濾過装置
【課題】 懸濁液を混合・撹拌することで、チャネリングや閉塞の発生を減らすことができる優れた濾過装置を提供すること。
【解決手段】 フィルタ容器11、12、13は、入口11a、12a、13aから注入された懸濁液の濾液が、フィルタ容器側壁部11b、12b、13bから排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口11c、12c、13cから排出する構成を有している。上段グループのフィルタ容器排出口11cと、中段グループのフィルタ容器入口12aとの間に、懸濁液を貯留する第1懸濁液貯留部14が設けられている。中段グループのフィルタ容器排出口12cと、下段グループのフィルタ容器入口13aとの間に、懸濁液を貯留する第2懸濁液貯留部15が設けられている。
【解決手段】 フィルタ容器11、12、13は、入口11a、12a、13aから注入された懸濁液の濾液が、フィルタ容器側壁部11b、12b、13bから排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口11c、12c、13cから排出する構成を有している。上段グループのフィルタ容器排出口11cと、中段グループのフィルタ容器入口12aとの間に、懸濁液を貯留する第1懸濁液貯留部14が設けられている。中段グループのフィルタ容器排出口12cと、下段グループのフィルタ容器入口13aとの間に、懸濁液を貯留する第2懸濁液貯留部15が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は懸濁液の濾過装置に関し、特に、連続的に大量の懸濁液を濃縮・濾過するのに好適な装置である。
【背景技術】
【0002】
従来から固液分離操作においては凝集剤が添加されてきているが、凝集剤の添加によってケークの含水率が上がり、ろ過に続く運搬・乾燥工程に大きな負荷をかけている。発明者は、凝集剤の変わりに分散剤を添加することにより、ろ過ケークよりも高濃度に濃縮されたスラリーを重力あるいは遠心力によって連続的に排出できることを実証した。(特許文献1)
【特許文献1】特開2005−66384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の装置では、粒子懸濁液が入口から出口まで流れる間に、懸濁液を混合・撹拌する領域がないため、チャンネリング(短絡)や閉塞を起こしやすいという課題があった。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、懸濁液を混合・撹拌することで、チャネリングや閉塞の発生を減らすことができる優れた濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明の濾過装置によれば、フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を複数縦方向に配列した濾過装置であって、上流側の前記フィルタ容器の排出口と下流側の前記フィルタ容器の入口との間に、懸濁液を貯留する懸濁液貯留部を設けたことを特徴とする。
このような濾過装置においては、上流側フィルタ容器排出口と下流側フィルタ容器入口との間の懸濁液貯留部は、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
【0005】
請求項2の発明の濾過装置によれば、請求項1に記載の濾過装置において、前記上流側フィルタ容器が横方向に複数個配置され、下流側フィルタ容器が横方向に複数個配置されており、該上流側フィルタ容器の位置が該下流側フィルタ容器の位置と横方向にずれて設置されていることを特徴とする。
このような濾過装置においては、上流側フィルタ容器の位置が該下流側フィルタ容器の位置と横方向にずれて設置されるので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌が促進される。
【0006】
請求項3の発明の濾過装置によれば、フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を縦方向に複数個配列した濾過装置であって、上流側の前記フィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向と、下流側の前記フィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向とが交差するように、上流側フィルタ容器及び下流側フィルタ容器を配置したことを特徴とする。
このような濾過装置においては、上流側のフィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向と、下流側のフィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向とが交差するように、上流側フィルタ容器及び下流側フィルタ容器が配置されるので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
【0007】
請求項4の発明の濾過装置によれば、フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を複数個縦方向に連結した濾過装置であって、上流側の前記フィルタ容器内の前記粒子の排出方向と、下流側の前記フィルタ容器内の前記粒子の排出方向とが交差するように、前記上流側及び前記下流側のフィルタ容器の粒子排出路を形成したことを特徴とする。
このような濾過装置においては、上流側のフィルタ容器内の粒子の排出方向と、下流側のフィルタ容器内の粒子の排出方向とが交差するように、上流側及び下流側のフィルタ容器内に粒子排出路を形成しているので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
【発明の効果】
【0008】
本発明よれば、懸濁液を混合・撹拌することで、チャネリングや閉塞の発生を減らすことができる。また、可動部がないので簡単な構造でチャンネリングや閉塞を防止できる。
また、装置のユニット化が可能であり、処理量、懸濁液濃度に対し柔軟に対応できる。 また、単一ユニットについて基礎データをとれば、容易に装置の設計が可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
最初に、本発明に至った経緯を説明する。
従来からこれらの固液分離操作においては凝集剤が添加され、凝集剤の良し悪しが分離性能・効率に支配的な影響を及ぼしている。凝集剤は、沈降濃縮においては粒子の沈降速度を増し、ろ過においては微粒子による目詰まりを防ぐこととケークのろ過抵抗を下げるために添加される。しかしケークのろ過抵抗が下がることは、ケークの含水率が高くなり固液分離効率が低下することを意味している。ケーク内の粒子充填率が10%を切ることも決して珍しくない。ケークの高い含水率は、ろ過に続く運搬・乾燥工程に大きな負荷をかけることになる。特に乾燥工程においては、省エネルギーのために含水率を少しでも下げることが切望されている。なお、ケーク(濾滓)とは、粒子懸濁液を濾材によって濾過したときに、濾材面上に捕捉されて堆積する粒子層をいうが、流動性はなくもろい固体として振る舞う特性を有する。
発明者は粒子を懸濁させた沈降管底部の静水圧を測定することにより、粒子の凝集状態を評価できる装置を開発した。本評価装置により、粒子濃度が40vol%近くまで濃縮されても、流動性を保つことができるスラリー調製条件を特定できるようになった。分散剤の添加により被処理懸濁液をこのような条件に調製すれば、高濃度に濃縮されたスラリーは重力あるいは遠心力によって連続的に排出できることになる。このことは、含水率低下だけでなく、掻き取り機構が不要となるため装置の小型化と連続運転が可能になることを意味している。更に、発明者は本原理に基づくろ過装置を試作し、代表的難ろ過性物質であるマイカ(セリサイト)の1vol%(3mass%)懸濁液をワンパスで35vol%(60mass%)まで連続的に濃縮することに成功している。
【0010】
液圧測定により粒子の分散・凝集状態を評価する原理は、以下のものである。粒子が液体中を自由に沈降するとき、粒子の質量は液体の粘性抵抗によって支えられる。そのため、容器底部の静水圧は単位面積あたりの水の質量と粒子質量の和となる。しかし粒子が容器底部に堆積すれば、粒子の質量は容器底部が支えるために静水圧は水の質量分だけとなる。したがって粒子がよく分散し粒子が個々に沈降していれば、容器底部の静水圧は高くなるし、粒子が凝集し容器底部までつながっていればその分静水圧は低くなるので、容器底部で静水圧を測定することにより分散・凝集状態を評価することができる。本システムは、粒子径0。5μm濃度20vol%のアルミナスラリーの回分沈降実験をアイカバストで容器底部の静水圧を測定しながら行ったところ、粒子がよく分散された条件下では濃度が40vol%まで濃縮されても静水圧はほとんど低下しない実験結果から発想された。側壁を濾材とした簡単な装置で実証実験を行い、連続して高濃度のスラリーを取り出せることを確認している。
【0011】
次に、本発明を具体化した実施の最良の形態の濾過装置について説明する。
本実施形態の濾過装置は、図10に示されるようなフィルタ容器1を用い、そのフィルタ容器1は、フィルタ容器入口2から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部3のフィルタ部3aから排出され、粒子が実質的に分散状態となって濃縮された懸濁液がフィルタ容器排出口4から排出できるように構成されている。
この場合、フィルタ容器側壁部3は、正面視ベース板型のフィルタ部3aと、これと同形の背面版3bとを側板3cで連結した構成であり、上部は開口してスラリーの導入口としてのフィルタ容器入口2になっている。フィルター部3aには多孔質セラミックパイプを用いるのが望ましい。
フィルタ容器排出口4の下縁部には排出口としてのハイプ5が連接されて、パイプ5には開閉弁6が取り付けられている。なお、フィルタ容器排出口4の下縁部には先細り形状である必要はなく、また、必ずしもハイプ5及び開閉弁6が取り付けられている必要はない。
懸濁液における粒子が実質的に分散状態であるか否かは、懸濁液をフィルタ容器1に入れてそのフィルタ容器1の内底部における懸濁液の液圧の変化をモニタすることにより判断することができる。即ち、フィルタ容器1の内底部における懸濁液の液圧が殆ど変化しない場合(pH=4.2の例参照)は、粒子が分散状態にある。換言すれば、フィルタ容器1の内底部での液圧が単位体積あたりの懸濁液質量に相当し、その状態が持続する場合、懸濁液は実質的に分散状態にあるといえる。これらの実証については、特開2005−66384号公報に詳細に記載されている。
なお、この本実施形態では、懸濁液のpH調製や界面活性剤等の分散剤を添加することにより、懸濁液の粒子を分散状態にすることができ、濾過過程においてケークの生成をなるべく防止しようとしている。
【0012】
次に第1の実施形態の濾過装置を図1乃至図3を参照して説明する。
第1の実施形態の濾過装置7は、図1に示されるように、濾過装置入口8、濾過装置出口9、ろ液排出口10を備えている。濾過装置7は、図1乃至図3に示されるように複数段にフィルタ容器11、12、13を複数個配列している。
この場合、上段グループのフィルタ容器11、中段グループのフィルタ容器12、及び下段グループのフィルタ容器13が縦方向に配列されている。上段グループのフィルタ容器11、中段グループのフィルタ容器12及び下段グループのフィルタ容器13は、横方向に複数個配置されている。
【0013】
上段グループのフィルタ容器11は、図3に示されるように、中段グループのフィルタ容器12と横方向に半ピッチ分ずれて設置されている。同様に、中段グループのフィルタ容器12は下段グループのフィルタ容器13と横方向に半ピッチ分ずれて設置されている。
各フィルタ容器11、12、13は、図10に示されるフィルタ容器1と同様な構造であって、入口11a、12a、13aから注入された懸濁液の濾液が、フィルタ容器側壁部11b、12b、13bから排出され、粒子が実質的に分散状態となって濃縮された懸濁液がフィルタ容器排出口11c、12c、13cから排出する構成を有している。なお、フィルタ容器側壁部11b、12b、13bから排出されたろ液は、ろ液排出口10から排出される。
上段グループのフィルタ容器11の排出口11cと、中段グループのフィルタ容器入口1 2aとの間に、懸濁液を貯留する第1懸濁液貯留部14が設けられている。中段グループのフィルタ容器排出口12cと、下段グループのフィルタ容器入口13aとの間に、懸濁液を貯留する第2懸濁液貯留部15が設けられている。下段グループのフィルタ容器13の排出口13c側には、懸濁液を貯留する第3懸濁液貯留部16が設けられている。
第1懸濁液貯留部14は、上段フィルタ容器排出口11cから出た懸濁液を混合・攪拌する機能を促進して、中段グループのフィルタ容器入口12aから懸濁液を入れる。同様に、第2懸濁液貯留部15は、中段フィルタ容器排出口12cから出た懸濁液を混合・攪拌する機能を促進して、下段グループのフィルタ容器入口13aから懸濁液を入れる。第3懸濁液貯留部は、下段フィルタ容器排出口13cから出た懸濁液を混合・攪拌する機能を促進して、濾過装置出口9から濃縮した懸濁液を排出する。
このような上流側フィルタ容器排出口と下流側フィルタ容器入口との間の懸濁液貯留部は、懸濁液を混合・攪拌する機能を促進する。また、上流側フィルタ容器の位置が該下流側フィルタ容器の位置と横方向にずれて設置されるので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌が促進される。
【0014】
次に第2の実施形態の濾過装置を図4乃至図6を参照して説明する。
第2の実施形態の濾過装置17は、図4に示されるように、濾過装置入口18、濾過装置出口19、ろ液排出口20を備えている。濾過装置17は、図4乃至図6に示されるような複数段にフィルタ容器21、22、23、24を複数個に配列している。
この場合、上段グループのフィルタ容器21、中上段グループのフィルタ容器22、中下段グループのフィルタ容器23、及び下段グループのフィルタ容器24が縦方向に配列されている。上段グループのフィルタ容器21、中上段グループのフィルタ容器22、中下段グループのフィルタ容器23、及び下段グループのフィルタ容器24が横方向に複数個配置されている。
図4乃至図6に示される各フィルタ容器21、22、23、24は、図10に示されるフィルタ容器1と同様な構造であって、フィルタ容器入口21a、22a、23a、24aから注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部21b、22b、23b、24bから排出され、粒子が実質的に分散状態となって濃縮された懸濁液がフィルタ容器排出口21c、22c、23c、24cから排出する構成を有している。なお、フィルタ容器側壁部21b、22b、23b、24bから排出されたろ液は、ろ液排出口20から排出される。
【0015】
この場合、上段グループのフィルタ容器側壁部21bから排出される濾液排出方向は、中上段グループのフィルタ容器側壁部22cから排出される濾液排出方向と90度交差するように、フィルタ容器21、22は設置されている。中上段グループのフィルタ容器側壁部22cから排出される濾液排出方向は、中下段グループのフィルタ容器側壁部23cから排出される濾液排出方向と90度交差するように、フィルタ容器22、23は設置されている。中下段グループのフィルタ容器側壁部23cから排出される濾液排出方向は、下段グループのフィルタ容器側壁部24cから排出される濾液排出方向と90度交差するように、フィルタ容器23、24は設置されている。なお、交差する角度は必ずしも90度である必要はなく、適宜変更可能である。
このような構成の場合、上段フィルタ容器排出口21cから出た懸濁液は、中段グループのフィルタ容器入口22aから入る。同様に、中上段グループのフィルタ容器排出口22cから出た懸濁液は、中下段グループのフィルタ容器入口23aから入る。同様に、中下段グループのフィルタ容器排出口23cから出た懸濁液は、下段グループのフィルタ容器入口24aから入る。下段グループのフィルタ容器排出口24cから出た濃縮された懸濁液は、濾過装置出口19から出る。
このような上流側のフィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向と、下流側のフィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向とが交差するように、上流側フィルタ容器及び下流側フィルタ容器が配置されるので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
なお、必要に応じて、上段グループのフィルタ容器21と、中上段グループのフィルタ容器22との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。同様に、中上段グループのフィルタ容器22と中下段グループのフィルタ容器23との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。更に、中下段グループのフィルタ容器23と下段グループのフィルタ容器24との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。
【0016】
次に第3の実施形態の濾過装置を図7乃至図9を参照して説明する。
第3の実施形態の濾過装置27は、図7に示されるように、濾過装置入口28、濾過装置出口29、ろ液排出口30を備えている。濾過装置27は、図7乃至図9に示されるような複数段にフィルタ容器31、32、33、34を複数個配列している。
この場合、上段グループのフィルタ容器31、中上段グループのフィルタ容器32、中下段グループのフィルタ容器33、及び下段グループのフィルタ容器34が縦方向に配列されている。上段グループのフィルタ容器31、中上段グループのフィルタ容器32、中下段グループのフィルタ容器33、及び下段グループのフィルタ容器34が横方向に複数個配置されている。
図7乃至図9に示される各フィルタ容器31、32、33、34は、図10に示されるフィルタ容器1と同様な構造であって、フィルタ容器入口31a、32a、33a、34aから注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部31b、32b、33b、34bから排出され、粒子が実質的に分散状態となって濃縮された懸濁液がフィルタ容器排出口31c、32c、33c、34cから排出できる構成である。なお、フィルタ容器側壁部31b、32b、33b、34bから排出されたろ液は、ろ液排出口30から排出される。
【0017】
この場合、上段グループのフィルタ容器31内の粒子排出路の排出方向は、図7に示されるように左斜め勾配になっている。中上段グループのフィルタ容器32内の粒子排出路の排出方向は、右斜め勾配になっている。中下段グループのフィルタ容器33内の粒子排出路の排出方向は左斜め勾配になっている。下段グループのフィルタ容器34内の粒子排出路の排出方向は右斜め勾配になっている。
上段グループのフィルタ容器排出口31cは、中上段グループのフィルタ容器入口32aと結合しているので、フィルタ容器排出口31cから出た懸濁液は、中段グループのフィルタ容器32aから入る。中上段グループのフィルタ容器排出口32cは、中下段グループのフィルタ容器入口33aと結合しているので、中上段のフィルタ容器32の排出口22cから出た懸濁液は、中下段のフィルタ容器入口33aから入る。中下段グループのフィルタ容器排出口33cは、下段グループのフィルタ容器入口34aと結合しているので、中下段のフィルタ容器排出口33cから出た懸濁液は、下段グループのフィルタ容器入口34aから入る。下段グループのフィルタ容器排出口34cから出た濃縮された懸濁液は、濾過装置出口29から出る。
このような上流側の前記フィルタ容器内の粒子の排出方向と、下流側の前記フィルタ容器内の粒子の排出方向とが交差するように、上流側及び下流側のフィルタ容器の粒子排出路を形成したので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
なお、必要に応じて、上段グループのフィルタ容器31と、中上段グループのフィルタ容器32との間に、第1の実施形態のような懸濁液貯留部を設けてもよい。同様に、中上段グループのフィルタ容器32と中下段グループのフィルタ容器33との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。更に、中下段グループのフィルタ容器33と下段グループのフィルタ容器34との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。
【0018】
本システムの有効性を実証するため、図11の(B)、(C)に示すセラミックフィルターを図11(A)の濾過装置部に取り付け濾過実験を行った。セラミックフィルター(B)、(C)の内径は共に9mm有効濾過長さも共に200mmで濾過面積は等しくしてある。
フィルター(B)には懸濁液溜めがないが、フィルター(C)では有効濾過長さ100mmのフィルターが、懸濁液貯留部としての懸濁液溜めを挟んで連結されている。
試料には粒子径4μmのセリサイト懸濁液を用いた。懸濁液の濃度は1vol.%で分散剤として3%の水ガラスが添加してある。濾過圧力は0.2MPaで、最初バルブV2を閉じ濾過装置内の平均濃度が10vol%になるまでバルブV1より濾液を流出させる。濾過装置内の平均濃度は排出濾液量から計算した。所定の濃度に達した後、バルブV2をわずかに開けて、濾液量と濾過速度の関係をフィルター(B)1段とフィルター(C)2段の濾過装置について測定した結果が図12である。図から明らかなとおり、有効濾過長が同じでも2段にした方が濾過速度が再現性を超えて大きくなっており、フィルターを2段(多段)にし、その間に濾液溜めを設けることで濾過性能が改善されることを示された。
【0019】
この発明は、上記第1乃至第3の実施の形態に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。例えば、濾過装置に使用するフィルタ容器の個数は上記実施の形態に限定されず、任意の変更が可能である。または流路をジグザグか螺旋状にして混合撹拌を促進することも可能である。流路を流れ方向に幾つかの区間に区切り、それぞれの区間の流路をずらすように構成すれば、実施の形態以外の変形可能である。特に、区間の間に液溜め部を設けるように構成すれば、混合・撹拌を促進することになる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の濾過装置は、大量処理対応型ケークレス高濃縮連続ろ過システムとして使用できる。そのシステムは、液中に分散している微粒子を濃縮し分離する技術は、選鉱工程や水処理工程のみならず、各種藻類(アオコ)の処理や河川汚泥や海洋の浚渫汚泥処理などの環境分野、シリコンウエハーの化学機械研磨(CMP)廃液処理、晶析による微粒子製造工程などの先端産業分野やリサイクルによる付加価値の高い物質の湿式粉砕・回収などの分野など幅広い分野において実用化できる。
本システムは、対象とする固液分散系に対して適切な分散剤を選択し、適切な投入量が決定できれば、従来のろ過システムに比べ次のような優位性をもっている。即ち、ケークの掻き取り機構を必要としないため、単位体積当りのろ過面積を大きくできる。可動部がないため、省エネルギー化、メンテナンスフリー化が可能である。可動部が無いことは、装置の構造を簡単にし、スケールアップを容易にするが、懸濁液を混合撹拌する機構を付加しないと、チャンネリングや閉塞を起こしやすくなるが、本システムのように、懸濁液の流路を変え途中に、懸濁液溜め部を設けることで、濃縮懸濁液の混合撹拌を促進する。
【0021】
本システムの場合、更に以下の効果がある。装置の小型化がしやすく、装置の設置面積が少なくてすむため、狭い場所にも容易に設置可能である。基礎データを1回とることにより処理量および目的濃度に応じたシステムの設計が可能である。システムのコンポーネント化が可能であるため、処理量、目的濃度に対して柔軟に対応可能である。連続運転が容易である。高濃度の流動状態を保ったままで粒子を回収できる。分散操作を施された粒子を分散状態のまま濃縮できるため、比較的簡単な乾燥工程(操作)ですむなど生産工程および日程等を短縮できる。金属イオンを含む凝集剤が不要なため、凝集剤による製品への悪影響が取り除かれる。特に大量水処理するためには、現在では広大な敷地と大量の凝集剤を使用してシックナーなどで半回分的に時間をかけて処理したり、天日で乾燥させたりしているが、本濃縮システムを使用すれば、従来の方法よりも高濃度の粒子懸濁液を短時間で連続に得られ、しかも設置面積が小さくてすむため、土地を有効利用できるようになる。
また、現在は選鉱分野や製鉄分野においては鉄化合物等の汚泥処理に有効な処理技術がなく大きな問題となっているが、本システムにより鉄化合物等の汚泥処理およびその鉄化合物の再利用が容易に可能となれば、本システムを中核とした新たなシステムの開発・製造およびその運用技術等による新規事業の創出が予想される。さらに、河川や海洋の汚泥の減容化による産業廃棄物処理費用の低減、国内のみならず世界的に急務とされている湖沼などの水質汚染につながるアオコなどの藻類の回収処理などの環境問題・社会問題の解決の必要性から、大きな市場規模になると期待される。
本システムは、鉄化合物、汚泥およびアオコという無機および有機物質を含む粒子懸濁液を対象としているが、粒子懸濁液に対して適切な分散剤および分散条件を探すことができれば、広範な粒子懸濁液に対応が可能となる。さらに汎用性の高い分散剤が開発されれば、本システムの適用範囲はさらに広がると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の濾過装置を側方からみた場合の概念図である。
【図2】第1の実施の形態の濾過装置の一部を斜め上方からみた場合の概念図である。
【図3】第1の実施の形態の濾過装置の断面を上方からみた場合の概念図である。
【図4】本発明を具体化した第2の実施の形態の濾過装置を側方からみた場合の概念図である。
【図5】第2の実施の形態の濾過装置の一部を斜め上方からみた場合の概念図である。
【図6】第2の実施の形態の濾過装置の断面を上方からみた場合の概念図である。
【図7】本発明を具体化した第3の実施の形態の濾過装置を側方からみた場合の概念図である。
【図8】第3の実施の形態の濾過装置の一部を斜め上方からみた場合の概念図である。
【図9】第3の実施の形態の濾過装置の断面を上方からみた場合の概念図である。
【図10】上記実施の形態の濾過装置に用いられるフィルタ容器を拡大して示す斜視図である。
【図11】濾過実験を示す概念図である。
【図12】濾液量と濾過速度の関係を測定した結果を示す図であって、フィルタ1段と2段の比較例を示している。
【符号の説明】
【0023】
7、17、27、濾過装置
11、12、13、21、22、23、24、31、32、33、34 フィルタ容器
11a、12a、13a、21a、22a、23a、24a、31a、32a、33a、34a フィルタ容器入口部
11b、12b、13b、21b、22b、23b、24b、31b、32b、33b、34bフィルタ容器側壁部
11c、12c、13c、21c、22c、23c、24c、31c、32c、33c、34cフィルタ容器出口部
14、15、16 懸濁液貯留部
【技術分野】
【0001】
本発明は懸濁液の濾過装置に関し、特に、連続的に大量の懸濁液を濃縮・濾過するのに好適な装置である。
【背景技術】
【0002】
従来から固液分離操作においては凝集剤が添加されてきているが、凝集剤の添加によってケークの含水率が上がり、ろ過に続く運搬・乾燥工程に大きな負荷をかけている。発明者は、凝集剤の変わりに分散剤を添加することにより、ろ過ケークよりも高濃度に濃縮されたスラリーを重力あるいは遠心力によって連続的に排出できることを実証した。(特許文献1)
【特許文献1】特開2005−66384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の装置では、粒子懸濁液が入口から出口まで流れる間に、懸濁液を混合・撹拌する領域がないため、チャンネリング(短絡)や閉塞を起こしやすいという課題があった。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、懸濁液を混合・撹拌することで、チャネリングや閉塞の発生を減らすことができる優れた濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明の濾過装置によれば、フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を複数縦方向に配列した濾過装置であって、上流側の前記フィルタ容器の排出口と下流側の前記フィルタ容器の入口との間に、懸濁液を貯留する懸濁液貯留部を設けたことを特徴とする。
このような濾過装置においては、上流側フィルタ容器排出口と下流側フィルタ容器入口との間の懸濁液貯留部は、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
【0005】
請求項2の発明の濾過装置によれば、請求項1に記載の濾過装置において、前記上流側フィルタ容器が横方向に複数個配置され、下流側フィルタ容器が横方向に複数個配置されており、該上流側フィルタ容器の位置が該下流側フィルタ容器の位置と横方向にずれて設置されていることを特徴とする。
このような濾過装置においては、上流側フィルタ容器の位置が該下流側フィルタ容器の位置と横方向にずれて設置されるので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌が促進される。
【0006】
請求項3の発明の濾過装置によれば、フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を縦方向に複数個配列した濾過装置であって、上流側の前記フィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向と、下流側の前記フィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向とが交差するように、上流側フィルタ容器及び下流側フィルタ容器を配置したことを特徴とする。
このような濾過装置においては、上流側のフィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向と、下流側のフィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向とが交差するように、上流側フィルタ容器及び下流側フィルタ容器が配置されるので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
【0007】
請求項4の発明の濾過装置によれば、フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を複数個縦方向に連結した濾過装置であって、上流側の前記フィルタ容器内の前記粒子の排出方向と、下流側の前記フィルタ容器内の前記粒子の排出方向とが交差するように、前記上流側及び前記下流側のフィルタ容器の粒子排出路を形成したことを特徴とする。
このような濾過装置においては、上流側のフィルタ容器内の粒子の排出方向と、下流側のフィルタ容器内の粒子の排出方向とが交差するように、上流側及び下流側のフィルタ容器内に粒子排出路を形成しているので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
【発明の効果】
【0008】
本発明よれば、懸濁液を混合・撹拌することで、チャネリングや閉塞の発生を減らすことができる。また、可動部がないので簡単な構造でチャンネリングや閉塞を防止できる。
また、装置のユニット化が可能であり、処理量、懸濁液濃度に対し柔軟に対応できる。 また、単一ユニットについて基礎データをとれば、容易に装置の設計が可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
最初に、本発明に至った経緯を説明する。
従来からこれらの固液分離操作においては凝集剤が添加され、凝集剤の良し悪しが分離性能・効率に支配的な影響を及ぼしている。凝集剤は、沈降濃縮においては粒子の沈降速度を増し、ろ過においては微粒子による目詰まりを防ぐこととケークのろ過抵抗を下げるために添加される。しかしケークのろ過抵抗が下がることは、ケークの含水率が高くなり固液分離効率が低下することを意味している。ケーク内の粒子充填率が10%を切ることも決して珍しくない。ケークの高い含水率は、ろ過に続く運搬・乾燥工程に大きな負荷をかけることになる。特に乾燥工程においては、省エネルギーのために含水率を少しでも下げることが切望されている。なお、ケーク(濾滓)とは、粒子懸濁液を濾材によって濾過したときに、濾材面上に捕捉されて堆積する粒子層をいうが、流動性はなくもろい固体として振る舞う特性を有する。
発明者は粒子を懸濁させた沈降管底部の静水圧を測定することにより、粒子の凝集状態を評価できる装置を開発した。本評価装置により、粒子濃度が40vol%近くまで濃縮されても、流動性を保つことができるスラリー調製条件を特定できるようになった。分散剤の添加により被処理懸濁液をこのような条件に調製すれば、高濃度に濃縮されたスラリーは重力あるいは遠心力によって連続的に排出できることになる。このことは、含水率低下だけでなく、掻き取り機構が不要となるため装置の小型化と連続運転が可能になることを意味している。更に、発明者は本原理に基づくろ過装置を試作し、代表的難ろ過性物質であるマイカ(セリサイト)の1vol%(3mass%)懸濁液をワンパスで35vol%(60mass%)まで連続的に濃縮することに成功している。
【0010】
液圧測定により粒子の分散・凝集状態を評価する原理は、以下のものである。粒子が液体中を自由に沈降するとき、粒子の質量は液体の粘性抵抗によって支えられる。そのため、容器底部の静水圧は単位面積あたりの水の質量と粒子質量の和となる。しかし粒子が容器底部に堆積すれば、粒子の質量は容器底部が支えるために静水圧は水の質量分だけとなる。したがって粒子がよく分散し粒子が個々に沈降していれば、容器底部の静水圧は高くなるし、粒子が凝集し容器底部までつながっていればその分静水圧は低くなるので、容器底部で静水圧を測定することにより分散・凝集状態を評価することができる。本システムは、粒子径0。5μm濃度20vol%のアルミナスラリーの回分沈降実験をアイカバストで容器底部の静水圧を測定しながら行ったところ、粒子がよく分散された条件下では濃度が40vol%まで濃縮されても静水圧はほとんど低下しない実験結果から発想された。側壁を濾材とした簡単な装置で実証実験を行い、連続して高濃度のスラリーを取り出せることを確認している。
【0011】
次に、本発明を具体化した実施の最良の形態の濾過装置について説明する。
本実施形態の濾過装置は、図10に示されるようなフィルタ容器1を用い、そのフィルタ容器1は、フィルタ容器入口2から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部3のフィルタ部3aから排出され、粒子が実質的に分散状態となって濃縮された懸濁液がフィルタ容器排出口4から排出できるように構成されている。
この場合、フィルタ容器側壁部3は、正面視ベース板型のフィルタ部3aと、これと同形の背面版3bとを側板3cで連結した構成であり、上部は開口してスラリーの導入口としてのフィルタ容器入口2になっている。フィルター部3aには多孔質セラミックパイプを用いるのが望ましい。
フィルタ容器排出口4の下縁部には排出口としてのハイプ5が連接されて、パイプ5には開閉弁6が取り付けられている。なお、フィルタ容器排出口4の下縁部には先細り形状である必要はなく、また、必ずしもハイプ5及び開閉弁6が取り付けられている必要はない。
懸濁液における粒子が実質的に分散状態であるか否かは、懸濁液をフィルタ容器1に入れてそのフィルタ容器1の内底部における懸濁液の液圧の変化をモニタすることにより判断することができる。即ち、フィルタ容器1の内底部における懸濁液の液圧が殆ど変化しない場合(pH=4.2の例参照)は、粒子が分散状態にある。換言すれば、フィルタ容器1の内底部での液圧が単位体積あたりの懸濁液質量に相当し、その状態が持続する場合、懸濁液は実質的に分散状態にあるといえる。これらの実証については、特開2005−66384号公報に詳細に記載されている。
なお、この本実施形態では、懸濁液のpH調製や界面活性剤等の分散剤を添加することにより、懸濁液の粒子を分散状態にすることができ、濾過過程においてケークの生成をなるべく防止しようとしている。
【0012】
次に第1の実施形態の濾過装置を図1乃至図3を参照して説明する。
第1の実施形態の濾過装置7は、図1に示されるように、濾過装置入口8、濾過装置出口9、ろ液排出口10を備えている。濾過装置7は、図1乃至図3に示されるように複数段にフィルタ容器11、12、13を複数個配列している。
この場合、上段グループのフィルタ容器11、中段グループのフィルタ容器12、及び下段グループのフィルタ容器13が縦方向に配列されている。上段グループのフィルタ容器11、中段グループのフィルタ容器12及び下段グループのフィルタ容器13は、横方向に複数個配置されている。
【0013】
上段グループのフィルタ容器11は、図3に示されるように、中段グループのフィルタ容器12と横方向に半ピッチ分ずれて設置されている。同様に、中段グループのフィルタ容器12は下段グループのフィルタ容器13と横方向に半ピッチ分ずれて設置されている。
各フィルタ容器11、12、13は、図10に示されるフィルタ容器1と同様な構造であって、入口11a、12a、13aから注入された懸濁液の濾液が、フィルタ容器側壁部11b、12b、13bから排出され、粒子が実質的に分散状態となって濃縮された懸濁液がフィルタ容器排出口11c、12c、13cから排出する構成を有している。なお、フィルタ容器側壁部11b、12b、13bから排出されたろ液は、ろ液排出口10から排出される。
上段グループのフィルタ容器11の排出口11cと、中段グループのフィルタ容器入口1 2aとの間に、懸濁液を貯留する第1懸濁液貯留部14が設けられている。中段グループのフィルタ容器排出口12cと、下段グループのフィルタ容器入口13aとの間に、懸濁液を貯留する第2懸濁液貯留部15が設けられている。下段グループのフィルタ容器13の排出口13c側には、懸濁液を貯留する第3懸濁液貯留部16が設けられている。
第1懸濁液貯留部14は、上段フィルタ容器排出口11cから出た懸濁液を混合・攪拌する機能を促進して、中段グループのフィルタ容器入口12aから懸濁液を入れる。同様に、第2懸濁液貯留部15は、中段フィルタ容器排出口12cから出た懸濁液を混合・攪拌する機能を促進して、下段グループのフィルタ容器入口13aから懸濁液を入れる。第3懸濁液貯留部は、下段フィルタ容器排出口13cから出た懸濁液を混合・攪拌する機能を促進して、濾過装置出口9から濃縮した懸濁液を排出する。
このような上流側フィルタ容器排出口と下流側フィルタ容器入口との間の懸濁液貯留部は、懸濁液を混合・攪拌する機能を促進する。また、上流側フィルタ容器の位置が該下流側フィルタ容器の位置と横方向にずれて設置されるので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌が促進される。
【0014】
次に第2の実施形態の濾過装置を図4乃至図6を参照して説明する。
第2の実施形態の濾過装置17は、図4に示されるように、濾過装置入口18、濾過装置出口19、ろ液排出口20を備えている。濾過装置17は、図4乃至図6に示されるような複数段にフィルタ容器21、22、23、24を複数個に配列している。
この場合、上段グループのフィルタ容器21、中上段グループのフィルタ容器22、中下段グループのフィルタ容器23、及び下段グループのフィルタ容器24が縦方向に配列されている。上段グループのフィルタ容器21、中上段グループのフィルタ容器22、中下段グループのフィルタ容器23、及び下段グループのフィルタ容器24が横方向に複数個配置されている。
図4乃至図6に示される各フィルタ容器21、22、23、24は、図10に示されるフィルタ容器1と同様な構造であって、フィルタ容器入口21a、22a、23a、24aから注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部21b、22b、23b、24bから排出され、粒子が実質的に分散状態となって濃縮された懸濁液がフィルタ容器排出口21c、22c、23c、24cから排出する構成を有している。なお、フィルタ容器側壁部21b、22b、23b、24bから排出されたろ液は、ろ液排出口20から排出される。
【0015】
この場合、上段グループのフィルタ容器側壁部21bから排出される濾液排出方向は、中上段グループのフィルタ容器側壁部22cから排出される濾液排出方向と90度交差するように、フィルタ容器21、22は設置されている。中上段グループのフィルタ容器側壁部22cから排出される濾液排出方向は、中下段グループのフィルタ容器側壁部23cから排出される濾液排出方向と90度交差するように、フィルタ容器22、23は設置されている。中下段グループのフィルタ容器側壁部23cから排出される濾液排出方向は、下段グループのフィルタ容器側壁部24cから排出される濾液排出方向と90度交差するように、フィルタ容器23、24は設置されている。なお、交差する角度は必ずしも90度である必要はなく、適宜変更可能である。
このような構成の場合、上段フィルタ容器排出口21cから出た懸濁液は、中段グループのフィルタ容器入口22aから入る。同様に、中上段グループのフィルタ容器排出口22cから出た懸濁液は、中下段グループのフィルタ容器入口23aから入る。同様に、中下段グループのフィルタ容器排出口23cから出た懸濁液は、下段グループのフィルタ容器入口24aから入る。下段グループのフィルタ容器排出口24cから出た濃縮された懸濁液は、濾過装置出口19から出る。
このような上流側のフィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向と、下流側のフィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向とが交差するように、上流側フィルタ容器及び下流側フィルタ容器が配置されるので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
なお、必要に応じて、上段グループのフィルタ容器21と、中上段グループのフィルタ容器22との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。同様に、中上段グループのフィルタ容器22と中下段グループのフィルタ容器23との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。更に、中下段グループのフィルタ容器23と下段グループのフィルタ容器24との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。
【0016】
次に第3の実施形態の濾過装置を図7乃至図9を参照して説明する。
第3の実施形態の濾過装置27は、図7に示されるように、濾過装置入口28、濾過装置出口29、ろ液排出口30を備えている。濾過装置27は、図7乃至図9に示されるような複数段にフィルタ容器31、32、33、34を複数個配列している。
この場合、上段グループのフィルタ容器31、中上段グループのフィルタ容器32、中下段グループのフィルタ容器33、及び下段グループのフィルタ容器34が縦方向に配列されている。上段グループのフィルタ容器31、中上段グループのフィルタ容器32、中下段グループのフィルタ容器33、及び下段グループのフィルタ容器34が横方向に複数個配置されている。
図7乃至図9に示される各フィルタ容器31、32、33、34は、図10に示されるフィルタ容器1と同様な構造であって、フィルタ容器入口31a、32a、33a、34aから注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部31b、32b、33b、34bから排出され、粒子が実質的に分散状態となって濃縮された懸濁液がフィルタ容器排出口31c、32c、33c、34cから排出できる構成である。なお、フィルタ容器側壁部31b、32b、33b、34bから排出されたろ液は、ろ液排出口30から排出される。
【0017】
この場合、上段グループのフィルタ容器31内の粒子排出路の排出方向は、図7に示されるように左斜め勾配になっている。中上段グループのフィルタ容器32内の粒子排出路の排出方向は、右斜め勾配になっている。中下段グループのフィルタ容器33内の粒子排出路の排出方向は左斜め勾配になっている。下段グループのフィルタ容器34内の粒子排出路の排出方向は右斜め勾配になっている。
上段グループのフィルタ容器排出口31cは、中上段グループのフィルタ容器入口32aと結合しているので、フィルタ容器排出口31cから出た懸濁液は、中段グループのフィルタ容器32aから入る。中上段グループのフィルタ容器排出口32cは、中下段グループのフィルタ容器入口33aと結合しているので、中上段のフィルタ容器32の排出口22cから出た懸濁液は、中下段のフィルタ容器入口33aから入る。中下段グループのフィルタ容器排出口33cは、下段グループのフィルタ容器入口34aと結合しているので、中下段のフィルタ容器排出口33cから出た懸濁液は、下段グループのフィルタ容器入口34aから入る。下段グループのフィルタ容器排出口34cから出た濃縮された懸濁液は、濾過装置出口29から出る。
このような上流側の前記フィルタ容器内の粒子の排出方向と、下流側の前記フィルタ容器内の粒子の排出方向とが交差するように、上流側及び下流側のフィルタ容器の粒子排出路を形成したので、懸濁液の流路にずれが生じ、懸濁液の混合・攪拌を促進する。
なお、必要に応じて、上段グループのフィルタ容器31と、中上段グループのフィルタ容器32との間に、第1の実施形態のような懸濁液貯留部を設けてもよい。同様に、中上段グループのフィルタ容器32と中下段グループのフィルタ容器33との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。更に、中下段グループのフィルタ容器33と下段グループのフィルタ容器34との間に、第1の実施形態に設けられた懸濁液貯留部を設けてもよい。
【0018】
本システムの有効性を実証するため、図11の(B)、(C)に示すセラミックフィルターを図11(A)の濾過装置部に取り付け濾過実験を行った。セラミックフィルター(B)、(C)の内径は共に9mm有効濾過長さも共に200mmで濾過面積は等しくしてある。
フィルター(B)には懸濁液溜めがないが、フィルター(C)では有効濾過長さ100mmのフィルターが、懸濁液貯留部としての懸濁液溜めを挟んで連結されている。
試料には粒子径4μmのセリサイト懸濁液を用いた。懸濁液の濃度は1vol.%で分散剤として3%の水ガラスが添加してある。濾過圧力は0.2MPaで、最初バルブV2を閉じ濾過装置内の平均濃度が10vol%になるまでバルブV1より濾液を流出させる。濾過装置内の平均濃度は排出濾液量から計算した。所定の濃度に達した後、バルブV2をわずかに開けて、濾液量と濾過速度の関係をフィルター(B)1段とフィルター(C)2段の濾過装置について測定した結果が図12である。図から明らかなとおり、有効濾過長が同じでも2段にした方が濾過速度が再現性を超えて大きくなっており、フィルターを2段(多段)にし、その間に濾液溜めを設けることで濾過性能が改善されることを示された。
【0019】
この発明は、上記第1乃至第3の実施の形態に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。例えば、濾過装置に使用するフィルタ容器の個数は上記実施の形態に限定されず、任意の変更が可能である。または流路をジグザグか螺旋状にして混合撹拌を促進することも可能である。流路を流れ方向に幾つかの区間に区切り、それぞれの区間の流路をずらすように構成すれば、実施の形態以外の変形可能である。特に、区間の間に液溜め部を設けるように構成すれば、混合・撹拌を促進することになる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の濾過装置は、大量処理対応型ケークレス高濃縮連続ろ過システムとして使用できる。そのシステムは、液中に分散している微粒子を濃縮し分離する技術は、選鉱工程や水処理工程のみならず、各種藻類(アオコ)の処理や河川汚泥や海洋の浚渫汚泥処理などの環境分野、シリコンウエハーの化学機械研磨(CMP)廃液処理、晶析による微粒子製造工程などの先端産業分野やリサイクルによる付加価値の高い物質の湿式粉砕・回収などの分野など幅広い分野において実用化できる。
本システムは、対象とする固液分散系に対して適切な分散剤を選択し、適切な投入量が決定できれば、従来のろ過システムに比べ次のような優位性をもっている。即ち、ケークの掻き取り機構を必要としないため、単位体積当りのろ過面積を大きくできる。可動部がないため、省エネルギー化、メンテナンスフリー化が可能である。可動部が無いことは、装置の構造を簡単にし、スケールアップを容易にするが、懸濁液を混合撹拌する機構を付加しないと、チャンネリングや閉塞を起こしやすくなるが、本システムのように、懸濁液の流路を変え途中に、懸濁液溜め部を設けることで、濃縮懸濁液の混合撹拌を促進する。
【0021】
本システムの場合、更に以下の効果がある。装置の小型化がしやすく、装置の設置面積が少なくてすむため、狭い場所にも容易に設置可能である。基礎データを1回とることにより処理量および目的濃度に応じたシステムの設計が可能である。システムのコンポーネント化が可能であるため、処理量、目的濃度に対して柔軟に対応可能である。連続運転が容易である。高濃度の流動状態を保ったままで粒子を回収できる。分散操作を施された粒子を分散状態のまま濃縮できるため、比較的簡単な乾燥工程(操作)ですむなど生産工程および日程等を短縮できる。金属イオンを含む凝集剤が不要なため、凝集剤による製品への悪影響が取り除かれる。特に大量水処理するためには、現在では広大な敷地と大量の凝集剤を使用してシックナーなどで半回分的に時間をかけて処理したり、天日で乾燥させたりしているが、本濃縮システムを使用すれば、従来の方法よりも高濃度の粒子懸濁液を短時間で連続に得られ、しかも設置面積が小さくてすむため、土地を有効利用できるようになる。
また、現在は選鉱分野や製鉄分野においては鉄化合物等の汚泥処理に有効な処理技術がなく大きな問題となっているが、本システムにより鉄化合物等の汚泥処理およびその鉄化合物の再利用が容易に可能となれば、本システムを中核とした新たなシステムの開発・製造およびその運用技術等による新規事業の創出が予想される。さらに、河川や海洋の汚泥の減容化による産業廃棄物処理費用の低減、国内のみならず世界的に急務とされている湖沼などの水質汚染につながるアオコなどの藻類の回収処理などの環境問題・社会問題の解決の必要性から、大きな市場規模になると期待される。
本システムは、鉄化合物、汚泥およびアオコという無機および有機物質を含む粒子懸濁液を対象としているが、粒子懸濁液に対して適切な分散剤および分散条件を探すことができれば、広範な粒子懸濁液に対応が可能となる。さらに汎用性の高い分散剤が開発されれば、本システムの適用範囲はさらに広がると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の濾過装置を側方からみた場合の概念図である。
【図2】第1の実施の形態の濾過装置の一部を斜め上方からみた場合の概念図である。
【図3】第1の実施の形態の濾過装置の断面を上方からみた場合の概念図である。
【図4】本発明を具体化した第2の実施の形態の濾過装置を側方からみた場合の概念図である。
【図5】第2の実施の形態の濾過装置の一部を斜め上方からみた場合の概念図である。
【図6】第2の実施の形態の濾過装置の断面を上方からみた場合の概念図である。
【図7】本発明を具体化した第3の実施の形態の濾過装置を側方からみた場合の概念図である。
【図8】第3の実施の形態の濾過装置の一部を斜め上方からみた場合の概念図である。
【図9】第3の実施の形態の濾過装置の断面を上方からみた場合の概念図である。
【図10】上記実施の形態の濾過装置に用いられるフィルタ容器を拡大して示す斜視図である。
【図11】濾過実験を示す概念図である。
【図12】濾液量と濾過速度の関係を測定した結果を示す図であって、フィルタ1段と2段の比較例を示している。
【符号の説明】
【0023】
7、17、27、濾過装置
11、12、13、21、22、23、24、31、32、33、34 フィルタ容器
11a、12a、13a、21a、22a、23a、24a、31a、32a、33a、34a フィルタ容器入口部
11b、12b、13b、21b、22b、23b、24b、31b、32b、33b、34bフィルタ容器側壁部
11c、12c、13c、21c、22c、23c、24c、31c、32c、33c、34cフィルタ容器出口部
14、15、16 懸濁液貯留部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を縦方向に複数個配列した濾過装置であって、
上流側の前記フィルタ容器排出口と下流側の前記フィルタ容器入口との間に、懸濁液を貯留する懸濁液貯留部を設けたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記上流側フィルタ容器が横方向に複数個配置され、下流側フィルタ容器が横方向に複数個配置されており、該上流側フィルタ容器の位置が該下流側フィルタ容器の位置と横方向にずれて設置されていることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を縦方向に複数個配列した濾過装置であって、
上流側の前記フィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向と、下流側の前記フィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向とが交差するように、上流側フィルタ容器及び下流側フィルタ容器を配置したことを特徴とする濾過装置。
【請求項4】
フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を複数個縦方向に連結した濾過装置であって、
上流側の前記フィルタ容器内の前記粒子の排出方向と、下流側の前記フィルタ容器内の前記粒子の排出方向とが交差するように、前記上流側及び前記下流側のフィルタ容器内の粒子排出路を形成したことを特徴とする濾過装置。
【請求項1】
フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を縦方向に複数個配列した濾過装置であって、
上流側の前記フィルタ容器排出口と下流側の前記フィルタ容器入口との間に、懸濁液を貯留する懸濁液貯留部を設けたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記上流側フィルタ容器が横方向に複数個配置され、下流側フィルタ容器が横方向に複数個配置されており、該上流側フィルタ容器の位置が該下流側フィルタ容器の位置と横方向にずれて設置されていることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を縦方向に複数個配列した濾過装置であって、
上流側の前記フィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向と、下流側の前記フィルタ容器側壁部から排出される濾液排出方向とが交差するように、上流側フィルタ容器及び下流側フィルタ容器を配置したことを特徴とする濾過装置。
【請求項4】
フィルタ容器入口から注入された懸濁液の濾液が、該フィルタ容器側壁部から排出され、粒子が実質的に分散状態となった懸濁液がフィルタ容器排出口から排出するフィルタ容器を複数個縦方向に連結した濾過装置であって、
上流側の前記フィルタ容器内の前記粒子の排出方向と、下流側の前記フィルタ容器内の前記粒子の排出方向とが交差するように、前記上流側及び前記下流側のフィルタ容器内の粒子排出路を形成したことを特徴とする濾過装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−229708(P2007−229708A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24302(P2007−24302)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
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