40を構成する粒子は、比較的粒子径が大きいことから、粒子間の間隙が大きく、これより細かい粒子は水とともに通過する。このため、SS濃度を環境基準値以下にすることはできない。
【0053】
その後、第1粒子層40上にそれより小さい粒子径をもつ粒子が捕捉され、図4に示すように、第1粒子層40を構成する粒子の粒子径より小さい粒子から構成される第2粒子層41が形成される。第2粒子層41を構成する粒子は、粒子径が十分に小さいことから、粒子間の間隙が小さくなり、ほとんどの粒子が捕捉されるようになる。このため、SS濃度を環境基準値以下にすることができ、この第2粒子層41が形成されたときの差圧を第1設定値として設定することができる。
【0054】
その後、第1処理水が連続供給されるたびに、図4に示すように、大小様々な粒子径をもつ粒子が第2粒子層41上に捕捉され、これら大小様々な粒子径をもつ粒子からなる第3粒子層42が形成されていく。この第3粒子層42の厚さは、時間の経過とともに大きくなり、差圧が第2設定値に達したところで、上記の洗浄手段により洗浄される。この洗浄により、第1粒子層40および第2粒子層41も除去されることになるが、再び第1処理水が給水されることにより、第1粒子層40、第2粒子層41を形成することができる。
【0055】
第2フィルタ23を通過した第2処理水は、差圧計測手段24が第1設定値と第2設定値との間の差圧を計測した場合、制御手段が河川等への放流が可能と判断し、放流側の電磁弁26を開とし、リターンライン25に取り付けられている電磁弁27を閉とし、河川等へ放流される。一方、差圧計測手段24が、第1設定値未満の差圧を計測した場合はまだ上述した第1粒子層40および第2粒子層41が形成されていない状態であるので、制御手段が河川等への放流は不可と判断し、リターンライン25を通して第1フィルタ22の前流側へ戻すように、電磁弁27を開き、河川等への放流側の電磁弁26は閉じる。また、差圧計測手段24が、第2設定値を超える差圧を計測した場合は、第2フィルタ23を洗浄すべきことを示すことから、制御手段が河川等への放流が不可と判断し、同様に電磁弁27を開き、河川等への放流側の電磁弁26は閉じる。
【0056】
ここで、第2設定値を超える差圧を計測した場合にも河川等への放流を禁止する理由は、吸引ノズル33により第2フィルタ23の内面に堆積された泥土が吸引されると、その部分に形成されていた第1粒子層40および第2粒子層41も除去されることなり、その部分の第2フィルタ23を通して高濃度のSSを含む処理水が流れ、その結果、環境基準値を満たさなくなるからである。このため、洗浄中、その後の第1粒子層40および第2粒子層41が形成されるまでは、河川等への放流を禁止している。
【0057】
図5は、濁水処理システムの別の構成例を示した図である。この実施形態では、図2に示す構成に加えて、第2処理水中の浮遊物(SS)の濃度を計測するための濃度計測手段を備えている。濃度計測手段としては、その濃度に対応した濁度を計測する濁度計28を用いることができる。濁度計28は1つの例であるので、これ以外の装置を用いることも可能である。
【0058】
濁水処理の流れは、図2に示す実施形態と同様であるが、第2フィルタ23を通過して流出した第2処理水中のSS濃度に対応した濁度を濁度計28により計測する。図示しない制御手段は、濁度計28から計測結果を受け取り、濁度が閾値、すなわち環境基準値(河川では25ppm)に対応する濁度値以下であるかどうかも判断し、差圧が第1設定値以上で、かつ第2設定値以下で、かつ濁度が閾値以下であれば、電磁弁26、27へ指示し、河川等への放流側の電磁弁26を開き、リターンライン25側の電磁弁27は閉じる。
【0059】
一方、差圧が第1設定値未満であるか、差圧が第2設定値を超えるか、濁度が閾値を超える場合、制御手段は、電磁弁26、27へ指示し、電磁弁27を開き、電磁弁26を閉じて放流を停止する。
【0060】
このように濁度計28を用いて濁度を計測し、その計測した濁度からも判断することにより、より確実に環境基準値を守ることができ、河川環境等への影響をより小さくすることができる。
【0061】
また、本発明の濁水処理システムは、図2に示す第1フィルタ22、第2フィルタ23、差圧計測手段24、切替手段としての電磁弁26、27、図5に示す濁度計28のほか、搬送手段および脱水装置を備えることができる。
【0062】
第1フィルタ22により捕捉され、濁水から分離された粒子は、それが多数集まって泥土を形成し、形成された泥土は、例えば、図6に示すような、コンベアといった搬送手段50により脱水装置へと送られる。搬送手段50としては、スクリューフィーダー等を用いることができる。
【0063】
搬送手段50により搬送された泥土は、水分を多く含み、埋め立てや地盤改良等に再利用するにはその含水率が高い。したがって、再利用するためには、泥土を脱水しなければならない。
【0064】
脱水するための装置として脱水装置が挙げられるが、1つの実施形態として、脱水装置を、脱水容器51と、空気圧縮機といった圧縮ガス供給手段52と、真空ポンプといったガス吸引手段53とから構成することができる。
【0065】
脱水容器51は、中空円筒状の容器とされ、その両端に開閉可能な蓋51a、51bが設けられている。脱水容器51は、水平方向に対し傾斜させて配置され、搬送手段50により搬送された泥土が落下し、脱水容器51内へ受け入れる。このとき、蓋51aは開かれ、蓋51bは閉じられる。
【0066】
所定の量の泥土が入れられたところで、蓋51aを閉じ、圧縮ガス供給手段52により圧縮ガスを供給し、脱水容器51内の泥土をブローする。これにより、脱水容器51内は加圧されることになるため、脱水容器51は、耐圧性を有するものとされ、密閉性が良好なものとされる。このため、本体は、所定の厚さを有する炭素鋼やステンレス鋼等の金属から製造される中空円筒状のものとされ、蓋51a、51bも同様の金属から製造される円形の蓋とされ、その蓋には、密閉性を良好にするためにゴムパッキン等が設けられる。
【0067】
圧縮ガス供給手段52が空気圧縮機である場合、圧縮された空気は高温となり、この高温の圧縮空気が脱水容器51内へ供給される。すると、泥土に含まれる水分は、高温の空気によって蒸発し始め、また、内部の圧力が上昇することにより粒子間に介在する水分が押し出される。
【0068】
押し出された水分は、脱水容器51の傾斜した底面に沿って下方へ流れ、脱水容器51の下方に設けられた排水口54から適宜抜き出される。排水口54から抜き出された水分は、原水槽に戻すことができる。
【0069】
空気圧縮機を停止した後、真空ポンプを起動し、真空ポンプによって空気を吸引するとともに蒸発した水分も吸引する。脱水容器51内を減圧すると、泥土に含まれる水分が気化して水蒸気となり、その水蒸気が吸引されて除去され、その分の減容化が図られる。内部にある泥土は、水分の除去によりその容積が減少する。
【0070】
このようにして脱水された泥土は、傾斜した脱水容器51の蓋51bを開くことにより自然落下し、薬剤を含まないので地盤改良等に再利用することができる。なお、脱水された泥土は、容積および質量が減少するため、搬送が容易となる。
【0071】
圧縮ガスは、高圧窒素、高圧酸素や高圧炭酸ガス等であってもよいが、漏洩した場合の安全性を考慮すると、圧縮空気が好ましく、泥土に含まれる水分を除去する点において乾燥空気が好ましい。なお、高圧窒素、高圧酸素、高圧炭酸ガス等を供給する場合、ボンベやカードル等により供給することができる。
【0072】
図2では、濁水処理システムとして、濁水供給手段20と、第1フィルタ22と、第2フィルタ23と、差圧計測手段24と、リターンライン25と、切替手段としての電磁弁26、27とを備える構成、図5では、さらに濁度計28を備える構成としたが、所定圧力で濁水が供給されるのであれば、濁水供給手段20は備えていなくてもよい。
【0073】
濁水処理システムは、さらに、搬送手段50と、脱水装置とを備えることができ、脱水装置は、脱水容器51と、圧縮ガス供給手段52と、ガス吸引手段53とを備えることができる。しかしながら、ガス吸引手段53により、泥土に含まれる水分を気化させ、水蒸気として吸引することができるため、脱水装置は、圧縮ガス供給手段52を備えていなくてもよい。
【0074】
脱水装置は、脱水容器51内にろ布を備える構成にすることもできる。例えば、脱水装置は、図7に示すようなろ布からなる袋60を脱水容器51の中に備えることができる。この場合、その袋60の中に泥土61を入れ、その袋60の上に、下部に水分の排水が可能となるように隙間を設けた図示しない不透水製シートをかぶせ、または、その不透水製シートからなる袋で覆い、袋60の口を排水口54の方へ向けて配置し、蓋51a、51bを閉じ、圧縮ガス供給手段52を起動させて圧縮ガスを供給し、脱水容器51内を加圧する。ろ布は、泥土61の表面の水分を吸収し、また、不透水製シートは、脱水容器51内が加圧されることにより、周囲のガスによって内側に押し込まれ、それが押し込まれることにより袋60を内側へ押し込み、さらに内部にある泥土61を圧縮し、泥土61に含まれる水分を絞り出す。絞り出された水は、排水口54へと流れ、適宜排出される。
【0075】
その後、圧縮ガス供給手段52を停止させ、ガス吸引手段53により脱水容器51内のガスを、ガス中に蒸気として存在する水分とともに吸引する。このとき、ろ布に吸収された水分も吸い取られる。脱水容器51内を減圧すると、このようにして水分が除去され、その分の減容化が図れるため、内部にある泥土61もその容積が減少する。
【0076】
上記では、袋60の中に泥土を入れて圧縮および減圧して脱水する構成について説明したが、泥土61上を単にろ布および不透水製シートで覆った構成にすることもできる。この場合は、ろ布が、泥土61の表面の水分を吸収するとともに、脱水容器51内を加圧することにより、不透水製シートが内側へ押し込まれ、それが押し込まれることによりろ布を内側へ押し込み、さらに内部にある泥土61を圧縮し、泥土61に含まれる水分を絞り出すことができる。
【0077】
真空ポンプによる気化乾燥では、使用される真空ポンプがオイル粘性を用いて負圧化している。この場合、気化する際、水蒸気がオイルに混合され、真空ポンプがキャビテーションを発生し、故障の原因となる。このため、一度サンプルを凍結して固体化し、直接気化させて乾燥するドライフリージングが一般的に採用される。しかしながら、凍結にコストおよび時間がかかることから、この方法は、現状において食品等に限定されている。また、真空釜乾燥により常温で乾燥する方法も知られているが、これでは乾燥するのに1日半以上もかかる。さらに、真空釜を利用し、水蒸気乾燥を行う方法では、釜のボリュームに対し試料が多い場合、結露が発生するという問題がある。
【0078】
このため、真空ポンプを、オイル式から図8に示すような水封式のエルモ型ポンプにすることができる。エルモ型ポンプは、ケージング70が円形とされていて、水が封入されたケーシング70内でインペラ71を回転させ、水面と回転子間にて圧力変化を持たせ、主にガスを吸引するポンプである。このポンプは、水蒸気を吸引することができるため、脱水装置に適用することで、ドライフリージングのように昇華で気化させるために凍結する必要はなく、コストダウンと時間を短縮することができる。
【0079】
早期乾燥と結露を防止するために、脱水容器51内の泥土を加熱することができる。真空状態では熱を伝える物質が存在しないことから、図9に示すように、脱水容器51内に、マグネトロンによる電磁波や遠赤外線を利用して加熱する加熱手段80を設けることができる。また、上記の加熱手段80ではなく、脱水容器51内に伝熱ヒータを設けたり、脱水容器51の外部にジェットヒータを設け、脱水容器51内へジェットヒータからの熱風を供給して、脱水容器51内を予め所定温度に加熱しておいてから、ガス吸引手段53である真空ポンプで吸引することも可能である。
【0080】
真空ポンプにより真空気化を行い、水蒸気を吸引する場合、泥土61から水蒸気が発生するが、脱水容器51は、密閉されているため、泥土61に水分が多く含まれている場合、脱水容器51内に結露が発生し、水が溜まることが多い。このため、上記の圧縮ガス供給手段52により脱水容器51内に圧縮ガスを噴射し、圧縮ガスの噴射と、ガス吸引手段53による吸引とを繰り返し、脱水容器51の内部に存在する水蒸気を除去することができる。なお、脱水容器51は、ガス吸引手段53を使用して、あるいはガス吸引手段53と加熱手段80もしくはヒータまたは圧縮ガス供給手段52を併用して、さらにはガス吸引手段53と加熱手段80もしくはヒータと圧縮ガス供給手段52のすべてを併用して適切に水分を除去し、泥土を乾燥させることができれば、図7に示すように傾斜させて設置する必要はなく、図9に示すように、脱水容器51の長手方向を水平にして設置することも可能である。
【0081】
ここまで脱水装置を用いて脱水することについて説明してきたが、泥土を脱水するためには、上記の脱水装置のほか、袋詰脱水や、天日乾燥等を用いることも可能であり、これらを併用することも可能である。袋詰脱水は、透水性を有する袋に泥土を充填し、この袋を積み重ねることにより脱水を行う方法である。上に載せられた袋詰めされた泥土により下にある泥土は押しつぶされ、それに伴いその泥土に含まれる水が袋を通して排出され、脱水される。なお、袋詰めに使用する袋の材質としては、ポリエステル等の樹脂材料を用いることができる。天日乾燥は、泥土を日光が照射される場所に広げて配置し、泥土が温められ、水分が蒸発することにより脱水を行う方法である。
【0082】
次に、この濁水処理システムを用いた濁水処理方法について簡単に説明する。供給される濁水に含まれる粒子を、まず、複数の孔を有する第1フィルタ22で分離する。粒子は、複数の孔を通さないため、第1フィルタ22の表面で捕捉され、粒子径の小さいもののみが水とともに第1処理水として通過する。次に、図3に示すような容器30内へ第1処理水が受け入れられ、中空円筒形の第2フィルタ23の内部へ送られ、第2フィルタ23の内面で粒子が捕捉され、第2フィルタ23を通したもののみが第2処理水として排出される。
【0083】
第2フィルタ23においては、第2フィルタ23の内部へ送られる第1処理水の水圧と、第2フィルタ23を通過した第2処理水の水圧とから、差圧計測手段24により差圧が計測される。そして、この差圧が第1設定値以上で、第2設定値以下であるかが判断される。計測された濁度が第1設定値以上で、第2設定値以下である場合、切替手段としての電磁弁26、27により第2処理水を河川等へ放流し、それ以外の場合は、電磁弁26、27の開閉を切り替えて、第1フィルタ22の前流側に戻すリターンライン25へ送出方向を切り替える。これにより、SS濃度が高い場合に河川等へ放流されることを防止し、自然環境へ影響を及ぼすことを防止することができる。なお、SS濃度が高い処理水は、リターンライン25を通して第1フィルタ22の前流側へ供給され、濁水供給手段20により供給される濁水とともに第1フィルタ22へ導入される。
【0084】
第1フィルタ22で分離された泥土を、図6および図7に示す脱水容器51内に入れ、蓋をして密閉した後、脱水容器51内に圧縮ガスを供給し、圧縮ガス中へ水分を蒸発させるとともに、泥土中の土粒子間に介在する水分を押し出して脱水し、その後、蒸発した水分を含むガスを吸引することにより、泥土に含まれる水分を除去し、泥土の容積を減少させる。これにより、低含水率で低容量化した脱水泥土となり、薬剤を含まず、コーン指数も200kN以上とすることができるので、この脱水泥土は、現場内で再利用することが可能となる。
【0085】
また、第1フィルタ22により捕捉され分離された泥土を、搬送手段50により搬送することができる。泥土を受け入れる脱水容器51を備える、その脱水容器51内のガスを吸引する脱水装置により、搬送された泥土に含まれる水分を除去することができる。
【0086】
このように、本発明では、2つのフィルタ、差圧計測手段、切替手段を用いるのみで濁水を処理することができるので、装置の省スペース化を図ることができ、安価で提供することができる。また、第1フィルタとして天然ヤシ繊維フィルタを用いることで、交換時期に達した場合において廃棄することなく、現場内で緑化基盤材等に有効利用することができる。また、回収された泥土は、薬剤を使用していないことから、脱水後、現場内で有効利用することができる。
【0087】
本発明では、上記に説明した実施形態のほか、図10に示すように、差圧計測手段24を用いない構成とすることも可能である。この場合は、濁度計28で計測された濁度により制御手段が判断し、電磁弁26、27を制御する。すなわち、環境基準値(河川では25ppm)に対応する濁度値を閾値とし、その閾値以下であれば、電磁弁26を開き、電磁弁27は閉じて河川等へ放流する。一方、閾値を超える場合は、電磁弁27を開き、電磁弁26は閉じて河川等への放流を停止し、すべてをリターンさせる。
【0088】
このとき、第2分離手段を、図3に示すような第1処理水を受け入れる受入ノズル31と、第2処理水を排出する排出ノズル32とを備える中空円筒状の容器30と、容器30の内部に配設される円筒形の第2フィルタ23とを含んで構成されるものとした場合、第2フィルタ23の内面に、第1処理水に含まれる粒子が捕捉されて、その粒子から構成される第1粒子層が形成され、また、その第1粒子層を構成する粒子より小さい粒子径を有する粒子が捕捉されて、その粒子から構成される第2粒子層が形成される。すなわち、図4に示すようなフィルタ構造が形成される。
【0089】
この第2分離手段では、このように形成された第1粒子層および第2粒子層と、第2フィルタ23とを用いて、第1処理水に含まれる粒子を捕捉し分離する。これにより、メッシュサイズの細かいフィルタを用いなくても、捕捉された粒子により形成される粒子層によって細かい粒子までも捕捉することができるので、より効果的にSSを除去することができ、また、安価で提供することができる。
【0090】
これまで本発明の濁水処理システムおよび濁水処理方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。したがって、脱水装置は上述した構成のものに限られるものではなく、フィルタプレスを用いて脱水することも可能である。また、脱水装置から取り出される土は、脱水していることから、そのまま利用することもできるが、さらに天日乾燥等を行い、コーン指数を向上させることで、地盤改良に再利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
10…沈砂槽、11…濁水処理装置、12…凝集沈殿槽、13…放流水槽、14…汚泥貯留槽、15…汚泥脱水装置、20…濁水供給手段、21…配管、22…第1フィルタ、23…第2フィルタ、24…差圧計測手段、25…リターンライン、26、27…電磁弁、28…濁度計、30…容器、31…受入ノズル、32…排出ノズル、33…吸引ノズル、34…筒体、35…チャンバー、36…泥土排出弁、37…可動手段、40…第1粒子層、41…第2粒子層、42…第3粒子層、50…搬送手段、51…脱水容器、51a、51b…蓋、52…圧縮ガス供給手段、53…ガス吸引手段、54…排水口、60…袋、61…泥土、70…ケーシング、71…インペラ、80…加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濁水を処理する濁水処理システムであって、
前記濁水に含まれる一部の粒子を捕捉し、捕捉された前記粒子からなる泥土が分離された第1処理水を送出する第1分離手段と、
前記第1処理水中に残留する前記粒子を捕捉し、該残留する粒子が分離された第2処理水を排出する第2分離手段と、
前記第1処理水と前記第2処理水の差圧を計測するための差圧計測手段と、
計測された前記差圧が第1設定値未満であるか、該第1設定値より高い第2設定値を超える場合に、前記第2処理水の放流を停止し、前記第1分離手段の前流側に戻すリターンラインへ前記第2処理水の送出方向を切り替える切替手段とを含む、濁水処理システム。
【請求項2】
前記第1分離手段は、ヤシ繊維フィルタである、請求項1に記載の濁水処理システム。
【請求項3】
前記第2分離手段は、前記第1処理水を受け入れる受入ノズルと前記第2処理水を排出する排出ノズルとを備える中空円筒状の容器と、前記容器の内部に配設される円筒形のフィルタとを含み、
前記フィルタの内面に、捕捉された前記第1処理水に含まれる粒子から構成される第1粒子層と、前記第1粒子層を構成する粒子より小さい粒子径を有する粒子から構成される第2粒子層とを形成し、前記フィルタとともに前記第1粒子層および第2粒子層を用いて、前記第1処理水に含まれる粒子を捕捉し分離することを特徴とする、請求項1または2に記載の濁水処理システム。
【請求項4】
前記第2分離手段は、前記フィルタの内面に堆積した前記粒子から構成される泥土を吸引して除去するための洗浄手段をさらに含む、請求項3に記載の濁水処理システム。
【請求項5】
前記洗浄手段は、前記フィルタの内面に堆積した前記泥土に近隣して配設される吸引ノズルと、前記吸引ノズルに連続し、前記容器の中心軸に回転可能に配設され、該容器の長手方向に移動可能とされる筒体と、前記筒体に連続し、該筒体の径に比較して拡張した径を有するチャンバーと、前記チャンバーに連続し、該チャンバー内を大気開放するための泥土排出弁と、前記筒体を回転させ、前記容器の長手方向へ移動させる可動手段とを備える、請求項4に記載の濁水処理システム。
【請求項6】
前記第2分離手段から排出される前記第2処理水中の浮遊物濃度を計測するための濃度計測手段をさらに含み、
前記切替手段は、前記差圧計測手段で計測された前記差圧が前記第1設定値未満である場合、もしくは前記第2設定値を超える場合、または前記濃度計測手段で計測された前記浮遊物濃度が閾値を超える場合に、前記第1分離手段の前流側に戻す前記リターンラインへ前記第2処理水の送出方向を切り替える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の濁水処理システム。
【請求項7】
前記濁水処理システムは、前記第1分離手段により分離された前記泥土を脱水する脱水装置を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の濁水処理システム。
【請求項8】
前記脱水装置は、前記泥土を受け入れる脱水容器を備え、該脱水容器内のガスを吸引することにより、該泥土に含まれる水分を除去する、請求項7に記載の濁水処理システム。
【請求項9】
前記脱水装置は、前記脱水容器内のガスを吸引するガス吸引手段を備え、さらに、前記脱水容器内へ圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給手段もしくは前記脱水容器内に収容された泥土を加熱する加熱手段またはその両方を備える、請求項8に記載の濁水処理システム。
【請求項10】
濁水を処理する濁水処理システムであって、
前記濁水に含まれる一部の粒子を捕捉し、捕捉された前記粒子からなる泥土が分離された第1処理水を送出する第1分離手段と、
前記第1処理水中に残留する前記粒子を捕捉し、該残留する粒子が分離された第2処理水を排出する第2分離手段と、
前記第2処理水中の浮遊物の濃度を計測するための濃度計測手段と、
計測された前記濃度が閾値を超える場合に、前記第2処理水の放流を停止し、前記第1分離手段の前流側に戻すリターンラインへ前記第2処理水の送出方向を切り替える切替手段とを含み、
前記第2分離手段は、前記第1処理水を受け入れる受入ノズルと前記第2処理水を排出する排出ノズルとを備える中空円筒状の容器と、前記容器の内部に配設される円筒形のフィルタとを含み、
前記フィルタの内面に、捕捉された前記第1処理水に含まれる粒子から構成される第1粒子層と、前記第1粒子層を構成する粒子より小さい粒子径を有する粒子から構成される第2粒子層とを形成し、前記フィルタとともに前記第1粒子層および第2粒子層を用いて、前記第1処理水に含まれる粒子を捕捉し分離することを特徴とする、濁水処理システム。
【請求項11】
濁水を処理する濁水処理方法であって、
複数の孔を有する第1分離手段で、前記濁水に含まれる一部の粒子を捕捉し、捕捉された前記粒子からなる泥土が分離された第1処理水を第2分離手段へ送出する工程と、
複数の孔を有する前記第2分離手段で、前記第1処理水中に残留する前記粒子を捕捉し、該残留する粒子が分離された第2処理水を排出する工程と、
前記第1処理水と前記第2処理水の差圧を計測する工程と、
計測された前記差圧が第1設定値未満であるか、該第1設定値より高い第2設定値を超える場合に、前記第2処理水の放流を停止し、前記第1分離手段の前流側に戻すリターンラインへ前記第2処理水の送出方向を切り替える工程とを含む、濁水処理方法。
【請求項12】
前記第1分離手段は、ヤシ繊維フィルタである、請求項11に記載の濁水処理方法。
【請求項13】
前記第2分離手段は、前記第1処理水を受け入れる受入ノズルと前記第2処理水を排出する排出ノズルとを備える中空円筒状の容器と、前記容器の内部に配設される円筒形のフィルタとを含み、
前記方法は、前記フィルタの内面に、捕捉された前記第1処理水に含まれる粒子から構成される第1粒子層を形成する工程と、前記第1粒子層上に、該第1粒子層を構成する粒子より小さい粒子径を有する粒子から構成される第2粒子層を形成する工程とを含み、前記フィルタとともに前記第1粒子層および第2粒子層を用いて、前記第1処理水に含まれる粒子を捕捉し分離することを特徴とする、請求項11または12に記載の濁水処理方法。
【請求項14】
前記フィルタの内面に堆積した前記粒子から構成される泥土を吸引して除去する工程をさらに含む、請求項13に記載の濁水処理方法。
【請求項15】
前記第2分離手段から排出される前記第2処理水中の浮遊物濃度を計測する工程をさらに含み、
前記切り替える工程では、前記差圧を計測する工程で計測された前記差圧が前記第1設定値未満である場合、もしくは前記第2設定値を超える場合、または前記浮遊物濃度を計測する工程で計測された前記浮遊物濃度が閾値を超える場合に、前記第1分離手段の前流側に戻す前記リターンラインへ前記第2処理水の送出方向を切り替える、請求項11〜14のいずれか1項に記載の濁水処理方法。
【請求項16】
前記第1分離手段により捕捉され分離された前記泥土を搬送手段により搬送する工程と、
前記泥土を受け入れる脱水容器を備え、前記脱水容器内のガスを吸引する脱水装置により、前記泥土に含まれる水分を除去する工程をさらに含む、請求項11〜15のいずれか1項に記載の濁水処理方法。
【請求項17】
濁水を処理する濁水処理方法であって、
複数の孔を有する第1分離手段で、前記濁水に含まれる一部の粒子を捕捉し、捕捉された前記粒子からなる泥土が分離された第1処理水を第2分離手段へ送出する工程と、
複数の孔を有する前記第2分離手段で、前記第1処理水中に残留する前記粒子を捕捉し、該残留する粒子が分離された第2処理水を排出する工程と、
前記第2処理水中の浮遊物の濃度を計測する工程と、
計測された前記濃度が閾値を超える場合に、前記第2処理水の放流を停止し、前記第1分離手段の前流側に戻すリターンラインへ前記第2処理水の送出方向を切り替える工程とを含み、
前記第2分離手段は、前記第1処理水を受け入れる受入ノズルと前記第2処理水を排出する排出ノズルとを備える中空円筒状の容器と、前記容器の内部に配設される円筒形のフィルタとを含んで構成されており、
前記第2処理水を排出する工程は、前記フィルタの内面に、捕捉された前記第1処理水に含まれる粒子から構成される第1粒子層を形成する工程と、前記第1粒子層上に、該第1粒子層を構成する粒子より小さい粒子径を有する粒子から構成される第2粒子層を形成する工程と、前記フィルタとともに前記第1粒子層および第2粒子層を用いて、前記第1処理水に含まれる粒子を捕捉し分離する工程とを含む、濁水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143702(P2012−143702A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3569(P2011−3569)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】