説明

炊飯器

【課題】発芽工程における加熱時間設定及び温度設定を考慮することなく、光を照射することで玄米又は胚芽米を発芽させることができる炊飯器100を提供する。
【解決手段】水及び玄米又は胚芽米を含む炊飯物を収容する鍋2と、前記鍋2を着脱自在に収納する収納部31及び前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱部32を有する炊飯器本体3と、前記炊飯器本体3に設けられ、前記鍋2の開口部2aを塞ぐ蓋体4と、前記蓋体4から前記鍋2内の玄米又は胚芽米を発芽させる発芽用光を照射する光照射部5と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄米を発芽させる機能を有する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、玄米又は胚芽米を発芽させて、引き続き炊飯することができる炊飯器としては、特許文献1又は特許文献2に示すように、炊飯工程前に、玄米又は胚芽米を所定時間、所定温度に加熱して発芽させる発芽工程を設け、該発芽工程の後に炊飯工程を引き続いて実行するものが考えられている。
【0003】
しかしながら、玄米又は胚芽米を十分に発芽させるためには、発芽工程の加熱時間設定及び温度設定が難しいという問題がある。
【特許文献1】特許第3484391号公報
【特許文献2】特開2005−253647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、発芽工程における加熱時間設定及び温度設定を考慮することなく、光を照射することで玄米又は胚芽米を発芽させることができる炊飯器を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明に係る炊飯器は、水及び玄米又は胚芽米を含む炊飯物を収容する鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する収納部及び前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱部を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体に設けられ、前記鍋の開口部を塞ぐ蓋体と、前記蓋体から前記鍋内の玄米又は胚芽米を発芽させる発芽用光を照射する光照射部と、を具備することを特徴とする。
【0006】
このようなものであれば、発芽工程における加熱時間設定及び温度設定を考慮することなく、光を照射することで玄米又は胚芽米を発芽させることができる炊飯器を提供することができる。また、光照射部を蓋体に取り付けているので、玄米又は胚芽米が収容された鍋に対して上方から光を照射することになり、鍋内の玄米又は胚芽米に効率よく光を照射することができる。また、蓋体が汚れた場合には通常通り洗浄することになるが、光照射部が蓋体に取り付けているので、光照射部が汚れた場合にも、通常の蓋体の洗浄と同様に洗浄を簡単に行うことができる。このとき、蓋体が炊飯器本体から着脱可能なものであれば、より一層洗浄作業を簡単にすることができる。
【0007】
光照射部の具体的な実施の態様としては、前記蓋体が、前記鍋の開口部を塞ぐ面に光を透過する光透過部を有し、前記光照射部が、前記蓋体の内部に設けられ、前記光透過部に向かって光を照射する複数のLEDを備えることが考えられる。このとき、炊飯時における発熱によるLEDの熱劣化を考慮すると、前記光透過部が耐熱材料から形成されていることが望ましい。これならば、光透過部が汚れた場合には通常の蓋体の洗浄作業により光透過部を洗浄することができ、光照射部であるLEDの光を十分に玄米又は胚芽米に照射することができる。
【0008】
LEDの熱劣化を好適に防止するためには、前記蓋体が、前記鍋の開口部を塞ぐ面に光を透過する光透過部を有し、前記光照射部が、前記蓋体外に設けられた複数のLEDと、当該LEDからの光を前記蓋体内に導き、前記光透過部を介して前記鍋内の玄米又は胚芽米に光を照射する光ファイバと、を備えることが望ましい。
【0009】
光透過部への光の照射の具体的な実施の態様としては、前記光ファイバが、前記LEDからの光を一端部から導入し、他端部が蓋体内に設けられ、当該他端部から前記光透過部に向かって光を照射するものであることが望ましい。
【0010】
光ファイバの本数を削減するとともに、光を十分に照射するためには、前記光ファイバが、前記蓋体内において前記光透過部に沿って設けられ、前記光透過部を向く側面に複数の切り欠き部を有し、当該切り欠き部から前記光透過部に向かって光を照射するものであることが望ましい。
【0011】
光ファイバへ十分に光を導入して、玄米又は胚芽米に十分に光を照射するためには、前記光ファイバの両端部からLEDからの光を導入するものであることが望ましい。
【0012】
光照射部のその他の具体的な実施の態様としては、前記光照射部が、前記蓋体外に設けられた複数のLEDと、当該LEDからの光を前記蓋体内に導き、前記鍋の開口部を塞ぐ面から前記鍋内の玄米又は胚芽米に光を照射する光ファイバと、を備え、前記光ファイバの光を射出する光射出部が、前記鍋の開口部を塞ぐ面に設けられていることが望ましい。このとき、洗浄の簡単化を考えると、光射出部が前記鍋の開口部を塞ぐ面に略面一に設けられていることが望ましい。
【0013】
炊飯器の具体的な作用としては、前記LEDからの光を玄米又は胚芽米に所定時間照射して当該玄米又は胚芽米を発芽させる発芽工程の後、自動的に前記炊飯物を加熱する炊飯工程に入ることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、発芽工程における加熱時間設定及び温度設定を考慮することなく、光を照射することで玄米又は胚芽米を発芽させることができる炊飯器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る炊飯器100について図面を参照して説明する。なお、図1は本実施形態に係る炊飯器100の構成を示す断面図、図2は鍋2の開口部2aを塞ぐ面41の光透過部42を示す図、図3は鍋2の開口部2aを塞ぐ面41の光透過部42の変形例を示す図、図4は光ファイバ52の切り欠き部53を示す図である。
【0016】
<装置構成>
本実施形態に係る炊飯器100は、通常の白米等の炊飯機能の他に、玄米又は胚芽米の発芽機能を有するものであり、図1に示すように、水及び玄米又は胚芽米を含む炊飯物を収容する鍋2と、当該鍋2を着脱自在に収納する収納部31及び鍋2内の炊飯物を加熱する加熱部32を有する炊飯器本体3と、炊飯器本体3に設けられ、鍋2の開口部2aを塞ぐ蓋体4と、蓋体4に取り付けられて、鍋2内の玄米又は胚芽米を発芽させる発芽用光を照射する光照射部5と、を具備する。
【0017】
鍋2は、上方に開口部2aを有する有底筒状のものである。また、開口部2aには、外部に環状に突出したフランジ部2a1が形成されている。
【0018】
炊飯器本体3には、上部に開口し、鍋2よりも若干大きい凹部からなる収納部31が形成されている。この収納部31を形成する側壁及び底壁の本体内部には、鍋2を加熱して炊飯物を加熱するために加熱部32が設けられている。また、収納部31の底壁中央部には鍋2の温度を検出するための温度センサ33が設けられている。
【0019】
加熱部32は、誘導加熱コイルから構成され、収納部31を形成する側壁の周囲に巻回されてなる側壁加熱コイル32aと、底壁に沿うように巻回されて設けられた底壁加熱コイル32bを備えている。
【0020】
蓋体4は、鍋2の開口部2a及び炊飯器本体3の収納部31開口を塞ぐものであり、一端部が炊飯器本体3に回転自在に枢着され、他端部が炊飯器本体3にロック機構6により係脱自在にロックされるものである。また、蓋体4には、鍋2の開口部2a及び炊飯器本体3の収納部31開口を閉塞した状態において、鍋2のフランジ部2a1に密着するシール部材43が設けられている。さらに、蓋体4の中央部には、鍋2内の蒸気を炊飯器外部に排出するための蒸気通路44が設けられている。
【0021】
また、蓋体4は、鍋2の開口部2aを閉塞している状態において、当該鍋2の開口部2aを塞ぐ面41(例えば内蓋)に光を透過する光透過部42が形成されている。光透過部は、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等の透明耐熱樹脂又は石英ガラスから形成されている。この光透過部42の形態として本実施形態では、図2に示すように、蓋体4に設けられた蒸気通路44の周囲を取り囲むように形成された環形状をなすものである。なお、図3に示すように、蒸気通路44を取り囲むように形成された複数の円形、楕円形又は多角形形状をなすものであっても良い。なお、図3においては4つの円形状をなす光透過部42を示している。
【0022】
光照射部5は、蓋体4に取り付けられて、蓋体4が鍋2の開口部2aを閉塞している状態において、当該鍋2内の玄米又は胚芽米に発芽用光を照射するものであり、蓋体4外に設けられたLED光源51と、当該LED光源51からの光を蓋体4内に導き、光透過部42を介して鍋2内の玄米又は胚芽米に光を照射する光ファイバ52と、を備える。
【0023】
LED光源51は、RGBの光を発する複数のLED511を備えている。なお、LED光源51としては、発芽作用が大きい赤色光(波長580nm〜700nm)のみ又は赤色光の割合を多く構成しても良い。
【0024】
光ファイバ52は、蓋体4の炊飯器本体3に枢着されている部分近傍から蓋体4内部に導入されている。そして、複数の光ファイバ52は、環形状をなす光透過部42の周方向に沿って略同心円状となるように設けられている(図2参照)。そして、図4に示すように、光ファイバ52の光透過部42側の側面には、光ファイバ52内に伝達される光が外部に漏れ出る切り欠き部53が形成されている。なお、このとき、切り欠き部53を有する光ファイバ52を光透過部42に沿わせて設けることから、切り欠き部53が光透過部42を向くように設けることが難しいという問題があるが、この場合には、光ファイバ52において光透過部42の反対側に反射面を設けても良い。
【0025】
また、本実施形態では、光ファイバ52の両端部52a、52bが蓋体4外に設けられ、LED光源51に接続されている。そして、光ファイバ52の両端部からLED511の光を導入するように構成している。これならば、光ファイバ52から射出される光量を増大させることができ、これによって光ファイバ52の本数を削減することができる。
【0026】
次に、このように構成した炊飯器100の動作を説明する。
【0027】
まず発芽モード設定ボタン(不図示)を押した後、炊飯ボタン(不図示)を押すと、LED光源51からの光を玄米又は胚芽米に所定時間(例えば6時間)照射して当該玄米又は胚芽米を発芽させる発芽工程の後、自動的に炊飯物を加熱する通常の炊飯工程に切り替わる。これにより、玄米又は胚芽米を自動的に発芽させるとともに、当該発芽玄米又は発芽胚芽米を炊飯することができる。なお、発芽工程において、炊飯器100の有する保温機能を用いて、保温しながら光を照射し、玄米又は胚芽米の発芽を促すこともできる。
【0028】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る炊飯器100によれば、発芽工程における加熱時間設定及び温度設定を考慮することなく、光を照射することで玄米又は胚芽米を発芽させることができる炊飯器100を提供することができる。また、光照射部5を蓋体4に取り付けているので、玄米又は胚芽米が収容された鍋2に対して上方から光を照射することになり、鍋2内の玄米又は胚芽米に効率よく光を照射することができる。通常、発芽玄米は乾燥されたものが販売されているが、本実施形態によれば、鍋内で発芽させるので、玄米又は胚芽米からしみ出たGABA等の成分を一緒に炊き込むことができる。また、蓋体4が汚れた場合には通常通り洗浄することになるが、光照射部5が蓋体4に取り付けているので、光照射部5が汚れた場合にも、通常の蓋体4の洗浄と同様に洗浄を簡単に行うことができる。このとき、蓋体4が炊飯器本体3から着脱可能なものであり、より一層洗浄作業を簡単にすることができる。
【0029】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0030】
例えば、前記実施形態では、光ファイバ52に切り欠き部53を設けて、当該切り欠き部53から光透過部42を介して玄米又は胚芽米に光を照射するように構成しているが、その他、図5に示すように、光ファイバ52の一端部52aを蓋体4外に設けてLED光源51に接続すると共に、他端部52bを蓋体4内に設けて、当該他端部52bから光透過部42を介して玄米又は胚芽米に光を照射するように構成しても良い。この場合、図5に示すように、光透過部42上方に他端部52bを保持するための保持部材54を設けている。
【0031】
また、図6に示すように、蓋体4に光透過部42を設けることなく、光ファイバ52の光射出部(切り欠き部53がある場合は切り欠き部53又は切り欠き部53がない場合は他端部52b)を開口部2aを塞ぐ面41に設けても良い。この場合、光射出部を塞ぐ面41と略面一となるように設けることが、洗浄の観点から好ましい。
【0032】
さらに、光ファイバ52を用いることなく、複数のLED511を蓋体4内に設けて、LED511からの光を光透過部42を介して直接玄米又は胚芽米に照射するようにしても良い。このとき、LED511の熱劣化を考慮して、光透過部42を例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等の透明耐熱樹脂で形成する。
【0033】
その上、光ファイバ52の蓋体4内への導入位置として前記実施形態では、蓋体4の開閉動作を妨げないように、軸支されている部分(後端部)としているが、その他、蒸気通路44を用いて、蒸気通路44から導入するようにしても良い。このようなものであれば、蓋体4の構成を大幅に変更することなく校正することができる。
【0034】
加えて、LED光源においてLEDの光射出側前方に集光レンズを設け、光ファイバの一端部に光を集光させてLEDからの光を導入しやすくしても良い。
【0035】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る炊飯器の構成を示す断面図。
【図2】鍋の開口部を塞ぐ面の光透過部を示す図。
【図3】鍋の開口部を塞ぐ面の光透過部の変形例を示す図。
【図4】光ファイバの切り欠き部を示す図。
【図5】変形実施形態に係る炊飯器の構成を示す断面図。
【図6】変形実施形態に係る炊飯器の構成を示す断面図。
【図7】変形実施形態に係る炊飯器の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0037】
100・・・炊飯器
2 ・・・鍋
2a ・・・開口部
3 ・・・炊飯器本体
31 ・・・収納部
32 ・・・加熱部
4 ・・・蓋体
41 ・・・開口部を塞ぐ面
42 ・・・光透過部
5 ・・・光照射部
51 ・・・光源
511・・・LED
52 ・・・光ファイバ
52a・・・一端部
52b・・・他端部
53 ・・・切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び玄米又は胚芽米を含む炊飯物を収容する鍋と、
前記鍋を着脱自在に収納する収納部及び前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱部を有する炊飯器本体と、
前記炊飯器本体に設けられ、前記鍋の開口部を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体から前記鍋内の玄米又は胚芽米を発芽させる発芽用光を照射する光照射部と、を具備する炊飯器。
【請求項2】
前記蓋体が、前記鍋の開口部を塞ぐ面に光を透過する光透過部を有し、
前記光照射部が、前記蓋体の内部に設けられ、前記光透過部に向かって光を照射する複数のLEDを備える請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記蓋体が、前記鍋の開口部を塞ぐ面に光を透過する光透過部を有し、
前記光照射部が、前記蓋体外に設けられた複数のLEDと、当該LEDからの光を前記蓋体内に導き、前記光透過部を介して前記鍋内の玄米又は胚芽米に光を照射する光ファイバと、を備える請求項1記載の炊飯器。
【請求項4】
前記光ファイバが、前記LEDからの光を一端部から導入し、他端部が蓋体内に設けられ、当該他端部から前記光透過部に向かって光を照射するものである請求項3記載の炊飯器。
【請求項5】
前記光ファイバが、前記蓋体内において前記光透過部に沿って設けられ、前記光透過部を向く側面に複数の切り欠き部を有し、当該切り欠き部から前記光透過部に向かって光を照射するものである請求項3記載の炊飯器。
【請求項6】
前記光ファイバの両端部からLEDからの光を導入するものである請求項5記載の炊飯器。
【請求項7】
前記光照射部が、前記蓋体外に設けられた複数のLEDと、当該LEDからの光を前記蓋体内に導き、前記鍋の開口部を塞ぐ面から前記鍋内の玄米又は胚芽米に光を照射する光ファイバと、を備え、
前記光ファイバの光を射出する光射出部が、前記鍋の開口部を塞ぐ面に設けられている請求項1記載の炊飯器。
【請求項8】
前記LEDからの光を玄米又は胚芽米に所定時間照射して当該玄米又は胚芽米を発芽させる発芽工程の後、前記炊飯物を加熱する炊飯工程に入る請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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