説明

灯器、交通信号灯器及びアンテナ内蔵型の灯器の製造方法

【課題】光学ユニット内にアンテナを格納するために好ましい構造となる灯器を提供する。
【解決手段】光学ユニット2は、複数のLED7、LED7の後方に設けられたLED基板8、及び、LED7を前方で覆うカバー部材9を有している。LED基板8の前方にパッチアンテナ4が配置されている。LED基板8とLED7との間に設けられLED7の前端39をパッチアンテナ4よりも前方に配置させる接続体19を備えている。接続体19は、LED基板8から前方に延びているコネクタ20と、コネクタ20の前部と接続され複数のLED7が前面21aに表面実装された取り付け板21とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯器、道路等に設置される交通信号灯器及びアンテナ内蔵型の灯器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に路側通信装置(インフラ装置)が設置されていて、この路側通信装置から発せられた無線情報を、道路を走行する車両に搭載した車載通信装置が受信し、車載通信装置が無線情報に含まれている各種情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
このような路側通信装置と車載通信装置との間の通信(路車間通信)を無線によって行なう場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に路側通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱に路側通信装置のアンテナを取り付けることができる。
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路側通信装置のアンテナを道路に設置するために、アンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくない。
そこで、道路には車両感知器や光ビーコンのヘッド等が設置されているため、これらを取り付けている支柱やアームにアンテナを併設することが考えられる。しかし、この場合においても、煩雑となり、美観の点で好ましくない。
【0005】
このような問題点を解決するために、本願出願人は、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、道路の美観を損なうことがないように、道路に設置される灯器(交通信号灯器)の光学ユニット内にアンテナを格納した発明を提案している(例えば、特願2007−186082)。このように、発光体(発光ダイオード)を有している光学ユニット内に、アンテナを格納するためには、格納したアンテナが発光体による前方への発光の妨げになることを防止する必要があり、また、格納したアンテナに所望の性能を発揮させることのできる構成が好ましい。
【0006】
そこで、光学ユニット内にアンテナを格納するために好ましい構造となる灯器、交通信号灯器、及び、光学ユニット内にアンテナを格納するために好ましいアンテナ内蔵型の灯器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の灯器は、複数の発光ダイオード、前記発光ダイオードの後方に設けられ当該発光ダイオードに給電するための配線パターンが形成されている基板、及び、可視光透過性を有し前記発光ダイオードを前方で覆うカバー部材を有する光学ユニットと、前記基板の前方に配置された状態で前記光学ユニットに格納されているアンテナと、前記基板と前記発光ダイオードのリード線との間に設けられ前記発光ダイオードの前端を前記アンテナよりも前方に配置させる接続体とを備え、前記接続体は、前記基板から前方に延びるようにして実装されているコネクタと、前記コネクタの前部と接続されていると共に複数の前記発光ダイオードが前面に表面実装され当該コネクタと当該発光ダイオードとを電気的に接続している取り付け板とを有していることを特徴とする。
【0008】
配線パターンが形成されている基板がアンテナによる電波の送受信の妨げになるのを防止するためには、アンテナを基板よりも前方に設ける必要があるが、このアンテナが発光ダイオードによる前方への発光の妨げとならないためには、発光ダイオードの前端よりも後方にアンテナを配置させる必要がある。しかし、発光ダイオードの長さが短い場合、当該発光ダイオードを基板に接続すると、基板から発光ダイオードの前端までの前後方向寸法が小さくなるので、アンテナによっては、発光ダイオードの前端よりも後方に当該アンテナを配置させるのが困難になる場合がある。
そこで、本発明によれば、発光ダイオードの前後方向の長さが短くても、接続体が、基板と発光ダイオードのリード線との間に設けられていることにより、発光ダイオードの前端をアンテナよりも前方に配置させている。これにより、アンテナが発光ダイオードによる前方への発光の妨げになることを防止することができ、かつ、アンテナを基板よりも前方とすることで、当該アンテナの通信性能が基板によって阻害されるのを防ぐことができる。
さらに、本発明によれば、取り付け板とコネクタの前部とが接続されていることから、当該取り付け板の後面側にコネクタが接続された構成となる。そこで、後面側にコネクタが接続されている取り付け板に対して、その前面で複数の発光ダイオードをまとめて、例えばリフロー方式により表面実装することができ、製造が容易となる。
【0009】
(2)また、前記灯器において、前記コネクタは、当該コネクタの前部に有している導線が前記取り付け板に設けられている貫通孔に挿通している状態で、当該取り付け板の前面側から半田付けされているのが好ましい。
この場合、前記複数の発光ダイオードを取り付け板にまとめて表面実装する前に、コネクタをまとめて、例えばフロー方式により取り付け板の表面側から半田付けすることにより、この構成が得られる。そして、前記のとおり、後面側にコネクタが接続されている取り付け板に対して、その前面で複数の発光ダイオードをまとめて、例えばリフロー方式により表面実装することができ、製造が容易となる。
【0010】
(3)また、前記取り付け板は、前記発光ダイオードの実装部と前記コネクタの接続部とを電気的に接続している導線部を有し、前記導線部は、前記発光ダイオードの横断面最大長さの半分と、前記コネクタの横断面最大長さの半分との和とほぼ同じ乃至当該和よりも短い長さを有している直線の導体からなるのが好ましい。
この場合、導線部を短くすることが可能となるので、導線部がアンテナ性能に与える影響を小さくすることができる。なお、前記横断面は、前後方向から見た場合の断面となる。
【0011】
(4)また、前記アンテナは、不導体からなる前記取り付け板の一面に形成された導体層からなるアンテナ素子を有しているのが好ましい。
この場合、前記取り付け板が、アンテナ素子を形成するための部材を兼ねることができ、構成の簡素化が可能となる。
【0012】
(5)また、前記アンテナは、前記基板よりも前方に設けられたグランド素子、及び、このグランド素子よりも前方に設けられたパッチ素子を有しているパッチアンテナであり、前記グランド素子は、不導体からなる前記基板の前面に形成された導体層からなり、前記基板の後面に前記配線パターンが形成されているのが好ましい。
この場合、前記基板が、グランド素子を形成するための部材を兼ねることができ、構成の簡素化が可能となる。
【0013】
また、前記のとおり、基板がパッチアンテナによる電波の送受信の妨げになるのを防止するためには、パッチアンテナを基板よりも前方に設ける必要があり、また、このパッチアンテナに所望の性能を発揮させるためには、パッチ素子とグランド素子との間に前後方向の所定の間隔を設ける必要がある。
しかし、発光ダイオードの前後方向の長さが前記間隔よりも短いと、基板の前面側に実装した当該発光ダイオードの前端よりもパッチ素子が前方に位置してしまう。この場合、パッチ素子が発光ダイオードによる前方の発光の妨げになることがある。
一方、パッチ素子が発光ダイオードによる前方の発光の妨げとならないために、パッチ素子を発光ダイオードの前端よりも後方に配置しようとすると、基板の前面側に実装した当該発光ダイオードは前後方向の長さが短いことから、グランド素子とパッチ素子との前後方向の間隔を小さい値でしか設定できず、所望のアンテナ性能を発揮させることができなくなるおそれがある。
そこで、本発明によれば、基板よりも前方にグランド素子とパッチ素子とを配置し、これらグランド素子とパッチ素子とを所望の間隔としても、前記接続体によって、発光ダイオードの前端をパッチ素子よりも前方に配置させている。したがって、パッチ素子が発光ダイオードによる前方への発光の妨げになることを防止することができると共に、パッチアンテナに所望の性能を発揮させることができる。
【0014】
(6)また、本発明の灯器は、複数の発光ダイオード、及び、可視光透過性を有し前記発光ダイオードを前方で覆うカバー部材を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに格納されているアンテナと、前記発光ダイオードに給電するために前記光学ユニットの後部側から当該発光ダイオード側へと向かう前方に延びるようにして設けられている複数のコネクタと、前記コネクタが前部に有している導線を挿通させる貫通孔が形成され、当該導線が当該貫通孔に挿通している状態で、当該コネクタが前面側から半田付けされている取り付け板とを備え、前記発光ダイオードは、前記取り付け板の前面に表面実装されて、前記コネクタと前記取り付け板上で電気的に接続されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、コネクタが前部に有している導線を、取り付け板の貫通孔に挿通した状態で、コネクタが取り付け板にその前面側から半田付けされている構成であり、この構成を得るために、複数のコネクタをまとめて、例えばフロー方式により取り付け板の前面側から、半田付けすることができる。
これにより、取り付け板に複数のコネクタが接続された構成となり、このような取り付け板に対して、その前面で複数の発光ダイオードをまとめて、例えばリフロー方式により表面実装することができ、製造が容易となる。このように、光学ユニット内にアンテナを格納するために、製造上、好ましい構造となる。
【0016】
(7)また、本発明の交通信号灯器は、複数の発光ダイオード、前記発光ダイオードの後方に設けられ当該発光ダイオードに給電するための配線パターンが形成されている基板、及び、可視光透過性を有し前記発光ダイオードを前方で覆うカバー部材を有する光学ユニットと、前記基板の前方に配置された状態で前記光学ユニットに格納されているアンテナと、前記基板と前記発光ダイオードのリード線との間に設けられ前記発光ダイオードの前端を前記アンテナよりも前方に配置させる接続体とを備え、前記接続体は、前記基板から前方に延びるようにして実装されているコネクタと、前記コネクタの前部と接続されていると共に複数の前記発光ダイオードが前面に表面実装され当該コネクタと当該発光ダイオードとを電気的に接続している取り付け板とを有していることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、発光ダイオードの前後方向の長さが短くても、接続体が、基板と発光ダイオードのリード線との間に設けられていることにより、発光ダイオードの前端をアンテナよりも前方に配置させている。これにより、アンテナが発光ダイオードによる前方への発光の妨げになることを防止することができ、かつ、アンテナを基板よりも前方とすることで、当該アンテナの通信性能が基板によって阻害されるのを防ぐことができる。
さらに、本発明によれば、取り付け板とコネクタの前部とが接続されていることから、当該取り付け板の後面側にコネクタが接続された構成となる。そこで、後面側にコネクタが接続されている取り付け板に対して、その前面で複数の発光ダイオードをまとめて、例えばリフロー方式により表面実装することができ、製造が容易となる。
【0018】
(8)そして、このアンテナ内蔵型の灯器の製造方法は、複数の発光ダイオード、及び、可視光透過性を有し前記発光ダイオードを前方で覆うカバー部材を有する光学ユニットに、アンテナを格納して組み立てる製造方法であって、前記複数の発光ダイオードに給電するための複数のコネクタそれぞれが前部に有している導線を、複数の貫通孔が形成された取り付け板の当該貫通孔それぞれに後面側から前面側へと挿通させた状態で、前記導線を前記取り付け板の前面側からフロー方式により半田付けして、前記複数のコネクタをまとめて前記取り付け板に実装し、前記複数の発光ダイオードを、前記取り付け板の前面に、リフロー方式によりまとめて表面実装することを特徴とする。
この製造方法によれば、複数のコネクタをまとめて取り付け板に実装することができ、また、複数の発光ダイオードをまとめて取り付け板に実装することができるので、発光ダイオード及びコネクタを例えば手作業で一つ一つ取り付け板に接続する必要がなくなる。これにより、アンテナを光学ユニットに格納して灯器を製造する際に、その製造効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の灯器によれば、発光ダイオードの前端をアンテナよりも前方に配置させることができ、アンテナが発光ダイオードによる前方への発光の妨げになることを防止することができ、光学ユニット内にアンテナを格納するために好ましい構造となる。
また、本発明のアンテナ内蔵型の灯器の製造方法によれば、複数のコネクタ及び複数の発光ダイオードをまとめて取り付け板に接続することができるので、アンテナ内蔵型の灯器を低コストで製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の灯器の実施の一形態を示す正面図である。図1の灯器は交通信号用であり、この交通信号灯器1(以下、単に信号灯器1ともいう)は、道路に設置された車両用である。
信号灯器1の設置構造について説明すると、歩道等の路側に支柱40が設置され、この支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。
なお、信号灯器1の設置構造は図示したもの以外であってもよい。例えば、図示しないが、前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1を歩道橋に架設してもよい。また、本発明の信号灯器1は図示しないが、歩行者用であってもよい。
【0021】
信号灯器1は、複数(図例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2を組み込んでいる筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、赤、黄、青の灯光色を有している。各光学ユニット2の上側には庇30が取り付けられている。
前記支柱40には、制御装置5aが取り付けられていて、この制御装置5aは、信号灯器1の点灯を制御する。なお、制御装置5aは、信号灯器1の筐体3内に設けられていてもよい。
【0022】
この制御装置5aの他に、後述するアンテナ4を用いた無線通信の制御を行なう制御装置5bも設けられている。両制御装置5a,5bは別のものであってもよいが、一方の制御装置が他方の制御装置を兼ねていてもよい。また、両制御装置5a,5bが別々である場合であっても、両制御装置を同一の筐体に内蔵させることができる。又は、筐体をそれぞれ別々とし、無線通信用の制御装置5bを点灯用の制御装置5aの近傍(同一の支柱40)に設置してもよい。
【0023】
図2、図3及び図4は、一つの光学ユニット2の斜視図、正面図及び断面図である。光学ユニット2は、複数の発光ダイオード7(以下、LED7という)と、これらLED7の灯光方向と反対の後方に設けられているLED基板8と、収容部材6と、カバー部材9とを有している。
LED7はレンズ部(モールド部)7eを有し(図6参照)、このレンズ部7e内にLED素子7bが設けられている。
【0024】
図4において、LED基板8は、複数のLED7に給電するための配線パターン8cが後面8bに形成されているプリント基板からなる。図1の制御装置5aから延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED基板8の配線パターン8cと接続され、当該電源ケーブルからLED7に灯光用の電力の供給がされる。
なお、LED基板8と、複数のLED7とは、後述する接続体19を介して接続されている。
【0025】
収容部材6は、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有している皿形状であり、前方に開口している。その開口側である前部に、カバー部材9が取り付けられている。収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されていて、この収容空間部SにLED7及びLED基板8が収容されている。収容部材6は、鋼板、アルミ又は樹脂製である。
図4の光学ユニット2は、後に説明する反射防止部材10を更に備えている。反射防止部材10は収容部材6に取り付けられていて、この反射防止部材10に前記LED基板8や後述するアンテナ4等を取り付けることができる。又は、反射防止部材10を省略してもよく、この場合、LED基板8は収容部材6に直接取り付けられ、後述のアンテナ4は、スペーサ等を介してLED基板8に取り付けられる。
【0026】
カバー部材9は可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)複数のLED7を前方で覆っている。この光学ユニット2(信号灯器1)において、前方とはLED7の光の投光側であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。カバー部材9の後面(背面)9aは凹曲面であり、前面9bが凸曲面である。カバー部材9を凹凸の曲面としたが、信号灯器1がLED灯器であれば、平面とすることもできる。カバー部材9は、ガラス又は樹脂製である。
【0027】
そして、この光学ユニット2にアンテナ4が格納されている。図4に示しているアンテナ4は、パッチアンテナであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、パッチ素子11とグランド素子12とが、光学ユニット2内に格納されている。このパッチアンテナ4は、LED基板8の前方に、LED基板8と対向して配置されていている。LED基板8の前方にグランド素子12が設けられ、このグランド素子12よりも前方にパッチ素子11が設けられていて、このパッチアンテナ4は、前方へ向かう指向性を有している。後にも説明するが、このパッチアンテナ4が所望の性能を有するために、パッチ素子11とグランド素子12とは、前後方向に所定の間隔E(図5参照)を有して配置されている。このため、パッチ素子11は、LED基板8から前方に離れた位置に存在することとなる。
【0028】
図5は光学ユニット2の内部の拡大断面図であり、図4の矢印V方向からLED7及び後述する接続体19等を見た断面図である。なお、図5では、反射防止部材10を省略している。図6は、LED7の取り付け部を説明する斜視図である。
接続体19は、LED基板8と複数のLED7それぞれの対のリード線7cとの間に設けられていて、前記のとおり、LED基板8と前記リード線7cとを電気的に接続するためのものである。接続体19は、前後方向に長い複数本のコネクタ20と、この複数のコネクタ20を後面側に実装している取り付け板21とを有している。
各コネクタ20は、図6に示しているように、LED7の一対の前記リード線7cそれぞれに接続可能となる一対の延長リード線20eが絶縁体(樹脂部材)20fによって内包された構成である。この延長リード線20eの後端部20a及び前端部20bが絶縁体20fから露出している。
【0029】
図5において、コネクタ20は、LED基板8から前方に延びるようにして当該LED基板8の前面8a側に実装されている。つまり、コネクタ20は、光学ユニット2の後部側からLED7側へと向かう前方に延びるようにして設けられていて、コネクタ20の長手方向が前後方向となる。そして、このコネクタ20の前部は、取り付け板21と接続されている。この取り付け板21の前面21a側に、複数のLED7が実装されている。
このようなコネクタ20及び取り付け板21を有する接続体19により、LED7をLED基板8から前方へ離れた配置とすることができ、LED7が前後方向に短くても、LED基板8から前方に離れた位置に存在している前記パッチ素子11よりも前方に、当該LED7の前端39を配置させることができる。
【0030】
図5により、LED基板8の前面8aにおけるコネクタ20の実装部について説明する。LED基板8には一対で一組の貫通孔8dが複数組形成されていて、各組の貫通孔8dに、コネクタ20の前記一対の延長リード線20eの後端部20aを挿通させ、半田付け等によって、コネクタ20はLED基板8に接続されている。なお、図5では、一対の貫通孔8dは紙面方向に存在している。貫通孔8dは、LED基板8の前記配線パターン8cが設けられている位置に対応して形成されている。
【0031】
一方、取り付け板21側を説明すると、取り付け板21には、複数のLED7が前面21a側に実装されていると共に、LED基板8に実装した前記コネクタ20が後面21b側に実装されている。そして、この取り付け板21上において、後述する導線部23cによってコネクタ20とLED7とが電気的に接続されている。
図6によりさらに説明すると、取り付け板21の前面21aには、一対で一組のパッド部23aが形成されていて、このパッド部23aにLED7のリード線7cが半田付けによって表面実装される。これにより、取り付け板21の前面21a側には複数のLED7が面状に広がって配設された構成となる。
【0032】
また、取り付け板21には、コネクタ20接続用として一対で一組の貫通孔21dが形成されている。この貫通孔21dに、コネクタ20の前記一対の延長リード線(導線)20eの前端部20bを挿通させた状態で、当該取り付け板21の前面21a側から半田付けすることによって、コネクタ20は取り付け板21に接続される。なお、コネクタ20の取り付け板21への接続を容易とするために、延長リード線20eの前端部20bを、図示しないが、貫通孔21dに係合する屈曲形状としてもよい。そして、この挿通部分を半田付けすることによって、コネクタ20と取り付け板21とが強固に接続された状態が得られる。
【0033】
そして、コネクタ20の一対の延長リード線20eの前端部20bのそれぞれが、LED7の一対のリード線7cのそれぞれと接続されるように、取り付け板21の前面21aには、LED7の実装部B1とコネクタ20の実装部B2とを電気的に接続している一対の導線部23cが形成されている。つまり、取り付け板21上には、LED7接続用である一対のパッド部23aのそれぞれと、コネクタ20接続用である一対のランド部23bのそれぞれとを結ぶように、一対の導線部23cが設けられている。これらパッド部23a、ランド部23b及び導線部23cは、取り付け板21の前面21aに、プリント導体として形成されている。また、取り付け板21の裏面に、第二のランド部23dも形成されている。
なお、この実施形態では、一つのLED7に対して一つの独立したコネクタ20が設けられているが、一つのコネクタ20の絶縁体20fが他のコネクタ20の絶縁体20fと一体となって、複数のコネクタ20が束となっていてもよい。
【0034】
また、LED7用のパッド部23aと、コネクタ20用のランド部23bとは接近して設けられていて、前記導線部23cは短くなるように設定されている。これは、図5に示しているように、パッチ素子11の前方に取り付け板21が設けられているが、当該取り付け板21に形成されている導線部23cを短くすることにより、導線部23cがパッチアンテナ4のアンテナ性能に与える影響を小さくしている。
図6及び図12において、導線部23cの長さLと形状の具体例を説明する。導線部23cは、LED7の円柱形状であるレンズ部7eの直径d(横断面最大長さ)の半分(d/2)と一本のコネクタ20の横断面最大長さwの半分(w/2)との和(d/2+w/2)と、ほぼ同じ長さLを有していて、直線の導体からなるように形成されている。これにより、LED7のリード線7cと、コネクタ20の絶縁体20fとが干渉することはなく、かつ、導線部23cの長さを短くすることができる。また、LED7のリード線7cとコネクタ20の絶縁体20fとが干渉しなければ、導線部23cの長さLを、前記和(d/2+w/2)よりも短く設定してもよい(図12参照)。
【0035】
以上の構成により、図5において、LED基板8と取り付け板21との間には、コネクタ21の長さと同等の前後方向長さFを有する空間が形成される。そして、この空間に、グランド素子12及びパッチ素子11が前後の間隔Eを有して配置されている。したがって、空間の前記長さFはパッチ素子4の前記間隔Eよりも大きく、また、この実施形態のコネクタ21は、当該間隔Eの値よりも大きな前後方向長さを有するものである。なお、パッチ素子4の前記間隔Eは、後に具体例を説明するが、パッチアンテナ4が所望の性能を有するために設定される必要な寸法である。
【0036】
そして、この実施形態によれば、グランド素子12とパッチ素子11とを所望の間隔Eに設定しても、また、LED7の前後方向の長さは前記間隔Eよりも短くても、LED基板8よりも前方に、所定の前記間隔Eを有した状態としてグランド素子12とパッチ素子11とを配置することができ、かつ、コネクタ20及び取り付け板21によって、LED7の前端39をパッチ素子11よりも前方に配置させることができる。
【0037】
具体例を説明すると、一般的なLED7の全長は、30mm未満であるのに対し、グランド素子12とパッチ素子11との間に必要な前記間隔Eは(700MHz帯の場合)、30mm程度となる。この場合であっても、コネクタ20及び取り付け板21によって前記実施形態のように構成することで、全長が長いLEDを特別に製造し直す必要がなく一般的なLEDを採用することができ、また、確実に、LED7の前端39をパッチ素子11よりも前方に配置させることができる。
したがって、パッチ素子11がLED7による前方への発光の妨げになることを防止することができると共に、パッチアンテナ4に所望の性能を発揮させることができる。
【0038】
このようなパッチアンテナ4を光学ユニット2に格納して組み立てるアンテナ内蔵型の信号灯器1の製造方法を説明する。
図6において、取り付け板21の前面21aに、パッド部23a、ランド部23b及び導線部23cからなる導体部23を、各LED7に対応させて形成する。つまり、一対のパッド部23a、一対のランド部23b及び一対の導線部23cを一組の導体部23として、複数のLED7の数と同数の組の導体部23を、取り付け板21にプリント導体として形成する。ランド部23bには貫通孔21dが形成されていて、この貫通孔21bが開口している取り付け板21の裏面に、第二のランド部23dが形成されている。第一のランド部23bと第二のランド部23dとは同じ形状である。なお、導体部23以外の部分はレジスト部とされている。
【0039】
また、この実施形態のコネクタ20は、図5において、前後方向(長手方向)に分割された第一の部分(ピン側部)20cと、第二の部分(ソケット側部)20dとを有していて、両者は、相互を嵌め合わせて結合することのできる構成となっている。
【0040】
そして、図7に示しているように、取り付け板21の前面21aとなる側を下として、コネクタ20の第一の部分20cが有している前記一対の延長リード線(導線)20eの前端部20bを、取り付け板21に形成した貫通孔21dに、後面21b側から前面21a側へと挿通させた状態とする。なお、複数あるコネクタ20の第一の部分20cについて、この挿通状態とする。
そして、取り付け板21の前面21aを下にした状態で、かつ、前記挿通状態で、延長リード線20eの前端部20bを、取り付け板21に、その前面21a側からフロー方式により半田付けして、前記複数あるコネクタ20の第一の部分20cをまとめて、取り付け板21に実装する。
【0041】
つまり、コネクタ20の第一の部分20cが挿通状態にある取り付け板21の前面21a側を、半田漕に浸け、フロー半田付けを行なう。
なお、このフロー半田付けの際、溶融している半田は、貫通孔21内の前記前端部20bを伝って取り付け板21の前面21a側から後面21b側へと上昇し、図8に示しているように、両面21a,21bで半田が固まる。なお、図8は図7とは反対に、取り付け板21の前面21aを上にした状態を示している。
【0042】
そして、図8において、取り付け板21の前面21aを上面として、当該前面21a上のパッド部23aにクリーム半田が載せられ、後面21b側に複数のコネクタ20の第一部分20cが実装されている取り付け板21の前面21aに、複数のLED7を、リフロー方式により、まとめて表面実装する。
つまり、取り付け板21の平面状のパッド部23aにLED7のリード線7cをまとめて突き合わせた状態とし、これを図外のリフロー炉で、パッド部23a上のクリーム半田を溶かし、リフロー半田付けを行なう。
これにより、コネクタ20の第一の部分20cとLED7とは、取り付け板21の導線部23cを介して電気的に接続された状態となる。
【0043】
一方、LED基板8側においては、図9に示しているように、コネクタ20の第一の部分20cに対応させて、LED基板8の前面8a側に、コネクタ20の第二の部分20dを実装する。このために、LED基板8に形成された貫通孔8dに、第二の部分20dにおける一対の延長リード線20eの後端部20aを挿通させ、LED基板8の後面8ba側から半田付けすることにより、コネクタ20の第二の部分20dとLED基板8の配線パターン8cとが接続された状態となる。
【0044】
そして、コネクタ20の第一の部分20cと第二の部分20dとを接続することにより、LED基板8とLED7とは、コネクタ20及び取り付け板21の導線部23cを介して電気的に接続された状態となる。
なお、この接続作業において、図9の二点鎖線で示しているように、パッチ素子11及びグランド素子12に形成された後述する孔34a,14aを、コネクタ20の第一の部分20c(又は第二の部分20d)に挿通させた状態とし、コネクタ20の第一の部分20cと第二の部分20dとを接続する。
【0045】
以上より、図5の実施形態の信号灯器が組み立てられる。
本発明の製造方法によれば、コネクタ20の第一の部分20cをまとめて、フロー方式により取り付け板21の前面21a側から半田付けすることができ、また、後面21b側にコネクタ20の第一の部分20cが存在している状態の取り付け板21に対して、その前面21aで複数のLED7をまとめて、リフロー方式により表面実装することができる。このようにフロー半田及びリフロー半田を採用していることで、コネクタ20の第一の部分20c及びLED7を、例えば手作業で一つ一つ取り付け板21に接続する必要がなくなり、取り付け板21の両面について、コネクタ20の第一の部分20c及びLED7の実装を自動により行うことができるので、製造時間の短縮が図れ、製造コストの低減が可能となる。
【0046】
また、図6において、取り付け板21の前面21aに複数のLED7が表面実装され、後面21bにコネクタ20が実装されるが、LED7及びコネクタ20が実装される向きについて、複数種類が存在している。LED7(コネクタ20)が実装される向きとは、各LED7の一対のリード線7c(各コネクタ20の延長リード線20e)が並んでいる方向であり、図6の左側のLED7(コネクタ20)は、矢印M方向に一対のリード線7c(延長リード線20e)が並ぶよう実装されるが、他の(右側の)LED7(コネクタ20)は、矢印Mとは異なる方向である矢印N方向に一対のリード線7c(延長リード線20e)が並ぶよう実装される。このように、一つの取り付け板21において、一組のリード線7c(延長リード線20e)が並ぶ方向を様々としてLED7(コネクタ20)を実装させることで、仮に複数のLED7(コネクタ20)に対して外力が作用しても、表面実装されているLED7が取り付け板21から外れにくくすることができ、また、リード線7c(延長リード線20e)が折れ曲がりにくくすることができる。
【0047】
また、この実施形態では、LED7は取り付け板21に表面実装されているのに対し、コネクタ20の第一の部分20cは、その延長リード線20eの前端部20bを、取り付け板21の貫通孔21dに挿通させた状態として半田付けをしている(この第一の部分20cの実装を、以下、貫通孔実装という)。
信号灯器1の製造完了後、通常、LED7には大きな力が作用しないため、LED7を表面実装しても、その接続部の強度は十分である。しかし、前記のとおり、組み立て時には、コネクタ20の第一の部分20cを第二の部分20dに挿し入れる作業があり、また、将来のメンテナンスのために、第一の部分20cを第二の部分20dから抜く場合がある。このため、前記差し入れる作業や、前記メンテナンスの際に、第一の部分20cと取り付け板21との接続部の接続強度が弱いと、第一の部分20cが取り付け板21から外れてしまうことが考えられる。
しかし、前記のとおり、第一の部分20cを貫通孔実装することにより、その接続部の接続強度は強くなり、前記のようにコネクタ20の抜き差しの際に、第一の部分20cが取り付け板21から外れてしまうことを防止することができる。
【0048】
また、図10は取り付け板21の正面図である。取り付け板21を、複数に分割された分割板25a〜25jからなる構成とすることができる。つまり、複数枚の分割板25a〜25jによって一つの取り付け板21が構成される。そして、複数のLED7は、分割された分割板25a〜25jそれぞれに分かれて設けられている。
この場合、複数枚の分割板25a〜25j毎に、LED7及びコネクタ20の第一の部分20cが接続される。そして、複数枚の分割板25a〜25j毎に、LED基板8側のコネクタ20の第二の部分20dと、前記第一の部分20cとの接続が行われる。
【0049】
このように、取り付け板21を複数に分割した場合、製造がより簡単となる。すなわち、取り付け板21の裏面21b側に実装されているコネクタ20の第一の部分20cと、LED基板8の前面8aに実装されているコネクタ20の第二の部分20dとを接続する際、仮に取り付け板21が1枚であると、当該取り付け板21側の全てのコネクタ20の第一の部分20cと、LED基板8側の全てのコネクタ20の第二の部分20dとの位置を一致させ、全数をまとめて接続させる必要があるため、その接続作業に手間を要するおそれがある。
しかし、取り付け板21が、複数に分割されて複数のLED7が分かれて設けられている分割板25a〜25jからなることで、多数のコネクタ20の第一の部分20cも、分割板25a〜25jそれぞれに分かれて複数設けられるので、コネクタ20の第一の部分20cと第二の部分20dとを接続させる一回の接続作業で、第一の部分20cと第二の部分20dとの接続箇所の数が少なくなり、作業が簡単となる。
【0050】
〔パッチアンテナ4〕
前記実施形態に用いられたパッチ素子11及びグランド素子12の具体的な構成について、図3と図4とにより説明する。
パッチ素子11は、円形又は矩形(図3では円形)の平面状(平板状)に形成されている。パッチ素子11は、LED基板8から前方へ離れて設けられているが、LED7の前端39(レンズ部7eの前端39)よりも後方に位置している。
【0051】
グランド素子12は、円形又は矩形(図3では円形)の平面状(平板状)に形成されている。グランド素子12は、LED基板8の前方に位置し、かつ、パッチ素子11の後方に設けられている。
【0052】
したがって、パッチ素子11とグランド素子12とは、光学ユニット2内において、LED基板8の前面8aからLED7の前端39までの範囲に設けられている。また、パッチ素子11とグランド素子12とが、前後方向に対向した配置となり、このパッチアンテナ4の指向性は、信号灯器1から前方へ向かう方向となる。つまり、光学ユニット2の投光方向と、パッチアンテナ4の指向性とを略一致させることができる。これにより、信号灯器1は、当該信号灯器1が設置されている道路を走行する車両に対して、見通しが良い位置に設置されることから、このパッチアンテナ4の指向性によって、前記車両に搭載した車載通信装置(図示せず)との間で、良好な通信状態が得られる。
【0053】
また、パッチ素子11及びグランド素子12は、LED基板8と平行になるように配置されている。信号灯器1はドライバへの視認性に鑑みて、通常、LED基板8自体を少し下方に傾けて設置してある。このため、パッチ素子11及びグランド素子12をLED基板8に平行に取り付けることによって、パッチアンテナ4の指向性も自然に下方に向く。
なお、路車間通信での無線通信の領域を限定的としたり確実性を増したりすることを目的として、パッチアンテナ4をLED基板8に対して上下方向又は左右方向に傾けるようにしてもよい。つまり、パッチアンテナ4の指向性を調整するために、パッチ素子11及びグランド素子12の一方又は双方を、LED基板8に対して傾けて配置してもよい。
【0054】
このように、信号灯器1に組み込まれたアンテナ4及び前記制御装置5b(図1参照)を路側通信装置とすることで、当該路側通信装置と車両に搭載した車載通信装置との間で無線通信(路車間通信)が行われ、交通安全の促進や交通事故の防止を目的とする高度道路交通システム(ITS)を実現することができる。このシステムで使用される無線周波数は、例えば、700MHz帯や2.4GHz帯がある。
【0055】
使用周波数を700MHz帯に設定する場合、パッチ素子11とグランド素子12との前後方向の間隔を30mm程度(例えば25〜40mm)に設定する必要がある。これはグランド素子12とパッチ素子11との間に、空気が介在している場合である。
【0056】
パッチ素子11及びグランド素子12は金属板から形成することができる。パッチ素子11及びグランド素子12の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属とすることもできる。
また、高周波は表面に電流が流れることから、樹脂製等の不導体の板部材からなる基板に、蒸着したものや、金属メッキ(金や銀のメッキ)を施したものであってもよい。
【0057】
その具体例として、図11に示しているように、不導体(例えば樹脂板)からなるLED基板8の前面8aに、蒸着等によって導体膜(導体層)を形成し、この導体膜によってグランド素子12を構成してもよい。
これと同様に、図11に示しているように、不導体(例えば樹脂板)からなる取り付け板21に(例えばその裏面21bに)、蒸着等によって導体膜(導体層)を形成し、この導体膜によってパッチ素子11を構成してもよい。なお、図11は、他の実施形態に係る光学ユニット2の内部の拡大断面図であり、図5の実施形態の変形例である。
このような不導体からなる基板が用いられたパッチ素子11及びグランド素子12の構成によれば、取り付け板21、LED基板8が、パッチ素子11、グランド素子12を形成するための部材を兼ねることができ、構成の簡素化が可能となる。
【0058】
また、図5及び図11の実施形態では、パッチ素子11とコネクタ20とは前後方向の位置について重複していることから、パッチ素子11には、コネクタ20を挿通させる開口部として複数の孔34aが形成されている。また、グランド素子12とコネクタ20とも前後方向の位置について重複していることから、グランド素子12には、コネクタ20を挿通させる開口部として複数の孔14aが形成されている。これら孔34a,14aの配置はコネクタ20の配置と一致している。
【0059】
したがって、パッチ素子11及びグランド素子12は網目構造となる。このため、図5の実施形態では、コネクタ20をパッチ素子12の孔34aに挿し入れることで、パッチ素子11がコネクタ20に干渉することなく、パッチ素子11を所定の位置に設置することができ、また、コネクタ20をグランド素子12の孔14aに挿し入れることで、グランド素子12がコネクタ20に干渉することなく、グランド素子12を所定の位置に設置することができる。
【0060】
また、パッチ素子11、グランド素子12を、導線(金属ワイヤ)によって(導線を編んで)形成したメッシュ構造としてもよい。この場合、導線間を前記孔とし、この孔にLED7を位置させるように構成することができる。
【0061】
図4において、収容部材6(底部6a)には、アンテナ4給電用の同軸ケーブル15を接続させる端子部29が取り付けられていて、この端子部29に、図1の制御装置5bから延びる同軸ケーブル15が接続されている。そして、この端子部29から前方へ延びる同軸ケーブル15aがパッチアンテナ4と接続される。同軸ケーブル15aは、中心導体15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有していて、中心導体15bがパッチ素子11に接続され、外導体15dがグランド素子12に接続されている。中心導体15b及び外導体15dと、各アンテナ素子11,12(各素子の導電体部分)とを、半田によって接続し固定することができるが、半田以外の方法であってもよい。
【0062】
以上の構成によれば、パッチアンテナ4が光学ユニット2に格納されていても、しかも、所望のアンテナ性能を発揮させるためにパッチ素子11とグランド素子12とを所定の間隔E(図5参照)に設定しても、前記コネクタ20によって、パッチ素子11及びその後方にあるグランド素子12は、LED7の前端39よりも後方に設けられた構成が得られる。このため、パッチ素子11及びグランド素子12が、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。また、パッチ素子11及びグランド素子12は、配線パターン8cが張り巡らされたLED基板8の前方に設けられていることから、このLED基板8がアンテナ4による電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0063】
なお、パッチ素子11が、前方への発光(灯光)の妨げになることを防止するために、パッチ素子11はLED7の前端39よりも後方に設けられているが、この「前端39よりも後方」には、パッチ素子11の前面11aとLED7の前端39との前後方向の位置が、略一致している場合を含む。なお、この略一致とは、LED7の前端39の前後方向の位置が、パッチ素子11の厚さ方向の範囲内に存在している場合である。
【0064】
信号灯器1は、屋外に設置されていることから、LED基板8やLED7に照りつけた西日や朝日が地上へ反射し、その反射光によって、灯器が見づらくなったり、点灯していない灯器が点灯しているように見える「擬似点灯」が生じたりする。
そこで、図4に示したように、前記反射防止部材10が、光学ユニット2の外部から入射する光(太陽光)がLED基板8及びLED7の少なくとも一方により反射するのを防止する機能を有している。反射防止部材10は、絶縁部材である合成樹脂材により形成されている。
【0065】
そして、パッチアンテナ4は光学ユニット2に格納された構成となり、これにより、パッチアンテナ4を目立たなくして信号灯器1に設置することができ、道路の美観を損なうことがない。なお、図1の信号灯器1は三つの光学ユニット2を有していて、それぞれの光学ユニット2にパッチアンテナ4が格納されている。
【0066】
また、パッチアンテナ4が信号灯器1の光学ユニット2内に組み込まれていることから、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。さらに、アンテナ4が露出した状態(突出した状態)にないため、信号灯器1を取り付けるための支柱40及びアーム41(図1)の設計において、アンテナ4が受ける風荷重を追加的に考慮する必要がない。また、アンテナ4に対する防錆、防塵についても追加的に考慮する必要がない。
【0067】
さらに、交通用の信号灯器1は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置されているため、各実施形態のパッチアンテナ4を格納させた信号灯器1を道路の所定位置に設置すれば、当該アンテナ4と車両の車載通信装置との間で無線通信を行なう上で、見通しが良好な状態を自然と得ることができる。これにより、信号灯器1の光学ユニット2に組み込んだアンテナ4を、路車通信を行なう高度道路交通システム(ITS)に活用することができ、良好な通信状態が得られる。
【0068】
また、本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、本発明の信号灯器1は、赤、黄、青の灯光色を有する光学ユニット2以外に、図示しないが、車両等の進行可能を意味する矢印を点灯させる光学ユニットを更に備えた矢印式信号灯器であってもよい。この場合、矢印式信号灯器の光学ユニットも、赤、黄、青の光学ユニット2と同様に、内部に発光体(LED)及びカバー部材等を有していて、この光学ユニットにアンテナが格納されていてもよい。
また、本発明の信号灯器1は、車両用以外にも、歩行者用の信号灯器であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の交通信号灯器の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】一つの光学ユニットの斜視図である。
【図3】光学ユニットの正面図である。
【図4】光学ユニットの断面図である。
【図5】光学ユニットの内部の拡大断面図である。
【図6】LEDの取り付け部を説明する斜視図である。
【図7】信号灯器の製造方法を説明する説明図である。
【図8】信号灯器の製造方法を説明する説明図である。
【図9】信号灯器の製造方法を説明する説明図である。
【図10】取り付け板の正面図である。
【図11】他の実施形態に係る光学ユニットの内部の拡大断面図である。
【図12】導線部の長さの説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1 交通信号灯器(灯器)
2 光学ユニット
4 パッチアンテナ(アンテナ)
7 発光ダイオード(LED)
7c リード線
8 LED基板(基板)
8a 前面
8c 配線パターン
9 カバー部材
11 パッチ素子(アンテナ素子)
12 グランド素子
19 接続体
20 コネクタ
21 取り付け板
21a 前面
21b 後面
21d 貫通孔
23c 導線部
39 前端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光ダイオード、前記発光ダイオードの後方に設けられ当該発光ダイオードに給電するための配線パターンが形成されている基板、及び、可視光透過性を有し前記発光ダイオードを前方で覆うカバー部材を有する光学ユニットと、
前記基板の前方に配置された状態で前記光学ユニットに格納されているアンテナと、
前記基板と前記発光ダイオードのリード線との間に設けられ前記発光ダイオードの前端を前記アンテナよりも前方に配置させる接続体と、
を備え、
前記接続体は、前記基板から前方に延びるようにして実装されているコネクタと、前記コネクタの前部と接続されていると共に複数の前記発光ダイオードが前面に表面実装され当該コネクタと当該発光ダイオードとを電気的に接続している取り付け板と、を有していることを特徴とする灯器。
【請求項2】
前記コネクタは、当該コネクタの前部に有している導線が前記取り付け板に設けられている貫通孔に挿通している状態で、当該取り付け板の前面側から半田付けされている請求項1に記載の灯器。
【請求項3】
前記取り付け板は、前記発光ダイオードの実装部と前記コネクタの接続部とを電気的に接続している導線部を有し、
前記導線部は、前記発光ダイオードの横断面最大長さの半分と、前記コネクタの横断面最大長さの半分との和とほぼ同じ乃至当該和よりも短い長さを有している直線の導体からなる請求項1又は2に記載の灯器。
【請求項4】
前記アンテナは、不導体からなる前記取り付け板の一面に形成された導体層からなるアンテナ素子を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の灯器。
【請求項5】
前記アンテナは、前記基板よりも前方に設けられたグランド素子、及び、このグランド素子よりも前方に設けられたパッチ素子を有しているパッチアンテナであり、
前記グランド素子は、不導体からなる前記基板の前面に形成された導体層からなり、
前記基板の後面に前記配線パターンが形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の灯器。
【請求項6】
複数の発光ダイオード、及び、可視光透過性を有し前記発光ダイオードを前方で覆うカバー部材を有する光学ユニットと、
前記光学ユニットに格納されているアンテナと、
前記発光ダイオードに給電するために前記光学ユニットの後部側から当該発光ダイオード側へと向かう前方に延びるようにして設けられている複数のコネクタと、
前記コネクタが前部に有している導線を挿通させる貫通孔が形成され、当該導線が当該貫通孔に挿通している状態で、当該コネクタが前面側から半田付けされている取り付け板と、を備え、
前記発光ダイオードは、前記取り付け板の前面に表面実装されて、前記コネクタと前記取り付け板上で電気的に接続されていることを特徴とする灯器。
【請求項7】
複数の発光ダイオード、前記発光ダイオードの後方に設けられ当該発光ダイオードに給電するための配線パターンが形成されている基板、及び、可視光透過性を有し前記発光ダイオードを前方で覆うカバー部材を有する光学ユニットと、
前記基板の前方に配置された状態で前記光学ユニットに格納されているアンテナと、
前記基板と前記発光ダイオードのリード線との間に設けられ前記発光ダイオードの前端を前記アンテナよりも前方に配置させる接続体と、
を備え、
前記接続体は、前記基板から前方に延びるようにして実装されているコネクタと、前記コネクタの前部と接続されていると共に複数の前記発光ダイオードが前面に表面実装され当該コネクタと当該発光ダイオードとを電気的に接続している取り付け板と、を有していることを特徴とする交通信号灯器。
【請求項8】
複数の発光ダイオード、及び、可視光透過性を有し前記発光ダイオードを前方で覆うカバー部材を有する光学ユニットに、アンテナを格納して組み立てるアンテナ内蔵型の灯器の製造方法であって、
前記複数の発光ダイオードに給電するための複数のコネクタそれぞれが前部に有している導線を、複数の貫通孔が形成された取り付け板の当該貫通孔それぞれに後面側から前面側へと挿通させた状態で、前記導線を前記取り付け板の前面側からフロー方式により半田付けして、前記複数のコネクタをまとめて前記取り付け板に実装し、
前記複数の発光ダイオードを、前記取り付け板の前面に、リフロー方式によりまとめて表面実装することを特徴とするアンテナ内蔵型の灯器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−146140(P2010−146140A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320512(P2008−320512)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】