説明

濾過システムおよびその運転方法

【課題】コストを抑えつつ処理水水質を維持する。
【解決手段】原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する濾過手段2に原水ライン3および処理水ライン4を接続し、前記原水ライン3には、不純物の除去に使用する薬剤の薬注手段として酸化剤添加手段11と凝集剤添加手段12とを接続した濾過システム1であって、前記薬剤が添加された原水または処理水の濁度または色度の水質検出手段13と、この水質検出手段13の検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記原水ライン3へ希釈水を供給する希釈水供給手段8とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原水中に含まれる非溶解物などの不純物を濾材によって除去する濾過システムおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原水中に含まれる非溶解物などの不純物を濾材によって除去する濾過システムとしては、原水中に含まれる非溶解物としての鉄分を除去する除鉄システムや、鉄,マンガンを除去する除鉄除マンガンシステムがあり、また原水中に含まれるゴミなどの非溶解物を除去する砂濾過システムなどがある(たとえば、特許文献1,2参照)。
【0003】
前記濾過システムは、原水中に含まれる非溶解物を濾材によって除去する濾過手段に原水ラインおよび処理水ラインを接続し、非溶解物の除去に使用する薬剤を添加した原水を前記原水ラインから前記濾過手段へ供給して、前記濾材によって非溶解物を捕捉して除去し、この水を前記処理水ラインから採取するようになっている。
【特許文献1】特開平9−239361号公報
【特許文献2】特開2003−265906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原水水質は常に一定であるとは限らず変動することがある。したがって、原水水質が悪化したとき、前記濾材によって非溶解物を除去しきれず、処理水側へ非溶解物が漏れて処理水水質が悪化するおそれがある。従来、原水水質の悪化を想定したり、安全率を考慮して濾材の量などを設定することもあるが、コストが必要以上に高くなっていた。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、コストを抑えつつ処理水水質を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する濾過手段に原水ラインおよび処理水ラインを接続し、前記原水ラインには、不純物の除去に使用する薬剤の薬注手段を接続した濾過システムであって、前記薬剤が添加された原水または処理水の濁度または色度の水質検出手段と、この水質検出手段の検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記原水ラインへ希釈水を供給する希釈水供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項2に記載の発明は、原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する濾過手段に原水ラインおよび処理水ラインを接続し、前記原水ラインには、不純物の除去に使用する薬剤の薬注手段を接続した濾過システムの運転方法であって、前記薬剤が添加された原水または処理水の濁度または色度を検出し、その検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記原水ラインへ希釈水を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、原水または処理水の濁度または色度の検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記原水ラインへ希釈水を供給することにより、原水が希釈されて原水中の不純物の濃度を低下させることができる。これにより、処理水水質を維持することができ、またこのようにして処理水水質を維持することができるので、原水水質の悪化を想定したり安全率を考慮して前記濾材の量などを設定する必要はなく、コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、この発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明に係る濾過システムの実施の形態の一例の構成を示す概略的な説明図である。
【0010】
図1に示す濾過システム1は、濾過手段2と、この濾過手段2へ原水を供給する原水ライン3と、前記濾過手段2からの処理水を採取する処理水ライン4とを備えている。
【0011】
前記濾過手段2は、非溶解物などの不純物として原水中に含まれる鉄分を除去する除鉄手段であり、前記濾過システム1は、除鉄システムである。そして、前記濾過手段2は、アンスラサイト,濾過砂などから形成された濾材層(図示省略)によって濾過を行う塔式の濾過部5と、コントロールバルブ6とを備えている。ここにおいて、前記濾過手段2は、前記濾材層中にマンガンゼオライトなどを加えることで、除マンガン能力を備えていてもよい。
【0012】
前記コントロールバルブ6には、前記原水ライン3と前記処理水ライン4とが接続されており、前記コントロールバルブ6を介して前記濾過部5へ供給された原水が濾過され、原水に含まれていた鉄分が除去され、この水が前記コントロールバルブ6を介して前記処理水ライン4へ流出するようになっている。
【0013】
前記原水ライン3には、原水供給ポンプ7が設けられている。この原水供給ポンプ7の上流側の前記原水ライン3には、希釈水供給手段8が接続されている。この希釈水供給手段8は、後述する水質検出手段13の検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、別系統からの上水や浄水などの希釈水を前記原水ライン3へ供給するようになっている。前記希釈水供給手段8は、前記原水供給ポンプ7の上流側の前記原水ライン3と接続された希釈水供給ライン9と、この希釈水供給ライン9に設けられた希釈水供給バルブ10とを備えている。
【0014】
また、前記原水供給ポンプ7の下流側の前記原水ライン3には、不純物の除去に使用する薬剤の薬注手段として、酸化剤添加手段11および凝集剤添加手段12が接続され、さらにこれらの下流側に前記水質検出手段13が接続されている。
【0015】
前記酸化剤添加手段11は、酸化剤供給ライン14を介して前記原水ライン3と接続された酸化剤貯留部15を備えている。この酸化剤貯留部15には、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムが貯留されており、この次亜塩素酸ナトリウムにより原水中に含まれる鉄分が酸化されて不溶性の水酸化第二鉄(Fe(OH))になり、この水酸化第二鉄が前記濾過手段2によって除去されるようになっている。
【0016】
前記次亜塩素酸ナトリウムは、前記酸化剤供給ライン14に設けられた酸化剤供給ポンプ16によって、前記原水ライン3へ添加されるようになっている。ここで、前記次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、原水水質が悪化したとき、後述するように、前記水質検出手段13によって原水の濁度または色度の上昇を検出できるように、安全側に設定されている。
【0017】
前記凝集剤添加手段12は、凝集剤供給ライン17を介して前記原水ライン3と接続された凝集剤貯留部18を備えている。この凝集剤貯留部18に貯留されている凝集剤は、前記凝集剤供給ライン17に設けられた凝集剤供給ポンプ19によって前記原水ライン3へ添加されるようになっている。
【0018】
前記水質検出手段13は、前記酸化剤添加手段11および前記凝集剤添加手段12によって酸化剤および凝集剤が添加された原水の濁度または色度を検出するものであり、試料液導入ライン20を介して前記原水ライン3と接続されている。前記水質検出手段13は、たとえば特願2005−347405号に記載された光学計測装置である。この光学計測装置は、その詳細構成については図示省略するが、測定セルに設けられた測定室内の試料液へ発光素子からの光を第一導光部を通じて照射するとともに、試料液からの光を第二導光部を通じて受光素子で検出する光学計測装置であって、前記測定セルに形成され、試料液を前記測定室へ導入し,あるいは前記測定室から導出する流路部と、前記測定セルに装着され、前記流路部を開閉する流通制御部と、前記測定セルと接続され、前記測定室と連通するフィルタ部とを備えて構成されている。このように構成することで、試料液の採取機構および前記各導光部における光透過窓を洗浄するための清浄液の生成機構が一体化されたコンパクトな光学計測装置を実現することができ、また清浄液の供給圧力を低下させることなく、ノズル洗浄を行うことのできる光学計測装置を実現することができるようになっている。そして、この結果、現場への取付けやメンテナンスなどを短時間で行うことができ、さらには前記光透過窓に付着した汚れ成分を効果的に除去して所定の測定結果を維持することができるようになっている。
【0019】
前記処理水ライン4の下流側には、水位センサ21を備えた処理水貯留部22が接続されている。この処理水貯留部22には、処理水配給ライン23が接続されている。
【0020】
前記原水供給ポンプ7,前記希釈水供給バルブ10,前記水質検出手段13,前記酸化剤供給ポンプ16,前記凝集剤供給ポンプ19および前記水位センサ21は、信号線24,24,…を介して制御手段25と接続されている。この制御手段25は、前記水質検出手段13および前記水位センサ21から前記信号線24を介して入力された信号に基づいて、前記希釈水供給バルブ10を開閉制御するようになっている。
【0021】
また、前記制御手段25は、前記水位センサ21から前記信号線24を介して入力された信号に基づいて、前記原水供給ポンプ7,前記酸化剤供給ポンプ16および前記凝集剤供給ポンプ19の作動を制御するようになっている。
【0022】
さて、前記濾過システム1では、前記水位センサ21により、前記処理水貯留部22内の水位が所定の給水開始水位以下となったことが検出されたとき、前記制御手段25によって、前記原水供給ポンプ7を作動させて所定の設定流量で前記濾過手段2へ原水を供給する。このとき、前記制御手段25は、前記酸化剤供給ポンプ16および前記凝集剤供給ポンプ19も作動させることにより、前記酸化剤貯留部15内の前記次亜塩素酸ナトリウムと前記凝集剤貯留部18内の前記凝集剤とを前記原水ライン3へそれぞれ添加し、また前記希釈水供給バルブ10を閉状態とする。
【0023】
前記原水ライン3へ前記次亜塩素酸ナトリウムを添加すると、原水中の鉄分が酸化されて不溶性の水酸化第二鉄となる。そして、前記凝集剤によって水酸化第二鉄が凝集した原水が、前記コントロールバルブ6を介して前記濾過部5へ流入すると、前記濾材層(図示省略)によって水酸化第二鉄が捕捉されて除去され、この水が前記コントロールバルブ6を介して前記処理水ライン4へ流出する。前記処理水ライン4へ流出した処理水は、前記処理水貯留部22に貯留される。
【0024】
前記濾過システム1の運転時には、前記水質検出手段13によって濁度または色度の検出を行い、その検出結果は前記信号線24を介して前記制御手段25へ入力される。そして、原水中に含まれる鉄分の濃度が高くなり、前記水質検出手段13の検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記制御手段25は、閉状態の前記希釈水供給バルブ10を開状態とし、前記希釈水供給ライン9から前記原水ライン3へ希釈水を供給する。
【0025】
前記処理水貯留部22内の水位が、所定の給水停止水位になると、前記制御手段25は前記原水供給ポンプ7を停止し、また前記希釈水供給バルブ10を開状態としていたときは、この希釈水供給バルブ10を閉状態とする。
【0026】
前記濾過システム1によれば、原水の濁度または色度の検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記原水ライン3へ希釈水を供給することにより、原水が希釈されて原水中の鉄分の濃度を低下させることができる。これにより、処理水水質を維持することができ、またこのようにして処理水水質を維持することができるので、原水水質の悪化を想定したり安全率を考慮して前記濾材の量などを設定する必要はなく、コストを抑えることができる。
【0027】
ここで、この実施形態の変形例について説明する。この実施形態において、前記濾過システム1は、前記濾過手段2を除鉄手段とした除鉄システムとなっているが、前記濾過システム1は、前記濾過手段2をゴミなどを除去する砂濾過手段とした砂濾過システムであってもよい。この場合、前記濾過部5は、アンスラサイト,濾過砂などから形成された濾材層(図示省略)によって濾過を行うよう構成される。
【0028】
この変形例では、前記凝集剤添加手段12によって添加された前記凝集剤により、原水中のゴミなどが凝集し、この凝集物が前記濾材層によって除去される。ここで、この砂濾過システムでは、前記原水中の鉄分を酸化させる必要はないので、前記酸化剤添加手段11を設ける必要はないが、前記濾過手段2へ供給される原水を次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤によって殺菌するために、前記酸化剤添加手段11の位置に、図示しないが、殺菌剤貯留部と殺菌剤供給ポンプと殺菌剤供給ラインとを備えた殺菌剤添加手段を設けてもよい。
【0029】
さて、この変形例では、原水中に含まれるゴミなどの非溶解物の濃度が高くなり、前記水質検出手段13の検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記制御手段25は、前記希釈水供給バルブ10を開状態にして前記希釈水供給ライン9から前記原水ライン3へ希釈水を供給する。
【0030】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、前記実施形態に限られるものでないことはもちろんである。たとえば、前記水質検出手段13は、前記処理水ライン4と接続されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に係る濾過システムの実施の形態の一例の構成を示す概略的な説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 濾過システム
2 濾過手段
3 原水ライン
4 処理水ライン
8 希釈水供給手段
11 酸化剤添加手段(薬注手段)
12 凝集剤添加手段(薬注手段)
13 水質検出手段
25 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する濾過手段に原水ラインおよび処理水ラインを接続し、前記原水ラインには、不純物の除去に使用する薬剤の薬注手段を接続した濾過システムであって、
前記薬剤が添加された原水または処理水の濁度または色度の水質検出手段と、この水質検出手段の検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記原水ラインへ希釈水を供給する希釈水供給手段とを備えたことを特徴とする濾過システム。
【請求項2】
原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する濾過手段に原水ラインおよび処理水ラインを接続し、前記原水ラインには、不純物の除去に使用する薬剤の薬注手段を接続した濾過システムの運転方法であって、
前記薬剤が添加された原水または処理水の濁度または色度を検出し、その検出値が所定濁度または所定色度を超えたとき、前記原水ラインへ希釈水を供給することを特徴とする濾過システムの運転方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−253024(P2007−253024A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78734(P2006−78734)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】