説明

災害発生確率評価システムとそのプログラム

【課題】自然災害に対して、RBFN値を用いた回帰分析により、災害発生の危険性を一般的に理解しやすい確率として評価し、また、避難準備情報として有用な基準線超過予測についても一般的に理解しやすい確率として評価し、それらの経時的な変化についても評価が可能な災害発生確率評価システムとそのプログラムを提供する。
【解決手段】災害発生学習データ13aとRBFN値学習データ12とを用いて、RBFN値に対する災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数20を回帰分析する関数分析部3と、関数分析部3で得られた災害発生確率関数20と、災害の発生要因毎に観測される観測データ19とを読み出して、災害発生確率22を演算する災害発生確率演算部5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨を誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、あるいは地震や火山活動によって発生する災害や河川災害あるいは道路災害など自然災害の発生に関する確率評価を行うための災害発生確率評価システムとそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は、国土の約7割が山地で地質的にも脆弱な地域が多いという地理的条件から、毎年のように土砂災害が多発しており、しかも時間雨量が50mm以上の集中豪雨は年々増加傾向にある。また、土砂災害の発生件数は過去10年の平均で約1,000件発生しており、多大な被害を与えているが、コストのかかるハード対策の整備率は約20%と依然として低い状況である。そのため、ソフト対策が急務となっており、平成13年度からの「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の施行により、宅地開発の規制や住民への周知、警戒避難体制の整備等が進められてきた。
そこで従来、例えば、防災・補修事業計画の立案支援などのために実際の災害・事故・補修の発生あるいは非発生に関するデータをコンピュータ処理することで精度の高い情報を得る研究を実施して、本発明者らは既に、がけ崩れの発生予測に用いられる発生降雨、非発生降雨の判別境界線であるがけ崩れの発生限界線や、避難基準線、警戒基準線を設定する方法について非特許文献1に示されるように発表している。
非特許文献1では、複雑な自然現象を直線近似せず、高精度の発生限界線等を設定することを目的として、非線形判別に優れた放射状基底関数ネットワーク手法(Radial Basis Function Network:以下、RBFNという場合がある)を用い、地域毎の非線形がけ崩れ発生限界雨量線を設定する方法を提案している。本非特許文献1に開示される技術では、RBFNを用いて、その学習機能を利用して最適な中間層と出力層の重みを決定することによって非線形がけ崩れ発生限界雨量線を設定している。
【0003】
また、特許文献1においては、「災害対策支援システム」として、災害発生時に実行すべき災害対策を自動的に選択して表示し、その進捗状況を併せて示す手段を備えたシステムが開示されている。
本特許文献1に開示される災害対策支援システムは、基本的にはif−then形式で、予め発生する事象とそれに対応する対策を関連付けて格納された対策リストを読み出して、対応するものである。災害時に精神的、時間的、人的に余裕のない状況で、的確な判断を可能とすべくなされたものである。また、標準的な作業時間と実働時に要した作業時間及び対策可能な残り時間を表示することで、対策進捗状況をリアルタイムに把握することが可能であると同時に、重要度の高い対策と低い対策を取捨選択するためにも用いることができる。
【0004】
さらに、特許文献2においては、非特許文献1に開示される技術を警戒避難システムに応用した発明が開示されている。本特許文献2に開示された発明では、災害に影響を及ぼす地形要因、地質・土質要因、環境要因及び地震要因を踏まえた上で、短期降雨指標として、例えば発生時刻から3時間以内の最大時間雨量を、また、長期降雨指標として、例えばその時刻における半減期を72時間とした実効雨量を用いて、土砂災害発生危険基準線(以下、CLという場合もある。)を演算するものである。
このようにして得られたCLを用いることで、信頼性の高い警戒避難支援システムを提供することが可能である。
さらに、非特許文献2には、地形・地質要因(以下、地形要因という。)と降雨要因を用いて、ラフ集合により土石流の発生・非発生ルールの作成を行い、災害発生の起因となった要因の追求を行う研究が開示されている。この研究は、数理的な手法を導入することにより客観的な災害発生条件を探求するものである。
また、土砂災害の予測手法についても約30年前から研究が進められており、平成17年度に「国土交通省と気象庁の連携による土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)」が取りまとめられた。これに伴い、土砂災害警戒情報の提供が全国的に展開され、本格運用を始めた地方自治体も増加し、検証事例が蓄積され始めている。
現在、先の土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)では、過去の非発生降雨を基本にRBFネットワーク手法による統計解析を行い、客観的かつ予測精度の高い非線形のCLが設定されている。また、避難勧告等の発令の判断に利用される予測雨量についても、気象庁を中心に日々精度を高めるための研究開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−230235号公報
【特許文献2】特開2003−184098号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】倉本和正 他5名:RBFネットワークを用いた非線形がけ崩れ発生限界雨量線の設定に関する研究、土木学会論文集No.672/VI−50,pp.117−132,2001.3
【非特許文献2】岡本正男 他4名:ラフ集合を用いたデータマイニングによる土砂移動現象の重要要因及びルール抽出に関する研究、砂防学会誌 Vol.54,No.6,p.4−15,2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先の土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)についての運用も4年が経過し、すでにいくつか課題が生じている。
例えば、(1)非発生降雨の密度分布を表すRBFN値自体の意味が災害の危険性を示すものではないため、行政担当者や住民が理解しにくい点が挙げられる。このことは、この設定手法(案)以外の場合においても課題として挙げられる。すなわち、解析手法にRBFNを用いた場合のみならず、CLなどの災害発生基準線を求める解析全般、あるいはRBFN以外であっても解析によって得られたCL等の災害発生基準線といわゆるスネークラインとの関係が災害の危険性を直接示すものではないということにも関係がある。次に、(2)CLなど災害発生基準線の超過予測に用いられる予測雨量の精度は向上しているものの、雨量などの自然災害発生要因との関係で時々刻々と変動する避難準備情報の経時変化に対する信頼性に欠ける点などが挙げられる。さらに、災害が発生するよりも早く避難行動をとることを目的として、気象庁の配信する予測雨量を用いた試みがなされてきたが、予測雨量の精度が十分ではなく、実用上は問題を残した状態であった点も挙げられる。
このような課題は、すでに公開されている非特許文献1及び特許文献1においても同様である。これらに開示された発明でも、災害の発生限界線や、避難基準線、警戒基準線を設定することに主眼を置いており、ある特定の地域あるいは一定の条件毎にまとめられた地域グループにおいて、短期降雨指標や長期降雨指標等の自然災害発生要因における指標がどの程度に至れば災害の発生の危険性があるのかを客観的に評価することに留まっていた。
これでは、客観的、定量的な評価であっても、災害の発生限界線や、避難基準線、警戒基準線に関するものとなり、これらから実際に自然災害に対する要因が時々刻々と変化している状態、たとえば雨が降っている状態における災害の発生確率のような定量的な評価、あるいはこの定量的な評価の経時変化の信頼性を担保することが困難であるという課題があった。
【0008】
また、非特許文献2においては、ラフ集合による分析結果のみでできるだけ多くの災害の発生・非発生を説明しようとしているため、非常に多様なルールが作成されてしまうという課題があった。これは、母集団データに含まれるノイズ的なデータ(局所的かつ特例的な条件により災害が発生・非発生となっているデータ)の影響が大きいことが推測される。
ルールが多様過ぎては、精度は高くなっても、効率的に評価を実施することが難しくなってしまう。すなわち、その各々のルールでカバーできる地点や箇所が少なくなってしまい、結局災害の発生・非発生に関する評価を行うことが難しくなるのである。すなわち、災害の発生・非発生に対する高精度かつ効率的な評価を実施することができないという課題があった。このことは、非特許文献1及び特許文献1においても同様であった。
【0009】
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたものであり、降雨を誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、あるいは地震や火山活動によって発生する災害や河川災害あるいは道路災害など自然災害に対して、RBFN値を用いた回帰分析により、災害発生の危険性を一般的に理解しやすい確率として評価し、また、避難準備情報として有用な基準線超過予測についても一般的に理解しやすい確率として評価し、それらの経時的な変化についても評価が可能な災害発生確率評価システムとそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である災害発生確率評価システムは、災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて解析されたRBFN値をRBFN値学習データとして、前記災害発生学習データと前記RBFN値学習データとを用いて、前記RBFN値に対する災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数を回帰分析する関数分析部と、この関数分析部で得られた前記災害発生確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記災害発生確率関数に前記観測データを入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算部と、を有することを特徴とするものである。
なお、本願発明において「災害の発生・非発生」は、いずれか一方のみの場合も含む概念である。すなわち、災害の発生・非発生に関する学習データには、災害の非発生のみに関する学習データや災害の発生のみに関する学習データも含まれる。請求項1に記載される発明のみならず、この後の請求項に記載される発明及びそれらに対する実施例においても同様である。
【0011】
請求項2記載の発明である災害発生確率評価システムは、請求項1記載の災害発生確率評価システムにおいて、前記災害発生確率と予め定めた少なくとも1つの評価用しきい値を比較して、前記評価用しきい値に対応させた評価を前記災害発生確率に対応する評価として選択抽出する評価部を有することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明である災害発生確率評価システムは、災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する予め定められた災害発生基準線の超過の有無に関する学習データとを基準線超過学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて解析されたRBFN値をRBFN値学習データとして、前記基準線超過学習データと前記RBFN値学習データとを用いて、前記RBFN値に対する前記災害発生基準線の超過確率を演算するための基準線超過確率関数を回帰分析する関数分析部と、この関数分析部で得られた前記基準線超過確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記基準線超過確率関数に前記観測データを入力して基準線超過確率を演算する基準線超過確率演算部と、を有することを特徴とするものである。
なお、本願発明において「災害発生基準線」は、土砂災害の発生の危険性を判断する基準線や警戒・避難活動の判断に必要な基準線を意味し、例えば、災害発生危険基準線(CL)や避難基準線(EL)、警戒基準線(WL)などが該当するが、特にこれらの基準線に限定するものではなく、災害発生に関係する基準線であればよい。請求項3に記載される発明のみならず、この後の請求項に記載される発明及びそれらに対する実施例においても同様である。
【0013】
請求項4に記載の災害発生確率評価システムでは、請求項3に記載の災害発生確率評価システムにおいて、前記基準線超過確率と予め定めた少なくとも1つの評価用しきい値を比較して、前記評価用しきい値に対応させた評価を前記基準線超過確率に対応する評価として選択抽出する評価部を有することを特徴とするものである。
【0014】
請求項5記載の発明である災害発生確率評価システムは、請求項1記載の災害発生確率評価システムにおいて、前記関数分析部は、前記災害発生確率関数に加えて、前記観測学習データと、前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する予め定められた災害発生基準線の超過の有無に関する学習データとを基準線超過学習データとし、前記基準線超過学習データと前記RBFN値学習データを用いて前記RBFN値に対する前記災害発生基準線の超過確率を演算するための基準線超過確率関数を回帰分析する関数分析部であって、この関数分析部で得られた前記基準線超過確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記基準線超過確率関数に前記観測データを入力して基準線超過確率を演算する基準線超過確率演算部と、を有することを特徴とするものである。
【0015】
請求項6記載の発明である災害発生確率評価システムは、請求項5記載の災害発生確率評価システムにおいて、前記災害発生確率と予め定めた少なくとも1つの第1の評価用しきい値を比較して、前記第1の評価用しきい値に対応させた評価を前記災害発生確率に対応する第1の評価として選択抽出し、前記基準線超過確率と予め定めた少なくとも1つの第2の評価用しきい値を比較して、前記第2の評価用しきい値に対応させた評価を前記基準線超過確率に対応する第2の評価として選択抽出する評価部を有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項7記載の発明である災害発生確率評価プログラムは、コンピュータによって、災害発生確率を演算するために実行されるプログラムであって、コンピュータに、災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて解析されたRBFN値をRBFN値学習データとして、前記災害発生学習データと前記RBFN値学習データとを用いて、前記RBFN値に対する災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数を回帰分析する関数モデル分析工程と、この関数分析工程で得られた前記災害発生確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記災害発生確率関数に前記観測データを入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算工程とを実行させることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8記載の発明である災害発生確率評価プログラムは、コンピュータに、災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて解析されたRBFN値をRBFN値学習データとして、前記災害発生学習データと前記RBFN値学習データとを用いて、前記RBFN値に対する災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数を回帰分析する第1の関数モデル分析工程と、前記観測学習データと、前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する予め定められた災害発生基準線の超過の有無に関する学習データとを基準線超過学習データとし、前記基準線超過学習データと前記RBFN値学習データを用いて前記RBFN値に対する前記災害発生基準線の超過確率を演算するための基準線超過確率関数を回帰分析する第2の関数モデル分析工程と、前記第1の関数モデル分析工程で得られた前記災害発生確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記災害発生確率関数に前記観測データを入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算工程と、前記第2の関数モデル分析工程で得られた前記基準線超過確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記基準線超過確率関数に前記観測データを入力して基準線超過確率を演算する基準線超過確率演算工程と、を実行させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、降雨を誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、あるいは地震や火山活動によって発生する災害や河川災害あるいは道路災害など自然災害に対して、RBFNを用いた分析を行うが、この分析自体の精度を向上するのではなく、この分析をベースに災害発生の危険性を確率という定量的な尺度で表現することで、行政担当者や一般住民などのユーザーに対して理解の促進を図ることが可能である。
また、災害発生に対する確率のみならず、災害発生基準線を超過する確率を予測可能とすることで、自然災害の発生要因が時々刻々と変化している場合に、この基準線の超過確率を用いて避難準備情報として取り扱うことが可能であり、この避難準備情報の重要性を経時的かつ定量的に示すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る災害発生確率評価システムの構成図である。
【図2】災害発生確率評価システムにおいて実行される演算の工程を示すフローチャートである。
【図3】RBFNを用いた統計解析の結果の一例を示す概念図である。
【図4】ロジスティック関数を表す曲線を示す概念図である。
【図5】実施例で使用した学習地域及びテスト地域を示す位置図である。
【図6】(a)は一連降雨のピークで災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図であり、(b)は一連降雨のピーク後に災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図である。
【図7】(a)は一連降雨のピーク後に災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図であり、(b)は一連降雨のピーク前に災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図である。
【図8】(a)は一連降雨のピーク前に災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図であり、(b)は一連の降雨で災害が発生しない場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図である。
【図9】(a)、(b)いずれも一連の降雨で災害が発生しない場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図である。
【図10】学習地域における災害発生確率P(x)と実際の発生率の相関を示すグラフである。
【図11】テスト地域における災害発生確率P(x)と実際の発生率の相関を示すグラフである。
【図12】実施例2の災害発生確率評価システムを用いて、RBFN値0.1毎に対する災害発生確率P(x)を算出した結果を示すグラフである。
【図13】実施例2の災害発生確率評価システムを用いて演算した1時間後のCL超過確率π(x)を、CL(0.7)の内側に、1時間後のCL超過確率π(x)=10%(内側)〜90%(外側)のラインとして示したグラフである。
【図14】実施例1,2の災害発生確率評価システムを用いて演算した災害発生確率と1時間後のCL超過確率π(x)を両方時系列に沿って示す運用のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る災害発生確率評価システム及び災害発生確率評価プログラムについて図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は災害発生確率評価システムの構成図であり、図2は災害発生確率評価システムにおいて実行される演算の工程を示すフローチャートである。
図1において、災害発生確率評価システム1は、大きくいうと、入力部2、関数分析部3、第1データベース4、第1解析部5、第2解析部6、第2データベース7、評価部8及び出力部9から構成されている。
入力部2は、第1データベース4や第2データベース7に格納されるRBFN値学習データ12や災害発生学習データ13a及び基準線超過学習データ13bあるいは回帰関数データ14、観測・点検データ19等、第1データベース4及び第2データベース7内に示される各データを予め入力して読み出し可能に格納しておくために用いられる。この入力部2から入力されるそれぞれのデータは、図1には矢印として示されていないものの直接第1データベース4や第2データベース7へ入力が可能となっている。また、関数分析部3に対して、RBFN値学習データ12、災害発生学習データ13a及び基準線超過学習データ13bあるいは回帰関数データ14を直接入力するためにも用いられる。入力部2としての具体例には、キーボード、マウス、ペンタブレット、光学式の読み取り装置あるいは、コンピュータ等の解析装置や計測機器等から通信回線を介してデータを受信する受信装置など複数種類の装置からなり目的に応じた使い分け可能な装置が考えられる。
また、出力部9としては、具体的にはCRT、液晶、プラズマあるいは有機ELなどによるディスプレイ装置、あるいはプリンタ装置などの表示装置、さらには外部装置への伝送を行うためのトランスミッタなどの発信装置などが考えられる。
関数分析部3は、解析条件設定部10及び回帰分析部11から構成されるものである。
この関数分析部3は、第1解析部5や第2解析部6において実行される災害発生確率や基準線超過確率を演算するためのロジスティック回帰分析関数を求めるために設けられるものであり、解析条件設定部10でロジスティック回帰分析関数を求めるための解析条件を設定し、回帰分析部11では解析条件設定部10で設定された解析条件に基づいてロジスティック回帰分析を実施して関数を求める。
なお、本実施の形態における基準線超過確率とは、土砂災害の発生の危険性を判断する基準線や警戒・避難活動の判断に必要な基準線のうち、少なくとも1つ以上の基準線を越える確率を意味する。
実施例においては、基準線の代表例として、災害発生危険基準線(CL)を用いて説明しているが、CLに限定するものではなく、避難基準線(EL)や警戒基準線(WL)でもよく、あるいはその他の基準線でもよい。
実施例ではそれぞれの基準線についての実施例は説明しないものの、それぞれの基準が異なるだけで解析の手法などは共通しているため、CLを解析することでその他の基準線については容易に類推することが可能である。
【0021】
ここで本願発明の実施の形態において採用されているRBFN手法による統計解析によって求められるRBFN値とこれを用いるロジスティック回帰分析について説明する。
現行手法によるRBFN値は非発生降雨の発現確率を表し、図3のように設定される。また、RBFN値は災害発生の危険性を直接に表しているものではない。そこで、本願発明においては、土砂災害発生の危険性を表す指標としては確率値による表現が有効であると考え、ロジスティック回帰分析を用いることとしたのである。
ロジスティック回帰分析とはベルヌーイ分布に従う変数の統計的回帰モデルの一種で、独立変数が量的、従属変数が質的な変数の場合に用いられる二値変数に対する回帰分析である。一般にある現象の発生する確率Pをその現象の生起を説明するために観測された変数群(式(1))で説明しようとする場合、この変数群(式(1))という状態のもとで、現象が発生するという条件付き確率をP(x)で表し、これを多くの場合、式(2)で表すような関数Fを用いてモデル化する。
【0022】
【数1】

【0023】
【数2】

【0024】
ここで、r個の変数の影響を線形な合成関数をZ(式(3))とし、さらに、関数FにZのロジスティック関数(式(4))を代入して得られた式が、次のロジスティック回帰分析を用いた関数(式(5))である。
【0025】
【数3】

【0026】
【数4】

【0027】
【数5】

【0028】
ロジスティック関数を表す曲線は図4に示す通りであり、確率P(x)は0と1の間(0%〜100%)の値をとる。この図4に示される形態の関数P(x)が回帰関数データ14となる。本実施の形態においては、式(3)で表現される合成関数Zの変数xにRBFN値を採用して、P(x)として災害発生確率及び基準線超過確率を適用させている。本実施の形態に係る災害発生確率評価システム及び災害発生確率評価プログラムでは、これらの災害発生確率と基準線超過確率の評価が高い精度で成立することを見出し、これらの確率演算を通じて、災害発生確率の評価を可能とするシステムとプログラムを発明したのである。なお、本実施の形態においては、災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数をロジスティック回帰分析によって得たが、独立変数が量的、従属変数が質的な変数の場合に用いられる二値変数に対する回帰分析で災害発生確率関数を得ることが可能であれば、特にロジスティック回帰分析に限定するものではなく、他の回帰分析を用いてもよい。
関数分析部3の解析条件設定部10では、予め入力部2を用いて第1データベース4に格納された回帰関数データ14を第1データベース4から読み出し、あるいは入力部2を介して直接読み込み、解析条件を設定する。解析条件の具体例としては、第1データベース4から選択されるRBFN値学習データ12、災害発生学習データ13aあるいは基準線超過学習データ13bの決定がある。すなわち、いずれの地域及び時期におけるRBFN値学習データ12、災害発生学習データ13aあるいは基準線超過学習データ13bを選択、決定するかを解析条件設定部10において設定するものである。
これらのRBFN値学習データ12、災害発生学習データ13aあるいは基準線超過学習データ13bについても予め入力部2を介して第1データベース4に入力されるが、関数分析部3の解析時に入力部2から直接関数分析部3へ入力されてもよい。その際には解析条件設定部10では、その入力されたRBFN値学習データ12及び災害発生学習データ13aあるいは基準線超過学習データ13bが解析条件として設定されることになる。
【0029】
回帰分析部11では、解析条件設定部10で設定された解析条件に基づいて回帰分析を実施して、災害発生確率関数あるいは基準線超過確率関数を求める。具体的には式(5)を求めるが、その中の合成関数Zの式(3)に示される係数(β)を求める。
関数分析部3の回帰分析部11で解析された災害発生確率関数及び基準線超過確率関数は、合成関数の係数、すなわち災害発生確率関数係数データ20と基準線超過確率関数係数データ21として第2データベース7に格納される。
【0030】
次に、図1に戻り、第1データベース4について説明する。この第1データベース4は、すでに述べたとおり、関数分析部3に読みだされる解析条件や関数に関するデータを格納するものであり、具体的にはRBFN値学習データ12、災害発生学習データ13a、基準線超過学習データ13b及び回帰関数データ14が格納されている。前述のとおり、これらのデータは入力部2を介して格納される。
【0031】
次に、第1解析部5及び第2解析部6について説明する。
第1解析部5は、解析関数設定部15及び災害発生確率演算部16から構成されるものであり、ある地域における災害発生確率を演算するものである。
解析関数設定部15は、関数分析部3によって解析された災害発生確率関数を設定するものであり、具体的には、第2データベース7に格納された災害発生確率関数係数データ20を読み出して解析に用いる関数を選択・決定する。また、解析関数設定部15は災害発生確率を演算する地域を特定して、その地域における観測・点検データ19を第2データベース7から読み出して、解析に用いる関数を選択・決定する。
次に、災害発生確率演算部16では、解析関数設定部15で設定された災害発生確率関数と解析地域における観測・点検データ19を用いて災害発生確率を演算するものである。
災害発生確率演算部16で解析された災害発生確率については、災害発生確率演算部16が災害発生確率データ22として、第2データベース7に読み出し可能に格納される。
第2解析部6は、解析関数設定部17及び基準線超過確率演算部18から構成されるものであり、ある地域のある時間における基準線超過確率を演算するものである。第1解析部5と同様に、解析関数設定部17は関数分析部3によって解析された基準線超過確率関数を設定するものであり、具体的には、第2データベース7に格納された基準線超過確率関数係数データ21を読み出して解析に用いる関数を選択・決定する。また、解析関数設定部17は災害発生確率を演算する地域を特定して、その地域における観測・点検データ19を第2データベース7から読み出して、解析に用いる関数を選択・決定する。
【0032】
次に、基準線超過確率演算部18では、解析関数設定部17で設定された基準線超過確率関数と解析地域における観測・点検データ19を用いて基準線超過確率を演算するものである。
基準線超過確率演算部18で解析された基準線超過確率については、基準線超過確率演算部18が基準線超過確率データ23として、第2データベース7に読み出し可能に格納される。
次に、評価部8について説明する。
評価部8は、第1解析部5及び第2解析部6で解析された災害発生確率あるいは基準線超過確率に対して、それぞれの評価用しきい値と比較することで、評価を実施するものである。災害発生確率及び基準線超過確率はそれ自体定量値であることから、本実施の形態に係る災害発生確率評価システムのユーザーに対してある程度量的な判断が可能となっているが、さらに、それらの確率に対する評価を実施することでより客観的で量的な判断を可能とするものである。
評価用しきい値は、第2データベース7に評価用しきい値データ24として格納されているので、評価部8はこれを読み出して、災害発生確率演算部16あるいは基準線超過確率演算部18で演算された確率値と比較し、比較の結果に対応させて評価を出力するものである。
具体的には、評価部8は、災害発生確率データ22あるいは基準線超過確率データ23を第2データベース7から読み出して、同じく読み出した評価用しきい値データ24と比較する。比較によって災害発生確率データ22が評価用しきい値データ24よりも大きい場合と小さい場合において、それぞれ対応する評価を予め評価部8に含めておくことで、その結果を出力部9へ送信することが可能である。
また、評価用しきい値データ24は、1つの値である必要はなく、レンジを持たせたデータとして、そのレンジに含まれる場合に所望の評価を該当させて災害発生に関する利用者の量的な判断・理解を容易としてもよい。
なお、評価部8は必ずしも設ける必要はなく、第1解析部5の災害発生確率演算部16あるいは第2解析部6の基準線超過確率演算部18で演算された結果である災害発生確率と基準線超過確率を出力部9を介して表示したり、あるいは他の外部装置あるいは他所のシステムにデータを転送するものでもよい。
【0033】
また、本実施の形態においては、第1解析部5と第2解析部6の両方を設けている例として示しているが、第1解析部5あるいは第2解析部6のみを設けるようにしてもよい。それぞれ別個独立に機能を発揮させることが可能である。
以上説明したとおり、本実施の形態に係る災害発生確率評価システムにおいては、降雨を誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、あるいは地震や火山活動によって発生する災害や河川災害あるいは道路災害など自然災害に対して、RBFNを用いた分析自体の精度を向上することではなく、RBFN値に関する分析をベースに災害発生の危険性を確率という定量的な尺度で表現することで、ユーザーに対して理解の促進を図ることが可能である。
また、災害発生に対する確率のみならず、災害発生基準線を超過する確率を予測可能とすることで、自然災害の発生要因が時々刻々と変化している場合に、この基準線の超過確率を用いて避難準備情報として取り扱うことが可能であるため、時間と共に変化する自然災害の危険性を経時的かつ定量的に示すことが可能である。従って、災害発生による犠牲者の発生防止をより精度高く実行することが可能である。また、避難勧告などの意思決定を適切なタイミングで精度よく実施することができる。
【0034】
次に、図2を参照しながら、本願発明の形態に係る災害発生確率評価プログラムについて説明する。
これまで図1を参照しながら説明した災害発生確率評価システムはシステム発明であるが、図1に示されるシステムを汎用のコンピュータと捉え、これを動作させるプログラムとして、図2に示すフローチャートの工程を実行させることを考えるものである。
図2において、点線で囲んだ部分はそれぞれ図1の災害発生確率評価システムの構成要素を示すものであり、図1に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付している。
最初の工程は、ステップS0として示される入力工程である。前述のとおり、第1データベース4にはRBFN値学習データ12、災害発生学習データ13a、基準線超過学習データ13b、回帰関数データ14及び観測・点検データ19が格納されるが、この工程を示すものである。ステップS0としているのは、特にこの工程を含まないものであってもよいことを意味するものである。入力工程は必要であるものの、災害発生確率評価プログラムという発明の本質としては、入力工程を含まないものとしてステップS1から開始することも可能であるという意味である。
【0035】
ステップS1は第1の関数モデル分析工程であり、ステップS2は第2の関数モデル分析工程である。この工程で実行されるのは、災害発生確率評価システムにおける関数分析部3が発揮する機能である。前述のロジスティック回帰分析を用いて災害発生確率演算を実行可能な関数モデルを分析するのが第1の関数モデル分析工程であり、同様に基準線超過確率演算を実行可能な関数モデルを分析するのが第2の関数モデル分析工程である。これらの工程を実行するためには第1データベース4から分析に必要なデータを読み出す。また、これらの工程の実行には、得られる第1の関数モデル、すなわち災害発生確率関数(係数)、あるいは第2の関数モデル、すなわち基準線超過確率関数(係数)の第2データベース7への格納も含まれる。これらの点の具体的、詳細な内容については災害発生確率評価システムの関数分析部3について説明した際に述べたとおりである。
【0036】
次に、ステップS3ではステップS1で得られた災害発生確率関数(係数)と、評価を実施する地域の観測・点検データをそれぞれ第2データベース7から読み出して、災害発生確率を演算する。また、同様にステップS4ではステップS2で得られた基準線超過確率関数(係数)と、評価を実施する地域の観測・点検データを第2データベース7から読み出して基準線超過確率を演算する。
これらの工程は図2に示されるとおり、災害発生確率評価システムの第1解析部5あるいは第2解析部6で発揮される機能を実行するものである。ステップS3,4の実行には、演算で得られた災害発生確率と基準線超過確率をそれぞれ第2データベース7に読み出し可能に格納することも含まれる。これらの点の具体的、詳細な内容については災害発生確率評価システムの第1解析部5や第2解析部6を説明した際に述べたとおりである。
【0037】
ステップS5はステップS3で得られた災害発生確率に基づいて災害発生の評価を実行する工程であり、ステップS6はステップS4で得られた基準線超過確率に基づいて基準線超過の評価を実行する工程である。これらの工程は、図2に示されるとおり、災害発生確率評価システムの評価部8で発揮される機能を実行するものである。これらの工程では、災害発生確率評価システムで説明したとおり、第2データベース7から評価用しきい値データ24を読み出して災害発生確率や基準線超過確率と比較を行い、その結果に基づいて評価を実施するものである。具体的、詳細な内容については災害発生確率評価システムの評価部8を説明する際に述べたとおりである。
最後にステップS7で、ステップS3,4の実行によって得られた災害発生確率、基準線超過確率あるいはステップS5,6の実行によって得られた災害発生に関する評価、基準線超過に関する評価を表示あるいは出力する。この工程は災害発生確率評価システムにおける出力部9で発揮される機能の実行に他ならず、具体的、詳細な内容については出力部9の説明時に述べたとおりである。
このように構成される災害発生確率評価プログラムにおける作用、効果については、先に説明した災害発生確率評価システムの作用、効果と同様である。
なお、本実施の形態においては、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法を用いて解析されたRBFN値を用い、また、RBFN値を災害発生基準線として用いているが、解析に用いられる計算手法としてこのRBFNを用いることなく、たとえばサポートベクターマシン(SVM)を用いて解析を行い、得られた値を災害発生基準線として用いるようにしてもよい。
【実施例1】
【0038】
以下、具体的なデータを用いた災害発生確率評価システムあるいは災害発生確率評価プログラムの実施例について説明する。
まず、ロジスティック回帰分析を用いた関数を構築するにあたり、山口県の中でも土砂災害の危険箇所が多く分布する下関市を対象地域として設定した。その中でも最も災害の多い5kmメッシュ「33301814」を学習地域とした。また、下関市において災害が2番目、3番目に多い5kmメッシュ「33301914」、「33301915」をテスト地域とした。本実施例におけるこれらの検討地域を図5に示す。
学習地域とは、ロジスティック回帰分析によって得られる関数を設定するために用いるRBFN値学習データ12及び災害発生学習データ13a(RBFN値学習データ12及び災害発生学習データ13aを併せて表中における学習データである。)を取得した地域を意味し、テスト地域とは学習地域のRBFN値学習データ12及び災害発生学習データ13aを用いて得られた回帰関数の有効性を検証するためのデータ(表中におけるテストデータである。)を取得した地域を意味している。本実施例では本願発明の成立性を実証するために解析を実施しているので、テスト地域という言い方をしているが、実際の発明の実施ではこのテスト地域におけるデータが、災害発生確率や基準線超過確率について演算を行うための観測・点検データ19に相当するものである。
本実施例においては、自然災害のうち、土砂災害についてのケースを示し、災害発生要因としては、降雨としてその降雨データを用いて土砂災害の災害発生確率や、基準線超過確率のうち、1時間後のCL超過確率を演算するものとするが、土砂災害における災害発生要因としては他の要因、たとえば傾斜角度等の地形要因、あるいは地質要因などでもよい。また、以下の実施例では、災害発生基準線としては災害発生危険基準線(CL)の他、避難基準線(EL)、警戒基準線(WL)を用いてもよいし、他の災害発生に関する基準線を用いてもよい。その場合には、データや関数なども対応するようにしておく必要があることは言うまでもない。
さらに、自然災害であれば土砂災害に限定するものではなく、地震や火山活動によって発生する災害や河川災害あるいは道路災害などであってもよい。
【0039】
本実施例では、土砂災害の災害発生確率を算出するための降雨データとして、現行のCL等の作成にも用いられているレーダー・アメダス解析雨量を用いた。対象期間は1991年から2005年までの15年分として、24時間無降雨期間で区切られたひとまとまりの降雨を「一連降雨」データとして抽出した。
また、CLの超過確率に基づく予測に用いる降雨データとしては下関観測所のアメダス10分間雨量を用いた。対象降雨の一覧を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
本実施例における対象災害は土石流及びがけ崩れであり、これらの災害データを山口県災害報告書(1991年〜2005年)から収集した。学習地域に該当する災害データは58件(15降雨)であった。また、テスト地域に該当する災害は52件(24降雨)であった。その他に、予測に用いる10分間雨量の検討範囲では5件の災害を対象とした。
本実施例では、まず、災害発生確率関数の構築を実施した。従来の災害発生予測手法として、背景技術のところで紹介した土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)によるCLが利用されており、これは毎時の降雨の軌跡であるいわゆるスネークラインがCLを超過すると、その降雨はいつ災害が起こってもおかしくない危険な状況であるといった判断をする。言い換えると、CLは、RBFN値のピーク値がCLを超過しているかどうかで、その後が安全なのか、危険なのかを精度よく判定していることになる。しかし、降雨の危険性はCLの超過にかかわらず変化しているものであり、先の土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)のCLでは時系列的に危険性の変化を表現できていないという課題があったことは既に説明のとおりである。
そこで、本実施例では回帰分析部11においてロジスティック回帰分析を実施することで、降雨の毎時の動きに対して確率値を算出することができる災害発生確率関数を構築している。
なお、本実施例及び本実施の形態におけるRBFN値あるいはRBFN値のピーク値とは、災害が発生した場合には、一連降雨において、その発生した時点と同時にピークとなっている値、あるいはそれよりも前にピークとなっている値を意味しており、災害が発生しない場合には、一連降雨においてピークとなっている値を意味している。
具体的に図6乃至図9を参照しながら説明する。これらの図では、縦軸に解析雨量(mm/hr)を示し、横軸に土壌雨量指数(mm)を示している。また、図中にはRBFN値を図示しており、三角印が災害発生時刻を示し、丸印が災害発生確率モデルの構築に用いる降雨ピークを示している。従って、この丸印のピークにおけるRBFN値がRBFN値のピーク値となる。
図6(a)には、一連降雨のピークで災害が発生した場合を示しており、その災害が発生した際のRBFN値を採用する。図6(b)、図7(a),(b)及び図8(a)では、災害発生時刻と降雨ピークがずれている場合である。災害発生時刻よりも前の降雨ピークが最もRBFN値が小さい場合には、そのRBFN値がピーク値となる。
一方、図7(b)や図8(a)に示されるように、災害発生時刻以降に降雨ピークが生じる場合もあるが、その場合には災害発生時刻前のRBFN値のピーク値が災害発生時刻以降のピーク値よりも小さくとも災害発生時刻前のRBFN値のピーク値を採用する。
さらに、図8(b)から図9(b)に示されるように災害非発生の場合には、複数のRBFN値のピークがあれば、その中で最小のRBFN値を与えるものを採用する。
【0042】
ロジスティック回帰分析を用いた関数の構築にあたっては、RBFN値のピーク値から危険度を判定するCLの考え方に基づく。ここでは、RBFN値のピーク値を説明変数xとし、ピーク以降に災害が発生した確率を目的変数P(x)として、関数分析部3の回帰分析部11において構築した回帰関数を式(6)に示す。
この回帰分析部11では、第1データベース4から回帰関数データ14を読み出すが、この回帰関数データ14が先の式(4)なる関数をあらわすデータであり、これに対して、第1データベース4から読み出したRBFN値学習データ12からRBFN値のピーク値を、災害発生学習データ13aから災害の発生の有無をそれぞれ読み出してロジスティック回帰分析を実施するのである。
【0043】
【数6】

【0044】
式(6)では、ある降雨の任意の時刻に着目したときに、その降雨の経験したRBFN値のピーク値を与えることで、今後の災害発生確率P(x)を算出することができる。
このことにより、CLでは、時間の変化による危険度を示すことができなかったが、ロジスティック回帰分析を用いた関数では、時間変化に対応した災害発生の確率値を算出することができようになった。この式(6)で示される関数は、回帰分析部11から第2データベース7に災害発生確率関数係数データ20として読み出し可能に格納される。そして、第1解析部5の解析関数設定部15で読み出されて、災害発生確率を評価する地域における観測・点検データ19を用いて、災害発生確率の演算を災害発生確率演算部16において実施するのである。災害発生確率演算部16で得られた災害発生確率は、災害発生確率演算部16によって、災害発生確率データ22として第2データベース7に読み出し可能に格納される。
【0045】
このように構築されたロジスティック回帰分析を用いた関数(式(6))は、災害の発生確率を算出することができるが、実際の災害発生降雨とどのくらい整合しているかを確認し、関数としての妥当性を確認する必要がある。そこで、学習地域のすべての降雨(165降雨:発生58,非発生107)に対する災害発生確率P(x)を求め、表2のように10%毎に区切って降雨件数をまとめた。また、各区間に対しての実際の発生降雨の件数、ならびに発生率も表記した。なお、各区間の発生率は式(7)より算出する。発生率の単位は%である。
【0046】
【数7】

【0047】
各区間のP(x)と、発生率について表2を参照しながら説明する。例えばP(x)が10%〜20%のとき、実際の発生率は12.1%と算出されている。また、P(x)が80%〜90%の区間に注目すると、その区間での発生率は86.7%となっている。このように、ロジスティック回帰分析を用いて得られた関数により算出された災害発生確率P(x)は実際の発生率によく整合していることが理解される。
【0048】
【表2】

【0049】
ここで、各区間における災害発生確率P(x)と実際の発生率の相関を近似直線も併せて図10に示す。図10の縦軸は実際の災害発生確率を示し、横軸はロジスティック回帰による求めた災害発生確率P(x)である。この図10において災害発生確率P(x)が増加するほど、実現象としての災害発生率も増加し、全体としての整合が確認できた。
このように、ロジスティック回帰分析を用いた関数により算出された災害発生確率P(x)は降雨の強さに応じた災害発生の実現象をよく捉えており、降雨による災害発生の危険性を確率値という連続値によって客観的かつ定量的に表現できたと言える。
【0050】
次に、本実施例では、災害発生確率関数の汎用性について検証したので、その点について説明する。
これまで説明したとおり、構築したロジスティック回帰分析を用いた関数の妥当性を確認できた。しかし、ロジスティック回帰分析は、発生と非発生の過去のデータを用いて行うため、災害発生に関するデータを含めて観測・点検データ19が存在しない地域においては関数を構築することができない。そこで、本願発明者は、鋭意研究を進めていく段階で、他地域のロジスティック回帰分析を用いた関数が適用可能であることを確認することでその欠点を補うことができるとの考えに至ったのである。
そこで、学習地域で構築した関数モデルをテスト地域の5kmメッシュ「33301914」、「33301915」に適用し、災害発生確率P(x)と実際の発生率との比較を行うことでロジスティック回帰分析を用いた関数モデルの汎用性を確認した。比較結果を表3に示す。
比較の例として、表中に示すP(x)が80%〜90%の区間の実際の発生率は82.4%であり、ロジスティック回帰により算出される災害発生確率P(x)と実際の発生率との整合性が発揮されていることが確認できる。また、図11のように全体としての上昇傾向を確認することもできた。
よって、学習地域で構築したロジスティック回帰式は他地域においても、関数モデルと実現象との整合性に大きな差がなく汎用的であることが確認できた。これによって、災害データが存在しない地域であっても、他地域のロジスティック回帰分析を用いた関数を適用することで危険度評価を行えることが示せた。
【0051】
【表3】

【0052】
以上の実施例1によって、ロジスティック回帰により降雨に災害発生確率という概念を与えることができ、降雨の危険性をより的確に表現することが可能となったことを説明した。
しかし、警戒避難情報の発令を行うためには、発表をどのタイミングで行うか基準となるライン(CL)が必要となる。従来のシステムではRBFN値を基にCLを設定して運用しているが、RBFN値は、前述のとおりその値自体が災害発生の危険性を意味するものではない。そのため、行政担当者や住民にとってCLが持つRBFN値の意味合いが理解されづらいものとなっている。
【実施例2】
【0053】
そこで、実施例2では、ロジスティック回帰により求めた式(6)の説明変数xに、CLのRBFN値を代入し、災害発生確率P(x)を算出する。これにより、CLに災害発生確率という意味合いを持たせることが可能となる。ここでは、RBFN値0.1毎に対する災害発生確率P(x)を算出し、その結果を表4に示す。また、これを図に表したものを図12に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
図12に示されるように、CLに対して災害発生確率P(x)を算出することにより、CLが危険度を表すようになり、避難情報として住民にとって理解しやすい情報となった。また、CLの設定時においては、災害発生の危険性を考慮できることから、行政側にとっても有用な情報となる。
次に、CL超過確率関数について構築する。災害が起こる前にその危険性を知ることや避難準備のための情報提供は極めて重要である。従来の運用においては降水ナウキャストや降水短時間予報データである予測雨量の精度は向上しているものの、避難準備情報としての信頼性に欠ける点が挙げられる。
そこで、実況雨量データを用いることで、ロジスティック回帰分析によるCL超過関数を用いて時々刻々と変化する自然災害に対する危険性を予測するシステムあるいはプログラムとしての成立性について検討した。
実施例2では、経時変化の時間間隔としてまず1時間を考え、1時間後のCL超過確率関数の構築を行った。但し、1時間後に超過する場合のみならず、例えばn時間(nは正数)経過後にCL超過する場合の確率関数としてもよい。具体的には、2時間後や3時間後の他、2.7時間後などでもよい。
学習地域においては既往の研究により、RBFN値0.7のCLが最も精度がよいとされている。このCLを超過する確率を予測するための関数を構築する。
構築にあたってはCL(0.7)の超過後に災害が発生した11降雨を検討の対象降雨として抽出し、どのような雨量であれば次の時間にCLを超過し易いのかということに着目して、超過1時間前までのRBFN値を説明変数xとして超過予測回帰関数を構築した。1時間後のCL超過確率π(x)を表す回帰式を式(8)に示す。
【0056】
【数8】

【0057】
この式(8)によって示される関数は、実施例1と同様に、関数分析部3の回帰分析部11において、第1データベース4から回帰関数データ14を読み出すが、この回帰関数データ14が先の式(4)なる関数をあらわすデータである。また、これに対して、第1データベース4から読み出したRBFN値学習データ12からCL超過1時間前までのRBFN値を、基準線超過学習データ13bからCL超過の有無をそれぞれ読み出してロジスティック回帰分析を実施するのである。
このロジスティック回帰分析によって得られた関数を用いることで、任意の時刻のRBFN値に対する1時間後のCL超過確率π(x)を算出できる。また、図13にはCL(0.7)の内側に、1時間後のCL超過確率π(x)=10%(内側)〜90%(外側)のラインを示す。この超過予測のラインを利用することで、降雨中の任意の時刻において、1時間後にはどのくらいCLを突破する確率があるかを判定できる。表5にはCL超過の予測結果をまとめているが、実際に、1時間後のCL超過確率π(x)の上位4降雨(降雨番号4,5,9,14)はCL超過1時間前から1時間後のCL超過確率π(x)が60%以上と高い値を示しており、CLを超過する可能性が高いことを示している。このことからCLの超過予測に対応したモデルを構築することができたと言える。
【0058】
なお、実施例1と同様に、回帰分析部11において得られた式(8)の関数は、回帰分析部11によって、基準線超過確率関数係数データ(ここでは1時間後のCL超過確率関数係数データ)21として第2データベース7に読み出し可能に格納される。また、第2解析部6の解析関数設定部17によって読み出され、基準線超過確率演算部(ここではCL超過確率演算部)18は、第2データベース7から災害発生確率を評価する地域における観測・点検データ19を読み出して、1時間後のCL超過確率π(x)を演算して、第2データベース7に基準線超過確率データ(ここでは1時間後のCL超過確率データ)23として読み出し可能に格納する。
【0059】
【表5】

【0060】
以上の実施例2の説明では、CL超過前までの任意の時刻における1時間後のCL超過確率π(x)を求めることができた。しかし、検討の対象となる11降雨の中で、7降雨は超過の1時間前の降雨が弱かったため1時間後のCL超過確率π(x)が低いにも関わらず急激な降雨により超過していることが分かる。超過予測回帰関数は、従来の降雨強度を基に1時間後のCL超過確率π(x)を算出する関数であるため、弱い降雨から急激に超過する降雨に対応できないという問題点が浮上した。そこで、本願発明者は、10分間雨量データを用い、より詳細な降雨強度の変動に対し1時間後のCL超過確率π(x)を算出することで急激な降雨変化に対する超過予測が可能だと考えるに至った。
入手できた10分間雨量は2002年後半〜2005年前半のデータのため、対象とする降雨は、表5の中の降雨番号8〜15の降雨であり、9,14はすでに1時間後のCL超過確率π(x)が高い値を示していたため、検討からは除外した。10分間雨量を用いて60分間の積算雨量とRBFN値を10分更新で求め、超過予測モデルにより任意の時刻での1時間後のCL超過確率π(x)を算出した。結果を表6に示す。
【0061】
表6に示すように、検討対象降雨5件中、CL超過前に1時間後のCL超過確率π(x)が高い値を示したのは降雨番号11,15の2件であり、降雨番号11では72.8%、15では98.7%を示している。また、降雨番号8,12に関しては、表5における正時の検討では14.1%,2.3%だったものが、降雨番号8では43.7%,12では19.8%まで確率値が上昇していることが分かる。このことより、10分間雨量を用いることで、より詳細にCL超過の可能性を捉えることが可能になり、CL超過予測手法として十分実用的であることが確認できた。
【0062】
【表6】

【0063】
ロジスティック回帰分析を行い、災害発生確率関数モデル(式(6))と1時間後のCL超過確率関数モデル(式(8))を作成した。ここでは、2003年8月8日17時に開始した実際の降雨を用いて、毎時の災害発生確率P(x)と1時間後のCL超過確率π(x)とをハイエトグラフに重ね確率値の変動を図示し、運用上どのように利用できるかを確認する。変動の結果を図14に示す。
図14の右側の縦軸が確率値を示しており、左側の縦軸は60分間積算雨量(mm/hr)を示している。また、横軸は時間を示している。なお、表4より、CL(0.7)超過は災害発生確率P(x)が36.0%より大きくなった時点とみなすことができる。
このような変動の結果をまとめる作用は評価部8が有している。評価部8では、評価用しきい値データ24と災害発生確率データ22あるいは基準線超過確率データ(ここでは1時間後のCL超過確率データ)23と比較することで評価を行うが、それだけでなく、時系列に沿って第2データベース7に蓄積される災害発生確率データ22や基準線超過確率データ(ここでは1時間後のCL超過確率データ)23のいずれか一方、あるいは両方を時系列で表示可能なように調整し、それぞれのピーク時にデータ取得時間や災害発生確率や1時間後のCL超過確率π(x)のデジタル値を示すように調整することも可能である。また、これら災害発生確率データ22や基準線超過確率データ(ここでは1時間後のCL超過確率データ)23と、観測・点検データ19に含まれるデータも同じ時系列上に表示可能としてもよいし、災害の発生の有無に関する情報が得られた場合には、災害発生有無に関する情報も同じ時系列上に表示するようにしてもよい。
【0064】
このように災害発生確率データ22や基準線超過確率データ(ここでは1時間後のCL超過確率データ)23について、時系列上で表示可能に評価部8によって調整されることで、時々刻々と変化する災害発生の危険性とCL超過の可能性について、確率という定量的な数値で表現可能であり、利用者に対して避難勧告(や避難指示)などの対応策を時間遅れなく実行することができるのである。
8月9日の21時に注目してみると、まとまった降雨により災害発生確率P(x)は19.0%まで上昇し、1時間後のCL超過確率π(x)は50.0%まで上昇した。しかし、この後降雨は一旦落ち着くため、1時間後のCL超過確率π(x)は低下するが、災害発生確率P(x)はこれまでのRBFN値のピーク値を参照するため19.0%を維持したままである。
8月12日7時の時点で、降雨は再びCLに接近し、災害発生確率P(x)は33.1%、1時間後のCL超過確率π(x)は97.6%を示す。このことから現状はまだ土砂災害の災害発生確率は低いが、1時間後にCLを超過する可能性は非常に高く、警戒すべき状況であることが判断できる。実際にこの1時間後である8時に降雨はCLを超過、災害発生確率P(x)は77.1%まで上昇し、CL超過時刻に1件、2時間後の同日10時に災害は2件発生し、その後降雨は終息に向かった。
このように、ロジスティック回帰分析を行うことで自然災害発生やCL超過の可能性の毎時の変動を確率値という直接的かつ客観的に危険度を意味する指標で表現でき、的確で理解しやすい警戒避難情報の発信が可能となると考えられる。
また、本実施例においては、他地域のデータを用いて構築した関数モデルを用いることも可能とする汎用性が確認できたため、より広範な地域において災害発生確率と1時間後のCL超過確率π(x)の評価を実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
自治体や防災センターなど公的な機関における防災計画や災害予防に関する計画の立案業務や避難警報を発令する部門など幅広い用途がある。また、教育機関などにおいて災害の未然防止や避難訓練用の教材としても活用が見込まれ、さらに、建設・土木事業を営む私企業においても、防災事業や維持管理事業のニーズ掘り起こしや事業提案のためのツール、あるいは公的機関との連携を図るための共有ツールとして活用が可能であり、企業の防災技術や維持管理技術に関する研究開発や設計事業などの用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…災害発生確率評価システム 2…入力部 3…関数分析部 4…第1データベース 5…第1解析部 6…第2解析部 7…第2データベース 8…評価部 9…出力部 10…解析条件設定部 11…回帰分析部 12…RBFN値学習データ 13a…災害発生学習データ 13b…基準線超過学習データ 14…回帰関数データ 15…解析関数設定部 16…災害発生確率演算部 17…解析関数設定部 18…基準線超過確率演算部 19…観測・点検データ 20…災害発生確率関数係数データ 21…基準線超過確率関数係数データ 22…災害発生確率データ 23…基準線超過確率データ 24…評価用しきい値データ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて解析されたRBFN値をRBFN値学習データとして、前記災害発生学習データと前記RBFN値学習データとを用いて、前記RBFN値に対する災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数を回帰分析する関数分析部と、
この関数分析部で得られた前記災害発生確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記災害発生確率関数に前記観測データを入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算部と、
を有することを特徴とする災害発生確率評価システム。
【請求項2】
前記災害発生確率と予め定めた少なくとも1つの評価用しきい値を比較して、前記評価用しきい値に対応させた評価を前記災害発生確率に対応する評価として選択抽出する評価部を有することを特徴とする請求項1記載の災害発生確率評価システム。
【請求項3】
災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する予め定められた災害発生基準線の超過の有無に関する学習データとを基準線超過学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて解析されたRBFN値をRBFN値学習データとして、前記基準線超過学習データと前記RBFN値学習データとを用いて、前記RBFN値に対する前記災害発生基準線の超過確率を演算するための基準線超過確率関数を回帰分析する関数分析部と、
この関数分析部で得られた前記基準線超過確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記基準線超過確率関数に前記観測データを入力して基準線超過確率を演算する基準線超過確率演算部と、
を有することを特徴とする災害発生確率評価システム。
【請求項4】
前記基準線超過確率と予め定めた少なくとも1つの評価用しきい値を比較して、前記評価用しきい値に対応させた評価を前記基準線超過確率に対応する評価として選択抽出する評価部を有することを特徴とする請求項3記載の災害発生確率評価システム。
【請求項5】
前記関数分析部は、前記災害発生確率関数に加えて、前記観測学習データと、前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する予め定められた災害発生基準線の超過の有無に関する学習データとを基準線超過学習データとし、前記基準線超過学習データと前記RBFN値学習データを用いて前記RBFN値に対する前記災害発生基準線の超過確率を演算するための基準線超過確率関数を回帰分析する関数分析部であって、
この関数分析部で得られた前記基準線超過確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記基準線超過確率関数に前記観測データを入力して基準線超過確率を演算する基準線超過確率演算部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の災害発生確率評価システム。
【請求項6】
前記災害発生確率と予め定めた少なくとも1つの第1の評価用しきい値を比較して、前記第1の評価用しきい値に対応させた評価を前記災害発生確率に対応する第1の評価として選択抽出し、前記基準線超過確率と予め定めた少なくとも1つの第2の評価用しきい値を比較して、前記第2の評価用しきい値に対応させた評価を前記基準線超過確率に対応する第2の評価として選択抽出する評価部を有することを特徴とする請求項5記載の災害発生確率評価システム。
【請求項7】
コンピュータによって、災害発生確率を演算するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて解析されたRBFN値をRBFN値学習データとして、前記災害発生学習データと前記RBFN値学習データとを用いて、前記RBFN値に対する災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数を回帰分析する関数モデル分析工程と、
この関数モデル分析工程で得られた前記災害発生確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記災害発生確率関数に前記観測データを入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算工程と
を実行させることを特徴とする災害発生確率評価プログラム。
【請求項8】
コンピュータによって、災害発生確率及び基準線超過確率を演算するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて解析されたRBFN値をRBFN値学習データとして、前記災害発生学習データと前記RBFN値学習データとを用いて、前記RBFN値に対する災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数を回帰分析する第1の関数モデル分析工程と、
前記観測学習データと、前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する予め定められた災害発生基準線の超過の有無に関する学習データとを基準線超過学習データとし、前記基準線超過学習データと前記RBFN値学習データを用いて前記RBFN値に対する前記災害発生基準線の超過確率を演算するための基準線超過確率関数を回帰分析する第2の関数モデル分析工程と、
前記第1の関数モデル分析工程で得られた前記災害発生確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記災害発生確率関数に前記観測データを入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算工程と、
前記第2の関数モデル分析工程で得られた前記基準線超過確率関数と、前記災害の発生要因毎に観測される観測データとを読み出して、前記基準線超過確率関数に前記観測データを入力して基準線超過確率を演算する基準線超過確率演算工程と、
を実行させることを特徴とする災害発生確率評価プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−271877(P2010−271877A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122624(P2009−122624)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【出願人】(396007890)大日本コンサルタント株式会社 (9)
【出願人】(594162308)西日本技術開発株式会社 (16)
【出願人】(591260672)中電技術コンサルタント株式会社 (58)
【出願人】(598154947)株式会社 エイト日本技術開発 (16)
【出願人】(592250698)株式会社四電技術コンサルタント (15)
【出願人】(592000886)八千代エンジニヤリング株式会社 (16)
【出願人】(508142734)株式会社北海道技術コンサルタント (5)
【Fターム(参考)】