説明

炊き込みご飯用調味料

【課題】
簡単に調理が可能で、炊飯後の彩り、風味、ご飯のほぐれ性について改善された炒飯様の炊き込みご飯を作ることができる炊き込みご飯用調味料を提供することにある。
【解決手段】
生米150g(米1合相当)あたり4〜14gの食用油脂を含有させ、生米と共に炊飯した後、生卵を加え炊飯器の保温熱により生卵のたん白質を変性させて混ぜ合わすことを特徴とする炊き込みご飯用調味料を用いることで、彩り、風味、ご飯のほぐれ性について改善された炒飯様の炊き込みご飯を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊き込みご飯用調味料に関するものであって、生米と共に炊き上げた後、生卵を表面に流し込み炊飯器の保温熱でたん白質を変性させ、ご飯と混ぜ合わせて喫食することを特徴とし、炊飯後の彩り、風味、ご飯のほぐれ性を改善するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、核家族化や女性の社会進出にともない、家庭での調理は簡便であることが求められている。こうした時代背景から生まれた炊き込みご飯用調味料は、非常に手間がかかる炊き込みご飯を炊飯器で生米と共に炊き上げるだけで簡便に調理することができる。市場の炊き込みご飯用調味料では液体調味料に予め処理された具が含まれる、または別に添付されているものが多く、レトルト食品、チルド食品など形態も多岐に渡っている。
【0003】
一方、家庭での食事メニューは多様化しており、炊き込みご飯用調味料についても従来の和風メニュー以外に洋風、中華風など多岐に渡り販売されるようになった。その中には中華風のカテゴリーにあたる炒飯タイプのものが存在する。実際に家庭で炒飯を調理すると、米の炊飯、具材の用意、味付け、フライパンでの炒めが必要となるため手間がかかり、かつ一度に調理可能な量は限られるため、家族の人数分となる2合以上の量を調理するのは非常に困難である。そのため、簡便に調理ができる炒飯タイプの炊き込みご飯用調味料は大変期待されるものであった。
【0004】
ところが炊飯器による調理では、米を炒めるという実際の調理法とは異なるため、炒飯として好ましい風味やご飯のぱらりとした食感を再現することは難しい。また炒飯の特徴である本来の卵の風味、彩りを加えるには、調味料を加えて炊飯することで完結する従来のタイプの炊き込みご飯用調味料では困難であった。
【0005】
このような問題を解決するために以下のような方法が提案されている。例えば炊飯によりピラフや炒飯を作ることが可能な炊き込みご飯用乳化調味料として特公平5−60336(特許文献1)が開示されている。しかしながら炊飯時のご飯のほぐれ性、釜からの離型性と焦げ防止の効果はあるものの、炒飯として好ましい具材である卵の風味、彩りを加えるまでには至らなかった。
【0006】
また炒飯用飯の炊飯方法として卵液を加えて炊飯することで、ほぐれ性を持つご飯が得られ、炒め調理をすることで卵の風味を有する炒飯となる技術として特公第4085591(特許文献2)が開示されている。しかしながら炊飯後に炒め工程を経て炒飯を仕上げることが必要なため簡便性を欠き、卵の風味は得られるものの具材として存在感を出すには不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5−60336号公報
【特許文献2】特許第4085591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、簡単に調理が可能で、炊飯後の彩り、風味、ご飯のほぐれ性について改善された炒飯様の炊き込みご飯が得られる炊き込みご飯用調味料を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、生米150g(1合相当)あたり4〜14gの食用油脂を含有させ、生米と共に炊飯した後、生卵を加え炊飯器の保温熱により生卵のたん白質を変性させて混ぜ合わすことを特徴とする炊き込みご飯用調味料を見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単に調理が可能で、炊飯後の彩りと風味、ご飯のほぐれ性について改善された炒飯様の仕上がりとなる炊き込みご飯用調味料を提供することができる。さらに、本発明を用いることによって、炒飯以外にも卵を用いた、ご飯のほぐれ性を要するようなメニューに対して展開が可能になり、炊き込みご飯として幅広い製品の提供が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の炊き込みご飯用調味料は生米と共に炊飯器で炊き上げ、その後、生卵をご飯の上に満遍なく掛け、再び蓋を閉め保温熱により生卵のたん白質を変性させ、ご飯と混ぜ合わす。このとき、卵を溶いて加えることで仕上がり時に本格的な炒飯の外観が得られることを特徴とする。
【0012】
形態は具材部、調味料部、食用油脂部の3部材が一体であっても、具材部、調味料部、食用油脂部のうち2部材が一体であっても、3部材が別々に分けられていても良い。3部材が一体になった調味料の場合、調味料を加えた後、炊飯器の目盛りなどを用いて水分量を合わせると具材の分だけ炊飯に必要な水が足りなくなり、ご飯の仕上がりが硬くなる可能性がある。よって炊飯に必要な量を加水した後、加えることが好ましい。一方、別々の部材からなる場合は調味料部や食用油脂部を加えて通常必要な水量に合わせた後、具材部を加えて炊飯することが可能である。
【0013】
調味料部は一般的な調味料で構成される。例えば塩、砂糖、しょうゆ、みりん、食酢、ソース、香辛料、旨み調味料、エキス類、油脂類、またはこれらに準じる調味料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。生米とともに炊飯器で炊き上がった状態で好ましい風味を呈していればよく、濃さや粘度も特に限定はされるものではない。また調味料の性状は液状、顆粒または粉末状のいずれでも良い。
【0014】
調味料部が液状である場合は、炊き上げた状態で水分のべたつきを感じない程度の量であることが好ましい。一般的に炊飯時に適した水分量は生米150g(1合相当)あたり165〜210gとされており、調味料部の液体量が多くなることで、炊飯後のご飯にべたつきが生じ、炒飯様の仕上がりとは異なったものとなってしまう。一方、本発明の調味料を用いた場合では、具材部、調味料部、食用油脂部の3部材が一体となったタイプの調味料、部材が分けられたタイプの調味料のどちらであっても炊飯全体で使用される水を含めた液体量は、生米150gあたり165〜237.5gまでが炒飯様として好ましい。
【0015】
具材部は野菜、果物、肉類、魚介類から選ばれ、これらが単一もしくは複合して存在しても良いし、必要に応じてカットされて、調味もしくは、焼成、煮熟などの調理やカルシウム硬化処理などの下処理の工程を経ているものであっても良い。
【0016】
炊き込みご飯用調味料に含有される食用油脂の量は、生卵を加えることで生卵に油が吸着しご飯のほぐれ性が弱まるため、それを考慮した上で生米150g(1合相当)あたり4〜14gの範囲が好ましい。食用油脂の量が4g未満であれば、炊飯後、ご飯全体に行き渡らず、炒飯様としてはご飯のほぐれ性が不十分となる。また14gを超えるとご飯のほぐれ性は十分であるが、油でべたつき、食感が好ましくない。
【0017】
ここでいう食用油脂とは植物性油脂、動物性油脂のどちらでも良く、両方をブレンドして用いることも可能である。また、食用油脂の一部に葱油、ガーリックオイル、その他風味を増強させるような香味油などを用いることで炒飯として好ましい風味を付与することも可能である。食用油脂に乳化剤を添加し、炊飯後のご飯へ均一に分散付着させることも可能であるが、無添加食品のイメージや風味を優先させて、乳化剤を使用しなくても良い。
【0018】
本発明の炊き込みご飯用調味料は生米と共に炊き上げた後、生卵をご飯の上に満遍なく掛け、再び蓋を閉め保温熱により十分に生卵のたん白質を変性させてから、ご飯と混ぜ合わせて喫食する。このとき保温熱が十分に得られやすい炊飯直後に生卵を加えることが好ましい。少なくとも炊き上がってから30分以内で加え、保温熱で変性させる時間も5分以上確保することが好ましい。これを下回ると十分にたん白質が変性しない可能性がある。また、予め生卵の白身と黄身を崩してよく混ぜ合わせておくことでたん白質を変性させやすい他、仕上がり時に炒飯として好ましい薄黄色の色彩を得やすくなる。加える生卵は生米300g(2合相当)の炊飯の場合、鶏卵のおよそ1個分である40〜65gが適当であり、これを超える量では保温熱で十分にたん白質が変性せず、半熟の状態で残り、最終的に炒飯として好ましい色彩や外観を得られない可能性がある。また、これを下回る場合は炒飯様の風味、色彩を十分に得ることができない。
【0019】
本発明の炊き込みご飯用調味料の殺菌方法については特に限定されるものではないが、具材を含む調味料で長期常温保存を可能とする場合は加圧加熱殺菌が望ましい。加圧加熱殺菌は一般的には100〜140℃、3〜120分で、容器が破損しない範囲で任意に加圧を制御し、必要十分な殺菌価を得られるように行う。
【実施例】
【0020】
ここでの官能評価は炊飯調理品について熟達している研究者5名による評価を総合したものである。また全ての実施例で使用した炊飯器は象印マホービン株式会社製「IH炊飯ジャー NP−HBD10E3型」である。
【0021】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0022】
(実施例1) 生卵を加えた場合の食用油脂適正量の評価
表1に示した配合に異なる量の米油(表2の比較例1、比較例2、実施例1−1から1−5の上部より2段目に示す)を添加し、加圧加熱殺菌したものを生米300g(2合相当)用の炊き込みご飯用調味料とした。生米300g、水405gと合わせて炊飯した後、鶏卵を溶いたものを50g加え、炊飯器の保温熱により溶き卵のたん白質を変性させ、十分に混ぜ合わせて官能評価を行った。生卵なしの区分では炊飯後生卵を加えずにそのまま評価した。評価項目は炒飯の特徴であるご飯のほぐれ性、食したときの油によるべたつき具合の好ましさ、炒飯としての風味の好ましさの3点とし、その3点をふまえて総合的な品質評価を行った。評価結果は表2に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
比較例1、比較例2、実施例1−1から実施例1−5まで油量を変化させていったが、生米150gあたりで油量3gを添加し、生卵を加えて評価した場合はご飯のべたつきはなかったものの、ご飯のほぐれ性に欠け、炒飯としての油の風味も物足りないものであった。また生卵の添加の有無にかかわらず生米150gあたりで油量15gを添加した場合では、ご飯のほぐれ性は十分であったが、ご飯のべたつきが激しく炒飯様としては好ましくないという評価であった。
【0026】
生卵を加えた場合にご飯のほぐれ性を出すには、加えない場合よりも食用油脂を多く添加する必要があることがわかった。生米150gあたりで油量3gでも生卵を加えない場合は、ご飯のほぐれ性があるが、生卵を加えた場合ではそれが失われ炒飯様とは異なる状態となった。また生卵を加えることで炒飯様の風味が増し、美味しくなった。
【0027】
従って、生卵を加え仕上げる場合は、含有させる最適な油量を生米150gあたり4〜14gとすることで、調味料とともに炊飯後、好ましいご飯のほぐれ性を有し、風味も良い炒飯様の仕上がりとなり、同時に炊飯後冷めた状態でも美味しく食することができるものであった。
【0028】
(実施例2) 食用油脂の種類による評価
食用油脂の種類が異なった場合でも、実施例1で得た食用油脂の最適量の範囲に適合するか評価した。表3に示した配合に異なるラードの量(表4の実施例2−1から2−3の上部より2段目に示す)を添加し、加圧加熱殺菌したものを生米300g(2合相当)用の炊き込みご飯用調味料とし、生米300g、水405gと合わせて炊飯した後、鶏卵を溶いたものを50g加え、炊飯器の保温熱により溶き卵のたん白質を変性させ、十分に混ぜ合わせて官能評価を行った。評価項目は実施例1と同様で評価結果は表4に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
食用油脂の最適量の範囲では、ご飯のほぐれ性、べたつき具合に優れ、動物性油脂特有の濃厚な風味を有しており炒飯として好ましい品質であった。食用油脂の最適量の範囲内であれば目的の品質が得られることがわかった。この結果は表1の配合にラードを加えた場合でも同様であった。また、いずれにおいても冷めた状態で美味しく食すことができるものであった。
【0032】
(実施例3) 炊飯に必要な液部の適正量の評価
表5に示した配合で異なる量の液体調味料、食用油脂を含むように調整後、加圧加熱殺菌し、生米300g(2合相当)用の炊き込みご飯用調味料を得た。これらを用いて表6に示した具材部、液体調味料部、食用油脂部(米油)、炊飯用水、生米の配分で炊飯した。なお、加圧加熱殺菌後、具材部と液体調味料部の間で液体の移動があるため、配合時と炊飯時の具材部及び液体調味料部の重量は異なる。炊飯後、鶏卵を溶いたものを50g加え、炊飯器の保温熱により溶き卵のたん白質を変性させ、十分に混ぜ合わせた。その後、ご飯のほぐれ性が維持でき、べたつき具合が好ましい液体量について官能評価した。ここでいう液体量とは液体調味料部と炊飯用水を足したものである。評価結果は表7に記す。
【0033】
【表5】

【0034】
【表6】

【0035】
【表7】

【0036】
食用油脂が8gの場合では液体量は475gを超えたときに、食用油脂が28gの場合では液体量が485gを超えたときにご飯のほぐれ性を失い、べたつきが発生するという結果となった。従って食用油脂の最適量の範囲における好ましい液体量は475gまでであり、生米150gに対しては237.5gが炒飯様として好ましい液体量となった。また比較例1のように液体調味料部がない場合は、ご飯のほぐれ性、べたつき具合は良好であるが、やや固く仕上がり、味も具材部由来のもののみで薄味であった。
【0037】
(実施例4) 製品例
表8の配合により調整された具材部、食用油脂入り液体調味料部からなる2部材タイプの米300g(2合相当)用かに炒飯風炊き込みご飯用調味料を得た。
【0038】
【表8】

【0039】
(実施例5) 製品例
表9の配合により調整された具材部、粉末調味料部、食用油脂部からなる3部材タイプの米300g(2合相当)用かに炒飯風炊き込みご飯用調味料を得た。
【0040】
【表9】

【0041】
(実施例6) 製品例
表10の配合により調整された食用油脂入り具材部、液体調味料部からなる2部材タイプの米300g(2合相当)用かに炒飯風炊き込みご飯用調味料を得た。
【0042】
【表10】

【0043】
(実施例7) 製品例
表11の配合により調整された具入り液体調味料部、食用油脂部からなる2部材タイプの米300g(2合相当)用かに炒飯風炊き込みご飯用調味料を得た。
【0044】
【表11】

【0045】
実施例4から実施例7の配合で得た炊き込みご飯用調味料を用いて炊飯後、生卵を加え生卵のたん白質を変性させ、混ぜ合わせ官能評価したところ、いずれも彩り、風味、ご飯のほぐれ性について満足が得られるものであった。部材を分けることの利点は、その部材に適した殺菌をそれぞれ行うことが可能となり、過度な殺菌による風味劣化を防ぐことや、具材部と調味料部、食用油脂部を分けることで味の平衡化を防ぎ、素材の味を生かすことが可能なことである。一方、部材が増えることで、調理時の手間が増え、包装材料も増えることが欠点である。いずれにしても消費者のニーズに合わせた形態を採用することができる。










【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯終了直後に生卵を加えて炊飯器の保温熱によりたん白質変性させてから喫食することを特徴とする炊き込みご飯用調味料であって、食用油脂を生米150gあたり4〜14g含有する炊き込みご飯用調味料
【請求項2】
加圧加熱殺菌処理されてなる請求項1の炊き込みご飯用調味料


































【公開番号】特開2010−193844(P2010−193844A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45201(P2009−45201)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(591119370)ヤマモリ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】