説明

濾過膜評価システム

【課題】3種類以上等、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質を用いる場合であっても、短時間で濾過膜の分画分子量を決定できる濾過膜評価システムを提供する。
【解決手段】複数の分子量標準物質を溶解してなる循環液を濾過するクロスフロー濾過装置1と、濾液と循環液をそれぞれクロスフロー濾過装置1からサンプリングし、濾液及び循環液のクロマトグラムを取得する液体クロマトグラフ2と、濾液及び循環液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質のピーク面積を解析し、濾液のピーク面積と循環液のピーク面積から分子量標準物質の阻止率を計算し、計算された複数の分子量標準物質の阻止率をプロットして濾過膜の分画分子量の決定可能にする解析装置3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過膜の評価方法を容易にする濾過膜評価システムに係り、特に限外濾過膜(UF膜)やナノ濾過膜(NF膜)の分離性能の指標としての分画分子量(MWCO:Molecular Weight Cut Off)が、簡単に決定できる濾過膜評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
「分画分子量(MWCO)」は、濾過膜が90%以上分離することのできる最小分子量として定義される。分画分子量の測定には、一般には分子量標準物質としてタンパクマーカーを使用して濾過装置で濾過するが、低分子になるほど高価である。更にタンパク質には荷電があるため、リン酸緩衝液等の調合が必要となる。そこで安価なポリエチレングリコール(PEG)を分子量標準物質として用いる。PEGの場合、純水、若しくは、イオン交換水に溶解させるだけで使用できる。
【0003】
分画分子量の決定は、液体クロマトグラフィーで求められたそれぞれの阻止率を、図8に示すような確率対数紙上でプロットして実施するので、両対数グラフ上に少なくとも3点以上プロットすることが好ましい。このため、通常、平均分子量の異なる3種類以上の分子量標準物質(マーカー)を用い、確率対数紙上で阻止率90%の分子量を算出し、NF膜の分離性能の指標とする。
【0004】
従来は、平均分子量の異なる3種類以上の分子量標準物質としてのPEGを用意し、それぞれ、1種類のPEG毎に、濾過装置に収納された被測定対象となる濾過膜を透過した濾液と循環液(原液)とをサンプリングし、液体クロマトグラフィーで濃度を測定し、その後、その濃度より阻止率を算出する。これを、平均分子量の異なる3種類以上のPEGについて直列的に順に測定し、求められた3種類以上のPEGの阻止率から、90%以上阻止する分子量を算出する(非特許文献1参照。)。
例えば、4種類のサンプルを得る場合、即ち、第1分子量標準物質として平均分子量7500のPEG6000(和光純薬製)を、第2分子量標準物質として平均分子量3000のPEG4000(和光純薬製)を、第3分子量標準物質として平均分子量1000のPEG1000(和光純薬製)を、第4分子量標準物質として平均分子量200のPEG200(和光純薬製)をそれぞれ用意し、これらの4種類の分子量標準物質を直列的に個別に濾過して濾過膜を評価する場合は、従来は、次のような直列的な手順になる。
【0005】
(イ)先ず、第1分子量標準物質のPEG6000から始めるとする。PEG6000の全循環濾過を開始して30分後に、PEG6000の濾液と循環液とをサンプリングし、液体クロマトグラフィーで濃度を測定する。「全循環濾過」は、濾液をタンクに戻しながら、濃度一定の条件で濾過を行う。
【0006】
(ロ)次に、第2分子量標準物質としてのPEG4000の濾過を行うが、その前に、濾過装置、被測定対象となる濾過膜を洗浄してPEG6000を除去する。タンクに純水を供給して、約30分間循環させ、その30分間の内の最後の10分間は全循環濾過を行いながら洗浄を行う。その後、一旦、洗浄液を抜き出し、新たな純水をタンクに供給する。再度、循環、全循環を行い、その循環液、濾液をサンプリングする。
【0007】
(ハ)この洗浄後の純水のサンプリング液を、液体クロマトグラフィーにかけ、ピークが発現しないこと、即ち濾過装置内にPEG6000が残存していないことを確認して水洗処理の確認をする。
【0008】
(ニ)濾過装置内に第1分子量標準物質のPEG6000が残存していないことを確認されたら、第2分子量標準物質としてのPEG4000の濾過を行い、上記(イ)〜(ハ)の手順と同様な処理を行う。
【0009】
(ホ)濾過装置内に第2分子量標準物質のPEG4000が残存していないことを確認されたら、第3分子量標準物質としてのPEG1000の濾過を行い、上記(イ)〜(ハ)の手順と同様な処理を行う。
【0010】
(ヘ)濾過装置内に第3分子量標準物質のPEG1000が残存していないことを確認されたら、第4分子量標準物質としてのPEG200の濾過を行い、上記(イ)〜(ハ)の手順と同様な処理を行う。
【0011】
このような従来の濾過膜の評価方法で、4種類の分子量標準物質を直列的に個別に濾過して4種類のサンプルを得る場合に必要な評価時間は、表1に示すように、260分=4時間20分となる:
【表1】

【0012】
なお、上記の水洗処理の確認は、一旦確認が取れているならば、液体クロマトグラフィーによる分析行為については、別途行っても構わない。表1から分かるように、1種類の分子量標準物質の濾液と循環液を採取するのに約1時間必要なので、従来の濾過膜の評価方法によれば、1本の濾過膜の直列的な3種類の分子量標準物質の測定には約3時間強、直列的な4種類の分子量標準物質の測定には約4時間強、掛かることとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】▲セン▼高白他1名、「分子サイズによる限外濾過阻止特性の評価」、化学工学論文集、第19巻、第6号、1993年、p.1105−1112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、3種類以上等、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質を用いる場合であっても、短時間で濾過膜の分画分子量を決定できる濾過膜評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の態様は(イ)分子量の異なる複数の分子量標準物質を溶媒に同時に溶解してなる循環液を循環し、循環液を濾過膜を用いてクロスフロー濾過するクロスフロー濾過装置と、(ロ)濾過膜を透過した濾液と循環液をそれぞれクロスフロー濾過装置からサンプリングし、サンプリングされた濾液と循環液から、横軸上に複数の分子量標準物質に対応した複数のピークが並列した濾液のクロマトグラムと、横軸上に複数の分子量標準物質に対応した複数のピークが並列した循環液のクロマトグラムを取得する液体クロマトグラフと、(ハ)濾液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質に対応するそれぞれのピーク面積を解析し、循環液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質に対応するそれぞれのピーク面積を解析し、濾液のクロマトグラムから求められたそれぞれのピーク面積と、循環液のクロマトグラムからから求められたそれぞれのピーク面積から、複数の分子量標準物質の阻止率を、複数の分子量標準物質毎に、それぞれ計算し、計算された複数の分子量標準物質の阻止率を、確率対数グラフ上にプロットして表示し、濾過膜の分画分子量の決定可能にする解析装置とを備えることを特徴とする濾過膜評価システムであることを要旨とする。
【0016】
なお、本発明の態様で述べた解析装置が濾過膜の評価方法を実現するためのプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存し、この記録媒体をコンピュータシステムによって読み込ませることにより、濾過膜の評価方法の一部を自動化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質の数をn個(nは2以上の正の整数)として、n個の分子量標準物質を個別に直列的に測定した場合と同一の評価結果を、1/nの評価時間で評価可能な濾過膜評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る濾過膜評価システムの論理的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る濾過膜評価システムを構成するクロスフロー濾過装置の概略を説明する模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る濾過膜の評価方法を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の被測定対象(濾過膜)の一例の構造の概略を示す模式的な鳥瞰図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る濾過膜評価システムにおいて、液体クロマトグラフが測定した循環液のクロマトグラムの一例を示す図である。第1分子量標準物質としてのPEG6000、第2分子量標準物質としてのPEG4000を、第3分子量標準物質としてのPEG1000を、第4分子量標準物質としてのPEG200の組み合わせを選択した場合、クロマトグラムのピークが重ならないことを示す。
【図6】PEG6000、PEG4000、PEG1000、PEG400、PEG200の組み合わせでは、クロマトグラムのピークが重なってしまうのでの阻止率が算出できないことを説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る濾過膜評価システムにおいて、液体クロマトグラフが測定した濾液のクロマトグラムの一例を示す図である。
【図8】分画分子量を決定するために、液体クロマトグラフィーで求められた4点の阻止率データをプロットした確率対数紙を説明する模式図である。
【図9】図9(a)は、従来の濾過膜の評価方法において単独で測定された、PEG6000の循環液のクロマトグラムとそのピーク面積Ab1を、図9(b)は、単独で測定された、PEG6000の濾液のクロマトグラムとそのピーク面積Ap1を示す図である。
【図10】図10(a)は、従来の濾過膜の評価方法において単独で測定された、PEG4000の循環液のクロマトグラムとそのピーク面積Ab2を、図10(b)は、単独で測定された、PEG4000の濾液のクロマトグラムとそのピーク面積Ap2を示す図である。
【図11】図11(a)は、従来の濾過膜の評価方法において単独で測定された、PEG1000の循環液のクロマトグラムとそのピーク面積Ab3を、図11(b)は、単独で測定された、PEG1000の濾液のクロマトグラムとそのピーク面積Ap3を示す図である。
【図12】図12(a)は、従来の濾過膜の評価方法において単独で測定された、PEG200の循環液のクロマトグラムとそのピーク面積Ab4を、図12(b)は、単独で測定された、PEG200の濾液のクロマトグラムとそのピーク面積Ap4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
又、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0021】
(本発明の実施の形態)
本発明の実施の形態に係る濾過膜評価システムは、図1に示すように、被測定対象となる濾過膜を収納してクロスフロー濾過するクロスフロー濾過装置1、このクロスフロー濾過装置1に収納された濾過膜を透過した濾液と循環液(原液)とをサンプリングし、濃度を測定する液体クロマトグラフ2、及びクロスフロー濾過装置1及び液体クロマトグラフ2を制御し、且つ、濾過膜の分離性能を解析して濾過膜の分画分子量を決定する解析装置3とを備える。
【0022】
本発明の実施の形態に係る濾過膜評価システムにおいては、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質を従来のように、直列的に順に濾過して分離性能を算出するためのサンプル液を採取するのではなく、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質をすべて溶媒に溶解した循環液(原液)を作成して、複数の分子量標準物質をクロスフロー濾過装置1で同時に(並列的に)濾過し、濾過膜を透過した濾液と循環液(原液)とをサンプリングし、液体クロマトグラフ2でそれぞれの濃度を測定する。
【0023】
分画分子量の決定においては、確率対数グラフ上に複数の分子量標準物質の点(好ましくは、少なくとも3点以上の点)をプロットすることが好ましいことは既に述べたとおりである。液体クロマトグラフ2で測定する時、これらの複数の分子量標準物質に対応するクロマトグラムのピークが重ならないように留意すべきである。例えば、4種類のサンプルを得る場合、第1分子量標準物質としてのPEG6000、第2分子量標準物質としてのPEG4000を、第3分子量標準物質としてのPEG1000を、第4分子量標準物質としてのPEG200の組み合わせを選択した液体クロマトグラフィーでは、リテンションタイム(ピークが発現する時間)が大きく違うため、図5に示すように、ピークが重ならないので、これらの4種類の分子量標準物質を混合して同時にクロマトグラムを測定しても差し支えない。クロマトグラムのピークは分子量が大きいものから出現するので、図5で左から順にPEG6000、PEG4000、PEG1000、PEG200のピークとなる。しかし、例えば、図6に示すように、PEG6000、PEG4000、PEG1000、PEG400、PEG200の組み合わせでは、クロマトグラムのピークが重なってしまい、それ故に解析装置3が各PEGの阻止率が算出できず、分画分子量も算出できないことになる。このため、分画分子量1000が想定される場合は、PEG200、PEG1000、PEG4000の組み合わせでPEG3種類を混合し、分画分子量3000が想定される場合は、PEG1000、PEG4000、PEG6000の組み合わせでPEG3種類を混合する等、液体クロマトグラフ2で測定する時、クロマトグラムのピークが重ならないように分子量標準物質の組み合わせを検討する必要がある。実液での濾過条件が異なるとしても、液体クロマトグラフ2へのサンプルをクロスフロー濾過装置1から採取する条件(濾過圧力、濾過温度、線速)を同じにして、違う膜の阻止率を算出することで、膜間の分離性能の違いを正等に評価することができる。
【0024】
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る濾過膜評価システムを構成するクロスフロー濾過装置1は、被測定対象(濾過膜)11と、被測定対象11の上流側に接続された上流側配管15b、被測定対象11の下流側に接続された循環液配管15c、被測定対象11の下流側から分岐した濾液配管15e、上流側配管15bに接続されたポンプ12、ポンプ12に接続された供給配管15a、供給配管15aに接続された循環タンク13、循環液配管15cに接続された熱交換器14、熱交換器14に接続され、循環液(原液)を循環タンク13に戻すリターン配管15dを備える。
【0025】
本発明の被測定対象(濾過膜)11は、図4に示すように直径10〜50mmΦ、長さが300mm〜2000mmの円柱形状の多孔質基材111を基礎としており、多孔質基材111の長手に直交する方向の断面はレンコン状に複数個の流路113が形成されたモノリス形状である(但し、図4は被測定対象11の一例であり、レンコン状の構造に限定される必要はない。)。例えば、直径30mmΦ、長さが1000mmの円柱形状の場合、直径3mmΦの円筒状の穴が流路113として37個貫通する構造を構成することが可能であるが、流路113の数は37個に限定されるものではない。又、流路113は、六角断面や四角形断面を有するような任意の形状に形成しても良い。図4の左側に示した入口側端面近傍、及び図4の右側に示した出口側端面近傍の多孔質基材111の周りには、釉薬シール112が接続用カラー部として円環状に設けられている。図2において、図示を省略した濾過膜収納ケースに、被測定対象(濾過膜)11を収納する際には、入口側端面近傍及び出口側端面近傍の釉薬シール(接続用カラー部)112にO−リングを設けて、濾過膜収納ケースに対し密閉構造を実現すれば良い(図2は模式的な図であるので、詳細な濾過膜収納ケースの図示を省略している。)。
【0026】
レンコン状に設けられた複数個の流路113の内、隣接する2つの流路113の間が濾過膜11の隔壁になる。図4に示すような被測定対象(濾過膜)11の構造によれば、例えば、分子量の異なる複数の分子量標準物質を溶媒(純水)に溶解して用意した循環液(原液)を図4の左側に示した入口側端面から流路113に導入すると、その循環液(原液)が、流路113内壁に形成されたUF膜やNF膜、或いはUF膜とNF膜との積層膜において分離され、多孔質の隔壁を透過して被測定対象(濾過膜)11の最外壁から排出されるため、分子量の異なる複数の分子量標準物質を分離することができる。濾過膜11の基材本体となる多孔質基材111は、押し出し成形等により多孔質材料からなる円柱形状のモノリス型フィルターエレメントとして形成され、多孔質材料としては、耐食性と温度変化による濾過部の細孔径の変化が少ない点や充分な強度が得られる点から、例えば、アルミナを用いることができる。しかし、アルミナ以外にコーディエライト、ムライト、炭化珪素等のセラミックス材料を使用することもできる。
【0027】
したがって、実際には、被測定対象11を、濾過膜収納ケースにO−リング等で密閉して収納し、図2に示すように、上流側配管15b、循環液配管15c、濾液配管15eはこの濾過膜収納ケースに接続されるようにすれば良い。上流側配管15bには、流量計F1,上流側圧力計P1が接続され、循環液配管15cには、温度計T2,下流側圧力計P2が接続される。上流側圧力計P1と下流側圧力計P2との圧力差を一定にすれば、膜透過流速を一定に制御できる。
【0028】
図2に示すように、濾液配管15eにはストップバルブ21aが接続され、ストップバルブ21aにはサンプリング配管22aが接続され、サンプリング配管22aにはストップバルブ23aが接続され、ストップバルブ23aは、それぞれ液体クロマトグラフ2の濾液用の第1移動相容器(図示省略)に導かれる導入配管に接続されている。ストップバルブ21a及びストップバルブ23aを開放すれば、濾過膜11を透過した濾液を濾液配管15e、ストップバルブ21a、サンプリング配管22a、ストップバルブ23aを介して液体クロマトグラフ2の濾液用の第1移動相容器に導入することができる。一方、循環液配管15cには、ストップバルブ21bが接続され、ストップバルブ21bにはサンプリング配管22bが接続され、サンプリング配管22bにはストップバルブ23bが接続され、ストップバルブ23bは、液体クロマトグラフ2の循環液用の第2移動相容器(図示省略)に導かれる導入配管に接続されている。ストップバルブ21b及びストップバルブ23bを開放すれば、循環液(原液)を循環液配管15c、ストップバルブ21b、サンプリング配管22b、ストップバルブ23bを介して、液体クロマトグラフ2の循環液用の第2移動相容器に導入することができる。
【0029】
図1に示すように、解析装置3は、入出力インターフェイス31を備え、入出力インターフェイス31を介して、クロスフロー濾過装置1及び液体クロマトグラフ2を制御し、液体クロマトグラフ2から濾液と循環液(原液)のクロマトグラムを受信する。解析装置3は、更に、ピーク面積解析手段321、阻止率計算手段322、阻止率プロット手段323、サンプリング制御手段324及び液体クロマトグラフ制御手段325を論理構造として有するCPU(演算処理部)32を備える。サンプリング制御手段324は、入出力インターフェイス31を介して図2に示したストップバルブ21a、ストップバルブ23a、ストップバルブ21b及びストップバルブ23bを制御する。そして、サンプリング制御手段324は、濾過膜を透過した濾液を所定時間経過後、濾液配管15e、ストップバルブ21a、サンプリング配管22a、ストップバルブ23aを介しサンプリングし液体クロマトグラフ2の濾液用の第1移動相容器に取り込ませるように制御する。又、サンプリング制御手段324は循環液(原液)を所定時間経過後、循環液配管15c、ストップバルブ21b、サンプリング配管22b、ストップバルブ23bを介しサンプリングし、液体クロマトグラフ2の循環液用の第2移動相容器に取り込ませるように制御する。
【0030】
CPU32が論理構造として有する液体クロマトグラフ制御手段325は、入出力インターフェイス31を介して液体クロマトグラフ2を制御する。例えば、液体クロマトグラフ制御手段325は、液体クロマトグラフ2の送液ポンプを駆動し、液体クロマトグラフ2の第2移動相容器から液体クロマトグラフ2の分析カラムに循環液を送り、図5に示すような循環液のクロマトグラムを取得する。又、液体クロマトグラフ制御手段325は液体クロマトグラフ2の送液ポンプを駆動し、液体クロマトグラフ2の第1移動相容器から分析カラムに濾液を送り、濾液のクロマトグラムを取得する。図7に濾液の濾液のクロマトグラムを示す。ピークは分子量が大きいものから出現するので、図7で左から順にPEG6000、PEG4000、PEG1000、PEG200のピークとなる。
【0031】
CPU32が論理構造として有するピーク面積解析手段321は、循環液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質(PEG6000、PEG4000、PEG1000及びPEG200)に対応するそれぞれのピーク面積Abi(i=1〜k:kは一般的には2以上の正の整数であるが、以下の例では便宜上k=4として説明する。)を解析する。図5には、循環液のPEG1000のピーク面積Ab3を斜線で示しているが、ピーク面積の定義をわかりやすく説明するための便宜上のハッチングであり、他の循環液のPEG6000、PEG4000及びPEG200のピーク面積Ab1,Ab2及びAb4も同様に定義される。図5の循環液の各ピーク面積はAb1=219.37mV・sec、Ab2=268.32mV・sec、Ab3=249.03mV・sec、Ab4=212.67mV・secとなる。ピーク面積解析手段321は、更に、濾液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質(PEG6000、PEG4000、PEG1000及びPEG200)に対応するそれぞれのピーク面積Api(i=1〜4)を解析する。図7には、濾液のPEG1000のピーク面積Ap3を斜線で示しているが、ピーク面積の定義をわかりやすく説明するための便宜上のハッチングであり、他の濾液のPEG6000、PEG4000及びPEG200のピーク面積Ap1,Ap2及びAp4も同様に定義される。図7の濾液の各ピーク面積はAp1=4.4mV・sec、Ap2=29.87mV・sec、Ap3=116.18mV・sec、Ap4=202.03mV・secとなる。
【0032】
CPU32が論理構造として有する阻止率計算手段322は、濾液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Api、及び循環液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Abiから、複数の分子量標準物質の阻止率Robsiをそれぞれ計算する:
obsi=(1−Api/Abi)×100(i=1〜4)…(1)
各PEGのピーク面積Api,Abiより、PEG6000、4000、1000、200の膜での阻止率Robsi(i=1〜4)は、Robs1=98%、Robs2=89%、Robs3=53%、Robs4=5%となる。CPU32が論理構造として有する阻止率プロット手段323は、複数の分子量標準物質の阻止率Robsi(i=1〜4)を図8に示すように、確率対数グラフ上にプロットする。図8の確率対数紙上のプロットから、最小二乗法により、90%阻止の分子量(MW)を逆算すると、図8の場合、分画分子量(MWCO)は3000となる。なお、図示を省略しているが、確率対数紙上のプロットから、最小二乗法により、90%阻止の分子量(MW)を逆算する分画分子量決定手段をCPU32が論理構造として有するようにし、自動的に分画分子量を決定するようにしても良い。
【0033】
解析装置3は、更に、液体クロマトグラフ2の検出器が検出した濾液及び循環液のクロマトグラムを格納するクロマトグラム記憶装置33、ピーク面積解析手段321が解析した濾液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Api、及び循環液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Abiを分子量標準物質毎に格納する面積記憶装置34、阻止率計算手段322が計算した複数の分子量標準物質のそれぞれの阻止率Robsiを分子量標準物質毎に格納する阻止率記憶装置35を備える。このため、CPU32が備えるピーク面積解析手段321は、クロマトグラム記憶装置33に格納された濾液のクロマトグラムを読み出し、読み出した濾液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質(PEG6000、PEG4000、PEG1000及びPEG200)に対応するそれぞれのピーク面積Api(i=1〜4)を解析し、解析結果である濾液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Apiを、面積記憶装置34に格納する。ピーク面積解析手段321は、更に、クロマトグラム記憶装置33に格納された循環液のクロマトグラムを読み出し、読み出した循環液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質(PEG6000、PEG4000、PEG1000及びPEG200)に対応するそれぞれのピーク面積Abi(i=1〜4)を解析し、解析結果である循環液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Abiを、面積記憶装置34に格納する。又、CPU32が備える阻止率計算手段322は、面積記憶装置34に格納された濾液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Api、及び循環液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Abiを読み出し、複数の分子量標準物質の阻止率Robsiをそれぞれ計算し、計算結果である分子量標準物質の阻止率Robsiを阻止率記憶装置35に格納する。CPU32が備える阻止率プロット手段323は、阻止率記憶装置35に格納された複数の分子量標準物質の阻止率Robsi(i=1〜4)を読み出し、図8に示す確率対数グラフ上にプロットする。
【0034】
図1に示すように、本発明の解析装置3は、操作者からのデータや命令などの入力を受け付ける入力装置37と、解析結果等を出力する出力装置38及び表示装置39と、濾過膜の分離性能の解析に必要な所定のデータなどを格納したデータ記憶装置(図示省略)と、濾過膜分離性能解析プログラムなどを格納したプログラム記憶装置(図示省略)とを含む。阻止率プロット手段323は、図8に示す確率対数グラフを、表示装置39の画面上に表示させる。する。入力装置37、出力装置38及び表示装置39は、入出力インターフェイス36を介して、CPU32とデータを送受信する。図1において、入力装置37はキーボード、マウス、ライトペン又はフレキシブルディスク装置などで構成される。入力装置37より解析実行者は、入出力データを指定したり、許容誤差の値及び誤差の程度を設定できる。更に、入力装置37より出力データの形態等の解析パラメータを設定することも可能で、又、演算の実行や中止等の指示の入力も可能である。又出力装置38及び表示装置39は、それぞれプリンタ装置及びディスプレイ装置等により構成されている。表示装置39は入出力データや解析結果や解析パラメータ等を表示する。データ記憶装置(図示省略)は入出力データや解析パラメータ及びその履歴や演算途中のデータ等を記憶する。
【0035】
(濾過膜の評価方法)
図3のフローチャートを用いて、本発明の実施の形態に係る濾過膜の評価方法を説明する。なお、以下に述べる濾過膜の評価方法は、一例であり、本発明の技術的思想に含まれる限り、この変形例を含めて、これ以外の種々の手順により、実現可能であることは勿論である。
【0036】
(イ)先ず、ステップS101において、分子量の異なる複数の分子量標準物質を溶媒としての純水に溶解し循環液(原液)を作成する。具体的には、PEG6000、PEG4000、PEG1000及びPEG200を、200〜500ppmの濃度になるように純水に溶解させる。純水は0.1MΩ以上の抵抗値の水であれば良い。そして、図2に示したクロスフロー濾過装置1を用い、ステップS102において、温度計T2を用いて循環液の温度を15〜30℃に制御し、上流側圧力計P1と下流側圧力計P2との圧力差0.1〜1MPaの濾過条件で濾過膜11のクロスフロー濾過をする。例えば、循環液を20℃、上流側圧力計P1と下流側圧力計P2との圧力差0.1MPaの濾過条件でクロスフロー濾過をする。この時、流量計F1を用いて、線速が2m/sec以上になるように制御する。線速が遅いと、濾過膜11の膜面にPEG層が堆積されてしまい、PEG層による阻止率となってしまうため、線速を高くすることで、濾過膜11の膜面への堆積を防ぎ、濾過膜11の膜自身の阻止率が測れる様にする。線速の上限は特にないが現実的な見地からは4m/sec程度以上は必要ない。例えば、線速を3m/secに制御してクロスフロー濾過をすれば良い。濾過膜11を透過した濾液は図2に示したように濾液配管15eを介して循環タンク13に戻るようにし、濾過を行っている最中でも濃縮が進行しないようにする。
【0037】
(ロ)ステップS102のクロスフロー濾過開始後、所定時間経過後、解析装置3のCPU32が備えるサンプリング制御手段324は、ステップS103において、入出力インターフェイス31を介してストップバルブ21a、ストップバルブ23a、ストップバルブ21b及びストップバルブ23bを開放し、濾過膜11を透過した濾液を濾液配管15e、ストップバルブ21a、サンプリング配管22a、ストップバルブ23aを介し、循環液(原液)を循環液配管15c、ストップバルブ21b、サンプリング配管22b、ストップバルブ23bを介し、それぞれサンプリングし、それぞれ液体クロマトグラフ2の濾液用の第1移動相容器(図示省略)及び循環液用の第2移動相容器(図示省略)に取り込む。解析装置3のCPU32が備える液体クロマトグラフ制御手段325は、ステップS104において、入出力インターフェイス31を介して液体クロマトグラフ2の送液ポンプ(図示省略)を駆動し、第1移動相容器から分析カラム(図示省略)に濾液を送り、濾液のクロマトグラムを取得する。
【0038】
(ハ)解析装置3は、更に、ステップS105において、液体クロマトグラフ2の検出器が検出した濾液のクロマトグラムを入出力インターフェイス31を介して取り込み、クロマトグラム記憶装置33に格納する。液体クロマトグラフ制御手段325は、更にステップS106において、入出力インターフェイス31を介して液体クロマトグラフ2の送液ポンプを駆動し、第2移動相容器から分析カラムに循環液を送り、循環液のクロマトグラムを取得する。解析装置3は、ステップS107において、液体クロマトグラフ2の検出器が検出した循環液のクロマトグラムを入出力インターフェイス31を介して取り込み、クロマトグラム記憶装置33に格納する。
【0039】
(ニ)ステップS108において、解析装置3のCPU32が備えるピーク面積解析手段321は、クロマトグラム記憶装置33に格納された濾液のクロマトグラムを読み出し、読み出した濾液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質(PEG6000、PEG4000、PEG1000及びPEG200)に対応するそれぞれのピーク面積Api(i=1〜4)を解析する。
【0040】
(ホ)ピーク面積解析手段321は、ステップS109において、濾液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Apiを、面積記憶装置34に格納する。ピーク面積解析手段321は、更に、ステップS110において、クロマトグラム記憶装置33に格納された循環液のクロマトグラムを読み出し、読み出した循環液のクロマトグラムから複数の分子量標準物質(PEG6000、PEG4000、PEG1000及びPEG200)に対応するそれぞれのピーク面積Abi(i=1〜4)を解析する。ピーク面積解析手段321は、ステップS112において、循環液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Abiを、面積記憶装置34に格納する。
【0041】
(ヘ)解析装置3のCPU32が備える阻止率計算手段322は、ステップS113において、面積記憶装置34に格納された濾液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Api、及び循環液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積Abiを読み出し、複数の分子量標準物質の阻止率Robsiをそれぞれ計算する。阻止率計算手段322は、計算結果である分子量標準物質の阻止率Robsiを阻止率記憶装置35に格納する。
【0042】
(ト)更に、解析装置3のCPU32が備える阻止率プロット手段323は、ステップS114において、阻止率記憶装置35に格納された複数の分子量標準物質の阻止率Robsi(i=1〜4)を読み出し、複数の分子量標準物質の阻止率Robsi(i=1〜4)を図8に示すように、確率対数グラフ上にプロットして、表示装置39の画面上に表示する。図8の確率対数紙上のプロットから、最小二乗法により、90%阻止の分子量(MW)を逆算する。図8の場合、分画分子量(MWCO)は3000となる。
【0043】
本発明の実施の形態に係る濾過膜の評価方法によれば、第1分子量標準物質としてのPEG6000、第2分子量標準物質としてのPEG4000を、第3分子量標準物質としてのPEG1000を、第4分子量標準物質としてのPEG200の組み合わせを選択して混合しているので:
混合液サンプリング及びクロマトグラフィー測定 :30分間
水洗 :30分間
水洗を確認するためのサンプリング及びクロマトグラフィー測定:5分間
の合計65分間で済み、従来の濾過膜の評価方法で4種類の分子量標準物質を直列的に個別に濾過して4種類のサンプルを得る場合に必要な評価時間の260分=4時間20分に比し、1/4の評価時間に短縮できる。この評価時間には、分子量標準物質を溶解させる時間は含まないが、4種の分子量標準物質を同時に溶解させた方が、1種類毎に分子量標準物質を溶解させるより、評価時間は短くて済む。
【0044】
図9〜図12は、従来の濾過膜の評価方法に従い、第1分子量標準物質としてのPEG6000、第2分子量標準物質としてのPEG4000を、第3分子量標準物質としてのPEG1000を、第4分子量標準物質としてのPEG200を直列的に個別に濾過して4種類のサンプルを得る場合のクロマトグラムを示す。即ち、図9(a)は、単独で測定された、PEG6000の循環液のクロマトグラムとそのピーク面積Ab1を、図9(b)は、単独で測定された、PEG6000の濾液のクロマトグラムとそのピーク面積Ap1を示す。図10(a)は、単独で測定された、PEG4000の循環液のクロマトグラムとそのピーク面積Ab2を、図10(b)は、単独で測定された、PEG4000の濾液のクロマトグラムとそのピーク面積Ap2を示す。図11(a)は、単独で測定された、PEG1000の循環液のクロマトグラムとそのピーク面積Ab3を、図11(b)は、単独で測定された、PEG1000の濾液のクロマトグラムとそのピーク面積Ap3を示す。図12(a)は、単独で測定された、PEG200の循環液のクロマトグラムとそのピーク面積Ab4を、図12(b)は、単独で測定された、PEG200の濾液のクロマトグラムとそのピーク面積Ap4を示す。
【0045】
本発明の濾過膜の評価方法に従い、PEG6000、PEG4000、PEG1000、PEG200を並列的に同時に濾過した場合の循環液のピーク面積Abi、濾液のピーク面積Api及び阻止率Robsiを表2に示す:
【表2】

【0046】
一方、従来の濾過膜の評価方法に従い、PEG6000、PEG4000、PEG1000、PEG200を直列的に個別に濾過した場合の循環液のピーク面積Abi、濾液のピーク面積Apiを及び阻止率Robsiを表3に示す:
【表3】

【0047】
表2及び表3において、液体クロマトグラフィーには東ソー製HLC−8220、分析カラムには東ソー製TSKgel Super AW3000、AW2500を用いて分析を行った。表2及び表3の比較から、個別に直列的に測定しても、混合して並列的に測定しても分析結果に違いは出ないことが分かるので、同一の評価結果を1/4の評価時間で可能であるという、顕著な効果が示されたことになる。このことは、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質の数を3とすれば、3個の分子量標準物質を個別に直列的に測定した場合と同一の評価結果を、1/3の評価時間で評価可能であるということであり、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質の数を5とすれば、5個の分子量標準物質を個別に直列的に測定した場合と同一の評価結果を、1/5の評価時間で評価可能であるということである。
【0048】
即ち、より一般的に言えば、本発明の濾過膜の評価方法によれば、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質の数をn個(nは2以上の正の整数)とすれば、n個の分子量標準物質を個別に直列的に測定した場合と同一の評価結果を、1/nの評価時間で評価可能であるという、顕著な効果を奏することができる。
【0049】
(濾過膜評価プログラム)
図3に示した一連の濾過膜評価の操作は、図3と等価なアルゴリズムのプログラムにより、図1に示した濾過膜評価システムを制御して実行できる。この濾過膜評価プログラムは、本発明の濾過膜評価システムを構成するコンピュータシステムのプログラム記憶装置(図示省略)に記憶させれば良い。又、この濾過膜評価プログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存し、この記録媒体を濾過膜評価システムのプログラム記憶装置に読み込ませることにより、本発明の一連の濾過膜評価の操作を実行することができる。ここで、「コンピュータ読取り可能な記録媒体」とは、例えばコンピュータの外部メモリ装置、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのプログラムを記録することができるような媒体などを意味する。具体的には、フレキシブルディスク、CD−ROM,MOディスク、カセットテープ、オープンリールテープなどが「コンピュータ読取り可能な記録媒体」に含まれる。例えば、濾過膜評価システムを構成する解析装置3の本体は、フレキシブルディスク装置(フレキシブルディスクドライブ)及び光ディスク装置(光ディスクドライブ)を内蔵若しくは外部接続するように構成できる。フレキシブルディスクドライブに対してはフレキシブルディスクを、又光ディスクドライブに対してはCD−ROMをその挿入口から挿入し、所定の読み出し操作を行うことにより、これらの記録媒体に格納されたプログラムを解析装置3を構成するプログラム記憶装置にインストールすることができる。又、所定のドライブ装置を接続することにより、例えばメモリ装置としてのROMや、磁気テープ装置としてのカセットテープを用いることもできる。更に、インターネット等の情報処理ネットワークを介して、このプログラムをプログラム記憶装置に格納することが可能である。
【0050】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0051】
例えば、上記の実施の形態の説明においては、分子量標準物質としてPEGを用いる例を示したが、分子量標準物質はPEGに限定されるものではなく、デキストラン等他の分子量標準物質を採用しても、平均分子量の異なる複数の分子量標準物質の数をn個(nは2以上の正の整数)として、n個の分子量標準物質を個別に直列的に測定した場合と同一の評価結果を、1/nの評価時間で評価可能であるという、顕著な効果を奏することができることは、上記の説明から本発明の技術的思想を把握すれば、容易に理解できるであろう。
【0052】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0053】
1…クロスフロー濾過装置
2…液体クロマトグラフ
3…解析装置
11…濾過膜(被測定対象)
12…ポンプ
13…循環タンク
14…熱交換器
15a…供給配管
15b…上流側配管
15c…循環液配管
15d…リターン配管
15e…濾液配管
21a,21b,23a,23b…ストップバルブ
22a,22b…サンプリング配管
31,36…入出力インターフェイス
32…CPU
33…クロマトグラム記憶装置
34…面積記憶装置
35…阻止率記憶装置
37…入力装置
38…出力装置
39…表示装置
111…多孔質基材
112…釉薬シール
113…流路
321…ピーク面積解析手段
322…阻止率計算手段
323…阻止率プロット手段
324…サンプリング制御手段
325…液体クロマトグラフ制御手段
F1…流量計
T2…温度計
P1…上流側圧力計
P2…下流側圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量の異なる複数の分子量標準物質を溶媒に同時に溶解してなる循環液を循環し、前記循環液を濾過膜を用いてクロスフロー濾過するクロスフロー濾過装置と、
前記濾過膜を透過した濾液と前記循環液をそれぞれ前記クロスフロー濾過装置からサンプリングし、サンプリングされた前記濾液と前記循環液から、横軸上に前記複数の分子量標準物質に対応した複数のピークが並列した前記濾液のクロマトグラムと、横軸上に前記複数の分子量標準物質に対応した複数のピークが並列した前記循環液のクロマトグラムを取得する液体クロマトグラフと、
前記濾液のクロマトグラムから前記複数の分子量標準物質に対応するそれぞれのピーク面積を解析し、前記循環液のクロマトグラムから前記複数の分子量標準物質に対応するそれぞれのピーク面積を解析し、前記濾液のクロマトグラムから求められたそれぞれのピーク面積と、前記循環液のクロマトグラムからから求められたそれぞれのピーク面積から、前記複数の分子量標準物質の阻止率を、前記複数の分子量標準物質毎に、それぞれ計算し、計算された前記複数の分子量標準物質の阻止率を、確率対数グラフ上にプロットして表示し、前記濾過膜の分画分子量の決定可能にする解析装置
とを備えることを特徴とする濾過膜評価システム。
【請求項2】
前記解析装置が、
前記液体クロマトグラフが取得した前記濾液のクロマトグラム及び前記循環液のクロマトグラムを格納するクロマトグラム記憶装置と、
前記濾液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積、及び前記循環液の分子量標準物質のそれぞれのピーク面積を格納する面積記憶装置と、
前記複数の分子量標準物質のそれぞれの阻止率を格納する阻止率記憶装置
とを備えることを特徴とする請求項1に記載の濾過膜評価システム。
【請求項3】
前記解析装置が、
前記濾液のクロマトグラムから前記複数の分子量標準物質に対応するそれぞれのピーク面積を解析し、前記循環液のクロマトグラムから前記複数の分子量標準物質に対応するそれぞれのピーク面積を解析するピーク面積解析手段と、
前記濾液のクロマトグラムから求められたそれぞれのピーク面積と、前記循環液のクロマトグラムからから求められたそれぞれのピーク面積から、前記複数の分子量標準物質の阻止率を、前記複数の分子量標準物質毎に、それぞれ計算する阻止率計算手段と、
計算された前記複数の分子量標準物質の阻止率を、確率対数グラフ上にプロットする阻止率プロット手段
とを有するCPUを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の濾過膜評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−35265(P2012−35265A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246487(P2011−246487)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【分割の表示】特願2008−72440(P2008−72440)の分割
【原出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】