説明

濃縮液体洗浄剤組成物

【課題】洗浄力、温度変化による粘度安定性に優れた、水道の水圧を利用した希釈装置で希釈して使用する、濃縮液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルベンゼンスルホン酸塩30〜70質量%、(B)炭素数8〜18の第1級又は第2級アルコールに平均で2〜20モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが付加したポリオキシアルキルアルキレン型界面活性剤10〜40質量%、(C)粘度低下剤としてエタノール、プロパノール、イソプロパノールから選ばれる1種以上を4〜15質量%、(D)水、さらに(E)高級脂肪酸アルカノールアミドを1〜5質量%を含有し、25℃における粘度が10〜200mPa・sである濃縮液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホテル、レストラン、学校給食、社員食堂、食品加工工場、飲食店の厨房や作業場等における食器、調理器具、床等の業務用の洗浄剤として好適に用いられる業務用の濃縮液体洗浄剤組成物に関する。更に詳しくは、洗浄力が優れることはもとより、温度変化による粘度安定性に優れた、水道の水圧を利用した希釈装置で希釈して使用することを特徴とする、業務用の濃縮液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食器洗い用洗剤として用いられる中性洗浄剤組成物のうち、業務用のものは、界面活性剤成分濃度が10〜15質量%程度に調整したものを一斗缶(容量18リットル)やプラスチック製の容器に充填したものが主流であったが、容器の廃棄コストの高騰や環境に対する意識の高まり、洗剤の省スペース化の要望等から、近年、洗剤容器を減容化するとともに、洗剤を濃縮化することが主流になりつつある。
【0003】
このような、濃縮化された洗浄剤組成物としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級脂肪酸ジエタノールアミド、特定のアリールカルボン酸またはその塩もしくはエステルを、特定の割合で含有する、低温安定性及び色相安定性に優れた台所用濃縮液体洗浄剤組成物や(特許文献1参照)、特定のアルキルベンゼンスルホン酸塩、特定のポリオキシエチレン型界面活性剤を特定の割合で含有し、粘度低下剤として、エタノール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上を含有し、高級脂肪酸アルカノールアミドの含有量が特定量以下である、低温安定性及び色相安定性に優れた台所用濃縮液体洗浄剤組成物や(特許文献2参照)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エタノール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上のハイドロトロープ剤、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フタル酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上を特定の割合で含有する、低温安定性にすぐれ、水ぎれ性やすすぎ性の改善された台所用濃縮液体洗浄剤組成物が開示されている(特許文献3参照)。
【0004】
また、特定のスルフォン酸エタノールアミン塩からなる陰イオン界面活性剤、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる非イオン界面活性剤、特定の脂肪酸アルカノールアミドからなる非イオン界面活性剤を特定の割合で含有し、その組成物中に水を含まない、粘度特性に優れた高濃度液体中性洗浄剤組成物や(特許文献4参照)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウム、脂肪酸アルカノールアミド及び/又は高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であるノニオン界面活性剤を特定の割合で含有し、エタノール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールの中の少なくとも1種並びに塩化ナトリウム及びベタイン型両性界面活性剤の中の少なくとも1種を特定の割合で含有する、高濃度であってもペースト状であったり、水に投入した時にゲル化したりすることがない高濃度中性液体洗浄剤組成物が開示されている(特許文献5参照)。
【0005】
また、洗剤の希釈濃度を一定にするために水道の水圧を利用したアスピレーターにより洗剤を吸入し、水道水と混合希釈する装置が考え出されている。この装置は、水道配管の途中にオリフィス部と洗剤吸い込み口を設け、水道水がオリフィス部を通過する際に発生する負圧により、洗剤を吸い込み、この吸い込んだ洗剤を水道水と混合させて希釈するものであり、希釈倍率の調整は洗剤吸い込み口に適当な口径のチップを選択しセットして洗剤の吸い込み量を調整することにより行われている。
【0006】
【特許文献1】特許第2981451号公報
【特許文献2】特許第3250981号公報
【特許文献3】特許第3279485号公報
【特許文献4】特許第3167616号公報
【特許文献5】特許第3012768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような水道の水圧を利用した希釈装置を使用する場合には洗剤の原液の粘度が450mPa・s以上あると水圧では洗剤が少量しか供給されず30倍以下の使用希釈倍率の洗剤希釈液を得ることが困難である。さらに、温度による洗剤原液の粘度の上昇が大きいと洗剤が吸い込みにくくなり洗剤希釈倍率が一定しなくなる。
【0008】
上記特許文献1〜5においては、低温安定性や色相安定性の改善がなされているが、洗剤原液の粘度が高い点や、温度が低くなると粘度が上昇してしまう点など水道の水圧を利用した希釈装置で希釈して使用することには適さない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、洗浄力が優れることはもとより、温度変化による粘度安定性に優れた、水道の水圧を利用した希釈装置で希釈して使用することを特徴とする、食器、調理器具、床等の業務用の洗浄剤として好適に用いられる濃縮液体洗浄剤組成物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数8〜18の第1級又は第2級アルコールに平均で2〜20モルのエチレンオキシド又はプロピレンオキシドが付加したポリオキシアルキルアルキレン型界面活性剤、粘度低下剤としてエタノール、プロパノール、イソプロパノールから選ばれる1種以上及び水とを特定の割合で組み合わせることにより、洗浄力が優れており、貯蔵安定性が高く、温度変化による粘度安定性に優れた、水道の水圧を利用した希釈装置を使用することを特徴とする、食器、調理器具、床等の業務用の洗浄剤として好適な濃縮液体洗浄剤組成物が得られるという知見を得た。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の濃縮液体洗浄剤組成物を提供するものである。
【0011】
1.(A)アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルベンゼンスルホン酸塩30〜70質量%、(B)炭素数8〜18の第1級又は第2級アルコールに平均で2〜20モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが付加したポリオキシアルキルアルキレン型界面活性剤10〜40質量%、(C)粘度低下剤としてエタノール、プロパノール、イソプロパノールから選ばれる1種以上を4〜15質量%及び(D)水を含有し、且つ、(A)成分と(B)成分との合計含有量が、60質量%以上で、JIS Z 8803「単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法」による25℃における粘度が10〜200mPa・sであり、水道の水圧を利用した希釈装置で使用されることを特徴とする濃縮液体洗浄剤組成物。
2.さらに、(E)高級脂肪酸アルカノールアミドを1〜5質量%含有することを特徴とする上記1の濃縮液体洗浄剤組成物。
3.上記(A)成分がアルキルベンゼンスルホン酸アミン塩である上記1又は2の濃縮液体洗浄剤組成物。
4.上記アルキルベンゼンスルホン酸アミン塩がアルキルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩である上記3の濃縮液体洗浄剤組成物。
5.組成物の5℃における粘度と25℃における粘度との差が250mPa・s以下であることを特徴とする上記1〜4の濃縮液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルベンゼンスルホン酸塩(A成分)と、炭素数8〜18の第1級又は第2級アルコールに平均で2〜20モルのエチレンオキシド又はプロピレンオキシドが付加したポリオキシアルキルアルキレン型界面活性剤(B成分)と、粘度低下剤としてエタノール、プロパノール、イソプロパノールから選ばれる1種以上(C成分)と、水(D成分)とを特定の割合で組み合わせることにより、洗浄力が優れることはもとより、温度変化による粘度安定性に優れた効果を発揮し、水道の水圧を利用した希釈装置で30倍以下に希釈して使用されることを可能とした。また、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、食器、調理器具、床等の業務用の洗浄剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物(以下、「本組成物」ということがある。)は、必須成分として、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を含有している。
【0014】
本発明に用いられる(A)成分は、洗浄力を確保するために配合されるもので、アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルベンゼンスルホン酸塩が用いられる。上記(A)成分のアルキルベンゼンスルホン酸としては直鎖アルキルベンゼンスルホン酸が好ましい。上記(A)成分の塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、イソプロパノールアミン塩、イソプロピルアミン塩等が挙げられる。なお、上記直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、イソプロピルアミン等のアルカリ性を呈する物質との反応により得られるものであり、本組成物中に初めから直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩の形で配合してもよく、本組成物中に直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を配合した後に、上記アルカリ性を呈する物質を加えて中和塩を形成させてもよい。なお、この(A)成分は、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0015】
さらに、上記(A)成分は粘度安定性の点から、アルキルベンゼンスルホン酸アミン塩であることが好ましい。具体的にはアルキルベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸ジエタノールアミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸イソプロパノールアミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩等が挙げられる。なかでもアルキルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩が特に好ましい。
【0016】
また、(A)成分の配合量は、本組成物中に、30〜70質量%の範囲に設定される。この量が30質量%未満では洗浄力に乏しく、また70質量%を超えて配合しても、洗浄力の向上効果は飽和となる上、粘度安定性に乏しくなる。なかでも、洗浄力と粘度安定性の点から、40〜60質量%の範囲が好ましい。
【0017】
本発明に用いられる(B)成分としては、炭素数8〜18の第1級又は第2級アルコールに平均で2〜20モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが付加したポリオキシアルキルアルキレン型界面活性剤が用いられる。この(B)成分は、洗浄力と粘度安定性を確保する目的で配合され、1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのうち、洗浄力の点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、特に、炭素数が8〜15の直鎖又は分岐鎖のアルコールに、エチレンオキサイドを4〜15モル付加したものが好ましい。
【0018】
また、(B)成分の配合量は、本組成物中に、10〜40質量%の範囲に設定される。この量が10質量%未満では洗浄力に乏しく、また40質量%を超えて配合すると、粘度安定性に乏しくなる。なかでも、洗浄力と粘度安定性の点から20〜40質量%の範囲が好ましい。
【0019】
また(A)成分及び(B)成分の合計配合量は60質量%以上であることが好ましい。
60%未満では濃縮液体洗浄剤として高希釈倍率に希釈して使用しても十分な洗浄力を得られるという効果が乏しいからである。なかでも、60〜90質量%が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる(C)成分としては粘度低下剤としてエタノール、プロパノール、イソプロパノールから選ばれる1種以上が用いられる。この(C)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。なかでもエタノールを用いることが好ましい。
【0021】
また、(C)成分の配合量は、本組成物中に、4〜15質量%の範囲に設定される。この量が4質量%未満では粘度低下効果に乏しく、また15質量%を超えて配合しても粘度低下効果の向上は期待できず、また、コスト的に不利となる。なかでも、4〜10質量%の範囲が好ましい。
【0022】
本発明に用いられる(D)成分である水としては、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性の点から、水道水、イオン交換水が好ましく用いられる。なお、上記「水」は、本発明の硬表面用中性洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸と水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、イソプロピルアミン等のアルカリとの中和反応からの水と、外から加えられる水との総和であり、組成物全体が100%となるよう配合される。
【0023】
また、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物の原液は、水道の水圧を利用した希釈装置を使用する場合に洗剤の原液の粘度が450mPa・s以上あると水圧では洗剤が少量しか供給されず30倍以下の使用希釈倍率の洗剤希釈液が得られないことから、25℃における粘度(JIS Z 8803「単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法」に基づく)が10〜200mPa・sの範囲になることが好ましい。
【0024】
そして、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物には、洗剤希釈液の泡立ちが少なく、洗浄時には泡立たせる目的で、(E)成分として、高級脂肪酸アルカノールアミドを配合することができる。
【0025】
本発明に用いられる(E)成分のとしては、例えば、パーム核油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(1:1型)、ラウリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、イソステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(1:2型)、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、イソステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、又はこれらのアルキル基にアルキレンオキサイドが付着したもの等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記脂肪酸アルカノールアミドのなかでも、泡立ちの点から、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)が好ましく用いられる。
【0026】
この(E)成分の配合量は、本組成物中に、1〜5質量%の範囲に設定されることが好ましい。この量が1質量%未満では泡立ちに乏しく、また5質量%を超えて配合すると、泡立ちが過剰である。なかでも、泡立ちの点から、1〜3質量%の範囲が好ましい。
【0027】
また、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物の原液は、水道の水圧を利用した希釈装置を使用する場合に洗剤の原液の粘度が450mPa・s以上あると水圧では洗剤が少量しか供給されず30倍以下の使用希釈倍率の洗剤希釈液が得られないことから、低温時でも使用可能とするため、5℃における粘度(JIS Z 8803「単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法」に基づく)と25℃における粘度の差が250mPa・s以下であることが好ましく、差が少ないほどさらに好ましい。
【0028】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物の原液は、手洗いに供することができるようにするため、pHが6〜8の範囲に調整される。pHの調整は、必要に応じ、アルカリ性を呈する物質と酸性を呈する物質とを適量添加することにより行う。なお、「適量」とは、組成物の原液のpHを、所望の値に調整する量をいう。
pHの調整に用いられるアルカリ性を呈する物質としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩、炭酸ナトリウム,重炭酸ナトリウム,炭酸カリウム等の炭酸塩、ケイ酸ナトリウム,ケイ酸カリウム等のケイ酸塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩、モノエタノールアミン,ジエタノールアミン等のアミン、アンモニア等が用いられ、また、pHの調整に用いられる酸性を呈する物質としては、塩酸,硫酸等の無機酸、クエン酸,酢酸等の有機酸等が用いられる。
【0029】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、所望により、ニトリロトリ酢酸,エチレンジアミンテトラ酢酸,クエン酸又はそれらの塩等の水質軟化剤、保湿剤、pH緩衝剤、殺菌剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、香料、染料、ハイドロトロープ剤、アミンオキサイド等の上記(A)〜(D)成分及び上記(E)成分に該当しない界面活性剤等の任意成分を適宜配合することができる。
【0030】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、水道の水圧を利用した希釈装置を使用して5〜3000倍に希釈して使用することができるが、特に30倍以下の希釈倍率の洗剤希釈液を得ることが可能となった。
【0031】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、例えば、ホテル、レストラン、学校給食、社員食堂、食品加工工場、飲食店の厨房や作業場等において、手洗いによる硬表面の洗浄、特に、食器・調理器具の洗浄に好適に用いることができる。洗浄は、通常、水道の水圧を利用した希釈装置を使用して、シンク等に原液を1000〜2000倍に希釈した洗剤水溶液を調製して被洗浄物を浸漬させて手洗いするか、水道の水圧を利用した希釈装置を使用して、原液を30倍以下に希釈した洗剤水溶液を調製してスポンジ等にしみこませて手洗いする方法を用いる。
さらに、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、水道の水圧を利用しない機械式の希釈装置にも用いることができる。
また、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、上記の厨房、作業場、台所等における床、壁、作業台、棚等の硬表面の洗浄にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物について、実施例と比較例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
後記の表1〜6に示す実施例1〜16及び比較例1〜14の濃縮液体洗浄剤組成物を調製し、各種試験に供した。なお、表中の各成分の数値は、各成分の純分含有量(質量%)である。各組成物は、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いて、その適量を添加して、組成物のpHが6〜8になるようにpHの調整を行っているが、成分(A)〜(E)、pH調整剤及び任意成分の和は全体で100質量%となっている。
【0034】
そして、得られた各種濃縮液体洗浄剤組成物において、pH、粘度、希釈倍率、洗浄力の各試験項目について、以下の試験方法と判定基準により評価し、その結果を後記の表1〜6に併せて示した。
【0035】
(1)pH
JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に基づいて各組成物原液の25℃におけるpHを測定した。
【0036】
(2)粘度
JIS Z 8803「単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法」に基づいて各組成物原液の5℃と25℃の各温度における粘度を測定した。
【0037】
(3)粘度安定性
上記の方法で測定した5℃と25℃の粘度の差を求め以下の基準により判定した。
〔判定基準〕
◎:粘度の差が200未満
○:粘度の差が200以上250以下
×:粘度の差が250を超える
【0038】
(4)希釈倍率
水圧希釈装置(KNIGHT社製/商品名:MX−101 1GPM)にチップを装着しないで、水道の水圧0.2MPa及び0.4MPaの条件下、5℃と25℃の各温度に調製した各組成物を上記希釈装置で希釈した希釈液を採取し、得られた希釈液に対して消費された各組成物原液の重量測定により希釈倍率を測定した。
【0039】
(5)洗浄力
ガラス製の140mLのマヨネーズ瓶に汚れ(サラダ油:牛脂=1:1)約1gを塗布し、汚れの付着重量を測定した。次に未使用のスポンジに上記(3)希釈装置を使用しての希釈倍率の測定を行った各組成物希釈液を1g量り取り、手でスポンジを10回揉み、各組成物希釈液を全体になじませる。このスポンジを用いて上記にて作成した汚れの付着したマヨネーズ瓶を洗浄し、その後すすぎ乾燥させる。この操作を10個の汚れの付着したマヨネーズ瓶に対して繰り返し、乾燥後の汚れの落ち具合を重量で量り、次式により洗浄率を求めた。
洗浄率(%)=(洗浄力試験により除去された汚れの重量)/(洗浄力試験前に付着していた汚れの重量)×100
上記の洗浄率が90%以上のマヨネーズ瓶の個数を数え、以下の基準により判定した。
〔判定基準〕
○:洗浄率90%以上のマヨネーズ瓶が5個以上
×:洗浄率90%以上のマヨネーズ瓶が5個未満
【0040】
なお、以下の表1〜6に示す成分の詳細は以下の通りである。
*LAS−イソプロピルアミン
:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩(ハンツマン社製/商品名:NANSA YS94)
*LAS−イソプロパノールアミン
:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(テイカ社製/商品名:Teikapower L121)のイソプロパノールアミン塩
*LAS−TEA
:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(テイカ社製/商品名:Teikapower L120D)のトリエタノールアミン塩
*LAS−Na
:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(テイカ社製/商品名:Teikapower L121)のナトリウム塩
*ポリオキシエチレンアルキルエーテル1
:炭素数12〜14の直鎖アルコールのエチレンオキサイド9モル付加物(日本触媒社製/商品名:ソフタノール90)
*ポリオキシエチレンアルキルエーテル2
:炭素数13のオキソアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物(BASF社製/商品名:ルテンゾールTO8)
*ポリオキシエチレンアルキルエーテル3
:炭素数9〜11の直鎖アルコールのエチレンオキサイド8モル付加物(シェルジャパン社製/商品名:ネオドール91−8T)
*ポリオキシエチレンアルキルエーテル4
:炭素数12〜14の直鎖アルコールのエチレンオキサイド7モル付加物(日本触媒社製/商品名:ソフタノール70)
*高級脂肪酸アルカノールアミド1
:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)(旭電化工業社製/商品名:アデカソールCOA)
*高級脂肪酸アルカノールアミド2
:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)(旭電化工業社製/商品名:アデカソールCO)
*高級脂肪酸アルカノールアミド3
:パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド(川研ファインケミカル社製/商品名:アミゾールKD−3)
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
上記表1〜6の結果から、実施例1品〜16品は、25℃における粘度が10〜200mPaであり、粘度安定性に優れ、水道の水圧を利用した希釈装置で30倍以下に希釈することが可能で、希釈液による洗浄力において良好な性能を有することがわかる。
【0048】
一方、比較例1は、特許文献2記載の実施例26品に相当するものであり、20℃における粘度は390mPa・sで、25℃における粘度が275mPa・sである。このため25℃における粘度が200mPa・sを超えており、粘度安定性に劣り、5℃において水道の水圧を利用した希釈装置で30倍以下に希釈することができず、温度変化に伴い安定した希釈倍率の希釈液が得られない。
【0049】
また、比較例2品〜7品は、本発明の組成物から、それぞれ上記(A)成分、(B)成分又は(C)成分を欠いたものであり、それぞれ洗浄力や粘度安定性に劣ることがわかる。上記(A)成分と(B)成分の合計配合量が60質量%未満である比較例8品及び(A)成分の配合量が30質量%未満である比較例9品は希釈液の洗浄力において劣る。上記(A)成分を70質量%を超えて配合された比較例10品、(B)成分が10質量%未満である比較例11品、(B)成分が40質量%を超えて配合された比較例12品、(C)成分が4質量%未満である比較例13品のいずれも粘度安定性に劣り、5℃における洗浄力に劣ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキル基の炭素数が8〜18のアルキルベンゼンスルホン酸塩30〜70質量%、(B)炭素数8〜18の第1級又は第2級アルコールに平均で2〜20モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが付加したポリオキシアルキルアルキレン型界面活性剤10〜40質量%、(C)粘度低下剤としてエタノール、プロパノール、イソプロパノールから選ばれる1種以上を4〜15質量%及び(D)水を含有し、且つ、(A)成分と(B)成分との合計含有量が、60質量%以上で、JIS Z 8803「単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法」による25℃における粘度が10〜200mPa・sであって、水道の水圧を利用した希釈装置で使用されることを特徴とする濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに、(E)高級脂肪酸アルカノールアミドを1〜5質量%含有することを特徴とする請求項1記載の濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記(A)成分がアルキルベンゼンスルホン酸アミン塩である請求項1又は2のいずれか一項に記載の濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
上記アルキルベンゼンスルホン酸アミン塩がアルキルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩である請求項3記載の濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
組成物の5℃における粘度と25℃における粘度との差が250mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の濃縮液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−152038(P2006−152038A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341313(P2004−341313)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(503066321)ディバーシー・アイピー・インターナショナル・ビー・ヴイ (16)
【Fターム(参考)】