説明

濾過装置

【課題】 長期の連続使用を可能にするとともに、フィルタの逆洗浄効果を高め、逆洗浄時に廃棄される流体の量を節減し、逆洗浄の頻度を低くし、さらに構成を簡素なものとした濾過装置を実現する。
【解決手段】 流入弁9A、9Bを開き廃棄弁17A、17Bを閉じると、主流路に並列に設けられた2つのフィルタ21A、21Bには、順方向に重油が流れる。その結果、通常の濾過動作が行われる。通常の濾過動作の合間に時折、フィルタ21A、21Bの逆洗浄が行われる。逆洗浄の開始の時期は、流入口3と流出口29との間の重油の圧力差に基づいて定められる。流入弁9Aを閉じ廃棄弁17Aを開くと、フィルタ21Aには重油が逆方向に流れる。これにより、フィルタ21Aの逆洗浄が行われる。その間も、フィルタ21Bは濾過動作を継続する。続いて、フィルタ21Bの逆洗浄が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタの逆洗浄機能を有する濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の濾過装置として、複数のフィルタが並列に接続されており、濾過動作を継続しつつ、一部のフィルタについて逆洗浄を行うものが知られている。本出願人による特許文献1に記載の濾過装置はその一例である。この従来装置は、大型船舶の動力源の燃料である低質のC重油に含まれる塵芥を除去するストレーナ装置として構成されているものである。この従来装置は、ケーシングの内部にフィルタが円に沿って配列されており、回転する逆洗浄アームがフィルタの1つを順に塞ぐように構成されている。逆洗浄アームには、燃料の廃棄(ドレイン)口に連通する廃棄流路が形成されており、逆洗浄アームが1つのフィルタを塞ぐと、圧力の高いフィルタ下流の燃料が、当該フィルタを逆流し、廃棄流路を通って廃棄される。このとき、フィルタの上流側の面に付着していた塵芥が除去され、燃料と共に排出される。この逆洗浄が行われる期間においても、残りのフィルタは濾過動作を継続するので、長期にわたる連続運転が可能となっている。
【0003】
しかし、この従来装置には、逆洗浄アームという可動部が存在するために、逆洗浄を行うときに、逆洗浄アームとフィルタとの間から、圧力の高い燃料が廃棄流路内に流入するという問題点があった。そのため、逆洗浄の効果が十分には発揮できず、年に1〜2回という少ない頻度とは言え、フィルタをケーシングから取り出して洗浄する手作業を必要とする、という問題点があった。さらに、逆洗浄時に燃料が廃棄流路内に流入する分、燃料を無駄に廃棄しなければならない、という問題点があった。また、可動部である逆洗浄アームと、当該アームを回転駆動する駆動部を要するために、装置の構成が複雑であるという問題点があった。
【0004】
これに対し、2個のフィルタが並列に接続された濾過装置において、可動部を有することなく、弁の操作のみでフィルタを1つずつ逆洗浄するものも知られている(例えば、特許文献2及び特許文献3)。しかし、特許文献2に記載の濾過装置は、一方のフィルタについて逆洗浄が行われる間、他方のフィルタは濾過動作を停止するものとなっている。このため、この従来装置は長期の連続運転が困難であり、大型船舶の動力源の燃料の濾過には不適である。また、特許文献3に記載の濾過装置は、一方のフィルタについて逆洗浄が行われる間も他方のフィルタは濾過動作を継続するものの、常時、2つのフィルタのうち一方のみしか濾過に使用されない。このため、この従来装置は、2つのフィルタが持つ能力を十分に利用することができず、その分、逆洗浄の頻度を高めざるを得ない、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−117019号公報
【特許文献2】特開平11−156115号公報
【特許文献3】特許第3357556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、長期の連続使用を可能にするとともに、フィルタの逆洗浄効果を高め、逆洗浄時に廃棄される流体の量を節減し、逆洗浄の頻度を低くし、さらに構成を簡素なものとした濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様に係るものは、
流体を濾過する濾過装置である。当該濾過装置は、主流路と、複数のフィルタと、複数の廃棄流路と、弁と、弁制御手段とを備えている。前記主流路は、 前記流体の供給元に接続される流入口から一旦複数の支流路に分岐し、その後合流して、前記流体の供給先に接続される流出口へ至るものである。前記複数のフィルタは、前記複数の支流路から前記流体の供給を個別に受けるように前記主流路内に並列に設けられ、前記流体を濾過するものである。前記複数の廃棄流路は、前記複数の支流路のうち前記複数のフィルタの上流側からそれぞれ分岐し、前記流体の廃棄口へ至るものである。前記弁は、前記複数の支流路のうち前記複数の廃棄流路への分岐点の上流側を開閉するとともに、前記複数の廃棄流路を開閉するものである。
【0008】
さらに、前記弁制御手段は、前記複数のフィルタに通常の濾過動作を行わせる中で間欠的に、前記複数のフィルタの逆洗浄を行うように、前記弁を制御するものである。当該弁制御手段は、前記通常の濾過動作の期間においては、前記複数の支流路の全てについて前記分岐点の上流側を開き、前記複数の廃棄流路の全てを閉じることにより、前記複数のフィルタの全てに濾過動作を行わせる。また前記弁制御手段は、前記複数のフィルタの逆洗浄の期間においては、前記複数のフィルタから1つずつ順に、対応する1つの支流路の分岐点の上流側を閉じ、対応する1つの廃棄流路を開くことにより、当該1つのフィルタについて逆洗浄を行うとともに、当該逆洗浄を行う間においても残りのフィルタについては、対応する支流路の分岐点の上流側を開き、対応する廃棄流路を閉じることにより、濾過動作を行わせる。
【0009】
この構成によれば、通常において、主流路内に互いに並列に設けられた複数のフィルタの全てについて、支流路の分岐点の上流側が開き廃棄流路が閉じることにより濾過動作が行われる。さらに通常の濾過動作の中で間欠的に、1つ1つのフィルタについて順に、支流路の分岐点の上流側が閉じ廃棄流路が開くことにより逆洗浄が行われ、その間、残りのフィルタについては支流路の分岐点の上流側が開き廃棄流路が閉じることにより濾過動作が行われる。複数のフィルタは、複数の支流路から流体の供給を個別に受けるように設けられているので、弁の操作により、複数のフィルタについて、濾過と逆洗浄とを個別に行わせることが可能である。複数のフィルタは、複数の支流路から流体の供給を個別に受けるように設けられておれば足り、例えば、複数の支流路の中間部に設けられていても良く、複数の支流路が再び合流する部位に設けられていても良い。このように全てのフィルタについて順に逆洗浄を行う一連の動作が、通常動作の中で間欠的に行われる。すなわち、通常の濾過動作の中で、時折、全てのフィルタについて逆洗浄が行われる。
【0010】
逆洗浄は、複数のフィルタを通過して濾過された流体が、廃棄口との差圧により、逆洗浄すべきフィルタを逆流して、当該フィルタに付着していた塵芥とともに廃棄口へ流出することにより行われる。特許文献1に記載の従来の濾過装置とは異なり、流体の経路には漏れの原因となる可動部がない。それゆえ、フィルタの下流側と廃棄口との差圧が無駄なく逆洗浄対象のフィルタに印加されるため、フィルタに付着する塵芥が効果的に除去される。すなわち高い洗浄効果が得られる。このために、逆洗浄に要する時間は短時間で足り、廃棄口へ廃棄される流体も節減される。また、洗浄効果が高いことにより、フィルタを濾過装置から取り出して手操作により行う洗浄作業の頻度を低くすることができる。なお、廃棄口は、複数の廃棄路にそれぞれ別個に設けられてもよく、複数の廃棄路が合流し、その下流に設けられても良い。
【0011】
さらに、特許文献2に記載の従来装置とは異なり、1つのフィルタについて逆洗浄を行う期間においても、残りのフィルタについては濾過が行われるので、濾過装置全体の濾過動作を停止することなく、フィルタの洗浄を行うことができる。すなわち、長期にわたる濾過装置の連続運転が可能となる。1つのフィルタについて逆洗浄が行われる間は、残りのフィルタのみが濾過を担当するため、1つのフィルタが休止しても残りのフィルタで定格流量を負担し得るよう、濾過能力に余裕を持ったフィルタが採用されることとなる。その結果、逆洗浄動作を伴わない通常動作時には、全てのフィルタが濾過を担当するので、濾過能力に余裕が生まれることとなる。逆洗浄の効果の高さと相まって、逆洗浄は間欠的に行われるものであり、定格の範囲内とはいえフィルタに比較的大きな負荷が加わる逆洗浄の期間は、通常の濾過動作の期間に比して短時間に過ぎない。それゆえ、2個並列のフィルタを交互に使用する特許文献3に記載の装置など、常に一部のフィルタを不使用とする従来の濾過装置と比べて、フィルタに加わる負荷が軽くなる。その分、塵芥によるフィルタの汚れの進行を遅らせることができ、逆洗浄の頻度を低くすることができる。
【0012】
また、本構成による濾過装置は、特許文献1に記載の従来の濾過装置とは異なり、稼働アームや当該稼働アームを駆動する駆動部などの複雑な機構を要しない。すなわち構造が簡単であり、製造コストが節減されるとともに、耐久性に優れる濾過装置が実現する。
【0013】
本発明のうち第2の態様に係るものは、第1の態様に係る濾過装置であって、前記弁が、複数の流入弁と、複数の廃棄弁とを有するものである。前記複数の流入弁は、前記複数の支流路の前記分岐点の上流側にそれぞれ設けられ、当該上流側を開閉するものである。前記複数の廃棄弁は、前記複数の廃棄流路にそれぞれ設けられ、当該複数の廃棄流路を開閉するものである。
【0014】
この構成によれば、弁制御手段の制御を受け、通常の濾過動作と逆洗浄動作とを実現する弁が、支流路毎に設けられ当該流路を開閉する複数の流入弁と、廃棄流路毎に設けられ当該流路を開閉する複数の廃棄弁とを有するので、単一流路を開閉する単純な開閉弁によって、弁を構成することが可能となる。
【0015】
本発明のうち第3の態様に係るものは、第1又は第2の態様に係る濾過装置であって、前記弁制御手段は、前記複数のフィルタの各々を逆洗浄するときに、対応する1つの廃棄流路を複数回開閉するものである。
【0016】
この構成によれば、各フィルタの逆洗浄を行うときに、対応する廃棄流路が複数回開閉されるので、当該フィルタを逆洗浄する流体が断続的に流れる。それにより、当該フィルタに付着する塵芥がより効果的に除去される。すなわち逆洗浄の効果がさらに高められる。
【0017】
本発明のうち第4の態様に係るものは、第1ないし第3の何れかの態様に係る濾過装置であって、前記複数の廃棄流路に設けられ、当該廃棄流路を流れる前記流体の流量を制限する流量制限手段をさらに備えるものである。
【0018】
この構成によれば、例えばオリフィスなどの流量制限手段が、複数の廃棄流路に設けられる。このため逆洗浄を行うときに、廃棄口から廃棄される流体の量をさらに制限することができる。また、逆洗浄に伴って廃棄口が開放されることに伴う流出口における流体圧力の低下が、逆洗浄対象のフィルタが存在することにより制限されるのに加えて、さらに制限される。
【0019】
本発明のうち第5の態様に係るものは、第1ないし第4の何れかの態様に係る濾過装置であって、前記複数のフィルタが2個のフィルタであるものである。
【0020】
この構成によれば、主流路内に互いに並列に設けられる複数のフィルタが2個のフィルタであるので、濾過装置の構成が一層簡素なものとなる。さらに、逆洗浄動作を伴わない通常動作時には、1個のフィルタで濾過し得る流量を2個のフィルタで担当することとなるので、濾過能力に高い余裕が生まれる。その結果、塵芥によるフィルタの汚れの進行をさらに遅らせることができ、逆洗浄の頻度を一層低くすることができる。
【0021】
本発明のうち第6の態様に係るものは、第1ないし第5の何れかの態様に係る濾過装置であって、前記複数のフィルタの上流と下流との間の前記流体の圧力差を計測する差圧計測手段をさらに備えている。そして、前記弁制御手段は、前記差圧計測手段で計測された圧力差が所定の基準差圧を超えると、前記通常の濾過動作から前記逆洗浄の動作へ移行するように、前記弁を制御するものである。
【0022】
この構成によれば、複数のフィルタの上流と下流との間の流体の圧力差が所定の基準差圧を超えると、通常の濾過動作から逆洗浄動作へ移行するので、フィルタの汚れの度合いに応じた適切な時期に逆洗浄を行うことができる。
【0023】
本発明のうち第7の態様に係るものは、第1ないし第6の何れかの態様に係る濾過装置であって、時間の経過を計測する時間計測手段をさらに備えている。そして、前記弁制御手段は、前記時間計測手段で計測された経過時間が、前回の逆洗浄のときから所定の基準時間を超えると、前記通常の濾過動作から前記逆洗浄の動作へ移行するように、前記弁を制御するものである。
【0024】
この構成によれば、前回の逆洗浄のときから所定の基準時間を超える時間が経過すると、通常の濾過動作から逆洗浄動作へ移行するので、フィルタの汚れの進行を考慮した適切な長さに基準時間を設定することにより、フィルタの汚れの度合いに応じた適切な時期に逆洗浄を行うことができる。
【0025】
本発明のうち第8の態様に係るものは、第1ないし第7の何れかの態様に係る濾過装置であって、前記複数のフィルタの各々は、1対の底の一方が開放された円筒状であり、内側と外側の一方が上流側となり他方が下流側となるように、前記主流路内に設けられているものである。
【0026】
この構成によれば、複数のフィルタの各々が円筒状であって、内側と外側の一方が上流側となり他方が下流側となるように、主流路内に設けられているため、通常の濾過動作時及び逆洗浄時に、上流側と下流側との間に発生する流体の圧力差に対する強度が高く、耐久性に優れる。
【0027】
本発明のうち第9の態様に係るものは、第1ないし第8の何れかの態様に係る濾過装置であって、当該濾過装置が、前記流体として液体を濾過の対象とするものである。そして、前記複数のフィルタの各々は、積層された複数の金属網材の焼結体を主要な構成要素とするものである。
【0028】
この構成によれば、各フィルタが、積層された複数の金属網材の焼結体を主要な構成要素とするので、液体の濾過に対して耐久性に優れるとともに、フィルタに付着した塵芥の除去が、液体の逆流により効率よく行われる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によれば、長期の連続使用が可能であり、フィルタの逆洗浄効果が高く、逆洗浄時に廃棄される流体の量が節減され、逆洗浄の頻度が低く、さらに簡素に構成される濾過装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態よる濾過装置の概略構成を油圧回路図とブロック図とにより示す概念図である。
【図2】図1の濾過装置の本体部の構成を示す一部切断斜視図である。
【図3】図1の濾過装置の弁の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の濾過装置の弁の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】図1の濾過装置の実証試験の結果を示すグラフである。
【図6】本発明の別の実施の形態による濾過装置の本体部の概略構成を示す概念図である。
【図7】本発明のさらに別の実施の形態による濾過装置の本体部の上から見た概略構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(一実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態よる濾過装置の概略構成を示す概念図である。この濾過装置101は、大型船舶の動力源としてのディーゼルエンジンの燃料供給ライン、あるいは蒸気タービンに高圧蒸気を供給するボイラーの燃料供給ラインに設けられ、燃料である低質のC重油に含まれる塵芥を除去するストレーナ装置として構成されているものである。濾過装置101は、装置本体部111と制御器150とを有している。装置本体部111は油圧回路で示し、制御器150はブロック図で示している。
【0032】
装置本体部111は、供給ポンプ等の重油の供給元1に接続される流入口3から一旦2本の支流路に分岐し、その後合流して、ディーゼルエンジン等の重油の供給先31に接続される流出口29へ至る主流路を有している。より具体的には、主流路は、流入口3を一端とする流入路5を経て、流路11Aと流路11Bとに分岐する。流路11Aは、フィルタ室19A及び流路23Aを経て流出路25へ合流し、同様に流路11Bは、フィルタ室19B及び流路23Bを経て流出路25へ合流する。流路11A、フィルタ室19A及び流路23Aは、主流路が分岐してなる一方の支流路をなし、流路11B、フィルタ室19B及び流路23Bは、他方の支流路をなしている。フィルタ室19A及び19Bには、主流路を上流側と下流側とに仕切るように、フィルタ21A及び21Bがそれぞれ設けられている。すなわち、フィルタ21A及び21Bは、主流路内に互いに並列に設けられている。支流路のうちフィルタ21Aの上流側の流路11Aには、当該流路11Aを開閉する流入弁9Aが設けられている。同様に、他方の流路11Bには、当該流路11Bを開閉する流入弁9Bが設けられている。流入弁9A及び9Bは、弁体を駆動するモータ等のアクチュエータ(図示略)を有している。このアクチュエータが制御器150により制御されることにより、流入弁9A及び9Bが開閉動作をする。
【0033】
流路11Aのうち流入弁9Aからフィルタ21Aへ至る部分から、廃棄流路13Aが分岐している。廃棄流路13Aは、重油を廃棄するための廃棄口18Aに連通しており、中途には、廃棄重油の流量を制限するオリフィス15A及び廃棄流路13Aを開閉する廃棄弁17Aを有している。同様に、流路11Bから廃棄口18Bに連通する廃棄流路13Bが分岐しており、廃棄流路13Bにはオリフィス15B及び廃棄弁17Bが設けられている。オリフィス15A、15Bは、例えば廃棄弁17A、17Bにその一部として、それぞれ設けられている。廃棄弁17A及び17Bも、弁体を駆動するモータ等のアクチュエータ(図示略)を有している。このアクチュエータが制御器150により制御されることにより、廃棄弁17A及び17Bが開閉動作をする。
【0034】
流入管5には、流入口3における重油の圧力を計測する圧力計7が設けられている。同様に、流出管25には流出口29における重油の圧力を計測する圧力計27が設けられている。圧力計7及び27の計測値を表す電気信号は、制御器150へ送られることにより、弁の制御に利用される。
【0035】
制御器150は、弁制御部151、手動スイッチ153、表示器155、差圧演算部157及びタイマー159を有している。本実施の形態では、制御器150は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースを含むコンピュータ(図示略)を有しており、弁制御部151及び差圧演算部157は、コンピュータにより実現されている。差圧演算部157は、圧力計7及び27の計測値を受信し、流入口3と流出口29との間の重油の圧力差を演算する。すなわち、圧力計7、27及び差圧演算部157は、本発明の差圧計測手段の一例に該当する。弁制御部151は、差圧演算部157が供給する差圧データ、タイマー159が供給する時間データ、及び手動スイッチ153からのスイッチ操作データに基づいて、流入弁9A、9B及び廃棄弁17A、17Bを制御するとともに、表示器155に所定のデータを表示する。タイマー159は、インターバルタイマー161、廃棄弁開時間タイマー162、廃棄弁閉時間タイマー163、及び確認タイマー165を含んでいる。インターバルタイマー161は、圧力差とは無関係に逆洗浄動作を強制的に行うべき通常の濾過動作の継続時間を計るものである。廃棄弁開時間タイマー162は、逆洗浄動作を行うときに、廃棄弁を連続して開く時間を計るものである。廃棄弁閉時間タイマー163は、逆洗浄を行うときに、廃棄弁を連続して閉じる時間を計るものである。確認タイマー165は、差圧演算部157が出力する差圧データが、継続して基準差圧を超える時間を計るものである。
【0036】
図2は、装置本体部111の構成を示す一部切断斜視図である。図2では、圧力計7及び27は図示を略している。流路5、11A、11B、13A、13B、23A、23B、及び25は、配管によって形成されており、流路の一部であるフィルタ室19A及び19Bは、フィルタ容器(ケーシング)によって形成されている。図2においても図1に倣って、装置本体部111を構成する配管等を、それらが形成する流路によって代表する。フィルタ室19A、19Bは、上室45A、45Bと下室41A、41Bとを、それぞれ有している。フィルタ室19Aとフィルタ室19Bとは同一構造を有するので、以下ではフィルタ室19Bを例として説明する。
【0037】
上室45Bにはフィルタ21Bが収納されており、その底部である隔壁43Bによって下室41Bから区画されている。隔壁43Bには、その中心に貫通孔44Bが形成されている。貫通孔44Bは、流路23Bに連通する。フィルタ21Bは、下底が開放された円筒状であり、外側が上流側となり内側が下流側となるように、上室45B内に貫通孔44Bの上に立設されている。フィルタ21Bは、側面部の主要部分が、例えば5層に積層されたSUS304製の網材の焼結体により形成されている。隔壁43Bのうち、フィルタ21Bの外側の領域には、下室41Bに連通する貫通孔42Bが形成されている。下室41Bは、流路11Bと廃棄流路13Bとに連通している。
【0038】
通常の濾過動作においては、流入弁9A、9Bは開かれ、廃棄弁17A、17Bは閉じられる。これらの弁の操作は制御器150の弁制御部151により自動で行われる。この状態では、供給元1(図1)から流入口3に供給された重油のうち流路11Bへ分岐したものは、下室41Bに流入し、さらに貫通孔42Bを通じて上室45Bへ流入する。上室45Bへ流入した重油は、円筒状のフィルタ21Bの外側から内側へと流れ込む。このときに、重油はフィルタ21Bの網の目により濾過される。フィルタ21Bの内側へ流れ込んだ重油は、貫通孔44Bを通じて流路23Bへ流れ、さらに流出路25へ合流する。同様に、流路11Aへ分岐した重油は、フィルタ室19Aへ流入し、フィルタ21Aにより濾過される。濾過された重油は、流路23Aを経て、流出路25へ合流する。
【0039】
以上のような通常の濾過動作の合間に、フィルタ21A、21Bに付着した塵芥を除去するための洗浄が、時折行われる。フィルタ21Bの洗浄を行うために、弁制御部151は、流入弁9Bを閉じ、廃棄弁17Bを開く。その結果、圧力の高いフィルタ21Bの下流の重油が、フィルタ21Bを逆流し、上室45Bから貫通孔42B、下室41B、廃棄流路13B及び廃棄口18Bを通って廃棄される。廃棄口18Bの圧力は大気圧である。このとき、フィルタ21Bの上流側の面、すなわち外面に付着していた塵芥が除去され、重油と共に排出される。すなわち、フィルタ21Bの逆洗浄が行われる。この逆洗浄が行われる期間においても、流入弁9Aは開いたままであり、廃棄弁17Aは閉じたままである。それゆえ、フィルタ21Bの逆洗浄が行われる間も、フィルタ21Aは濾過を行う。
【0040】
同様にフィルタ21Aの洗浄を行うために、弁制御部151は、流入弁9Aを閉じ、廃棄弁17Aを開く。フィルタ21Aの逆洗浄が行われる期間においては、流入弁9Bは開かれ、廃棄弁17Bは閉じられる。それゆえ、フィルタ21Aの逆洗浄が行われる間も、フィルタ21Bは濾過を行う。フィルタ21Aとフィルタ21Bとの一方の逆洗浄が終了すると、他方の逆洗浄が行われる。双方のフィルタ21A、21Bの逆洗浄が終了すると、弁制御部151は、装置の動作を通常の濾過動作に戻すべく、流入弁9A、9Bを開状態とし、廃棄弁17A、17Bを閉状態とする。通常の濾過動作から逆洗浄動作への移行は、例えば、圧力計7、27によって検知される流入口3と流出口29との間の圧力差が、ある基準差圧を超えた時期に設定される。
【0041】
装置本体部111は、特許文献1に記載の従来の濾過装置とは異なり、稼働アームや当該稼働アームを駆動する駆動部などの複雑な機構を有しない。すなわち構造が簡単であり、製造コストが節減されるとともに、耐久性に優れるという利点が得られる。また、流体の経路には重油の漏れの原因となる可動部がないので、逆洗浄が行われるときに、圧力の高いフィルタ21A、21Bの下流側と、大気圧である廃棄口18A、18Bとの間の重油の差圧が、無駄なくフィルタ21A、21Bに印加される。その結果、フィルタ21A、21Bに付着する塵芥が効果的に除去される。このために、逆洗浄に要する時間は短時間で足りるので、廃棄口18A、18Bへ廃棄される廃油の量も節減される。また、洗浄効果が高いために、フィルタ21A、21Bを装置本体部111から取り出して手操作により行う洗浄作業の頻度を低くすることができる。
【0042】
上述の通りフィルタ21Bは円筒状であるため、通常の濾過動作時及び逆洗浄時に、上流側と下流側との間に発生する重油の圧力差に対する強度が高く、耐久性に優れる。フィルタ21Aについても同様である。また、廃棄流路13A、13Bには、オリフィス15A、15B(図1)がそれぞれ設けられているので、逆洗浄時に廃棄口18A、18Bから不必要に重油が廃棄されるのを防ぐことができる。このことも廃油の量の節減に資する。逆洗浄時に廃棄口18A、18Bが開放されることに伴う流出口29における重油の圧力の低下も、オリフィス15A、15Bが設けられることにより緩和される。
【0043】
図3は、制御器150の動作手順を例示するフローチャートである。濾過装置101の電源がオンされると、制御器150の弁制御部151は、流入弁9A、9Bを開状態にし、廃棄弁17A、17Bを閉状態にすることにより、通常の濾過動作を可能にする(S1、S3)。電源投入前において、各弁の状態は既に、通常の濾過動作可能な状態となっているのが通例である。次に、インターバルタイマー161が作動を開始する(S5)。インターバルタイマー161は、電源投入前の通常の濾過動作の継続時間を記憶しており、当該時間に電源投入後の通常の濾過動作の経過時間を加算してゆく。次に、差圧演算部157が動作を開始する。すなわち、圧力計7及び27の計測値に基づき、流入口3と流出口29との間の重油の圧力差の演算が始まる(S6)。
【0044】
次に、制御器150は、3つの処理を並行して実行する。1つには、弁制御部151は、まず確認タイマー165をリセットする(S7)。次に、差圧演算部157が演算した圧力差が、あらかじめ設定された基準差圧を超えると、圧力差がこの基準差圧を継続して超える時間を、確認タイマー159により計る(S9,S11)。当該時間が10秒を経過すると、確認タイマー159は、弁制御部151にその旨を通知する。弁制御部151は、これに応答して処理をステップS17へ進め、装置の動作を通常の濾過動作から逆洗浄動作へ移行させる。それと並行して、インターバルタイマー161は、通常の濾過動作の継続時間が所定の基準時間を超えると(S13)、その旨を弁制御部151に通知する。弁制御部151はこの通知に応答して、処理をステップS17へ進める。さらに、手動スイッチ153は、手動によりオンされると(S15)、その旨を弁制御部151に通知する。弁制御部151は、これに応答して処理をステップS17へ進める。すなわち、流入口3と流出口29との間の圧力差が、ある時間継続して基準差圧を超えた場合、通常の濾過動作がある時間継続した場合、及び手動で切り替えの指示があった場合の何れかに該当すると、通常の濾過動作は逆洗浄動作へ移行する。
【0045】
逆洗浄動作に移行すると、先ず、弁制御部151はインターバルタイマー161をリセットする(S17)。次にフィルタ21Aの逆洗浄を行うために、弁制御部151は、流入弁9Aを閉じ(S21)、自身の内部に持つ廃棄弁カウンタをリセットする(S23)。廃棄弁カウンタは、例えばRAMに格納される制御変数によって実現される。次に、弁制御部151は廃棄弁開時間タイマー162をリセットし(S25)、廃棄弁17Aを開く(S27)。廃棄弁開時間タイマー162が計測する時間が2秒を経過すると(S29)、弁制御部151は、廃棄弁閉時間タイマー163をリセットし(S31)、廃棄弁17Aを閉じる(S33)。廃棄弁閉時間タイマー163が計測する時間が2秒を経過すると、弁制御部151は、廃棄弁カウンタを1だけインクリメントする(S37)。続いて弁制御部151は、廃棄弁カウンタが2に達していなければ(S39)、処理をステップS25に戻し、達しておれば(S39)、流入弁9Aを開き、フィルタ21Aの逆洗浄を終了する(S41)。このように、フィルタ21Aの逆洗浄では、廃棄弁17Aが2秒間隔で2度開閉する。
【0046】
次にフィルタ21Bの逆洗浄を行うために、制御器150は、ステップS50の処理を行う。ステップS50では、流入弁9A及び廃棄弁17Aを、流入弁9B及び廃棄弁17Bにそれぞれ置き換えて、ステップS21〜S41と同様の処理が行われる。その結果、廃棄弁17Bが2秒間隔で2度開閉する。ステップS41と同様の処理により、流入弁9Bが閉じられると、制御器150の処理手順は、ステップS7,S13及びS15へ戻る。その結果、装置の動作は通常の濾過動作へ戻る。
【0047】
このように濾過装置101では、流入口3と流出口29との間の流体の圧力差が所定の基準差圧を超えたことが確認されると、通常の濾過動作から逆洗浄動作へ移行するので、フィルタ21A、21Bの汚れの度合いに応じた適切な時期に逆洗浄を行うことができる。また、前回の逆洗浄のときから所定の基準時間を超える時間が経過した場合にも、通常の濾過動作から逆洗浄動作へ移行するので、フィルタ21A、21Bの汚れの進行を考慮した適切な長さに基準時間を設定することにより、フィルタ21A、21Bの汚れの度合いに応じた適切な時期に逆洗浄を行うことも可能である。基準差圧と基準時間は、通常は圧力差に基づいて逆洗浄への移行が始まり、フィルタ21A、21Bの汚れの進行に伴う圧力差の上昇が通常よりも遅い場合に、濾過動作の経過時間に基づく逆洗浄への移行が始まるように設定される。この場合には、経過時間に基づく逆洗浄動作への移行は、圧力差に基づく逆洗浄動作への移行が適切に行われない場合にも、逆洗浄動作への移行を保証する補完的な役割を担うこととなる。
【0048】
図4は、弁制御部151の操作に基づく濾過装置101の弁の動作を例示するタイミングチャートである。時刻t0に電源が投入されると、まず、流入弁9A、9Bは開状態となり、廃棄弁17A、17Bは閉状態となる。それにより、濾過装置101は通常の濾過動作を行う。図4に例示するように、電源投入時t0より前においても、通常において各弁は同様の状態にあり、その場合には、同一状態を継続することとなる。
【0049】
流入口3と流出口29との間の圧力差が基準差圧を超えたことが確認されると、フィルタ21Aの逆洗浄動作が始まる(時刻t1)。すなわち、流入弁9Aが閉じられ、廃棄弁17Aが2秒ごとに開閉する。このとき、流入弁9Bは開いたままであり、廃棄弁17Bは閉じたままである。従って、フィルタ21Bでは、通常の濾過が行われる。フィルタ21Aの逆洗浄が終了すると、フィルタ21Bの逆洗浄が始まる(時刻t2)。すなわち、流入弁9Aは開状態となり、代わって流入弁9Bが閉状態となる。そして、廃棄弁17Bが2秒ごとに開閉する。このとき、流入弁9Aは開いたままであり、廃棄弁17Aは閉じたままである。従って、フィルタ21Aでは、通常の濾過が行われる。フィルタ21Bの逆洗浄が終了すると、通常の濾過動作が再開される(時刻t3)。すなわち、流入弁9Bが開状態に戻される。
【0050】
その後、流入口3と流出口29との間の圧力差が基準差圧を超えたことが確認されると、フィルタ21Aの逆洗浄動作が再び始まる(時刻t4)。フィルタ21Aの逆洗浄が終了すると、フィルタ21Bの逆洗浄が始まる(時刻t5)。また、フィルタ21Bの逆洗浄が終了すると、通常の濾過動作が再開される(時刻t6)。以下、同様の動作が繰り返される。
【0051】
時刻t0〜t1の期間T1は、通常の濾過動作期間であり、時刻t1〜t3の期間T2は逆洗浄期間である。また、時刻t3〜t4の期間T3は、通常の濾過動作期間であり、時刻t4〜t6の期間T4は逆洗浄期間である。さらに時刻t6から、通常の濾過動作期間が始まる。逆洗浄期間T2、T4が、それぞれ10秒足らずの短時間であるのに対し、通常の濾過動作期間T1、T3、T5は、それよりも遙かに永い時間である。すなわち、濾過装置101では、濾過効果が高いために、通常の濾過動作が行われる合間に時折、短時間に限り逆洗浄を行えば足りる。それにより、環境汚染の原因ともなる廃液の量が節減され、廃液処理の負担も軽減される。
【0052】
図4の例では、前回の逆洗浄から経過した時間が基準時間T0を超える前に、圧力差に基づいて通常の濾過動作から逆洗浄動作への移行が始まっている。例えば、期間T2と期間T3の和が、基準時間T0よりも短いために、圧力差に基づいて時刻t4に逆洗浄が始まっている。時刻t1では、電源投入前の過去の通常の濾過動作の継続時間と期間T1との和が、基準時間T0を経過しておらないために、圧力差に基づいて逆洗浄動作への移行が始まっている。これに対して、フィルタ21A、21Bの汚れの進行が通常よりも遅い場合には、前回の逆洗浄から経過した時間が基準時間T0を超えた時に、逆洗浄動作が始まる。例えば、前回の逆洗浄の時(時刻t1)から経過した時間が基準時間T0を超えたことによって、時刻t4に逆洗浄が始まる場合には、期間T2と期間T3の和は基準時間T0に一致する。
【0053】
以上のように濾過装置101は、特許文献2に記載の従来装置とは異なり、フィルタ21A、21Bの一方について逆洗浄を行う期間においても、他方のフィルタについては濾過動作を行うので、濾過装置全体の濾過動作を停止することなく、フィルタの洗浄を行うことができる。すなわち、大型船舶用途に要求される長期にわたる濾過装置の連続運転が可能となる。一方のフィルタについて逆洗浄が行われる間は、他方のフィルタのみが濾過を担当するため、一方のフィルタが休止しても他方のフィルタで定格流量を負担し得るよう、濾過能力に余裕を持ったフィルタが、フィルタ21A、21Bに採用されることとなる。逆洗浄動作を伴わない通常動作時には、双方のフィルタ21A、21Bが濾過を担当するので、濾過能力に余裕が生まれることとなる。それゆえ、2個並列のフィルタを交互に使用する特許文献3に記載の装置と比べて、フィルタに加わる負荷が軽くなる。その分、塵芥によるフィルタの汚れの進行を遅らせることができ、逆洗浄の頻度を低くすることができる。また、フィルタ21A、21Bの逆洗浄を行うときに、廃棄弁17A、17Bがそれぞれ複数回開閉されるので、フィルタ21A、21Bを逆洗浄する重油が断続的に流れる。それにより、これらのフィルタ21A、21Bに付着する塵芥がより効果的に除去される。このことも、逆洗浄効果を高めることに貢献している。
【0054】
図5は、濾過装置101について、濾過特性の実証試験を行った結果を示すグラフである。横軸は、試験に用いたフィルタを通過する重油の流量を表し、縦軸は流入口3と流出口29との間の重油の圧力差を表している。グラフ中の矢印は、各流量における逆洗浄前の圧力差から逆洗浄後の圧力差への変化についての実測結果を表している。グラフ中の点線は、未使用のフィルタを使用したときの、実験開始直後の圧力差(すなわち初期圧力差)と流量との関係についての実測結果を表している。実験では、フィルタ室19A、19Bのうち一方のみを使用しており、使用したものを仮にフィルタ室19Bとする。フィルタ21Bとして、網目の大きさが10μmであって、5層に積層されたSUS304製の網材の焼結体により形成されたものが使用に供された。基準差圧は0.081MPaに設定された。
【0055】
グラフ中の矢印が示すように、実験の結果、重油の流量が2m/hから5m/hの広い範囲で、逆洗浄後の圧力差が初期圧力差に復帰していることが確認された。2年分の逆洗浄に相当する回数を繰り返しても、この特性には殆ど変動がみられなかった。このことは、フィルタ21Bを装置本体部111から取り出して手操作により行う洗浄作業が、多くても2年に1度で足りることを意味している。すなわち、特許文献1に記載される従来装置よりも、さらに優れた逆洗浄効果が得られることが実証された。同時に、逆洗浄により排出される廃油の量も、当該従来装置に比べて1/3から1/5に節減できることが確認された。
【0056】
(その他の実施の形態)
図2に示した装置本体部111では、フィルタ室19A、19Bは、円筒状のフィルタ21A、21Bの外側が上流となり、内側が下流となるように構成されていた。これに対して、円筒状のフィルタ21A、21Bの内側が上流となり、外側が下流となるように、フィルタ室19A、19Bを構成することも可能である。それには例えば、フィルタ21Bの下方に位置する貫通孔44Bが流路11Bと廃棄流路13Bとに連通し、流路23Bが下室41Bに連通するように、フィルタ室19Bを構成すると良い。フィルタ室19Aについても同様である。
【0057】
図1及び図2に示した装置本体部111では、フィルタ室19Aは、流路11Aと流路23Aとの間に設けられ、フィルタ室19Bは、流路11Bと流路23Bとの間に設けられている。すなわち、フィルタ21Aは、流路11A、フィルタ室19A、流路23Aで構成される支流路の中間部に設けられ、フィルタ21Bは、流路11B、フィルタ室19B、流路23Bで構成される支流路の中間部に設けられている。これに対して、フィルタ21A及び21Bは、支流路が再び合流する部位に設けることも可能である。一般に、フィルタ21A及び21Bは、支流路から個別に重油の供給を受けるように、主流路内に並列に設けられておれば、濾過と逆洗浄とを個別に行わせることが可能である。
【0058】
図6は、その一例を示す装置本体部の上から見た概略構成を示す概念図である。この装置本体部112では、単一のフィルタ室69に2本のフィルタ21A、21Bが収容されている。流入路5から分岐した支流路61A、61Bが、フィルタ室69の底部71に設けられた貫通孔63A、63Bを通じて、フィルタ21A、21Bの内側に連通している。フィルタ室69は、流出路25に連通している。支流路61A、61Bには、図1の流入弁9A、9B(図示略)が設けられ、さらに支流路61A、61Bから図1の廃棄流路13A、13B(図示略)が分岐する。このような構成においても、フィルタ21A、21Bは互いに並列に重油の主流路内に存し、一方を逆洗浄しつつ他方は濾過動作をさせることが可能である。
【0059】
図1及び図2に例示した装置本体部111、並びに図6に例示した装置本体部112では、フィルタ21A、21Bが円筒状のものであった。しかし本発明の濾過装置には、円筒状のものに限らず、様々な形状のフィルタを用いることが可能である。また、並列接続されるフィルタの個数は、2つに限られず、一般に2つ以上に設定することが可能である。例えば、3つのフィルタを用いて、逆洗浄動作のときには、1つずつ順に逆洗浄を行うようにした濾過装置を構成することも可能である。
【0060】
濾過装置101では、流入口3と流出口29との間の重油の圧力差を計測するのに、それぞれの付近に個別に設けられた圧力計7、27と、圧力差を演算する差圧演算部157とを用いた。すなわち、圧力計7、27と差圧演算部157とによって、本発明の差圧計測手段が構成された。これに対して、2本の配管を有する差圧計を用い、当該2本の配管を流入口3の付近と流出口29の付近とに接続することにより、直接的に差圧を計測しても良い。この場合には、当該差圧計が本発明の差圧計測手段の一例に該当する。さらには、流入口3と流出口29との間の圧力差に限られず、一般に、フィルタ21A、21Bの上流と下流との間の圧力差を計測し、それに基づいて、流入弁9A、9B及び廃棄弁17A、17Bを制御するように濾過装置を構成しても良い。
【0061】
図1及び図2に示した装置本体部111では、流入弁9Aと廃棄弁17Aとは、別体のものとして構成された。同様に、流入弁9Bと廃棄弁17Bとは、別体のものとして構成された。これに対して、流入弁9Aと廃棄弁17Aとを一体のものとして構成することも可能である。流入弁9Bと廃棄弁17Bとについても同様である。図7はその一例を示す油圧回路図である。この装置本体部113は、流入弁9Aと廃棄弁17Aとが一体となった三方弁81Aを有している。三方弁81Aは、例えばソレノイドあるいはモータなどの弁体を駆動するアクチュエータ(図示略)を有している。このアクチュエータは、制御器150の弁制御部151により制御される。図示を略するが、流入弁9Bと廃棄弁17Bについても同様である。三方弁81Aの弁体が位置83にあるとき(すなわち、流入路11A及び廃棄路13Aが、位置83にある弁体により開閉されているとき)は、流入弁9Aを開き廃棄弁17Aを閉じた状態と同等である。位置83は、例えば図4に示した通常の濾過動作期間T1、T3、T5における弁体の位置に該当する。弁体が位置84にあるときは、流入弁9Aと廃棄弁17Aとを閉じた状態と同等であり、位置85にあるときは、流入弁9Aを閉じ、廃棄弁17Aを開いた状態と同等である。例えば図4に示した濾過動作期間T2、T4は、2秒間隔で位置84と位置85との間を弁体が往復することにより実現する。
【0062】
弁体が位置85にあるとき、廃棄流路13Aの一部が弁体の中に形成される。この廃棄流路13Aは、流入路11Aから分岐し廃棄口18Aへ至るものである。そして三方弁81Aは、流入路11Aの分岐点の上流側と、廃棄流路13Aとを開閉するものとなっている。それゆえ、流入弁9Aと廃棄弁17Aとを三方弁81Aにより実現する装置本体部113を有する濾過装置は、本発明の実施の形態の一つをなすものである。また、流入弁9Aと流入弁9Bとを一体化することも、廃棄弁17Aと廃棄弁17Bとを一体化することも可能である。さらには、流入弁9A、9B及び廃棄弁17A、17Bの全てを一体化することも可能である。これら全ての形態も、本発明の範囲に属する。
【0063】
図1〜図5に例示した濾過装置101、及び図6に例示した装置本体部112を備える濾過装置は何れも、大型船舶のディーゼルエンジン又はボイラーの燃料である重油を濾過の対象とするものであった。しかしながら本発明は、重油に限らず、潤滑油、水、その他の液体、あるいは空気を含めた一般の気体を濾過の対象とする濾過装置としても実施が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 供給元
3 流入口
5 流入路(主流路)
7、27 圧力計(差圧計測手段)
9A、9B 流入弁(弁)
11A、11B、23A、23B 流路(支流路、主流路)
13A、13B 廃棄流路
15A、15B オリフィス(流量制御手段)
17A、17B 廃棄弁(弁)
18A、18B 廃棄口
19A、19B フィルタ室(支流路、主流路)
21A、21B フィルタ
25 流出路(主流路)
29 流出口
31 供給先
81A 三方弁(弁)
101 濾過装置
111、112 装置本体部
150 制御器
151 弁制御部(弁制御手段)
157 差圧演算部(差圧計測手段)
159 タイマー(時間計測手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を濾過する濾過装置であって、
前記流体の供給元に接続される流入口から一旦複数の支流路に分岐し、その後合流して、前記流体の供給先に接続される流出口へ至る主流路と、
前記複数の支流路から前記流体の供給を個別に受けるように前記主流路内に並列に設けられ、前記流体を濾過する複数のフィルタと、
前記複数の支流路のうち前記複数のフィルタの上流側からそれぞれ分岐し、前記流体の廃棄口へ至る複数の廃棄流路と、
前記複数の支流路のうち前記複数の廃棄流路への分岐点の上流側を開閉するとともに、前記複数の廃棄流路を開閉する弁と、
前記複数のフィルタに通常の濾過動作を行わせる中で間欠的に、前記複数のフィルタの逆洗浄を行うように、前記弁を制御する弁制御手段と、を備え、
前記弁制御手段は、
前記通常の濾過動作の期間においては、前記複数の支流路の全てについて前記分岐点の上流側を開き、前記複数の廃棄流路の全てを閉じることにより、前記複数のフィルタの全てに濾過動作を行わせるとともに、
前記複数のフィルタの逆洗浄の期間においては、前記複数のフィルタから1つずつ順に、対応する1つの支流路の分岐点の上流側を閉じ、対応する1つの廃棄流路を開くことにより、当該1つのフィルタについて逆洗浄を行うとともに、当該逆洗浄を行う間においても残りのフィルタについては、対応する支流路の分岐点の上流側を開き、対応する廃棄流路を閉じることにより、濾過動作を行わせる濾過装置。
【請求項2】
前記弁が、
前記複数の支流路の前記分岐点の上流側にそれぞれ設けられ、当該上流側を開閉する複数の流入弁と、
前記複数の廃棄流路にそれぞれ設けられ、当該複数の廃棄流路を開閉する複数の廃棄弁と、を有する、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記弁制御手段は、前記複数のフィルタの各々を逆洗浄するときに、対応する1つの廃棄流路を複数回開閉する、請求項1又は2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記複数の廃棄流路に設けられ、当該廃棄流路を流れる前記流体の流量を制限する流量制限手段をさらに備える、請求項1ないし3の何れかに記載の濾過装置。
【請求項5】
前記複数のフィルタが2個のフィルタである、請求項1ないし4の何れかに記載の濾過装置。
【請求項6】
前記複数のフィルタの上流と下流との間の前記流体の圧力差を計測する差圧計測手段をさらに備え、
前記弁制御手段は、前記差圧計測手段で計測された圧力差が所定の基準差圧を超えると、前記通常の濾過動作から前記逆洗浄の動作へ移行するように、前記弁を制御する、請求項1ないし5の何れかに記載の濾過装置。
【請求項7】
時間の経過を計測する時間計測手段をさらに備え、
前記弁制御手段は、前記時間計測手段で計測された経過時間が、前回の逆洗浄のときから所定の基準時間を超えると、前記通常の濾過動作から前記逆洗浄の動作へ移行するように、前記弁を制御する、請求項1ないし6の何れかに記載の濾過装置。
【請求項8】
前記複数のフィルタの各々は、1対の底の一方が開放された円筒状であり、内側と外側の一方が上流側となり他方が下流側となるように、前記主流路内に設けられている、請求項1ないし7の何れかに記載の濾過装置。
【請求項9】
前記濾過装置が、前記流体として液体を濾過の対象とするものであり、前記複数のフィルタの各々が、積層された複数の金属網材の焼結体を主要な構成要素とする、請求項1ないし8の何れかに記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183257(P2011−183257A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48589(P2010−48589)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(598140434)株式会社コンヒラ (8)
【Fターム(参考)】