説明

濾材

【課題】捕集効率が高く、低圧力損失で、繊維の脱落も少なく、焼却可能な濾材を提供する。
【解決手段】植物の柔細胞から得られた繊維を含有する濾材、有機繊維および無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維と、植物の柔細胞から得られた繊維とを少なくとも含有する濾材。また、有機繊維および無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維の全量またはその一部が、平均繊維径0.1μm〜5μmの繊維であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工業、医薬品製造工業、食品工業、病院などの分野で使用されるクリーンルーム用エアフィルタ、オフィスの空調、家庭用エアコンなどのフィルター用濾材、エンジンオイル、燃料、水処理、放電加工機などの液体濾過用濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の粒子や液体中の粒子を捕集する濾材には、(1)通気性または通液性に優れていて、圧力損失が低いこと、(2)捕集効率が良いこと、(3)加工性に優れていること、(4)使用中の強度低下や繊維の脱落等が少ないこと、(5)廃棄物問題の点から、焼却または生分解が可能なことが要求されている。濾材には、ガラス繊維・セラミック繊維等の無機繊維を主体とする無機繊維含有濾材、ポリオレフィン繊維等を主体とする合成繊維含有濾材に大別される。
【0003】
無機繊維含有濾材は、無機繊維の剛直性、繊維径の細さに起因して、低い圧力損失で高い捕集効率が得られるという利点がある。しかし、無機繊維の剛直性が、加工性を低下させるという問題がある。また、エアフィルタ濾材として使用した場合に無機繊維が脱落すると、人体への影響が懸念される。機械のエンジンオイルフィルターなどの濾材から無機繊維が脱落した場合には、機械のしゅう動部を傷つけることが懸念される。さらに、無機繊維は焼却することができないという廃棄物問題も抱えている。従って、無機繊維含有濾材においては、加工性、使用中の脱落由来の問題、廃棄物問題などから、無機繊維の含有量を減らすことが要望されている。
【0004】
無機繊維の減量のために、有機繊維を含有させた濾材が提案されている。また、有機繊維として生分解性繊維を用いた濾材が開示されている。例えば、ガラス繊維やセラミック繊維に、直径1μm以下にミクロフィブリル化したセルロース繊維を添加し、バインダー樹脂を加えて抄紙してなる濾材が提案されている(特許文献1)。ミクロフィブリル化したセルロース繊維としては、木材パルプをフィブリル化した繊維が用いられているが、捕集効率が低い上に、強度をもたせるために、抄紙時にバインダー樹脂を添加しているため、圧力損失が高くなるという欠点を残していた。
【0005】
有機繊維含有濾材は、生分解可能な天然繊維や焼却可能な合成繊維を主体としているために、廃棄物問題に対応した濾材といえる。有機繊維含有濾材では、捕集効率を上げるために、直流高電圧を印加してエレクトレット化したエレクトレット濾材が使用されている(特許文献2、3参照)。しかし、エレクトレット濾材は、高温多湿の条件下にさらされたり、粉塵が濾材に堆積したりすることによって、濾材の電荷が低下し、良好な捕集効率を維持することは困難である。
【0006】
捕集効率を上げる手段として、極細繊維を含有させた濾材が提案されている。極細繊維を含有させた濾材として、メルトブローン法で作製した不織布があるが、機械的強度が弱いために、単独では使用しにくく、スパンボンド不織布や織編物と貼り合わせて用いられるがために、コスト面・製造工程数の増加といった問題があった(特許文献2、3参照)。
【0007】
メルトブローン法で作製した濾材の問題を解決した有機繊維含有濾材として、例えば、フィブリル化された有機繊維と骨材繊維とを混抄してなる濾材、太い繊維からなる層と極細繊維からなる層を二層にして抄紙した濾材等が提案されている。廃棄物問題や捕集効率の観点から、フィブリル化された有機繊維や極細繊維として、ミクロフィブリル化されたセルロース繊維やバクテリアセルロース、非木材由来のセルロースを用いた濾材がある(特許文献1、4〜6参照)。これらのセルロース繊維では、水素結合を利用した絡み合い、繊維の凹凸断面形状、微細化度によって、濾材の捕集効率が制御されている。しかしながら、セルロース繊維はフィルム状になりやすいために圧力損失が大きくなったり、極微細化された場合には、濾材製造加工時や使用時に脱落しやすくなるといった問題があった。
【0008】
つまり、無機繊維含有濾材、有機繊維含有濾材の両方において、廃棄物問題の観点から、セルロース繊維が用いられているが、低圧力損失、高捕集効率、加工性を満足する濾材は得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開平7−116430号公報
【特許文献2】特開平5−7713号公報
【特許文献3】特開平6−128858号公報
【特許文献4】特開平8−229318号公報
【特許文献5】特開2000−153116号公報
【特許文献6】特開平6−142422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低圧力損失、高捕集効率、廃棄物問題、加工性に対応した濾材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を克服するために種々検討し、本発明の濾材を発明するに至った。すなわち、本発明の濾材は、
(1)植物の柔細胞から得られた繊維を含有する濾材、
(2)有機繊維および無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維、植物の柔細胞から得られた繊維とを少なくとも含有する濾材、
(3)有機繊維および無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維の全量またはその一部が、平均繊維径0.1μm〜5μmの繊維である上記(2)記載の濾材である。
【発明の効果】
【0011】
植物の柔細胞から得られた繊維(以下、柔細胞繊維と表記する)は、高重合度で、結晶性が高く、高弾性率で、平均繊維径が0.1μm以下と非常に細いことが特長であり、加工性に優れ、低圧力損失と高捕集効率を満たした濾材を提供することができる。また、柔細胞繊維は、無機繊維と有機繊維の両方と良好に絡み合うことができる。したがって、無機繊維と混抄した場合にバインダー樹脂を添加しなくても、抄紙することが可能であり、加工性も良好である。また、従来使用されてきた木材パルプ由来のミクロフィブリル化セルロース繊維やバクテリアセルロース繊維と比較しても、捕集効率が高く、かつ低圧力損失を達成できる。理由は定かではないが、柔細胞繊維が空隙を完全に埋めてしまうようなフィルム形状や凝集構造になりにくいためであると推測される。
【0012】
柔細胞繊維単独で濾材を製造すると、濾材が非常に高密度となり、血液用濾材などに使用することができる。より大きな粒子を捕集する濾材として用いる場合には、柔細胞繊維よりも繊維径の太い繊維と混合して濾材を作製する。植物の柔細胞から得られた繊維と平均繊維径が近似している平均繊維径0.1〜5μmの有機繊維または無機繊維を混合することにより、植物の柔細胞から得られた繊維とこれらの繊維が効率よく絡み合い、湿式抄紙機の抄紙ワイヤーから繊維が脱落しにくくなる。また、植物の柔細胞から得られた繊維とこれらの繊維が三次元ネットワークを形成して、細かな空隙を構築することができる。このため、捕集効率を高くすることができる。また、有機繊維、無機繊維、柔細胞繊維の脱落も抑制することができる。
【0013】
植物の柔細胞から得られた繊維は、焼却可能であり、生分解性も有するので、今後益々問題視されている不燃ゴミ量を減らすことができるため、環境問題に対応した濾材となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の濾材に係わる植物の柔細胞から得られる繊維(以下、柔細胞繊維と表記する)とは、植物の茎や葉、果実等に存在する柔細胞を主体とした部分を、アルカリで処理する等して得られるセルロースを主体とし、水に不溶な非木材繊維である。柔細胞は、二次壁が発達していない特徴を有する。
【0015】
本発明において、植物の柔細胞を得るためには、茎の内部柔組織や葉の葉肉、果実等を粉砕するなどすればよいが、工業的には食品加工工場や製糖工場等から排出される、果実からのジュースの搾り粕やサトウダイコン、サトウキビ等からの搾汁粕を用いるのが最適である。例えば、サトウダイコンの搾汁粕を利用する際には、粉砕した根を搾汁し、残さの粕をそのまま利用することができる。サトウキビの搾汁粕を利用する際には、搾り粕であるバガスを適当な大きさに粉砕し、目開き1〜2mmのふるいを通過させることにより柔細胞を多く含む部分を得ることができる。
【0016】
本発明において、柔細胞から繊維を得るためには木材からパルプを製造する際のパルプ化処理を適用するのが良い。例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリと混合、加熱してリグニンを分解除去するクラフトパルプ化法やソーダパルプ化法を用いることができる。詳細なパルプ化処理条件は、原料の性状や目的とする繊維の性状、収率等を鑑みて適宜決定すればよい。アルカリを洗浄後、必要に応じて漂白処理を行なう。漂白剤として過酸化水素、二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、酸素、オゾン等を用いることができる。漂白後、洗浄して繊維の懸濁液を得ることができる。
【0017】
パルプ化処理により得られた繊維は、そのままでも使用可能だが、フィブリル化処理することにより、比表面積が大きくなり、且つ均一性が高くなるため好ましい。フィブリル化処理には、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃によりせん断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間でせん断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも3000psiの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維にせん断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0018】
本発明に係わる柔細胞繊維の平均繊維径は、0.1μm以下である。また、繊維長は、1〜20μmである。ここで言う平均繊維径とは、繊維を走査型電子顕微鏡で観察し、50カ所の太さを計測した値の平均値である。また、繊維長は光散乱式粒度分布測定装置で繊維スラリーを測定した際に体積平均粒径として算出される値である。
【0019】
本発明に用いられる無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、ロックファイバー、ステンレスファイバーなどが挙げられ、中でもアルミナ繊維とガラス繊維が好ましく、より好ましいのはガラス繊維である。
【0020】
本発明に係わる有機繊維としては、木材パルプ、麻パルプ、コットンリンター、リント、マーセル化パルプ、麻パルプ、また再生繊維としては、リヨセル繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維が、半合成繊維としては、アセテート繊維、トリアセテート繊維、プロミックス繊維が、合成繊維としては、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ビニロン系繊維、塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系繊維、アラミド系繊維、ウレタン系繊維、ベンゾエート繊維、ポリクラール繊維、フェノール系繊維などの繊維が挙げられる。上記の繊維の他に、植物繊維として藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものとする。その一部、または全部が熱融着バインダー成分を有するものも含まれる。これらの繊維はフィブリル化されていても通液性、通気性を阻害しない範囲であればなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等も含まれる。また、断面形状がT型、Y型、三角等の異形断面繊維やクリンプ加工された繊維も通気性、通液性確保のために含有できる。
【0021】
本発明において、有機繊維と無機繊維は、一種類の繊維径に限らず、二種類以上の繊維径の繊維を併用することも可能である。二種類以上の繊維径の繊維を配合することにより、均一な濾材内部の空隙を構成することから捕集効率の優れた濾材となる。
【0022】
さらに、捲縮性を有する有機繊維を全部または一部含む場合、柔細胞繊維とのネットワークを保持しつつ、且つ濾材の密度を下げ、濾材内部の空間体積を広くすることができ、捕集効率とライフのバランスをとる役割を果たすことが可能となる。
【0023】
本発明において、有機繊維の一部として、熱融着性バインダー繊維を用いてもよい。熱融着性バインダー繊維としては、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、濾材の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。熱融着性バインダー繊維としては、例えば、ポリプロピレンの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ等が挙げられる。また、ポリエチレンやポリエステル等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ビニロン系やポリビニルアルコール(PVA)系繊維状バインダーは、濾材の乾燥工程で皮膜を形成し易いが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。熱融着性バインダー繊維の繊維径は特に限定されないが、5μm〜40μmであることが好ましく、より好ましくは7μm〜30μmである。
【0024】
本発明の濾材(2)において、有機繊維と無機繊維の平均繊維径は特に限定しない。湿式抄紙法で抄造する際の操業性や濾材の捕集効率を考慮すると、繊維径は0.1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜30μmである。
【0025】
本発明の濾材(3)において、平均繊維径0.1μm〜5μmの無機繊維としては、マイクロガラス繊維を好ましく用いることができる。マイクロガラス繊維とは、蒸気吹付法、スピニング法、火焔挿入法、ロータリー法などで製造される極細ガラス繊維であり、平均繊維径が、一般的には5μm以下であるものを指している。本発明においては3μm以下がより好ましい。
【0026】
本発明の濾材(3)において、平均繊維径0.1μm〜5μmの有機繊維としては、フィブリル化された有機繊維を用いることが好ましい。フィブリル化された有機繊維の一部分は、繊維径1μm以下にまでフィブリル化されていることが好ましい。フィブリル化された有機繊維は、以下に示す方法などで処理されたものなどが挙げられる。
【0027】
1)合成高分子溶液を該高分子の貧溶媒中にせん断力をかけながら流下させ、繊維状フィブイルを沈澱させる方法(フィブリッド法)、
2)合成モノマーを重合させながらせん断をかけフィブリルを析出させる方法(重合せん断法)、
3)二種以上の非相溶性高分子を混合し、溶融押出し、または紡糸し、切断後機械的な手段で繊維状にフィブリル化する方法(スプリット法)、
4)二種以上の非相溶性高分子を混合し、溶融押出し、または紡糸し、切断後溶剤に浸漬して一方の高分子を溶解し、繊維状にフィブリル化する方法(ポリマーブレンド溶解法)、
5)合成高分子をその溶媒の沸点以上で、かつ高圧測から低圧測へ爆発的に噴出させた後、繊維状にフィブリル化する方法(フラッシュ紡糸法)、
6)繊維を適当な繊維長に切断後、水中に分散させ、ホモジナイザー、叩解機などを用いてフィブリル化する方法。
【0028】
0.1〜5μmのフィブリル化有機繊維としては、できるだけ剛直なものが好ましく、特に剛直鎖合成高分子と称される材料からなる繊維が好ましい。剛直鎖合成高分子とは、溶液中直線状を維持する鎖長(持続長)が50オングストローム以上ある高分子のことであり、例えば、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(p−ベンズアミド)、ポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリ(アミドヒドラジン)、ポリヒドラジン、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド−3,4−ジフェニルエーテルテレフタルアミド)などがある。
【0029】
また0.1〜5μmのフィブリル化有機繊維としては、セルロース繊維を原料としたリヨセル繊維を用いることもできる。本発明において、「リヨセル」とは、ISO規格及び日本のJIS規格に定める繊維用語で「セルロース誘導体を経ずに、直接、有機溶剤に溶解させて紡糸して得られるセルロース繊維」とされている。リヨセル繊維の特徴としては、湿潤強度に優れていること、フィブリル化し易いこと、およびセルロース繊維由来の水素結合によりシート化したときの強度が得やすいこと、等が挙げられる。
【0030】
リヨセル繊維は、通常のパルプ繊維と同様に、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル等の叩解、分散設備でフィブリル化可能である。リヨセル繊維はセルロース繊維が原料であることから、フィブリル化した後も水素結合による強度向上が望めるという特徴を有している。
【0031】
植物の柔細胞から得られた繊維と0.1〜5μmのリヨセル繊維を併用した場合には、両素材共に生分解性を有する事から生分解性濾材となる。その場合、必要に応じてバインダーとなる繊維や樹脂に生分解性の素材を使用することが好ましい。
【0032】
平均繊維径0.1μm〜5μmの有機繊維または無機繊維において、より好ましい平均繊維径は0.1μm〜3μmである。更に好ましくは0.1μm〜1μmである。平均繊維径が、0.1μm未満の場合、柔細胞繊維と共に抄紙ワイヤーからの流出が多くなってしまう。また、5μmを超えた場合、柔細胞繊維の繊維径との差が大きいために良好なネットワークを形成できにくくなり、柔細胞繊維の抄紙ワイヤーからの流出が多くなる場合があり、良好な捕集効率が得られにくくなることがある。また、濾材使用時にも柔細胞繊維とその他の繊維の脱落が起こる場合がある。
【0033】
濾材を作製する方法としては、特に限定されないが、柔細胞繊維のみ、または柔細胞繊維と有機繊維および無機繊維から選ばれる少なくとも一種の繊維とを水に分散し混合したスラリーを湿式抄紙法により抄紙して作製する方法などが挙げられる。
【0034】
また、柔細胞繊維を用いるため、湿式抄紙において、スラリー中にバインダーを入れなくても、抄紙可能である。しかし、濾材の用途によって、または強度や腰(硬さ)を向上させる目的で、各種バインダーを付与することが可能である。用いられるバインダーとしては、例えば、アクリル系、エポキシ系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、NBR系、SBR系などのラテックス、PVA、でんぷん、フェノール樹脂などを単独、または2種以上併用できる。また、染料、顔料、撥水剤、難燃剤などを、濾材の性能を阻害しない範囲内で配合することが可能である。
【0035】
本発明において、湿式抄紙法で使用できる界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性に分類される。アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、エーテル型、エステル型、アミノエーテル型などが挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン型などが挙げられる。これらの中から、繊維の分散性の良好なものを適宜選択し用いればよい。
【0036】
均一に混合分散した繊維の分散安定性を向上させるために、アニオン性のポリアクリルアミド系粘剤を繊維分散液、または抄紙白水中に添加することにより、湿式抄造後の濾材の地合はさらに向上する。
【0037】
本発明の濾材は、一般紙や湿式不織布を製造するための湿式抄紙機、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機を単独で一層であっても、同機種同士、異機種を組み合わせた二層以上の多層であっても良い。2層以上の場合、上流側を粗層とし下流を密層とすることにより濾材のライフは良好になる。
【0038】
乾燥には、シリンダードライヤー、スルードライヤー、赤外線ドライヤーなどの乾燥機を用いることが可能である。熱融着性バインダー繊維を配合させた場合には、熱融着温度以上で乾燥することが望ましい。
【0039】
本発明の濾材は、湿式抄紙機で得たものに限らず、乾式不織布、織布、フィルム、多孔膜などと積層することが可能である。
【0040】
本発明の濾材は、乾燥した時点で強度、腰が良好であるが、用途によりさらに強度、腰を向上させるために、湿式抄紙、乾燥した後、各種バインダーを付与することが可能である。
【0041】
用いられるバインダーとしては、アクリル系ラテックス、酢ビ系ラテックス、ウレタン系ラテックス、エポキシ系ラテックス、SBR系ラテックス、フェノール樹脂、およびカチオン基を有する水溶性紙力剤のカチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン性アクリルアミド、両性アクリルアミド、カチオン性ポリアミド、両性ポリアミド、ポリアミドポリアミン、カチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、両性グアーガム、ポリアミドエピクロヒドリン、カチオン化PVAなどが挙げられる。好ましくは、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミドであり、これらを単独、もしくは2種以上を併用して使用できる。
【0042】
湿式抄紙、乾燥した後、付与するバインダー量は、濾材の坪量に対して20質量%未満である。20質量%を超えると、強度、腰は強くなるものの捕集効率が低下するばかりでなく、圧力損失が高くなってしまいフィルターのライフを短くしてしまう。
【0043】
また、用途に応じてさらに濾材に、撥水性、難燃性を付与させるために、撥水剤、難燃剤を添加しても良い。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらに何等限定されるものではない。実施例中の部数や百分率は、特にことわりがない場合、質量基準である。なお、実施例および比較例における圧力損失、捕集効率、灰分、フィルター加工性は、以下に示す評価方法により測定した。
【0045】
[圧力損失]
圧力損失(mmHO)は、濾材に空気を流速5.3cm/秒で通気させたときの通気抵抗を水柱マノメーターより求めた。
【0046】
[捕集効率]
捕集効率(%)は、平均粒径0.3μmのジオクチルフタレート粒子を発生させ、この粒子を含有する空気を流速5.3cm/秒で濾材を通気(濾過)させ、濾材の前後で空気をサンプリングし、それぞれの粒子数をマルチダストカウンターで測定し、数1より算出した。
【0047】
(数1)
捕集効率={(濾過前の粒子数−濾過後の粒子数)/濾過前の粒子数}×100
【0048】
[焼却後の灰分]
焼却後の灰分(%)は、濾材を900℃の電気炉で2時間加熱焼却させる前後の質量から数2より算出した。
【0049】
(数2)
灰分=(焼却後の濾材の質量/焼却前の濾材の質量)×100
【0050】
[フィルター加工性]
フィルター加工性は、濾材を蛇腹状にひだ折りし、ユニットに組み込む際の作業性と、繊維脱落量を示した。
【0051】
[柔細胞繊維の調製]
サトウダイコンの搾り粕からなる市販のビートパルプを10L容のオートクレーブに投入した。液比4L/kg、対絶乾ビートパルプ量あたりの有効アルカリ添加率15質量%となるように水酸化ナトリウムを混合し、保持温度120℃、保持時間30分の条件で処理した。ろ過による洗浄後、試料濃度8質量%とし、試料に対して有効塩素濃度2質量%となるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて攪拌し、室温で8時間漂白した後、ろ過により洗浄した。さらに、1質量%の懸濁液とし、回転刃式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を10000rpmで1分間処理して、柔細胞繊維懸濁液Aを得た。
【0052】
[バクテリアセルロース繊維の調製]
市販のナタデココ(フジッコ社製)を1質量%の懸濁液とし、回転式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を10000rpmで1分間処理して、バクテリアセルロース繊維懸濁液Bを得た。
【0053】
[微小繊維状セルロース繊維の調製]
繊維細胞を主体とした木材パルプを原料としている市販の微小繊維状セルロース(セリッシュKY−100S、ダイセル化学工業社製)を1質量%の懸濁液とし、回転式ホモジナイザー(オステライザー、オステライザー社製)を用いて、1Lの懸濁液を10000rpmで1分間処理して、微小繊維状セルロース繊維懸濁液Cを得た。
【0054】
実施例1
[濾材の製造]
柔細胞繊維懸濁液Aと平均繊維径約0.65μmのマイクロガラス繊維(商品名:#106、シュラー社製)、繊度1.67dtex(平均繊維径約12.5μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)との固形分の質量比率が10:15:75になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0055】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0056】
(比較例1)
[濾材の製造]
バクテリアセルロース繊維懸濁液Bと平均繊維径約0.65μmのマイクロガラス繊維(商品名:#106、シュラー社製)、繊度1.67dtex(平均繊維径約12.5μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)との固形分の質量比率が10:15:75になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0057】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0058】
(比較例2)
[濾材の製造]
微小繊維状セルロース繊維懸濁液Cと平均繊維径約0.65μmのマイクロガラス繊維(商品名:#106、シュラー社製)、繊度1.67dtex(平均繊維径約12.5μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)との固形分の質量比率が10:15:75になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0059】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0060】
実施例1、比較例1〜2で得られた濾材に対して、上記の評価方法に従って評価し、その結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1の柔細胞繊維を含有する濾材は、圧力損失が低く、捕集効率が高かった。また、フィルター加工性も優れていた。比較例1のバクテリアセルロース繊維を含有する濾材は、捕集効率が低く、フィルター加工時に繊維の脱落が確認された。また、比較例1の濾材の焼却後の灰分が多く、抄紙時や加工時にバクテリアセルロース繊維が脱落している可能性が示唆された。比較例2の微小繊維状セルロース繊維を含有する濾材は、実施例1の濾材と比較して、圧力損失が高く、微小繊維状セルロース繊維が通気性を阻害していることが
わかった。
【0063】
実施例2
[濾材の製造]
柔細胞繊維懸濁液Aと平均繊維径約9μmのガラス繊維(繊維長6mm、旭硝子社製)との固形分の質量比率が20:80になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0064】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0065】
(比較例3)
[濾材の製造]
バクテリアセルロース繊維懸濁液Bと平均繊維径約9μmのガラス繊維(繊維長6mm、旭硝子社製)との固形分の質量比率が20:80になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0066】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0067】
(比較例4)
[濾材の製造]
微小繊維状セルロース繊維懸濁液Cと平均繊維径約9μmのガラス繊維(繊維長6mm、旭硝子社製)との固形分の質量比率が20:80になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0068】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0069】
(比較例5)
[濾材の製造]
微小繊維状セルロース繊維懸濁液Cと平均繊維径約9μmのガラス繊維(繊維長6mm、旭硝子社製)との固形分の質量比率が20:80になるように混合して水性スラリーを作製し、さらにバインダーとして塩化ビニル系樹脂ラテックスを繊維に対して5質量%添加した。
【0070】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0071】
実施例2、比較例3〜5で得られた濾材に対して、上記の評価方法に従って評価し、その結果を表2に示した。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例2の柔細胞繊維を含有する濾材は、圧力損失が低く、捕集効率が高かった。また、フィルター加工性も優れていた。比較例3のバクテリアセルロース繊維を含有する濾材は、捕集効率が低く、フィルター加工時に繊維の脱落が確認された。また、比較例3の濾材の焼却後の灰分が多く、抄紙時や加工時にバクテリアセルロース繊維が脱落している可能性が示唆された。
【0074】
比較例4の微小繊維状セルロース繊維を含有する濾材と比較例5の微小繊維状セルロース繊維を含有し、かつ抄紙時にバインダーを添加した濾材とを比較すると、比較例4の濾材は、焼却後の灰分が多く、加工性も捕集効率も低かった。つまり、バインダーを添加しないと、微小繊維状セルロース繊維の脱落が多くなると言える。これに対し、柔細胞繊維を含有する濾材である実施例2は、バインダーを添加しなくても、繊維の脱落が抑えられていた。比較例5の濾材は、バインダーを添加しているため、圧力損失が大きかった。比較例5の濾材と比較して、実施例2の濾材の捕集効率は優れていた。
【0075】
実施例3
[濾材の製造]
柔細胞繊維懸濁液Aとポリ−p−フェニレンテレフタルアミドを原料とした平均繊維径約0.4μmのフィブリル化有機繊維(商品名:KY−400S、ダイセル化学工業社製)、繊度0.55dtex(平均繊維径約7μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)、繊度2.2dtex(平均繊維径約14μm、繊維長5mm)のポリエステルバインダー繊維(商品名:メルテイ4080、ユニチカ社製)との固形分の質量比率が10:10:30:50になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0076】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0077】
実施例4
[濾材の製造]
柔細胞繊維懸濁液Aとポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(商品名:ケブラー、東レ・デュポン社製)を原料として平均繊維径約1.0μmになるように均質化装置(Gaulin社製15M−8TA)で処理したフィブリル化有機繊維、繊度0.55dtex(平均繊維径約7μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)、繊度2.2dtex(平均繊維径約14μm、繊維長5mm)のポリエステルバインダー繊維(商品名:メルテイ4080、ユニチカ社製)との固形分の質量比率が10:10:30:50になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0078】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0079】
実施例5
[濾材の製造]
柔細胞繊維懸濁液Aとポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(商品名:ケブラー)を原料として平均繊維径約5.0μmになるように均質化装置(Gaulin社製15M−8TA)で処理したフィブリル化有機繊維、繊度0.55dtex(平均繊維径約7μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)、繊度2.2dtex(平均繊維径約14μm、繊維長5mm)のポリエステルバインダー繊維(商品名:メルテイ4080、ユニチカ社製)との固形分の質量比率が10:20:20:50になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0080】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0081】
実施例6
[濾材の製造]
柔細胞繊維懸濁液Aとリヨセル繊維(繊度1.7dtex、繊維長4mm)を原料として平均繊維径約1.0μmになるように均質化装置(Gaulin社製15M−8TA)で処理したフィブリル化有機繊維、繊度0.55dtex(平均繊維径約7μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)、繊度2.2dtex(平均繊維径約14μm、繊維長5mm)のポリエステルバインダー繊維(商品名:メルテイ4080、ユニチカ社製)との固形分の質量比率が10:10:30:50になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0082】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0083】
実施例7
[濾材の製造]
柔細胞繊維懸濁液Aと繊度0.55dtex(平均繊維径約7μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)、繊度2.2dtex(平均繊維径約14μm、繊維長5mm)のポリエステルバインダー繊維(商品名:メルテイ4080、ユニチカ社製)との固形分の質量比率が20:30:50になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0084】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0085】
(比較例6)
バクテリアセルロース懸濁液Bとポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(商品名:ケブラー)を原料とした平均繊維径約0.4μmのフィブリル化有機繊維(KY−400S、ダイセル化学工業社製)、繊度0.55dtex(平均繊維径約7μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)、繊度2.2dtex(平均繊維径約14μm、繊維長5mm)のポリエステルバインダー繊維(商品名:メルテイ4080、ユニチカ社製)との固形分の質量比率が10:10:30:50になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0086】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0087】
(比較例7)
[濾材の製造]
微小繊維状セルロース懸濁液Cとポリ−p−フェニレンテレフタルアミドを原料とした平均繊維径約0.4μmのフィブリル化有機繊維(KY−400S、ダイセル化学工業社製)、繊度0.55dtex(平均繊維径約7μm、繊維長5mm)のポリエステル繊維(帝人社製)、繊度2.2dtex(平均繊維径約14μm、繊維長5mm)のポリエステルバインダー繊維(商品名:メルテイ4080、ユニチカ社製)との固形分の質量比率が10:10:30:50になるように混合して水性スラリーを作製した。
【0088】
乾燥質量70g/mに相当する水性スラリーを分取し、角型手抄き装置(金網80メッシュ、金網寸法25×25cm)でシートを抄紙した後、濡れた状態のシートをリンターパルプシートの間に挟み、シートプレス装置により、98N/cmの圧力で5分間プレスしてシート中の水分を減少させた後、1m/分で回転する表面温度120℃のシリンダードライヤーとフェルトの間にシートを挟んで乾燥させて濾材を得た。
【0089】
実施例3〜7および比較例6〜7の濾材について、上記の評価方法に従って評価し、その結果を表3に示した。
【0090】
【表3】

【0091】
実施例3〜6の柔細胞繊維と平均繊維径0.1μm〜5μmのフィブリル化有機繊維を混合した濾材は、捕集効率が高かった。また、焼却後の灰分が非常に少なく、今後益々問題視されている不燃ゴミを出さないため、環境問題に対応できるものであった。
【0092】
実施例7の濾材は、平均繊維径0.1μm〜5μmのフィブリル化有機繊維を配合しなかったため、加工時に繊維の脱落が確認された。また、実施例3〜6の濾材と比較して、捕集効率が若干低いものであった。また、比較例6、7の柔細胞繊維ではないセルロース繊維を配合した濾材は、実施例3〜7の濾材と比較して捕集効率は低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、半導体製造工業、医薬品製造工業、食品工業、病院などの分野で使用されるクリーンルーム用エアフィルタ、オフィスの空調、家庭用エアコンなどのフィルター用濾材、エンジンオイル、燃料、水処理、放電加工機、血液などの液体濾過用濾材に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の柔細胞から得られた繊維を含有する濾材。
【請求項2】
有機繊維および無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維と、植物の柔細胞から得られた繊維とを少なくとも含有する濾材。
【請求項3】
有機繊維および無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維の全量またはその一部が、平均繊維径0.1μm〜5μmの繊維である請求項2記載の濾材。

【公開番号】特開2008−652(P2008−652A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170589(P2006−170589)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】