説明

火炎式防除機

【課題】 防除効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】 本発明の火炎式防除機1は、圃場Hを走行可能に支持された機体2に、圃場Hの表面に向けて火炎を放射するバーナー5と、圃場Hを耕耘する耕耘刃6とが機体進行方向に並んで搭載されている。そして、耕耘刃6は、バーナー5から機体進行方向前方に間隔をおいて配設されたことを特徴としている。また、耕耘刃6は、圃場Hを耕耘するように下降した耕耘状態SCaと、圃場Hを耕耘しないように上昇した退避状態SCbとの間で昇降可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場における病害虫や雑草及びその種子等の生物生産に有害な生物(以下、「有害生物」という。)を火炎により防除する火炎式防除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の火炎式防除機として、特許文献1に記載された耕起焼土機を例示する。この耕起焼土機は、図5に示すように、先端に、ラインプレート82と耕土刃83とを有し、後端にハンドル84を有する装置本体81を設け、該本体の中間部付近には車輪85を設け、車輪の両側には、着脱自在のホイールガードプレート86をそれぞれ設け、耕土刃83の両側には、必要に応じて、ファイアーガードプレート87をそれぞれ設けるとともに、バーナー88を臨ませて設け、該バーナーの燃料を入れたタンク89を設けたことを特徴としている。図中、矢印Fは機体進行方向前側を指し示している。
【0003】
また、自走するトラクタに装着するタイプの火炎式防除機として、特許文献2に記載された火炎除草装置90を例示する。この装置は、図6に示すように、トラクタ99の機体に装架するロータリー耕耘装置91のロータリーカバーの上面側に、バーナー装置92を装架し、それのバーナー本体の吐炎筒93から吐出する火炎を囲う燃焼室94を、倒立する腕状に形成して、それの前端側をロータリーカバー95の後縁部に連結して、そのロータリーカバー95のリヤカバー96の後方に配設している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−24019号公報
【特許文献2】特開平10−75704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1記載の耕起焼土機においては、耕土刃83のすぐ後側に向けてバーナー88が設置されているので、耕土刃83で耕起されている最中の静止していない土に火炎が放射されることになり、土が十分に加熱されず、防除効率が悪いという課題がある。
【0006】
また、火炎による防除は圃場の表面に存在する有害生物に特に有効であり、有害生物も圃場の表面に近いほど存在率が高い。しかし、特許文献1記載の耕起焼土機においては、火炎による防除直前に、耕土刃83で耕起するようになっているので、圃場の表面近くに多く存在する有害生物を火炎の熱が伝わりにくい土中に潜らせてしまうことになり、防除効率が低下するという課題がある。
【0007】
そして、特許文献2記載の火炎除草装置90においても、特許文献1記載の耕起焼土機と同様に上述した課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の火炎式防除機は、
圃場を走行可能に支持された機体に、圃場の表面に向けて火炎を放射するバーナーと、圃場を耕耘する耕耘手段とが機体進行方向に並んで搭載された火炎式防除機において、
前記耕耘手段は、前記バーナーから前記機体進行方向前方に間隔をおいて配設されたことを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、前記耕耘手段は、前記バーナーから前記機体進行方向前方に間隔をおいて配設されているので、耕起後、圃場表面に静止した土に対して火炎を放射することができ、土を十分に加熱することができ、防除効率を向上させることができる。
【0010】
前記火炎式防除機においては、前記耕耘手段は、圃場を耕耘するように下降した耕耘状態と、圃場を耕耘しないように上昇した退避状態との間で昇降可能に設けられている。
【0011】
この構成によれば、前記耕耘手段は昇降可能に設けられているので、適宜、圃場を耕耘せずに防除したり、耕耘してから防除したりすることができる。例えば、第1回目の防除時に前記耕耘手段を退避状態にすることにより耕起していない圃場表面を火炎で防除し、続く第2回目の防除時に前記耕耘手段を耕耘状態にすることにより耕起した圃場表面を火炎で防除することができる。これにより、第1回目の防除時に有害生物の存在率が高い圃場表面を確実に防除し、それに続く第2回目の防除時に圃場の土中に潜んでいる残りの有害生物を耕起により圃場表面付近に移動させて防除することができる。
【0012】
前記火炎式防除機においては、前記耕耘手段における前記機体進行方向前方に配設された第二のバーナーを備えた態様を例示する。
【0013】
この構成によれば、まず、耕起していない圃場表面を前記第二のバーナーの火炎で防除し、その防除し終わった圃場を耕耘手段により耕起し、その耕起し終わった圃場表面を前記バーナーの火炎で防除することができる。これにより、1回の防除作業により、前記第二のバーナーにより有害生物の存在率が高い圃場表面を確実に防除するとともに、圃場の土中に潜んでいる残りの有害生物を前記耕耘手段により圃場表面に移動させて前記バーナーで防除することができ、作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る火炎式防除機によれば、防除効率を向上させることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図3は本発明を具体化した第一実施形態の火炎式防除機1を示している。この火炎式防除機1は、圃場Hを走行可能に支持された機体2に、燃料タンク3と、該燃料タンク3に燃料ホース4を介して接続された、圃場Hの表面に向けて火炎を放射する複数のバーナー5と、圃場Hを耕耘する耕耘手段としての複数の耕耘刃6とが搭載されている。なお、各図において、矢印Fは機体進行方向前側を指し示している。
【0016】
機体2は、前後に延びる左右一対の側枠片10a及び左右に延びる3本の横枠片10bにより矩形枠状に形成された枠フレーム10と、該枠フレーム10の四隅からそれぞれ下方に延びる脚部11と、機体前側の両脚部11にそれぞれ回転自在に軸支された前輪12と、機体後側の両脚部11にそれぞれ回転自在に軸支された後輪13と、枠フレーム10の前端側から前方へ突設された手持ちハンドル14とを備えている。手持ちハンドル14の基端側は枠フレーム10に対して上下の回動位置調節可能に取り付けられている。
【0017】
燃料タンク3は、機体2の上側において、バーナー5の熱で加熱されないようにバーナー5から離して配設されている。燃料タンク3には、LPガスや圧縮空気により加圧された状態の灯油等の燃料を入れるようになっている。
【0018】
複数(本例では5つ)のバーナー5は、機体後側において機体左右方向に列設されており、図1〜図3に実線で示すように圃場表面に向けて火炎を放射する防除状態SBaと、図3に二点鎖線で示すように着火容易となるように機体後方に向けて火炎を放射する準備状態SBbとの間で昇降可能に、バーナー昇降支持部16によって支持されている。バーナー昇降支持部16は、機体後側における左右両側にそれぞれ回動自在に支持された回動アーム17と、該両回動アーム17の先端部を連結するバーナー取付フレーム18と、回動アーム17における回動軸17aに取り付けられたバーナー位置操作レバー19と、準備状態SBbを保持するようにバーナー位置操作レバー19を係止する係止部材20とを備えている。バーナー取付フレーム18には、その長さ方向(左右方向)に等間隔をおいて複数のバーナー5が高さ調節可能に列設されており、本例では圃場Hの幅約1mに渡って火炎を放射することができるようになっている。そして、複数のバーナー5は、バーナー位置操作レバー19を係止部材20に係止していないときは自重及びバーナー位置操作レバー19の重量により防除状態SBaになるようになっている。
【0019】
複数の耕耘刃6は、バーナー5から機体進行方向前方に間隔をおいて配設されており、図1に示すように圃場Hを耕耘するように下降した耕耘状態SCaと、図3に示すように圃場Hを耕耘しないように上昇した退避状態SCbとの間で昇降可能に、耕耘手段昇降支持部22によって支持されている。耕耘手段昇降支持部22は、機体2の前後方向略中央部における左右両側にそれぞれ下方へ突設された吊下フレーム23と、該両吊下フレーム23の下端部において、両端側がそれぞれ左右方向に延びる支軸24を介して回動可能に支持され耕耘刃取付フレーム25と、該耕耘刃取付フレーム25に取り付けられた耕耘刃位置操作レバー26と、退避状態SCbを保持するように耕耘刃位置操作レバー26を係止する係止部材27とを備えている。吊下フレーム23は、回転ハンドル28を回すと、その回転方向に応じて下方への突出長さを調節可能に構成されており、これにより耕耘刃6の圃場Hへの進入深さが調節可能になっている。耕耘刃取付フレーム25には、その長さ方向(左右方向)に適宜間隔をおいて複数の耕耘刃6が列設されており、本例では圃場Hの幅約1m(複数のバーナー5が火炎を放射する幅と同様の幅)に渡って圃場Hを耕耘することができるようになっている。そして、複数の耕耘刃6は、耕耘刃位置操作レバー26を係止部材27に係止していないときは、自重及び耕耘刃位置操作レバー26の重量により耕耘状態SCaになるようになっている。
【0020】
次に、この火炎式防除機1の使用方法について説明する。まず、図3に示すように耕耘刃6を退避状態SCbにするとともに、同図に二点鎖線で示すようにバーナー5を準備状態SBbにする。この状態でバーナー5を点火する。次いで、同図に実線で示すようにバーナー5を防除状態SBaにし、作業者は手持ちハンドル14を持って火炎式防除機1をその機体前方へ引き歩くことにより、第1回目の防除として、耕耘していない圃場Hの表面全体を火炎により防除する。次に、図1に示すように耕耘刃6を耕耘状態SCaにし、作業者は手持ちハンドル14を持って火炎式防除機1をその機体前方へ引き歩くことにより、第2回目の防除として、圃場Hを耕耘刃6で耕耘するとともに、耕耘済みの圃場Hの表面を火炎により防除する。
【0021】
以上のように構成された本例の火炎式防除機1によれば、複数の耕耘刃6は、バーナー5から機体進行方向前方に間隔をおいて配設されているので、耕起後、圃場表面に静止した土に対して火炎を放射することができ、土に十分に熱を伝達することができ、防除効率を向上させることができる。
【0022】
また、耕耘手段としての耕耘刃6は昇降可能に設けられているので、適宜、圃場Hを耕耘せずに防除したり、耕耘してから防除したりすることができる。このため、前述したように、第1回目の防除時に耕耘刃6を退避状態SCbにすることにより耕起していない圃場表面を火炎で防除し、続く第2回目の防除時に耕耘刃6を耕耘状態SCaにすることにより耕起した圃場表面を火炎で防除することができる。これにより、第1回目の防除時に有害生物の存在率が高い圃場表面を確実に防除し、それに続く第2回目の防除時に圃場Hの土中に潜んでいる残りの有害生物を耕起により圃場表面付近に移動させて防除することができる。
【0023】
次に、図4は本発明を具体化した第二実施形態を示している。この火炎式防除機41は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。
【0024】
本例の火炎式防除機41は、テーラー等の小型管理機やトラクタ等の駆動・牽引手段42により駆動・牽引されるアタッチ用に構成された機体43を備えており、該機体43の後部は車輪47により走行自在に支持されている。機体43には、燃料タンク3と、該燃料タンク3に燃料ホース4を介して接続された第一の複数のバーナー5a及び第二の複数のバーナー5bと、圃場Hを耕耘する耕耘手段44とが搭載されている。
【0025】
第一の複数のバーナー5aは、耕耘手段44の後方(機体進行方向後方)において、左右方向に等間隔をおいて列設されている。また、第二の複数のバーナー5bは、耕耘手段44の前方(機体進行方向前方)において、左右方向に等間隔をおいて列設されている。
【0026】
耕耘手段44は、駆動・牽引手段42からユニバーサルジョイント45を介して入力される駆動力により駆動されるロータリー爪46を備えている。このロータリー爪46は、第一の複数のバーナー5aから機体進行方向前方に間隔をおいて配設されている。
【0027】
本例の火炎式防除機41によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、次の効果を得ることができる。すなわち、まず、耕起していない圃場表面を第二のバーナー5bの火炎で防除し、その防除し終わった圃場Hを耕耘手段44により耕起し、その耕起し終わった圃場表面を第一のバーナー5aの火炎で防除することができる。これにより、1回の防除作業により、第二のバーナー5bにより有害生物の存在率が高い圃場表面を確実に防除するとともに、圃場Hの土中に潜んでいる残りの有害生物を耕耘手段44による耕起により圃場表面に移動させて第一のバーナー5aで防除することができ、作業効率を向上させることができる。
【0028】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)第一実施形態における機体2又は第二実施形態における機体43を自走式に構成すること。
(2)バーナー5の構造やその燃料を適宜変更すること。
(3)バーナー5や耕耘手段6を昇降可能に支持する手段の構造や支持方式を適宜変更すること。
(4)機体2,43におけるバーナー5の機体進行方向後方に水の噴霧手段又は散布手段を設け、機体2,43の進行にともなって、火炎により高温に加熱された土に対し水を噴霧又は散布するように構成すること。これにより、水蒸気を発生させ、火炎による防除が及ばない深さの土までをも該蒸気により防除することが可能になる。このとき、機体2,43における前記噴霧手段又は散布手段の機体進行方向後方に圃場表面を覆うカバーを設け、機体2,43の進行にともなって、水を噴霧又は散布した部位を該カバーで覆うようにすることが好ましい。これにより蒸気を土中に閉じこめることができ、防除効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る火炎式防除機(耕耘刃は耕耘状態)の側面図である。
【図2】同火炎式防除機の平面図である。
【図3】同火炎式防除機(耕耘刃は退避状態)の側面図である。
【図4】本発明を具体化した第二実施形態に係る火炎式防除機の側面図である。
【図5】従来の火炎式防除機の側面図である。
【図6】従来の別の火炎式防除機の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 火炎式防除機
2 機体
3 燃料タンク
4 燃料ホース
5 バーナー
6 耕耘刃
12 前輪
13 後輪
16 バーナー昇降支持部
22 耕耘手段昇降支持部
41 火炎式防除機
42 駆動・牽引手段
43 機体
44 耕耘手段
46 ロータリー爪
H 圃場
SBa 防除状態
SBb 準備状態
SCa 耕耘状態
SCb 退避状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行可能に支持された機体に、圃場の表面に向けて火炎を放射するバーナーと、圃場を耕耘する耕耘手段とが機体進行方向に並んで搭載された火炎式防除機において、
前記耕耘手段は、前記バーナーから前記機体進行方向前方に間隔をおいて配設されたことを特徴とする火炎式防除機。
【請求項2】
前記耕耘手段は、圃場を耕耘するように下降した耕耘状態と、圃場を耕耘しないように上昇した退避状態との間で昇降可能に設けられた請求項1記載の火炎式防除機。
【請求項3】
前記耕耘手段における前記機体進行方向前方に配設された第二のバーナーを備えた請求項1又は2記載の火炎式防除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−271246(P2006−271246A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93981(P2005−93981)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】