説明

火炎演出装置および火炎演出方法

【課題】都市ガスにより発生した火炎をトルネード状に形成する。
【解決手段】火炎演出装置1aは、燃焼ガスと空気との混合流の供給路21aと、供給路21aの一部に設けられた、混合流を吐出させる吐出口22aと、吐出口22aから発生する火炎の周囲に、吐出口22aを通らない鉛直軸34aを中心として空気の旋回流を形成する旋回流形成機構3とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火炎演出装置に関し、特に、都市ガスの燃焼によって生じる火炎の形状をらせん状に形成する火炎演出装置および火炎演出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般向けの科学教育や企業の広報活動のために、多くの科学館や企業のPR館などが設置され、各種の啓蒙活動がおこなわれている。石油・石炭や天然ガス、都市ガスなどのエネルギー分野においては、これらのエネルギーの象徴ともいえる火炎を効果的に演出できると、大きなPR効果が期待できる。
【0003】
このような観点から、例えば、火炎が噴き出したり飛散するように火炎を形成する技術が知られている(特許文献1参照。)。また、火炎をトルネード(竜巻)形状に形成する装置が実用化されている。これは英国のマグマ・サイエンス・アドベンチャー・センターに設置されているもので、灯油によって発生した火炎の周囲四隅からにファンで空気を送り込み、火炎をトルネード状に演出する装置である。
【特許文献1】特開2003−14209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火炎をトルネード状に演出することは、火の持つ神秘性や力強さや不思議さをアピールするために有効であり、上記の英国の事例もその一つである。しかし、都市ガスのPRのために都市ガスを用いて同様のトルネード状の火炎演出をおこなおうとしても、都市ガスの燃焼速度は灯油のそれと比べてはるかに速いため、きれいな形のトルネードは形成されないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決し、都市ガスにより発生した火炎をトルネード状に形成することのできる火炎演出装置および火炎演出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の火炎演出装置は、燃焼ガスと空気との混合流の供給路と、供給路の一部に設けられた、混合流を吐出させる吐出口と、吐出口から発生する火炎の周囲に、吐出口を通らない鉛直軸を中心として空気の旋回流を形成する旋回流形成機構とを有している。
【0007】
このように、混合流が吐出されて火炎形成の中心軸となる吐出口と、火炎の周囲に旋回流を発生させる鉛直軸とをずらすことによって、火炎が鉛直軸の周囲に巻きつきながら上昇するように挙動するため、火炎のらせん運動が視認しやすくなる。
【0008】
燃焼ガスとしては、例えば都市ガスを用いることができる。
【0009】
旋回流形成機構は、鉛直軸が中心を通る仮想円の円周上に、鉛直方向に延び、互いに略等角度で複数個設置されている空気供給管であり、空気供給管の各々は、吐出口に対して鉛直方向上側となる複数の位置に、仮想円の略接線方向に、仮想円の円周に沿って同一方向に開口する送風用スリットを備えているように構成することができる。
【0010】
また、旋回流形成機構は、鉛直軸を中心として、少なくとも一部が吐出口から鉛直方向下向きに延び、鉛直方向上側を向く端面が開口した第1の空気対流用円筒と、第1の空気対流用円筒内に、第1の空気対流用円筒の側壁の近傍の、吐出口に対して鉛直方向下側となる位置に設けられ、側壁の接線方向に沿う方向成分のみを、または方向成分と鉛直方向上側を向く方向成分とのみを有する方向に向かって開口する第1の空気供給ノズルとを有するように構成することができる。
【0011】
ここで、第1の空気供給ノズルは、第1の空気対流用円筒の側壁の接線方向に対して約10度の上向き角をなすのが好ましい。
【0012】
さらに、旋回流形成機構は、第1の空気対流用円筒の外側に第1の空気対流用円筒と同心円状に設けられた第2の空気対流用円筒と、第2の空気対流用円筒内に、第2の空気対流用円筒の側壁の近傍の、吐出口に対して鉛直方向下側となる位置に互いに略等角度で複数個設けられ、各々が、第2の空気対流用円筒の側壁の接線方向に沿う方向成分のみを、または第2の空気対流用円筒の側壁の接線方向に沿う方向成分と鉛直方向上側を向く方向成分とのみを有する方向に向かって開口する第2の空気供給ノズルとを有するように構成することができる。
【0013】
ここで、第2の空気供給ノズルは、第2の空気対流用円筒の側壁の接線方向に対して約10度の上向き角をなすのが好ましい。
【0014】
このとき、旋回流形成機構は、第2の空気対流用円筒の外側に第2の空気対流用円筒と同心円状に設けられた空気ガイド用円筒と、第2の空気対流用円筒と空気ガイド用円筒との間に環状に設けられ、鉛直方向上向きに空気を送風する環状空気供給部とを有するようにしてもよい。
【0015】
旋回流形成機構は、この他にも、鉛直軸を中心として、少なくとも一部が吐出口から鉛直方向上側に向かって略鉛直に延び、鉛直方向上側を向く端面が開口した空気対流用円筒と、空気対流用円筒内に、空気対流用円筒の側壁の近傍に設けられ、側壁の接線方向に沿う方向成分のみを、または方向成分と鉛直方向上側を向く方向成分とのみを有する方向に向かって開口する空気供給ノズルとを有するように構成することができる。
【0016】
ここで、空気供給ノズルは、空気対流用円筒の側壁の接線方向に対して約20度の上向き角をなすのが好ましい。
【0017】
本発明の火炎演出方法は、燃料ガスと空気との混合流を吐出口から吐出させるステップと、吐出口から吐出した混合流を燃焼させて吐出口から火炎を発生させるステップと、火炎の周囲に、吐出口を通らない鉛直軸を中心として空気の旋回流を形成するステップとを有している。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明の火炎演出装置等によれば、燃料ガスにより発生した火炎についても火炎のらせん運動が視認しやすくなり、時間とともにダイナミックに変化するトルネード状の炎を容易に形成することができ、燃料ガスのPR効果を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の火炎演出装置の詳細について説明する。図1(a)には本発明の火炎演出装置の第1の実施形態の側方図を、図1(b)には図1(a)中1−1方向からみた平面図を示す。
【0020】
火炎演出装置1aは、円筒形の収納架台2aと、その上に等間隔に設けられた4つの空気供給管3とを有している。
【0021】
収納架台2aは、収納架台2aの上面に向けて延びるバーナー21aを内部に備え、バーナー21aの火炎発生側端部は、収納架台2aの上面に吐出口22aとして開口している。バーナー21aの仕様には特に制約はなく、一例として、細山熱器株式会社製ボイラー用パイロットバーナーUPB−40(バーナーノズル径48.6mm)が用いられる。
【0022】
バーナー21aにはガス供給路23と燃焼空気供給路24とが接続されている。また、吐出口22aの近傍には点火バーナ(図示せず)が設けられており、ガス供給路23から供給された常温の都市ガスと、燃焼空気供給路24から供給された常温の空気はバーナー21aの内部で混合流となって上昇し、点火バーナで着火されて、吐出口22aで火炎となって燃焼する。火炎演出装置1aは供給口22aが上向きに設置されるので、火炎発生方向は吐出口22aから鉛直方向上向きとなる。ここで、都市ガスとは、メタンを主成分とする天然ガスを原料として製造される可燃性ガスである。また、燃料としては都市ガス以外にもメタンを主成分とする燃焼ガスを用いることができる。
【0023】
空気供給管3は収納架台2a上の、仮想的な鉛直軸34aが中心を通る仮想円32上に90°間隔で4つ設けられ、各々が鉛直方向上向きに延びている。また、4本の空気供給管3の上端には円環状の天板33が設けられ、火炎の排気口を形成している。一例では、収納架台2aの径は約1000mm、収納架台2aから天板33までの高さは約1000mm、天板33の開口は約350mmである。
【0024】
図2には空気供給管付近の斜視図を、図3(a)には空気供給管の側方図を、図3(b)には同図(a)中A部として示された部分の詳細側方図を示している。空気供給管3の内部には空気の流路が形成されており、空気供給源(図示せず)から空気供給管3の収納架台2a側の端部に空気が供給されると、空気は空気供給管3の内部を上昇する。空気供給管3には、図2、3に示すように、内部の流路と連通し、鉛直方向に細長い形状の多数の送風用スリット31が、空気供給管3の軸方向に均等間隔で、軸方向と直角方向を向いて設けられている。図示の例では、送風用スリット31は、空気供給管3の延びる方向のほぼ全域に設けられ、長さ約1050mm、外径約75mmの空気供給管3に対して、長さ50mm、幅2mm、設置間隔5mmで1本当たり計18個設けられている。また、各空気供給管3の送風用スリット31は、図1(b)の白抜き矢印に示す向きに、すなわち、仮想円32の略接線方向を向いて、仮想円32の円周に沿って同一方向に開口している。したがって、空気供給管3の内部を上昇した空気は、各送風用スリット31から、鉛直軸34aのまわりに、同一回転方向に噴き出し、旋回流が形成される。
【0025】
吐出口22aは仮想円32の中心点からずれた位置に設けられている。このため、空気の旋回流の中心軸と火炎の中心軸は偏芯する。図示の例では、仮想円32の直径X1が900mmであるのに対して、鉛直軸34aと吐出口22aとの偏芯量Y1は約50mmである。
【0026】
次に火炎演出装置1の運転方法を説明する。まず、ガス供給路23と燃焼空気供給路24とを開いてバーナー21aの内部を混合流で満たす。次に点火バーナを作動させ、混合流を燃焼させる。これによって、吐出口22aから鉛直方向上側に向けて火炎が発生し、同時にガス供給路23と燃焼空気供給路24から混合流が補充され燃焼が継続するので、定常状態の鉛直方向上向きの火炎が形成される。ここでは、ガスの流量は約2m3/h、ガスの供給圧力は2kPa、空気比は0.2以下とした。なお、空気比とは、燃料が完全燃焼するのに必要な空気量(理論空気量)の何倍の空気が供給されているかを示す指標である。
【0027】
ここで空気供給源を開き、空気供給管3の送風用スリット31から空気を送風する。ここでは、供給する空気流量は約52m3/h、空気風速は約2m/sとした。空気は鉛直軸34aのまわりを旋回する旋回流となり、火炎に鉛直軸34aを中心とした旋回運動を引き起こす。図4はこのときの火炎の状態を模式的に示したもので、火炎11は鉛直軸34aのまわりを不規則に旋回するように動くことが確認された。このときの火炎の高さは800mm程度、火炎の幅は300mm程度であった。また、火炎の色はオレンジ色であった。
【0028】
なお、火炎の高さを変えるにはガス供給量を調整すればよく、一定時間後に火炎はガス供給量に応じた定常状態に復帰する。
【0029】
ここで、空気の旋回流の中心軸と火炎の中心軸とを偏芯させる理由について説明する。もし、吐出口22aを仮想円32の中心点に一致させても、火炎は旋回流を受けるので旋回する。しかし、この場合火炎が火炎の中心軸まわりに回転するだけなので、らせん状に上昇する火炎に見えにくい。いわば、パイプが軸を中心に回転し、パイプの表面に模様を付けない限りパイプが回転していることが分からない状態である。これに対して、吐出口22aを偏芯させると、火炎の軸が鉛直軸34aのまわりをらせん状に回り込みながら上昇する。いわば、ビニールパイプが軸の周りを巻きつきながら回転するような状態となるので、らせん構造が見えやすくなるのである。また、偏芯させることで、流れのバランスが多少崩れ、らせん状に上昇する火炎に揺らぎが生じ、時間とともにダイナミックに変化するトルネード状の炎が形成されることになる。しかしながら、偏芯量が大きすぎると流れのバランスが崩れすぎ、火炎の上昇流と空気旋回流とのバランスがとれず、らせん構造も崩れてしまう。また、旋回流の風速は火炎演出装置1aの外周に行くほど、すなわち空気供給管3に近くなるほど早くなるので、火炎が拡散しすぎて太く短い火炎になったり、吹き消えたりする可能性がある。上記の偏芯量はこのような観点から、最適な偏芯量の範囲にあると考えられる。
【0030】
また、このような構成によって、燃焼速度の速い都市ガスにおいてもきれいな形のトルネードが形成されるのは、空気比を0.2以下に抑え拡散燃焼させるとともに、流れのバランスを意図的に崩して、燃焼速度を低下させているためである。すなわち、炎を安定させるには、通常、空気比を1.0に近づけて予混合燃焼火炎を生じさせる(青い炎が形成される)が、この空気比では燃焼速度が速すぎて、トルネードが形成されない。これに対して、空気比を0.2以下に下げると炎の安定性は低下するが、燃焼速度の遅い拡散燃焼が生じるので、供給ガスが吐出口22aから天板33の開口に至る間の拡散進行(空気との混合)の度合いを調整することによって、燃焼反応の進行を抑えた長い火炎を作ることができるのである。なお、拡散燃焼が生じているので炎の色はオレンジ色になる。また、拡散進行は主にガスと空気の流れの乱れ(乱流拡散)に影響されるが、このように偏芯させることによって、流れのバランスを意図的に少し崩し、拡散進行の度合いを調整し、流れに乱れを与える燃焼速度を調整することができる。
【0031】
次に、図5を用いて本発明の火炎演出装置の第2の実施形態について説明する。図5(a)には本発明の火炎演出装置の第2の実施形態の側方図を、図5(b)には図5(a)中5−5方向からみた平面図を示す。本実施形態は、第1の実施形態と比べてバーナーが長く延びており、旋回流が吐出口の下方から形成される点が大きく異なっている。
【0032】
収納架台2b上面に鉛直軸34bを中心として、第1の空気対流用円筒41が設けられている。第1の空気対流用円筒41の先端は吐出口22bとほぼ同じ高さまで延び、全面が開口となっているが、第1の実施形態のように一部を天板で覆ってもよい。第1の空気対流用円筒41は、吐出口22bを基準とすれば、少なくとも一部が吐出口22bから鉛直方向下向きに延び、鉛直方向上側を向く端面が開口した空気対流用円筒である。
【0033】
第1の空気対流用円筒41を構成する側壁の近傍の収納架台2b上には、第1の空気供給ノズル42が設けられている。第1の空気供給ノズル42は一端が第1の空気対流用円筒41内に開口し、他端より空気が供給される。第1の空気供給ノズル42は側壁の円周に沿って、かつ、収納架台2bの上面に対して若干上向きに設けられている。図5(a)、(b)の白抜き矢印の角度はこのことを意味している。すなわち、第1の空気供給ノズル42は、側壁の接線方向に沿う方向成分と鉛直方向上側を向く方向成分とを有する方向に向かって開口している。ただし、鉛直方向上側を向く方向成分は0でもよい(例えば、第3の実施形態参照。)。第1の空気供給ノズル42は収納架台2b上に設けられなくてもよいが、少なくとも第1の空気対流用円筒41の内部に設けられる必要がある。
【0034】
供給口22bは第1の空気対流用円筒41に対して偏芯して設けられている。一例では、第1の空気対流用円筒41は内径(X2)190mm、高さ270mm程度であり、偏芯量Y2は20mm程度である。バーナー21bとしては、前述のボイラー用パイロットバーナーUPB−40をノズル口径約60mmに改造したものが用いられ、第1の空気供給ノズル42の上向き角は約10°、開口部の径は約50mmとした。
【0035】
上記の装置仕様で、ガスの流量約0.5m3/h、ガスの供給圧力2kPa、空気比0.2以下、空気流量約52m3/h、空気風速約2m/sで作動させた。第1の空気供給ノズル42から送風された空気は、第1の空気対流用円筒41の側壁のまわりに沿って上昇旋回流となり、この上昇旋回流が火炎に旋回運動を引き起こし、火炎は第1の実施形態と同様、鉛直軸34bのまわりを不規則に旋回するように動くことが確認された。このときの火炎の高さは500mm程度、火炎の幅は150mm程度であった。また、火炎の色はオレンジ色であった。
【0036】
次に、図6を用いて本発明の火炎演出装置の第3の実施形態について説明する。図6(a)には本発明の火炎演出装置の第3の実施形態の側方図を、図6(b)には図6(a)中6−6方向からみた平面図を示す。本実施形態は、第2の実施形態をさらに改良したもので、旋回流形成用の円筒を二重化し、空気流を各々の円筒に沿って供給している点が異なっている。
【0037】
収納架台2c上面に鉛直軸34cを中心として、第1の空気対流用円筒51が設けられている。第1の空気対流用円筒51の先端は吐出口22cとほぼ同じ高さまで延び、全面が開口となっている。第1の空気対流用円筒51の外側には、同心円状に第1の空気対流用円筒51とほぼ同じ高さまで、第2の空気対流用円筒52が延びている。さらに、第2の空気対流用円筒52の外側には、同心円状に空気ガイド円筒53が延びている。
【0038】
第1の空気対流用円筒51を構成する側壁の近傍の収納架台2c上には、第1の空気供給ノズル54が設けられている。第1の空気供給ノズル54は一端が第1の空気対流用円筒51内に開口し、他端より空気が供給される。第1の空気供給ノズル54は側壁の円周に沿って、かつ、収納架台2cの上面と平行に設けられている。第2の空気対流用円筒52を構成する側壁の近傍の収納架台2c上には、第2空気供給ノズル55が90°間隔で4つ設けられている。第2の空気供給ノズル55は一端が第2の空気対流用円筒52内に開口し、他端より空気が供給される。第2の空気供給ノズル55は側壁の円周に沿って側壁の接線方向に、かつ、収納架台2の上面に対して若干上向きに設けられている。さらに、第2の空気対流用円筒52と空気ガイド用円筒53との間には、環状に設けられ、鉛直方向上向きに空気を送風する環状空気供給部56が設けられている。環状空気供給部56には空気を供給するための空気供給路57が接続している。図6(a)、(b)の各白抜き矢印の角度は以上のことを意味している。
【0039】
吐出口22cは、第1、第2の空気対流用円筒51,52、空気ガイド円筒53に対して偏芯して設けられている。一例では、第1の空気対流用円筒51は内径200mm、高さ420mm程度、第2の空気対流用円筒52は内径450mm、高さ420mm程度、第3の空気対流用円筒53は内径600mm、高さ420mm程度であり、偏芯量Y3は20mm程度である。バーナー21cとしては、ノズル口径を約60mmに改造した前述のボイラー用パイロットバーナーUPB−40を用い、また、第1の空気供給ノズル54の開口部の径は16mm、第2の空気供給ノズル55の上向き角は約10°、開口部の径は約16mmとした。
【0040】
上記の装置仕様で、ガスの流量約2.5m3/h、ガスの供給圧力2kPa、空気比0.2以下、空気流量約145m3/h、空気風速約2m/sで作動させた。第1の空気供給ノズル54から送風された空気は、第1の空気対流用円筒51の側壁の周りに沿って上昇旋回流となり、この上昇旋回流が火炎に旋回運動を引き起こす。さらに、第2の空気供給ノズル54から送風された空気は、第2の空気対流用円筒52の側壁の周りに沿って上昇旋回流となり、第1の空気供給ノズル54によって旋回運動を引き起こされた火炎に、さらに旋回運動を与える。一方、環状空気供給部56から鉛直方向上向きに吹き出す上昇空気流は、火炎を当該上昇空気流の内部に閉じ込めるとともに、外部の空気流による火炎への影響を防止し、一種のエアカーテンとして作用する。この結果、火炎は第1の実施形態と同様、鉛直軸34cのまわりを不規則に旋回するように動くことが確認された。このときの火炎の高さは1500mm程度、火炎の幅は300mm程度であった。また、火炎の色はオレンジ色であった。
【0041】
次に、図7を用いて本発明の火炎演出装置の第4の実施形態について説明する。図7(a)には本発明の火炎演出装置の第4の実施形態の側方図を、図7(b)には図7(a)中7−7方向からみた平面図を示す。本実施形態は、第1の実施形態と同様、吐出口が収納架台に近接して設けられているが、旋回流の発生に円筒のガラス容器を用いる点が異なっている。
【0042】
収納架台2d上面に鉛直軸34dを中心として、空気対流用円筒61が設けられている。空気対流用円筒61の先端は吐出口22dとほぼ同じ高さまで延び、上端には火炎の排気口となる開口を形成する天板63を有しているが、第1の実施形態のように全面が開口していてもよい。空気対流用円筒61は、内部に発生する火炎を目視可能なように耐熱ガラスで製作される。
【0043】
空気対流用円筒61を構成する側壁の近傍の収納架台2d上には、空気供給ノズル62が設けられている。空気供給ノズル62は一端が空気対流用円筒61内に開口し、他端より空気が供給される。空気供給ノズル62は側壁の円周に沿って、かつ、収納架台2dの上面に対して若干上向きに設けられている。図7(a)、(b)の白抜き矢印の角度はこのことを意味している。すなわち、側壁の接線方向に沿う方向成分と鉛直方向上側を向く方向成分とを有する方向に向かって開口しているが、鉛直方向上側を向く方向成分は0でもよい。空気供給ノズル62は収納架台2d上に設けられなくてもよいが、少なくとも空気対流用円筒61の内部に設けられる必要がある。
【0044】
供給口22dは空気対流用円筒61に対して偏芯して設けられている。一例では、空気対流用円筒61は内径(X4)190mm、高さ500mm程度であり、偏芯量Y4は20mm程度である。バーナー21dとしては、前述のボイラー用パイロットバーナーUPB−40を用い、空気供給ノズル62の上向き角は約20°とした。
【0045】
上記の装置仕様で、ガスの流量約0.5m3/h、ガスの供給圧力2kPa、空気比0.2以下、空気流量約52m3/h、空気風速約2m/sで作動させた。空気供給ノズル62から送風された空気は、空気対流用円筒61の側壁の周りに沿って上昇旋回流となり、この上昇旋回流が火炎に旋回運動を引き起こし、火炎は第1の実施形態と同様、鉛直軸34dのまわりを不規則に旋回するように動くことが確認された。このときの火炎の高さは400mm程度、火炎の幅は100mm程度であった。また、火炎の色はオレンジ色であった。
【0046】
以上、本発明の実施形態をいくつか説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、第1の実施形態で示した空気供給管の本数は所定の旋回流を形成することが可能であれば、4本に限らず、必要に応じて増減することができる。また、送風用スリットの大きさや設置間隔を空気供給管の軸方向に変化させ、火炎発生方向に対して旋回流の風速、風量を調整してもよく、スリットに上向きの角度を付けてもよい。空気供給ノズルに関しても、複数個設けてより強い旋回流を発生させるようにしてもよい。また、第4の実施形態で示したガラス製の円筒容器の内部に第1の実施形態で示した空気供給管を少なくとも1本設置するような実施形態も可能である。
【0047】
さらに、吐出口の近傍に空気送風口を設け、流速の遅い空気を供給することによって、炎を薄い青色に変えることもできる。これは空気供給量を高めることによって、燃焼状態が予混合燃焼火災に近づくためであり、オレンジ色のトルネードから青色のトルネードへの変化、その逆の変化を実現することができる。
【0048】
また、金属塩の水溶液を炎の周辺に噴霧することで、トルネード火炎に金属塩の有色炎による彩色を施すこともできる。例えばナトリウムであれば黄色、カリウムであれば紫色、リチウムであれば赤色、銅であれば緑色などを付けることができ、本発明をより一層効果的なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る火炎演出装置の側面図および平面図である。
【図2】図1に示す火炎演出装置の空気供給管付近の部分斜視図である。
【図3】図1に示す火炎演出装置の空気供給管の部分詳細側面図である。
【図4】図1に示す火炎演出装置の火炎の発生状況を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る火炎演出装置の側面図および平面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る火炎演出装置の側面図および平面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る火炎演出装置の側面図および平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1a、1b,1c,1d 火炎演出装置
2a,2b,2c,2d 収納架台
21a,21b,21c,21d バーナー
22a,22b,22c,22d 吐出口
23 ガス供給路
24 燃焼空気供給路
3 空気供給管
31 送風用スリット
32 仮想円
33 天板
34a,34b,34c,34d 鉛直軸
41 第1の空気対流用円筒
42 第1の空気供給ノズル
51 第1の空気対流用円筒
52 第2の空気対流用円筒
53 空気ガイド用円筒
54 第1の空気供給ノズル
55 第2の空気供給ノズル
56 環状空気供給部
57 空気供給路
61 空気対流用円筒
62 空気供給ノズル
63 天板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスと空気との混合流の供給路と、
前記供給路の一部に設けられた、前記混合流を吐出させる吐出口と、
前記吐出口から発生する火炎の周囲に、前記吐出口を通らない鉛直軸を中心として空気の旋回流を形成する旋回流形成機構とを有する火炎演出装置。
【請求項2】
前記燃焼ガスは都市ガスである、請求項1に記載の火炎演出装置。
【請求項3】
前記旋回流形成機構は、前記鉛直軸が中心を通る仮想円の円周上に、鉛直方向に延び、互いに略等角度で複数個設置されている空気供給管であり、該空気供給管の各々は、前記吐出口に対して鉛直方向上側となる複数の位置に、該仮想円の略接線方向に、該仮想円の円周に沿って同一方向に開口する送風用スリットを備えている、請求項1または2に記載の火炎演出装置。
【請求項4】
前記旋回流形成機構は、
前記鉛直軸を中心として、少なくとも一部が前記吐出口から鉛直方向下向きに延び、鉛直方向上側を向く端面が開口した第1の空気対流用円筒と、
前記第1の空気対流用円筒内に、該第1の空気対流用円筒の側壁の近傍の、前記吐出口に対して鉛直方向下側となる位置に設けられ、該側壁の接線方向に沿う方向成分のみを、または該方向成分と鉛直方向上側を向く方向成分とのみを有する方向に向かって開口する第1の空気供給ノズルとを有する、請求項1または2に記載の火炎演出装置。
【請求項5】
前記第1の空気供給ノズルは、前記第1の空気対流用円筒の側壁の接線方向に対して約10度の上向き角をなす、請求項4に記載の火炎演出装置。
【請求項6】
前記旋回流形成機構は、
前記第1の空気対流用円筒の外側に該第1の空気対流用円筒と同心円状に設けられた第2の空気対流用円筒と、
前記第2の空気対流用円筒内に、該第2の空気対流用円筒の側壁の近傍の、前記吐出口に対して鉛直方向下側となる位置に互いに略等角度で複数個設けられ、各々が、該第2の空気対流用円筒の側壁の接線方向に沿う方向成分のみを、または該第2の空気対流用円筒の側壁の接線方向に沿う方向成分と鉛直方向上側を向く方向成分とのみを有する方向に向かって開口する第2の空気供給ノズルとを有する、請求項4または5に記載の火炎演出装置。
【請求項7】
前記第2の空気供給ノズルは、前記第2の空気対流用円筒の側壁の接線方向に対して約10度の上向き角をなす、請求項6に記載の火炎演出装置。
【請求項8】
前記旋回流形成機構は、
前記第2の空気対流用円筒の外側に該第2の空気対流用円筒と同心円状に設けられた空気ガイド用円筒と、
前記第2の空気対流用円筒と前記空気ガイド用円筒との間に環状に設けられ、鉛直方向上向きに空気を送風する環状空気供給部とを有する、請求項7に記載の火炎演出装置。
【請求項9】
前記旋回流形成機構は、
前記鉛直軸を中心として、少なくとも一部が前記吐出口から鉛直方向上側に向かって略鉛直に延び、鉛直方向上側を向く端面が開口した空気対流用円筒と、
前記の空気対流用円筒内に、該空気対流用円筒の側壁の近傍に設けられ、該側壁の接線方向に沿う方向成分のみを、または該方向成分と鉛直方向上側を向く方向成分とのみを有する方向に向かって開口する空気供給ノズルとを有する、請求項1または2に記載の火炎演出装置。
【請求項10】
前記空気供給ノズルは、前記空気対流用円筒の側壁の接線方向に対して約20度の上向き角をなす、請求項9に記載の火炎演出装置。
【請求項11】
燃料ガスと空気との混合流を吐出口から吐出させるステップと、
前記吐出口から吐出した前記混合流を燃焼させて前記吐出口から火炎を発生させるステップと、
前記火炎の周囲に、前記吐出口を通らない鉛直軸を中心として空気の旋回流を形成するステップとを有する火炎演出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−38285(P2006−38285A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215827(P2004−215827)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000222174)東洋エンジニアリング株式会社 (69)
【出願人】(000173359)細山熱器株式会社 (12)
【Fターム(参考)】