説明

炊飯器

【課題】
内鍋内部に圧力が加わらない状態ではスムーズに外蓋を開閉することができ、内鍋内部に圧力が加わり、外蓋が上方へ押し上げられた状態では、外蓋が開かないようにし、安全性の向上を図る。
【解決手段】
外蓋3を本体1に開閉自在に保持するヒンジ部12と、該ヒンジ部12と反対側の外蓋3に設けられたフック10と、本体1の上枠11に設けられたフック受け部14とを有する炊飯器において、フック受け部14の少なくとも先端部に下向きに傾斜したフック受け傾斜部15を設け、フック10の先端係止部に上向きに傾斜したフック傾斜部16を設け、前記フック受け傾斜部15とフック傾斜部16の間に略水平状態となるようにリリースバネ18を介在した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内鍋内に圧力をかけて炊飯する圧力式の炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から美味しいご飯を炊き上げるために、炊飯過程の途中で内鍋内に圧力を加える炊飯器が数多く提案されている。
【0003】
このような圧力式の炊飯器では、内鍋の上面開口部を外蓋の下面に設けられた内蓋で閉塞し、内鍋内部の圧力を1気圧以上に上げて炊飯するものであり、そのために特許文献1,2,3等に示すように、炊飯中(圧力印加中)に誤って外蓋が開けられないように外蓋をロックする機構が設けられている。
【0004】
上記した特許文献1及び2に示すものは、内鍋内の圧力を調節するために外蓋内に設けられた蒸気通路の途中に弁孔を設け、この弁孔上に調圧手段である調圧ボールを載せ、内鍋内の圧力を検出する圧力制御手段の動作によって前記調圧ボールを移動させて前記弁孔を開放し、内鍋内部の圧力を調整している。そして、本体側には前記圧力制御手段と連動して内鍋内部が加圧されている時には外蓋が開かないように外蓋のフック部に係合して外蓋を開放させないようにする外蓋ロック手段を設けており、前記した圧力制御手段により調圧動作を行っているときは該圧力制御手段が外蓋ロック手段と連動して該ロック手段を前記フック部に係合させ、前記圧力制御手段が動作して調圧ボールが弁孔を開放したときは圧力制御手段が外蓋ロック手段と連動せずに動作して圧力制御手段が外蓋ロック手段を開放するものである。
【0005】
また、特許文献3に示すものは、上記特許文献1及び2と同様の構成を備え、さらに上記した外蓋のフック部を鉤形に形成して外蓋の閉塞時に外蓋ロック手段との係合を強くし、内鍋内部が加圧されている時に前記フック部がより確実にフタロック手段に喰い込み、外蓋が開かないようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−137110号公報
【特許文献2】特開2007−44223号公報
【特許文献3】特開2007−29402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来技術において、特許文献1及び特許文献2に記載されたものは、内鍋で炊飯する場合には、圧力制御手段が外蓋ロック手段と連動して該ロック手段が前記フック部と係合し、外蓋が開かないようになっており、使用者が外蓋を開こうとしても、開くことができず、安全を確保している。
【0008】
しかるに、炊飯以外の煮物等の調理に誤使用された場合には、調圧手段で圧力を加えた後、圧力制御手段により定められた適時に圧力を抜く際に調理物が調圧手段に挟まり、圧力が抜けなくなることがある。
【0009】
そして、この場合には、調理の制御上は圧力を加えていない工程であるため、外蓋ロック手段のロックが有効になっていない状態で圧力が残る状態になっており、使用者が知らずに外蓋を開ける操作をすると、内鍋内部の圧力の開放によって調理物が飛び出す恐れがあった。
【0010】
また、特許文献3に記載されたものは、外蓋のフック部を鉤形に形成して外蓋ロック手段との係合を強くし、内鍋内部が加圧されている時に前記フック部が強く外蓋ロック手段に喰い込むようになっているが、内鍋内部に加えられる圧力が1気圧以上でも比較的低い圧力の場合には、フック部が外蓋ロック手段に喰い込む力が弱く、外蓋が空いてしまう心配があり、また、フック部と外蓋ロック手段の喰い込み具合によっては逆にフック部が喰い込みすぎて炊飯完了時に外蓋がスムーズに開かないといった信頼性に欠ける欠点があった。
【0011】
さらに、調理メニューで圧力炊飯以外の煮物等の調理を行った場合には、内鍋内に圧力がかかっていない調理であるため、調理終了後にフック部と外蓋ロック手段の喰い込み強く、外蓋がスムーズに開かないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる従来の課題を解決するため本発明の請求項1では、本体内に着脱自在に収納される内鍋と、該内鍋の上部を覆う外蓋と、該外蓋に設けられた蒸気通路と、該蒸気通路に設けられ内鍋内の圧力を調整する調圧手段と、該調圧手段を動作させて前記蒸気通路を開閉制御する圧力制御手段と、前記外蓋を本体に開閉自在に保持するヒンジ部と、該ヒンジ部と反対側の外蓋に設けられたフックと、本体の上枠に設けられたフック受け部とを有する炊飯器において、前記フック受け部の少なくとも先端部に下向きに傾斜したフック受け傾斜部を設け、前記フックの先端係止部に上向きに傾斜したフック傾斜部を設け、前記フック受け傾斜部とフック傾斜部の間に略水平状態となるようにリリースバネを介在したものである。
【0013】
請求項2では、前記本体の上枠に、前記フック受け部と前記リリースバネをネジにより固定したものである。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明の請求項1によれば、内鍋内部に前記調圧手段により圧力が加わらない状態では前記リリースバネの接触面が略水平状態に保持され、前記調圧手段により内鍋内部の圧力が前記外蓋に加わると、前記リリースバネの接触面が上向きにたわんで前記フック受け部のフック受け傾斜部と前記フックのフック傾斜部の傾斜角に近い状態となるので、フック先端の回転軌跡上にフック受け傾斜部が存在し、フックが回転することができず、これによって、外蓋に圧力が加わった状態では外蓋を開くことができなくなり、炊飯制御や通電の有無に関係なく、外蓋が開かないようにロックでき、調圧手段が詰まるなどの異常時を含めて安全性が確保できる。
【0015】
一方、外蓋に調圧手段による圧力が加わっていない状態では、外蓋が上方に押される力がなく、フックの先端に加わる力も弱いので、リリースバネ当接面が水平に近い状態に位置し、フックの回転動作の軌跡上に障害となるものがないので、容易に外蓋を上方に回転でき、外蓋の開閉に支障をきたすことがない。
【0016】
また、請求項2によれば、本体の上枠の所定位置に、フック受け部とリリースバネを堅固に固定でき、フックとの係合が確実であり、かつ、その取り付けも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例について添付図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係る炊飯器の全体の縦断面図である。図2(a)は同圧力調整部の通常時の縦断面図である。図2(b)は同圧力調整部の加圧時の縦断面図である。図3は同外蓋を外した状態の分解斜視図である。図4は同外蓋フック部の拡大縦断面図である。図5は同外蓋外面部材を取り外した状態の外蓋内部の分解斜視図である。
【0019】
図において、本体1の上部前面には炊飯ボタン類21が設けられ、内部には内鍋2が着脱自在に収納されており、内鍋2の上面には外蓋3が設けられている。内鍋2はその外側底面および外側側面に配置された加熱コイル等の発熱体22により加熱される。
【0020】
外蓋3は、外蓋内面部材3aと外蓋外面部材3bで構成され、外蓋内面部材3aの上面には金属製の補強板17が一体的に固定されており、下面には内鍋2の上面開口部を塞ぐ内蓋4が着脱自在に設けられ、内蓋4の周縁部には内鍋2の上端内周縁部と接触して内鍋2内部の蒸気が漏れないようにシールするシールパッキン5が設けられている。
【0021】
内蓋4,外蓋内面部材3a、その上面の外蓋外面部材3bには、内鍋2内の密閉空間から外部への唯一の蒸気の出口となる蒸気通路20が設けられ、該蒸気通路20には後記する調圧手段6が設けられている。
【0022】
前記外蓋内面部材3aと補強板17の後部には回転軸8が設けられるとともに、本体1の上部を形成する上枠11の後部にはヒンジ部12とヒンジ軸13が設けられ、回転軸8をヒンジ軸13に挿通することにより、外蓋3を開閉自在に軸支するとともに、補強板17,ヒンジ軸13,ヒンジ部12に加わる圧力を受け止めるように構成されている。
【0023】
また、前記外蓋内面部材3aと一体の補強板17の前部には、フック軸9によって略L状のフック10が回動自在に軸支されており、一方、前記フック10と対応した上枠11の前面側には金属製のフック受け部14およびその上面を覆うフック受けカバー14aがネジ14bによって固定され、外蓋3が閉じられると前記フック10がフック受け部14に係止されて、外蓋3に加わるフック10の力をフック受け部14で受けるように構成されている。そして、前記フック軸9にはフック10を常時フック受け部14側に付勢するためのコイルバネ23が軸支されており、また本体1の上面にはコイルバネ23のバネ力に抗してフック10を外すためのフックボタン24が設けられている。
【0024】
前記フック受け部14の少なくとも係止先端部には、本体1後部のヒンジ部12から遠ざかるほど下方に向けて傾斜させたフック受け傾斜部15が設けられ、一方、フック10の先端係止部にも同方向に傾斜させたフック傾斜部16が設けられ、さらに、フック受け傾斜部15とフック傾斜部16の間には、両傾斜部の傾斜角度より水平に近い状態で保持される当接面を有する板バネ状のリリースバネ18が介在されている。このリリースバネ18は、図3に示すように、上枠11の前面側にフック受け部14とフック受けカバー14aをネジ14bによって固定するときに、両者の間に一端を挟んで固定される。但し、このリリースバネ18はフック10側にネジ等で固定してもよく、その固定位置は特に限定されない。
【0025】
一方、上記した調圧手段6は、内蓋4の略中央部に取付けた内筒6a内に設けられており、蒸気通路20を狭くして形成した内鍋2内部に通じる弁孔6bと、この弁孔6bを塞ぐ調圧ボール6cとによって構成されている。そして内鍋2内部の蒸気圧が所定圧力より高まると、その過剰な蒸気圧により調圧ボール6cが持ち上げられて弁孔6bから圧力が抜け、その圧力が所定圧力より低くなると再び調圧ボール6cが弁孔6bを塞いで蒸気圧が高まる。この繰り返しで内鍋2と内蓋4内の圧力が一定圧力に調整される。
【0026】
調圧手段6の近傍には、調圧ボール6cに対向するように圧力制御手段7が設けられており、この圧力制御手段7の動作により調圧ボール6cが弁孔6bを塞がないようにすることで(調圧ボール6cを弁孔6bを塞がない位置に移動させる)、内鍋2内の圧力を一定圧力以上に上がらないようにしている。
【0027】
本発明は以上の構成よりなり、次にその動作について説明する。
【0028】
使用者が内鍋2内に米と水を入れて本体1に収納し、外蓋3を閉めると、ヒンジ軸13を基点として回転し、外蓋3のフック10がフック受け部14に係止して外蓋3が閉まる。このとき、フック受け部14に固定されたリリースバネ18上をフック10の先端係止部に設けたフック傾斜部16の当接面が滑って嵌合し、外蓋3はスムーズに閉じられる。
【0029】
但し、この状態では、内鍋2の内部に調圧手段6による圧力が加わらない状態となっているので、図2(a)に示すようにリリースバネ18の接触面は略水平状態に保持されている。
【0030】
次に使用者が炊飯ボタン類21を操作すると、制御部(図示せず)により炊飯動作が開始され、発熱体22によって内鍋2が加熱され、やがて内部で沸騰する。このとき、圧力制御手段7は図2(b)の矢印に示すように調圧手段6から離れていて調圧手段6の調圧ボール6cが弁孔6bを塞いでおり、内鍋2内部で発生した蒸気はシールパッキン5と調圧手段6によって外部に放出されることを規制され、内鍋2内部の圧力が高まる。やがて内鍋2の内部の圧力が上昇して調圧手段6の動作圧力まで高まると、その過剰な蒸気圧により調圧ボール6cが持ち上げられて移動し弁孔6bを開放して内鍋2内部の蒸気が弁孔6bから外蓋3内の蒸気通路20を通して外部に放出され、内鍋2内部の圧力がやや下がる。そして、その圧力が所定圧力より低くなると、調圧ボール6cが元に戻り、弁孔6bを塞ぐ。すると、内鍋2の内部の蒸気は継続的に発生しているので再び圧力が高まる。これを繰り返すことによって調圧手段6の動作圧力近傍で圧力が調圧され、この圧力による沸点の上昇によって高温度で美味な炊飯が行われる。
【0031】
この間、上記したように、圧力制御手段7が調圧手段6から離れて調圧ボール6cが元に戻り、弁孔6bを塞ぐ圧力が加わった状態では、外蓋3は100kg程度の力で上方に押し上げられている。このため、フック受け傾斜部15の先端とリリースバネ18との間に加わる力でリリースバネ18が図2(b)に示すようにフック受け傾斜部15の傾斜角に近い状態となるまでたわみ、リリースバネ18とフック傾斜部16は隙間なく密着する。そして、フック10の先端の回転軌跡上にフック受け傾斜部15の先端が存在し、フック10が回転することができなくなり、外蓋3を開くことが不可能になる。
【0032】
炊飯が終了して、蒸らしに移行すると、図2(a)に示すように、圧力制御手段7によって調圧手段6の調圧ボール6cが押されて弁孔6bが開き、蒸気通路20を通して内鍋2の内部と外気が連通状態となり、内鍋2の内部の蒸気が抜かれ、圧力は大気圧相当となる。
【0033】
やがて蒸らしも終了して炊飯が完了すると、使用者がフックボタン24を解除して外蓋3を開ける操作をする。このとき、リリースバネ18の当接面は略水平状態に戻り、フック10の先端のフック傾斜部16がリリースバネ18の当接面を滑って開く。フック10は、回転動作の軌跡上に障害となるものがないので容易に回転でき、外蓋3を開くのに支障をきたすことがない。
【0034】
以上のように、本発明は、フック受け部14の少なくとも先端部に下向きに傾斜したフック受け傾斜部15を設け、フック10の先端係止部に上向きに傾斜したフック傾斜部16を設け、前記フック受け傾斜部15とフック傾斜部16の間に略水平状態となるようにリリースバネ18を介在したので、調圧手段6によって内鍋2内に加わる蒸気圧で外蓋3が上方に力を受ける状態では、リリースバネ18の当接面がたわんでフック受け傾斜部15とフック傾斜部16の両傾斜部の傾斜角に近い状態となるので、フック10の先端の回転軌跡上にフック受け傾斜部15が存在し、フック10が回転することができず、これによって外蓋3を開くことが不可能になり、安全性が確保できる。
【0035】
一方、外蓋3に調圧手段6による圧力が加わっていない状態では、外蓋3が上方に押される力がなく、フック10の先端に加わる力も弱いので、リリースバネ18の当接面が水平に近い状態に位置し、フック10の回転動作の軌跡上に障害となるものがないので、容易に外蓋3を上方に回転でき、外蓋3の開閉に支障をきたすことがないものである。
【0036】
従って、内鍋2内に圧力がかからない通常は容易に外蓋3を開閉することができ、内鍋2内に圧力が加わった状態では外蓋3を開くことができないので、調圧手段が詰まるなどの異常時を含めて安全が確保できる。
【0037】
また、フック10と係合するフック受け部14とリリースバネ18をネジ14bにより本体1の上枠11に固定しているので、フック受け部14とリリースバネ18を所定位置に堅固に固定でき、フック10との係合が確実であり、かつ、その取り付けも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る炊飯器の全体の縦断面図である。
【図2】(a)は同圧力調整部の通常時の縦断面図である。(b)は同圧力調整部の加圧時の縦断面図である。
【図3】同外蓋を外した状態の分解斜視図である。
【図4】同外蓋フック部の拡大縦断面図である。
【図5】同外蓋外面部材を取り外した状態の外蓋内部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 本体
2 内鍋
3 外蓋
3a 外蓋内面部材
3b 外蓋外面部材
6 調圧手段
6a 内筒
6b 弁孔
6c 調圧ボール
7 圧力制御手段
10 フック
11 上枠
12 ヒンジ部
14 フック受け部
15 フック受け傾斜部
16 フック傾斜部
17 補強板
18 リリースバネ
20 蒸気通路
24 フックボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に着脱自在に収納される内鍋と、該内鍋の上部を覆う外蓋と、該外蓋に設けられた蒸気通路と、該蒸気通路に設けられ内鍋内の圧力を調整する調圧手段と、該調圧手段を動作させて前記蒸気通路を開閉制御する圧力制御手段と、前記外蓋を本体に開閉自在に保持するヒンジ部と、該ヒンジ部と反対側の外蓋に設けられたフックと、本体の上枠に設けられたフック受け部とを有する炊飯器において、前記フック受け部の少なくとも先端部に下向きに傾斜したフック受け傾斜部を設け、前記フックの先端係止部に上向きに傾斜したフック傾斜部を設け、前記フック受け傾斜部とフック傾斜部の間に略水平状態となるようにリリースバネを介在したことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記本体の上枠に、前記フック受け部と前記リリースバネをネジにより固定したことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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