説明

濾過装置及び濾過方法

【課題】複数の濾過機本体を使用しても、残液量を少量にできる濾過装置及び濾過方法を提供する。
【解決手段】原液を濾過する複数の濾過機本体1〜3と、濾過機本体1〜3に接続され濾過液を取り出す濾過液排出流路31〜33と、濾過機本体1〜3に接続され濾過機本体1〜3内部に残った残液を回収する残液回収流路51〜53と、残液回収流路51〜53の流通状態を切り換える流路変更機構54〜56を備えており、原液を濾過機本体1〜3で同時に濾過したとき、流路変更機構54により、残液回収流路51が流通している状態に切り換え、残液回収流路51を通って回収された残液は、回収元の濾過機本体1とは別の濾過機本体2及び濾過機本体3で濾過される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液を濾過して濾過液を取り出す濾過装置及び濾過方法に関し、特に珪藻土等の濾過助剤を被覆した濾過エレメントに原液を通して、原液を濾過する珪藻土濾過装置及びこれを用いた濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過装置として、珪藻土等の濾過助剤を被覆した濾過エレメントに原液を通して、原液を濾過する装置が知られている(例えば下記特許文献1)。濾過エレメントには、例えば金属ワイヤを円筒状に巻いて形成されたキャンドル式や金網状の平板で形成されたリーフ式がある。濾過エレメントは、濾過機本体のケーシングに内蔵されて使用される。
【0003】
濾過工程が進むと、濾過抵抗の増大により濾過機本体の内圧が上昇し、最終的に濾過限界を迎えるため、原液の供給を停止する。この際、濾過機本体の内部に残った残液は、エア押しにより濾過液として回収することができる。エア押しとは、高圧の圧縮エアにより残液を押し切って濾過エレメントを通過させることである。
【0004】
しかし、濾過性が悪い原液、例えば粘性が高いシロップやオリが多く含まれた生揚醤油を濾過する場合、濾過機本体内の残液をすべてエア押しすることは難しい。濾過性の良い原液であっても、残液をすべてエア押しにより濾過液として回収するには時間がかかる。このことから、特許文献1には、エア押しでは濾過処理できない残液を、濾過エレメントを通過させることなく回収することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−148680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回収した残液は、次の濾過工程で原液として濾過処理することができる。しかし、残液量が多くなると次の濾過工程における濾過処理の負担が増大することになる。また、生産計画上、次に濾過工程を行うまでに時間が空く場合には、残液の腐敗などの問題があり衛生的に好ましくない。さらに、次の濾過工程で原液の種類が変わり、回収した残液を次の濾過工程の原液に混ぜることができない場合もある。このような場合には、残液を濾過処理するために専用の設備(残液濾過機)を設けるか、または残液を廃棄処分するしかない。
【0007】
残液濾過機には、例えば、カートリッジフィルタなどが使われる。しかし、カートリッジフィルタは使い捨てとなるため、残液量が多いほどカートリッジフィルタを交換する頻度が増え、残液の濾過処理に要するコストが増大することになる。したがって、残液量はできるだけ少量であることが望ましい。残液量は濾過処理終了時に濾過を行なっていた濾過機本体の容量が大きいほど多くなる。特許文献1の濾過装置のように濾過機本体が1つの構成では、濾過機本体の容量が大きいと残液量も多くなる。また、原液の処理量に応じて使用する濾過面積を変更できないため、非効率である。
【0008】
一方、前記の1つの濾過機本体を複数の濾過機本体に分割し、これらの複数の濾過機本体の合計の濾過面積が前記の1つの濾過機本体に相当するようにした構成では、原液の処理量に応じて使用する濾過機本体の数、すなわち使用する濾過面積を選択できるため、効率的である。しかし、複数の濾過機本体を選択すれば、これらの複数の濾過機本体の容量に応じた残液が発生するので、残液量は多くなる。
【0009】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、複数の濾過機本体を使用しても、残液量を少量にできる濾過装置及び濾過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の濾過装置は、原液を濾過して濾過液を取り出す濾過装置であって、原液を濾過する複数の濾過機本体と、前記各濾過機本体に接続され濾過液を取り出す濾過液排出流路と、前記各濾過機本体に接続され前記各濾過機本体内部に残った残液を回収する残液回収流路と、前記残液回収流路の流通状態を切り換える流路変更機構を備えており、原液は2つ以上の濾過機本体で同時に濾過され、前記流路変更機構により、前記残液回収流路が流通している状態に切り換え、前記残液回収流路を通って回収された残液は、回収元の濾過機本体とは別の濾過機本体で濾過されることを特徴とする。
【0011】
本発明の濾過方法は、原液を濾過して濾過液を取り出す濾過方法であって、原液を濾過する複数の濾過機本体を用い、前記各濾過機本体に、濾過液を取り出す濾過液排出流路と、前記各濾過機本体内部に残った残液を回収する残液回収流路とを接続し、原液を2つ以上の濾過機本体で同時に濾過し、前記残液回収流路の流通状態を切り換える流路変更機構により、前記残液回収流路が流通している状態に切り換え、前記残液回収流路を通して回収した残液を、回収元の濾過機本体とは別の濾過機本体で濾過することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、濾過機本体の残液は、残液のまま残るのではなく、回収元の濾過機本体とは別の濾過機本体で濾過されることになる。したがって、複数の濾過機本体を使用した場合であっても、濾過処理終了時における残液は、最後に残液回収される濾過機本体における残液のみに抑えることができ、残液量を減らすことができる。さらに、原液は2つ以上の濾過機本体で同時に濾過されるので、濾過に要する時間を抑えられる。
【0013】
ここで、濾過限界まで達したときの濾過機本体に残る残液は、高圧の圧縮エアにより押し切って濾過するエア押しにより、濾過液として取り出すこともできる。本発明では、前記の通り残液を別の濾過機本体で濾過できる。このため、本発明は、原液が難濾過性であり、残液すべてをエア押しで濾過することが難しい場合や、残液すべてをエア押しで濾過して回収するには時間がかかる場合に特に有効になる。
【0014】
前記本発明の濾過装置においては、前記複数の濾過機本体間において、前記流路変更機構による前記残液回収流路の流通状態の切り換えの時期をずらすための制御機構を設けたことが好ましい。前記本発明の濾過方法においては、前記複数の濾過機本体間において、前記残液回収流路の流通状態の切り換えの時期をずらすことが好ましい。
【0015】
この構成では、複数の濾過機本体のうち、1つ目の濾過機本体が残液回収に移行しても、他の濾過機本体は濾過工程を維持するようにできる。この場合、1つ目の濾過機本体の残液は、他の濾過機本体で濾過処理することができる。例えば、3つ以上の濾過機本体を設けた場合には、1つ目の濾過機本体から回収された残液は、残りの2つ以上の濾過機本体に分散して濾過処理される。続いて、2つ目の濾過機本体から回収された残液は、残りの1つ以上の濾過機本体で濾過処理される。この濾過処理では、最後に残液回収される濾過機本体に持ち越される残液量は、最後に残液回収される濾過機本体に他の濾過機本体の残液が一度にすべて持ち越される場合と比べて、少なくすることができる。これにより、最後に残液回収される濾過機本体の濾過面積を小さくすることができ、結果として、最後に残液回収される濾過機本体の容量を小さくすることができる。前記の通り本発明では、濾過工程の終了時における残液は、最後に残液回収される濾過機本体における残液のみとなるので、最後に残液回収される濾過機本体の容量を小さくするほど、残液量も少なくなる。
【0016】
前記本発明の濾過装置においては、前記各濾過機本体に、原液供給用のポンプが接続されていることが好ましい。前記本発明の濾過方法においては、前記各濾過機本体に、原液供給用のポンプを接続することが好ましい。この構成によれば、各濾過機本体に対し、各濾過機本体専用のポンプで原液を供給できる。このため濾過装置が備える複数の濾過機本体をすべて使用することも、複数の濾過機本体から選択した濾過機本体を使用することも可能になる。また、各ポンプのモータの回転数を制御することにより、各濾過機本体へ供給する原液の流量を個別に設定することも容易になる。
【0017】
前記本発明の濾過装置においては、前記複数の濾過機本体は、濾過面積又は内容量の少なくともいずれかが他の濾過機本体と異なる濾過機本体を含んでおり、原液の処理量に応じて使用する濾過機本体を選択可能とすることが好ましい。前記本発明の濾過方法においては、前記複数の濾過機本体に、濾過面積又は内容量の少なくともいずれかが他の濾過機本体と異なる濾過機本体を含ませて、原液の処理量に応じて使用する濾過機本体を選択することが好ましい。この構成によれば、原液の処理量や原液の濾過性の変化など濾過条件に合わせて、濾過工程毎に必要な濾過面積や内容積が変わった場合でも、自由に組み合わせて濾過機本体を選択することができる。濾過助剤を使用した濾過の場合は、濾過条件の変化として、使用する濾過助剤の量の変化も挙げられる。
【0018】
前記本発明の濾過装置においては、前記複数の濾過機本体のうち、残液が回収された濾過機本体から順に洗浄されることが好ましい。前記本発明の濾過方法においては、前記複数の濾過機本体のうち、残液が回収された濾過機本体から順に洗浄することが好ましい。この構成によれば、残液が回収された濾過機本体を洗浄している間も、他の濾過機本体による濾過処理が進んでいることになるため、結果として、全工程の所要時間を短縮できる。
【0019】
前記本発明の濾過装置においては、残液を濾過するための残液濾過機を前記複数の濾過機本体とは別に備えており、濾過に使用した濾過機本体より少ない数の濾過機本体の残液が前記残液濾過機で濾過されることが好ましい。前記本発明の濾過方法においては、残液を濾過するための残液濾過機を前記複数の濾過機本体とは別に備え、濾過に使用した濾過機本体より少ない数の濾過機本体の残液を前記残液濾過機で濾過することが好ましい。この構成によれば、原液はすべて濾過液として取り出すことができる。このため、残液を次の濾過工程に持ち越す必要はなくなり、次の濾過工程における濾過処理の負担が追加されることもなくなる。また、前記の通り本発明では、最終的な残液は最後に残液回収する濾過機本体における残液のみに抑えられる。このため、残液濾過機の濾過負担は軽減でき、残液濾過の作業時間を短縮することができる。また、濾過負担軽減により、残液濾過機に例えばカートリッジフィルタを用いた場合は、交換頻度が減り残液の濾過処理に要するコストを削減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、濾過機本体の残液は、回収元の濾過機本体とは別の濾過機本体で濾過されることになり、複数の濾過機本体を使用した場合であっても、濾過処理終了時における残液は、最後に残液回収される濾過機本体における残液のみに抑えることができ、残液量を減らすことができる。
【0021】
このため、本発明は、原液が難濾過性であり、残液すべてをエア押しで濾過することが難しい場合や、残液すべてをエア押しで濾過して回収するには時間がかかる場合に特に有効になる。さらに、原液は2つ以上の濾過機本体で同時に濾過されるので、濾過に要する時間を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置のプリコート工程を説明する構成図。
【図2】本発明の一実施形態に係る濾過装置の濾過工程を説明する構成図。
【図3】本発明の一実施形態に係る濾過装置の残液回収工程(1)を説明する構成図。
【図4】本発明の一実施形態に係る濾過装置の残液回収工程(2)を説明する構成図。
【図5】本発明の一実施形態に係る濾過装置の残液回収工程(3)を説明する構成図。
【図6】本発明の一実施形態に係る濾過装置の残液移送工程を説明する構成図。
【図7】本発明の一実施形態に係る濾過装置の残液濾過工程を説明する構成図。
【図8】本発明の一実施形態に係る濾過装置の洗浄工程を説明する構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る濾過装置10の構成図である。本図は後に説明するプリコート工程を説明する構成図でもある。最初に図1を参照しながら、濾過装置10の概略構成について説明する。濾過装置10は珪藻土濾過装置である。珪藻土濾過装置は、濾過助剤(珪藻土、セルロース、活性炭等)を被覆した濾過エレメントに原液を通して、原液を清澄化する装置である。
【0024】
原液タンク20に、配管で構成された流路を介して3つの濾過機本体1〜3が並列に接続されている。原液タンク20には、濾過対象である原液が供給される。3つの濾過機本体1〜3のすべてを使用する場合、原液タンク20内の原液は、濾過機本体1〜3に供給される。原液は、濾過機本体1〜3に内蔵された濾過エレメント7〜9を通過することにより濾過され、濾過機本体1〜3から濾過液が取り出される。
【0025】
濾過機本体1は、円筒状のケーシング4内に複数の濾過エレメント7を内蔵している。同様に、濾過機本体2、濾過機本体3は、それぞれケーシング5、ケーシング6内に複数の濾過エレメント8、複数の濾過エレメント9を内蔵している。濾過エレメント7〜9はキャンドル式の例で図示しており、金属ワイヤを円筒状に巻いて形成されている。濾過の際には、濾過エレメント7〜9の表面に前記濾過助剤によりプリコート層が形成される。
【0026】
濾過機本体1〜3内に供給口40〜42から供給された原液は、濾過エレメント7〜9の表面に形成されたプリコート層を通過して濾過され濾過液となる。この濾過液は、濾過エレメント7〜9の金属ワイヤ間の隙間を通過して濾過エレメント7〜9の内部に流入し、排出口43〜45から排出される。これらの排出された濾過液は、濾過液タンク50に回収される。
【0027】
濾過エレメント7〜9は、各種仕様のものを用いることができ、円筒状のものに限らず、金網状の平板で形成したものであってもよいし、また金属フィルタに限らず、樹脂や布や紙などのフィルタであってもよい。また、図1では濾過エレメント7〜9はケーシング4〜6の内部に吊り下げたキャンドル吊下げ型であるが、濾過エレメント7〜9を下から上に立てたキャンドル立設型であってもよい。
【0028】
以下、濾過装置10による原液の濾過処理について工程順に説明する。まず、3つの濾過機本体1〜3のうち、原液の処理量に応じて使用する濾過機本体の数を選択する。以下の説明は、3つの濾過機本体1〜3のすべてを使用する場合である。図1はプリコート工程を説明する構成図である。図1の太線で示した流路は、プリコート工程における液の流れを示している。プリコート工程において、原液タンク20に供給された原液に濾過助剤を投入し、原液タンク20と濾過機本体1〜3を循環させることにより、濾過エレメント7〜9の表面に濾過助剤によるプリコート層が形成される。
【0029】
図1を参照しながら、プリコート工程で流通する流路について説明する。原液タンク20と濾過機本体1は原液供給流路11で接続され、原液タンク20と濾過機本体2は原液供給流路12で接続され、原液タンク20と濾過機本体3は原液供給流路13で接続されている。原液供給流路11にはポンプ17及びバルブ14が介在し、原液供給流路12にはポンプ18及びバルブ15が介在し、原液供給流路13にはポンプ19及びバルブ16が介在している。
【0030】
また、濾過機本体1は、バルブ24が介在したプリコート液循環流路21に接続されている。同様に、濾過機本体2はバルブ25が介在したプリコート液循環流路22に接続され、濾過機本体3はバルブ26が介在したプリコート液循環流路23に接続されている。
【0031】
さらに、濾過機本体1は、バルブ34が介在した濾過液排出流路31に接続されている。同様に、濾過機本体2はバルブ35が介在した濾過液排出流路32に接続されており、濾過機本体3はバルブ36が介在した濾過液排出流路33に接続されている。濾過液排出流路31〜33は、濾過機本体1〜3で得られた濾過液を取り出す流路である。
【0032】
以上の流路構成において、流路変更機構により、各流路が流通している状態と流通していない状態を切り換えることができる。本実施形態では流路変更機構は、各流路に介在した各バルブである。前記の流路に限らず、後に説明する他の流路についても流路変更機構である各バルブにより流通状態が切り換えられる。濾過機本体1を例に挙げると、バルブ24を開きバルブ34を閉じることにより、プリコート液循環流路21が流通状態になり、濾過液排出流路31は流通しない状態となる。
【0033】
プリコート工程では、バルブ14〜16及びバルブ24〜26は開いており、他のバルブは閉じている。すなわち、図1の太線で示した原液供給流路11〜13及びプリコート液循環流路21〜23が流通状態になっている。この流通状態では、濾過機本体1を例に挙げると、ポンプ17の駆動により、原液タンク20からの原液は原液供給流路11を経て濾過機本体1内に供給される。そして、濾過機本体1内から排出され、プリコート液循環流路21を経て原液タンク20に戻される。
【0034】
プリコート工程においては、原液タンク20内には原液と共に濾過助材が投入されており、濾過機本体1〜3には原液に濾過助材が懸濁されたプリコート液が供給される。このプリコート液を循環させることにより、濾過エレメント7〜9の表面に濾過助材が被覆される。プリコート液を数十分間循環させると、濾過エレメント7〜9の表面にプリコート層が形成される。
【0035】
プリコート工程を終えると、濾過工程に移行する。図2は濾過工程を説明する構成図である。濾過工程では、プリコート工程において閉じていたバルブ34〜36を開き、バルブ24〜26を閉じることにより、図2の太線で示したように、原液供給流路11〜13及び濾過液排出流路31〜33が流通状態になる。
【0036】
この流通状態では、ポンプ17〜19の駆動により、原液タンク20からの原液は原液供給流路11〜13を経て濾過機本体1〜3内に供給される。プリコート工程において、濾過エレメント7〜9の表面にはプリコート層が形成されている。したがって、濾過機本体1〜3内に供給された原液は、プリコート層を通過して濾過され清澄な濾過液となる。この濾過液は、濾過エレメント7〜9の内側に流入し、排出口43〜45から排出される。排出された濾過液は、濾過液排出流路31〜33を通って、濾過液タンク50に回収される。
【0037】
濾過工程が進むと、原液に含まれている不純物が前記プリコート層へ徐々に付着して行く。これに伴い濾過抵抗が増大し、ケーシング4〜6の内圧が上昇し、最終的には濾過限界を迎える。このため、ケーシング4〜6の内圧が一定値まで上昇すると、原液の供給を停止し、濾過を終了する。
【0038】
本実施形態では、濾過機本体1、濾過機本体2、濾過機本体3の順に濾過限界を迎えるようにし、この順に原液供給を停止するようにしている。濾過機本体1への原液供給を停止した時点で、濾過機本体1内に残っている濾過されていない原液を残液と呼ぶ。濾過機本体2及び濾過機本体3についても同様である。
【0039】
原液供給を停止した濾過機本体1は、続いて残液回収工程に移行する。以後、濾過機本体2、濾過機本体3の順に、残液回収工程に移行する。このように、残液回収工程への移行時期をずらすために、濾過装置10は制御機構30(例えばシーケンサ)を備えている。本実施形態では、制御機構30により濾過限界を迎える時期をずらすとともに、流路変更機構である各バルブによる残液回収流路51〜53の流通状態の切り換えの時期をずらしている。図1〜5、図8では、図示を見易くするため、制御機構30と各バルブをつなぐ信号線の図示は省略している。
【0040】
濾過限界の時期をずらすには、濾過機本体1〜3への単位濾過面積当たりの原液供給量をそれぞれ異なるようにすることにより実現できる。原液供給量の調節は、例えばポンプ17〜19のそれぞれにインバータを設け、ポンプ17〜19のモータの駆動周波数を制御機構30により制御してモータの回転数を制御することにより可能である。以下、濾過機本体1についての残液回収工程を残液回収工程(1)、濾過機本体2についての残液回収工程を残液回収工程(2)、濾過機本体3についての残液回収工程を残液回収工程(3)と呼ぶ。
【0041】
図3は残液回収工程(1)を説明する構成図である。図3の太線は、残液回収工程(1)において液が流れる流路を示している。ケーシング4の内圧が一定値まで上昇すると、ポンプ17が停止しバルブ14は閉じ、濾過機本体1への原液供給は停止する。それと同時に、バルブ57が開き、圧縮エア供給源27より圧縮エア供給流路47を経た高圧の圧縮エアが濾過機本体1に供給される。このことにより、濾過機本体1内の残液は供給口40から押し出され、濾過機本体1内の濾過液は排出口43から押し出される。以下、高圧の圧縮エアの供給により濾過機本体1〜3内から残液又は濾過液を押し出すことをエア押しと呼ぶ。
【0042】
残液の一部は濾過エレメント7を通過し濾過され、排出口43から濾過液として押し出される。図3では、バルブ34が開いたままなので、排出口43からエア押しされた濾過液は、濾過液排出流路31を経て濾過液タンク50に回収される。
【0043】
濾過機本体1内の残液のほとんどは、供給口40を経由し、濾過エレメント7を通過していない原液状態の残液として押し出される。図3では、バルブ14及びバルブ64は閉じており、バルブ54が開き残液回収流路51が流通状態になっている。このため、供給口40から押し出された残液は、残液回収流路51を経て原液タンク20に回収される。
【0044】
濾過機本体1の残液回収工程(1)が進行している間、濾過機本体2及び濾過機本体3における濾過工程は継続している。したがって、原液タンク20に回収された濾過機本体1の残液は、濾過機本体2及び濾過機本体3により濾過され、濾過液として回収される。
【0045】
図4は残液回収工程(2)を説明する構成図である。図4の太線は、残液回収工程(2)において液が流れる流路を示している。ケーシング5の内圧が一定値まで上昇すると、ポンプ18が停止しバルブ15が閉じ、濾過機本体2への原液供給は停止する。それと同時に、バルブ58が開き、圧縮エア供給源27より圧縮エア供給流路48を経た圧縮エアが濾過機本体2に供給される。このことにより、濾過機本体2内の残液は供給口41から押し出され、濾過機本体2内の濾過液は排出口44から押し出される。
【0046】
残液の一部は濾過エレメント8を通過し濾過され、排出口44から濾過液として押し出される。図4では、バルブ35が開いたままなので、排出口44からエア押しされた濾過液は、濾過液排出流路32を経て濾過液タンク50に回収される。
【0047】
濾過機本体5内の残液のほとんどは、供給口41を経由し、濾過エレメント8を通過していない原液状態の残液として押し出される。図4では、バルブ15及びバルブ65は閉じており、バルブ55が開き残液回収流路52が流通状態になっている。このため、供給口41から押し出された残液は、残液回収流路52を経て原液タンク20に回収される。
【0048】
一方、濾過機本体2の残液回収工程(2)が進行している間、濾過機本体3における濾過工程は継続している。したがって、原液タンク20に回収された濾過機本体2の残液は、濾過機本体3により濾過され、濾過液として回収される。
【0049】
図5は残液回収工程(3)を説明する構成図である。図5の太線は、残液回収工程(3)において液が流れる流路を示している。ケーシング6の内圧が一定値まで上昇すると、ポンプ19が停止しバルブ16は閉じ、濾過機本体3への原液供給は停止する。それと同時に、バルブ59が開き、圧縮エア供給源27より圧縮エア供給流路49を経た圧縮エアが濾過機本体3に供給される。このことにより、濾過機本体3内の残液は供給口42から押し出され、濾過機本体3内の濾過液は排出口45から押し出される。
【0050】
残液の一部は濾過エレメント9を通過し濾過され、排出口45から濾過液として押し出される。図5では、バルブ36が開いたままなので、排出口45からエア押しされた濾過液は、濾過液排出流路33を経て濾過液タンク50に回収される。
【0051】
濾過機本体3内の残液のほとんどは、供給口42を経由し、濾過エレメント9を通過していない原液状態の残液として押し出される。図5では、バルブ16及びバルブ66は閉じており、バルブ56が開き残液回収流路53が流通状態になっている。このため、供給口42から押し出された残液は、残液回収流路53を経て原液タンク20に回収される。
【0052】
本実施形態では、供給口40より原液タンク20に回収された濾過機本体1の残液は、濾過機本体2及び濾過機本体3で濾過され、濾過液として回収される。また、供給口41より原液タンク20に回収された濾過機本体2の残液は、濾過機本体3で濾過され、濾過液として回収される。すなわち、濾過機本体1及び濾過機本体2の残液は、未濾過の原液として残るのではなく、回収元の濾過機本体とは別の濾過機本体で濾過されることになる。したがって、3つの濾過機本体1〜3を使用しても濾過工程終了時における残液は、最後に残液回収工程に移行する濾過機本体3における残液のみに抑えることができ、残液量を減らすことができる。
【0053】
本実施形態では、濾過機本体1及び濾過機本体2の残液の一部は、エア押しにより濾過エレメント7及び濾過エレメント8を通過させて濾過して回収している。一方、濾過性が悪い難濾過性の原液を濾過する場合、濾過機本体内の残液をすべてエア押しにより濾過することは難しい。濾過性の良い原液であっても、残液をすべて濾過するには時間がかかる。本実施形態では、エア押し時に残液のほとんどは濾過エレメント7及び濾過エレメント8を通過することなく、原液タンク20に回収され、前記の通り回収元の濾過機本体とは別の濾過機本体で濾過される。このため、本実施形態は、原液が難濾過性であり、残液すべてをエア押しで濾過することが難しい場合や、残液すべてをエア押しで濾過して回収するには時間がかかる場合に特に有効になる。
【0054】
また、本実施形態では、濾過工程においては、原液は3つの濾過機本体1〜3で同時に濾過されるので、濾過に要する時間を抑えられる。また、濾過機本体1〜3を同時使用することにより、図1のプリコート工程は、濾過機本体1〜3の3つ分を一括して完了できる。このため、以後のプリコート工程は不要となり、全工程の所要時間を短縮できるとともに、工程間の流路切り換えを簡略化できる。
【0055】
さらに、本実施形態では、3つの濾過機本体1〜3間において、濾過工程から残液回収工程に流路が切り換わる時期がずれている。このため前記の通り、濾過機本体1が残液回収工程(1)に移行しても、濾過機本体2及び濾過機本体3は濾過工程を維持できる。この場合、濾過機本体1の残液は、濾過機本体2及び濾過機本体3に分散して濾過処理される。続いて、濾過機本体2から回収された残液は、濾過機本体3で濾過処理される。この濾過処理では、濾過機本体3に持ち越される残液量は、濾過機本体3に濾過機本体1及び濾過機本体2の残液が一度にすべて持ち越される場合と比べて、少なくすることができる。これにより、最後に残液回収される濾過機本体3の濾過面積を小さくすることができ、結果として、濾過機本体3の容量を小さくすることができる。前記の通り本実施形態では、濾過工程の終了時における残液は、最後に残液回収される濾過機本体3における残液のみとなるので、濾過機本体3の容量を小さくするほど、残液量も少なくなる。
【0056】
本実施形態では、濾過機本体1〜3がそれぞれポンプ17、ポンプ18、ポンプ19を備えているので、濾過機本体1〜3への原液供給量をそれぞれ異なるようにすることができる。このことにより、濾過機本体1〜3が濾過限界を迎える時期、すなわち濾過工程から残液回収工程への流路切り換えの時期をずらすことができる。濾過機本体1〜3への原液供給量の調節は、例えば前記の通り、ポンプ17〜19のモータ回転数の制御により可能である。
【0057】
また本実施形態では、3つの濾過機本体1〜3を備えているので、原液の処理量に応じて使用する濾過機本体1〜3を選択可能になる。
【0058】
以上、残液回収工程(3)までを説明したが、残液回収工程(3)が終了した時点で、原液タンク20には残液回収工程(3)で回収した残液が残っている。この残液は、次回の濾過処理で濾過してもよいが、濾過設備を追加して次回の濾過処理に移行する前に濾過してもよい。以下、原液タンク20に残った残液の濾過について説明する。
【0059】
図6は残液移送工程を説明する構成図であり、図7は残液濾過工程を説明する構成図である。図6及び図7は同一構成であり、図6の太線は残液移送工程において液が流れる流路を示し、図7の太線は残液濾過工程において液が流れる流路を示している。図6及び図7では、図1〜5に示した濾過装置10に、残液濾過のための設備が追加されている。図6及び図7は、この追加設備を中心に図示しており、図6及び図7で図示が省略されている部分は、図1〜5と同一構成である。
【0060】
図6を参照しながら、残液濾過のために追加された設備について説明する。原液供給流路13と残液回収タンク70は、バルブ87が介在した残液移送流路86で接続されている。残液回収タンク70と残液濾過機90は、ポンプ89及びバルブ93が介在した残液供給流路88で接続されている。残液濾過機90は、ケーシング91内に濾過フィルタ92を備えており、濾過フィルタ92を通過した残液が濾過液として回収される。残液濾過機90と濾過液タンク50は、濾過液供給流路94で接続されている。
【0061】
前記構成において、図6の残液移送工程では、バルブ16は閉じバルブ87が開き、ポンプ19は稼動している。このことにより、図5の原液タンク20内の残液は、原液供給流路13及び残液移送流路86を経て、残液回収タンク70に回収される。図7の残液濾過工程では、バルブ93は開きポンプ89が稼動している。このことにより、残液回収タンク70内の残液は、残液濾過機90で濾過されて、濾過液排出流路94を経て濾過液タンク50に回収される。
【0062】
図6の残液移送工程及び図7の残液濾過工程を経ることにより、原液はすべて濾過液として取り出すことができる。このため、残液を次の濾過工程に持ち越す必要はなくなり、次の濾過工程における濾過処理の負担が追加されることもなくなる。また、前記の通り本実施形態では、最終的な残液は最後に残液回収工程に移行する濾過機本体3における残液のみに抑えられる。このため、残液濾過機90の濾過負担は軽減でき、残液濾過の作業時間を短縮することができる。また、濾過負担軽減により、残液濾過機90に例えばカートリッジフィルタ用いた場合は、交換頻度が減り残液の濾過処理に要するコストを抑えることができる。
【0063】
また、残液濾過機90で濾過する残液は1つ分の濾過機本体の残液に限るものではない。最後に残液回収工程に移行する濾過機本体が複数であっても、この数が濾過工程の最初に使用した濾過機本体よりも少なければ、最終的な残液量は濾過工程の最初に使用した濾過機本体分の残液量よりも少なくできる。したがって、この場合であっても、残液濾過機90の濾過負担は軽減でき、残液濾過の作業時間の短縮や、残液濾過機の交換頻度減少によるコスト削減の効果が得られる。
【0064】
次に、洗浄工程について説明する。前記の図1〜7による説明では、洗浄工程の説明は省いたが、濾過機本体1の残液回収工程(1)が終了すると、濾過機本体1の洗浄工程に移行することができる。同様に、残液回収工程(2)が終了すると、濾過機本体2の洗浄工程に移行することができ、残液回収工程(3)が終了すると、濾過機本体3の洗浄工程に移行することができる。
【0065】
図8は、洗浄工程を説明する構成図である。図8の太線は、濾過機本体1が洗浄工程に移行しているときに液が流れている流路を示している。図8では濾過機本体1は洗浄工程に移行しているが、濾過機本体2及び濾過機本体3の濾過工程は継続している。バルブ24及びバルブ34は閉じており、バルブ74は開いている。このため、洗浄液供給源28からの洗浄液は、洗浄液供給流路83を経て、排出口43から濾過機本体1内に放出される。この洗浄液は濾過エレメント7の裏面側から表面側に向かって流れるので、この流れにより濾過エレメント7表面のプリコート層を形成している濾過助材が剥離する。
【0066】
濾過機本体1の供給口40側の流路においては、バルブ14及びバルブ54は閉じバルブ64が開いており、排水流路61が流通状態になっている。したがって、剥離した濾過助材は、洗浄液とともに排水流路61を経て排水タンク60に回収される。
【0067】
以上、濾過機本体1の洗浄工程について説明したが、濾過機本体2及び濾過機本体3の洗浄工程は、濾過機本体1の場合と同様である。このため、濾過機本体2及び濾過機本体3の洗浄工程については、詳細な説明は省略し簡単に説明する。バルブ75及びバルブ76はバルブ74に対応し、洗浄液供給流路84及び洗浄液供給流路85は洗浄液供給流路83に対応している。
【0068】
残液回収工程(2)が終了すると、濾過機本体2は洗浄工程に移行し、濾過機本体2内に洗浄液が放出される。濾過エレメント8から剥離した濾過助材は、洗浄液とともに排水流路62を経て排水タンク60に回収される。同様に、残液回収工程(3)が終了すると、濾過機本体3は洗浄工程に移行し、濾過機本体3内に洗浄液が放出される。濾過エレメント9から剥離した濾過助材は、洗浄液とともに排水流路63を経て排水タンク60に回収される。
【0069】
前記実施形態では、残液が回収された濾過機本体1を洗浄している間も、他の濾過機本体2及び濾過機本体3よる濾過工程処理が進んでいることになるため、結果として、全工程の所要時間を短縮できる。
【0070】
本実施形態は、濾過装置10の3つの濾過機本体1〜3を同時に使用する例であるが、原液の処理量に応じて選択した2つの濾過機本体を同時に使用してもよい。また、濾過装置が備えている濾過機本体の個数は2つでもよく、4つ以上でもよい。さらに、濾過装置10はキャンドル式の珪藻土濾過装置の例で説明したが、他の種類の濾過装置であってもよい。例えば、リーフ式の珪藻土濾過装置であってもよく、珪藻土を使用しない濾過装置であってもよい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を参照しながら、本実施形態についてさらに具体的に説明する。実施例は、図1に示した濾過装置10と同様の構成であり、図1〜図5を用いて説明した各工程を経て原液が濾過処理される。また、実施例は図6の残液移送工程、図7の残液濾過工程及び洗浄工程も実行される。
【0072】
濾過機本体1及び濾過機本体2は同一仕様とし、濾過面積は4m、内容積は400Lとした。ケーシング4及びケーシング5はステンレス製の円筒形状とした。濾過エレメント7及び濾過エレメント8は各19本とし、直径60mm、長さ1200mmのステンレス製のキャンドル型フィルタとした。濾過機本体3は、濾過面積は1m、内容積は100Lとした。ケーシング6はステンレス製の円筒形状とした。濾過エレメント9は8本とし、直径60mm、長さ700mmのステンレス製のキャンドル型フィルタとした。
【0073】
図6の残液濾過機90は、ステンレス製の円筒形状のハウジング91に、直径170mm、長さ800mmの袋状のバッグフィルター92を1本内蔵したものとした。また原液は、難濾過性の糖液20kLを使用した。
【0074】
図1のプリコート工程においては、原液タンク20に原液の糖液を投入し、プリコートに使用する珪藻土13.5kgを投入した。これらをよく撹拌した後、原液に珪藻土が懸濁されたプリコート液を、ポンプ17〜19によりケーシング4〜6に同時に供給した。このときのプリコート液の流量は、濾過機本体1及び濾過機本体2が200L/min、濾過機本体3が50L/minを目安にした。プリコート液の循環を開始して数十分後、濾過エレメント7〜9の表面に珪藻土がプリコートされ、原液タンク20へ戻ってきたプリコート液が清澄化されているのが確認できた。
【0075】
プリコート工程が完了したのを確認した後、バルブ34〜36を開き、続いてバルブ24〜26を閉じて、図2の濾過工程に移行した。このときの濾過機本体1〜3から排出される濾過液の流量の目安は、濾過機本体1が160L/min、濾過機本体2が120L/min、濾過機本体3が25L/minとした。濾過工程が進むと、濾過エレメント7〜9の表面に形成されたプリコート層に、糖液に含まれている不純物が付着し、濾過液の排出量が徐々に落ちていく。このため実施例では、前記流量になるようポンプ17〜19の周波数を制御しながら濾過を続け、ケーシング4〜6の内圧が400kPaに達した時点で、残液回収工程に入るように設定した。
【0076】
濾過工程を開始してから60分後、ケーシング4の内圧は400kPaに達し、図3の残液回収工程(1)に移行した。このときポンプ17が停止し、バルブ14が閉じた。これと同時に、バルブ57が開き圧縮エア供給源27から圧縮エア供給流路47を経て、ケーシング4内部に450kPaの圧縮エアが供給され、さらにバルブ54が開いた。ケーシング4内部の残液の一部は濾過エレメント7を通過して濾過液として濾過液廃出流路31を経て濾過液タンク50に回収されたが、残液の大半は残液回収流路51を経由して原液タンク20に回収された。また、回収された濾過機本体1の残液は原液タンク20内部の原液と混ざり、濾過機本体2及び濾過機本体3で濾過された。
【0077】
濾過工程を開始してから80分後、ケーシング5の内圧は400kPaに達し、図4の残液回収工程(2)に移行した。このとき、ポンプ18が停止し、バルブ15が閉じた。これと同時に、バルブ58が開き、圧縮エア供給源27から圧縮エア供給流路48を経て、ケーシング5内部に450kPaの圧縮エアが供給され、さらにバルブ55が開いた。ケーシング5内部の残液の一部は濾過エレメント8を通過して濾過液排出流路32を経て濾過液タンク50に回収されたが、残液の大半は残液回収流路52を経由して原液タンク20に回収された。また、回収された濾過機本体2の残液は原液タンク20内部の原液と混ざり、濾過機本体3で濾過された。
【0078】
濾過工程を開始してから100分後、ケーシング6の内圧は400kPaに達し、図5の残液回収工程(3)に移行した。このとき、ポンプ19が停止し、バルブ16が閉じた。これと同時に、バルブ59が開き、圧縮エア供給源27から圧縮エア供給流路49を経て、ケーシング6内部に450kPaの圧縮エアが供給され、さらにバルブ56が開いた。ケーシング6内部の残液の一部は濾過エレメント9を通過して濾過液排出流路33を経て濾過液タンク50に回収されたが、残液の大半は残液回収流路53を経由して原液タンク20に回収された。
【0079】
続いて図6の残液移送工程に移行し、残液回収工程(3)で原液タンク20に回収された濾過機本体3の残液は、ポンプ19により図6の残液回収タンク70に移送された。このとき、移送された残液量は90Lであった。残液の移送を終えると、図7の残液濾過工程に移行した。残液回収タンク70の残液は、残液濾過機90で濾過され、濾過液タンク50に回収された。このときの濾過流量の目安は、10L/minとした。残液濾過工程においても、濾過が進むと徐々に濾過液の排出量が低下したが、残液濾過工程を開始して30分で残液90Lを全量濾過することができた。また、残液濾過工程において、最終的なハウジングの内圧は150kPaであった。
【0080】
実施例では、前記実施形態と同様の洗浄工程を実行した。図3の残液回収工程(1)を終えた濾過機本体1は、図8の洗浄工程に移行した。洗浄液として60℃の温水を使用した。この温水を、バルブ74を開き洗浄液供給源28から洗浄液供給流路83を経由して、排出口43より濾過機本体1内に放出した。この温水放出を3回繰り返した後、濾過機本体1内部を目視により確認したところ、濾過エレメント7の表面に付着した珪藻土はすべて剥がれ落ちていることが確認できた。同様の洗浄を、図4の残液回収工程(2)を終えた濾過機本体2について実行し、図5の残液回収工程(3)を終えた濾過機本体3について実行した。濾過機本体2の濾過エレメント8及び濾過機本体3の濾過エレメント9についても、表面に付着した珪藻土はすべて剥がれ落ちていることが確認できた。
【0081】
前記の通り、本実施例では、濾過機本体1及び濾過機本体2の濾過面積は4m、内容積は400Lとし、濾過機本体3の濾過面積は1m、内容積は100Lとしている。この場合、総濾過面積は9m、総容量は900Lとなる。この構成において本実施例では、前記の通り最終的な残液量は90Lであった。これに対し、濾過機本体の個数を1個とし、濾過機本体の濾過面積を9m、内容積を850Lとした比較例1の運転を行った。比較例1では、残液量は780Lであった。さらに、本実施例の濾過機本体1〜3を用い、残液回収工程(1)〜(3)を省き、濾過機本体1〜3のそれぞれから濾過液を取り出す比較例2の運転を行った。比較例2は、比較例1の濾過機本体を3つの濾過機本体に分割した構成であり、比較例2の3つの濾過機本体の合計の濾過面積9mは比較例1の濾過機本体の濾過面積9mと同じである。比較例2では、濾過機本体1及び濾過機本体2の残液量はそれぞれ370L、濾過機本体3の残液量は90Lとなり残液量の合計は、830Lであった。
【0082】
以上のように、本実施例では比較例1及び比較例2と総濾過面積が同じでありながら、比較例1及び比較例2に比べ残液量を大幅に減らすことができた。このことにより、実施例は比較例1及び比較例2に比べ残液濾過機90の濾過負担を軽減でき、また残液濾過に要する作業時間も短縮できることが分かる。
【符号の説明】
【0083】
1,2,3 濾過機本体
11,12,13 原液供給流路
17,18,19 ポンプ
20 原液タンク
30 制御機構
31,32,33 濾過液排出流路
47,48,49 圧縮エア供給流路
51,52,53 残液回収流路
54,55,56 バルブ(流路変更機構)
60 排水タンク
61,62,63 排水流路
70 残液回収タンク
83,84,85 洗浄液供給流路
90 残液濾過機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液を濾過して濾過液を取り出す濾過装置であって、
原液を濾過する複数の濾過機本体と、
前記各濾過機本体に接続され濾過液を取り出す濾過液排出流路と、
前記各濾過機本体に接続され前記各濾過機本体内部に残った残液を回収する残液回収流路と、
前記残液回収流路の流通状態を切り換える流路変更機構を備えており、
原液は2つ以上の濾過機本体で同時に濾過され、
前記流路変更機構により、前記残液回収流路が流通している状態に切り換え、
前記残液回収流路を通って回収された残液は、回収元の濾過機本体とは別の濾過機本体で濾過されることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記複数の濾過機本体間において、前記流路変更機構による前記残液回収流路の流通状態の切り換えの時期をずらすための制御機構を設けた請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記各濾過機本体に、原液供給用のポンプが接続されている請求項1又は2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記複数の濾過機本体は、濾過面積又は内容量の少なくともいずれかが他の濾過機本体と異なる濾過機本体を含んでおり、原液の処理量に応じて使用する濾過機本体を選択可能とする請求項1から3のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項5】
前記複数の濾過機本体のうち、残液が回収された濾過機本体から順に洗浄される請求項1から4のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項6】
残液を濾過するための残液濾過機を前記複数の濾過機本体とは別に備えており、濾過に使用した濾過機本体より少ない数の濾過機本体の残液が前記残液濾過機で濾過される請求項1から5のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項7】
原液を濾過して濾過液を取り出す濾過方法であって、
原液を濾過する複数の濾過機本体を用い、
前記各濾過機本体に、濾過液を取り出す濾過液排出流路と、前記各濾過機本体内部に残った残液を回収する残液回収流路とを接続し、
原液を2つ以上の濾過機本体で同時に濾過し、
前記残液回収流路の流通状態を切り換える流路変更機構により、前記残液回収流路が流通している状態に切り換え、
前記残液回収流路を通して回収した残液を、回収元の濾過機本体とは別の濾過機本体で濾過することを特徴とする濾過方法。
【請求項8】
前記複数の濾過機本体間において、前記残液回収流路の流通状態の切り換えの時期をずらす請求項7に記載の濾過方法。
【請求項9】
前記各濾過機本体に、原液供給用のポンプを接続する請求項7又は8に記載の濾過方法。
【請求項10】
前記複数の濾過機本体に、濾過面積又は内容量の少なくともいずれかが他の濾過機本体と異なる濾過機本体を含ませて、原液の処理量に応じて使用する濾過機本体を選択する請求項7から9のいずれかに記載の濾過方法。
【請求項11】
前記複数の濾過機本体のうち、残液が回収された濾過機本体から順に洗浄する請求項7から10のいずれかに記載の濾過方法。
【請求項12】
残液を濾過するための残液濾過機を前記複数の濾過機本体とは別に備え、濾過に使用した濾過機本体より少ない数の濾過機本体の残液を前記残液濾過機で濾過する請求項7から11のいずれかに記載の濾過方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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