説明

火山噴出物または火山噴出物発泡体を含有する機能性材料組成物及びその製造方法

【課題】CO、ホルムアルデヒド等の物質を吸着分解することが出来、調湿能力、吸音・断熱に優れた低コストの機能性材料組成物を提供する。
【解決手段】火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体、および無機アルカリ性物質を含有する機能性材料組成物であって、火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質の重量比が1:0.1〜2である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火山噴出物または火山噴出物発泡体を使用して簡便に得られ、調湿や有害物質の吸着のために使用される機能性材料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界規模で地球温暖化抑制に関する取り組みが不可欠になってきている。企業や各自治体などにより二酸化炭素などの排出を最小限に抑える技術が次々に開発されているが、当該排出をゼロにする技術は未だ開発されていない。
また住宅や工場、店舗などから排出される二酸化炭素や有害物質を吸着分解し、排出を軽減するため、また耐用年数を短くする住宅の高気密性能による冬場の結露が原因のカビや木造・金属の腐食等を軽減するために、無機物で、軽量の断熱および吸音能力を併せ持つ、調湿能力の高い製品の需要が高まっている。
【0003】
このような需要に対しては、木炭・竹炭・ヤシガラ炭・活性炭などを含有する床下や屋根裏・クローゼットに適用する調湿剤が主流になっている。また調湿の他に有害物質の吸着を兼ね備えた製品なども多様に開発されている。
木炭・竹炭・ヤシガラ炭・活性炭などは古くから住宅の調湿剤として使用されているが、調湿効果は一様になく、木炭、竹炭は焼く温度によりその効果のばらつきが多いのが難点である。木炭・竹炭・ヤシガラ炭・活性炭などは二酸化炭素の吸着・分解効果は殆どなく、ホルムアルデヒド等の吸着の能力も少ないし、吸着の限界まで達したときには飽和状態になり、暑い時期には吐き出してしまうのもある。またこれらは、断熱性能が殆ど期待できない。住宅で使用される木炭・竹炭・ヤシガラ炭・活性炭などの調湿剤は万一火災の発生があった場合には、調湿剤に着火し、延焼の原因にもなることから、危険性なども指摘されている。
【0004】
一方、軽量で高い強度の火山噴出物発泡粒子集塊物が断熱材、保温材や吸音材として使用されることが知られている(特許文献1)。当該集塊物は火山噴出物発泡体とケイ酸ソーダ水溶液との混合物を、強制的にCOを接触させることで、硬化させて得られ、ケイ酸ソーダは水溶液の形態に限定され、空気中のCOと接触させないことが必要とされている。そのため、これらの製造にはプレス機や炭酸ガスの吹き込み装置の設備が必要とされ設備投資が過大になり、製造コストが高くなっている。他方、火山噴出物又は火山噴出物発泡体と珪酸アルカリ水溶液を混合・攪拌した後、COを強制的に吹き込み、反応させた材料を使用することを特徴としている特許文献2では、その材料から出来た製品は既にCO吸着機能を、ほぼ終えているために、吸着機能を失っていること、作業工程が複雑になることに加え、複雑な工程を経るために、その設備が必要になり、製造コストが高くなる。また、火山噴出物発泡粒子と珪酸ソーダ濃厚水溶液の混練物中に、炭酸ガスを反応させた材料に、ポリビニルアルコール水溶液とカルボシキメチルアルコールおよび酢酸ビニルアルコール樹脂エマルジョンを混合した成形体は、表面を爪で掻くと剥がれやすく、強度が弱いということが知られ、より強度の高い材料が求められている。また何れも、COを強制的に吹き込み、反応させることで得られる火山噴出物発泡粒子集塊物の製造過程で、COが外部に漏れ出すために地球環境にも問題が生じる(特許文献1、2)。
そのため簡便に製造でき二酸化炭素吸着・揮発性有機化合物(VOC)吸着や調湿機能を有する材料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−12058号公報
【特許文献2】特開2009−72750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二酸化炭素、ホルムアルデヒド及びVOC吸着分解や調湿性能に優れ、断熱・吸音能力に優れた、火山噴出物を利用した、簡便に得られる機能性材料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記特許文献1及び2に開示の火山噴出物発泡粒子集塊物の調湿機能及び二酸化炭素の吸着機能を検討し、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、火山噴出物に無機アルカリ性物質を混合(分散)して得られる機能性材料組成物が、二酸化炭素やホルムアルデヒドを吸着分解し、調湿機能効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の通りである。
[1]火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体、および無機アルカリ性物質を含有する機能性材料組成物であって、火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質の重量比が1:0.1〜2である組成物。
[2]平均粒子径が0.1〜5mmである[1]に記載の組成物。
[3]火山噴出物が、シラス、軽石およびボラ土からなる群から選択される少なくとも1種である[1]または[2]に記載の組成物。
[4]火山噴出物発泡体が、シラス発泡体、黒曜石発泡体及び真珠岩発泡体からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の組成物。
[5]無機アルカリ性物質が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6]更に高分子を含有する[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7]火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質と高分子の重量比が、1:0.1〜2:0.01〜1である[6]に記載の組成物。
[8]重量比が1:0.1〜2:0.1〜0.5である[6]に記載の組成物。
[9]高分子が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルメチルセルロースから選択される少なくとも1種である[6]〜[8]のいずれか1項に記載の組成物。
[10]粒状又は粉状である[1]〜[9]のいずれか1項に記載の組成物。
[11]調湿剤、二酸化炭素吸着剤、ホルムアルデヒド吸着剤、VOC吸着剤、断熱材または吸音材に使用される[1]〜[10]のいずれか1項に記載の組成物。
[12]さらにセメント、カゼイン、ポリビニルアルコール水溶液及び酢酸ビニルからなる群から選択される1種以上を含む[1]〜[11]のいずれか1項に記載の組成物。
[13](1)火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質を混合する工程、(2)得られた混合物を粉砕する工程、を含む粒子状機能性材料組成物の製造方法。
[14]更に高分子を添加する工程を含む[13]の製造方法。
[15]火山噴出物が、シラス、軽石およびボラ土からなる群から選択される少なくとも1種である[13]に記載の製造方法。
[16]火山噴出物発泡体が、シラス発泡体、黒曜石発泡体及び真珠岩発泡体からなる群から選択される少なくとも1種である、[13]に記載の製造方法。
[17]無機アルカリ物質が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[13]〜[16]のいずれか1項に記載の製造方法。
[18]高分子が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルメチルセルロースから選択される少なくとも1種である請求項[14]〜[17]のいずれか1項に記載の製造方法。
[19]さらにセメント、カゼイン、ポリビニルアルコール水溶液及び酢酸ビニルからなる群から選択される1種以上を添加することを含む[13]〜[18]のいずれか1項に記載の製造方法。
[20]シートまたは容器で包装されている[1]〜[12]のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた調湿効果、二酸化炭素及びホルムアルデヒドなどの吸着分解効果、さらには断熱効果および吸音効果も有し、しかも軽量であるため機能性材料としてあらゆる分野で幅広く利用できる組成物を提供できる。
また本発明の組成物は、特殊な設備が必要ではなく簡便に製造でき、また火山噴出物を使用するため安価に提供することができる。
さらに自然素材である火山噴出物や無機アルカリ性物質等を使用するだけなので、機能性が失われた後は土壌改良材等としてリサイクルできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】調製例1〜7及び対照として珪酸ソーダの室内調湿試験結果を示す。
【図2】試験サンプル1〜7の調湿試験の結果を示す。
【図3】試験サンプル1〜3、5、7の二酸化炭素濃度の推移を示す。
【図4】試験サンプル1〜3、5、7のホルムアルデヒド濃度の推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体(以下火山噴出物等と略す時もある)と無機アルカリ性物質の重量比が1:0.1〜2であることを特徴とする、火山噴出物および無機アルカリ性物質を含有する機能性材料組成物である(以下本発明の組成物と称するときもある)。
本発明の組成物は、火山噴出物等と無機アルカリ性物質を均一に混合・撹拌して、必要に応じて得られた混合物を粉砕・整粒・固形化して得られる粒状・粉状またはペースト状の機能性材料組成物である。
【0012】
本発明における火山噴出物は、火山活動の際に地表に噴出した物質であるシラス、軽石、ボラ土、黒曜石、ベントナイト、溶岩等が挙げられる。なかでもシラス、軽石、ボラ土が好ましい。
火山噴出物の平均粒子径は、通常シラスで5〜500μm、軽石で1〜60mm、ボラ土で1〜50mmであり、好ましいのはシラスが30〜150μm、軽石、ボラ土が1〜30mmである。
【0013】
本願における平均粒子径は、篩い分け法で測定を行う。
電磁式ふるい振とう器に標準ふるいを5〜10段装着し、試料をふるい振とうすることで分級し、各粒子区分の重量比で測定する。すなわち、標準ふるいを目開きの大きいものを上にして順次重ね、上段に試料20gを入れ15分間ふるい振とうさせ、各メッシュ毎の試料の重量を測定し、粒度分布を求めた。
平均粒子径は各メッシュ毎に篩い分けられた粒子の試料全体に対する割合(重量%)を算出し、重量平均粒子径を求める。
【0014】
また火山噴出物の嵩比重は、通常は1.0以下であり、0.05〜0.9が好ましい。嵩比重はタッピング比重の方法で求められる。
【0015】
本願における火山噴出物発泡体は、火山噴出物の細粒を700〜1100℃程度で加熱して発泡することにより得られる。
火山噴出物発泡体としては、シラス、軽石、ボラ土等の細粒や粉末を加熱して発泡させたものが挙げられるが、なかでもシラスを発泡させたシラス発泡体(シラスバルーン)、黒曜石発泡体(パーライト)及び真珠岩発泡体(パーライト)が好ましく、強度、永続的な二酸化炭素および有害物質の吸着・分解、調湿、断熱、吸音能力の点でシラス発泡体がより好ましい。
火山噴出物発泡体の平均粒子径は、通常6〜500μmであり、70〜300μmが好ましい。
また火山噴出物発泡体の嵩比重は、通常は0.6以下であり、0.2〜0.4が好ましい。
【0016】
本発明において、火山噴出物及び火山噴出物発泡体は1種または2種以上を混合して用いることが出来るが、二酸化炭素および有害物質の吸着・分解、調湿、断熱、吸音能力の点で、火山噴出物発泡体のほうが好ましい。
【0017】
本発明における無機アルカリ性物質は、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムが好ましい。これらの無機アルカリ性物質は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0018】
本発明の組成物において、火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質の重量比は、火山噴出物等や無機アルカリ性物質の種類によって変化することもあるが、通常1:0.1〜2であり、好ましくは1:0.2〜1.5であり、より好ましくは、1:0.5〜1.5、特に好ましくは、1:0.8〜1.5である。
特にシラス発泡体(シラスバルーン)と無機アルカリ性物質の重量比は1:0.1〜2が好ましく、1:0.2〜1.5がより好ましく、さらに好ましくは1:0.8〜1.5であり、特に1:1が好ましい。
シラスバルーンに対する無機アルカリ性物質の重量比が0.1よりも少ないと、吸湿率が低くなり二酸化炭素や有害物質の吸着分解機能も低下する。一方、シラスバルーンに対する無機アルカリ性物質の重量比が2よりも大きいと、断熱、吸音能力が低下し軽量化にはならず、吸湿効果は上がるが放湿能力が下がり好ましくない。
【0019】
本発明の組成物には、更に高分子を含んでいてもよい。
高分子としては、水溶性セルロースエーテルが挙げられ、具体的にはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースが挙げられ、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースが好ましく、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。
【0020】
本発明の組成物において、火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と高分子の重量比は、1:0.01〜1であり、1:0.1〜0.5が好ましい。
【0021】
本発明の組成物には、さらにセメント、カゼイン、ポリビニルアルコール(ポバール)水溶液、酢酸ビニルを含んでいてもよい。
なかでもセメント、カゼイン、ポリビニルアルコール水溶液およびこれらの混合物が好ましい。
前記セメントは、特に限定されないが、ポルトランドセメント、白セメント等が好ましい。
また本発明の組成物1に対して、セメント1〜3、カゼイン0.01〜0.05の重量比で添加するのが好ましい。
さらに本発明の組成物1に対して、3〜15%のポリビニルアルコール水溶液は、1:0.5〜2の重量比で混合するのが好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、粒状または粉末状である。本発明の組成物は、上記セメント、カゼイン、ポリビニルアルコール水溶液、メトローズ(水溶性セルロースエーテル)等を加えて固形状またはペースト状にすることもできる。固形状・ペースト状のものは屋根や天井・内外壁面・ガラス窓の内外部分や床面に使用することが出来る。
【0023】
本発明の組成物の平均粒子径は、通常0.1〜5mmであり、好ましくは0.1〜3mmであり、より好ましくは、120〜500μmである。
【0024】
本発明において「機能性材料」とは、「制御された環境下において安定的または鋭敏な変化を示す物理的および化学的な特性を持つ材料」を意味する。当該変化には、温度、気体分子の吸収、圧力、電気、磁気、光等が挙げられる。
具体的な機能性材料組成物としては、湿度や気温の変化、有害物質に反応する機能性材料組成物が挙げられる。
【0025】
本発明の組成物は、調湿剤、二酸化炭素吸着剤、ホルムアルデヒド吸着剤、VOC吸着剤、断熱材、吸音材等に使用することができ、調湿剤、二酸化炭素吸着剤、ホルムアルデヒド吸着剤、VOC吸着剤に使用することが好ましく、調湿剤、二酸化炭素吸着材及びホルムアルデヒド吸着剤に使用することがより好ましい。
調湿とは、水分を吸収・放出し湿度を調整することを意味する。
VOCは、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0026】
本発明の組成物を上記用途で用いる場合には、用途や粒状または粉状等の性状に合わせて形態を選択することができる。
例えば、シートや容器で包装された形態が挙げられる。
シートは、多孔質であれば特に素材は問わないが、紙、布、不織布、フィルム、スポンジシート等が挙げられる。なかでも布、不織布が好ましい。
容器としては、空気が透過できる素材であれば特に素材は問わないが、木、通気性を有する高分子素材、シリコンスポンジやウレタンスポンジ等が挙げられる。
上記シートや容器に、1包装単位量、例えば押入れやクローゼット・天井など室内用は100〜1000g、好ましくは、300〜600g、床下用は1000〜3000g、好ましくは1500〜2500gの本願の組成物を包装したものを調湿剤、二酸化炭素吸着材及びホルムアルデヒド吸着剤等に使用することができる。
【0027】
また本発明の組成物は、そのままであるいは適当な添加物や建築材料を加えて、上記用途を有する建築用壁材、建築用床材、建築用天井材または建築用屋根材などの建築用材として使用することができる。
【0028】
本発明は、
(1)火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質を混合する工程、
(2)得られた混合物を粉砕する工程、
を含む粒子状組成物の製造方法(本発明の方法ともいう)である。
本発明の方法は、炭酸ガスを注入し硬化する工程が不要であり、特殊な装置を必要としない簡便な方法であるが、さらに慣用の工程、例えば整粒等の工程を含んでもよい。また無機アルカリ性物質を水溶液にして火山噴出物に加えて造粒する工程を含んでいてもよい。
別の態様としては、
(1)火山噴出物および/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質及び高分子を混合する工程
を含む粒子状または粉状機能性材料組成物の製造方法も本願発明に包含される。
さらに別の態様としては、
(1)火山噴出物および/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質及び白セメント、カゼイン、メトローズ、カルボキシメチルセルロースを混合する工程
(2)得られた混合物にポリビニルアルコール水溶液を混合・攪拌する工程
を含む方法も本願発明に包含される。
本発明の方法において、火山噴出物等の定義や重量比等は上記と同じである。
【0029】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0030】
平均粒子径測定方法
本明細書中の火山噴出物材料(粒状物)の平均粒子径測定は以下の方法(篩い分け法)で行った。
電磁式ふるい振とう器((株)井内盛栄営製)に標準ふるいを5〜10段装着し、試料をふるい振とうすることで分級し、各粒子区分の重量比で測定した。すなわち、標準ふるいを目開きの大きいものを上にして順次重ね、上段に試料20gを入れ15分間ふるい振とうさせ、各メッシュ毎の試料の重量を測定し、粒度分布を求めた。
平均粒子径は各メッシュ毎に篩い分けられた粒子の試料全体に対する割合(重量%)を算出し、各メッシュ毎の割合(重量%)を上段から足していき、50%超えになる前の数値を[d]、50%超えになる数値を[e]とし、50%超えにならないメッシュのアンダー値(μm、mm)を[a]とする。そして、50%超えになるメッシュを特定し、そのメッシュのオーバー値(μm、mm)を[b]、アンダー値を[c]として、下記式(I)より重量平均粒子径を求めた。
平均粒子径(μm、mm)=a−〔(b−c)×{(50−d)/e}〕・・(I)
【0031】
(調製例1)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)567gに21〜23%ケイ酸カリ水溶液(日本科学(株)製)100gを均一に混合攪拌し、次いで、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)567gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は280μmであった。当該組成物を不織布(PS114、三井化学(株)製)に封入した。
【0032】
(調製例2)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)600gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)600gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は250μmであった。当該組成物を不織布(PS114、三井化学(株)製)に封入した。
【0033】
(調製例3)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)500gに、21〜23%ケイ酸カリ水溶液(日本科学(株)製)500gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は260μmであった。当該組成物を不織布(PS114、三井化学(株)製)に封入した。
【0034】
(調製例4)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、(豊和直(株)製)500gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)100gと消石灰(日本石灰(株)製)400gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は140μmであった。当該組成物を不織布(PS114、三井化学(株)製)に封入した。
【0035】
(調製例5)
軽石(平均粒子径3mm:清新産業(株)製)1000gに粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)300gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は2mmであった。当該組成物を不織布(PS114、三井化学(株)製)に封入した。
【0036】
(調製例6)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、(豊和直(株)製)480gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)720gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は300μmであった。当該組成物を不織布(PS114、三井化学(株)製)に封入した。
【0037】
(調製例7)
パン型造粒機(三庄インダストリー(株)製)にシラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径70ミクロン、豊和直(株)製)600gとメトローズ90SH(信越化学工業(株)製)120gを投入し、次いでケイ酸カリ水溶液(日本科学(株)製)780gを徐々に散布して平均粒子径5mmに造粒し、機能性材料組成物を得た。当該組成物を不織布(PS114、三井化学(株)製)に封入した。
【0038】
調湿試験1
調製例1〜7の組成物を工場内の加工室の平坦な所に等間隔に置き、毎日定刻(午前8時)に重量を測定した。
含水率は、開始日に測定した重量(W)を基に、測定日の重量(Wx)からそれぞれ計算した。
含水率(%)=100+(W−W)/W×100(初日の含水率を100%とする)
各含水率を図1に示した。対照として珪酸ソーダ100gを不織布(PS114、三井化学(株)製)に封入したものを調製例1〜7と同様に調湿試験を行った。
【0039】
調製例1、2、4、5、6の組成物は吸放湿をするのが確認された。
調製例3、7の組成物は放湿が限界に達したら、吸放湿を開始し、その機能を確認した。
対照のケイ酸ソーダ100gは、吸湿はするが、放湿は一切みられなかった。
【0040】
(調製例8)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)500gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)125gとメトローズ90SH(信越化学工業(株)製)120gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は230μmであった。
【0041】
(調製例9)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、(豊和直(株)製)500gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)400g、白セメント(太平洋セメント(株)製)1200g、カゼイン60g及びメトローズ90SH(信越化学工業(株)製)18gを均一に混合攪拌した材料に、水道水1200gにポバール(日本合成化学(株)製)60gを溶解した水溶液を均一に混合攪拌し、石膏ボードに左官コテで平均3mmの厚さに塗り付け機能性材料固形物を得た。
【0042】
調湿試験2
調製例8及び9の機能性材料組成物の乾燥させた試料を、それぞれ秤量瓶に1gずつ量り取り、25℃、50%RHに調節した恒温恒湿槽内に上記秤量瓶の蓋を開けた状態で恒量になるまで設置し、恒量になった時点で、温度25℃一定で湿度90%RHにセットし、48時間ごとに湿度を50%RH,90%RHと交互に変化させ、48時間を1サイクルとし、重量を6、24、48時間ごとに測定し(W)含水率を計算した。
含水率(%)=(W−1)/1×100
調製例8及び9の組成物は吸放湿をするのが確認された。
【0043】
調湿・CO吸着・ホルムアルデヒド試験
(試験サンプル1:参考例1)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)500gに、ケイ酸カリ1K(日本科学(株)製)500gを混合攪拌し、型枠に入れ、プレス成形をした後、COを吹き込み硬化させ成型物を得た。
【0044】
(試験サンプル2:参考例2)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)500gに、ケイ酸カリ1K(日本科学(株)製)500gを混合攪拌した粉体に、CO2を吹き込み反応させ、反応させた粉体500gに白セメント(太平洋セメント(株)製)1000gを均一に混合攪拌した材料に、水道水1200gにポバール(日本合成化学(株)製)60gを溶解した水溶液を均一に混合攪拌し、石膏ボードに左官コテで平均3mmの厚さに塗り付けて固形物を得た。
【0045】
(試験サンプル3:実施例1)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)500gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)500gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た(調製例2)。平均粒子径は250μmであった。
【0046】
(試験サンプル4:実施例2)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)80gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)20gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は190μmであった。
【0047】
(試験サンプル5:実施例3)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)500gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)400g、白セメント(太平洋セメント(株)製)1200g、カゼイン60g、メトローズ(信越化学工業(株)製)18gを均一に混合攪拌した材料に、水道水1200gにポバール(日本合成化学(株)製)60gを溶解した水溶液を均一に混合攪拌し、石膏ボードに左官コテで平均3mmの厚さに塗り付け機能性材料固形物を得た。
【0048】
(試験サンプル6:比較例1)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)50gを計量した。
(試験サンプル7:実施例4)
シラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径180ミクロン、豊和直(株)製)600gに、粉末ケイ酸ソーダ3号(日本科学(株)製)600gとメトローズ90SH(信越化学工業(株)製)120gを均一に混合攪拌し、機能性材料組成物を得た。平均粒子径は230μmであった。
【0049】
調湿試験3
試験サンプル1〜7を乾燥させた試料を、それぞれ秤量瓶に1gずつ量り取り、25℃、50%RHに調節した恒温恒湿槽内に上記秤量瓶の蓋を開けた状態で恒量になるまで設置し、恒量になった時点で、温度25℃一定で湿度90%RHにセットし、6、24、48時間後に秤量瓶ごと重量を測定し、試料の含水率を求めた。以後48時間ごとに湿度を50%RH,90%RHと交互に変化させ合計4サイクル行い図2に示した。
【0050】
CO及びホルムアルデヒド吸着試験
試験サンプル1〜3、5、7を乾燥させた試料を、10gずつ量り取り、ガス吸着用のフッ素樹脂バッグ(10L)にそれぞれ封入し、あらかじめ調整した二酸化炭素(濃度1%)又はホルムアルデヒドガス(濃度20ppm)をこれらに導入して20℃の実験室内で吸着させた。ガス濃度はガス採取器及びガス検知管((株)ガステック製)により、二酸化炭素は24時間毎、ホルムアルデヒドは所定の時間に測定を行い、結果は図3及び図4に示した。対照として珪酸ソーダを使用した。
【0051】
試験サンプル3〜7は、吸湿及び放湿を行い湿度の調整が可能であることを示した。
また試験サンプル3、5及び7は、二酸化炭素及びホルムアルデヒドの吸着作用が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体、および無機アルカリ性物質を含有する機能性材料組成物であって、火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質の重量比が1:0.1〜2である組成物。
【請求項2】
平均粒子径が0.1〜5mmである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
火山噴出物が、シラス、軽石およびボラ土からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
火山噴出物発泡体が、シラス発泡体、黒曜石発泡体及び真珠岩発泡体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
無機アルカリ性物質が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
更に高分子を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質と高分子の重量比が、1:0.1〜2:0.01〜1である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
重量比が、1:0.1〜2:0.1〜0.5である請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
高分子が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルメチルセルロースから選択される少なくとも1種である請求項6〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
粒状又は粉状である請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
調湿剤、二酸化炭素吸着剤、ホルムアルデヒド吸着剤、VOC吸着剤、断熱材または吸音材に使用される請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
さらにセメント、カゼイン、ポリビニルアルコール水溶液及び酢酸ビニルからなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
(1)火山噴出物及び/又は火山噴出物発泡体と無機アルカリ性物質を混合する工程、
(2)得られた混合物を粉砕する工程、
を含む粒子状機能性材料組成物の製造方法。
【請求項14】
更に高分子を添加する工程を含む請求項13の製造方法。
【請求項15】
火山噴出物が、シラス、軽石およびボラ土からなる群から選択される少なくとも1種である請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項16】
火山噴出物発泡体が、シラス発泡体、黒曜石発泡体及び真珠岩発泡体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項17】
無機アルカリ物質が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
高分子が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルメチルセルロースから選択される少なくとも1種である請求項14〜17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
さらにセメント、カゼイン、ポリビニルアルコール水溶液及び酢酸ビニルからなる群から選択される1種以上を添加することを含む請求項13〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
シートまたは容器で包装されている請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63866(P2013−63866A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202435(P2011−202435)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【出願人】(597086863)豊和直 株式会社 (11)
【Fターム(参考)】