説明

濾過装置

【課題】チェーンコンベアの軸に切り粉が絡まない濾過装置を提供すること。
【解決手段】濾過装置は、切り粉を含む使用済みの洗浄液が投入される、端部に傾斜部が形成された廃液槽を備え、複数の掻き出し板が装着された2本のチェーンを備え、傾斜部の下面を斜め上方に移動するチェーンコンベアを使用して傾斜部の上部から切り粉を排出する。そして、チェーンコンベアが折り返される傾斜部の端部に、2本のチェーンを駆動する歯車をそれぞれ備え、左右に分離した同心の2本の軸を備える。更にチェーンによって囲まれた範囲以外の位置に配置された1本の駆動軸が2本の駆動用チェーンを介して前記した2本の軸とそれぞれ連結しており、駆動軸がモーターによって駆動される。チェーンコンベアの端部の中央部分には軸が存在せず、軸に切り粉が絡むことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置に関するものであり、特に、工作機械等から排出される洗浄液と切り粉とを分離し、洗浄液を濾過する濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、旋盤等の工作機械においては、加工中の切り粉の除去や冷却に洗浄液を使用しており、工作機械等から排出される洗浄液と切り粉とを分離し、洗浄液を濾過する濾過装置として各種の濾過装置が提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、切削液の受入れ範囲が広く、濾過部材を小さくしても切削液を良く濾過して、濾過した液を能率良く排出することのできる切削液の濾過装置が開示されている。この濾過装置においては、切削機械のベッドの下部で切削液(洗浄液)が落下する部分に配置する濾過槽の一端を斜め上方に延設してその上端部にモ−タを装着すると共に、前記濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取付けたコンベアを内装し、該コンベアを前記モ−タにより駆動し、前記濾過槽の延設上端部側にコンベアの掻き取り部材により搬送された切り粉の排出部を形成している。
【特許文献1】特開平07−204427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の濾過装置においては、長い切り粉が掻き取り部材に絡んで移動し、更に端部にある駆動軸に絡まって次第に大きくなり、運転に支障をきたすという問題点があった。また、装置を止めてこの絡んだ切り粉を除去するのに手間がかかるという問題点もあった。本発明は上記した課題を解決し、掻き出し板が装着されたチェーンコンベアを使用して切り粉を排出する濾過装置において、チェーンコンベアの軸に切り粉が絡まない濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の濾過装置は、切り粉を含む使用済みの洗浄液が投入される、端部に傾斜部が形成された廃液槽を備え、前記廃液槽の内部に配置され、間に複数の掻き出し板が装着された2本のチェーンを備え、前記傾斜部の下面を斜め上方に移動するチェーンコンベアを使用して前記傾斜部の上部から前記切り粉を排出する濾過装置において、
前記チェーンコンベアが折り返される傾斜部の端部に、前記2本のチェーンを駆動する歯車をそれぞれ備え、左右に分離した同心の2本の軸を備えたことを主要な特徴とする。
【0006】
また、前記した濾過装置において、前記チェーンによって囲まれた範囲以外の位置に配置された1本の駆動軸が2本の駆動用チェーンを介して前記2本の軸とそれぞれ連結しており、前記駆動軸がモーターによって駆動される点にも特徴がある。
【0007】
また、前記した濾過装置において、前記チェーンコンベアが折り返される他方の端部に、前記2本のチェーンのそれぞれと係合する円板を備え、左右に分離した同心の2本の軸を備えた点にも特徴がある。また、前記した濾過装置において、更に、前記チェーンコンベアの中間において前記チェーンコンベアの2本のチェーンと係合して回転するドラムフィルター装置を備えた点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の濾過装置は、チェーンコンベアの軸を左右に分離してそれぞれを外部から同期して駆動することにより、中央部分には軸が存在せず、軸に切り粉が絡まないので、保守が容易となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例においては水系洗浄液を使用し、回転するドラムフィルターを備えた濾過装置に本発明を適用した例について開示するが、本発明は洗浄液の種類、フィルターの有無や形式に関わらず実施可能である。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の濾過装置の構成を示す側面図および平面図である。本発明の濾過装置は大きく、廃液槽20と濾過された洗浄液が溜まる濾過液槽10に分けられる。廃液槽20は濾過液槽10の内部に配置されている。廃液槽20の一端の上部には図示しない旋盤等の工作機械から切り粉(金属片)が混ざった使用済みの洗浄液(廃液)が投入される開口部21が設けられている。
【0011】
廃液槽20の中央には、軸が水平になるように設置され、チェーンコンベア26と係合して回転するドラムフィルター22が配置されており、ドラムフィルター22はドラム外部から内部へ廃液を濾過して廃液槽20の側面の開口部から濾過液槽10に流出させるようになっている。ドラムフィルター22の上部には保守点検用ののぞき窓29が設けられている。また、廃液槽20の側面には廃液の水位の上限を検出するフロートスイッチ34が装着されている。
【0012】
廃液槽20の上記開口部21と反対側の端部は斜め上方に延長されて傾斜部となっており、傾斜部の上端部にはチェーンコンベア26が係合している歯車23を駆動する駆動軸63およびこの駆動軸63を駆動するモーター60が装着されている。詳細については後述する。
【0013】
チェーンコンベア26のチェーンは廃液槽20の長手方向の側面に沿って、開口部21の下部に設けられたチェーン折り返しのための円板29と傾斜部上端のモーター36および駆動軸60によって駆動される歯車23との間に装着されている。チェーン折り返しのための円板29は歯車でもよいが、円板の方が切り粉等が絡み難く、好適である。
【0014】
図6は、本発明の濾過装置のチェーンの構成を示す側面図である。2本のチェーンの間には所定の間隔で、切り粉排出口25から切り粉収納箱31に切り粉32を掻き出すための、断面がL字状の金属板である掻き出し板27が装着されている。切り粉32は傾斜部の下面を押し上げられている間に洗浄液と分離し、洗浄液は廃液槽20に流れ下る。なお、チェーンは自重にて廃液槽20の底板と接触しながら移動するようにしてもよいが、チェーンの下部にレールを設けて掻き出し板27が1mm程度の隙間を開けて移動するようにしてもよい。
【0015】
開口部21とドラムフィルター22の中間のチェーンコンベア26の上部には、ドラムフィルター22の底面の高さよりも低い位置まで延びた抑止板28が傾斜して装着されている。この抑止板28は、L字状の掻き出し板27によって大量の切り粉がドラムフィルター22の下部に移動してフィルターが損傷することを防止するためのものである。
【0016】
廃液槽20の水平部分と傾斜部との接続部分である底面の湾曲部にはチェーンコンベア26が底面から浮き上がらないようにガイドレール30が設けられているが、ドラムフィルター22をこの湾曲部に配置することにより、コンベアの浮き上がりを抑止し、ガイドレール30を省略することも可能である。
【0017】
濾過液槽10は廃液槽20の側面の開口部から流出した濾過液を溜めるものであり、濾過液槽10には水位計13、濾過液を図示しない工作機械へ送出するための複数のポンプ12、およびストレーナ(フィルタ)16および圧力計15を介して濾過液をドラムフィルター22へ送出するためのポンプ11とを備えている。キャスター14は濾過装置全体を移動させるための脚輪である。
【0018】
図2は、本発明の濾過装置内の洗浄液の流れを示す断面図である。図2上部は縦断面図であり、下部はA−A部分の水平断面図である。廃液槽20の一端の上部に設けられた開口部21には、図示しない旋盤等の工作機械から切り粉(金属片)が混ざった使用済みの洗浄液が流入する。流入した切り粉は廃液槽20の底に溜まり、チェーンによって移動する掻き出し板27により、排出口25へ掻き出される。
【0019】
廃液41はドラムフィルター22の周囲に装着された例えば金属製の網からなるフィルター部材44によって濾過され、ドラムの内部に流入し、更に廃液槽20の側面の開口部48から濾過液槽10に流出して溜まる。濾過液槽10に溜まった濾過液17はポンプ12によって図示しない工作機械へ送出されると共に、フィルター洗浄用のポンプ11によりストレーナのフィルタ42を介してドラムフィルター22へ送出され、ドラムフィルター22の中空軸を介して、液面より上部に配置されたノズル40からフィルター部材44の内面に噴射される。この洗浄液の噴射によってフィルター部材44の目詰まりを減少させ、濾過能力を回復させる。
【0020】
図3は、本発明の濾過装置のドラムフィルター22の構成を示す縦断面図である。ドラムフィルター22は略8角柱の形状であり、8角柱の両端面の円板35の縁はチェーンコンベア26のチェーンと係合する歯車53となっている。チェーンコンベア26のチェーンはドラムフィルター22の上部において円板35の歯車53と嵌合しており、チェーンコンベア26の移動に伴ってドラムフィルター22も回動する。但し、ドラムフィルター22の下部においては円板35の歯車53とチェーンコンベア26のチェーンは嵌合していない。
【0021】
円板35のシール51より中心軸46に近い部分には濾過液が通過するための複数の開口47が設けられている。円板35はボールベアリング45によって中心軸46に回動可能に固着されている。中空の中心軸46は廃液槽20に固着されており、中心軸46の内部にはポンプ11から濾過液が供給されて、中心軸46と連結しているノズル40からフィルター部材44の内面に噴射される。
【0022】
円板35と対向する廃液槽20の内面には円板35の表面を摺動しながら液密状態を維持するリング状のシール50、51が2重に装着されており、このシール50、51によって廃液41と濾過液17とが分離されている。フィルター部材44によって濾過されてドラムフィルター22内部に流入した濾過液は、円板35の開口47、リング状のシール50、51の内側、廃液槽20の側面の開口部48を経て濾過液槽10内に流出し、溜まる。
【0023】
ドラムフィルター22を構成する円板35の内側にはフィルター部材44の周囲を支持するためのリブ49、およびリブ49と同一平面を備え、2枚の円板35の間の8角柱の側面の辺の部分に設けられた8本の支持板52が固着されている。4枚のフィルター部材44はリブ49および支持板52にボルトによって固定される。
【0024】
フィルター部材44は8角柱の側面の隣接する2平面を接続した形状をなしている。フィルター部材44は、金属製のフィルター枠、銅などの経験的に抗菌あるいは殺菌作用のあることが知られている金属製の網、パッキンの3層からなっている。網は、抗菌あるいは殺菌性があるとされている金属、例えば、銅、銀、ニッケル、コバルト、錫、水銀のいずれか、あるいは少なくともこれらの金属のいずれか1つを含む合金製の金網であってもよい。
【0025】
更に任意の材質(例えばステンレス)の金網に上記した金属あるいはその合金がめっきされるなどして少なくとも表面の一部に露出している金網であってもよい。金網は例えば平畳織りあるいは綾畳織りと呼ばれる折り方で織られた金網を用いることにより、平織りよりも耐久性に優れたフィルターを得ることができる。金網の目の大きさは必要に応じて選択可能である。
【0026】
図4は、本発明の濾過装置のチェーンコンベアの要部構成を示す断面図である。また、図5は、本発明の濾過装置のチェーンコンベアの要部構成を示す側面図である。なお、図4は図1に示すB方向から見た断面を示しており、図5はチェーン26が水平に描かれているが、実際は図1に示すように傾斜している。
【0027】
2本のチェーンと係合している2個の歯車23はそれぞれ軸80に固着されている。左右に分離している2本の同心の軸80は、それぞれ2個のボールベアリングを備えた軸受け82によって回動可能に支持されている。軸受け82は軸受け支持板83に固着され、支持板83は廃液槽20に固着された2枚のガイド部材84によって摺動可能に支持されていると共に、チェーンのテンション調整用ボルト87と当接している。
【0028】
テンション調整用ボルト87は位置調節可能に廃液槽20に固着されている。軸80はチェーンによって斜め下方に引っ張られているので、テンション調整用ボルト87の位置を調節することにより、チェーンのテンションを調節することができる。
【0029】
なお、駆動軸63は、駆動軸63と軸80とを結ぶ線が軸受け支持板83の摺動方向と直角になるように配置されているので、テンション調整用ボルト87の位置を調節しても駆動軸63と軸80との距離はあまり変化しない。しかし、距離が大きく変化した場合には、軸受け64、65を廃液槽20に固着しているボルト70の長さを調節することによって駆動軸63と軸80との距離を調整する。
【0030】
2本の軸80の外側にはそれぞれ歯車81が固着されており、チェーン75を介して駆動軸63に固着された2個の歯車66、67と連結している。駆動軸63は、2個の軸受け64、65によって回動可能に支持されると共に、トルクリミッター装置62、減速ギア装置61を介してモーター60により駆動される。
【0031】
2本の軸80は1本の駆動軸63とチェーン75によって連結しているので、同期して回転する。また、駆動軸63は廃液槽の容器20の外部に配置されており、2個の歯車23の間には軸が存在しないので、掻き出し板27に絡んだ長い切り粉が更に軸に絡みつくことがない。
【0032】
更に、チェーンコンベア26が折り返される他方の端部においても図4に示した左右に分離した軸構成を採用してもよい。この場合には、2本のチェーンのそれぞれと係合する円板29を回動可能に支持する、左右に分離した同心の2本の軸を設ける。軸は単にそれぞれの円板29を独立して回動可能に支持すればよいので、駆動軸63に相当する軸等は不要である。このようにすれば他端においても軸への切り粉の絡みつきがなくなる。
【0033】
以上実施例を説明したが、本発明の濾過装置には以下のような変形例も考えられる。実施例においては、掻き出し板の形状として断面がL字状の例を開示したが、単に金属板をL字状に曲げただけでは長い切り粉が絡みやすい。そこで、L字状に曲げた2面の内のチェーンに固着される側の面の短手方向端部をなるべく曲率の大きな曲面とすることにより、切り粉が絡みにくくなり、絡んだ切り粉も脱落し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の濾過装置の構成を示す側面図および平面図である。
【図2】本発明の濾過装置内の洗浄液の流れを示す断面図である。
【図3】本発明の濾過装置のドラムフィルターの構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明の濾過装置のチェーンコンベアの構成を示す断面図である。
【図5】本発明の濾過装置のチェーンコンベアの構成を示す側面図である。
【図6】本発明の濾過装置のチェーンの構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
10…濾過液槽
11、12…ポンプ
13…水位計
14…キャスター
15…圧力計
16…ストレーナ(フィルタ)
17…濾過液
20…廃液槽
21…開口部
22…ドラムフィルター
23…歯車
25…切り粉排出口
26…チェーンコンベア
27…掻き出し板
28…抑止板
29…のぞき窓
30…ガイドレール
31…切り粉収納箱
60…モーター
63…駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り粉を含む使用済みの洗浄液が投入される、端部に傾斜部が形成された廃液槽を備え、前記廃液槽の内部に配置され、間に複数の掻き出し板が装着された2本のチェーンを備え、前記傾斜部の下面を斜め上方に移動するチェーンコンベアを使用して前記傾斜部の上部から前記切り粉を排出する濾過装置において、
前記チェーンコンベアが折り返される傾斜部の端部に、前記2本のチェーンを駆動する歯車をそれぞれ備え、左右に分離した同心の2本の軸を備えたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記チェーンによって囲まれた範囲以外の位置に配置された1本の駆動軸が2本の駆動用チェーンを介して前記2本の軸とそれぞれ連結しており、前記駆動軸がモーターによって駆動されることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記チェーンコンベアが折り返される他方の端部に、前記2本のチェーンのそれぞれと係合する円板を備え、左右に分離した同心の2本の軸を備えたことを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項4】
更に、前記チェーンコンベアの中間において前記チェーンコンベアの2本のチェーンと係合して回転するドラムフィルター装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−142716(P2010−142716A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321667(P2008−321667)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(593222001)株式会社田中製作所 (4)
【Fターム(参考)】