説明

火薬庫警鳴システム

【課題】安全性を確保し、且つ商用の交流にて動作する火薬庫警鳴システムを提供する。
【解決手段】爆薬庫3の異常を検知し、警鳴を発する爆薬庫警鳴装置9と、爆薬庫3から防爆土堤1bを隔てて設けられた火工品庫4の異常を検知し、警鳴を発する火工品庫警鳴装置12とを備える火薬庫警鳴システムに、爆薬庫3及び火工品庫4が設けられた敷地1内に交流を送電する交流送電線6a,6bと、交流送電線6aに発生した過電流及び異常電圧を遮断する遮断装置7と、爆薬庫3に設けられており、送電された交流を直流に変換する整流装置8と、整流装置8で変換された直流を火工品庫4へ送電する直流送電線11と、遮断装置7、整流装置8及び直流送電線11を落雷から保護する避雷針14とを備え、爆薬庫警鳴装置9及び火工品庫警鳴装置12を、整流装置8で変換された直流にて動作するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆薬庫及び火工品庫の異常を検知し、警鳴を発する火薬庫警鳴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火薬庫は、爆薬を貯蔵する爆薬庫と、起爆のための雷管、信管、導火線等の火工品を貯蔵する火工品庫とで構成され、爆薬庫及び火工品庫は、火薬類を安全に保安管理するために防爆土堤を隔てて設置されている。また、爆薬庫及び火工品庫夫々に、爆薬庫及び火工品庫の異常を検知し、警鳴を発する爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置が設けられている。各警鳴装置の電源は、電池式であり、例えば3Vの電池4本を直列接続した構成である。
【特許文献1】特開昭56−22885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置の電源として電池式を採用した場合、電圧の低下によって爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置が誤動作する虞があり、定期的な電池交換の手間を要するという問題があった。
なお、商用の交流を12Vの直流に変換して、爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置に供給することも考えられるが、火薬及び火工品を貯蔵しているという特殊な事情があるため、交流電源の採用が試みられることは無かった。
【0004】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、安全性を確保し、且つ交流電源の交流を直流に変換して爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置に供給することができる火薬庫警鳴システムを提供することを目的とする。
【0005】
本発明の他の目的は、遮断装置及び避雷針を防爆土堤に設置することにより、安全性を向上させることができる火薬庫警鳴システムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、非常用電源装置を備えることにより、停電が発生した場合であっても火薬庫の保安管理を行うことができる火薬庫警鳴システムを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、警鳴を検出し、爆薬庫又は火工品庫の異常を示す情報を無線で送信することができる火薬庫警鳴システムを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、爆薬庫又は火工品庫の内部を囲繞した警戒線を流れる電流を制限するための過電流リレーと、該過電流リレーの制限電流よりも大電流が流れた場合に溶断するヒューズとを備えることにより、火薬庫警鳴システムの安全性を確保し、且つ過電流リレーによる閉回路の断線を簡易に復旧させることができる火薬庫警鳴システムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、交流を変換して得た直流で動作する撮像装置を備えることにより、爆薬庫又は火工品庫の異常を画像で確認することができる火薬庫警鳴システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る火薬庫警鳴システムは、爆薬庫の異常を検知し、警鳴を発する爆薬庫警鳴装置と、該爆薬庫から防爆土堤を隔てて設けられた火工品庫の異常を検知し、警鳴を発する火工品庫警鳴装置とを備える火薬庫警鳴システムにおいて、前記爆薬庫及び火工品庫が設けられた敷地内に交流を送電する交流送電線と、該交流送電線に発生した過電流及び異常電圧を遮断する遮断装置と、前記爆薬庫(又は火工品庫)に設けられており、送電された交流を直流に変換する整流装置と、該整流装置で変換された直流を前記火工品庫(又は爆薬庫)へ送電する直流送電線とを備え、前記爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置は、前記整流装置で変換された直流にて動作するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、交流送電線にて送電された交流は、爆薬庫に設けられた整流装置によって直流に変換され、爆薬庫警鳴装置に供給される。また、整流装置によって変換された直流は、直流送電線を通じて火工品庫警鳴装置に供給される。従って、爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置を交流電源によって動作させることができ、電池が不要になる。
また、落雷等によって交流送電線に発生した過電流及び異常電圧は、遮断装置によって遮断されるため、該過電流及び異常電圧が爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置に印加されることは無い。
以上、整流装置を爆薬庫に設けた場合を説明したが、整流装置を火工品庫に設けた場合も同様である。なお、この場合、整流装置によって変換された直流は、火工品庫警鳴装置に供給され、また直流送電線を通じて爆薬庫警鳴装置に供給される。
【0012】
本発明に係る火薬庫警鳴システムは、直流を前記爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置へ出力する非常用電源装置を前記爆薬庫(又は火工品庫)に備えることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、非常用電源装置を備えているため、停電が発生しても直流を爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置に供給し、警鳴システムを安定的に動作させることができる。
【0014】
本発明に係る火薬庫警鳴システムは、前記遮断装置、整流装置及び直流送電線を落雷から保護する避雷針を備え、前記遮断装置及び避雷針は、前記防爆土堤に設置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、遮断装置、整流装置及び直流送電線は、避雷針によって落雷から保護されているため、遮断装置の下流側で落雷による過電流及び異常電圧が発生することは無い。また、遮断装置及び避雷針は防爆土堤に設置されているため、落雷による被害を防爆土堤にとどめることができ、該被害は爆薬庫又は火工品庫に及ばない。
【0016】
本発明に係る火薬庫警鳴システムは、前記爆薬庫警鳴装置又は火工品庫警鳴装置が発した警鳴を検出し、前記爆薬庫又は火工品庫の異常を示す情報を無線で送信する無線送信装置を前記爆薬庫(又は火工品庫)に備えることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、無線通信装置は、整流装置と共に爆薬庫又は火工品庫に設けられている。無線通信装置及び整流装置を爆薬庫側又は火工品庫側にまとめることによって、爆薬庫及び火工品庫夫々に分けて設ける場合に比べて、送電損失を効果的に抑えることが可能になる。
【0018】
本発明に係る火薬庫警鳴システムは、前記爆薬庫又は火工品庫の内部を囲繞した警戒線を含む閉回路と、該閉回路に第1所定電流が流れた場合、前記閉回路を遮断する過電流リレーと、前記閉回路に前記第1所定電流よりも大きい第2所定電流が流れた場合、前記閉回路を遮断するヒューズとを備え、前記爆薬庫警鳴装置又は火工品庫警鳴装置は、前記閉回路の断線又は短絡を検出することにより、異常を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、爆薬庫又は火工品庫の内部を囲繞した警戒線の断線又は短絡を検出することによって、異常を検知しているところ、第2所定電流が流れた場合に閉回路を遮断するヒューズを備えているため、閉回路を流れる電流を確実に第2所定電流未満に制限することが可能になる。第2所定電流未満に制限するのは、爆薬庫及び火工品庫の安全を確保するためである。
また、閉回路に第2所定電流よりも小さい第1所定電流が流れた場合、閉回路を遮断する過電流リレーを備えているため、ヒューズが溶断する前に閉回路を遮断することが可能になる。過電流リレーは、閉回路を再び閉じることによって、火薬庫警鳴システムを復旧させることが可能である。
【0020】
本発明に係る火薬庫警鳴システムは、前記爆薬庫及び/又は火工品庫を撮像する撮像装置を備え、該撮像装置は、前記整流装置で変換された直流にて動作するようにしてあることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、撮像装置は、整流装置で変換された直流によって動作し、爆薬庫及び火工品庫、又は爆薬庫若しくは火工品庫のいずれか一方を撮像する。電池式の電源を備えた従来の火薬庫警鳴システムでは、電池に蓄えられた電力に対して撮像装置の電力消費量が大きく、該撮像装置を動作させることが不可能であったが、本発明の構成では、送電された交流を直流に変換して撮像装置に給電する構成であるため、爆薬庫及び火工品庫の撮像が可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安全性を確保し、且つ交流電源の交流を直流に変換して爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置に供給して動作させることができる。
【0023】
本発明によれば、遮断装置及び避雷針を防爆土堤に設置することにより、安全性を向上させることができる。
【0024】
本発明によれば、非常用電源装置を備えることにより、停電が発生した場合であっても火薬庫の保安管理を行うことができる。
【0025】
本発明によれば、警鳴を検出し、爆薬庫又は火工品庫の異常を示す情報を無線で送信することができる。
【0026】
本発明によれば、火薬庫警鳴システムの安全性を確保し、且つ過電流リレーによる閉回路の断線を簡易に復旧させることができる。
【0027】
本発明によれば、爆薬庫又は火工品庫の異常を画像で確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る火薬庫警鳴システムの外観を模式的に示す平面図、図2は、図1のII-II線断面図、図3は、火薬庫警鳴システムの構成を模式的に示すブロック図である。図中1は、火薬庫が設置される略方形の敷地であり、敷地1の周囲は防爆土堤1a及び柵2で囲まれている。敷地1は、逆T字状の防爆土堤1bによって2分され、2分された敷地1の一方(図1中右側)には爆薬庫3が設けられ、敷地1の他方(図1中左側)には火工品庫4が設けられている。爆薬庫3及び火工品庫4は、夫々鉄筋コンクリート造、又はコンクリートブロック造の外壁と、鉄板を使用した防火扉と、不燃性材料からなる屋根とを有し、夫々爆薬及び火工品を貯蔵している。本発明の実施の形態に係る火薬庫警鳴システムは、爆薬庫3及び火工品庫4の異常を検知して警鳴を発するシステムであり、商用100Vの交流によって動作するように構成されている。以下では、まず火薬庫警鳴システムの給電に係る構成を説明し、次いで警鳴部分に関する構成を説明する。
【0029】
本実施の形態に係る火薬庫警鳴システムは、敷地1外の電柱5から敷地1内へ交流を送電するための交流送電線6aを備える。爆薬庫3及び火工品庫4間の防爆土堤1bには遮断装置7を支持した支持柱7aが立設されており、交流送電線6aは、電柱5と支持柱7aとの間に架空され、遮断装置7に接続されている。
【0030】
遮断装置7は、落雷等によって交流送電線6aに発生した過電流を遮断する漏電遮断器7bと、交流送電線6aに発生した異常電圧を遮断する避雷器7cとを備え、漏電遮断器7b及び避雷器7cは交流送電線6aに直列接続されている。
【0031】
また、本実施の形態に係る火薬庫警鳴システムは、爆薬庫3の外壁に設置されており、交流を直流に変換する整流装置8と、遮断装置7から整流装置8へ交流を送電する交流送電線6bと、爆薬庫3側の整流装置8で変換された直流を爆薬庫3から火工品庫4へ送電する直流送電線11と、爆薬庫3の外壁に設置された非常用電源装置8aとを備える。交流送電線6bの一端は、遮断装置7の下流側に接続されており、他端は整流装置8に接続されている。整流装置8は、交流送電線6bを通じて供給された100Vの交流を12Vの直流に変換し、変換した直流を爆薬庫3に設置された爆薬庫警鳴装置9に供給する。また、整流装置8は、変換された直流を、火工品庫4の外壁に設置された火工品庫警鳴装置12へ直流送電線11を通じて供給する。なお、直流送電線11の火工品庫4側の途中には避雷器13が介装されている。非常用電源装置8aは、整流装置8の出力側に接続されており、交流が供給されている場合、整流装置8で変換された直流によって充電される。停電によって、交流が供給されない状態になった場合、非常用電源装置8aは、整流装置8に代わって、直流を爆薬庫警鳴装置9及び火工品庫警鳴装置12へ供給する。
なお、図1及び図2に示す交流送電線6b及び直流送電線11の配線は、模式的に図示したものであり、実際の配線経路は適宜設計される。
【0032】
更に、火薬庫警鳴システムは、遮断装置7、整流装置8、爆薬庫警鳴装置9、火工品庫警鳴装置12、及び直流送電線11を落雷から保護すべく、爆薬庫3及び火工品庫4間の防爆土堤1bの適宜箇所に立設された避雷針14を備える。避雷針14によって保護される保護角は45°、即ち避雷針14の頂点から、避雷針14に対して45°の角度をなす円錐の範囲が保護範囲になるため、該保護範囲内に遮断装置7、整流装置8、爆薬庫警鳴装置9、火工品庫警鳴装置12、及び直流送電線11が収まるように各装置又は電線の配置、避雷針14の長さが設定されている。
【0033】
次いで、警鳴部分に関する構成を説明する。図3に示すように、爆薬庫警鳴装置9は、爆薬庫3の内部を囲繞した爆薬庫警戒線9cと、爆薬庫3の開扉によって開閉する爆薬庫扉スイッチ9aと、爆薬庫振動センサ9bとを含む閉回路を備え、該閉回路に10mA未満の微弱電流を流し、該閉回路の断線又は短絡を検出することによって、爆薬庫3の異常を検知するように構成されている。なお、爆薬が着火することを防止すべく、爆薬庫3内の閉回路に流れる電流は10mA未満に制限されている。また、閉回路の途中には、メータリレー9dと、ヒューズ9eとが直列的に介装されている。メータリレー9dは、可動コイル型であり、流れている電流を表示する電流表示部と、例えば9mA(第1所定電流)以上の電流が流れた場合、開状態になるリレーとを備える。また、メータリレー9dは、開状態になったリレーを再び閉状態にして復旧させるための復旧ボタンを備える。ヒューズ9eは、10mA(第2所定電流)で溶断し、閉回路を遮断する仕様である。
爆薬庫警鳴装置9は、警鳴を発するブザー9fを備えており、前記閉回路の断線又は短絡によって爆薬庫3の異常を検知した場合、ブザー9fを通電させて警鳴を発する。
【0034】
火工品庫4側の警鳴に係る構成も、爆薬庫3側と同様であり、火工品庫警鳴装置12は、火工品庫4の内部を囲繞した火工品庫警戒線12cと、火工品庫扉スイッチ12aと、火工品庫振動センサ12bと、メータリレー12dと、ヒューズ12eと、ブザー12fとを備え、直流送電線11を通じて整流装置8から供給された直流にて動作する。
【0035】
更に、爆薬庫警鳴装置9は、爆薬庫3の外壁に設置された無線送信装置10を備える。無線送信装置10は、爆薬庫警鳴装置9又は火工品庫警鳴装置12が発した警鳴を検出するマイク、該マイクが警鳴を検出した場合、爆薬庫3又は火工品庫4に異常がある旨を示す情報を無線で送信する送信部を備える。
【0036】
敷地1外に設置された火薬庫管理事務所には、無線送信装置10から送信された情報を受信する無線受信装置15と、無線受信装置15が爆薬庫3又は火工品庫4の異常を示す情報を受信した場合、その旨の情報を火薬庫管理者の携帯通信端末へ送信する通報装置16とが設置されている。なお、携帯通信端末は一例であり、少なくとも前記情報を受信できる火薬庫管理者の通信装置へ送信すれば良い。
【0037】
このように構成された火薬庫警鳴システムによれば、交流送電線6a,6bによって敷地1外から商用100Vの交流を爆薬庫3へ送電し、整流装置8で交流を直流に変換し、変換された直流によって爆薬庫警鳴装置9を動作させることができる。また、整流装置8で変換された直流を直流送電線11で火工品庫警鳴装置12へ供給し、火工品庫警鳴装置12を動作させることができる。更に、交流送電線6a,6bの途中には遮断装置7が介装され、遮断装置7、整流装置8、直流送電線11等は避雷針14によって落雷から保護されているため、落雷による過電流又は異常電圧が爆薬庫3及び火工品庫4側に印加される虞はない。
従って、安全性を確保し、且つ商用の交流で火薬庫警鳴システムを動作させることができる。
【0038】
また、遮断装置7及び避雷針14は防爆土堤1bに設置されているため、落雷によって遮断装置7及び避雷針14に生じた被害が爆薬庫3及び火工品庫4に及ぶことを効果的に防ぐことができ、安全性を向上させることができる。
【0039】
更に、非常用電源装置8aを備えているため、停電が発生した場合であっても、火薬庫警鳴システムを動作させることができる。
【0040】
更にまた、警鳴を検出し、敷地1外の火薬庫管理事務所へ送信する無線送信装置10を整流装置8及び非常用電源装置8aが設置された爆薬庫3に設置してあるため、送電による電力の損失を抑えることができる。特に、停電が発生した場合、非常用電源装置8aの電力損失を抑えることができるため、効果的である。
【0041】
更にまた、電柱5及び遮断装置7間の交流送電線6aは、防爆土堤1bの上方に架空されているため、落雷によって交流送電線6aに生じた被害を防爆土堤上にとどめることができ、火薬庫警鳴システムの安全性を向上させることができる。
なお、遮断装置7を敷地1外に設けることも考えられるが、遮断装置7を敷地1外に設けた場合、敷地1外の遮断装置7をも落雷から保護できる大型の避雷針14が必要になるという問題がある。避雷針14が大型化した場合、コスト高になり、しかも落雷を招きやすくなるため、安全性が低下する虞がある。
【0042】
更にまた、交流送電線6aは、爆薬庫3及び火工品庫4間の防爆土堤に沿って配線され、遮断装置7も爆薬庫3及び火工品庫4間に配置されている。従って、落雷から保護すべき範囲を狭くして避雷針14を小型化することができ、安全性を向上させることができる。
【0043】
(変形例1)
図4は、変形例1に係る火薬庫警鳴システムの外観を模式的に示す平面図である。変形例1に係る火薬庫警鳴システムは、爆薬庫3又は火工品庫4を選択的に撮像し、撮像して得た撮像信号を爆薬庫警鳴装置109へ出力する撮像装置17、及び法線方向の回動軸で撮像装置17を回動させる撮像装置駆動部17aを備える(図5参照)。直流送電線11は途中で分岐しており、分岐した直流送電線11によって撮像装置17及び撮像装置駆動部17aに直流が給電されている。
【0044】
図5は、変形例1に係る爆薬庫警鳴装置109及び火工品庫警鳴装置112の構成を模式的に示すブロック図である。爆薬庫警鳴装置109は、各構成部の動作を制御する制御部109g、例えばCPU(Central Processing Unit )を備えたコンピュータである。制御部109gには、コンピュータの動作に必要なコンピュータプログラムを記憶した記憶部109h、演算に伴って発生する情報を一時的に記憶するRAM109i、爆薬庫3に設けられた閉回路の断線又は短絡を検出するための信号が入力される第1断線・短絡信号入力部109j、ブザー9fを動作させるための警鳴信号を出力する第1警鳴信号出力部109k、撮像装置17に撮像指示を与え、撮像装置17から出力された撮像信号が入力される撮像信号入出力部109l、撮像信号に基づいて生成された画像データを無線送信装置10へ出力する画像データ出力部109m、撮像装置駆動部17aを駆動させるための駆動信号を出力する駆動信号出力部109n、火工品庫4の異常を通知するための信号が入力される第2断線・短絡信号入力部109oを備える。
【0045】
火工品庫警鳴装置112は、爆薬庫警鳴装置109と同様、制御部112g、記憶部112h、RAM112i、火工品庫4に設けられた閉回路の断線又は短絡を検出するための信号が入力される断線・短絡信号入力部112j、火工品庫4の異常を通知する信号が出力される断線・短絡信号出力部112k、及びブザー12fを動作させるための警鳴信号を出力する第2警鳴信号出力部112lを備える。制御部112gは、火工品庫4に設けられた閉回路の断線又は短絡を検出した場合、ブザー12fを動作させると共に、火工品庫4の異常を通知する信号を断線・短絡信号出力部112kから第2断線・短絡信号入力部109oへ出力させる。
【0046】
図6は、変形例1に係る制御部109gの処理手順を示すフローチャートである。制御部109gは、第1断線・短絡信号入力部109jに入力された信号に基づいて、爆薬庫3に異常があるか否か、つまり爆薬庫3側の閉回路が断線又は短絡したか否かを判定する(ステップS11)。爆薬庫3に異常があると判定した場合(ステップS11:YES)、制御部109gは、駆動信号を撮像装置駆動部17aに与え、爆薬庫3が撮像範囲に入るよう、爆薬庫3側(図4中右上方)に撮像装置17を回動させる(ステップS12)。爆薬庫3に異常が無いと判定した場合(ステップS11:NO)、制御部109gは、第2断線・短絡信号入力部109oに入力された信号に基づいて、火工品庫4に異常があるか否か、つまり火工品庫4側の閉回路が断線又は短絡しているか否かを判定する(ステップS13)。火工品庫4に異常がないと判定した場合(ステップS13:NO)、制御部109gは、処理を終える。火工品庫4に異常がある判定した場合(ステップS13:YES)、制御部109gは、駆動信号を撮像装置駆動部17aに与え、火工品庫4が撮像範囲に入るよう、火工品庫4側に(図4中左上方)に撮像装置17を回動させる(ステップS14)。
【0047】
ステップS12又はステップS14の処理を終えた場合、制御部109gは、警鳴信号をブザー9fに与え、警鳴を発する(ステップS15)。そして、制御部109gは、撮像装置17に撮像を開始させるべく、撮像装置17に撮像指示を与え(ステップS16)、撮像装置17から出力された撮像信号を取得する(ステップS17)。そして、制御部109gは、撮像信号に各種画像処理を施し、画像処理後の画像データを無線送信装置10にて送信する(ステップS18)。無線送信装置10によって無線で送信された画像データは、火薬庫管理事務所側の無線受信装置15にて受信され、通報装置16によって火薬庫管理者の携帯通信端末へ送信される。
【0048】
次いで、制御部109gは、警鳴停止の指示を受けたかを判定する(ステップS19)。例えば、爆薬庫警鳴装置109に設けられた図示しない警鳴停止ボタンが押圧された場合、警鳴停止の指示を受けたと判定する。警鳴停止の指示を受けていないと判定した場合(ステップS19:NO)、制御部109gは、処理をステップS15へ戻す。警鳴を停止すると判定した場合(ステップS19:YES)、制御部109gは処理を終える。
【0049】
変形例1に係る火薬庫警鳴システムによれば、異常が検知された爆薬庫3又は火工品庫4を撮像し、撮像して得た画像データを無線送信装置10にて火薬庫管理事務所及び火薬庫管理者の携帯通信端末へ送信することができる。
【0050】
なお、変形例1では、爆薬庫3又は火工品庫4のいずれか一方を撮像し、撮像して得た画像データを送信するように構成してあるが、爆薬庫3及び火工品庫4のいずれにも異常があると判定した場合、定期的に撮像装置17を回動させて爆薬庫3及び火工品庫4の双方を撮像し、撮像して得た画像データを送信するように構成しても良い。
また、爆薬庫3又は火工品庫4を選択的に撮像するように構成してあるが、広角レンズ等を用いて、爆薬庫3又は火工品庫4を同時に撮像するように構成しても良い。
【0051】
(変形例2)
変形例2に係る火薬庫警鳴システムは、爆薬庫3及び火工品庫4の異常箇所を検知するように構成されている。
【0052】
図7は、変形例2に係る爆薬庫警鳴装置209及び火工品庫警鳴装置212の構成を模式的に示すブロック図である。爆薬庫警鳴装置209は、変形例1と同様、制御部209g、記憶部209h、RAM209i、第1断線・短絡信号入力部209j、第1警鳴信号出力部209k、爆薬庫3又は火工品庫4の異常箇所を示す情報を無線送信装置へ出力する異常箇所情報出力部209m及び第2断線・短絡信号入力部209oを備える。また、変形例2に係る爆薬庫警鳴装置209は、爆薬庫3に設けられた爆薬庫扉スイッチ9a、爆薬庫振動センサ9b、爆薬庫3の異なる箇所に配線された複数の爆薬庫警戒線9c,9c・・・によって夫々独立して構成された複数の閉回路を備え、各閉回路の断線又は短絡を検出するための信号が第1断線・短絡信号入力部209jに夫々入力されるように構成されている。
【0053】
火工品庫警鳴装置212は、変形例1と同様、制御部212g、記憶部212h、RAM212i、断線・短絡信号入力部212j、断線・短絡信号出力部212o及び第2警鳴信号出力部212kを備える。また、変形例2に係る火工品庫警鳴装置212は、爆薬庫3と同様、火工品庫4に設けられた火工品庫扉スイッチ12a、火工品庫振動センサ12b、火工品庫4の異なる箇所に配線された複数の火工品庫警戒線12c,12c・・・によって夫々独立して構成された複数の閉回路を備え、各閉回路の断線又は短絡を検出するための信号が断線・短絡信号入力部212jに夫々入力されるように構成されている。制御部212gは、火工品庫4に設けられた火工品庫扉スイッチ12a、火工品庫振動センサ12b、複数の火工品庫警戒線12c,12c・・・のいずれかが断線又は短絡した場合、ブザー12fを動作させると共に、断線又は短絡箇所に示す信号を断線・短絡信号出力部212oから第2断線・短絡信号入力部209oへ出力する。
【0054】
図8は、変形例2に係る制御部209gの処理手順を示すフローチャートである。制御部209gは、第1断線・短絡信号入力部209jに入力された信号に基づいて、爆薬庫3に異常があるか否かを判定する(ステップS31)。爆薬庫3に異常があると判定した場合(ステップS31:YES)、制御部209gは、第1断線・短絡信号入力部209jに入力された信号に基づいて、爆薬庫3の異常箇所を特定する(ステップS32)。爆薬庫3に異常が無いと判定した場合(ステップS31:NO)、制御部209gは、第2断線・短絡信号入力部209oに入力された信号に基づいて、火工品庫4に異常があるか否かを判定する(ステップS33)。火工品庫4に異常が無いと判定した場合(ステップS33:NO)、制御部209gは処理を終える。火工品庫4に異常があると判定した場合(ステップS33:YES)、制御部209gは、第2断線・短絡信号入力部209oに入力された信号に基づいて、火工品庫4の異常箇所を特定する(ステップS34)。
【0055】
ステップS32又はステップS34の処理を終えた場合、制御部209gは、警鳴信号をブザーに与え、警鳴を発する(ステップS35)。そして、制御部209gは、異常箇所を示した異常箇所情報を異常箇所情報出力部209mを通じて無線送信装置10に送信させる(ステップS36)。次いで、制御部209gは、警鳴停止の指示を受けたかを判定する(ステップS37)。警鳴停止の指示を受けていないと判定した場合(ステップS37:NO)、制御部209gは、処理をステップS35へ戻す。警鳴を停止すると判断した場合(ステップS37:YES)、制御部209gは処理を終える。
【0056】
変形例2に係る爆薬庫警鳴装置209にあっては、異常箇所を無線で通知することができる。
【0057】
なお、実施の形態にあっては、整流装置及び非常用電源装置を爆薬庫側に備え、直流を爆薬庫側から火工品庫側へ送電するように構成されているが、整流装置及び非常用電源装置を火工品庫側に備え、直流を火工品庫側から爆薬庫側へ送電するように構成しても良い。
【0058】
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係る火薬庫警鳴システムの外観を模式的に示す平面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】火薬庫警鳴システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】変形例1に係る火薬庫警鳴システムの外観を模式的に示す平面図である。
【図5】変形例1に係る爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図6】変形例1に係る制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】変形例2に係る爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図8】変形例2に係る制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 敷地
3 爆薬庫
4 火工品庫
7 遮断装置
7b 漏電遮断器
7c 避雷器
8 整流装置
8a 非常用電源装置
9 爆薬庫警鳴装置
9a 爆薬庫扉スイッチ
9b 爆薬庫振動センサ
9c 爆薬庫警戒線
9d メータリレー
9e ヒューズ
10 無線送信装置
11 直流送電線
12 火工品庫警鳴装置
12a 火工品庫扉スイッチ
12b 火工品庫振動センサ
12c 火工品庫警戒線
12d メータリレー
12e ヒューズ
14 避雷針
17 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爆薬庫の異常を検知し、警鳴を発する爆薬庫警鳴装置と、該爆薬庫から防爆土堤を隔てて設けられた火工品庫の異常を検知し、警鳴を発する火工品庫警鳴装置とを備える火薬庫警鳴システムにおいて、
前記爆薬庫及び火工品庫が設けられた敷地内に交流を送電する交流送電線と、
該交流送電線に発生した過電流及び異常電圧を遮断する遮断装置と、
前記爆薬庫(又は火工品庫)に設けられており、送電された交流を直流に変換する整流装置と、
該整流装置で変換された直流を前記火工品庫(又は爆薬庫)へ送電する直流送電線と
を備え、
前記爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置は、
前記整流装置で変換された直流にて動作するようにしてある
ことを特徴とする火薬庫警鳴システム。
【請求項2】
直流を前記爆薬庫警鳴装置及び火工品庫警鳴装置へ出力する非常用電源装置を前記爆薬庫(又は火工品庫)に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の火薬庫警鳴システム。
【請求項3】
前記遮断装置、整流装置及び直流送電線を落雷から保護する避雷針を備え、
前記遮断装置及び避雷針は、
前記防爆土堤に設置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の火薬庫警鳴システム。
【請求項4】
前記爆薬庫警鳴装置又は火工品庫警鳴装置が発した警鳴を検出し、前記爆薬庫又は火工品庫の異常を示す情報を無線で送信する無線送信装置を前記爆薬庫(又は火工品庫)に備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の火薬庫警鳴システム。
【請求項5】
前記爆薬庫又は火工品庫の内部を囲繞した警戒線を含む閉回路と、
該閉回路に第1所定電流が流れた場合、前記閉回路を遮断する過電流リレーと、
前記閉回路に前記第1所定電流よりも大きい第2所定電流が流れた場合、前記閉回路を遮断するヒューズと
を備え、
前記爆薬庫警鳴装置又は火工品庫警鳴装置は、
前記閉回路の断線又は短絡を検出することにより、異常を検知するようにしてある
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の火薬庫警鳴システム。
【請求項6】
前記爆薬庫及び/又は火工品庫を撮像する撮像装置を備え、該撮像装置は、前記整流装置で変換された直流にて動作するようにしてある
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の火薬庫警鳴システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−72946(P2010−72946A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239730(P2008−239730)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(500499081)東京石灰工業株式会社 (1)
【出願人】(508282269)株式会社テクニカルサービス (1)
【Fターム(参考)】